説明

液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法

【課題】液晶表示装置の基板上に形成される成膜構造を簡略化でき、且つチャネル部の絶
縁性及び耐湿性も確保することが可能で、安価に製造できる液晶表示装置及びその製造方
法を提供すること。
【解決手段】本発明の液晶表示装置1は、液晶30を挟持した一対の透明基板11、25
を有し、一方の透明基板11の液晶層側には、間に第1絶縁膜13を介して配置された走
査線12及び信号線16と、TFTと、コモン配線Comと、層間膜14と、層間膜の表
面に、コンタクトホールCHを介してTFTの電極(D)に接続された第1電極17と、
第2絶縁膜18と、複数のスリットを有する第2電極21と、を備え、層間膜はTFTの
電極(S、D)を直接被覆しており、第2絶縁膜は層間膜に形成された開口部OPを介し
てチャネル部CRを直接被覆しており、第2電極は表示領域の外周囲に配設されたコモン
配線に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置及びその製造方法に関し、特に、横電界方式の液晶表示装置の
基板上に形成される成膜構造を簡略化するとともにチャネル部の絶縁性及び耐湿性を確保
した液晶表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、表面に電極等が形成された一対の透明基板と、この一対の基板間に挟
持された液晶層とを有し、両基板上の電極に電圧を印加することによって液晶を再配列さ
せて種々の情報を表示する縦電界方式のものが多く使用されている。このような縦電界方
式の液晶表示装置は、TN(Twisted Nematic)モードのものが一般的であるが、視野角
が狭いという問題点が存在するため、VA(Vertical Alignment)モードやMVA(Mult
idomain Vertical Alignment)モード等、種々の改良された縦電界方式の液晶表示装置が
開発されている。
【0003】
一方、上述の縦電界方式の液晶表示装置とは異なり、一方の基板にのみ画素電極及び共
通電極からなる一対の電極を備えたIPS(In-Plane Switching)モードないしFFS(
Fringe Field Switching)モードの液晶表示装置も知られている。
【0004】
このうちIPSモードの液晶表示装置は、一対の電極を同一層に配置し、液晶に印加す
る電界の方向を基板にほぼ平行な方向として液晶分子を基板に平行な方向に再配列するも
のである。そのため、このIPSモードの液晶表示装置は、横電界方式の液晶表示装置と
もいわれ、前述の縦電界方式の液晶表示装置と比すると非常に広視野角であるという利点
を有している。しかしながら、IPSモードの液晶表示装置は、液晶に電界を印加するた
めの一対の電極が同一層に設けられているため、画素電極の上側に位置する液晶分子は十
分に駆動されず、透過率等の低下を招いてしまうといった問題点が存在している。
【0005】
このようなIPSモードの液晶表示装置の問題点を解決するために、いわゆる斜め電界
方式ともいうべきFFSモードの液晶表示装置が開発されている(下記特許文献1及び2
参照)。このFFSモードの液晶表示装置は液晶層に電界を印加するための画素電極と共
通電極をそれぞれ絶縁膜(以下、電極間絶縁膜という)を介して異なる層に配置したもの
である。
【0006】
このFFSモードの液晶表示装置は、IPSモードの液晶表示装置よりも広視野角かつ
高コントラストであり、更に低電圧駆動ができると共により高透過率であるため明るい表
示が可能となるという特徴を備えている。加えて、FFSモードの液晶表示装置は、IP
Sモードの液晶表示装置よりも平面視で画素電極と共通電極との重複面積が大きいために
、より大きな補助容量が副次的に生じ、別途補助容量線を設ける必要が無いのでIPSよ
りも高い開口率が得られる。
【0007】
しかしながら、下記特許文献1及び2に開示されたFFSモードの液晶表示装置では、
信号線と画素電極の電位差により配向異常を生じるため、信号線近傍は表示に寄与しない
領域となり、開口率が低下してしまう問題がある。加えて、信号線と画素電極でカップリ
ング容量を生じ、クロストーク等の表示品位の低下を招くという問題点もある。さらには
、基板上に形成される層が多層構造となるために画素電極及び基板表面に凹凸、すなわち
段差が生じ、セルギャップが不均一となるという問題点も存在している。このような問題
点に対して、信号線の電位の影響を少なくするため、及び基板表面の段差をなくすために
上述のVA方式ないしMVA方式の液晶表示装置で使用されているような層間膜を用い、
この層間膜上に画素電極や共通電極を配置することも行われている(下記特許文献3及び
4参照)。
【特許文献1】特開2001−235763号公報
【特許文献2】特開2002−182230号公報
【特許文献3】特開2001−83540号公報
【特許文献4】特開2007−226175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献3及び4に開示された液晶表示装置のように、層間膜を形成することで開
口率を向上させる場合、この層間膜は、上記特許文献1及び2に示す縦電界方式の液晶表
示装置に設けられる層間膜と同様に形成されている。すなわち、この層間膜は、たとえば
アクリル等の樹脂によりスイッチング素子のチャネル領域を含む表示領域全体を被覆する
ように成膜されたパッシベーション膜の表面に被覆される。
【0009】
しかしながら、上記特許文献3及び4に開示された液晶表示装置においては、開口率は
確かに向上するものの、一方の透明基板上に多くの成膜構造を形成する必要があるため、
製造工程が多く、コスト高を招来してしまうという課題も存在している。
【0010】
ところで、このような液晶表示装置に使用されるスイッチング素子は、外部からの水分
や酸素等に晒されると、その性質が変化してしまうという特性を有している。そこで、こ
の点に鑑み、上記特許文献1及び2に開示されているような縦電界方式の液晶表示装置に
おいては、その構造上、スイッチング素子のチャネル領域等の絶縁性及び耐湿性を確保す
るためのパッシベーション膜を形成し、さらにその表面に感光性樹脂等からなる層間膜が
形成されている。
【0011】
また、上記特許文献1及び2の液晶表示装置と同様に、上記特許文献3及び4に開示さ
れているような横電界方式の液晶表示装置においても、パッシベーション膜と層間膜の両
方が成膜されている。しかしながら、上記特許文献3及び4に開示されているような横電
界方式の液晶表示装置の場合、スイッチング素子のチャネル領域等は、縦電界方式の場合
と同様にパッシベーション膜と層間膜の2層の絶縁膜で被覆されている他、更に画素電極
と共通電極との間に設けられた電極間絶縁膜によっても被覆された構造となっている。従
って、上記特許文献3及び4に示す横電界方式の液晶表示装置のスイッチング素子の各チ
ャネル領域等は、パッシベーション膜、層間膜及び電極間絶縁膜の3層の絶縁性膜で被覆
されていることになる。
【0012】
そのため、上記特許文献3及び4に示されている横電界方式の液晶表示装置では、製造
工数が従来の縦電界方式の液晶表示装置の製造工数よりもさらに増加してしまうという問
題点が存在している。
【0013】
そこで、本発明者らは、上記特許文献3及び4に示されている横電界方式の液晶表示装
置の構成について種々検討を重ねた結果、通常は電極間絶縁膜とパッシベーション膜は同
じ窒化ケイ素等の材料により形成されているため、パッシベーション膜を形成する目的、
すなわちチャネル部の絶縁性及び耐湿性の確保を電極間絶縁膜によって達成することが可
能であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
すなわち、本発明の目的は、横電界方式の液晶表示装置の基板上に形成される成膜構造
を簡略化でき、且つチャネル部の絶縁性及び耐湿性も確保することが可能で、安価に製造
できる液晶表示装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の液晶表示装置は、一対の透明基板に液晶層を挟持
し、前記一対の透明基板のうちの一方の前記液晶層側には、間に第1絶縁膜を介してマト
リクス状に配置された複数の走査線及び信号線と、複数の前記走査線及び信号線の交差部
近傍に設けられた薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)からなるスイッチ
ング素子と、表示領域全体を被覆する層間膜と、前記層間膜の表面に、前記複数の走査線
及び信号線で区画された領域毎に形成され、前記層間膜に形成されたコンタクトホールを
介して前記スイッチング素子の電極に接続された透明導電性材料からなる第1電極と透明
導電性材料からなる第2電極との間に形成された第2絶縁膜と、を備えた液晶表示装置に
おいて、
前記層間膜は前記スイッチング素子の電極を直接被覆しており、前記第2絶縁膜は前記
層間膜に形成された開口部を介して前記スイッチング素子のチャネル部を直接被覆してお
り、前記第2電極は前記表示領域の外周囲に配設されたコモン配線に接続されていること
を特徴とする。
【0016】
本発明の液晶表示装置においては、表示領域には、第1絶縁膜を介してマトリクス状に
形成された複数の走査線及び信号線と、層間膜上に形成され、前記走査線及び信号線で囲
まれた領域毎に第2絶縁膜を介して対向配置されたそれぞれ透明導電性材料からなる下側
の第1電極と複数のスリットを有する上側の第2電極とを備えている。かかる構成によっ
て、本発明の液晶表示装置をFFSモードの液晶表示装置として作動させることができる
。なお、透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide)又はIZO(Indium Zin
c Oxide)を使用することができる。
【0017】
しかも、本発明の液晶表示装置においては、第2絶縁膜を介して対向配置されたそれぞ
れ透明導電性材料からなる第1電極と複数のスリットを有する第2電極とが層間膜上に形
成されているので、層間膜によってソースラインと画素電極の容量が小さく出来るため、
画素電極をソースライン上にまで広げることができ、高開口率となる。なお、本発明の液
晶表示装置においては、第1電極がスイッチング素子に接続されているために画素電極と
なり、第2電極がコモン配線に電気的に接続されているために共通電極となる。
【0018】
さらに、本発明の液晶表示装置においては、層間膜がスイッチング素子の電極の表面を
直接被覆しており、従来使用されていたパッシベーション膜は形成されていない。加えて
、スイッチング素子のチャネル部は層間膜に形成された開口部を介して第2絶縁膜によっ
て被覆されている。このような構成により、従来使用されていたパッシベーション膜の形
成目的、すなわちスイッチング素子の絶縁性及び耐湿性の確保を第2絶縁膜で達成するこ
とができるようになり、パッシベーション膜を形成することなしにチャネル部の外的要因
による性質変化を防止することができるようになる。従って、本発明の液晶表示装置によ
れば、パッシベーション膜が存在しないため、簡略された構成の、しかも安価に製造し得
る液晶表示装置となる。
【0019】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記第2絶縁膜は無機絶縁材料からなると好
ましい。
【0020】
第2絶縁膜の材料を無機絶縁材料、特に窒化ケイ素(SiN)あるいは酸化ケイ素(
SiO)とすると、TFTからなるスイッチング素子のチャネル部を形成する半導体層
がシリコン系材料、例えばアモルファスシリコン(a−Si)あるいはLTPS(Low Te
mperature Poly Silicon)からなるため、この半導体層と第2絶縁膜の接着性が高くなる
。したがって、チャネル部がより外的な要因による性質変化を起こし難くなり、その性質
が安定する。なお、このアモルファスシリコンやLTPS及び窒化ケイ素や酸化ケイ素は
半導体層及び絶縁膜としては一般に用いられるものである。また、第2絶縁膜としては、
絶縁性及び耐湿性の観点から窒化ケイ素からなるものを使用した方がよい。
【0021】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記第2絶縁膜の厚さは2000〜6000
Åであると好ましい。
【0022】
この第2絶縁膜の厚さが2000Å未満であると、スイッチング素子のチャネル領域や
電極に対して必要な絶縁性及び耐湿性を確保することが困難となるので好ましくない。ま
た、第2絶縁膜の厚さが6000Åを超えると、第1電極及び第2電極との間に生じる容
量が小さくなるので、フリッカが目立つようになると共に、液晶分子を駆動するために必
要な電圧が高くなるので好ましくない。
【0023】
本発明の液晶表示装置の製造方法は、以下の(1)〜(6)の工程を有することを特徴
とする。
(1)表示領域に間に第1の絶縁膜を介してマトリクス状に形成された複数の走査線及
び信号線と、複数の前記走査線及び信号線の交差部近傍に設けられた薄膜トランジスタか
らなるスイッチング素子と、前記表示領域の周縁部に沿って形成されたコモン配線とを備
える第1の透明基板を用意する工程、(2)前記(1)の工程で得られた透明基板の表面
全体に感光性樹脂材料からなる膜を形成した後、露光、現像及びベーク処理することによ
って、表示領域の全面を被覆すると共に前記スイッチング素子の電極及びチャネル部が露
出するようにコンタクトホール及び開口部が形成された層間膜を形成する工程、(3)前
記層間膜の表面に、前記複数の走査線及び信号線で区画された領域毎に透明導電性材料か
らなる第1電極を形成するとともに、前記第1電極と前記スイッチング素子の電極とを前
記コンタクトホールを介して電気的に接続する工程、(4)前記第1電極上及び前記チャ
ネル部上を含む層間膜の表面全体に亘って第2絶縁膜を成膜する工程、(5)前記第2絶
縁膜上に、前記複数の走査線及び信号線で区画された領域に対応する位置毎に複数のスリ
ットが設けられた透明導電性材料からなる第2電極を形成する工程、(6)前記(5)の
工程で得られた第1の透明基板の表面に配向膜を成膜するとともに第2の透明基板を所定
距離隔てて対向配置させて貼り合わせ、前記第1及び第2の透明基板間に液晶を封入する
工程。
【0024】
本発明の液晶表示装置の製造方法によれば、層間膜がスイッチング素子の電極を直接被
覆し、第2絶縁膜がスイッチング素子のチャネル部を直接被覆することになる。そのため
、従来例のように、パッシベーション膜を成膜するプロセスが不要となるとともに、スイ
ッチング素子の電極と第1電極とを電気的に接続するためにスイッチング素子の電極上に
設けられたパッシベーション膜をエッチングするプロセスも不要となる。従って、本発明
の液晶表示装置の製造方法によれば、製造工程数を大幅に削減できる。さらには、スイッ
チング素子のチャネル部は例えば従来のパッシベーション膜と同一材料からなる第2絶縁
膜により直接覆われているので、絶縁性及び耐湿性を十分に確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態
は、本発明の技術思想を具体化するための液晶表示装置及び液晶表示装置の製造方法を例
示するものとして、FFSモードの液晶表示装置を例にとり説明したものであって、本発
明をこのFFSモードの液晶表示装置に特定することを意図するものではなく、特許請求
の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【0026】
図1は本発明の実施例に係るFFS型の液晶表示装置の平面図である。図2は図1の液
晶表示装置のカラーフィルタ基板を透視して示す3画素分の拡大平面図である。図3は図
2のIII−III線で切断した断面図である。図4及び図5はアレイ基板の製造工程を示す要
部断面図である。
【0027】
なお、ここで述べるアレイ基板及びカラーフィルタ基板の「表面」とは各種配線が形成
された面ないしは液晶と対向する側の面を示すものとする。また、この明細書における説
明のために用いられた各図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大き
さとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に
比例して表示されているものではない。
【実施例1】
【0028】
本実施例に係る液晶表示装置1は、図1に示すように、アレイ基板AR及びカラーフィ
ルタ基板CFと、両基板AR、CFを貼り合わせるシール材2と、アレイ基板AR、カラ
ーフィルタ基板CF及びシール材2により囲まれた領域に封入された液晶30(図3参照
)と、から構成されたいわゆるCOG(Chip On Glass)型の液晶表示装置である。この
液晶表示装置1においては、シール材2により囲まれた領域が表示領域DAを形成してお
り、この表示領域DAの外側は額縁領域となっている。また、シール材2の一部には液晶
30を注入するための注入口2aが形成されている。なお、図1には表示領域DAに当た
る領域に格子状のハッチングが施されている。
【0029】
アレイ基板ARは、ガラス等からなる透明基板11上に各種配線が設けられている。こ
のアレイ基板ARはカラーフィルタ基板CFよりもその長手方向の長さが長く、両基板A
R、CFを貼り合わせた際に外部に延在する延在部11aが形成されるようになっており
、この延在部11aには駆動信号を出力するICチップあるいはLSI等からなるドライ
バDrが設けられている。そして、このアレイ基板ARの額縁領域には、ドライバDrか
らの各種信号を後述する走査線12及び信号線16(図2参照)に送るために各種引回し
線(図示省略)が形成されており、更には、後述する共通電極21に接続されるコモン配
線Comも形成されている。
【0030】
次に各基板の構成について、図2及び図3を参照して説明を行う。先ず、アレイ基板A
Rには、図2及び図3に示すように、透明基板11の表面に例えばMo/Alの2層配線
からなる複数の走査線12が互いに平行になるように形成されている。また、この走査線
12が形成された透明基板11の表面全体に亘って窒化ケイ素ないしは酸化ケイ素等の無
機透明絶縁材料からなるゲート絶縁膜(第1絶縁膜)13が被覆されている。更に、この
ゲート絶縁膜13の表面のスイッチング素子(例えばTFT)が形成される領域には例え
ばアモルファスシリコン(a−Si)層からなる半導体層15が形成されている。この半
導体層15が形成されている位置の走査線12の領域がTFTのゲート電極Gを形成する

【0031】
また、ゲート絶縁膜13の表面には、例えばMo/Al/Moの3層構造の導電性層か
らなるソース電極Sを含む信号線16及びドレイン電極Dが形成されている。この信号線
16のソース電極S部分及びドレイン電極Dは、いずれも半導体層15の表面に部分的に
重なっている。更に、このアレイ基板ARの表面全体に感光性材料からなる層間膜14が
被覆されており、加えて、この層間膜14のドレイン電極Dに対応する位置にはコンタク
トホールCHが形成され、チャネル部CRに対応する位置には開口部OPが形成されてい
る。
【0032】
そして、図2に示したパターンとなるように、走査線12及び信号線16で囲まれた領
域の層間膜14上に透明導電性材料、例えばITOないしIZOからなる下電極(第1電
極)17が形成されている。この下電極17はコンタクトホールCHを介してドレイン電
極Dと電気的に接続されている。そのため、この下電極17は画素電極として作用する。
更に、この下電極17上には電極間絶縁膜(第2絶縁膜)18が形成されている。この電
極間絶縁膜18には、例えば窒化ケイ素等の絶縁性が良好な無機透明絶縁材料が使用され
る。そして、この電極間絶縁膜18上には走査線12及び信号線16で囲まれた領域に複
数のスリット20を有する透明導電性材料、例えばITOないしIZOからなる上電極(
第2電極)21が形成されている。なお、この上電極21は、各画素領域に形成されてい
るとともに、それぞれが連結部21Bで互いに連結され、液晶表示装置1の額縁領域の例
えば図1のX部分まで配線されたコモン配線Comに電気的に接続され、コモン配線Co
mの他端部はドライバDrに接続されている。そして、この基板の表面全体に亘り所定の
配向膜(図示せず)が形成されている。
【0033】
スリット20を有する上電極21は、走査線12及び信号線16で囲まれた領域毎に平
面視で例えばくし歯状となるよう、スリット20の信号線16側の一端の幅が大きい開放
端20aとなっているとともに他端が閉鎖端20bとなっている。これにより、開放端2
0a側の開口度が向上し、より明るい表示を行うことができるようになっている。
【0034】
また、カラーフィルタ基板CFは、図3に示すように、ガラス基板等からなる透明基板
25の表面にアレイ基板ARの走査線12、信号線16及びTFTに対応する位置を被覆
するように遮光部材26が形成されている。更に、遮光部材26で囲まれた透明基板25
の表面には、複数色、例えばR(赤)、G(緑)、B(青)の3色からなるカラーフィル
タ層27が形成され、更に遮光部材26及びカラーフィルタ層27の表面を被覆するよう
に透明樹脂等からなる保護膜28が形成されている。そして、この基板の表面全体に亘り
所定の配向膜(図示せず)が形成されている。なお、このような構成を有するアレイ基板
AR及びカラーフィルタ基板CFの外面には偏光板31が設けられている。
【0035】
次に、主に図4及び図5を参照して、アレイ基板ARの製造工程について説明する。先
ず、透明基板11上に公知のフォトリソグラフィ法等を用いて複数本の走査線12をパタ
ーニングする(図4A参照)。次いで、走査線12を含む透明基板11上に公知のプラズ
マCVD法あるいはスパッタリング法等を用いてゲート絶縁膜13を形成する(図4B参
照)。次に、公知のフォトリソグラフィ法等を用いて走査線12の一部分を覆うように半
導体層15をパターニングする(図4C参照)。次いで、同じく公知のフォトリソグラフ
ィ法等を用いて複数本の走査線12に交差するように複数本の信号線16をパターニング
すると共に、半導体層15にその一端部が重畳したソース電極S及びドレイン電極Dをパ
ターニングする(図4D参照)。ここまでの工程が、本発明の液晶表示装置の製造方法に
おける上記(1)の工程に対応する。
【0036】
この工程により、半導体層15に平面視で重なる走査線12の部分がゲート電極Gを構
成することになり、スイッチング素子としての逆スタガ型のTFTが形成される。なお、
本実施例においてはソース電極S及びドレイン電極Dを半導体層15に直接重畳させてパ
ターニングしてTFTを形成するいわゆるチャネルエッチ法を用いてTFTを形成してい
る。そして、ソース電極Sの半導体層15に重畳した端部とドレイン電極Dの半導体層1
5に重畳した端部との間がチャネル部CRを形成している。
【0037】
従来の液晶表示装置においては、上述したTFTが形成された透明基板11の表面全体
を覆うように、公知のプラズマCVD法あるいはスパッタリング法等を用いて窒化ケイ素
ないし酸化ケイ素からなるパッシベーション膜を形成する。しかしながら、本発明におい
ては、TFTが形成された透明基板11の表面には、パッシベーション膜を形成すること
なく、直ちに層間膜14を形成する。すなわち、TFTが形成された透明基板11の表面
にフォトレジスト等の感光性材料からなる膜を形成し(図4E参照)、プリベークした後
、公知の露光装置を用いて露光すると共に現像処理して、表示領域に層間膜14を形成し
た後、光反応処理及びベーキング処理を行なう。従って、層間膜14はTFTのチャネル
部CR、ソース電極S及びドレイン電極Dの表面を直接被覆するように形成される。
【0038】
光反応処理は、感光性樹脂膜の透明性を向上させる目的でUV光を照射して感光性官能
基を光反応させる処理である。また、ベーキング処理は、加熱処理を行うことにより、パ
ターン形成された感光性樹脂を焼成し、樹脂内の化学反応(主には架橋反応)によって化
学的、物理的に安定な絶縁膜として基板上に形成する処理である。なお、ここで形成され
た層間膜14の厚さは、例えば1.5〜3.0μmとすることが好ましい。層間膜14の
厚さが1.5μm未満であると、TFT等の存在箇所で段差が生じるようになるので、以
降の工程で形成される下電極17や上電極21にも段差が生じるようになり、セルギャッ
プが不均一となるので好ましくない。また、層間膜14の厚さが3.0μmを超えると、
層間膜14による光吸収率が大きくなって表示領域DAの明るさが低下するので好ましく
ない。
【0039】
また、上述の層間膜14の形成時に、同時にドレイン電極D上の層間膜14とチャネル
部CR上の層間絶縁膜14にはコンタクトホールCH、開口部OPが形成される(図5A
参照)。このコンタクトホールCH、開口部OPは、パッシベーション膜を形成すること
なく形成される層間膜14の露光及び現像処理時に直接形成される。このように形成され
るコンタクトホールCH、開口部OPのうち、特にコンタクトホールCHは、従来はこの
コンタクトホールCHの底面に成膜されているパッシベーション膜をエッチング除去しな
ければドレイン電極Dを外部に露出させることができなかったが、本実施例においてはこ
のエッチング工程を行うことなくドレイン電極Dを外部に露出させることが可能となる。
また、開口部OPを形成することにより、チャネル部CRは外部に露出した状態となる。
これらの工程が、本発明の液晶表示装置の製造方法における上記(2)の工程に対応する

【0040】
次に、走査線12及び信号線16によって区画された画素領域のそれぞれに下電極17
を形成する(図5B参照)。この際、下電極17の一部がコンタクトホールCH内に成膜
され、下電極17とドレイン電極Dが電気的に接続される。そのため、下電極17は画素
電極として作動することになる。なお、この下電極17は開口部OP内には成膜されない
。この工程が、本発明の液晶表示装置の製造方法における上記(3)の工程に対応する。
【0041】
そして、この下電極17が形成された基板全体を覆うように電極間絶縁膜18が成膜さ
れる(図5C参照)。なお、この電極間絶縁膜18は、例えば絶縁性が良好な窒化ケイ素
を用いると、膜厚を薄くできるのでコンタクトホールCHの開口径が大きくなることがな
い。また、この電極間絶縁膜18は比較的低温で成膜を行える材料を用いると他の層に悪
影響を与えることなく成膜できるので好ましい。加えて、この電極間絶縁膜18は開口部
OP内にも成膜されて直接チャネル部CRを覆うことになるので、その厚さは、TFTの
チャネル部CR、ソース電極S及びドレイン電極Dの耐湿性及び絶縁性を確保するため、
2000Å以上にするとよい。なお、この電極間絶縁膜18の厚さが6000Åを超える
と、下電極17及び上電極21間に生じる容量が小さくなるので、フリッカが目立つよう
になると共に、液晶分子を駆動するために必要な電圧が高くなるので好ましくない。この
工程が、本発明の液晶表示装置の製造方法における上記(4)の工程に対応する。
【0042】
そして、このように電極間絶縁膜18を形成した後、この電極間絶縁膜18の表面全体
を覆うようにITOないしIZOからなる透明導電性材料を被覆し、公知のフォトリソグ
ラフィ法及びエッチング法によって、画素領域に対応する位置毎に複数のスリット20が
形成された上電極21を形成する(図5D参照)。なお、この上電極21は、図2及び図
3に示したように、TFTに対応する位置には形成されないようすると共に、画素領域間
においてそれぞれが連結部21Bを介して互いにに連結されているように形成され、更に
、液晶表示装置1の額縁領域に配線されたコモン配線Comに電気的に接続される。従っ
て、この上電極21は共通電極として作動することになる。そしてこの上電極21が形成
された透明基板11の表面全体を覆うように配向膜を形成することによってアレイ基板A
Rが完成される。この工程が、本発明の液晶表示装置の製造方法における上記(5)の工
程に対応する。
【0043】
最後に、従来のFFSモードの液晶表示装置用のカラーフィルタ基板と実質的に同様の
カラーフィルタ基板を用意し、上述のアレイ基板及びカラーフィルタ基板をそれぞれ対向
させて貼り合わせ、内部に液晶を封入することにより実施例1の液晶表示装置1が得られ
る。この工程が、本発明の液晶表示装置の製造方法における上記(6)の工程に対応する

【0044】
以上のように、本発明の液晶表示装置14においては、パッシベーション膜を形成する
ことなく層間膜14を形成し、更にTFTのチャネル部CRは直接電極間絶縁膜18によ
って被覆されている。したがって、チャネル部CRは従来使用されていたパッシベーショ
ン膜と同一の無機透明絶縁材料からなる電極間絶縁膜18で被覆されるので、絶縁性及び
耐湿性の点は十分に確保される。また、本発明の液晶表示装置1の製造方法によれば、従
来のアレイ基板の製造方法に比して、パッシベーション膜の成膜プロセスと、ドレイン電
極Dを外部に露出するためのパッシベーション膜の一部のエッチングプロセスとを行う必
要がなくなる。そのため、本発明の液晶表示装置1の製造方法によれば、製造工程を簡略
化することが可能となり、安価に液晶表示装置を作成することが可能となる。
【0045】
なお、上記実施例では、上電極21に形成するスリットとして、スリット20の信号線
16側の一端の幅が大きい開放端20aとなり、他端が閉鎖端20bとなるようにして平
面視でくし歯状となるようにした例を示したが、両端共に閉鎖端となるようにしてもよい
。また、上電極21は、TFT上には存在しないようにした例を示したが、必ずしもこの
ような構成とする必要はない。
【0046】
以上、本発明の一実施形態としてFFS型の液晶表示装置1を説明した。このような本
発明の液晶表示装置は、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末、ナビゲー
ション装置、携帯音楽再生機、携帯テレビ等の各種電子機器に使用することができる。
【0047】
また、上記一実施形態に係る液晶表示装置1においては、下電極(第1電極)17はコ
ンタクトホールCHを介してドレイン電極Dにそれぞれ接続することで画素電極とし、複
数のスリット20を有する上電極(第2電極)21はコモン配線Comに接続することで
共通電極とした構成について説明した。しかし、この下電極17を共通電極とし、上電極
21を画素電極としてそれぞれ機能させることも可能である。
【0048】
このような構成とした場合の液晶表示装置について具体的に説明すると、先ず、層間膜
14の成膜プロセスまでは上述の実施例と同様の工程でアレイ基板ARの製造を行う。そ
して、下電極17を層間膜14に形成されたコンタクトホールCH及び開口部OPが形成
された領域を除く表示領域DA全体に成膜するとともに、額縁領域に配設されたコモン配
線Comに電気的に接続させる。次いで、電極間絶縁膜(第2絶縁膜)18をコンタクト
ホールCHが形成された部分を除く基板表面全体に成膜する。このように電極間絶縁膜1
8を成膜することにより、チャネル部CR上に形成された開口部OP内にも電極間絶縁膜
18が入り込んでこのチャネル部CRを直接覆うことになる。さらに、走査線12及び信
号線16で区画された画素領域のそれぞれに複数のスリット20を有する上電極21を成
膜する。なお、この上電極21はコンタクトホールCHを介してドレイン電極Dに電気的
に接続されるとともに、開口部OPが形成された部分には形成されていない。以降は上述
した一実施形態に係る液晶表示装置1と同様に、配向膜の成膜及びカラーフィルタ基板C
Fとの貼り合わせ等を経て液晶表示装置が得られる。
【0049】
以上のように下電極17を共通電極とし、上電極21を画素電極としてそれぞれ機能さ
せる液晶表示装置においても、上記一実施形態に係る液晶表示装置1と同様の優れた効果
が得られることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は本発明の実施例に係るFFS型の液晶表示装置の平面図である。
【図2】図2は図1の液晶表示装置のカラーフィルタ基板を透視して示す3画素分の拡大平面図である。
【図3】図3は図2のIII−III線で切断した断面図である。
【図4】図4はアレイ基板の製造工程を示す要部断面図である。
【図5】図5はアレイ基板の製造工程を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1:液晶表示装置 2:シール材 11、25:透明基板 12:走査線 13:ゲート
絶縁膜(第1絶縁膜) 14:層間膜 15:半導体層 16:信号線 17:下電極(
第1電極) 18:電極間絶縁膜(第2絶縁膜) 20:スリット 21:上電極(第2
電極) 26:遮光部材 27:カラーフィルタ層 28:保護膜 30:液晶 AR:
アレイ基板 CF:カラーフィルタ基板 S:ソース電極 G:ゲート電極 D:ドレイ
ン電極 CH:コンタクトホール OP:開口部 CR:チャネル部 DA:表示領域
Dr:ドライバ Com:コモン配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の透明基板に液晶層を挟持し、前記一対の透明基板のうちの一方の前記液晶層側に
は、間に第1絶縁膜を介してマトリクス状に配置された複数の走査線及び信号線と、複数
の前記走査線及び信号線の交差部近傍に設けられた薄膜トランジスタからなるスイッチン
グ素子と、表示領域全体を被覆する層間膜と、前記層間膜の表面に、前記複数の走査線及
び信号線で区画された領域毎に形成され、前記層間膜に形成されたコンタクトホールを介
して前記スイッチング素子の電極に接続された透明導電性材料からなる第1電極と透明導
電性材料からなる第2電極との間に形成された第2絶縁膜と、を備えた液晶表示装置にお
いて、
前記層間膜は前記スイッチング素子の電極を直接被覆しており、前記第2絶縁膜は前記
層間膜に形成された開口部を介して前記スイッチング素子のチャネル部を直接被覆してお
り、前記第2電極は前記表示領域の外周囲に配設されたコモン配線に接続されていること
を特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2絶縁膜は無機絶縁材料からなることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装
置。
【請求項3】
前記第2絶縁膜の厚さは2000〜6000Åであることを特徴とする請求項1に記載
の液晶表示装置。
【請求項4】
以下の(1)〜(6)の工程を有することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
(1)表示領域に間に第1の絶縁膜を介してマトリクス状に形成された複数の走査線及
び信号線と、複数の前記走査線及び信号線の交差部近傍に設けられた薄膜トランジスタか
らなるスイッチング素子と、前記表示領域の周縁部に沿って形成されたコモン配線とを備
える第1の透明基板を用意する工程、
(2)前記(1)の工程で得られた透明基板の表面全体に感光性樹脂材料からなる膜を
形成した後、露光、現像及びベーク処理することによって、表示領域の全面を被覆すると
共に前記スイッチング素子の電極及びチャネル部が露出するようにコンタクトホール及び
開口部が形成された層間膜を形成する工程、
(3)前記層間膜の表面に、前記複数の走査線及び信号線で区画された領域毎に透明導
電性材料からなる第1電極を形成するとともに、前記第1電極と前記スイッチング素子の
電極とを前記コンタクトホールを介して電気的に接続する工程、
(4)前記第1電極上及び前記チャネル部上を含む層間膜の表面全体に亘って第2絶縁
膜を成膜する工程、
(5)前記第2絶縁膜上に、前記複数の走査線及び信号線で区画された領域に対応する
位置毎に複数のスリットが設けられた透明導電性材料からなる第2電極を形成する工程、
(6)前記(5)の工程で得られた第1の透明基板の表面に配向膜を成膜するとともに
第2の透明基板を所定距離隔てて対向配置させて貼り合わせ、前記第1及び第2の透明基
板間に液晶を封入する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−162981(P2009−162981A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−354(P2008−354)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】