説明

液晶表示装置

【課題】動画表示性能を向上することのできる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】画像フレームの輝度階調値が低輝度階調、低輝度階調および中輝度階調の順に遷移する場合、プレチルトLUT31に基づいて、中輝度階調の直前に位置する低輝度階調の画像フレームの輝度階調値を、これよりも高い輝度階調のプレチルト用階調値に置き換える処理を行う。さらに、オーバードライブLUT32に基づいて、中輝度階調の画像フレームの輝度階調値を、これよりも高い輝度階調のオーバードライブ用階調値に置き換える処理を行う。プレチルト用階調値に置き換えられた画像フレームを表示させたときの輝度と、オーバードライブ用階調値に置き換えられた画像フレームを表示させたときの輝度とを合わせることにより、第nフレームにおいて必要とする輝度を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置に係わり、特に、応答特性等の表示性能が改良された液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示デバイスとしての液晶表示装置の普及が著しいが、これを構成する液晶素子には、その固有の性質に起因するいくつかの問題点がある。最近では、これらの問題を克服して表示性能を向上させるべく、液晶素子自体の構成のみならず、その駆動方法においても多くの改良が加えられている。
【0003】
上記の問題の一つとして、液晶の応答性能の不十分さがある。この問題は特に、今後、フレームレートが60fps(フレーム/秒)から120fps、さらには240fpsへと高速化されるに及んで、より大きな障害となることが予想される。液晶素子の応答性の悪さの一因として、いわゆる「液晶の方位角ブレ」という現象がある。以下、この現象について簡単に説明する。
【0004】
図8は、従来の液晶素子における入力階調および視認輝度(縦軸)とフレーム期間(横軸)との関係を表すものである。ここで、視認輝度(以下、単に輝度という)は、255階調に相当する表示輝度を100%とする相対輝度を表している。この図に示したように、入力階調が低輝度(例えば0階調)から高輝度(例えば255階調)に移行したにもかかわらず、実際の輝度(視認輝度)は255階調に相当するレベルにまで中々到達せず、応答特性が悪い。これは、0階調のときの電圧無印加状態から255階調のときの高電圧印加状態に急激に移行した際に、液晶分子が一旦ランダムな方向に倒れてしまい、その後、時間をかけて所定の方位角の方向に配向することに起因するもので、この現象が上記した方位角ブレ(φブレ)である。
【0005】
この問題を解決するため、例えば非特許文献1では、0階調から255階調に移行する直前のフレームに、輝度変化が視認されない程度の弱い電圧を印加して、予め液晶を僅かに所定方向に傾斜させるプレチルト処理という駆動法が提案されている。この手法により、以下に説明するように、方位角ブレの抑制が図られている。
【0006】
図9は、液晶のプレチルト処理の有無による応答特性の違いを説明するためのもので、入力階調および輝度(縦軸)とフレーム期間(横軸)との関係を示している。ここで、輝度は、255階調に相当する表示輝度を100%とする相対輝度を表している。破線で示したように、液晶のプレチルト処理を行わない場合には、入力階調が、0階調(フレーム期間が0より前)から255階調(フレーム期間が0以後)へと変化しても、輝度の立ち上がりはそれに追随できず、かなり遅くなっている。一方、実線で示したように、プレチルト処理を行った場合には、フレーム期間が−1のときの入力階調(印加電圧)を、本来の階調値よりも僅かに高いプレチルト電圧に変えている。このため、255階調の画像フレームへの遷移が始まる前に、輝度が変化しない範囲内で液晶分子の配向状態が僅かに変化し初めて方位角が揃うようになる。結果として、プレチルトを行わない場合に比べて、第nフレーム以降における輝度の変化が高速化している(矢印E)。なお、図9では、プレチルト処理の際にフレーム期間が−1の時点で輝度変化が視認されないようにするために(矢印F)、フレーム期間が−1のときに印加するプレチルト電圧を、0階調に相当する低輝度と255階調に相当する高輝度との輝度差の1%未満に相当する極めて小さい電圧にとどめている。
【0007】
一方において、液晶表示装置では、液晶の応答を高速化するために、いわゆるオーバードライブ処理という駆動法が提案されている。この手法は、入力階調が低輝度階調(例えば0階調)から中輝度階調(64階調)へと移行する場合に、目標階調(ここでは64階調)に相当する電圧よりも高い電圧(オーバードライブ電圧)を印加することにより、輝度の応答速度を速める処理である。
【非特許文献1】Jang−Kun Song他、「DCCII:Novel Method for Fast Response Time in PVA Mode」、SID04DIGEST、2004年、p.1344
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図10は、オーバードライブ処理の有無による応答特性の違いを説明するためのもので、入力階調および輝度とフレーム期間との関係を示している。ここで輝度は、64階調に相当する表示輝度を100%とする相対輝度を表している。オーバードライブ処理を行わなかった場合は、破線で示したように、輝度の立ち上がりが遅くなっている。これに対し、オーバードライブ処理を行った場合は、実線で示したように、オーバードライブ処理を行わなかった場合に比べて、輝度の立ち上がりが速くなっている。
【0009】
しかしながら、オーバードライブ処理が終了して、フレーム期間が1以後において本来の64階調に相当する電圧が印加されると輝度が目標レベルよりも低下する、いわゆる「ゆり戻し」と呼ばれる現象が発生する。これは、液晶分子が垂直な状態(0階調)のときに、短時間に高いオーバードライブ電圧が印加されたことにより、画素内の一部分の液晶分子のみが倒れ、他の部分が倒れないことにより生じると考えられる。
【0010】
さらに、オーバードライブ処理を行ったときには、いわゆる「オーバードライブの過補償」という現象が生じる場合がある。図11は、この現象を説明するためのもので、高輝度階調(例えば255階調)から低輝度階調(例えば0階調)に移行した後、さらに中輝度階調(例えば64階調)に移行したときの輝度変化を示している。ここで、輝度は、255階調に相当する表示輝度を100%とする表示輝度を表している。
【0011】
図11に示したように、入力階調が255階調(フレーム期間が0よりも前のとき)、0階調(フレーム期間が0のとき)および64階調(フレーム期間が1以後のとき)の順に遷移する場合には、0階調から64階調に移行するときにオーバードライブ処理が行われる。フレームレートが120fps(液晶素子の駆動周波数が120Hz)の場合には、破線で示したように、フレーム期間が0のときに輝度がほぼ0%にまで下がりきっている。この後、0階調から64階調に移行する際にオーバードライブ処理が行われる(オーバードライブ電圧が印加される)が、スタート輝度がほぼ0%になっているので、到達輝度は所期のものとなる。
【0012】
これに対し、フレームレートが240fpsの場合では、実線で示したように、フレーム期間が0のときでも輝度が0%にまで下がりきっていない(矢印G)。このため、その後、0階調から64階調への移行の際にオーバードライブ処理が行われると、フレーム期間が1のときにおいては、64階調に相当する輝度よりも遥かに高い過剰な輝度となる(矢印H)。このように入力階調が高−低−中と変化したときには、オーバードライブ電圧を印加するフレームの直前のフレームが所期の低輝度に到達していない状態でオーバードライブ電圧が印加されてしまい、いわゆる「オーバードライブの過補償」が発生する。
【0013】
しかしながら、上記の非特許文献1を含めて、従来は、オーバードライブ処理時の「ゆり戻し」および「過補償」の両方を抑制することができる駆動方法については提案されておらず、応答特性等の表示性能において必ずしも十分なものではなかった。
【0014】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、動画表示性能を向上することのできる液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の液晶表示装置は、液晶表示手段と、動画像を構成する時間的に連続した画像フレームの輝度階調値を検出する階調検出手段と、階調検出手段によって、2フレーム以上連続した低輝度階調の画像フレームから中輝度階調への遷移が検出されたときに、中輝度階調の画像フレームの輝度階調値を、それよりも高い輝度階調のオーバードライブ用階調値に置き換えると共に、中輝度階調の画像フレームの直前に位置する低輝度階調の画像フレームの輝度階調値を、それよりも高い輝度階調の第1のプレチルト用階調値に置き換える階調制御手段と、階調制御手段による制御が行われた後の輝度階調値に基づいて、液晶表示手段の表示動作を制御する表示制御手段と、を備えたものである。ここで、階調制御手段は、プレチルト用階調値およびオーバードライブ用階調値の適用によって得られる実輝度が、オーバードライブ用階調値よりも大きいオーバードライブ用仮想階調値を用いたオーバードライブ処理のみを行うことにより得られる到達輝度と等しくなるように、プレチルト用階調値およびオーバードライブ用階調値を設定するように構成されている。
【0016】
ここで、「低輝度階調の画像フレーム」とは、低輝度階調(黒表示もしくは黒表示に近い階調)を表示するための階調値(輝度データ)が適用されるべき画像フレームを意味する。また、「高輝度階調の画像フレーム」とは、高輝度階調(白表示もしくは白表示に近い階調)を表示するための階調値が適用されるべき画像フレームを意味する。さらに、「中輝度階調の画像フレーム」とは、中輝度階調(低輝度階調と高輝度階調との間の階調)を表示するための階調値が適用されるべき画像フレームを意味する。
【0017】
本発明の液晶表示装置では、画像フレームが、第[−2]フレーム(低輝度階調)→第[−1]フレーム(低輝度階調)→第[0]フレーム(中輝度階調)という順に遷移する場合に、低輝度階調から目標の中輝度階調に遷移する直前の第[−1]フレームに対してプレチルト処理が行われる。さらに、第[0]フレームに対してオーバードライブ処理が行われる。上記のプレチルト処理により、中輝度階調の画像フレームを表示するために液晶分子が配向するのに先立って、予め液晶分子がわずかに配向して方位角が揃うので、方位角ブレが抑制される。こうして配向が揃ったところでオーバードライブ処理が行われるので、液晶分子の配向が一気に進み、輝度変化が速くなる。しかも、このときに用いられる第1のプレチルト用階調値およびオーバードライブ用階調値は、プレチルト処理およびオーバードライブ処理の両方の適用によって得られる実輝度(ピーク輝度)が、オーバードライブ用階調値よりも大きいオーバードライブ用仮想階調値を用いたオーバードライブ処理のみを行ったと仮定したときに得られる到達輝度(ピーク輝度)と等しくなるように設定されている。すなわち、本発明におけるオーバードライブ用階調値は、単にオーバードライブ処理のみを行うようにした場合の階調値(オーバードライブ用仮想階調値)よりも通常は小さく設定されている。このため、本発明におけるオーバードライブ処理により生ずるゆり戻し(輝度低下)は、オーバードライブ用仮想階調値を用いたオーバードライブ処理により生ずるゆり戻しに比べて軽減される。これは、次のような理由によると考えられる。
【0018】
より大きなオーバードライブ用仮想階調値を用いたオーバードライブ処理のみを行った場合には、第[−1]フレーム(中輝度階調)に印加エネルギー(液晶への印加電圧)が集中するので、当初は画素内の一部の液晶分子だけが配向し、続いて残りの大部分の液晶分子が配向することになり、ゆり戻しが大きくなる。これに対し、本発明では、低輝度階調から中輝度階調に遷移する際の中輝度階調の画像フレームの中間階調を表示するためのエネルギーが、中輝度階調の画像フレームからその直前に位置する低輝度階調の画像フレームにかけて分散して印加されるので、画素内の一部の液晶分子だけでなく大部分の液晶分子が倒れることになり、ゆり戻しが軽減されるのである。
【0019】
本発明の液晶表示装置では、低輝度階調の画像フレームが2フレーム以上連続したのち高輝度階調へと遷移するような場合には、その高輝度階調の画像フレーム(第[0]フレーム)の直前に位置する低輝度階調の画像フレーム(第[−1]フレーム)の階調輝度値を、それよりも高く、且つ、第1のプレチルト用階調値よりも低い輝度階調を有する第2のプレチルト用階調値に置き換える処理を行うようにしてもよい。なお、第1のプレチルト用階調値は、中輝度階調の画像フレーム(第[0]フレーム)と、その直前の低輝度階調の画像フレーム(第[−1]フレーム)との輝度差の1%以上、特に両者の輝度差以上(100%以上)に相当する値に設定することが好ましい。
【0020】
また、本発明の液晶表示装置では、高輝度階調の画像フレーム→低輝度階調の画像フレーム→中輝度階調の画像フレームという順で遷移した場合には、低輝度階調の画像フレーム(第[−1]フレーム)に対するプレチルト処理を行わず、中輝度階調の画像フレーム(第[0]フレーム)に対するオーバードライブ処理(オーバードライブ用仮想階調値よりも小さいオーバードライブ用階調値の印加)のみを行うようにするのが好ましい。これにより、オーバードライブ処理における過補償の現象が抑制される。この場合にはさらに、高輝度階調の画像フレームの輝度階調値を、より低い輝度階調値(高輝度階調の画像フレームと低輝度階調の画像フレームとの間の輝度階調値)に置き換える処理を行うようにするのが好ましい。過補償の現象をより確実に抑制できるからである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の液晶表示装置によれば、画像フレームが低輝度階調→低輝度階調→中輝度階調という順に遷移する場合に、低輝度階調から目標の中輝度階調に遷移する直前のフレームに対してプレチルト処理を行うと共に、オーバードライブ用階調値を、単にオーバードライブ処理のみを行うようにした場合の階調値(オーバードライブ用仮想階調値)よりも小さく設定するようにしたので、方位角ブレの抑制とゆり戻しの軽減とが可能となる。その結果、高速かつ忠実な応答性能が得られ、動画特性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
<第1の実施の形態>
[液晶表示装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る液晶表示装置の概略構成を表すものである。液晶表示装置1は、複数の画像フレームを記憶するフレームメモリ11と、フレームメモリ11への画像フレームの入出力を制御するメモリ制御部10とを備えている。
【0024】
メモリ制御部10は、液晶表示装置1に入力された画像フレームをフレームメモリ11に複数フレーム分(ここでは2フレーム分)記憶させると共に、フレームメモリ11に記憶された画像フレームを読み出す制御を行うようになっている。
【0025】
フレームメモリ11は、n−1フレームメモリ111およびn−2フレームメモリ112を備えている。図示しない前段の回路から、画像フレームが、第(n−2)フレーム、第(n−1)フレーム、第nフレームという順で次々と入力されると、第(n−2)フレームおよび第(n−1)フレームのデータが、それぞれn−2フレームメモリ112とn−1フレームメモリ111とに記憶されるようになっている。ここで、第(n−2)フレーム、第(n−1)フレームおよび第nフレームは、時間的に連続した画像フレームであり、動画像を構成する。さらに、第nフレームは、液晶表示装置1に入力される最新の画像フレームである。
【0026】
ここで、画像フレームの順番について説明すると、次のようになる。図2は、画像フレームの順番を説明する図である。まず、液晶表示装置1に供給された画像フレームの輝度階調値が0→0→64の順に遷移する場合、階調が64である最新の画像フレームが第nフレームと定義され、画像フレーム(相対フレーム番号)は図2(A)に示したように、それぞれ第(n−2)フレーム(0階調)、第(n−1)フレーム(0階調)、第nフレーム(64階調)となる。この後、新たな画像フレーム(64階調)が入力されたとすると、この最新の画像フレームを基準とした輝度階調値の3つの遷移状態は、0→64→64となる。このとき、最新の画像フレームがあらためて第nフレームと定義されるので、輝度階調値が0→64→64と遷移するときの画像フレーム(相対フレーム番号)は、図2(B)に示したように、それぞれ第(n−2)フレーム(0階調)、第(n−1)フレーム(64階調)、第nフレーム(64階調)となる。
【0027】
液晶表示装置1は、さらに、供給された画像フレームの輝度階調値を検出する階調検出部20と、階調検出部20の後段に接続され、一部の画像フレームの輝度階調値をプレチルト用階調値またはオーバードライブ用階調値に置き換えて出力する階調制御部30とを備えている。
【0028】
階調検出部20には、第nフレームが供給されると共に、メモリ制御部10を介して、n−1フレームメモリ111に記憶された第(n−1)フレームとn−2フレームメモリ112に記憶された第(n−2)フレームとが供給されるようになっている。階調検出部20は、供給された第(n−2)フレーム〜第nフレームのそれぞれの輝度階調値を検出し、その検出結果に応じて、階調制御部30に制御信号S1を出力するようになっている。
【0029】
階調制御部30は、プレチルト用のルックアップテーブル(以下「プレチルトLUT31」という。)、オーバードライブ用のルックアップテーブル(以下「オーバードライブLUT32」という。)およびセレクタ33を備えている。
【0030】
プレチルトLUT31には、階調検出部20から第(n−1)フレームおよび第nフレームが供給されるようになっている。プレチルトLUT31は、供給された第(n−1)フレームおよび第nフレームに基づいて第(n−1)フレームのプレチルト用階調値を出力するプレチルト処理を行うようになっている。すなわち、ここで出力される第(n−1)フレームは、輝度階調値がプレチルト用階調値に置き換えられたものである。
【0031】
オーバードライブLUT32には、階調検出部20から第(n−2)フレームおよび第(n−1)フレームが供給されるようになっている。オーバードライブLUT32は、第(n−2)フレームおよび第(n−1)フレームに基づいて、第(n−1)フレームのオーバードライブ用階調値を出力するオーバードライブ処理を行うようになっている。すなわち、ここで出力される第(n−1)フレームは、輝度階調値がオーバードライブ用階調値に置き換えられたものである。
【0032】
なお、プレチルトLUT31およびオーバードライブLUT32の詳細については後述する。
【0033】
セレクタ33は、プレチルトLUT31およびオーバードライブLUT32の出力側に接続され、階調検出部20から出力された制御信号S1に基づいて、プレチルトLUT31およびオーバードライブLUT32のいずれか一方を選択するようにスイッチングを行うようになっている。これにより、セレクタ33からは、プレチルト処理が行われた第(n−1)フレームおよびオーバードライブ処理が行われた第(n−1)フレームが順に出力される。
【0034】
セレクタ33の出力側には、タイミング制御部40が接続され、さらにその出力側には、データドライバ41およびゲートドライバ42が接続されている。データドライバ41およびゲートドライバ42には液晶表示部43が接続されている。
【0035】
タイミング制御部40は、セレクタ33から供給された画像フレームのデータに基づいて液晶表示部43の表示動作を行わせるために、データドライバ41およびゲートドライバ42を制御信号S2、S3に基づいて制御するようになっている。液晶表示部43は、例えば垂直配向モードの液晶分子を備えており、データドライバ41およびゲートドライバ42の制御に基づいて、バックライト45から出射された光を変調するようになっている。ここで、タイミング制御部40、データドライバ41およびゲートドライバ42が、本発明の「表示制御手段」の一具体例に対応する。
【0036】
次に、プレチルトLUT31およびオーバードライブLUT32について詳述する。図3は、プレチルトLUT31およびオーバードライブLUT32の一例を表すものである。ここで、図3(A)がプレチルトLUT31の一例を表し、図3(B)がオーバードライブLUT32の一例を表す。図4は、比較例のプレチルトLUT50およびオーバードライブLUT51を表すものである。ここで、図4(A)が比較例のプレチルトLUT50を表し、図4(B)が比較例のオーバードライブLUT51を表す。ここでは、まず、図4に示した比較例のプレチルトLUT50およびオーバードライブLUT51について説明する。
【0037】
図4(A)に示した比較例のプレチルトLUT50は、第(n−1)フレームの輝度階調値(スタートレベル)および第nフレームの輝度階調値(到達レベル)に基づいて、第(n−1)フレーム用に置き換えられるべきプレチルト用階調値(置換階調値)を決定するために用いられる。図4(A)に示したように、第(n−1)フレーム用の置換階調値は、概ねスタートレベルと同じ値になっているが、スタートレベルが0階調であり、かつ到達レベルが224階調以上であるときに、スタートレベルよりも幾分大きい値となっている。
【0038】
また、図4(B)に示した比較例のオーバードライブLUT51は、第(n−2)フレームの輝度階調値(スタートレベル)および第(n−1)フレームの輝度階調値(到達レベル)に基づいて、第(n−1)フレーム用に置き換えられるべきオーバードライブ用階調値(置換階調値)を決定するために用いられる。図4(B)に示したように、あるスタートレベルに対して、到達レベルの増加に伴って置換階調値は0階調から次第に増加し、到達レベルがスタートレベルと同じ値になるときまでは、置換階調値は到達レベル以下になっている。例えば、スタートレベルが64階調であり、到達レベルが32階調であれば、オーバードライブ用階調値は12階調となり、到達レベル以下になる。一方、到達レベルがスタートレベルよりも大きいときには、置換階調値が到達レベルよりも大きくなっている。例えば、スタートレベルが64階調であり、かつ到達レベルが160階調であれば、第nフレームのオーバードライブ用階調値は224階調となり到達レベルよりも大きくなる。
【0039】
一方、図3(A)に示した本実施の形態のプレチルトLUT31は、階調検出部20で求められた第(n−1)フレームの輝度階調値(スタートレベル)および第nフレームの輝度階調値(到達レベル)に基づいて、第(n−1)フレーム用に置き換えられるべきプレチルト用階調値(置換階調値)を決定するために用いられる。但し、この図からわかるように、本実施の形態では、以下の点で、比較例(図4(A))とは異なる。すなわち、スタートレベルが0階調であり、かつ到達レベルが32〜224階調であるとき、およびスタートレベルが32階調であり、かつ到達レベルが64〜160階調であるときに、置換階調値は比較例で示したプレチルト用階調値と比べて大きくなっている。さらに、スタートレベルが0階調であり、かつ到達レベルが中輝度階調のうちの特に96〜160階調の範囲にある場合の置換階調値は、スタートレベルが0階調であり、かつ到達レベルが高輝度階調(192〜255階調)である場合の置換階調値よりも大きくなっている。なお、本実施の形態では、例えば、32階調程度未満を低輝度階調、32階調程度〜192階調程度を中輝度階調、192階調程度以上を高輝度階調として定義することができる。但し、これとは異なる定義にすることも可能である。
【0040】
ここで、低輝度から中輝度に遷移する際に置き換えられるべきプレチルト用階調値(置換階調値)が、本発明の「第1のプレチルト用階調値」の一具体例に対応する。また、低輝度から高輝度に遷移する際に置き換えられるべきプレチルト用階調値(置換階調値)が、本発明の「第2のプレチルト用階調値」の一具体例に対応する。
【0041】
また、図3(A)からわかるように、スタートレベルが低輝度階調であり、到達レベルが中輝度階調であるときのプレチルト用階調値(置換階調値)は、第(n−1)フレームの輝度階調値に相当する輝度と、第nフレームの輝度階調値に相当する輝度との差が1%以上となるような比較的大きな値に設定されている。特に、スタートレベルが0階調であり、到達レベルが32〜128階調であるときには、プレチルト用階調値(置換階調値)が、第(n−1)フレームと第nフレームとの輝度差の100%以上に相当する、かなり大きな値に設定されている。
【0042】
また、図3(B)に示した本実施の形態のオーバードライブLUT32は、階調検出部20で求められた第(n−2)フレームの輝度階調値(スタートレベル)および第(n−1)フレームの輝度階調値(到達レベル)に基づいて、第(n−1)フレーム用に置き換えられるべきオーバードライブ用階調値(置換階調値)を決定するために用いられる。この図からわかるように、スタートレベルが0階調であり、かつ到達レベルが32〜192階調である場合、ならびに、スタートレベルが32階調であり、かつ到達レベルが64〜160階調である場合(これらの輝度階調値の範囲をZという。)に、置換階調値は、比較例で示したオーバードライブ用輝度値と比べて小さくなっている。このため、図3(B)に示したオーバードライブLUT32を用いると、スタートレベルおよび到達レベルが上記の範囲Zに該当するときには、図4(B)に示した比較例のオーバードライブLUT51に基づいたオーバードライブ処理よりも弱いオーバードライブ処理が行われることになる。
【0043】
[液晶表示装置1の動作]
次に、本実施の形態の液晶表示装置1の動作について説明する。
図示しない外部回路から液晶表示装置1に順次供給された第(n−2)フレームおよび第(n−1)フレームは、メモリ制御部10に供給される。メモリ制御部10は、これらの第(n−2)フレームおよび第(n−1)フレームを、それぞれ、フレームメモリ11内のn−1フレームメモリ111およびn−2フレームメモリに順次記憶する。フレームメモリ11からは、メモリ制御部10の制御に応じて、n−1フレームメモリ111に記憶された第(n−1)フレームと、n−2フレームメモリ112に記憶された第(n−2)フレームとが読み出され出力される。第(n−1)フレームおよび第(n−2)フレームは、メモリ制御部10を介して、階調検出部20に入力される。これに同期して階調検出部20には、第nフレームも入力される。
【0044】
階調検出部20は、供給された第nフレーム、第(n−1)フレームおよび第(n−2)フレームのそれぞれの輝度階調値を検出すると共に、検出された輝度階調値の遷移状態に応じて、セレクタ33の切り換えを制御するための制御信号S1を出力する。
さらに、第nフレームおよび第(n−1)フレームは、プレチルトLUT31へ供給され、第(n−1)フレームおよび第(n−2)フレームは、オーバードライブLUT32に供給される。プレチルトLUT31は、第(n−1)フレームの輝度階調値をテーブル値であるプレチルト用階調値(置換階調値)に置き換えて出力する。オーバードライブLUT32は、第(n−1)フレームの輝度階調値をテーブル値であるオーバードライブ用階調値(置換階調値)に置き換えて出力する。なお、プレチルト処理およびオーバードライブ処理の詳細については後述する。
【0045】
セレクタ33は、出力がプレチルト処理されたものかオーバードライブ処理されたものかを制御信号S1に基づいてプレチルトLUT31およびオーバードライブLUT32のどちらかを選択する。
【0046】
タイミング制御部40は、入力された第(n−1)フレームに基づいて液晶表示部43に画像を表示させるために、データドライバ41およびゲートドライバ42を制御する。これにより、バックライト45から出射された光が液晶表示部43により変調され、第(n−1)フレームの画像が表示される。
【0047】
[プレチルト処理およびオーバードライブ処理の詳細]
次に、プレチルト処理およびオーバードライブ処理について詳細に説明する。
【0048】
プレチルト処理およびオーバードライブ処理は、以下の条件に従って行われる。説明の便宜上、画像フレームの輝度階調値をY(A)とする。ここで、Rが相対フレーム番号であり、(A)が図5に示した絶対フレーム番号である。例えば、Yn−2(−2)は、相対フレーム番号Rがn−2であり、絶対フレーム番号Aが−2の画像フレームの輝度階調値を示している。
(1)階調検出部20において、2フレーム以上連続した画像フレームが入力された場合、つまりYn−2(−2)=Yn−1(−1)であった場合、プレチルトLUT31が選択される。
(2)階調検出部20において、上記以外、つまりYn−2(−1)≠Yn−1(0)であった場合、オーバードライブLUT32が選択される。
上記が連続して行われるため、下記のような遷移パターンがあり、プレチルト処理およびオーバードライブ処理の組み合わせが発生する。
【0049】
[遷移パターン1]
まず、プレチルト処理およびオーバードライブ処理が行われる場合について説明する。図5は、プレチルト処理およびオーバードライブ処理の両方を行った場合における、入力階調値(縦軸)とフレーム期間(絶対フレーム番号)(横軸)との関係を表すものである。図6は、そのときの実輝度(視認輝度)(縦軸)とフレーム期間(絶対フレーム番号)(横軸)との関係を表すものである。ここで、図6における輝度(縦軸)は、64階調に相当する表示輝度を100%とする相対輝度を表している。
【0050】
この輝度階調値変化の具体例として、0階調(第(n−2)フレーム)→0階調(第(n−1)フレーム)→64階調(第nフレーム)という遷移パターンについて説明する。この場合には、方位角ブレおよびゆり戻しを軽減しつつ輝度の立ち上がりを速くするために、プレチルト処理およびオーバードライブ処理の両方を行う。
【0051】
プレチルトLUT31は、第(n−1)フレームおよび第nフレームが供給されると、第(n−1)フレームおよび第nフレームの各輝度階調値に基づいて、第(n−1)フレームの輝度階調値をプレチルト用階調値に置き換え、これを置換階調値として出力する。プレチルト用階調値は、第(n−1)フレームの輝度階調値に相当する輝度と、第nフレームの輝度階調値に相当する輝度との差の例えば1%以上となるような値に設定されている。
【0052】
具体的な一例として、輝度階調値が0階調(第(n−2)フレーム)→0階調(第(n−1)フレーム)→64階調(第nフレーム)の順に遷移する場合(図2(A)の例を参照)を考える。この場合、第(n−2)フレームと第(n−1)フレームの輝度階調値がともに0階調で互いに等しいので、図3(A)に示したプレチルトLUTが選択されて参照される。図3(A)に示したように、Yn−1=0、Y=64なので、第(n−1)フレームの輝度階調値(0階調)をプレチルト用階調値(118階調)に置き換えて出力する処理が行われる。
【0053】
一方、新たな画像フレームが液晶表示装置1に入力されると、プレチルトLUT31に入力された第(n−1)フレーム(0階調)および第nフレーム(64階調)は、最新のフレーム(第nフレーム)を基準としてみた場合に、それぞれ第(n−2)フレーム(0階調)および第(n−1)フレーム(64階調)となる。この場合、第(n−2)フレームと第(n−1)フレームとの輝度階調値が互いに異なっているので、オーバードライブLUT32が選択されて参照される。オーバードライブLUT32は、第(n−2)フレームおよび第(n−1)フレームの輝度階調値が供給されると、第(n−2)フレーム(0階調)および第(n−1)フレーム(64階調)の各輝度階調値に基づいて、第(n−1)フレームの輝度階調値をオーバードライブ用階調値(166階調)に置き換えて出力する。
【0054】
入力階調が上記の一具体例のように0階調→0階調→64階調の順に遷移するときは、その出力階調が図5において三角(▲)で示したように、絶対フレーム番号A=−1のときにプレチルト処理Pが行われ、A=0のときにオーバードライブ処理OD1が行われるようになる。そして、上記具体例のときの実輝度の変化は、図6の実線で示したようになる。ここで、A=0のときに必要とされる輝度αは、従来技術(比較例)で示した、プレチルト処理を行わずに1つのフレームに対するオーバードライブ処理のみによって得られる到達輝度(ピーク輝度)とほぼ等しい。
【0055】
オーバードライブ処理のみを行う比較例の場合には、1つのフレームに対するオーバードライブ処理のみによって64階調に相当する表示輝度に到達させるために、図3(B)に示したオーバードライブLUT32よりも強いオーバードライブ処理を行うことができるルックアップテーブル(例えば、図4(B))を用いている。つまり、比較例のオーバードライブLUT51を参照することにより得られるオーバードライブ用仮想階調値は、本実施の形態のオーバードライブ用階調値よりも大きな値である。具体的には、輝度階調値が0階調→0階調→64階調の順に遷移する際に、入力階調が図5において四角(◆)で示した置換階調値へと置き換えられ、A=0のときにオーバードライブ処理OD2が行われる。このときの輝度は、図6に破線で示したようになり、ゆり戻しが大きい。
【0056】
一方、本実施の形態では、プレチルト処理を、第(n−1)フレームと第nフレームとにおける輝度差の1%以上となるような電圧を印加することにより行っているので、図6からわかるように、第nフレーム(A=0)が始まるときには矢印Aで示したように、輝度がわずかに上昇している。また、図6からわかるように、プレチルト処理に続いてオーバードライブ処理を行うことにより、矢印Bで示したように、A=0のときに所望の64階調に相当する表示輝度に到達している。また、第(n−1)フレーム(A=−1)と第nフレーム(A=0)とにおける輝度差の1%以上となるような階調を印加するプレチルト処理と、オーバードライブ処理とを併用して行うことにより、印加エネルギーを2つのフレームにわたって分散させることができ、矢印Cで示したようにゆり戻しが抑制される。
【0057】
[遷移パターン2]
次に、オーバードライブ処理のみが行われる場合について説明する。
図7は、入力される画像フレームが、高輝度階調→低輝度階調→中輝度階調の順に遷移するときの輝度とフレームとの関係を表すものである。ここで、縦軸の実輝度は、255階調に相当する表示輝度を100%とする相対輝度を表している。
【0058】
この輝度階調値変化の具体例として、255階調(=Y(−2))→0階調(=Y(−1))→64階調(=Y(0))という遷移パターンを挙げて説明する。この場合、255階調から0階調に遷移する際に、理想応答は図7に一点鎖線で示したようになるが、実際の応答は実線で示したように0階調になっていない。このときに、図4(B)に示した比較例のオーバードライブLUT51を参照することにより通常(従来技術(比較例))の強いオーバードライブ処理を行うと、図7に破線で示したように輝度が高くなってしまう過補償の現象が生ずる。このため、本実施の形態では、階調検出部20が、0階調から64階調に遷移する際に、輝度の立ち上がりを早める一方で到達輝度(ピーク輝度)が高くなりすぎないように、通常よりも弱くオーバードライブ処理を行う。
【0059】
具体的には、オーバードライブLUT32が、第(n−2)フレームの輝度階調値(0階調)と第(n−1)フレームの輝度階調値(64階調)とに基づいて、第(n−1)フレームの輝度階調値をテーブル値(オーバードライブ用階調値=166階調)に置き換え、これを出力する。
【0060】
なお、この遷移パターン2の場合のように、輝度階調値が高→低→中の順に遷移する場合には、輝度階調値が255階調から0階調に遷移して、連続した2つの画像フレームの輝度階調値が互いに等しくないので、プレチルト処理は行われない。
【0061】
このように、この遷移パターン2の場合には、プレチルト処理を行わず、弱いオーバードライブ処理のみを行うようにしているので、図7に矢印Dで示したように、比較例(破線)の場合に比べてピーク輝度が低くなり、オーバードライブの過補償が軽減される。
【0062】
以上のように、本実施の形態によれば、3つの連続する画像フレームの輝度階調が、低→低→中の順に遷移するときに、A=−1のフレームにプレチルト処理を行うことにより、A=0のフレームへの遷移に先立って液晶分子をわずかに配向させて方位角を揃えることができるので、方位角ブレを抑制することができる。また、A=0のフレームにおいて弱めのオーバードライブ処理を行うことにより、A=0のフレームにおける輝度の立ち上がりを早めることができる。しかも、A=0のフレームの視認輝度に影響を与えない範囲内で、従来用いられていたと思われる程度よりも大きなプレチルト電圧を印加するようにしているので、方位角ブレの抑制をより効果的に行うことができると共に、A=0のフレームにおいて印加するオーバードライブ電圧の大きさを、より小さくしても、同等の到達輝度を得ることができる。すなわち、中輝度階調のフレームを表示するためのエネルギーのうちのかなりの部分を直前の低輝度階調のフレームにおいて予め印加するようにしているので、ゆり戻しを軽減することができる。これにより、動画特性を向上することができる。
【0063】
さらに、フレームレートが120fps以上の高速の場合には、プレチルト処理が行われたことによる中輝度階調の直前に位置する低輝度階調のフレーム(A=−1)の輝度変化が視認され難くなるので、画質を維持することができる。
【0064】
また、3つの連続する画像フレームの輝度階調が、高→低→中の順に遷移する場合には、中輝度階調となるフレームに適用されるオーバードライブ処理の程度を、従来のオーバードライブ処理に比べて弱めているので、輝度ピークを抑えることができる。すなわち、オーバードライブの過補償を軽減して、動画特性を向上することができる。
【0065】
<第2の実施の形態>
次に、他の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第1の実施の形態と同じ構成要素には、同一番号を付してその詳細な説明を適宜省略または簡略化する。
【0066】
本実施の形態に係る液晶表示装置1は、画像フレームの輝度階調値が高輝度階調、低輝度階調および中輝度階調の順に遷移する場合に、高輝度階調の画像フレームの輝度階調値を、それよりも低い値(すなわち、高輝度階調の画像フレームと低輝度階調の画像フレームとの輝度階調値の間の値)に置き換えるようにしたものである。このような液晶表示装置1は、図1に示した液晶表示装置1と同様の構成により実現することができる。この場合には、プレチルトLUTとして、高輝度階調の画像フレーム(第(n−2)フレーム)の輝度階調値を、それよりも小さい値(高輝度階調の画像フレームと低輝度階調の画像フレームとの輝度階調値の間の値)に置き換えるようなルックアップテーブルを用いるようにすればよい。
【0067】
本実施の形態において、例えば第(n−2)フレーム、第(n−1)フレームおよび第nフレームが、それぞれ255階調、0階調および64階調である場合を想定する。この想定の場合には、プレチルトLUTは、第(n−2)フレームの輝度階調値(255階調)を、255階調(第(n−2)フレーム)と0階調(第(n−1)フレーム)との間の値である、例えば160階調に置き換える処理を行う。
【0068】
これにより、輝度階調値が高輝度階調から低輝度階調に確実に遷移する(高輝度から低輝度への変化がフレーム切り換えタイミングに追従する)ことができ、オーバードライブ処理に伴う過補償の発生をより効果的に抑制可能となる。
【0069】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、黒表示と白表示との階調差が256階調の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、階調差が1024階調や4096階調、16384階調等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る液晶表示装置の概略構成を表すブロック図である。
【図2】画像フレームの順番を説明する図である。
【図3】プレチルトLUTおよびオーバードライブLUTの一例を表す特性図である。
【図4】比較例のプレチルトLUTおよび比較例のオーバードライブLUTの特性図である。
【図5】プレチルト処理とオーバードライブ処理とをしたとき、およびプレチルト処理をしたときにおける、出力階調とフレームとの関係を表す特性図である。
【図6】プレチルト処理およびオーバードライブ処理をしたときの、輝度とフレームとの関係を表す特性図である。
【図7】輝度階調値が高輝度階調、低輝度階調および中輝度階調の順に遷移するときの輝度とフレームとの関係を表す特性図である。
【図8】従来の液晶素子における入力階調および輝度とフレーム期間との関係を表す特性図である。
【図9】液晶のプレチルト処理の有無による応答特性の違いを説明するためのもので、入力階調および輝度とフレーム期間との関係を表す特性図である。
【図10】オーバードライブ処理の有無による応答特性の違いを説明するためのもので、入力階調および輝度とフレームとの関係を表す特性図である。
【図11】オーバードライブの過補償を説明するためのフレームと輝度との関係を表す特性図である。
【符号の説明】
【0071】
1…液晶表示装置、11…フレームメモリ、20…階調検出部、30…階調制御部、31…プレチルトLUT、32…オーバードライブLUT、40…タイミング制御部、41…データドライバ、42…ゲートドライバ、43…液晶表示部、44…バックライト駆動部、45…バックライト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示手段と、
動画像を構成する時間的に連続した画像フレームの輝度階調値を検出する階調検出手段と、
前記階調検出手段によって、2フレーム以上連続した低輝度階調の画像フレームから中輝度階調への遷移が検出されたときに、前記中輝度階調の画像フレームの輝度階調値を、それよりも高い輝度階調のオーバードライブ用階調値に置き換えると共に、前記中輝度階調の画像フレームの直前に位置する低輝度階調の画像フレームの輝度階調値を、それよりも高い輝度階調の第1のプレチルト用階調値に置き換える階調制御手段と、
前記階調制御手段による制御が行われた後の輝度階調値に基づいて、前記液晶表示手段の表示動作を制御する表示制御手段と、
を備え、
前記階調制御手段は、前記プレチルト用階調値および前記オーバードライブ用階調値の適用によって得られる実輝度が、前記オーバードライブ用階調値よりも大きいオーバードライブ用仮想階調値を用いたオーバードライブ処理のみを行うことにより得られる到達輝度と等しくなるように、前記プレチルト用階調値および前記オーバードライブ用階調値を設定するように構成されている
液晶表示装置。
【請求項2】
前記階調制御手段は、2フレーム以上連続した低輝度階調の画像フレームから高輝度階調への遷移が検出された場合には、前記高輝度階調の画像フレームの直前に位置する低輝度階調の画像フレームの階調輝度値を、それよりも高く、且つ、前記第1のプレチルト用階調値よりも低い輝度階調を有する第2のプレチルト用階調値に置き換える処理を行う
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1のプレチルト用階調値は、前記中輝度階調の画像フレームと、その直前の前記低輝度階調の画像フレームとの輝度差の1%以上に相当する値である
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第1のプレチルト用階調値は、前記中輝度階調の画像フレームと、その直前の前記低輝度階調の画像フレームとの輝度差以上に相当する値である
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記階調制御手段は、高輝度階調の画像フレームから低輝度階調の画像フレームへの輝度階調値の遷移が検出された後、さらに中輝度階調の画像フレームへの遷移が検出された場合には、前記中輝度階調の画像フレームの階調値を前記オーバードライブ用階調値に置き換える処理のみを行う
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記階調制御手段は、さらに、前記高輝度階調の画像フレームの輝度階調値を、前記高輝度階調の画像フレームと前記低輝度階調の画像フレームとの間の輝度階調値に置き換える処理を行う
請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記階調制御手段は、前記第1のプレチルト用階調値への置き換え処理と前記オーバードライブ用階調値への置き換え処理とを、それぞれに対応して設けられたルックアップテーブルを用いることにより行う
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記動画像のフレームレートは、120fps以上である
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶表示手段は、垂直配向モードの液晶を備えた
請求項1に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−113240(P2010−113240A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287015(P2008−287015)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】