説明

液晶装置、および電子機器

【課題】画素領域の角部においては、帯状電極部つまり画素電極からの距離が遠くなるので、画素電極と共通電極間において印加される横電界の強度が低くなる。この結果、画素領域の角部において、液晶分子の回転が不足し、液晶分子が本来の配向方向に到達しないことが生じるため、所定の輝度が得られず、表示品質が低下してしまう。
【解決手段】画素電極11の帯状電極部のうち、画素Gの領域端の一辺と対向する帯状電極部の外形線11ahおよび外形線11bhの傾きを、外形線11aおよび外形線11bの傾き角度であるα度よりも小さいβ度およびγ度とする。角部Rkにおける画素電極11と画素Gの領域端の一辺までの距離が近くなるため、角部Rkにおいて生ずる横電界の強度低下を抑制することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、およびこの液晶装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
対向する一対のガラス基板で液晶層を挟み、一方のガラス基板面において、画素ごとに形成した画素電極と共通電極との間に所定の電圧を印加して、ガラス基板の面内方向に沿った横電界を発生させ、液晶層における液晶分子の配向方向を回転制御して画像等を表示するFFS(Fringe-Field Switching)方式の液晶装置(以降「FFSパネル」と呼ぶ)がある。FFSパネルは、液晶分子が基板に対して平行な方向に回転するため、斜めから見たとき液晶分子の偏光方向については回転しないことから、コントラストの低下が少なく視野角の広い表示品質の良い液晶表示装置として、広く用いられるようになっている。
【0003】
加えて近年、さらにFFSパネルの表示品質の向上に関する技術が開示されている。その一つとして、例えば、特許文献1において、画素電極に形成したスリット状の開口の一端を開放して櫛歯状の帯状電極部とすることによって、FFSパネルで生じるリバースツイストを抑制し、画素の表示輝度を高くする技術が開示されている。
【0004】
このように、種々の開示技術によって表示品質の向上が図られるFFSパネルは、表示品質の向上とともに、例えば、プロジェクターのライトバルブ(光変調素子)として利用することも行われるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−327997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プロジェクターでは、光学系部品(例えば偏光ビームスプリッター)の形成を容易にしたり、光学系の設計を容易にしたりするために、通常ライトバルブの外形に対して水平もしくは垂直な偏光光(例えばP偏光やS偏光)が用いられる。また、ライトバルブには外形に沿った方向に遮光層によって区画され、略矩形の開口領域を有する画素が形成される。従って、プロジェクターは、この画素の領域端の一辺に沿った方向に偏光方向を有する光をライトバルブに入射し、入射した光を液晶の配向方向を制御することによって変調して、画素ごとに透過率を制御する。こうして各画素は所定の輝度に制御されることによって画像を表示するように構成されている。
【0007】
このために、特許文献1に開示された画素電極が櫛歯状の帯状電極部を有するFFSパネルをプロジェクターのライトバルブとして用いる場合は、液晶の初期的な配向方向を画素の領域端の一辺に沿う方向とする必要がある。従って、FFSパネルでは、液晶分子がリバースツイストしないよう一定方向に回転させるために、帯状電極部の長手方向を、画素の領域端の一辺に対して傾けて形成する必要が生ずる。
【0008】
しかしながら、このようなFFSパネルにおいては帯状電極部を傾けることから、画素の領域端において、特に帯状電極部つまり画素電極からの距離が最も遠くなる角部では、画素電極と共通電極との間で印加される電界(横電界)の強度が低下する。この結果、画素の角部において、液晶分子に印加される電界強度が低下して回転が不足し、液晶分子が本来の配向方向に到達しないことが生じる。このため、所定の輝度が得られず、表示品質が低下してしまうという課題が生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]対向する一対の基板と、前記一対の基板に挟持された液晶層と、前記一対の基板の一方の基板に設けられ、互いに間隔を有して配列され、少なくとも一端で連結された複数の帯状電極部を有する第1の電極と、前記一対の基板の一方の基板に設けられ、前記第1の電極との間で電界を生じさせる第2の電極と、が設けられ、前記第1の電極と前記第2の電極とを含み、複数の略矩形の画素の領域を構成する液晶装置であって、前記第1の電極の前記複数の帯状電極部は、該帯状電極部の長手方向の外形線が隣接する前記画素の領域端の一辺に対してそれぞれ傾いた長手方向の外形線を有しており、前記画素の領域端の一辺に隣接した帯状電極部の外形線は、前記画素の領域端の一辺に対して傾いているとともに、当該画素の領域内における他の帯状電極部の長手方向の外形線よりも、前記画素の領域端の一辺に対する傾きが小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、第1の電極の外形線が画素の領域端の一辺に近づくために、画素の領域端や角部にも適切に横電界を印加することができる。この結果、画素の領域端や角部において液晶分子を本来の配向方向に到達するべく回転させることができるので、画素の明るさを改善することができ、表示品質の低下を抑制することができる。
【0012】
[適用例2]上記液晶装置であって、前記画素の領域端の一辺と対向する前記帯状電極部の長手方向の外形線は、前記外形線が前記画素の領域端の一辺から離れる方向における所定の位置から、前記傾きが小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0013】
画素の領域端では、液晶分子の回転不足に起因して生ずる輝度低下の範囲が特定される場合がある。そこで、このような場合、特定される領域に応じた所定の位置から帯状電極部の長手方向の外形線を画素の領域端の一辺の方向に近づけるようにすれば、画素の領域端や角部において液晶分子を本来の配向方向に到達するべく回転させることができるので、画素の明るさを改善することができ、表示品質の低下を抑制することができる。
【0014】
[適用例3]上記液晶装置であって、前記所定の位置は、前記画素の領域端の一辺の略2等分線上の位置であることを特徴とする。
【0015】
画素の領域端において、輝度低下の範囲が、実際に凡そ画素領域の半分の領域に特定される場合がある。このような場合、画素の領域端の一辺の略半分の位置から帯状電極部の長手方向の外形線を画素の領域端の一辺の方向に近づけるようにすれば、画素の領域端や角部において、液晶分子を本来の配向方向に到達するべく回転させ、画素の明るさを改善することができる。
【0016】
[適用例4]上記液晶装置であって、前記画素の領域端の一辺と対向する前記帯状電極部の長手方向の外形線は、当該外形線が前記画素の領域端の一辺から離れる方向において、前記傾きが漸減するように形成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、画素の領域端の一辺に沿う方向において、画素領域の角部に近くなるほど、帯状電極部の長手方向の外形線を画素の領域端の一辺の方向に除々に近づける。従って、帯状電極部の電極幅の増加を抑制しつつ、特に画素領域の角部における液晶分子を本来の配向方向に到達するように回転させるので、画素の全体の明るさを改善することができる。
【0018】
[適用例5]上記液晶装置であって、前記第2の電極のうち互いに隣り合う2つの前記帯状電極部の長手方向の外形線の傾きがそれぞれ異なるように形成され、前記隣り合う2つの帯状電極部において対向する前記長手方向の外形線は、少なくとも一方の前記帯状電極部の前記傾きが小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0019】
液晶装置において、視野角特性を改善するために、長手方向の傾きが互いに異なる帯状電極部を形成することによって、1つの画素において2つ(複数)の異なる配向状態を作り出すマルチドメインが構成される場合がある。このような場合、この構成によれば、互いに傾きが異なって隣り合う帯状電極部間において生ずる隙間を狭くすることができる。従って、長手方向が互いに異なる帯状電極部間において、液晶分子を本来の配向方向に到達するように回転させるので、画素の全体の明るさを改善することができる。
【0020】
[適用例6]上記液晶装置であって、前記少なくとも一方の帯状電極部の長手方向の外形線は、隣り合う他方の前記帯状電極部の長手方向の外形線から離れる方向における所定の位置から、前記傾きが小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0021】
長手方向が互いに異なる帯状電極部間の画素領域において、液晶の回転不足に起因して生ずる輝度低下の範囲が特定される場合がある。このような場合、特定される領域に応じた所定の位置から、一方の帯状電極部の長手方向の外形線を、他方の帯状電極部の長手方向の外形線に近づけるようにすれば、帯状電極部間の画素領域において液晶分子を本来の配向方向に到達するように回転させるので、画素の全体の明るさを改善することができる。
【0022】
[適用例7]上記液晶装置であって、前記所定の位置は、前記画素の領域端の一辺の略2等分線上の位置であることを特徴とする。
【0023】
長手方向が互いに異なる帯状電極部間の画素領域では、実際に凡そ画素領域の半分以内の領域において輝度の低下が生じる場合がある。このような場合、画素の領域端の一辺の略半分の位置から一方の帯状電極部の長手方向の外形線を他方の帯状電極部の長手方向の外形線に近づけるようにすれば、長手方向が互いに異なる帯状電極部間の画素領域において液晶分子を本来の配向方向に到達するように回転させることができる。この結果、画素の明るさを改善することができる。
【0024】
[適用例8]上記液晶装置であって、前記少なくとも一方の帯状電極部の長手方向の外形線は、当該外形線が対向する前記帯状電極部の長手方向の外形線から離れる方向において、前記傾きが漸減するように形成されていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、画素の領域端の一辺に沿う方向において、長手方向が互いに異なる帯状電極部の対向する外形線間の距離が遠くなるほど、一方の帯状電極部の長手方向の外形線を他方の帯状電極部の長手方向の外形線に除々に近づける。従って、帯状電極部の電極幅の増加を抑制しつつ、長手方向が互いに異なる帯状電極部の対向する外形線間の領域における液晶分子を本来の配向方向に到達するように回転させるので、画素の全体の明るさを改善することができる。
【0026】
[適用例9]上記液晶装置を備えた電子機器。
【0027】
上記液晶装置は、明るさの減少が少ない表示品質の低下を抑制した液晶装置であることから、この液晶装置を搭載した電子機器であれば、表示品質の良い電子機器を提供することができる。特に、この液晶装置を透過光の光変調素子として備えた電子機器としてのプロジェクターは、明るい画像を投射できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、以降の説明において用いる図面は、説明のために誇張して図示している場合もあり、必ずしも実際の大きさや長さを示すものでないことは言うまでもない。
【0029】
図1は、本発明を具現化した一実施形態となる液晶装置100を光変調素子(ライトバルブ)として備えた電子機器としてのプロジェクター1の概略構成を示した構成図である。このプロジェクター1は、光源101から照射された照射光を、偏光ビームスプリッター102によって偏光方向が揃えられた光にする。そして、この偏光方向が揃えられた照射光を液晶装置100に設けられた各画素を透過する際に光変調する。そして画素毎に光変調した照射光を所定の距離を隔てて設置されたスクリーン(不図示)上に投射レンズ103によって投射する。このようにして、液晶装置100に表示された画像が投射される。もとより、プロジェクター1は、液晶装置100を複数備え、複数の液晶装置100に応じた光学系(ミラーやクロスプリズムなど)を形成したものであってもよい。
【0030】
本実施形態では、偏光ビームスプリッター102によって揃えられた照射光の偏光方向を、プロジェクター1の本体の厚さ方向(図面上下方向)となるY軸方向とする。ここでは説明を省略するが、偏光ビームスプリッター102の製造上の理由や、プロジェクター1において構成される光学系の設計上の理由などから、表示画面の縦方向または横方向を偏光方向と一致させることが多い。そこで、本実施形態では偏光方向をY軸方向とする。もとより、Y軸方向と直交するX軸方向としてもよい。
【0031】
また、液晶装置100に画像が表示されない状態、つまり液晶装置100における各画素において、後述する画素電極と共通電極間に電圧が印加されない初期状態では、スクリーンに何も投射されない黒の状態とすることが使用上好ましい。従って、本実施形態のプロジェクター1では、液晶装置100はノーマリーブラック表示を行うものとする。もとより、画素電極と共通電極間に電圧が印加されない初期状態で白の状態となるノーマリーホワイト表示を行うものとしても差し支えない。
【0032】
次に、液晶装置100について説明する。図2は、画像を表示する複数の画素が設けられた液晶装置100の構成を模式的に示した説明図である。液晶装置100は、基板10と基板30とが、図示しない液晶層(後述する)を封止状態で挟んで重ね合わされた構造を有している。
【0033】
基板10は、その外周部分に、走査駆動回路120とデータ駆動回路110、および共通端子130とが、ガラスや石英あるいは樹脂などの透明基板上(図面表面側)に形成されたものである。走査駆動回路120からはX軸方向に走査線121が、データ駆動回路110からはY軸方向にデータ線111が、図2に示したようにそれぞれ出力配線されている。また、走査線121とデータ線111の交点付近には、各画素Gに対応して図示しない薄膜トランジスター(後述する)が形成されている。各薄膜トランジスターは、走査線121によって供給される電圧によってオン・オフが制御され、オン時において、データ線111によって供給される電圧が、第1の電極としての画素電極(後述する)に印加されるように構成されている。
【0034】
共通端子130は、これに接続された共通配線131によって、各画素Gに形成された第2の電極としての共通電極(後述する)に対して共通な電圧(例えば接地電位)を供給する。従って、各画素Gにおいて、薄膜トランジスターのオンによってデータ線111から供給される電圧と、共通配線131によって供給される電圧(つまり接地電位の電圧)との差分電圧が、画素Gに対応する液晶層に印加されるように構成されている。
【0035】
基板30は、画素Gに対応する領域部分を開口領域(光透過領域)とし、その他の領域部分が遮光領域となるように金属膜などの所定の遮光層が、ガラスや石英または樹脂などの透明基板上(図面裏側)に形成されたものである。従って、画素間においては、Y軸方向およびX軸方向にはそれぞれ遮光層32が形成される。そして、基板30を基板10に重ね合わせたとき、遮光層32はデータ線111、走査線121、共通配線131および薄膜トランジスターと重なるように構成されている。
【0036】
次に、本実施形態における液晶装置100において、各画素に形成された画素電極と共通電極の様子を、図3および図4を用いて説明する。図3は、図2において液晶装置100の左上部分に例示した4つの画素Gについて、各画素Gに形成された配線の様子を示した模式平面図であり、液晶装置100を、基板30側から、基板30を透視状態で見た状態で示している。なお、本実施形態の液晶装置100が備える画素電極の形状(後述の第1実施例および第2実施例)が奏する効果に対する理解を容易にするために、図3における画素電極の形状は、変更前すなわち従来の画素電極の形状で示している。また、図4は、液晶装置100の部分断面を示す模式図である。
【0037】
基板10には、図3に示したように、データ線111がY軸方向に、走査線121がX軸方向に、それぞれ形成されている。そして、この両配線の交点付近には、薄膜トランジスター(以降、単に「トランジスター」)20が形成されている。すなわち、データ線111の配線が延伸して形成されたソース電極20sと、チャネル領域が形成された半導体層20aと、走査線121が兼ねるゲート電極20gと、ドレイン電極20dと、からなるトランジスター20が形成されている。そして、ドレイン電極20dは、コンタクトホールCH1を介して、画素電極11と電気的に接続されている。従って、走査線121すなわちゲート電極20gに供給される電圧によって、トランジスター20がオンすると、データ線111に供給された電圧が、ドレイン電極20dを介して画素電極11に印加される。
【0038】
本実施形態では、画素電極11は、電極の長手方向の外形線がY軸方向に対して、リバースツイストを抑制するためにα度(例えば10度〜20度)時計方向(図面右側への回転方向)に傾き、一端が開放状態で、他端が連結されて電気的に接続された櫛歯状を呈する3つの帯状電極部で形成されているものとする。もとより、電極の長手方向の外形線がY軸方向に対して、α度(例えば10度〜20度)反時計方向(図面左側への回転方向)に傾いて形成されるものとしてもよい。また、帯状電極部は少なくとも2つ形成されていればよい。
【0039】
また、基板10には、共通配線131がX軸方向に形成されている。そして、この共通配線131とコンタクトホールCH2を介して電気的に接続された共通電極13が、画素Gの領域を含む大きさのベタ電極で形成されている。従って、画素Gの領域において、画素電極11と共通電極13とは、平面的に重なるように形成されている。
【0040】
このように形成された画素電極11と共通電極13との間に印加される電圧によって、液晶層40に対して基板10に沿う方向の横電界が発生し、前述したようにFFS方式による液晶分子の配向制御が行われる。なお、画素電極11および共通電極13は、導電性を有する透光性の材料(例えばITO)で形成されている。もとより、画素の透過光の光量減少が実用上影響がない場合は、画素電極11は金属材料(アルミニウムなど)で形成されることとしてもよい。
【0041】
次に、液晶装置100の断面構成について、図4を用いて説明する。図4は、図3におけるB−B断面を示した模式図である。図示するように、液晶装置100は、基板10と基板30とによって液晶層40を挟持した構成を有している。そして基板30の液晶層40と反対側には偏光板44が、また基板10の液晶層40と反対側には偏光板45が、それぞれ所定の偏光軸方向を呈するように貼り付けられている。なお、本実施形態では、液晶層40は、分極方向が配向方向と同方向であるポジ型の液晶分子によって形成されているものとする。もとより、分極方向が配向方向と直交しているネガ型の液晶分子によって形成されていることとしてもよい。
【0042】
基板30は、平板としての基材31に対して、液晶層40側の基板面に、遮光層32、配向膜39が順次形成されたものである。遮光層32は金属膜(例えばクロム)や樹脂からなる。配向膜39は、例えばポリイミド樹脂からなり、遮光層32および画素Gの領域を覆うように形成されている。なお、基板30において、配向膜39と遮光層32との間に、配向膜39を平坦化するための平坦化層やオーバーコート層が形成されることとしてもよい。また、基板30において、基材31と配向膜39との間に、少なくとも画素Gの領域に相当する光透過領域に、所定の色を透過するカラーフィルター層が形成されることとしてもよい。
【0043】
基板10は、平板としての基材14に対して、液晶層40側の基板面に、走査線121(ゲート電極20g)と共通配線131、ゲート絶縁層15、半導体層20a、データ線111(ソース電極20s)とドレイン電極20d、層間絶縁層16、平坦化層17、共通電極13、絶縁層18、画素電極11、配向膜19が順次形成されたものである。
【0044】
走査線121(ゲート電極20g)、共通配線131、データ線111(ソース電極20s)、およびドレイン電極20dは、金属材料(例えばアルミニウム)によって形成されている。半導体層20aは、アモルファスシリコンやポリシリコン等の半導体が用いられる。また、ゲート絶縁層15は例えば酸化シリコンが、層間絶縁層16は例えば酸化シリコンや窒化シリコンが、平坦化層17は樹脂材料が、絶縁層18は例えば酸化シリコンや窒化シリコンが、それぞれ用いられ、いずれも透光性を有する層として形成される。配向膜19は、例えばポリイミド樹脂からなり、画素電極11の液晶層40に接する側であって、少なくとも画素電極11を覆うように形成されている。
【0045】
さて、本実施形態では、液晶装置100は前述するように、ノーマリーブラック表示を行うように構成されている。また、液晶層がポジ型の液晶分子で形成され、基板30側から液晶装置100に入射する照射光の偏光方向がY軸方向であることから、液晶分子の初期的な配向方向がY軸方向となるように、配向膜19および配向膜39が配向処理されている。すなわち、配向膜39および配向膜19の配向処理方向は、ともにY軸方向であって互いにプレチルト角が反対向きになるように施されている。
【0046】
また、偏光板44はY軸方向に透過軸を呈し、偏光板45はX軸方向に透過軸を呈するクロスニコル配置となるように貼り付けられている。もとより、基板30に入射する照射光が、ほぼY軸方向のみに振動する偏光光である場合は、照射光の入射側となる偏光板44は無くても差し支えない。
【0047】
次に、このように構成された液晶装置100において行われる液晶分子の回転動作について、図5を用いて説明する。図5は、一つの画素Gにおいて横電界に応じて回転する液晶分子EBを示す模式図であり、液晶分子EBについて、初期的な配向状態を実線で、横電界による回転状態を破線でそれぞれ示している。
【0048】
図5に示したように、画素電極11に電圧が印加されない初期状態では、配向膜19および配向膜39に施された配向処理によって、液晶分子EBはY軸方向に配向する。そして、トランジスター20がオンして、データ線111から供給される電圧が画素電極11に印加されることにより、共通電極13との間で横電界を発生させると、電界方向は、画素電極11を構成する帯状電極部の長手方向の外形線に対して直交する方向、つまりX軸方向に対して時計方向にα度回転した方向に発生する。この結果、液晶分子EBは、図中破線で示したように、総て回転角が小さい方向つまり反時計方向に一様に安定して回転することになりリバースツイストの発生が抑制される。こうして、液晶分子EBの回転角は画素電極11に印加される電圧によって画素毎に制御される。こうして、照射光を画素ごとに光変調することができる。もとより、画素電極11を、Y軸方向に対して時計方向でなく、反時計方向にα度回転した方向に傾けて形成することとしても差し支えない。
【0049】
さて、図5に示したように、画素Gの領域端のうちY軸方向に沿う一辺(以降、単に「領域端の一辺」と呼ぶ)において、画素Gの領域の角部Rk(図面左上と右下に示した楕円領域)においては、画素電極11の帯状電極部分がα度(例えば10度〜20度)時計方向に傾いているため、画素Gの領域端の一辺に対向する画素電極11の外形線11aおよび外形線11bは、その画素GのY軸方向の領域端の一辺から遠い位置になってしまう。このため、角部Rkにおいては液晶分子EBに印加される横電界の強度が低下してしまうことになる。従って、角部Rkにおける液晶分子EBの回転角は他の領域の液晶分子EBに比べて小さい回転(図中、破線形状部分)になり、その結果、画素電極11に印加された電圧に応じて画素毎に正しく光変調することができない液晶装置100となる虞がある。
【0050】
そこで、本実施形態における液晶装置100は、このような画素Gの領域の角部Rkにおいて液晶分子EBの回転不足の発生を抑制できるように、画素電極11の形状を従来の形状に対して変更する。以下、変更した画素電極11の形状について2つの実施例を挙げ、これらを、図6〜図9を用いて順次説明する。
【0051】
(第1実施例)
まず第1実施例を説明する。図6は、本実施形態の液晶装置100に設けられた画素Gにおいて、変更形成された第1実施例の画素電極11の形状を示す模式図である。図示するように、本実施形態の液晶装置100は、画素電極11の帯状電極部のうち、画素Gの領域端の一辺と対向する両端の帯状電極部の外形線11ahおよび外形線11bhの傾きを、それぞれ、外形線11aおよび外形線11bの傾き角度であるα度よりも小さいβ度およびγ度とするのである。なおβ度とγ度の角度の決定方法については後述する。また、外形線11ahおよび外形線11bhの傾きの起点は、外形線11ahについては帯状電極部の連結端11dであり、外形線11bhについては帯状電極部の開放端11eである。
【0052】
このように画素電極11を形成することによって、画素Gの領域端や角部Rkにおいて、画素電極11と画素Gの領域端の一辺までの距離が近くなるため、画素Gの領域端や角部Rkにおいて生ずる横電界の強度低下を抑制することが可能となる。
【0053】
ここで、従来の形状の画素電極11と、本実施例の画素電極11とを、実際のFFSパネルにおいて比較した結果を図7に示す。図7は、Y軸方向の画素間ピッチが30μmで、X軸方向の画素間ピッチが24μmで形成されたFFSパネルにおいて、画素の白表示状態で比較した結果を示した模式図である。図7(a)は、従来の画素電極形状(左側)と、このときの画素Gの白表示状態(右側)を示し、図7(b)は、本実施例の画素電極形状(左側)と、このときの画素Gの白表示状態(右側)を示している。
【0054】
図示するように、画素Gの領域において、角部Rkの透過率が、従来の画素電極形状に対して改善されている様子が解かる。従って、本実施例による画素電極11の形状を形成した液晶装置100によれば、画素Gの角部Rkにおける横電界の低下を抑制することができるので、データ線111から供給された電圧によって、画素毎に照射光を正しく光変調することが可能となる。この結果、表示品質の低下を抑制することができる。
【0055】
(第2実施例)
次に第2実施例を説明する。上記第1実施例では、画素電極11の帯状電極部のうち、画素Gの領域端の一辺と対向する両端の帯状電極部の外形線11ahおよび外形線11bhの傾きを、帯状電極部の連結端11dあるいは帯状電極部の開放端11eを起点として、それぞれα度よりも小さいβ度およびγ度とした。そのために、画素電極11において両端の帯状電極部のX軸方向の電極幅は、他の帯状電極部(ここでは中央の1本)に比べて広くなってしまう。このために、図7に示したFFSパネルでは、画素電極11の領域上における液晶分子の挙動に起因して、図7(b)において白抜き矢印で示したように、画素Gの領域端の一辺に対向する両端の帯状電極部において、電極幅に応じた透過率の減少が生じてしまう。
【0056】
そこで、本実施例では、帯状電極部の連結端11dあるいは帯状電極部の開放端11eを起点とせず、外形線11aおよび外形線11bの線状における所定の位置を起点として、外形線11ahおよび外形線11bhの傾きを、それぞれα度よりも小さいβ度およびγ度とするのである。こうすれば、画素Gの領域端や角部Rkにおいて、画素電極11と画素Gの領域端の一辺までの距離を近くする一方、画素電極11において両端の帯状電極部の幅を、上記実施例に比べて狭くすることができる。
【0057】
図8は、本実施形態の液晶装置100に変更形成された第2実施例の画素電極11を有する画素Gについて、その画素電極11の形状を示す模式図である。図示するように、本実施例では、画素電極11のうち、画素Gの領域端の一辺と対向する帯状電極部の外形線11aの傾きを、帯状電極部の連結端11dから距離DY離れた位置を起点として、α度よりも小さいβ度とする。また、外形線11bの傾きを、帯状電極部の開放端11eから距離EY離れた位置を起点として、α度よりも小さいγ度とするのである。
【0058】
このように画素電極11を形成することによって、画素Gの領域端や角部Rkにおける画素電極11と画素Gの一辺までの距離が近くなる一方、画素電極11において両端の帯状電極部の幅を、上記実施例に比べて狭くすることができる。
【0059】
本実施例の画素電極11を有し、Y軸方向の画素間ピッチが30μmで、X軸方向の画素間ピッチが24μmで形成されたFFSパネルにおいて、具体的に画素が白表示の状態を呈した様子を図9に示した。図9(a)は、本実施例の画素電極形状(左側)と、このときの画素Gの白表示状態(右側)を示している。また、図9(b)は、Y軸方向が15μmの位置におけるX軸方向の画素Gの透過率について、第2実施例(実線)の状態を、第1実施例(破線)と比較して示したものである。
【0060】
図9(a)に示すように、本実施例による画素電極11の形状を形成した液晶装置100によれば、画素Gの領域において、角部Rkの透過率が、従来の画素電極形状に対して改善されているとともに、画素電極11の両端の帯状電極部のX軸方向の幅に起因する透過率の低下を抑制することができる。また、図9(b)に示したように、上記第1実施例の画素電極形状に対して、第2実施例では、外形線11ahの位置が画素Gの端部から遠くなるために端部における透過率が低下するものの、X軸方向についての全体の透過率の積分値は大きくなっているので、画素G全体の透過率も高くなっていることが解かる。従って、本実施例の画素電極11の形状によれば、データ線111から供給された電圧によって、画素毎に照射光を正しく光変調することができ、表示品質の低下を抑制することが可能となる。
【0061】
なお、本実施例では、図9(a)に示したように、距離DYおよび距離EYは、画素Gの領域端の一辺の凡そ2等分線上の位置としている。これは、図7(a)に示したように、画素Gの領域において凡そこの位置から角部Rkの方向に透過率の低下減少が生じているからである。もとより、帯状電極部の傾き角や電極幅、あるいは帯状電極部の電極間隔などによって、画素Gの領域端における透過率の低下の様子が異なることから、実際に、従来の画素電極形状を用いて製作したFFSパネルを白表示させ、呈する白表示の透過率に基づいて、それぞれの所定の位置を決定することが好ましい。
【0062】
ところで、上記第1実施例および第2実施例では、画素電極11において、画素Gの領域端の一辺に対向位置する帯状電極部の外形線11ahおよび外形線11bhは、Y軸方向からの傾き角が、それぞれα度よりも小さいβ度(β>0)およびγ度(γ>0)であることとした。その結果、このような形状変更によって帯状電極部のX軸方向の電極幅は広がるため、角部Rkにおいて透過率が改善される一方、帯状電極部分における透過率は電極幅が広くなることによって低下するというトレードオフ状態となった。
【0063】
そこで、本実施形態の液晶装置100においては、帯状電極部の形状変更に際して、画素G全体の透過率が最も高くなるように、β度およびγ度をそれぞれ決定することが好ましい。一例としてβ度の決定方法について、図10を用いて説明する。なお、γ度についても、β度と同様である。
【0064】
図10(a)は、上記第2実施例の画素電極11が形成され、Y軸方向の画素ピッチが30μm、X軸方向の画素ピッチが24μmで形成された画素Gの様子を示す模式図である。また、図10(b)は、図10(a)において、Y軸方向が25μmの位置におけるX軸方向の線分A−Aについて、白表示状態における画素Gの透過率を示したグラフである。また図10(b)において示した5本の曲線は、それぞれ帯状電極部の電極幅を示している。なお、電極幅2μmは、形状変更前の従来の画素電極11が有する帯状電極部の電極幅である。
【0065】
図示するように、帯状電極部の電極幅が従来の電極幅2μmでは、画素Gの領域端(角部)において透過率が低くなっている。そして、電極幅を3μmから増加していくと、徐々に画素Gの領域端(角部)の透過率が上昇改善されていく様子が解かる。一方、画素電極11の領域では、電極幅を3μmから増加していくと、画素電極11の電極幅の領域上の透過率が低下する様子が解かる。そこで、各電極幅について、線分A−A全体におけるそれぞれの透過率を積分して平均透過率を求める。ここでは、電極幅が3μmにおいて、透過率の平均値が最大となる。従って、Y軸方向の位置が25μmにおいて、帯状電極部の電極幅が3μmとなるように、β度を決定する。
【0066】
あるいは、図10(b)示した透過率の変化具合から、画素Gの白表示時において、線分A−Aの領域のうち帯状電極部の外形線から画素Gの領域端の一辺までの範囲の透過率が、帯状電極部のX軸方向の電極幅の中央部の透過率を上回るよう、帯状電極部の電極幅を設定する。そして設定された電極幅になるようにβ度を決定して、帯状電極部の外形線を形状変更するようにしてもよい。より好ましくは、画素Gの領域端における透過率が、帯状電極部のX軸方向の電極幅の中央部の透過率と等しくなるように、帯状電極部の電極幅を設定する。そして設定された電極幅になるようにβ度を決定して、帯状電極部の外形線を形状変更するようにしてもよい。このように形状変更すれば、画素Gの領域において、全体の透過率の低下を抑制するとともに、画素毎に照射光を正しく光変調することができる。従って、表示品質の低下を抑制することが可能となる。
【0067】
なお、上記第1および第2実施例において、画素Gの領域は、遮光層32で区画された光透過領域としていることから、画素Gの領域端の一辺は、帯状電極部の長手方向の外形線が隣接する側に配置された遮光層32の一辺となるが、これに限るものでない。画素Gの領域端の一辺を、帯状電極部を有さない方の電極であって、帯状電極部の長手方向の外形線が隣接する側に位置する該電極の端辺としてもよい。具体的に、上記実施例では、画素Gの領域端の一辺は、図3に示した共通電極13の図面左右方向の端辺が相当する。遮光層32を形成しない場合など、共通電極の領域によって画素領域が特定される場合は、このように画素の領域端の一辺を規定することが好ましい。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について実施例により説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下、変形例をあげて説明する。
【0069】
(第1変形例)
上記実施例では、画素Gの領域端の一辺と対向する画素電極11の帯状電極部の外形線11ah(外形線11bh)の傾きを、一定の角度(β度、γ度)で小さく変更することとして説明したが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、外形線11ah(外形線11bh)が画素Gの領域端の一辺と離れる方向において、前記傾きが漸減するように形成されていることとしてもよい。こうすることによって、画素Gの領域端の一辺に沿う方向において、画素Gの角部Rkに近くなるほど、帯状電極部の長手方向の外形線を画素の領域端の一辺の方向に除々に近づけることができる。従って、帯状電極部の電極幅の増加を抑制しつつ、特に画素Gの角部Rkにおける液晶分子を本来の配向方向に到達するように回転させるので、画素の全体の明るさを改善することができる。本変形例の一例を、図11を用いて説明する。
【0070】
図11は、外形線11ah(外形線11bh)を円弧で形成することによって、外形線11ah(外形線11bh)が画素Gの領域の一辺と離れる方向において、傾きが漸減するように形成された画素電極11を示した模式図である。なお、図11(a)は、上記第1実施例において本変形例を適用した場合、図11(b)は、上記第2実施例において本変形例を適用した場合、をそれぞれ示している。もとより、円弧に限らず、外形線の傾きが漸減する形状であれば何でも良い。
【0071】
図11(a)では、画素Gの領域のうち図面左端部に位置する帯状電極部の外形線について、従来の帯状電極部の外形線11aに対して、外形線が曲率半径R1の円弧形状の外形線11ahとなるようにハッチングで示した電極領域を追加するように変更形成する。こうすることによって、外形線11ahは、その接線傾きが連結端11dから漸減するように形成される。
【0072】
また、画素Gの領域のうち図面右端部に位置する帯状電極部の外形線について、従来の帯状電極部の外形線11bに対して、外形線が曲率半径R2の円弧形状の外形線11bhとなるようにハッチングで示した電極領域を追加するように変更形成する。こうすることによって、外形線11bhは、その接線傾きが開放端11eから漸減するように形成される。
【0073】
なお、曲率半径R1の中心C1および曲率半径R2の中心C2は、少なくとも画素Gの領域からY軸方向において離れた位置とすることが好ましい。こうすることによって、外形線11ahおよび外形線11bhの傾きが画素Gの領域内においてY軸方向つまり液晶分子EBの初期的な配向方向に対して同じ時計方向の傾きを維持できるので、リバースツイストの発生が抑制できる。
【0074】
図11(b)では、画素Gの領域の図面左端部に位置する帯状電極部の外形線について、従来の帯状電極部の外形線11aに対して、連結端11dからY軸方向に沿って距離DY離れた位置から、外形線が曲率半径R3の円弧形状の外形線11ahとなるようにハッチングで示した電極領域を追加するように変更形成する。こうすることによって、外形線11ahは、その接線傾きが距離DYの位置から漸減するように形成される。
【0075】
また、画素Gの領域の図面右端部に位置する帯状電極部の外形線について、従来の帯状電極部の外形線11bに対して、開放端11eからのY軸方向に沿って距離EY離れた位置から、外形線が曲率半径R4の円弧形状の外形線11bhとなるようにハッチングで示した電極領域を追加するように変更形成する。こうすることによって、外形線11bhは、その接線傾きが距離EYの位置から漸減するように形成される。
【0076】
なお、図11(a)の場合と同様に、曲率半径R3の中心C3および曲率半径R4の中心C4は、少なくとも画素Gの領域からY軸方向に離れた位置とすることが好ましい。こうすることによって、外形線11ahおよび外形線11bhの傾きが画素Gの領域内においてY軸方向つまり液晶分子EBの初期的な配向方向に対して同じ時計方向の傾きを維持できるので、リバースツイストの発生が抑制できる。
【0077】
また、本変形例において、各曲率半径R1,R2,R3,R4と、それぞれの中心C1,C2,C3,C4は、上述したβ度およびγ度の決定方法と同様に行えば良い。例えば、図10(b)において説明したように、各電極幅について、線分A−A全体におけるそれぞれの透過率を積分して平均透過率を求め、透過率の平均値が最大となるときの、帯状電極部の電極幅に基づいて曲率半径と中心を決定すればよい。
【0078】
(第2変形例)
上記実施例では、画素電極11について、帯状電極部の傾きが一定方向であるものとして説明したが、必ずしもこれに限らず、帯状電極部が複数の方向を有することとしてもよい。一例として、画素Gの領域内において、互いに傾きが異なる2つの帯状電極部を有する場合について、図12を用いて説明する。
【0079】
図12は、それぞれ2本の帯状電極部が、Y軸方向に対して時計方向と反時計方向の互いに反対側に傾いた方向を有し、一端が連結されて電気的に接続され、他端が開放された形状の画素電極11を示した模式図である。ここでは詳しい説明を省略するが、1つの画素において2つ(複数)の配向状態を形成するマルチドメインを構成して視野角を広げることが行われる場合がある。このために、このように帯状電極部の長手方向を異なるように形成する場合がある。
【0080】
図12(a)は、それぞれ2つの帯状電極部の傾きが開放端側で開くように形成された画素電極11に対して、本変形例を適用した場合を示す。図示するように、帯状電極部の外形線において、異なる傾きの外形線が対向する部分については、開放端に向かう方向に沿って互いの外形線間の距離が近づくように形状変更する。本変形例では、上記第2実施例の変更方法によって形状変更する。すなわち、画素電極11は、図中網掛けで示した従来の帯状電極部の形状に対して、ハッチングで示した領域Sが追加された形状とする。
【0081】
また、図12(b)は、それぞれ2つの帯状電極部の傾きが連結端側で開くように形成された画素電極11に対して、本変形例を適用した場合を示す。図示するように、帯状電極部の外形線において、異なる傾きの外形線が対向する部分については、連結端に向かう方向に沿って互いの外形線間の距離が近づくように形状変更する。この場合においても、同様に上記第2実施例の変更方法によって形状変更する。すなわち、画素電極11は、図中網掛けで示した従来の帯状電極部の形状に対して、ハッチングで示した領域Sを追加した形状とする。
【0082】
このように形状変更すれば、画素Gの領域において、角部Rkに加えて、互いに傾きが異なって隣り合う帯状電極部間において生ずる隙間の距離を近づけることができる。従って、角部Rkに加えて、長手方向が互いに異なる帯状電極部間において、液晶分子を本来の配向方向に到達するように回転させるので、画素の全体の明るさを改善することができる。
【0083】
なお、本変形例では、追加する領域Sの形状を上記第2実施例の変更方法による形状としたが、特にこれに限らず、上記第1実施例に変更方法による形状としてもよい。あるいは、上記第1変形例の変更方法による形状としてもよい。こうすれば、上記第1実施例、上記第2実施例、上記第1変形例において説明したそれぞれの効果を、本変形例において奏することができる。
【0084】
(第3変形例)
上記実施例では、画素電極11について、画素Gの領域端の一辺と対向する帯状電極部の2つの外形線11aと外形線11bとの双方を形状変更することとしたが、必ずしもこれに限らず、一方のみ形状変更することとしてもよい。
【0085】
本変形例の一例を、図13に示した。図13は、本変形例による画素電極11が、Y軸方向に2つ並んだ状態を示す模式図である。図示するように、本変形例は、上記第2実施例に示した画素電極11において、画素Gの領域端の一辺と対向する2つの帯状電極部の外形線のうち、外形線11aについてのみ、その傾きを所定の位置から小さくした外形線11ahに形状変更する。
【0086】
画素電極11の形状(例えば帯状電極部の傾き具合や帯状電極部の電極幅など)や、X軸方向あるいはY軸方向における画素ピッチなどに応じて、画素Gの領域内における角部Rkにおいて透過率が低下する角部が特定される場合がある。例えば、図13に示したように、配列された画素のY軸方向におけるピッチが狭く、このため形成される画素電極11のY軸方向における間隔が狭い場合が存在する。このとき、画素Gの領域において、図面左上の角部Rk1は、図面右下の角部Rk2に比べて、隣りに位置する画素電極11との間の距離が近くなる。従って、角部Rk1に位置する液晶分子EBは、隣りの画素Gの画素電極11から印加される電界の影響を受け易くなり、その結果、透過率が低くなってしまうことが起こり得る。
【0087】
このような場合、透過率が低くなる角部Rk1に対して帯状電極部の形状変更を行うようにすればよい。こうすることによって、角部Rk1の透過率は改善され、表示品質の低下を抑制することができるのである。
【0088】
(第4変形例)
上記実施形態では、画素電極11について、帯状電極部の長手方向の一端が電気的に接続されない開放端であることとしたが、必ずしもこれに限らず、帯状電極部の長手方向の両端が連結され、電気的に接続された形状であることとしてもよい。本変形例の一例を、図14に示した。
【0089】
図14は、本変形例の画素電極11を示す模式図である。本変形例における従来の画素電極11は、上記実施形態における画素電極に対して、帯状電極部の開放端側も、画素Gの領域外において電極11fによって連結し、電気的に接続された形状(網掛け部分)である。そして、この従来の画素電極形状に対して、図示するように、上記第2実施例の変更方法によって領域S1を追加して形状変更した画素電極11とするのである。
【0090】
本変形例の画素電極形状によれば、開放端を形成しないので、前述したFFSパネルで生じるリバースツイストの抑制効果は低くなるものの、画素Gの領域の角部Rkで生ずる液晶分子EBの回転不足を解消し、角部Rkでの透過率を改善することによって表示品質の低下を抑制することが期待できる。
【0091】
もとより、本変形例では、従来の画素電極形状を上記第2実施例の変更方法による形状としたが、特にこれに限らず、上記第1実施例に変更方法による形状としてもよい。あるいは、上記第1変形例の変更方法による形状としてもよい。こうすれば、上記第1実施例、上記第2実施例、上記第1変形例において説明したそれぞれの効果を、本変形例において奏することができる。
【0092】
(その他の変形例)
また、上記実施形態では、画素電極11は、長手方向がY軸方向に対して傾く帯状電極部を備えることとして説明したが、必ずしもこれに限らず、長手方向がX軸方向に対して傾く帯状電極部を備えることとしてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、第1の電極を画素電極11とし、第2の電極を共通電極13としたが、これに限らず、第1の電極を共通電極とし、第2の電極を画素電極としても差し支えない。
【0094】
また、上記実施例では、液晶装置100を、プロジェクター1において光変調素子として用いることとして説明したが、必ずしもこれに限るものでないことは勿論である。例えば、液晶装置100を直視型の表示装置として用いることとしてもよい。この場合は、液晶装置100の裏面に蛍光管などを用いたバックライトを一体化して形成することが好ましい。このような液晶装置100は、上述するように表示品質の低下が抑制された画像を表示できることから、この液晶装置100をテレビやデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話、コンピューターなどの電子機器に直視型の表示装置として備えることとしてもよい。こうすれば、表示品質の良い画像を提供する電子機器が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一実施形態となる液晶装置を備えたプロジェクターの概略構成図。
【図2】液晶装置の構成を模式的に示した説明図。
【図3】液晶装置の各画素に形成された配線の様子を示した模式平面図。
【図4】液晶装置についての部分断面を示す模式図。
【図5】一つの画素において横電界に応じて回転する液晶分子を示す模式図。
【図6】第1実施例の画素電極の形状を示す模式図。
【図7】画素の白表示状態を示す模式図で、(a)は従来の画素電極形状と白表示状態を示し、(b)は第1実施例の画素電極形状と白表示状態を示す。
【図8】第2実施例の画素電極の形状を示す模式図。
【図9】画素が白表示の状態を呈した様子示し、(a)は第2実施例の画素電極形状と白表示状態とを示す模式図、(b)は、第1実施例(破線)と比較した第2実施例(実線)の透過率のX軸方向における状態図。
【図10】(a)は、第2実施例の画素電極が形成された画素の様子を示す模式図。(b)は、X軸方向の線分について、白表示状態における画素の透過率を示したグラフ。
【図11】第1変形例で、外形線を円弧で形成された画素電極を示した模式図で、(a)は、第1実施例に本変形例を適用した場合、(b)は、第2実施例に本変形例を適用した場合、を示す。
【図12】第2変形例の画素電極形状を示す模式図で、(a)は帯状電極の傾きが開放端側で開く場合、(b)は帯状電極の傾きが連結端側で開く場合を示す。
【図13】第3変形例で、一方の帯状電極の外形線についてのみ形状変更する場合を示した模式図。
【図14】第4変形例で、帯状電極が両端とも連結した状態の画素電極を示す模式図。
【符号の説明】
【0096】
1…プロジェクター、10…基板、11…画素電極、11a,11ah,11b,11bh…外形線、11d…連結端、11e…開放端、11f…電極、13…共通電極、14…基材、15…ゲート絶縁層、16…層間絶縁層、17…平坦化層、18…絶縁層、19…配向膜、20…トランジスター、20a…半導体層、20d…ドレイン電極、20g…ゲート電極、20s…ソース電極、30…基板、31…基材、32…遮光層、39…配向膜、40…液晶層、44…偏光板、45…偏光板、100…液晶装置、101…光源、102…偏光ビームスプリッター、103…投射レンズ、110…データ駆動回路、111…データ線、120…走査駆動回路、121…走査線、130…共通端子、131…共通配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の基板と、
前記一対の基板に挟持された液晶層と、
前記一対の基板の一方の基板に設けられ、互いに間隔を有して配列され、少なくとも一端で連結された複数の帯状電極部を有する第1の電極と、
前記一対の基板の一方の基板に設けられ、前記第1の電極との間で電界を生じさせる第2の電極と、が設けられ、
前記第1の電極と前記第2の電極とを含み、複数の略矩形の画素の領域を構成する液晶装置であって、
前記第1の電極の前記複数の帯状電極部は、該帯状電極部の長手方向の外形線が隣接する前記画素の領域端の一辺に対してそれぞれ傾いた長手方向の外形線を有しており、
前記画素の領域端の一辺に隣接した帯状電極部の外形線は、前記画素の領域端の一辺に対して傾いているとともに、当該画素の領域内における他の帯状電極部の長手方向の外形線よりも、前記画素の領域端の一辺に対する傾きが小さくなるように形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置であって、
前記画素の領域端の一辺と対向する前記帯状電極部の長手方向の外形線は、前記外形線が前記画素の領域端の一辺から離れる方向における所定の位置から、前記傾きが小さくなるように形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液晶装置であって、
前記所定の位置は、前記画素の領域端の一辺の略2等分線上の位置であることを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記画素の領域端の一辺と対向する前記帯状電極部の長手方向の外形線は、当該外形線が前記画素の領域端の一辺から離れる方向において、前記傾きが漸減するように形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記第2の電極のうち互いに隣り合う2つの前記帯状電極部の長手方向の外形線の傾きがそれぞれ異なるように形成され、
前記隣り合う2つの帯状電極部において対向する前記長手方向の外形線は、少なくとも一方の前記帯状電極部の前記傾きが小さくなるように形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液晶装置であって、
前記少なくとも一方の帯状電極部の長手方向の外形線は、隣り合う他方の前記帯状電極の長手方向の外形線から離れる方向における所定の位置から、前記傾きが小さくなるように形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液晶装置であって、
前記所定の位置は、前記画素の領域端の一辺の略2等分線上の位置であることを特徴とする液晶装置。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記少なくとも一方の帯状電極部の長手方向の外形線は、当該外形線が対向する前記帯状電極部の長手方向の外形線から離れる方向において、前記傾きが漸減するように形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の液晶装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−164600(P2010−164600A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4300(P2009−4300)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】