説明

液晶装置、及び電子機器

【課題】コントラストや透過率を向上させることができ、高品質な画像を表示可能とする液晶装置、及び電子機器を提供する。
【解決手段】液晶装置は、第2基板12上に設けられた、第1透明導電膜41と、第1透明導電膜41より屈折率が低い透明絶縁膜42と、透明絶縁膜42よりも屈折率が高い第2透明導電膜43と、を有する透明積層膜40と、第2基板12と透明積層膜40との間に配置された遮光層18と、を備え、第1透明導電膜41と第2透明導電膜43とは、遮光層18と平面的に重なる領域において電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記液晶装置として、例えば、画素電極をスイッチング制御する素子としてトランジスターを画素ごとに備えたアクティブ駆動方式の液晶装置が知られている。また、このような液晶装置は、透過型として用いられる透過型液晶装置や、反射型として用いられる反射型液晶装置がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、反射型液晶装置において、対向基板側の表面に透明絶縁膜を2つの透明導電膜によって挟持して積層することにより、各々の膜の屈折率を利用し、反射防止膜として機能させると共に透過率を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−18774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、より短波長領域の透過率向上に対応しようとすると、透明導電膜を更に薄膜化する必要があり、これにより、対向基板側の共通電極の電位に追従しにくくなるという課題がある。加えて、複数の透明導電膜のうち一部の膜のみを電気的に接続すると、他の膜がチャージアップするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る液晶装置は、素子基板と、前記素子基板に対向するように配置された対向基板と、前記素子基板と前記対向基板との間に挟持された液晶層と、を含み、前記対向基板は、透光性基板と、前記透光性基板の前記液晶層側に配置された第1透明導電膜と、前記第1透明導電膜の前記液晶層側に配置され、前記第1透明導電膜より屈折率が低い透明絶縁膜と、前記透明絶縁膜の前記液晶層側に配置され、前記透明絶縁膜よりも屈折率が高い第2透明導電膜と、前記透光性基板と前記第1透明導電膜との間に配置された凸部と、を備え、前記第1透明導電膜と前記第2透明導電膜とは、少なくとも前記凸部の一部と平面的に重なる領域において電気的に接続されていることを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、凸部と平面的に重なる領域の透明絶縁膜の部分を接続部として第1透明導電膜と第2透明導電膜とが電気的に接続されているので、凸部の無い領域で接続する方法と比較して、凸部上の透明絶縁膜の厚みを薄くすることが可能となり、更に、透明絶縁膜における接続部分をなだらかな形状することができる。よって、第1透明導電膜及び第2透明導電膜が他の膜と比較して極力薄い場合でも、透明絶縁膜の接続部分において透明導電膜が段切れになることを抑えることができる。よって、確実に第1透明導電膜と第2透明導電膜とを電気的に接続させることが可能となり、透明導電膜を薄膜化したことによる対向基板側の共通電極の電位が追従しにくくなることを抑えることができる。加えて、コントラストや透過率を向上させることができ、また、透明積層膜がチャージアップされることを抑えることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係る液晶装置において、前記凸部の厚みは、前記第1透明導電膜の膜厚、及び前記第2透明導電膜の膜厚よりも厚いことが好ましい。
【0010】
本適用例によれば、凸部の厚みが、第1透明導電膜や第2透明導電膜よりも厚いので、透明絶縁膜の表面の起伏をなだらかにさせると共に凸部の上方の透明絶縁膜の部分を薄くさせることができる。更に、透明絶縁膜における接続部分をなだらかな形状することができる。よって、第1透明導電膜及び第2透明導電膜が他の膜と比較して極力薄い場合でも、透明絶縁膜の接続部分において透明導電膜が段切れになることを抑えることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る液晶装置において、前記凸部の厚みは、前記透明絶縁膜の厚みよりも厚いことが好ましい。
【0012】
本適用例によれば、凸部の厚みが、透明絶縁膜よりも厚いので、透明絶縁膜の表面の起伏をなだらかにさせると共に遮光層の上方の透明絶縁膜の部分を薄くさせることができる。更に、透明絶縁膜における接続部分をなだらかな形状することができる。よって、第1透明導電膜及び第2透明導電膜が他の膜と比較して極力薄い場合でも、透明絶縁膜の接続部分において透明導電膜が段切れになることを抑えることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係る液晶装置において、画像を表示する領域である表示領域を有し、前記凸部は、前記表示領域の外周を囲む遮光膜であることが好ましい。
【0014】
本適用例によれば、表示領域の外周を囲む遮光膜を凸部として利用するので、新たに凸部を設ける場合と比較して、製造工程が増えることを抑えることができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係る液晶装置において、前記凸部は、前記素子基板と前記対向基板との間の導通をとるための導通パッドであることが好ましい。
【0016】
本適用例によれば、導通パッドを凸部として利用するので、新たに凸部を設ける場合と比較して、製造工程が増えることを抑えることができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例に係る液晶装置において、前記凸部と前記第1透明導電膜とが電気的に接続されていることが好ましい。
【0018】
本適用例によれば、第1透明導電膜と第2透明導電膜とが電気的に接続されていることに加えて、これらが遮光層と電気的に接続されているので、2つの透明導電膜の抵抗を更に下げることが可能となり、透明導電膜を薄膜化したことによる共通電極の電位が追従しにくくなることを抑えることができる。
【0019】
[適用例7]本適用例に係る電子機器は、上記した液晶装置を備えることを特徴とする。
【0020】
本適用例によれば、上記に記載の液晶装置を備えているので、透明積層膜の導通を確実に行うことができ、表示品質を向上させることが可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】液晶装置の構成を示す模式平面図。
【図2】図1に示す液晶装置のH−H’線に沿う模式断面図。
【図3】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図4】液晶装置の遮光層周辺の構造を示す模式図であり、(a)は液晶装置の構造を示す模式平面図、(b)は(a)に示す液晶装置のA−A’線に沿う模式断面図。
【図5】図4(b)に示す液晶装置のB部を拡大して示す拡大断面図。
【図6】液晶装置の製造方法の一部を示す模式断面図。
【図7】液晶装置の製造方法の一部を示す模式断面図。
【図8】液晶装置を備えた電子機器(液晶プロジェクター)の構成を示す模式図。
【図9】対向基板の変形例の構造を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大又は縮小して表示している。
【0023】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載された場合、基板の上に接するように配置される場合、又は基板の上に他の構成物を介して配置される場合、又は基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0024】
本実施形態では、薄膜トランジスター(TFT:Thin Film Transistor)を画素のスイッチング素子として備えたアクティブマトリックス型の液晶装置を例に挙げて説明する。この液晶装置は、例えば、後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)の光変調素子(液晶ライトバルブ)として好適に用いることができるものである。
【0025】
<液晶装置の構成>
図1は、液晶装置の構成を示す模式平面図である。図2は、図1に示す液晶装置のH−H’線に沿う模式断面図である。図3は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、液晶装置の構造を、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0026】
図1及び図2に示すように、本実施形態の液晶装置100は、対向配置された素子基板10および対向基板20と、これら一対の基板によって挟持された液晶層15とを有する。素子基板10を構成する第1基板11、および対向基板20を構成する透光性基板としての第2基板12は、例えば、ガラス基板、石英基板などの透明基板、又はシリコン基板が用いられている。
【0027】
素子基板10は対向基板20よりも一回り大きく、両基板は、額縁状に配置されたシール材14を介して接合され、その隙間に正または負の誘電異方性を有する液晶が封入されて液晶層15を構成している。シール材14は、例えば、熱硬化性又は紫外線硬化性のエポキシ樹脂などの接着剤が採用されている。シール材14には、一対の基板の間隔を一定に保持するためのギャップ材が混入されている。
【0028】
対向基板20側における額縁状に配置されたシール材14の内側には、同じく額縁状に凸部としての遮光層18(遮光膜)が設けられている。遮光層18は、例えば、遮光性の金属あるいは金属酸化物などからなり、遮光層18の内側が複数の画素Pを有する表示領域Eとなっている。なお、図1では図示省略したが、表示領域Eにおいても複数の画素Pを平面的に区分する遮光部が設けられている。
【0029】
第1基板11の1辺部と、1辺部に沿ったシール材14との間にデータ線駆動回路22が設けられている。また、該1辺部に対向する他の1辺部に沿ったシール材14の内側に検査回路25が設けられている。さらに、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿ったシール材14の内側に走査線駆動回路24が設けられている。該1辺部と対向する他の1辺部のシール材14の内側には、2つの走査線駆動回路24を繋ぐ複数の配線29が設けられている。
【0030】
これらデータ線駆動回路22及び走査線駆動回路24に繋がる配線は、該1辺部に沿って配列した複数の外部接続端子61に接続されている。以降、該1辺部に沿った方向をX方向とし、該1辺部と直交し互いに対向する他の2辺部に沿った方向をY方向として説明する。なお、検査回路25の配置はこれに限定されず、データ線駆動回路22と表示領域Eとの間のシール材14の内側に沿った位置に設けてもよい。
【0031】
図2に示すように、第1基板11の液晶層15側の表面には、画素Pごとに設けられた光反射性を有する画素電極27およびスイッチング素子としての薄膜トランジスター30(以降、「TFT30」と称する。)と、信号配線と、これらを覆う配向膜28とが形成されている。
【0032】
画素電極27は、光反射性の例えばAl(アルミニウム)やAg(銀)またはこれらの金属の合金や酸化物などの化合物を用いて形成することができる。また、TFT30における半導体層に光が入射してスイッチング動作が不安定になることを防ぐ遮光構造が採用されている。
【0033】
第2基板12の液晶層15側の表面には、遮光層18と、これを覆うように成膜された第1絶縁層33と、第1絶縁層33を覆うように設けられた共通電極31と、共通電極31を覆う配向膜32とが設けられている。なお、遮光層18と共通電極31との間に、図示しない複数の透明膜が積層された透明積層膜が設けられている。透明積層膜の詳細については後述する。
【0034】
遮光層18は、図1に示すように、平面的に走査線駆動回路24、検査回路25と重なる位置において額縁状に設けられている。これにより対向基板20側から入射する光を遮蔽して、これらの駆動回路を含む周辺回路の光による誤動作を防止する役目を果たしている。また、不必要な迷光が表示領域Eに入射しないように遮蔽して、表示領域Eの表示における高いコントラストを確保している。
【0035】
第1絶縁層33は、例えば、酸化シリコンなどの無機材料からなり、光透過性を有して遮光層18を覆うように設けられている。このような第1絶縁層33の形成方法としては、例えばプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて成膜する方法が挙げられる。
【0036】
共通電極31は、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなり、第1絶縁層33を覆うと共に、図1に示すように対向基板20の四隅に設けられた上下導通部26により素子基板10側の配線に電気的に接続している。
【0037】
画素電極27を覆う配向膜28および共通電極31を覆う配向膜32は、液晶装置100の光学設計に基づいて選定される。例えば、SiOx(酸化シリコン)などの無機材料を気相成長法を用いて成膜して、液晶分子に対して略垂直配向させたものが挙げられる。
【0038】
このような液晶装置100は反射型であって、画素Pが非駆動時に暗表示となるノーマリーブラックモードや、非駆動時に明表示となるノーマリーホワイトモードの光学設計が採用される。光学設計に応じて、光の入射側(射出側)に偏光素子が配置されて用いられる。
【0039】
図3に示すように、液晶装置100は、少なくとも表示領域Eにおいて互いに絶縁されて直交する複数の走査線3aおよび複数のデータ線6aと、容量線3bとを有する。走査線3aが延在する方向がX方向であり、データ線6aが延在する方向がY方向である。
【0040】
走査線3aとデータ線6aならびに容量線3bと、これらの信号線類により区分された領域に、画素電極27と、TFT30と、容量素子16とが設けられ、これらが画素Pの画素回路を構成している。
【0041】
走査線3aはTFT30のゲートに電気的に接続され、データ線6aはTFT30のデータ線側ソースドレイン領域に電気的に接続されている。画素電極27は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域に電気的に接続されている。
【0042】
データ線6aは、データ線駆動回路22(図1参照)に接続されており、データ線駆動回路22から供給される画像信号D1,D2,…,Dnを画素Pに供給する。走査線3aは、走査線駆動回路24(図1参照)に接続されており、走査線駆動回路24から供給される走査信号SC1,SC2,…,SCmを各画素Pに供給する。
【0043】
データ線駆動回路22からデータ線6aに供給される画像信号D1〜Dnは、この順に線順次で供給してもよく、互いに隣り合う複数のデータ線6a同士に対してグループごとに供給してもよい。走査線駆動回路24は、走査線3aに対して、走査信号SC1〜SCmを所定のタイミングでパルス的に線順次で供給する。
【0044】
液晶装置100は、スイッチング素子であるTFT30が走査信号SC1〜SCmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線6aから供給される画像信号D1〜Dnが所定のタイミングで画素電極27に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極27を介して液晶層15に書き込まれた所定レベルの画像信号D1〜Dnは、画素電極27と液晶層15を介して対向配置された共通電極31との間で一定期間保持される。
【0045】
保持された画像信号D1〜Dnがリークするのを防止するため、画素電極27と共通電極31との間に形成される液晶容量と並列に容量素子16が接続されている。容量素子16は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域と容量線3bとの間に設けられている。容量素子16は、2つの容量電極の間に誘電体層を有するものである。
【0046】
図4は、液晶装置の遮光層周辺の構造を示す模式図であり、図4(a)は液晶装置の構造を示す模式平面図、図4(b)は図4(a)に示す液晶装置のA−A’線に沿う模式断面図である。図5は、図4(b)に示す液晶装置のB部を拡大して示す拡大断面図である。以下、遮光層周辺の液晶装置の構造を、図4及び図5を参照しながら説明する。
【0047】
図4に示すように、対向基板20を構成する第2基板12の液晶層15側には、上記したように、表示領域Eを囲むように遮光層18が設けられている。また、図4(b)に示すように、遮光層18の断面形状は、凸状になっている。そして、遮光層18を覆うように透明積層膜40が設けられている。更に、透明積層膜40を覆うようにして図示しない絶縁層、及び共通電極31や配向膜32が設けられている。
【0048】
具体的には、図5に示すように、第2基板12の液晶層15側の表面に遮光層18が設けられている。遮光層18の材料としては、例えば、アルミニウム合金(AlSi、AlSiCuなど)である。遮光層18の厚みは、第1透明導電膜41、第2透明導電膜43、及び透明絶縁膜42よりも厚く、例えば、100nm〜200nmである。
【0049】
遮光層18上には、第2基板12及び遮光層18を覆うようにして第1絶縁層33が設けられている。第1絶縁層33は、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)である。第1絶縁層33の厚みは、例えば、200nm〜300nmである。第1絶縁層33の製造方法としては、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)を用いたプラズマCVD法で形成することができる。
【0050】
第1絶縁層33上には、透明積層膜40が設けられている。透明積層膜40は、第2基板12側から第1透明導電膜41、透明絶縁膜42、及び第2透明導電膜43が積層されて構成されている。なお、透明絶縁膜42は、第1透明導電膜41より屈折率が低い。また、第2透明導電膜43は、透明絶縁膜42より屈折率が高い。第1透明導電膜41と第2透明導電膜43とは、少なくとも遮光層18の一部と平面的に重なる領域において、溝部45を介して電気的に接続されている。
【0051】
第1透明導電膜41及び第2透明導電膜43は、例えば、ITOで構成されている。透明絶縁膜42は、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)である。第1透明導電膜41の厚みは、例えば、20nmである。透明絶縁膜42の厚みは、例えば、60nmである。第2透明導電膜43の厚みは、例えば、20nmである。
【0052】
このように、断面的に凸状に設けられた遮光層18の上層に透明積層膜40を積層し、透明積層膜40を構成する透明絶縁膜42に溝部45を設けた場合、溝部45の開口形状をなだらかにすることが可能となり、その後、透明絶縁膜42上に第2透明導電膜43を設けた場合、溝部45において、第2透明導電膜43が段切れになるようなことを防ぐことができる。
【0053】
具体的には、遮光層18の上層に透明絶縁膜42を設けた場合、遮光層18の上方の透明絶縁膜42の厚みを薄くすることが可能となり、更に、透明絶縁膜42における溝部45(接続部分)の開口形状をなだらかな形状にすることができる。よって、溝部45を含む基板上の全体に膜厚の比較的薄い(例えば、20nm)第2透明導電膜43を成膜したとしても、溝部45の中の第2透明導電膜43が段切れになることを抑えることができる。よって、確実に第1透明導電膜41と第2透明導電膜43とを電気的に接続させることができる。その結果、コントラストや透過率を向上させることができる。
【0054】
また、図4(a)に示すように、表示領域Eの周囲に亘って遮光層18が設けられており、遮光層18の上方において、第1透明導電膜41と第2透明導電膜43とが電気的に接続されているので、2つの透明導電膜41,43の抵抗を下げることが可能となり、透明導電膜を薄膜化したことによる共通電極31の電位が追従しにくくなることを抑えることができる。
【0055】
透明積層膜40上には、第2絶縁層44、共通電極31、図示しない配向膜32の順に設けられており、対向基板20が構成されている。そして、素子基板10と対向基板20とは、シール材14を介して貼り合わされている。
【0056】
図6及び図7は、液晶装置の製造方法の一部を示す模式断面図である。以下、液晶装置の一部の製造方法(特に、透明積層膜の製造方法)を、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0057】
最初に、公知の技術を用いて素子基板10側を製造する。続いて、対向基板20を製造する。対向基板20の製造方法としては、まず、第2基板12上に遮光層18を形成する。具体的には、図6(a)に示すように、石英基板等の透光性材料からなる第2基板12上に、例えば、アルミニウム合金(AlSi)からなる遮光層18を、表示領域Eの周囲を囲むように成膜及びパターニングする。遮光層18の厚みは、例えば、100nm〜200nmである。
【0058】
次に、図6(b)に示すように、遮光層18及び第2基板12上に、第1絶縁層33を形成する。第1絶縁層33は、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)である。第1絶縁層33の厚みは、例えば、200nm〜300nmである。
【0059】
次に、透明積層膜40を構成する第1透明導電膜41を成膜する。その後、透明絶縁膜42を成膜する。第1透明導電膜41は、例えば、ITOである。透明絶縁膜42は、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)である。第1透明導電膜41の製造方法としては、たとえば、スパッタ法によって製造することができる。透明絶縁膜42の製造方法としては、例えば、CVD法を用いて製造することができる。
【0060】
次に、図6(c)に示すように、遮光層18の上方に成膜された透明絶縁膜42の部分42aを除去する。具体的には、例えば、フォトリソグラフィ法、及びエッチング法によって、遮光層18の上方に溝部45を形成する。これにより、表示領域Eを囲むように、第1透明導電膜41の一部の表面41aが露出する。言い換えれば、表示領域Eを囲むように、繋がった溝部45が形成される。
【0061】
次に、図7(d)に示すように、透明絶縁膜42を含む第2基板12上の全体を覆うように、透明積層膜40を構成する第2透明導電膜43を成膜する。第2透明導電膜43は、例えば、ITOである。これにより、透明絶縁膜42上及び溝部45の中に第2透明導電膜43が成膜される。言い換えれば、遮光層18の上方において、溝部45を介して第1透明導電膜41と第2透明導電膜43の一部とが電気的に接続されたことになる。
【0062】
このように、断面的に凸状に設けられた遮光層18を利用して、この上方において第1透明導電膜41と第2透明導電膜43とを電気的に接続するので、透明絶縁膜42の厚みを薄くすることが可能となり、更に、透明絶縁膜42における溝部45(接続部分)の開口形状をなだらかな形状にすることができる。よって、溝部45を含む基板上の全体に膜厚の比較的薄い(例えば、20nm)第2透明導電膜43を成膜したとしても、溝部45の中の第2透明導電膜43が段切れになることを抑えることができる。よって、確実に第1透明導電膜41と第2透明導電膜43とを電気的に接続させることができる。その結果、2つの透明導電膜41,43の抵抗を下げることができる。
【0063】
次に、図7(e)に示すように、透明積層膜40上に第2絶縁層44、共通電極31、図示しない配向膜32を、公知の方法によって成膜することにより、対向基板20側が完成する。この後、素子基板10と対向基板20とをシール材14を介して貼り合わせ、例えば、液晶注入口から液晶を注入し、その後、液晶注入口を封止して液晶装置100が完成する。
【0064】
<電子機器の構成>
図8は、上記した液晶装置を備えた電子機器(反射型の投射型表示装置:液晶プロジェクター)の構成を示す模式図である。以下、電子機器の構成について、図8を参照しながら説明する。
【0065】
図8に示すように、本実施形態の電子機器としての液晶プロジェクター1500は、システム光軸Lに沿って配置された偏光照明装置1100と、3つのダイクロイックミラー1111,1112,1115と、2つの反射ミラー1113,1114と、3つの光変調素子としての反射型の液晶ライトバルブ1250,1260,1270と、クロスダイクロイックプリズム1206と、投射レンズ1207とを備えている。
【0066】
偏光照明装置1100は、ハロゲンランプなどの白色光源からなる光源としてのランプユニット1101と、インテグレーターレンズ1102と、偏光変換素子1103とから概略構成されている。
【0067】
偏光照明装置1100から射出された偏光光束は、互いに直交して配置されたダイクロイックミラー1111とダイクロイックミラー1112とに入射する。光分離素子としてのダイクロイックミラー1111は、入射した偏光光束のうち赤色光(R)を反射する。もう一方の光分離素子としてのダイクロイックミラー1112は、入射した偏光光束のうち緑色光(G)と青色光(B)とを反射する。
【0068】
反射した赤色光(R)は反射ミラー1113により再び反射され、液晶ライトバルブ1250に入射する。一方、反射した緑色光(G)と青色光(B)とは反射ミラー1114により再び反射して光分離素子としてのダイクロイックミラー1115に入射する。ダイクロイックミラー1115は緑色光(G)を反射し、青色光(B)を透過する。反射した緑色光(G)は液晶ライトバルブ1260に入射する。透過した青色光(B)は液晶ライトバルブ1270に入射する。
【0069】
液晶ライトバルブ1250は、反射型の液晶パネル1251と、反射型偏光素子としてのワイヤーグリッド偏光板1253とを備えている。
【0070】
液晶ライトバルブ1250は、ワイヤーグリッド偏光板1253によって反射した赤色光(R)がクロスダイクロイックプリズム1206の入射面に垂直に入射するように配置されている。また、ワイヤーグリッド偏光板1253の偏光度を補う補助偏光板1254が液晶ライトバルブ1250における赤色光(R)の入射側に配置され、もう1つの補助偏光板1255が赤色光(R)の射出側においてクロスダイクロイックプリズム1206の入射面に沿って配置されている。なお、反射型偏光素子として偏光ビームスプリッターを用いた場合には、一対の補助偏光板1254,1255を省略することも可能である。
【0071】
このような反射型の液晶ライトバルブ1250の構成と各構成の配置は、他の反射型の液晶ライトバルブ1260,1270においても同じである。
【0072】
液晶ライトバルブ1250,1260,1270に入射した各色光は、画像情報に基づいて変調され、再びワイヤーグリッド偏光板1253,1263,1273を経由してクロスダイクロイックプリズム1206に入射する。クロスダイクロイックプリズム1206では、各色光が合成され、合成された光は投射レンズ1207によってスクリーン1300上に投射され、画像が拡大されて表示される。
【0073】
本実施形態では、液晶ライトバルブ1250,1260,1270における反射型の液晶パネル1251,1261,1271として上記実施形態における液晶装置100が適用されている。
【0074】
このような液晶プロジェクター1500によれば、反射型の液晶装置100を液晶ライトバルブ1250,1260,1270に用いているので、コントラストや透過率を向上させることが可能な反射型の液晶プロジェクター1500を提供できる。
【0075】
以上詳述したように、本実施形態の液晶装置100、及び電子機器によれば、以下に示す効果が得られる。
【0076】
(1)本実施形態の液晶装置100によれば、遮光層18の上層に透明絶縁膜42を設けた場合、遮光層18の上方の透明絶縁膜42の厚みを薄くすることが可能となり、更に、透明絶縁膜42における溝部45(接続部分)の開口形状をなだらかな形状にすることができる。よって、溝部45を含む基板上の全体に膜厚の比較的薄い(例えば、20nm)第2透明導電膜43を成膜したとしても、溝部45の中において第2透明導電膜43が段切れになることを抑えることができる。よって、確実に第1透明導電膜41と第2透明導電膜43とを電気的に接続させることができ、2つの透明導電膜41,43の抵抗を下げることが可能となり、透明導電膜を薄膜化したことによる共通電極31の電位が追従しにくくなることを抑えることができる。加えて、コントラストや透過率を向上させることができると共に、透明積層膜40がチャージアップされることを抑えることができる。
【0077】
(2)本実施形態の液晶装置100によれば、表示領域Eの外周を囲む遮光層18を凸部として利用するので、新たに凸部を設ける場合と比較して、製造工程が増えることを抑えることができる。
【0078】
(3)本実施形態の電子機器によれば、上記に記載の液晶装置100を備えているので、透明積層膜40の導通を確実に行うことができ、表示品質を向上させることが可能な電子機器を提供することができる。
【0079】
なお、本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、本発明の技術範囲に含まれるものである。また、以下のような形態で実施することもできる。
【0080】
(変形例1)
上記したように、第1透明導電膜41と第2透明導電膜43とを電気的に接続することに限定されず、例えば、図9に示すような構成であってもよい。図9は、対向基板の変形例の構造を示す模式断面図である。図9に示すように、変形例の対向基板120は、第2基板12上に遮光層18が設けられており、遮光層18を覆うように第1絶縁層133が設けられている。
【0081】
なお、遮光層18の上方にある第1絶縁層133には遮光層18まで貫通する溝部が設けられており、溝部及び第1絶縁層133を覆うように第1透明導電膜141が設けられている。これにより、遮光層18と第1透明導電膜141が電気的に接続されている。更に、上記実施形態と同様に、透明絶縁膜142を介して第2透明導電膜143が設けられており、遮光層18の上方に設けられた溝部を介して、第1透明導電膜141と第2透明導電膜143とが電気的に接続されている。
【0082】
この構成によれば、第1透明導電膜141と第2透明導電膜143とが電気的に接続されていることに加えて、これらが遮光層18と電気的に接続されているので、透明導電膜141,143の抵抗を更に下げることが可能となり、透明導電膜を薄膜化したことによる共通電極31の電位が追従しにくくなることを抑えることができる。
【0083】
なお、遮光層18は、上記したように、アルミニウム合金のみで構成されることに限定されず、例えば、アルミニウム合金(例えば、AlSi)上に、窒化チタン(TiN)を積層するようにしてもよい。これによれば、遮光層18が腐蝕することを抑えることができる。更に、遮光層18の上側において第1絶縁層133に貫通溝を形成する際のエッチングストッパーとしても機能させることができる。アルミニウム合金(AlSi)の厚みは、例えば、100nm〜200nmである。窒化チタン(TiN)の厚みは、例えば、50nmである。
【0084】
(変形例2)
上記したように、反射型の液晶装置100に適用することに限定されず、透過型の液晶装置に適用するようにしてもよい。これによれば、透過型の液晶プロジェクターを用いることができる。
【0085】
(変形例3)
上記したように、凸部として遮光層18を用いることに限定されず、例えば、ブラックマトリックス(BM)や上下導通端子の導通パッドなどを凸部として用いるようにしてもよい。また、対向基板側に設けられた凸部に限定されず、素子基板側に設けられた凸部を用いるようにしてもよい。
【0086】
(変形例4)
上記したように、凸部として、表示領域を囲むように周囲に繋がった遮光膜を用いることに限定されず、例えば、領域ごとに区切られた凸部を用いるようにしてもよい。これによれば、凸部のない領域の上方において透明導電膜が段切れになったとしても、他の凸部が設けられた上方において確実に第1透明導電膜41と第2透明導電膜43とを電気的に接続させることができる。
【0087】
(変形例5)
上記したように、透明導電膜において平面的に表示領域を囲むように繋がった溝部45を設けることに限定されず、例えば、周囲に亘って繋がった溝部でなくてもよい。これによれば、第1透明導電膜41と第2透明導電膜43との接続面積が少なくなるものの、従来と比較して抵抗を下げることができる。
【0088】
(変形例6)
上記したように、電子機器として投射型表示装置(プロジェクター)1500を例に説明してきたが、これに限定されず、例えば、ビューワー、ビューファインダー、ヘッドマウントディスプレイなどに適用するようにしてもよい。また、液晶テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサー、ビューファインダー型又はモニター直視型のビデオテープレコーダー、ワークステーション、モバイル型のパーソナルコンピューター、テレビ電話、POS端末、ページャー、電卓、タッチパネルなどの各種電子機器、また、電子ペーパーなどの電気泳動装置、カーナビゲーション装置等に適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
3a…走査線、3b…容量線、6a…データ線、10…素子基板、11…第1基板、12…透光性基板としての第2基板、14…シール材、15…液晶層、16…容量素子、18…凸部としての遮光層(遮光膜)、20,120…対向基板、22…データ線駆動回路、24…走査線駆動回路、25…検査回路、26…上下導通部、27…画素電極、28,32…配向膜、29…配線、30…TFT、31…共通電極、33,133…第1絶縁層、40…透明積層膜、41,141…第1透明導電膜、41a…表面、42,142…透明絶縁膜、42a…部分、43,143…第2透明導電膜、44…第2絶縁層、45…溝部、61…外部接続端子、100…液晶装置、1100…偏光照明装置、1101…ランプユニット、1102…インテグレーターレンズ、1103…偏光変換素子、1111,1112,1115…ダイクロイックミラー、1113,1114…反射ミラー、1206…クロスダイクロイックプリズム、1207…投射レンズ、1250,1260,1270…液晶ライトバルブ、1251,1261,1271…反射型の液晶パネル、1253,1263,1273…ワイヤーグリッド偏光板、1254,1255…補助偏光板、1300…スクリーン、1500…液晶プロジェクター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子基板と、
前記素子基板に対向するように配置された対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板との間に挟持された液晶層と、を含み、
前記対向基板は、透光性基板と、
前記透光性基板の前記液晶層側に配置された第1透明導電膜と、
前記第1透明導電膜の前記液晶層側に配置され、前記第1透明導電膜より屈折率が低い透明絶縁膜と、
前記透明絶縁膜の前記液晶層側に配置され、前記透明絶縁膜よりも屈折率が高い第2透明導電膜と、
前記透光性基板と前記第1透明導電膜との間に配置された凸部と、を備え、
前記第1透明導電膜と前記第2透明導電膜とは、少なくとも前記凸部の一部と平面的に重なる領域において電気的に接続されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置であって、
前記凸部の厚みは、前記第1透明導電膜の膜厚、及び前記第2透明導電膜の膜厚よりも厚いことを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液晶装置であって、
前記凸部の厚みは、前記透明絶縁膜の厚みよりも厚いことを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
画像を表示する領域である表示領域を有し、
前記凸部は、前記表示領域の外周を囲む遮光膜であることを特徴とする液晶装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記凸部は、前記素子基板と前記対向基板との間の導通をとるための導通パッドであることを特徴とする液晶装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の液晶装置であって、
前記凸部と前記第1透明導電膜とが電気的に接続されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の液晶装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−92711(P2013−92711A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235727(P2011−235727)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】