説明

液晶装置、液晶装置の駆動回路、液晶装置の駆動方法および電子機器

【課題】多階調表示を行う液晶装置において、データ線駆動回路の構成を簡素化し、かつトランジスタの低耐圧化、データ線駆動回路の低消費電力化を実現すること。
【解決手段】1画素に、独立した階調信号を与えることができる一対の液晶電極2a,2bを設ける。画像データを上位ビットと下位ビットに分割し、上位ビットに対応した階調電圧(Da(i))および下位ビットに対応した階調電圧(Db(i))の各々を、液晶電極(2a,2b)の各々に印加し、各液晶電極の電圧の差分(Da(i)−Db(i))によって液晶(LC)を駆動し、所望の階調を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置、液晶装置の駆動回路、液晶装置の駆動方法および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置において、表示階調数が増大するとデータ線を駆動するデータ線駆動回路の構成が複雑化する。例えば、必要な階調電圧が増大するため、階調電圧生成回路の構成が複雑化する。また、複数の階調電圧の中から一つを選択するためのスイッチの数が、階調数に応じて増大する。
【0003】
また、表示階調数が増えれば、階調電圧を生成するために、高レベルの電源電圧が必要となり、必要な耐圧を得るためには、トランジスタのサイズを大きくする必要が生じる。また、電源電圧のレベルが上がれば、階調電圧生成回路における消費電力も増大する。
【0004】
表示階調数の増大に対応可能なデータ線駆動回路を実現する技術としては、例えば、特許文献1に記載される技術がある。特許文献1の技術では、データ線駆動回路において、CDAC(容量D/A変換器)を用いて、隣接する階調電位よりも細かな電位を生成することによって多階調化を図っている。
【0005】
また、特許文献2には、本発明に関連する技術が記載されている。すなわち、特許文献2には、一つの画素に、別々のデータ線に接続される一対のトランスファースイッチと、一対の液晶電極と、を設ける画素構造を採用し、1画素の液晶を、2本のデータ線の差分の電圧で駆動する液晶装置が記載されている。
【特許文献1】特開平9−198012号公報
【特許文献2】特開2003−302942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、階調電圧の数は減らすことができるが、CDAC(容量D/A変換器)の構成が複雑化し、回路全体としての回路の簡素化という点では十分とはいない。
【0007】
また、特許文献2に開示される技術における画素構造自体は、本発明で使用する画素構造と同じである。しかし、特許文献2の場合、2本のデータ線に印加されるのは、「仮想センター電位に対して差分の絶対値がほぼ同じで極性が異なる表示データ信号」、「固定電位と表示データ信号」、「正書き込みと負書き込みで2値をとる共通信号(com)信号と表示データ信号」のいずれかである。この場合、所望の表示階調は実現できる。しかし、データ線駆動回路の構成の簡素化や、データ線駆動回路に用いられるトランジスタの低耐圧化、あるいはデータ線駆動回路の低消費電力化には直結しない。
【0008】
本発明はこのような考察に基づいてなされたものであり、その目的は、多階調表示を行う液晶装置において、データ線駆動回路の構成を大幅に簡素化すると共に、データ線駆動回路に用いられるトランジスタの低耐圧化ならびにデータ線駆動回路の低消費電力化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の液晶装置の一態様では、n行m列(nおよびmは2以上の自然数)のマトリクス状に配置された複数の画素と、n本の走査線と、前記複数の画素の1列毎に、対をなす第1のデータ線および第2のデータ線が設けられてなる2m本のデータ線と、複数ビットの階調データを上位ビットおよび下位ビットに分割して得られる前記上位ビットに対応した第1の階調電圧を生成し、前記下位ビットに対応した第2の階調電圧を生成するデータ線駆動回路と、を有し、前記複数の画素の各々は、共通の前記走査線によってオン/オフが制御される第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子を経由して前記第1のデータ線から前記第1または第2の階調電圧が供給される第1の画素電極と、前記第2のスイッチング素子を経由して前記第2のデータ線から前記第2または第1の階調電圧が供給される第2の画素電極と、を含む。
【0010】
複数ビットの階調データを上位ビットと下位ビットに分割し、上位ビットおよび下位ビットに対応した第1および第2の階調電圧を生成し、第1および第2の階調電圧の各々を、1画素に設けられた一対の液晶電極の各々に供給することによって、多階調表示を実現するものである。ビット数が増えると、階調電圧の数(ならびに、その階調電圧を選択するためのスイッチ数)が2のべき乗で増大するが、本発明の構成によれば、階調データが上位ビットと下位ビットに2分割されるため、ビット数が半減し、これによって、必要な階調電圧の数(ならびに、その階調電圧を選択するためのスイッチ数)が大幅に削減される。よって、データ線駆動回路の構成の簡素化を図ることができる。また、下位ビット側の階調電圧の変化レンジ(ダイナミックレンジ)は小さいため、下位ビット側の階調電圧の生成に関係する回路には、低耐圧の素子を利用可能であり、かつその回路は低い電源電圧で動作可能となる。したがって、データ線駆動回路(ならびに液晶装置)の小型化、低消費電力化、低コスト化を併せて実現することができる。
【0011】
(2)本発明の液晶装置の他の態様では、前記データ線駆動回路は、2k(kは1以上の自然数)ビットの前記階調データを、上位kビットおよび下位kビットに分割して得られる前記kビットの上位ビットに対応した前記第1の階調電圧を生成し、前記kビットの下位ビットに対応した前記第2の階調電圧を生成する。
【0012】
上位ビットと下位ビットの分割の方法は種々あり、特定の方法に限定されるものではないが、階調データの総ビット数が2kビット(kは1以上の自然数)であれば、kビットずつに等分するのが最も効率的である。上位ビットによって決まる階調電圧数と、下位ビットによって決まる階調電圧数が等しくなり、シンメトリーな回路構成を実現し易い。また、複数の階調電圧の中から一つを選択するためのスイッチの数も、上位用/下位用が同数となり、シンメトリーな回路構成となり、最もコンパクトなレイアウトを実現し易くなる。
【0013】
(3)本発明の液晶装置の他の態様では、前記データ線駆動回路は、2k−1(kは2以上の自然数)ビットの前記階調データを、上位kビットおよび下位(k−1)ビットに分割して得られる前記kビットの上位ビットに対応した前記第1の階調電圧(Da(i))を生成し、前記(k−1)ビットの下位ビットに対応した前記第2の階調電圧(Db(i))を生成する。
【0014】
階調データの総ビット数が奇数ビット(すなわち2k―1ビット)である場合に、階調データを上位ビット/下位ビットに分割する方法の一例を明らかとしたものである。すなわち、本態様では、kビットの上位ビットと、(k−1)ビットの下位ビットに分割する。上位と下位の各ビット数が最も近くなるように分割することによって、上位および下位の各々の選択用スイッチ数を最も少なくでき、スイッチ数の差も最小化されるため、各スイッチを密に配置し易くなり、レイアウト上有利である。
【0015】
(4)本発明の液晶装置の他の態様では、前記データ線駆動回路は、2k−1(kは2以上の自然数)ビットの前記階調データを、上位(k−1)ビットおよび下位kビットに分割して得られる、前記(k−1)ビットの上位ビットに対応した前記第1の階調電圧(Da(i))を生成し、前記kビットの下位ビットに対応した前記第2の階調電圧(Db(i))を生成する。
【0016】
階調データの総ビット数が奇数ビット(すなわち2k―1ビット)である場合に、階調データを上位ビット/下位ビットに分割する方法の他の例を明らかとしたものである。すなわち、本態様では、(k−1)ビットの上位ビットと、kビットの下位ビットに分割する。上位と下位の各ビット数が最も近くなるように分割することによって、上位および下位の各々の選択用スイッチ数を最も少なくでき、スイッチ数の差も最小化されるため、各スイッチを密に配置し易くなり、レイアウト上有利である。
【0017】
(5)また、本発明の液晶装置の他の態様では、前記データ線駆動回路は、前記kビットの上位ビットで定まる階調レンジに相当する電圧を2−1分割することによって、等電圧間隔の、2個の、上位ビットに対応した階調電圧を生成し、また、前記上位ビットに対応した階調電圧をVHp(pは1から2−1までの整数)とし、前記下位ビットに対応した階調電圧をVLs(sは1から2−1までの整数)としたとき、VLs−VLs−1={VHp−VHp−1}/2なる電圧関係が成立する等電圧間隔の、2個の、下位ビットに対応した階調電圧を生成し、前記2個の、上位ビットに対応した前記階調電圧の各々に対応して設けられたスイッチのうちの一つを選択的にオンさせて、選択された前記上位ビットに対応した前記階調電圧を、前記第1のデータ線または前記第2のデータ線に供給し、前記2個の、下位ビットに対応した前記階調電圧の各々に対応して設けられたスイッチのうちの一つを選択的にオンさせて、選択された前記下位ビットに対応した前記階調電圧を、前記第2のデータ線または前記第1のデータ線に供給する。
【0018】
上記(2)の液晶装置(階調データの総ビット数が偶数であり、上位と下位を等ビットで分割する態様の液晶装置)における上位および下位の各階調電圧の生成態様を明らかとし、かつ、生成された上位および下位の階調データの中から一つをスイッチで選択する点を明らかとしたものである。階調電圧の生成は、例えば、ラダー抵抗から複数の分圧電圧をパラレルに引き出すことによって得ることができ、この場合、回路構成の簡素化、階調電圧の高速かつ効率的な生成が可能である。また、複数の階調電圧の中から一つを選択するスイッチとして、例えば、アナログスイッチ等を用いれば、所望のレベルの階調電圧を高速かつ正確に選択することができる。
【0019】
(6)本発明の液晶装置の他の態様では、前記データ線駆動回路は、前記データ線駆動回路は、前記kビットの上位ビットで定まる階調レンジに相当する電圧を2−1分割することによって、等電圧間隔の、2個の、上位ビットに対応した階調電圧を生成し、また、前記上位ビットに対応した階調電圧をVHp(pは1から2−1までの整数)とし、前記下位ビットに対応した階調電圧をVLs(sは1から2(k−1)−1までの整数)としたとき、VLs−VLs−1={VHp−VHp−1}/2(k−1)なる電圧関係が成立する等電圧間隔の、2(k−1)個の、下位ビットに対応した階調電圧を生成し、前記2個の、上位ビットに対応した階調電圧の各々に対応して設けられたスイッチのうちの一つを選択的にオンさせて、選択された前記上位ビットに対応した前記階調電圧を、前記第1のデータ線または前記第2のデータ線に供給し、2(k−1)個の、下位ビットに対応した前記階調電圧の各々に対応して設けられたスイッチのうちの一つを選択的にオンさせて、選択された前記下位ビットに対応した前記階調電圧を、前記第2のデータ線または前記第1のデータ線に供給する。
【0020】
上記(3)の液晶装置(階調データの総ビット数が奇数であり、上位をkビット、下位をk−1ビットに分割する態様の液晶装置)における上位および下位の各階調電圧の生成態様を明らかとし、かつ、生成された上位および下位の階調データの中から一つをスイッチで選択する点を明らかとしたものである。
【0021】
(7)また、本発明の液晶装置の他の態様では、前記データ線駆動回路は、前記k−1ビットの上位ビットで定まる階調レンジに相当する電圧を(2(k−1)−1)分割することによって、等電圧間隔の、(2(k−1)−1)個の、上位ビットに対応した階調電圧を生成し、また、前記上位ビットに対応した階調電圧をVHp(pは1から{2(k−1)−1}までの整数)とし、前記kビットの下位ビットに対応した階調電圧をVLs(sは1から2−1までの整数)としたとき、VLs−VLs−1={VHp−VHp−1}/2なる電圧関係が成立する等電圧間隔の、2個の、下位ビットに対応した階調電圧を生成し、前記2(k−1)個の、上位ビットに対応した階調電圧の各々に対応して設けられたスイッチのうちの一つを選択的にオンさせて、選択された前記上位ビットに対応した階調電圧を、前記第1のデータ線または前記第2のデータ線に供給し、2個の、下位ビットに対応した階調電圧の各々に対応して設けられたスイッチのうちの一つを選択的にオンさせて、選択された前記下位ビットに対応した階調電圧を、前記第2のデータ線または前記第1のデータ線に供給する。
【0022】
上記(4)の液晶装置(階調データの総ビット数が奇数であり、上位をk−1ビット、下位をkビットに分割する態様の液晶装置)における上位および下位の各階調電圧の生成態様を明らかとし、かつ、生成された上位および下位の階調データの中から一つをスイッチで選択する点を明らかとしたものである。
【0023】
(8)本発明の液晶装置の他の態様では、前記データ線駆動回路は、前記第1の階調電圧を生成する第1の階調電圧生成回路と、前記第2の階調電圧を生成する第2の階調電圧生成回路と、を有する。
【0024】
第1および第2の階調電圧の各々に対応させて、別個に階調電圧生成回路(第1および第2の階調電圧生成回路)を設けるものである。別個の階調電圧生成回路とすることによって、上位/下位のビット数等に応じた最適な回路構成を実現することができる。
【0025】
(9)本発明の液晶装置の他の態様では、前記データ線駆動回路は、前記第1のデータ線および前記第2のデータ線の各々に、前記第1の階調電圧および前記第2の階調電圧の各々を、周期的に交互に供給する。
【0026】
1画素の一対の液晶電極に、第1および第2の階調電圧を交互に印加すること(交流化)によって、液晶の焼き付き防止が可能であり、また、フィードスルーに起因する、液晶に印加される電圧の変動を相殺して表示品質の低下を抑制する効果も得られる。
【0027】
(10)本発明の液晶装置の他の態様では、前記データ線駆動回路は、前記第1のデータ線および前記第2のデータ線の各々に、前記第1の階調電圧および前記第2の階調電圧の各々を、1フレーム期間毎に交互に供給する。
【0028】
液晶電極の交流駆動を、1フレーム単位で行うことを明らかとしたものである。1画面毎の交流化は、高速な回路動作が不要であるため、実現が容易である。
【0029】
(11)本発明の液晶装置の他の態様では、前記データ線駆動回路は、第Q列(Qは1からm−1までの任意の整数)の前記画素に関して、前記第1および第2のデータ線の各々に前記第1の階調電圧および前記第2の階調電圧の各々を供給する場合には、第Q+1列の画素に関して、前記第1および第2のデータ線の各々に前記第2の階調電圧および前記第1の階調電圧の各々を供給する。
【0030】
走査線方向に隣接する画素に関し、第1の液晶電極と第2の液晶電極に印加する階調電圧の種類を入れ替えることによって、フリッカを低減することができる。
【0031】
(12)本発明の液晶装置の他の態様では、前記データ線駆動回路における、前記第2の階調電圧の生成あるいは経路選択に関与するトランジスタの耐圧は、前記第1の階調電圧の生成あるいは経路選択に関与するトランジスタの耐圧に比べて低く設定されている。
【0032】
下位ビット側の階調電圧の変化レンジ(ダイナミックレンジ)は小さいため、下位ビット側の階調電圧の生成や経路選択に関係する回路には、低耐圧の素子(サイズの小さなトランジスタ)を利用することが可能である。よって、回路の占有面積の増大を、効率的に抑制することができる。
【0033】
(13)本発明の液晶装置の他の態様では、前記データ線駆動回路における、前記第2の階調電圧を生成する回路の高レベル電源電圧は、前記第1の階調電圧を生成する回路の高レベル電源電圧に比べて低く設定されている。
【0034】
また、下位ビット側の階調電圧の変化レンジ(ダイナミックレンジ)は小さいため、下位ビット側の階調電圧の生成に関係する回路は、上位ビットに対応する階調電圧を生成する回路に比べて、低い電源電圧で動作可能となる。したがって、データ線駆動回路(ならびに液晶装置)の低消費電力化、低コスト化を図ることができる。
【0035】
(14)本発明の電子機器は、本発明の液晶装置を搭載する。
【0036】
本発明の液晶装置は、小型化、低消費電力化、低コスト化に適しているため、結果的に、電子機器の小型化、低消費電力化、低コスト化も達成される。
【0037】
(15)本発明のデータ線駆動回路の一態様は、複数ビットの階調データを、上位ビットおよび下位ビットに分割して得られる、前記の上位ビットに基づいて、前記上位ビットに対応した複数の第1の階調電圧を生成する第1の階調電圧生成回路と、前記下位ビットに基づいて、前記下位ビットに対応した複数の第2の階調電圧を生成する第2の階調電圧生成回路と、前記複数の第1の階調電圧の中から一つを選択するためのスイッチ回路および前記複数の第2の階調電圧の中から一つを選択するためのスイッチ回路を含む出力回路と、を有する。
【0038】
これによって、小型、低消費電力、低コストのデータ線駆動回路を得ることができる。
【0039】
(16)本発明のデータ線駆動回路の一態様では、階調データ数の変換回路を、さらに有する。
【0040】
これによって、例えば、液晶の電気光学特性に合わせて、柔軟なγ補正を無理なく行うことが可能となる。
【0041】
(17)本発明の液晶装置の駆動方法の一態様は、アクティブマトリクス型の複数の画素を有する液晶装置の駆動方法であって、複数ビットの階調データを上位ビットおよび下位ビットに分割して得られる前記上位ビットに基づいて第1の階調データを生成し、前記下位ビットに基づいて第2の階調データを生成し、1画素に設けられる第1の液晶電極と第2の液晶電極の各々に、前記第1の階調電圧および前記第1の階調電圧とは逆極性の前記第2の階調電圧の各々を供給し、かつ、前記第1の液晶電極および前記第2の液晶電極の各々に、前記第1の階調電圧および前記第2の階調電圧を、周期的に交互に供給する。
【0042】
これによって、一対の液晶電極の各々に、階調電圧を印加する新規な駆動方法が実現される。また、1対の液晶電極に供給する階調電圧の種類を、交互に周期的に入れ替えることによって、交流化が実現される。交流化に際しては、例えば、走査線方向に隣接する画素において、1対の液晶電極に供給する階調電圧の種類を逆にすることによって、フリッカの低減を図るといった応用も可能である。
【0043】
本発明によれば、多階調表示を行う高精細液晶装置において、データ線駆動回路の構成を大幅に簡素化すると共に、データ線駆動回路に用いられるトランジスタの低耐圧化ならびにデータ線駆動回路の低消費電力化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが、本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0045】
(第1の実施形態)
(液晶装置の全体構成)
【0046】
液晶装置は、液晶を介して対向配置される一対の基板を有し、一方の基板の液晶側の面には、x方向に延在しy方向に並設される走査線GLと、y方向に延在しx方向に並設されるデータ線DLとが形成されている。
【0047】
各走査線GLのそれぞれは、少なくともその一端側にて走査線駆動回路20と接続され、この走査線駆動回路20によって走査線駆動信号G(1)、G(2)、……、G(n)が順次供給されるようになっている。
【0048】
また、各データ線DLのそれぞれは、少なくともその一端側にてデータ線駆動回路30と接続され、このデータ線駆動回路30によって、例えば、図中左側から画像信号Da(1)、Db(2)、Da(2)、Db(2)、……、Da(m)、Db(m)が、各走査線駆動信号Gの供給のタイミングに合わせて供給されるようになっている。
【0049】
互いに隣接する一対の走査線GLと、画像信号Da、Dbが供給されるデータ線DLであって互いに隣接する一対のデータ線DLとで囲まれた各領域を画素とし、これら画素の集合体を画素部10として構成している。
【0050】
従って、n行m列のマトリクス状の画素に対し、n本の走査線GLと、2m本のデータ線DLを有する構成となっている。
【0051】
また、走査線駆動回路20およびデータ線駆動回路30のそれぞれには、タイミング制御回路50から走査線駆動制御信号21およびデータ線駆動制御信号31が入力され、前記走査線駆動信号Gおよび画像信号Da、Dbを出力するようになっている。なお、符号51は電源や表示データなどの外部入力信号である。
【0052】
(画素の構成)
図2は、図1の液晶装置の画素部における各画素の構成の一例を示す図である。各画素において、まず、その走査線GLからの走査線駆動信号G(i)(i=1、2、……)によってオン/オフが制御される一対の薄膜トランジスタ(TFT:トランスファースイッチとしてのNMOSトランジスタ)1a、1bが配置されている。この薄膜トランジスタ1a、1bは各々MIS(metal insulator semiconductor)型のトランジスタから構成され、それらのゲート電極が走査線GLに接続されている。
【0053】
また、薄膜トランジスタ1aのゲート電極を除く各電極のうち一方の電極(便宜上ドレイン電極と称する場合がある)は画像信号Daが供給されるデータ線DLに接続され、薄膜トランジスタ1bのゲート電極を除く各電極のうち一方の電極(便宜上ドレイン電極と称する場合がある)は画像信号Dbが供給されるデータ線DLに接続されている。
【0054】
すなわち、1画素には、一対のトランスファースイッチとしてのTFT(1a,1b)が含まれている。一対のTFT(1a,1b)の各々のゲートは共通の走査線GLに接続され、各々のTFTの一端は、一対のデータ線の各々(Da(1),Db(1))に接続され、各々のTFTの他端は、液晶(LC)の一対の画素電極(2a,2b)の各々に接続されている。
【0055】
画素電極2aと画素電極2bの間には液晶LCが存在し、その画素電極2aと画素電極2bとの間の電圧差による電界によって液晶LCの分子の配向が変化し、光透過率が変化する。
【0056】
例えば、画素電極2aには、階調画像データの上位ビットの画像データに対応する画像電圧が印加され、画素電極2bには、階調画像データの下位ビットの画像データに対応する画像電圧が印加される(この点は、後述する)。
【0057】
一対の画素電極(2a,2b)は、独立した2本のデータ線(一対のデータ線)によって駆動され、かつ、各電極に印加される階調電圧の極性は周期的に反転する必要がある。一対の液晶電極(2a,2b)を交互に極性反転するための画素構造は、2つの電極(2a,2b)が共に、一方の基板側に設けられる、いわいる横電界方式の液晶を用いると実現が容易となる(但し、これに限定されるものではない)。
【0058】
横電界方式の液晶には、IPS(イン・プレーン・スイッチング)方式の液晶が含まれる。また、FFS(フリンジ・フィールド・スイッチング)方式の液晶は、漏れ電界方式あるいは斜め電界方式と呼ばれるが、横方向の電界を利用して液晶分子の配向を制御している点で、IPS方式の液晶と共通している。したがって、本明細書では、横電界方式の液晶には、FFS方式の液晶に含めて取り扱う。
【0059】
(画素の駆動)
図3は、画素の駆動タイミングを示すタイミング図である。図3において、VSTはスタート信号である。VCK1およびVCK2はクロック信号である。これらは走査線駆動制御信号21に含まれる。
【0060】
走査線駆動信号G(1)、G(2)、G(3)・・・はクロック信号VCK1およびVCK2に同期して位相が順に変化する。また、スタート信号VSTの周期ごとに極性が切り替えられ、いわゆる交流化を図っている。
【0061】
従って、例えば1行目の走査線駆動信号G(1)により駆動される1画素において、あるフレームでは、画像信号(階調電圧)Da、Db(すなわち上位ビットの画像信号と下位ビットの画像信号)が各々、電極2a,2bに与えられているとすると、次のフレームでは、画像信号Da,Dbが与えられる電極が入れ替えられる。これにより、焼き付き防止の効果が得られる。また、フィードスルーに起因する液晶への印加電圧の変動の影響を低減する効果もある(この点は、図14を参照して後述する)。
【0062】
また、例えば、m行n列目の画素では、画像信号Da、Db(すなわち上位ビットの画像信号と下位ビットの画像信号)が各々、電極2a,2bに与えられているとすると、その隣の(m+1)行n列目の画素では、画像信号Da、Dbを各々、電極2b,2aに与えるのが望ましい。つまり、隣接する画素(ドット)毎に極性を反転させることによって、フリッカの低減を図ることができる。
【0063】
また、同様に、1水平期間(1H)毎(つまり、1走査線毎)に画像信号Da(i)、Db(i)を与える画素電極を入れ替える(液晶の極性を切り替える)のが望ましい。フリッカの低減を図るためである。
【0064】
(画素の駆動の具体例)
図4(A)、図4(B)は、一対の画素電極の各々に供給される、上位ビットおよび下位ビットに対応した階調電圧の各々(Vda’(i)ならびにVdb’(i))の入出力特性(入力階調に対する階調電圧)を示す図である。
【0065】
なお、以下の説明では、一対の画素電極の各々に供給される階調電圧の各々(Vda’(i)ならびにVdb’(i))を、一対の書き込み電圧と記載する場合がある。
【0066】
図4(A)は正極性書き込み時の入出力特性を示し、図4(B)は負極性書き込み時の入出力特性を示す。一対の画素電極の各々に印加される、上位ビットおよび下位ビットに対応した階調電圧(Vda’(i)とVdb’(i))の差分が、各画素の液晶(LC)に印加される電圧(VLC)となる。上述のとおり、Vda’(i)とVdb’(i)を、例えば、フレーム毎に入れ替える(印加する電極を切り替える)ことにより交流化が可能である。この交流化は、焼き付き防止の効果をもつだけでなく、フィードスルーによる影響の低減の効果をもつ。
【0067】
図14は、一対の書き込み電圧(Vda’(i)とVdb’(i))の交流化による効果(フィードスルーによる影響低減の効果)を説明するための図である。フィードスルーとは、トランスファースイッチとしてのMOSトランジスタのゲートをオン/オフすると、寄生容量を経由して電圧変化成分が液晶(LC)側に伝達され、液晶(LC)への印加電圧が変動する現象をいう。
【0068】
図14には、実際の駆動状態における画素電極2a、画素電極2bに印加される画像信号(Da(i),Db(i))の電圧波形と、トランスファースイッチ(NMOSトランジスタ)のゲート電圧(VGate)の電圧波形と、画素電極2aならびに画素電極2bに印加される実質的な電圧の時間変化を示す電圧波形(V(2a),V(2b))と、が示される。V(2a),V(2b)は、図中、太線で示されている。
【0069】
図14において、太線の矢印で示されるVLCが、液晶の両端に印加される電圧(液晶の駆動電圧)VLCである。ここで注目すべきは、期間T1(正極性書込み期間)と期間T2(負極性書込み期間)とでは、VLCの矢印の向きが逆になっていることである。
【0070】
図示されるように、トランスファースイッチ(NMOSトランジスタ1a,1b)のゲートがオンレベルからオフレベルに変化するタイミングにおいて、フィードスルーによって、画素電極2aならびに画素電極2bに印加される実質的な電圧(V(2a),V(2b))が瞬時的に変動するが、正極性書込み期間(T1)と負極性書込み期間(T2)においてほぼ同量の変動が生じるため、フィードスルーの影響は、時間軸上で相殺される。このように、一対の画素電極2a,2bに与える画像信号(Da(i),Db(i))を、例えば1フレーム毎に入れ替える(極性反転する)ことによって、より効果的に表示の劣化を防止することができる。
【0071】
(データ線駆動回路の内部構成の一例(64階調を実現する場合))
次に、データ線駆動回路30の内部構成について説明する。図5は、データ線駆動回路(データ線駆動IC)の構成を示すブロック図である。
【0072】
図示されるように、データ線駆動回路(データ線駆動IC)30は、制御回路9と、2個の階調電圧生成回路(21a,21b)と、データバスからの各色(RGB)の各画像データをラッチする入力レジスタ24と、各色の画像データを一時的に蓄積するストレージレジスタ25と、レベルシフタ26と、出力回路27と、を有している。
【0073】
制御回路9は、入力される同期信号(Vsync,Hsyncならびにイネーブル信号ENA)ならびに動作クロック(CLK)に基づいて、制御信号を生成し、その制御信号によって各部の動作タイミングを制御する。
【0074】
入力レジスタ24は、動作クロック(CLK)に同期して、各色毎の6ビットの画像データを、出力本数分だけ取り込む。
【0075】
ストレージレジスタ25は、同じく動作クロック(CLK)に同期して、入力レジスタ24からの画像データをパラレルにラッチする。
【0076】
ストレージレジスタ25にラッチされた画像データは、レベルシフタ26によってレベルシフトされた後、出力回路27に与えられる。
【0077】
階調電圧生成回路(21a,21b)の各々は、3値の基準電源電圧(Vref1,Vref2,vref3)に基づいて64階調分の階調電圧を生成する。階調電圧生成回路21aは、画像データの上位ビットに対応した階調電圧を生成する。階調電圧生成回路21bは、画像データの下位ビットに対応した階調電圧を生成する。なお、以下の説明では、「階調電圧」のことを、「階調電圧」という場合もある。
【0078】
階調電圧生成回路(21a,21b)にて生成された、上位ビットならびに下位ビットに対応した階調電圧の各々は、電圧バス(28a,28b)を経由して出力回路27に与えられる。
【0079】
出力回路27は、各色(RGB)用の一対の画像信号Da(i),Db(i)(すなわち、Da(1)〜Da(m),Db(1)〜Db(m))を生成し、データ線(DL)に向けて出力する。
【0080】
図5のデータ線駆動回路30の特徴は、データ線(DL)に向けて出力される画像信号(階調電圧)が、一対のデータ線に対応してDa(i)、Db(i)の2系統となっていることであり、また、これに対応して、2系統の階調電圧生成回路(21a,21b)が設けられていることである。
【0081】
図6は、液晶の電気光学特性の一例を示す図である。図5のデータ線ドライバ9は、図6に示す電気光学特性を有する液晶を使用して64階調を実現する。
【0082】
図示されるように、図6の液晶は、駆動電圧(VLC)に対して光透過率がリニア(理想的な線形)に変化する領域(液晶駆動電圧Voff〜Vonに対応した領域)をもつものとする。実際の液晶は、このような理想的な線形の電気光学特性をもたないが、ここでは、本発明の液晶の原理的な動作をわかりやすく説明するために、図6のような電気光学的特性をもつ液晶を想定するものである。
【0083】
図5のデータ線ドライバ30は、図6の液晶のリニア領域(液晶駆動電圧Voff〜Vonに対応した領域)を使用して、64階調を表現するものとする。
【0084】
(ビット分割液晶駆動方式の原理)
64階調を実現するためには、単純に考えれば、64個の階調電圧が必要となるが、本発明では、液晶(LC)の両極に、上位ビットに対応した階調画像信号と、下位ビットの階調画像信号を同時に印加し、両電極の電圧の差分によって液晶(LC)を駆動する。
【0085】
ビット分割は、以下のように行う。すなわち、64(2の6乗)階調を表現するためには、6ビット幅の画像データが必要である。そこで、ここでは、上位3ビットと下位3ビットに分割する(特に限定されるものではない)。
【0086】
上位ビットならびに下位ビットは共に3ビットであり、よって、上位ビットならびに下位ビットの各々に対応して、8個の基準電圧(階調電圧)を準備すればよいことになり、合計で16個の基準電圧を用意すればよいことになる。よって、基準電圧数を、従来の64個に比べて1/4とすることができる。
【0087】
そして、第1の基準電圧群から1つを選択し、第2の基準電圧群から1つを選択し、両者の差分をとれば、64種類の階調を自在に表現できる。
【0088】
ここで、第1の基準電圧群から選択される電圧がDa(i)であり、第2の基準電圧群から選択される電圧がDb(i)である。
【0089】
液晶(LC)の一方の電極2aに、例えば、Da(i)が印加されるとすると、他方の電極2bには、Db(i)が印加される。これによって、液晶(LC)には、階調電圧(Da(i)−Db(i))が印加されたことになり、したがって、所望の階調の透過率が実現される。
【0090】
(階調駆動電圧生成回路の内部構成例)
本発明では、上位ビットに対応した階調電圧と下位ビットに対応した階調電圧を、各々区別して生成する必要がある。
【0091】
図7は、上位ビットに対応した階調電圧を生成する、上位ビット用の階調電圧生成回路の構成の一例(ラダー抵抗を用いる例)を示す回路図である。図8は、下位ビットに対応した階調電圧を生成する、下位ビット用の階調電圧生成回路の構成の一例(ラダー抵抗を用いる例)を示す回路図である。
【0092】
図示されるように、上位ビット用階調電圧生成回路21aおよび下位ビット用階調電圧生成回路21bは、基準電圧間に複数の抵抗を直列に接続した構成のラダー抵抗を有し、このラダー抵抗の各分圧点から各分圧電圧を引き出すことによって、必要な階調電圧を生成している。したがって、回路構成の簡素化、複数の階調電圧の高速かつ効率的な生成が可能である。
【0093】
なお、生成された複数の階調電圧の中から一つがスイッチ回路によって選択される。スイッチ回路としてアナログスイッチ等を用いれば、所望のレベルの階調電圧を高速かつ正確に選択することができる(この点は後述する)。
【0094】
図6のVonとVoffで示したリニアにみなせる区間を使って64階調を表現するために、図7の上位ビット用階調電圧生成回路21aでは、2つの基準電圧(Vref1とVref2)間を7(=2−1)個の分圧抵抗R1を用いて7等分し、これによって、等電位間隔の8レベルの階調電圧(VH0〜VH7)を生成する。
【0095】
図7の回路においては、階調電圧VH0として基準電圧Vref2をそのまま使用できるため、階調電圧1個分はすでに確保されていることになり、よって、Vref1とVref2との間を(2−1)分割すればよいことになる。
【0096】
一方、図8に示す下位ビット用階調電圧生成回路21bでは、vref3を8(=2)個の分圧抵抗を用いて分割している。なお、図8では、接地されている分圧抵抗はR3となっており、他の分圧抵抗はR2となっている。これによって、等電位間隔の8レベルの階調電圧(VL0〜VL7)が生成される。
【0097】
図7および図8の階調電圧生成回路の構成は一例であり、この構成に限定されるものではなく、種々、変形や応用が可能である。
【0098】
ここで、vref3は、図7の上位ビット用階調電圧(VH0〜VH7)の隣接する階調電圧の電圧値の差分(VHp−VHp−1:pは1〜7のいずれか)に相当する電圧である。
【0099】
よって、図8の階調電圧生成回路21bは、2つの基準電圧(Vref1とVref2)間を56(7×8)等分した、等電位間隔の、下位ビット用階調電圧(VL0〜VL7)を生成している。
【0100】
したがって、下位ビット用階調電圧(VL0〜VL7)において、隣接する階調電圧の電圧値の差分(VLs−VLs−1:sは1〜7のいずれか)は、{VHp−VHp−1}/8(=2)=(Vref1−Vref2)/56という関係式が成立する。
【0101】
図6のリニアとみなせるVon−Voff区間を用いて64階調を実現するためには、以下の2つの式を満たすように、各基準電圧Vref1〜Vref3を設定すればよいことになる。
(Vref1−Vref2)=8/9(Von−Voff)
(Vref2−Vref3)=Voff
【0102】
なお、図7および図8において、AF(1)〜AF(3)は、各基準電源電圧(Vref1〜Vref3)を与えるためのバッファである。また、BF0〜BF6ならびにKF0〜KF6は、ラダー抵抗か得られる分圧電圧の各々を出力するためのバッファである。これらのバッファは、電流駆動能力が不要のときは、設けなくてもよい。
【0103】
図7および図8の各階調電圧生成回路(21a,21b)を用いて階調を表現する場合の、階調電圧の選択例をあげると、次のようになる。
1/64階調:VH0およびVL0
2/64階調:VH0およびVL1


7/64階調:VH0およびVL7
8/64階調:VH1およびVL0
9/64階調:VH1およびVL1
【0104】
(出力回路の内部構成)
図9は、データ線駆動回路に設けられる出力回路の、1画素に対応する部分の回路構成を示す回路図である。
【0105】
図示されるように、データ線駆動回路30に設けられる出力回路27は、第1群の階調電圧(VH0〜VH7;Da(i))の中から一つを選択して出力し、また、第2群の階調電圧(VL7〜VL0;Db(i))の中から一つを選択して出力する。
【0106】
図9に示されるように、ラインL0〜L7の各々には、第1群の階調電圧(VH0〜VH7;Da(i))が印加され、ラインL10〜L17の各々には、第1群の階調電圧(VL7〜VL0;Db(i))が印加される。
【0107】
第1群の階調電圧(VH0〜VH7;Da(i))の中から一つを選択するためにスイッチSW1(単位スイッチS0〜S7をもつ)が設けられる。各単位スイッチS0〜S7は、制御回路9からの切替制御信号Q0〜Q7によって適宜、切り替えられる。
【0108】
また、第2群の階調電圧(VL7〜VL0;Db(i))の中から一つを選択するためにスイッチSW2(単位スイッチST7〜ST0をもつ)が設けられる。各単位スイッチST7〜ST0は、制御回路9からの切替制御信号J7〜J0によって適宜、切り替えられる。
【0109】
スイッチSW1によって選択された第1群の階調電圧(VH0〜VH7)のうちの一つは、出力バッファAS1(省略可能)に与えられる。また、スイッチSW2によって選択された第2群の階調電圧(VL7〜VL0)のうちの一つは、出力バッファAS2(省略可能)に与えられる。
【0110】
各出力バッファ(AS1,AS2)の出力端には、出力経路切替用のスイッチSW3ならびにスイッチSW4が接続されている。
【0111】
上述のとおり、例えば1フレーム期間(1V期間)毎に、1画素の電極2a,2bに与える階調電圧(Da(i),Db(i))を入れ替えて、焼付き防止とフィードスルーの影響軽減(図14参照)を図るのが望ましい。この階調電圧の入れ替えを実現するために、スイッチSW3とスイッチSW4が設けられている。
【0112】
スイッチSW3において、スイッチを端子aに接続するか端子bに接続するかは、制御回路9からの極性切替信号(M)によって制御される。同様に、スイッチSW4において、スイッチを端子aに接続するか端子bに接続するかは、制御回路9からの極性切替信号(M)によって制御される。これによって、出力バッファ(AS1,AS2)の各出力信号を、スイッチSW3およびスイッチSW4のどちらを経由して出力するかを、任意に切り替えることができる。このようにして、1画素の電極2a,2bに供給するための階調電圧Da(i),Db(i)(あるいはDb(i),Da(i))が、一対のデータ線DLに向けて出力される。
【0113】
なお、出力バッファ(AS1,AS2)は、スイッチSW3およびスイッチSW4の後に設けてもよく、また、電流駆動能力が不要であれば省略することもできる。
【0114】
また、上述のとおり、隣接する画素間では、フリッカを低減するために、Da(i)およびDb(i)と、出力バッファAS1および出力バッファAS2との関係を、互いに逆にするのが望ましい。
【0115】
このように、図9の構成では、1画素あたり、単位スイッチが合計で18個(S0〜S7の8個、ST0〜ST7の8個、SW3とSW4の2個)が使用される。また、1画素あたり、2個の出力バッファ(AS1,AS2)が使用される(但し、省略可能の場合がある)。
【0116】
図5のデータ線駆動回路(データ線駆動IC)30では、その長辺に沿ってVH7〜VH0、VL7〜VL0の合計16本の電圧バスが配線され、18×m(mは走査線方向の画素の数)個のスイッチと、2×m個の出力バッファ(省略可能)と、が設けられることになる。
【0117】
同様の構成を従来の方法でとるためには、64本の電圧バスと、64×m個のスイッチと、m個の出力バッファとが必要である。したがって、本実施形態によれば、データ線ドライバの大幅な簡素化を実現することができる。
【0118】
また、下位ビットを担当する階調電圧発生回路21bでは、下位ビットに対応する階調電圧のレンジが小さいことから、基準電圧電源Vref3は、上位ビットを担当する階調電圧発生回路21aの基準電源電圧Vref1よりも低く設定することができる。
【0119】
つまり、Vref1>Vref3となって、vref3が低電圧であるため、階調電圧生成回路21b内の出力バッファ(図8のAF(3))を構成するトランジスタを低耐圧トランジスタで構成することができる。よって、トランジスタサイズの縮小(ICの占有面積の削減)が可能である。
【0120】
また、出力バッファAF(3)の電源電圧を低電圧化することができることから、消費電力の削減も実現される。
【0121】
また、図9のスイッチSW2(ST0〜ST7)を構成するトランジスタと、出力バッファAS2と、を低耐圧トランジスタで構成することができる。よって、トランジスタサイズの縮小(ICの占有面積の削減)が可能である。
【0122】
また、出力バッファAS2の電源電圧を低電圧化することができる。よって、消費電力の削減も実現される。
【0123】
(第2の実施形態)
本実施形態では、複数ビットの階調データを上位ビットと下位ビットに分割し、上位と下位の各々に対応した複数の階調電圧を生成する場合の態様について、具体的に考察する。
【0124】
(ビット分割についての考察)
以下、階調データの総ビット数が偶数の場合と、奇数の場合とに分けて考察する。
【0125】
(1)階調データの総ビット数が偶数(すなわち、2kビット(kは1以上の自然数))の場合
上位ビットと下位ビットの分割の方法は種々あり、下記方法に限定されるものではないが、2kビット(kは1以上の自然数)の階調データであれば、kビットずつに等分するのが最も効率的である。上位ビットによって決まる階調電圧数と、下位ビットによって決まる階調電圧数が等しくなり、シンメトリーな回路構成を実現し易い。また、複数の階調電圧の中から一つを選択するためのスイッチの数も、上位用/下位用が同数となり、シンメトリーな回路構成となり、最もコンパクトなレイアウトを実現し易くなる。
【0126】
すなわち、上位ビットを担当する階調電圧生成回路21aと、下位ビットを担当する階調電圧生成回路21bは同等の回路で構成できる。また、出力回路27に設けられる、複数の階調電圧の中から一つを選択するための単位スイッチ(S0〜S7,ST0〜ST7)の数も、上位用/下位用が同数となり、シンメトリーな回路構成となり、最もコンパクトなレイアウトを実現し易くなる。
【0127】
また、上述のとおり、データ線駆動回路30では、1画素あたり、{2×2+2)個のスイッチと、2個の出力バッファ(省略可能)が設けられることになる。スイッチ数は、従来方式に比べて格段に少なくなる。
【0128】
例えば、上述の例のように、64(2の6乗)階調を実現する場合、6ビットを等分に分割する(つまり、3ビットずつに分割する)。下位ビットが担当するのは、8(2の3乗)階調分のレンジであり、上位ビットが担当するのは、56(64−8)階調分のレンジである。
【0129】
下位ビットが担当する8階調分のレンジはさらに細かく8(=2)分割され、細かく分割された各階調に対応する8つの電圧が、下位ビットを担当する階調電圧生成回路21bが出力する階調電圧となる。
【0130】
上位ビットが担当する56階調分のレンジは、7(=2−1)分割されて8レベルの階調電圧(上位ビットを担当する階調電圧生成回路21aが出力する階調電圧)が得られる。
【0131】
以上をより一般化すると、以下のようになる。必要な階調数を(Z)とすると、階調数のルートをとってZを求める。このZが下位ビットの階調レンジであり、上位ビットの階調レンジは、(Z−Z)となる。下位ビットの階調レンジは、さらにZ分割され、これによって、下位ビットを担当する階調電圧生成回路21bが出力するZ個の階調電圧(基準電圧)が決まる。また、上位ビットの階調レンジは、(Z−1)分割され、これによって、上位ビットを担当する階調電圧生成回路21aが出力するZ個の階調電圧が決まる。
【0132】
以上の説明をまとめると、以下のようになる。
【0133】
階調データの総ビット数が偶数(すなわち、2kビット(kは1以上の自然数))の場合において、等ビット分割(kビットずつに分割する方式)を採用する場合には、図1のデータ線駆動回路30は、kビットの上位ビットで定まる階調レンジに相当する電圧を(2−1)分割することによって、等電圧間隔の、2個の、上位ビットに対応した階調電圧(VH0〜VH2-1;Da(i))を生成する。
【0134】
また、上位ビットに対応した階調電圧をVHp(pは1から2−1までの整数)とし、下位ビットに対応した階調電圧をVLs(sは1から2−1までの整数)としたとき、VLs−VLs−1={VHp−VHp−1}/2なる電圧関係が成立する等電圧間隔の、2個の、下位ビットに対応した階調電圧(VL0〜VL2−1;Db(i))を生成する。
【0135】
また、データ線駆動回路30は、2個の、上位ビットに対応した階調電圧(VH0〜VH2−1;Da(i))の各々に対応して設けられたスイッチ(S0〜S2−1)のうちの一つを選択的にオンさせて、選択された前記上位ビットに対応した階調電圧(VH0〜VH2−1;Da(i))を、第1のデータ線または第2のデータ線に供給する。
【0136】
また、2個の、下位ビットに対応した階調電圧(VL0〜VL2−1;Db(i))の各々に対応して設けられたスイッチ(ST0〜ST2−1)のうちの一つを選択的にオンさせて、選択された下位ビットに対応した階調電圧(VL0〜VL2−1;Db(i))を、第2のデータ線または第1のデータ線に供給する。
【0137】
(2)階調データの総ビット数が奇数ビット((2k―1)ビット)である場合
この場合にも、ビット分割の方法は種々あり、下記方法に限定されるものではないが、以下の分割方式を採用するのが好ましい。
【0138】
すなわち、例えば、kビットの上位ビットと、(k−1)ビットの下位ビットに分割するのが好ましい。また、(k−1)ビットの上位ビットと、kビットの下位ビットに分割するのが好ましい。
【0139】
上位と下位の各ビット数が最も近くなるように分割することによって、上位および下位の各々の選択用スイッチ数を最も少なくでき、スイッチ数の差も最小化されるため、各スイッチを密に配置し易くなり、レイアウト上有利である。
【0140】
すなわち、上位kビット、下位(k−1)ビットに分割する場合には、データ線駆動回路30は、kビットの上位ビットで定まる階調レンジに相当する電圧を2−1分割することによって、等電圧間隔の、2個の、上位ビットに対応した階調電圧(VH0〜VH2-1;Da(i))を生成する。
【0141】
また、上位ビットに対応した階調電圧をVHp(pは1から2−1までの整数)とし、下位ビットに対応した階調電圧VLs(sは1から2(k−1)−1までの整数)としたとき、VLs−VLs−1={VHp−VHp−1)}/2(k−1)なる電圧関係が成立する等電圧間隔の、2(k−1)個の、下位ビットに対応した階調電圧(VL0〜VL2(k−1)−1;Db(i))を生成する。
【0142】
そして、2個の、上位ビットに対応した階調電圧(VH0〜VH2−1;Da(i))の各々に対応して設けられたスイッチ(S0〜S2−1)のうちの一つを選択的にオンさせて、選択された上位ビットに対応した階調電圧(VH0〜VH2−1;Da(i))を、第1のデータ線または第2のデータ線に供給し、2(k−1)個の、下位ビットに対応した階調電圧(VL0〜VL2(k−1)−1);Db(i))の各々に対応して設けられたスイッチ(ST0〜ST2(k−1)−1))のうちの一つを選択的にオンさせて、選択された下位ビットに対応した階調電圧(VL0〜VL2(k−1)−1;Db(i))を、第2のデータ線または第1のデータ線に供給する。
【0143】
同様に、上位(k−1)ビット、下位kビットに分割する場合には、データ線駆動回路30は、k−1ビットの上位ビットで定まる階調レンジに相当する電圧を2(k−1)−1分割することによって、等電圧間隔の、2(k−1)−1個の、上位ビットに対応した階調電圧(VH0〜VH2(k−1)−1;Da(i))を生成する。
【0144】
また、上位ビットに対応した階調電圧をVHp(pは1から{2(k−1)−1}までの整数)とし、kビットの下位ビットに対応した階調電圧をVLs(sは1から2−1までの整数)としたとき、VLs−VLs−1={VHp−VHp−1}/2なる電圧関係が成立する等電圧間隔の、2個の、下位ビットに対応した階調電圧(VL0〜VL2−1;Db(i))を生成する。
【0145】
そして、2(k−1)個の、上位ビットに対応した階調電圧(VH0〜VH2(k−1)−1;Da(i))の各々に対応して設けられたスイッチ(S0〜S2(k−1)−1)のうちの一つを選択的にオンさせて、選択された上位ビットに対応した階調電圧(VH0〜VH2(k−1)−1;Da(i))を、第1のデータ線または第2のデータ線に供給する。
【0146】
また、2個の、下位ビットに対応した階調電圧(VL0〜VL2−1;Da(i))の各々に対応して設けられたスイッチ(ST0〜ST2−1)のうちの一つを選択的にオンさせて、選択された下位ビットに対応した階調電圧(VL0〜VL2−1;Db(i))を、第2のデータ線または第1のデータ線に供給する。
【0147】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、液晶が理想的なリニア(線形)特性を有しているものとして説明したが、実際には、液晶の電気光学特性はリニアとはなりにくい。
【0148】
また、実際には何種類かのγカーブ(γ補正特性)を切り替えて使用するのが一般的である。あるいは、同一のデータ線駆動回路を、電気光学特性の異なる何種類かの液晶に共通に使用し、実際の使用に際して、データ線駆動回路の特性を微調整して使用することも多い。
【0149】
また、階調数も64階調でなく、例えば256階調が要求される場合もある。あるいは、RGBの色毎に電気光学特性が異なるため、各色毎に異なる電位レベルを使う場合もあり得る。
【0150】
このような場合に、従来方法(必要な階調数に対応した階調電圧とスイッチを用意し、いずれかのスイッチをオンさせて階調電圧の中から1つを選択する方式)を採用した場合には、液晶を1種類に限ったとしても、例えば、256×3(RGB)×(γの種類の数)の電圧バスと、256×m×(γの種類の数)個のスイッチと、が必要となり、データ線駆動回路30の回路規模は膨大なものとなり、現実には実現するのは困難である。
【0151】
フレームレートコントロール(FRC:液晶ディスプレイにおいて、実際よりも多くの色数を表現する方法)を採用することも考えられるが、60fps程度の高速な動画には対応できない。
【0152】
このような場合でも、本発明を適用することによって、比較的容易に対応することができる。すなわち、本発明によれば、階調数を多くしてもデータ線駆動回路の構成は現実的なレベルに収めることができる。
【0153】
よって、液晶の微妙な非線形の特性に対応できるように、例えば、ルックアップテーブルを用いて階調数の変換(階調数の増加)を行ったとしても、データ線駆動回路30の規模はそれほど大きくならない。
【0154】
以下の説明では、図10のような、非線形の電気光学特性をもつ液晶を想定する。図10のような非線形の電気光学特性に対応するためには、データ線駆動回路30における出力電圧と表示階調データとの関係を、図13に示すような、液晶とは逆の特性をもつように設定する必要がある。
【0155】
図11は、本発明の第3の実施形態にかかるアクティブマトリクス型液晶装置の、データ線駆動回路の構成を示すブロック図である。図11において、前掲の図面と共通する部分には同じ参照符号を付してある。図11のデータ線駆動回路30では、図5の構成に加えて、RGBの各色に対応したルックアップテーブルとデコーダ(DER)が追加されている。
【0156】
図11の液晶装置では、上述のような高度な要求に対応するために、本実施形態では、現実の表示階調数(264とする)を、例えば4倍(=1024)の階調数に変換する。
【0157】
例えば、図12に示すようなルックアップテーブル(このテーブルでは、図10の液晶の電気光学特性とは逆のγ特性を得ることができるようにデータが調整されている)により、RGBの各色に関して、256階調の画像データを、1024レベルにマッピングする。
【0158】
そして、上述のとおり、上位ビットを担当する階調電圧生成回路21aと、下位ビットを担当する階調電圧生成回路21bによって、実質的に1024階調に対応する階調電圧(等間隔の電位レベルをもつ)を個別に生成し、各階調電圧を、各画素の画素電極2a,2bの各々に印加し、各電極に印加される電圧の差分(つまり、上位ビットと下位ビットに対応する階調電圧の差電圧)によって、所望の階調表示を実現する。
【0159】
以下、図11の液晶装置における、ビット分割について具体的に考察する。階調変換後の階調数は1024(2の10乗)であり、10ビットの画像データとなる。よって、上位ビットと下位ビットに等分し、5ビットずつの画像データとする。
【0160】
下位ビットは、32(=2の5乗)階調分のレンジを担当し、上位ビットは、992(=1024−32)分の階調レンジを担当する。
【0161】
上位ビットを担当する階調電圧生成回路21aは、992階調分のレンジに相当する電源電圧を、31(=32−1)分割して、32個の上位ビット用の階調電圧を生成する。また、下位ビットを担当する階調電圧生成回路21bは、32階調分のレンジに対応する電圧を32分割して、32個の階調電圧を生成する。
【0162】
レベルシフタ26では、1画素あたり、64個(=32×2)のレベルシフト回路を設ければよく、1走査線に接続される画素をm個とすれば、レベルシフト回路の数は、(64×m)個となる。
【0163】
また、出力回路27における1画素あたりのスイッチ数は、66個(32×2+2)となり、1走査線に接続される画素をm個とすれば、全体のスイッチ数は、(66×m)個となる。
【0164】
従来方式の液晶装置の構成を図15に示す。図15の従来の液晶装置では、1024本の電圧バスと、1024×m個のスイッチと、256ビット×10ビットの3系統のルックアップテーブルと、1024×m個のレベルシフタと、が必要となり、非常に大規模な回路が必要となる。
【0165】
図11の本発明の液晶装置の場合、データ線駆動回路30は、64本の電圧バスと、66×m個のスイッチと、256×10ビット構成の3系統のルックアップテーブルと、64×m個のレベルシフタと、で構成することができる。よって、大幅な簡略化が可能となる。
【0166】
なお、本実施形態では、デコーダ(DER)をストレージレジスタ25とレベルシフタ26との間に設けたが、これに限定されるものではなく、入力レジスタ24とストレージレジスタ25との間、あるいはレベルシフタ26と出力回路27との間に設けてもよい。
【0167】
なお、フィードスルーのキャンセルが不十分な場合、先ほどのデコーダの手前に加算器を設け、極性に応じた値を加算、あるいは加算しないことにより、極性差の補正が可能である。
【0168】
(第4の実施形態)
本実施形態では、本発明のアクティブマトリクス型液晶装置(電気光学装置)を搭載した電子機器の例について説明する。
【0169】
(プロジェクタ)
まず、本発明の電気光学装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。図16は、本発明の電気光学装置(反射型液晶装置)を搭載したプロジェクタの全体構成を示す図である。
【0170】
図示されるように、プロジェクタ1100内部には、偏光照明装置1110がシステム光軸PLに沿って配置されている。この偏光照明装置1110において、ランプ1112からの出射光は、リフレクタ1114による反射で略平行な光束となって、第1のインテグレータレンズ1120に入射する。これにより、ランプ1112からの出射光は、複数の中間光束に分割される。この分割された中間光束は、第2のインテグレータレンズを光入射側に有する偏光変換素子1130によって、偏光方向が略々揃った一種類の偏光光束(s偏光光束)に変換されて、偏光照明装置1110から出射される。
【0171】
偏光照明装置1110から出射されたs偏光光束は、偏光ビームスプリッタ1140のs偏光光束反射面1141によって反射される。この反射光束のうち、青色光(B)の光束がダイクロイックミラー1151の青色光反射層にて反射され、反射型の電気光学装置100Bによって変調される。また、ダイクロイックミラー1151の青色光反射層を透過した光束のうち、赤色光(R)の光束は、ダイクロイックミラー1152の赤色光反射層にて反射され、反射型の液電気光学装置100Rによって変調される。
【0172】
一方、ダイクロイックミラー1151の青色光反射層を透過した光束のうち、緑色光(G)の光束は、ダイクロイックミラー1152の赤色光反射層を透過して、反射型の電気光学装置100Gによって変調される。
【0173】
このようにして、電気光学装置100R、100G、100Bによってそれぞれ色光変調された赤色、緑色、青色の光は、ダイクロイックミラー1152、1151、偏光ビームスプリッタ1140によって順次合成された後、投射光学系1160によって、スクリーン1170に投射されることとなる。なお、電気光学装置100R、100Bおよび100Gには、ダイクロイックミラー1151、1152によって、R、G、Bの各原色に対応する光束が入射するので、カラーフィルタは必要ない。
【0174】
本発明では、液晶装置の構成の簡素化、小型化、低消費電力化、低コスト化が図られているため、図16のプロジェクタも同様の利点を享受し得るという利点があり、例えば、ホームシアター用のプロジェクタとして有用である。なお、上述の例では反射型の液晶装置ならびに透過型表示の液晶装置のいずれを用いたプロジェクタであってもよい。
【0175】
(モバイル型コンピュータ)
次に、本発明の液晶装置(電気光学装置)を、モバイル型のパーソナルコンピュータに適用した例について説明する。図17は、本発明の電気光学機器を搭載したパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【0176】
図17において、コンピュータ1200は、キーボード1202を備えた本体部1204と、表示ユニット1206とから構成されている。この表示ユニット1206は、先に述べた電気光学装置100の前面にフロントライトを付加することにより構成されている。なお、この構成では、電気光学装置100を反射直視型として用いることになるので、画素電極118において、反射光が様々な方向に散乱するように、凹凸が形成される構成が望ましい。
【0177】
本発明の液晶装置は、構成の簡素化、小型化、低消費電力化、低コスト化が図られているため、図17のモバイルコンピュータも同様の利点を享受し得るという利点がある。低消費電力性に優れるため、バッテリを長寿命化することができるという利点もある。
【0178】
(携帯端末)
図18は、本発明の液晶装置を搭載した携帯端末(ここでは、携帯電話端末とする)の構成を示す斜視図である。
【0179】
同図において、携帯電話1300は、複数の操作ボタン1302のほか、受話口1304、送話口1306と共に、電気光学装置100を備えるものである。この電気光学装置100にも、必要に応じてその前面にフロントライトが設けられる。また、この構成でも、電気光学装置100が反射直視型として用いられることになるので、画素電極118に凹凸が形成される構成が望ましい。
【0180】
本発明の液晶装置は、構成の簡素化、小型化、低消費電力化、低コスト化が図られているため、図18の携帯端末も同様の利点を享受し得るという利点がある。低消費電力性に優れるため、携帯端末のバッテリを長寿命化することができるという利点もある。
【0181】
なお、本発明は、その他の電子機器(例えば、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等)にも適用が可能である。本発明によって、高精細な表示(多階調表示)が可能なコンパクトかつローコストの液晶装置を得ることができる。
【0182】
このように、本発明によれば、階調データを上位ビットと下位ビットに分割し、2本のデータ線の差分として画素電極に印加することにより、大幅に必要電位レベル(階調電圧)数を削減でき、データ線駆動回路の構成を簡略化することができる。
【0183】
また、下位ビット側の階調電圧の変化レンジ(ダイナミックレンジ)は小さいため、下位ビット側の階調電圧の生成に関係する回路には、低耐圧の素子を利用可能であり、かつその回路は低い電源電圧で動作可能となる。したがって、データ線駆動回路(ならびに液晶装置)の小型化、低消費電力化、低コスト化を実現できる。
【0184】
なお、本実施形態について詳述したが、本発明の新規事項および効果から逸脱しない範囲で、多くの変形が可能であることは、当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、すべて本発明に含まれるものとする。
【0185】
本発明は、データ線駆動回路を簡素化して、データ線駆動ICのチップ面積の削減と消費電力化を実現するという効果を奏し、したがって、小型、軽量、低コスト性が要求される携帯端末等の用途に最も適している。また、本発明の技術的思想は、他の電気光学装置にも応用することができる。
【0186】
このように、本発明は、液晶装置、液晶装置の駆動回路、液晶装置の駆動方法および電子機器として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】本発明のアクティブマトリクス型液晶装置の一例の全体構成を示す図
【図2】図1の液晶装置の画素部における各画素の構成の一例を示す図
【図3】画素の駆動タイミングを示すタイミング図
【図4】図4(A)、図4(B)は、一対の画素電極の各々に供給される階調電圧の各々の入出力特性(入力階調に対する階調電圧)を示す図
【図5】第1の実施形態におけるデータ線駆動回路(データ線駆動IC)の構成を示すブロック図
【図6】液晶の電気光学特性の一例(線形領域をもつ特性)を示す図
【図7】上位ビットを担当する階調電圧生成回路の基本的な構成を示す回路図
【図8】下位ビットを担当する階調電圧生成回路の基本的な構成を示す回路図
【図9】データ線駆動回路に設けられる出力回路の内部構成を示す回路図
【図10】液晶の電気光学的特性の他の例(線形領域を有さない例)を示す図
【図11】第3の実施形態におけるデータ線駆動回路(データ線駆動IC)の構成を示すブロック図
【図12】γ補正用のルックアップテーブルの内容の一例を示す図
【図13】表示階調と出力電圧レベルとの関係を示す図
【図14】本発明の液晶駆動方式において、交流化によってフィードスルーをキャンセルできることを説明するための図
【図15】1024階調を実現する場合の、従来の液晶装置の構成例を示すブロック図
【図16】本発明の液晶装置を搭載したプロジェクタの全体構成を示す図
【図17】本発明の液晶装置を搭載したパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図
【図18】本発明の液晶装置を搭載した携帯端末の構成を示斜視図
【符号の説明】
【0188】
1a,1b 1画素に設けられた一対のトランスファースイッチ(NMOSTFT)
2a,2b 1画素における液晶の一対の電極 LC 液晶 10 画素部
20 走査線駆動回路 21a 上位ビットを担当する階調電圧生成回路
21b 下位ビットを担当する階調電圧生成回路 30 データ線駆動回路
40 アクティブマトリクス型液晶装置 50 タイミング制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n行m列(nおよびmは2以上の自然数)のマトリクス状に配置された複数の画素と、
n本の走査線と、
前記複数の画素の1列毎に、対をなす第1のデータ線および第2のデータ線が設けられてなる2m本のデータ線と、
複数ビットの階調データを上位ビットおよび下位ビットに分割して得られる前記上位ビットに対応した第1の階調電圧を生成し、前記下位ビットに対応した第2の階調電圧を生成するデータ線駆動回路と、
を有し、
前記複数の画素の各々は、
共通の前記走査線によってオン/オフが制御される第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子を経由して前記第1のデータ線から前記第1または第2の階調電圧が供給される第1の画素電極と、前記第2のスイッチング素子を経由して前記第2のデータ線から前記第2または第1の階調電圧が供給される第2の画素電極と、を含む、
ことを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
請求項1記載の液晶装置であって、
前記データ線駆動回路は、
2k(kは1以上の自然数)ビットの前記階調データを、上位kビットおよび下位kビットに分割して得られる前記kビットの上位ビットに対応した前記第1の階調電圧を生成し、前記kビットの下位ビットに対応した前記第2の階調電圧を生成することを特徴とする液晶装置。
【請求項3】
請求項1記載の液晶装置であって、
前記データ線駆動回路は、
2k−1(kは2以上の自然数)ビットの前記階調データを、上位kビットおよび下位k−1ビットに分割して得られる前記kビットの上位ビットに対応した前記第1の階調電圧を生成し、前記k−1ビットの下位ビットに対応した前記第2の階調電圧を生成することを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
請求項1記載の液晶装置であって、
前記データ線駆動回路は、
2k−1(kは2以上の自然数)ビットの前記階調データを、上位k−1ビットおよび下位kビットに分割して得られる、前記k−1ビットの上位ビットに対応した前記第1の階調電圧を生成し、前記kビットの下位ビットに対応した前記第2の階調電圧を生成することを特徴とする液晶装置。
【請求項5】
請求項2記載の液晶装置であって、
前記データ線駆動回路は、
前記kビットの上位ビットで定まる階調レンジに相当する電圧を2−1分割することによって、等電圧間隔の、2個の、上位ビットに対応した階調電圧を生成し、
また、前記上位ビットに対応した階調電圧をVHp(pは1から2−1までの整数)とし、前記下位ビットに対応した階調電圧をVLs(sは1から2−1までの整数)としたとき、
VLs−VLs−1={VHp−VHp−1}/2なる電圧関係が成立する等電圧間隔の、2個の、下位ビットに対応した階調電圧を生成し、
前記2個の、上位ビットに対応した前記階調電圧の各々に対応して設けられたスイッチのうちの一つを選択的にオンさせて、選択された前記上位ビットに対応した前記階調電圧を、前記第1のデータ線または前記第2のデータ線に供給し、
前記2個の、下位ビットに対応した前記階調電圧の各々に対応して設けられたスイッチのうちの一つを選択的にオンさせて、選択された前記下位ビットに対応した前記階調電圧を、前記第2のデータ線または前記第1のデータ線に供給する、
ことを特徴とする液晶装置。
【請求項6】
請求項3記載の液晶装置であって、
前記データ線駆動回路は、
前記kビットの上位ビットで定まる階調レンジに相当する電圧を2−1分割することによって、等電圧間隔の、2個の、上位ビットに対応した階調電圧を生成し、
また、前記上位ビットに対応した階調電圧をVHp(pは1から2−1までの整数)とし、前記下位ビットに対応した階調電圧をVLs(sは1から2(k−1)−1までの整数)としたとき、
VLs−VLs−1={VHp−VHp−1}/2(k−1)なる電圧関係が成立する等電圧間隔の、2(k−1)個の、下位ビットに対応した階調電圧を生成し、前記2個の、上位ビットに対応した階調電圧の各々に対応して設けられたスイッチのうちの一つを選択的にオンさせて、選択された前記上位ビットに対応した前記階調電圧を、前記第1のデータ線または前記第2のデータ線に供給し、
(k−1)個の、下位ビットに対応した前記階調電圧の各々に対応して設けられたスイッチのうちの一つを選択的にオンさせて、選択された前記下位ビットに対応した前記階調電圧を、前記第2のデータ線または前記第1のデータ線に供給する、
ことを特徴とする液晶装置。
【請求項7】
請求項4記載の液晶装置であって、
前記データ線駆動回路は、
前記k−1ビットの上位ビットで定まる階調レンジに相当する電圧を(2(k−1)−1)分割することによって、等電圧間隔の、(2(k−1)−1)個の、上位ビットに対応した階調電圧を生成し、
また、前記上位ビットに対応した階調電圧をVHp(pは1から{2(k−1)−1}までの整数)とし、前記kビットの下位ビットに対応した階調電圧をVLs(sは1から2−1までの整数)としたとき、
VLs−VLs−1={VHp−VHp−1}/2なる電圧関係が成立する等電圧間隔の、2個の、下位ビットに対応した階調電圧を生成し、
前記2(k−1)個の、上位ビットに対応した階調電圧の各々に対応して設けられたスイッチのうちの一つを選択的にオンさせて、選択された前記上位ビットに対応した階調電圧を、前記第1のデータ線または前記第2のデータ線に供給し、
個の、下位ビットに対応した階調電圧の各々に対応して設けられたスイッチのうちの一つを選択的にオンさせて、選択された前記下位ビットに対応した階調電圧を、前記第2のデータ線または前記第1のデータ線に供給する、
ことを特徴とする液晶装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか記載の液晶装置であって、
前記データ線駆動回路は、
前記第1の階調電圧を生成する第1の階調電圧生成回路と、
前記第2の階調電圧を生成する第2の階調電圧生成回路と、
を有することを特徴とする液晶装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれか記載の液晶装置であって、
前記データ線駆動回路は、
前記第1のデータ線および前記第2のデータ線の各々に、前記第1の階調電圧および前記第2の階調電圧の各々を、周期的に交互に供給することを特徴とする液晶装置。
【請求項10】
請求項9記載の液晶装置であって、
前記データ線駆動回路は、
前記第1のデータ線および前記第2のデータ線の各々に、前記第1の階調電圧および前記第2の階調電圧の各々を、1フレーム期間毎に交互に供給することを特徴とする液晶装置。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか記載の液晶装置であって、
前記データ線駆動回路は、
第Q列(Qは1からm−1までの任意の整数)の前記画素に関して、前記第1および第2のデータ線の各々に前記第1の階調電圧の各々を供給する場合には、第Q+1列の画素に関して、前記第1および第2のデータ線の各々に前記第2の階調電圧の各々を供給する、ことを特徴とする液晶装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか記載の液晶装置であって、
前記データ線駆動回路における、前記第2の階調電圧の生成あるいは経路選択に関与するトランジスタの耐圧は、前記第1の階調電圧の生成あるいは経路選択に関与するトランジスタの耐圧に比べて低く設定されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項13】
請求項1〜請求項12のいずれか記載の液晶装置であって、
前記データ線駆動回路における、前記第2の階調電圧を生成する回路の高レベル電源電圧は、前記第1の階調電圧を生成する回路の高レベル電源電圧に比べて低く設定されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれか記載の液晶装置を搭載する電子機器。
【請求項15】
複数ビットの階調データを、上位ビットおよび下位ビットに分割して得られる、前記上位ビットに基づいて、前記上位ビットに対応した複数の第1の階調電圧を生成する第1の階調電圧生成回路と、
前記下位ビットに基づいて、前記下位ビットに対応した複数の第2の階調電圧を生成する第2の階調電圧生成回路と、
前記複数の第1の階調電圧の中から一つを選択するためのスイッチ回路および前記複数の第2の階調電圧の中から一つを選択するためのスイッチ回路を含む出力回路と、
を有することを特徴とするデータ線駆動回路。
【請求項16】
請求項15記載のデータ線駆動回路であって、
階調データ数の変換回路を、さらに有することを特徴とするデータ線駆動回路。
【請求項17】
アクティブマトリクス型の複数の画素を有する液晶装置の駆動方法であって、
複数ビットの階調データを上位ビットおよび下位ビットに分割して得られる前記上位ビットに基づいて第1の階調データを生成し、
前記下位ビットに基づいて第2の階調データを生成し、
1画素に設けられる第1の液晶電極と第2の液晶電極の各々に、前記第1の階調電圧および前記第1の階調電圧とは逆極性の前記第2の階調電圧の各々を供給し、
かつ、前記第1の液晶電極および前記第2の液晶電極の各々に、前記第1の階調電圧および前記第2の階調電圧を、周期的に交互に供給する、
ことを特徴とする液晶装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−250118(P2008−250118A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93098(P2007−93098)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】