説明

液晶装置の製造方法、液晶装置、および、液晶装置を備えた電子機器

【課題】簡単な構成で放電による回路構成の損傷を防止できる反射型液晶パネルの製造方法を提供する。
【解決手段】MOS−FETアレイ回路および画素電極が積層された積層領域317Cを含む表示素子部317が一面に複数配列形成され、隣り合う周縁電極317Bが離間する素子側マザー基板と、この素子側マザー基板の一面に対向配置され、素子側マザー基板の一面に対向する対向面に透明電極が設けられた対向側マザー基板と、を用い、素子側マザー基板の周縁電極317Bは、外周縁から隣接する他の周縁電極317Bに向けて突出し先端に向けて幅狭となる放電誘発部317Eを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置の製造方法、液晶装置、および、液晶装置を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター、デジタルカメラのビューファインダー等の電子機器におけるカラー画像表示部には、液晶装置等の電気光学装置が使用されている。近年、外光利用による省電力化、画素間の隙間を小さくして高品質な画像を表示できるという観点から反射型の液晶装置が注目されている。
この反射型の液晶装置は、一面に駆動回路、反射電極、および駆動回路により動作する液晶を含む表示素子部を表面に積層形成した素子基板と、この素子基板の一面と対向配置され、素子基板との対向面に透明電極が形成された対向基板と、これらの基板間に密閉封入される液晶素子とを含んで構成されている(例えば、特許文献1参照)。
このような反射型の液晶装置を製造する場合、単結晶シリコンやガラス等のマザー基板上に、複数の駆動回路および反射電極を積層形成し、表示素子部を構成する領域の回りにシール材を配置した後、シール材によって対向基板を貼り合わせ、液晶装置毎に切断する。
ここで、特許文献1に記載の技術では、切断後に液晶素子を注入する工程を実施するため、各液晶装置の反射電極の一部を、マザー基板の切断線まで拡張しておき、この反射電極の拡張された部分に沿ってシール材をマザー基板の切断線まで突出させる。
切断後の液晶装置は、この拡張部分で液晶注入口が開口形成されることとなるので、ここから液晶素子を注入し、最後にシール材を密閉することにより、液晶装置が完成する。
また、近年、プロジェクター等の電子機器では、機器の小型化に伴い、このような反射型の液晶装置の小型化、集積化も促進されており、反射電極の拡張された分部の直下まで駆動回路が形成されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−156796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の製造方法では、シール材が隣接した液晶表示素子部へ侵入して液晶表示素子部の分離時に隣接する液晶表示素子部を破壊する不都合を防止するため、液晶注入口に設けた反射電極の突出形状を、隣り合う反射電極と離間させている。
このため、特許文献1に記載のような液晶表示素子部の周囲の反射電極がそれぞれ独立する構成では、例えば単結晶シリコンマザー基板に配向膜を形成するなどの製造工程中、各液晶表示素子部や周囲の反射電極に静電気が帯電しやすい。特に、近年の液晶装置の小型化や集積化により、帯電した静電気が放電して回路構成を損傷するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて、簡単な構成で放電による回路構成の損傷を防止できる液晶装置の製造方法、液晶装置、および、液晶装置を備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に記載の液晶装置の製造方法は、一面に駆動回路および前記駆動回路に積層された反射電極を含む表示素子部が設けられた素子基板と、前記素子基板の一面に対向配置され、前記素子基板の一面に対向する対向面に透明電極が形成された対向基板と、前記素子基板と前記対向基板との間に、前記表示素子部を囲んで設けられたシール材と、前記素子基板と前記対向基板との間に挟持され、前記シール材で囲まれた領域内に封入された液晶と、を備えた液晶装置の製造方法であって、駆動回路および反射電極が積層された積層領域を含む表示素子部が一面に複数配列形成され、隣り合う反射電極が離間する素子側マザー基板と、前記素子側マザー基板の一面に対向配置され、前記素子側マザー基板の一面に対向する対向面に透明電極が設けられた対向側マザー基板と、を用い、前記素子側マザー基板における各表示素子部をそれぞれ囲む領域、または、前記対向側マザー基板における各表示素子部に対応する対向位置をそれぞれ囲む領域に、シール材を設けるシール材形成工程と、前記素子側マザー基板および前記対向側マザー基板を貼り合わせて貼り合わせ体を形成する貼り合わせ工程と、前記貼り合わせ体を各液晶装置毎に切断する切断工程と、貼り合わせ工程の前または切断工程の後に、シール材で囲まれた領域内に液晶を配置する液晶配置工程と、を実施し、前記素子側マザー基板の反射電極は、外周縁から隣接する他の反射電極に向けて突出し先端に向けて幅狭となる放電誘発部を有することを特徴とする。
この発明では、駆動回路および該駆動回路に積層された反射電極を含み駆動回路および反射電極が積層された積層領域を含む表示素子部が一面に複数配列形成され、かつ隣り合う反射電極が離間する素子側マザー基板であって、反射電極の外周縁に、隣接する他の反射電極に向けて突出し先端に向けて幅狭となる放電誘発部を設けたものを用いて製造する。このことにより、シール材が駆動回路や隣り合う反射電極に亘って設けられることによる回路構成の損傷を防止するために反射電極を離間して設けたことにより、製造時に静電気が反射電極に帯電しても、放電誘発部で積極的に放電される。このため、先端に向けて幅狭に突出する簡単な構成で、例えば表示素子部で放電するなどの駆動回路の損傷を防止でき、安定した特性を提供できる。
【0007】
そして、本発明では、前記放電誘発部は、先端が互いに対向する状態に、隣接する反射電極の外周縁にそれぞれ対をなして設けられていることが好ましい。
この発明では、隣接する反射電極の外周縁にそれぞれ対をなして設ける放電誘発部の先端が互いに対向するので、対をなす放電誘発部間で帯電する静電気を積極的に放電できる。このため、他の部位で放電して駆動回路が損傷する不都合を、簡単な構成で防止できる。
【0008】
また、本発明では、前記素子側マザー基板は、前記素子側マザー基板は、前記反射電極の外周縁に突出し、前記素子基板を切り出す際に切断されて液晶注入口を形成する拡張部がそれぞれ設けられたものが用いられ、前記放電誘発部は、この拡張部に設けられていることが好ましい。
この発明では、反射電極の外周縁に素子基板を切り出す際に切断されて液晶注入口を形成する拡張部を設けているので、この拡張部に亘ってシール材を設けて液晶が注入される液晶注入口を形成することで、液晶注入口が確実に形成でき、液晶を漏れなく注入できる。さらに、隣接する反射電極は離間するので、シール材が隣接する反射電極に亘って設けられることで素子側マザー基板を切断する際にシール材にて駆動回路を破損するという不都合も防止できる。そして、この液晶注入口を形成する拡張部に、放電誘発部を設けているので、隣り合う反射電極までの距離が短くなるので、容易に放電できるための間隙で形成する放電誘発部を小さく形成でき、製造性の向上が図れる。
【0009】
本発明に記載の液晶装置は、前述したいずれかの液晶装置の製造方法により形成されたことを特徴とする。
この発明では、表示素子部での放電による回路構成の損傷などを防止でき安定した特性を簡単な構成で提供できる本発明の液晶装置の製造方法で製造しているので、安定した特性を提供でき、簡単な構成による製造性の向上も図れる。
【0010】
本発明に記載の電子機器は、前述した液晶装置を備えたことを特徴とする。
この発明では、安定した特性を提供でき、簡単な構成による製造性の向上も図れる本発明の液晶装置を備えているので、安定した特性を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態におけるプロジェクターの概略構成を示す模式図。
【図2】上記実施形態における反射型液晶パネルの概略構成の一部を示す断面図。
【図3】上記実施形態における素子側マザー基板を拡大した一部を示す平面図。
【図4】上記実施形態におけるシール材を設けた素子側マザー基板の一部を示す平面図。
【図5】上記実施形態における素子側マザー基板の放電誘発部近傍を示す平面図。
【図6】上記実施形態における製造方法を示すフローチャート。
【図7】本発明の他の実施形態における素子側マザー基板の放電誘発部近傍を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクターの構成〕
図1に示すように、プロジェクター1は、光源から射出される光束を画像情報に応じて変調してカラー画像(画像光)を形成し、このカラー画像をスクリーンS上に拡大投射する。
このプロジェクター1は、光源部12、インテグレータレンズ13および偏光変換素子14を備えた偏光照明装置11と、この偏光照明装置11から出射されたS偏光光束をS偏光光束反射面16により反射させる偏光ビームスプリッター15と、偏光ビームスプリッター15のS偏光光束反射面16から反射された光のうち、青色光(B)の成分を分離するダイクロイックミラー17と、青色光が分離された後の光束のうち、赤色光(R)の成分を反射させて分離するダイクロイックミラー18とを有している。また、プロジェクター1は、各色光が入射する3つの反射型液晶装置30(赤色光側の反射型液晶装置を30R、緑色光側の反射型液晶装置を30G、青色光側の反射型液晶装置を30Bとする)を備えている。
【0013】
この3つの反射型液晶装置30は、シリコン基板上に液晶が形成されたいわゆるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)で構成されている液晶装置としての反射型液晶パネル31(反射型液晶装置30と同様に、各色光側の反射型液晶パネルを31R,31G,31Bとする)を備える。そして、各反射型液晶装置30は、図示しない各偏光分離素子を透過した光束の光軸に対して反射型液晶パネル31が略直交した状態でそれぞれ配置される。
反射型液晶パネル31は、図示しない制御装置からの駆動信号に応じて、液晶の配向状態が制御され、入射する光の光束の偏光方向を変調し、ダイクロイックミラー17,18に向けて反射する。
なお、反射型液晶パネル31の詳細な構成については、後述する。
【0014】
そして、プロジェクター1は、3つの反射型液晶装置30R,30G,30Bにて変調された光をダイクロイックミラー17,18、および偏光ビームスプリッター15にて合成した後、投射レンズ19を介して合成した合成光をスクリーンSに投写する。
【0015】
〔反射型液晶パネルの詳細な構成〕
次に、反射型液晶パネルの詳細な構成を図面に基づいて説明する。
図2は、反射型液晶パネルの概略構成の一部を示す断面図である。
【0016】
反射型液晶パネル31は、図2に示すように、駆動回路としてのMOS型電界効果トランジスター(以下、MOS−FET)アレイ回路311が一面に形成された素子基板310と、透明電極321が一面に形成された対向基板320との間に、液晶330を封入した構造である。
液晶330としては、エステル系、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、フェニルピリジン系、ジオキサン系など、各種材料を単独または適宜組み合わせて利用することができる。
【0017】
素子基板310は、例えばシリコンウエハーである素子側マザー基板301から切り出された板状に形成されている。なお、シリコンウエハーに限らず、対向基板320のように石英ガラスを用いてもよい。この素子基板310の一面には、MOS−FETアレイ回路311が設けられている。
MOS−FETアレイ回路311は、MOS−FET312とコンデンサー313とが配線314により直列接続され、マトリックス状に配列された複数の直列回路を備えている。各MOS−FET312は、ソース312S、ゲート312Gおよびドレイン312Dを備え、ドレイン312Dが配線314を介してコンデンサー313に接続され、ゲート312Gは図示しない液晶駆動用のドライバーICからの配線に接続されている。また、MOS−FETアレイ回路311は、素子基板310の一面に設けられた絶縁層315および絶縁層315内に設けられた遮光層316を備えている。遮光層316は、素子基板310の一面に沿った層状に設けられ、一部が切り欠かれている。
そして、MOS−FETアレイ回路311の絶縁層315上には、各直列回路の配置位置に応じてマトリックス状に配列された反射電極としての複数の画素電極317Aが形成され、各画素電極317A上には液晶330を含む複数の表示素子部317がマトリックス状に積層して設けられている。画素電極317Aは、遮光層316の切り欠かれた部分を介して、配線314によりMOS−FET312およびコンデンサー313の直列回路に接続されている。これらMOS−FETアレイ回路311、画素電極317Aおよび表示素子部317が積層する領域が、積層領域317Cとなる。
また、MOS−FETアレイ回路311の絶縁層315上には、マトリックス状に配列された複数の画素電極317Aの周囲に位置して、反射電極である周縁電極317B(図3参照)が積層して設けられている。
なお、素子基板310には、少なくとも表示素子部317に対応する領域に、配向処理が施されて図示しない配向膜が設けられている。
【0018】
対向基板320は、例えば石英ガラスなどのガラス基板である対向側マザー基板302から切り出された板状に形成されている。
そして、対向基板320の一面、すなわち素子基板310に対向する対向面には、例えばITO(Indium Tin Oxide)などのスパッタリングにより、透明電極321が設けられている。
【0019】
反射型液晶パネル31には、素子基板310と対向基板320との間に、表示素子部317の周囲を囲む状態で環状に設けられた図2では図示しないシール材が設けられている。
シール材としては、例えばアクリル系樹脂およびエポキシ系樹脂を配合した光・熱硬化性樹脂が利用できる。そして、シール材は、所定の粒径のシリカ球や樹脂球などのギャップスペーサーと、シリカ球や樹脂球の表面に金等の導電性材料が被覆形成された導電性のギャップスペーサーとを含み、これらのギャップスペーサーにより、素子基板310と対向基板320との対向距離を保持している。なお、シール材としては、このようなものに限られるものではなく、各種材料を利用できる。
そして、反射型液晶パネル31は、シール材と素子基板310と対向基板320とにより囲まれた領域に液晶330が封入されている。
また、反射型液晶パネル31には、表示素子部317の各MOS−FET312をオンオフさせる駆動電圧を印加するための複数の端子318(図3参照)が設けられている。なお、図3において、説明の都合上、端子318を11個設けた構成を示すが、この限りではない。
【0020】
〔反射型液晶パネルの製造方法〕
次に、反射型液晶パネル31の製造方法を、図面を参照して説明する。
図3は、素子側マザー基板を拡大した一部を示す平面図である。図4は、シール材を設けた素子側マザー基板の一部を示す平面図である。図5は、素子側マザー基板の放電誘発部近傍を示す平面図である。図6は、製造方法を示すフローチャートである。
なお、図3〜5は、素子側マザー基板の切断位置を一点鎖線および二点鎖線で示し、対向側マザー基板の切断位置を一点鎖線および点線で示す。
【0021】
まず、製造に際しての前処理として、図6に示すように、前処理工程S1を実施する。この前処理工程S1は、素子側マザー基板301および対向側マザー基板302とを、予め製造しておく。具体的には、シリコンウエハーの一面にMOS−FETアレイ回路311および図示しない配向膜が積層形成された素子側マザー基板301と、ガラス基板の一面に透明電極321が設けられた対向側マザー基板302とを製造しておく。
ここで、素子側マザー基板301は、図3に示すように、積層するMOS−FETアレイ回路311、表示素子部317、および、表示素子部317の周縁に位置して設けられた反射電極である周縁電極317Bが、反射型液晶パネル31毎に複数配列形成されている。周縁電極317Bは、それぞれ隣接する周縁電極317Bと電気的に接続されていない独立した島状構造に形成されている。
【0022】
そして、周縁電極317Bにおける端子318が設けられた側と反対側の縁の略中央には、舌片状に一連に突出する拡張部317Dが設けられている。
この拡張部317Dは、隣接する周縁電極317Bとの間隙が400μmとなるように形成されている。拡張部317Dと隣接する周縁電極317Bとの間隙は、100μm以上、好ましくは200μm以上となるように離間して形成することが好ましい。これは、拡張部317Dが隣接する周縁電極317Bの外周縁に近付きすぎると、後述する素子側マザー基板301の切断の際、素子側マザー基板301および周縁電極317Bに加わる応力により、周縁電極317Bが引っ張られてMOS−FETアレイ回路311が損傷するおそれがあるためである。
【0023】
さらに、周縁電極317Bには、拡張部317Dの先端縁の略中央に、先端に向けて幅狭となる平面視で略三角形状の放電誘発部317Eが、一連に突出形成されている。また、周縁電極317Bには、図3〜図6に示すように、隣接する周縁電極317Bに設けられた放電誘発部317Eに対向して、同形状に一連に突出する放電誘発部317Eが対をなすように設けられている。
これら放電誘発部317Eは、底辺が150μm、高さが190μmの三角形状に形成されている。また、対をなす放電誘発部317E間の間隙は、20μmに設計されている。これら対をなす放電誘発部317Eは、先端間の間隙が100μm以下、好ましくは20μm以下で形成されていることが好ましい。
【0024】
そして、前処理工程S1の後、シール材形成工程S2が実施される。
すなわち、シール材形成工程S2では、あらかじめ積層領域317Cが複数配列形成された素子側マザー基板301に、図4に示すように、拡張部317Dの突出する先端縁を始点および終点として、拡張部317Dに亘って各表示素子部317の周囲をそれぞれ囲んでシール材340を設ける。
【0025】
このシール材形成工程S2の後、貼り合わせ工程S3が実施される。
具体的には、素子側マザー基板301に、対向側マザー基板302を重ね合わせる。この重ね合わせの際、シール材340が対向側マザー基板302の間隙が均一な所定の値となるように、例えば20kPaで重ね合わせた方向で加圧する。そして、150℃で1時間加熱してシール材340を硬化させる。シール材340としては、熱硬化性のエポキシ樹脂を使用する。
【0026】
この貼り合わせ工程S3の後、切断工程S4が実施される。
具体的には、切断工程S4では、反射型液晶パネル31の外周縁に対応する位置(図4〜6中の一点鎖線、二点鎖線および点線)に、スクライバー(scriber)で罫書き線を刻みつけた後、素子側マザー基板301および対向側マザー基板302のそれぞれに面外方向から力を作用させ、液晶330が配置されていない反射型液晶パネル31である貼り合わせ体を切断する。すなわち、図3〜5中の一点鎖線および二点鎖線で示す位置で素子側マザー基板301を切断し、図3〜5中の一点鎖線および点線で示す位置で対向側マザー基板302を切断し、シール材340を介して素子基板310と対向基板320とが貼り合わされた図示しない貼り合わせ体を切断する。
この貼り合わせ体は、切断位置(図3〜5中の二点鎖線)に拡張部317Dおよびシール材340が位置するので、貼り合わせ体の外周縁に、シール材340と素子基板310と対向基板320とにて構成された液晶注入口317F(図4,5参照)が開口形成する状態となっている。
【0027】
この切断工程S4の後、液晶配置工程S5が実施される。
具体的には、液晶配置工程S5では、例えば133.322Pa(1Torr)程度まで減圧された環境下で、切断工程S4で切断した貼り合わせ体の液晶注入口317Fから液晶330を注入する。そして、大気圧下に解放後、液晶注入口317Fを封止して、反射型液晶パネル31が製造される。
【0028】
〔実施形態の作用効果〕
上述したように、上記実施形態では、MOS−FETアレイ回路311、画素電極317Aおよび表示素子部317が積層する積層領域317Cが一面に複数配列形成され、かつ表示素子部317の周囲に設けられた周縁電極317Bが隣り合う周縁電極317Bと離間する島状構造に形成された素子側マザー基板301として、周縁電極317Bの外周縁に、隣接する他の周縁電極317Bに向けて突出し先端に向けて幅狭となる放電誘発部317Eを設けたものを用いる。
すなわち、シール材340がMOS−FETアレイ回路311や隣り合う周縁電極317Bに亘って設けられることによるMOS−FETアレイ回路311の損傷などを防止するために周縁電極317Bを離間した島状構造に設ける。さらに、配向膜の形成などの製造時に発生する静電気が島状構造の周縁電極317Bに帯電しても、放電誘発部317Eで積極的に放電できる構成としている。
このため、先端に向けて幅狭に突出する簡単な構成の放電誘発部317Eで、例えば表示素子部317で放電するなどによるMOS−FETアレイ回路311の損傷を防止でき、安定した特性を提供できる。このため、製造時の製品の歩留まりが向上してコストの低減も図れる。
【0029】
そして、上記実施形態では、隣接する周縁電極317Bの外周縁に、先端が互いに対向し対をなす放電誘発部317Eをそれぞれ設けている。
このため、対をなす放電誘発部317E間で、周縁電極317Bに帯電する静電気を積極的に放電できる。したがって、他の部位で放電してMOS−FETアレイ回路311が損傷する不都合を、簡単な構成で防止できる。
【0030】
さらに、上記実施形態では、周縁電極317Bの外周縁に素子基板310を切り出す際に切断される拡張部317Dを設け、表示素子部317を囲み拡張部317Dに亘ってシール材340を設けて液晶330が注入される液晶注入口317Fを形成している。
このため、素子側マザー基板301から切り出した素子基板310の外周縁にシール材340の端部が位置する。このことにより、液晶注入口317Fが確実に構成され、液晶330を漏れなく注入できる。さらに、隣接する周縁電極317Bは離間するので、シール材340が隣接する周縁電極317Bに亘って設けられることで素子側マザー基板301を切断する際にシール材340にてMOS−FETアレイ回路311を破損するなどの不都合も防止できる。
【0031】
そして、上記実施形態では、拡張部317Dに放電誘発部317Eを設けている。
このため、隣り合う周縁電極317Bまでの距離が短い位置に設けているので、容易に放電できるための間隙となる放電誘発部317Eを小さく形成でき、製造性の向上が図れる。
【0032】
また、上記実施形態では、シール材340として導電性材料を含有するものを用いた。
このことにより、素子基板310のMOS−FETアレイ回路311と、対向基板320の透明電極321との電気的導通が得られる。このため、電気的導通の為の構成を別途設ける必要がなく、表示素子部317の画素毎にMOS−FET312をオンオフ可能な回路構成が得られ、製造性を向上できる。特に、導電性材料が、シリカ球のようにギャップスペーサーとして機能する為に所定の粒径に形成したものを用いることにより、シリカ球を用いることなく導電性材料のみで、所定の距離のセルギャップに設定でき、製品間での品質の安定化が得られる。
【0033】
〔実施形態の変形例〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
すなわち、放電誘発部317Eとして、隣接する周縁電極317Bに、先端が互いに対向して対をなすようにそれぞれ設けて説明したが、例えば図7に示すように、先端が互いに対向せず、互い違いに隣接する周縁電極317Bの外周縁に対向するように形成してもよい。なお、この場合、積極的に放電させるために間隙を所定の寸法以下に設定することが好ましいことから、距離が狭くなる位置である拡張部317Dに設けることが好ましい。そして、この場合の間隙の距離としては、50μm以下、好ましくは10μm以下とすることが好ましい。
さらに、隣接する周縁電極317Bの外周縁に向けて突出する放電誘発部317Eとしては、1つのみに限らず、複数設けてもよい。
そして、平面視で三角形状に形成したが、例えば先端部分のみ、先端に向けて幅狭となる三角形状としてもよい。さらには、次第に幅狭となる形状としては、二等辺三角形のような形状に限らず、直角三角形のように片側のみ傾斜する形状、さらにはフォーク状に複数突出する形状としてもよい。
【0034】
また、周縁電極317Bに拡張部317Dを設けて液晶注入口317Fを形成する構成を例示したが、拡張部317Dを有しない構成としてもよい。
この構成の場合、反射型液晶パネル31を製造する際には、表示素子部317の周囲を囲む環状にシール材340を形成した後、シール材340で囲まれた領域に液晶330を滴下して配置する。この後、例えば133.322Pa(1Torr)程度の減圧下で対向側マザー基板302を貼り合わせてシール材340を硬化させ、素子側マザー基板301および対向側マザー基板302を所定の位置で切断して反射型液晶パネル31を分離すればよい。
このような拡張部317Dを有しない周縁電極317Bでも、周縁電極317Bの外周縁に、隣接する周縁電極317Bの外周縁に向けて突出する放電誘発部317Eを設ければ、上述した実施形態と同様の作用効果を奏する。
さらに、この拡張部317Dを設けない構成では、シール材340が環状に形成されて切断位置を跨って設けられない。このため、切断時にシール材340に引張力が作用せず、シール材340に作用する引張力にて周縁電極317Bなどに引張力が作用して回路構成を損傷するなどの不都合も生じない。
【0035】
そして、本発明では、ギャップスペーサーおよび導電性のギャップスペーサーを含有するシール材340を用いたが、この限りではない。
例えば、シール材340とは別体のギャップスペーサーを用い、ギャップスペーサーを含有しないシール材340を用いてもよい。また、素子基板310と対向基板320との電気的導通が得られる別構成を設け、シール材340には導電性の材料を含有しない構成としてもよい。
さらに、熱硬化性のエポキシ樹脂に限らず、光硬化性のアクリル樹脂および熱硬化性のエポキシ樹脂を配合したもの、あるいは光硬化性のアクリル樹脂のみのものでもよい。
【0036】
また、素子側マザー基板301にシール材340を設けて説明したが、対向側マザー基板302に形成してもよい。
特に、拡張部317Dを有しない構成においては、対向側マザー基板302に、貼り合わされる素子側マザー基板301の表示素子部317に対応する対向位置を囲む位置に環状にシール材340を設ける。そして、このシール材340が設けられた対向側マザー基板302のシール材340に囲まれた対向位置内に、液晶330を滴下して素子側マザー基板301を貼り合わせてもよい。
【0037】
そして、上記実施形態では、三板式のプロジェクター1で使用される反射型液晶パネル31であり、各反射型液晶パネル31は単色を光変調する構成について説明したが、この限りではない。すなわち、石英ガラス基板上にRGBの三色のカラーフィルターを設けた反射型液晶パネルとしてもよい。このようなカラーフィルターを備えた反射型液晶パネルは、例えば、デジタルカメラ等のビューファインダーとして好適に利用することができる。さらには、反射型液晶パネル31を設けた電子機器として、携帯型ピコプロジェクター、ヘッドマウントディスプレイ、例えば車両のフロントガラスに投影される車載型のヘッドアップディスプレイ等にも適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1…電子機器としてのプロジェクター、31…液晶装置としての反射型液晶パネル、301…素子側マザー基板、302…対向側マザー基板、310…素子基板、311…駆動回路としてのMOS−FETアレイ回路、317…表示素子部、317B…反射電極としての周縁電極、317C…積層領域、317D…拡張部、317E…放電誘発部、317F…液晶注入口、320…対向基板、321…透明電極、330…液晶、340…シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に駆動回路および前記駆動回路に積層された反射電極を含む表示素子部が設けられた素子基板と、
前記素子基板の一面に対向配置され、前記素子基板の一面に対向する対向面に透明電極が形成された対向基板と、
前記素子基板と前記対向基板との間に、前記表示素子部を囲んで設けられたシール材と、
前記素子基板と前記対向基板との間に挟持され、前記シール材で囲まれた領域内に封入された液晶と、を備えた液晶装置の製造方法であって、
駆動回路および反射電極が積層された積層領域を含む表示素子部が一面に複数配列形成され、隣り合う反射電極が離間する素子側マザー基板と、
前記素子側マザー基板の一面に対向配置され、前記素子側マザー基板の一面に対向する対向面に透明電極が設けられた対向側マザー基板と、を用い、
前記素子側マザー基板における各表示素子部をそれぞれ囲む領域、または、前記対向側マザー基板における各表示素子部に対応する対向位置をそれぞれ囲む領域に、シール材を設けるシール材形成工程と、
前記素子側マザー基板および前記対向側マザー基板を貼り合わせて貼り合わせ体を形成する貼り合わせ工程と、
前記貼り合わせ体を各液晶装置毎に切断する切断工程と、
貼り合わせ工程の前または切断工程の後に、シール材で囲まれた領域内に液晶を配置する液晶配置工程と、を実施し、
前記素子側マザー基板の反射電極は、外周縁から隣接する他の反射電極に向けて突出し先端に向けて幅狭となる放電誘発部を有する
ことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記放電誘発部は、先端が互いに対向する状態に、隣接する反射電極の外周縁にそれぞれ対をなして設けられている
ことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液晶装置の製造方法であって、
前記素子側マザー基板は、前記反射電極の外周縁に突出し、前記素子基板を切り出す際に切断されて液晶注入口を形成する拡張部がそれぞれ設けられたものが用いられ、
前記放電誘発部は、この拡張部に設けられている
ことを特徴とする液晶装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の液晶装置の製造方法により形成された
ことを特徴とする液晶装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液晶装置を備えた
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−215452(P2011−215452A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84906(P2010−84906)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】