説明

液晶配向剤、液晶配向膜の形成方法および液晶表示素子

【課題】ラビング処理を行わずに偏光または非偏光の放射線照射によって、少ない露光量でも良好な液晶配向能を有する液晶配向膜を与える液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】上記液晶配向剤は、(A)下記式(1)


(式(1)中、Xは桂皮酸骨格を有する1価の有機基であり、複数のYは、それぞれ、塩素原子または炭素数1〜20のアルコキシル基であり、nは1〜3の整数である。)
で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解・縮合して得られるポリオルガノシロキサン、ならびに(B)ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜の形成方法および液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正の誘電異方性を有するネマチック型液晶を、液晶配向膜を有する透明電極付き基板でサンドイッチ構造にし、必要に応じて液晶分子の長軸が基板間で0〜360°連続的に捻れるようにしてなる、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、IPS(In Plane Switching)型等の液晶セルを有する液晶表示素子が知られている(特許文献1および2参照)。
このような液晶セルにおいては、液晶分子を基板面に対し所定の方向に配向させるため、基板表面に液晶配向膜を設ける必要がある。この液晶配向膜は、通常、基板表面に形成された有機膜表面をレーヨン等の布材で一方向にこする方法(ラビング法)により形成されている。しかし、液晶配向膜の形成をラビング処理により行うと、工程内でほこりや静電気が発生し易いため、配向膜表面にほこりが付着して表示不良発生の原因となるという問題があった。特にTFT(Thin Film Transistor)素子を有する基板の場合には、発生した静電気によってTFT素子の回路破壊が起こり、歩留まり低下の原因となるという問題もあった。さらに、今後ますます高精細化される液晶表示素子においては、画素の高密度化に伴い基板表面に凹凸が生じるために、均一にラビング処理を行うことが困難となりつつある。
液晶セルにおける液晶を配向させる別の手段として、基板表面に形成したポリビニルシンナメート、ポリイミド、アゾベンゼン誘導体等の感光性薄膜に偏光または非偏光の放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する光配向法が知られている。この方法によれば、静電気やほこりを発生することなく、均一な液晶配向を実現することができる(特許文献3〜13参照)。
ところで、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型等の液晶セルにおいては、液晶配向膜は、液晶分子を基板面に対して所定の角度で傾斜配向させる、プレチルト角特性を有する必要がある。光配向法により液晶配向膜を形成する場合においては、プレチルト角は、通常、照射する放射線の基板面への入射方向を基板法線から傾斜させることにより付与される。
【0003】
一方、上記とは別の液晶表示素子の動作モードとして、負の誘電異方性を有する液晶分子を基板に垂直に配向させる垂直(ホメオトロピック)配向モードも知られている。この動作モードでは、基板間に電圧を印加して液晶分子が基板に平行な方向に向かって傾く際に、液晶分子が基板法線方向から基板面内の一方向に向かって傾くようにする必要がある。このための手段として、例えば、基板表面に突起を設ける方法、透明電極にストライプを設ける方法、ラビング配向膜を用いることにより液晶分子を基板法線方向から基板面内の一方向に向けてわずかに傾けておく(プレチルトさせる)方法等が提案されている。
前記光配向法は、垂直配向モードの液晶セルにおいて液晶分子の傾き方向を制御する方法としても有用であることが知られている。すなわち、光配向法により配向規制能およびプレチルト角発現性を付与した垂直配向膜を用いることにより、電圧印加時の液晶分子の傾き方向を均一に制御できることが知られている(特許文献11〜12および14〜16参照)。
このように、光配向法により製造した液晶配向膜は、各種の液晶表示素子に有効に適用されうるものである。しかしながら、従来の光配向膜には、大きなプレチルト角を得るのに必要な放射線照射量が多いという問題があった。例えば、アゾベンゼン誘導体を含有する薄膜に光配向法によって液晶配向能を付与する場合、十分なプレチルト角を得るためにはその光軸が基板法線から傾斜された放射線を10,000J/m以上照射しなければならないことが報告されている(特許文献13〜14および非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−91277号公報
【特許文献2】特開平1−120528号公報
【特許文献3】特開平6−287453号公報
【特許文献4】特開平10−251646号公報
【特許文献5】特開平11−2815号公報
【特許文献6】特開平11−152475号公報
【特許文献7】特開2000−144136号公報
【特許文献8】特開2000−319510号公報
【特許文献9】特開2000−281724号公報
【特許文献10】特開平9−297313号公報
【特許文献11】特開2003−307736号公報
【特許文献12】特開2004−163646号公報
【特許文献13】特開2002−250924号公報
【特許文献14】特開2004−83810号公報
【特許文献15】特開平9−211468号公報
【特許文献16】特開2003−114437号公報
【特許文献17】特開昭63−291922号公報
【特許文献18】特表2003−520878号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. of the SID 11/3, 2003, p579
【非特許文献2】Chemical Reviews、95巻、p1409(1995年)
【非特許文献3】T. J. Scheffer et. al. J. Appl. Phys. vo. 19, p2013(1980)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ラビング処理を行わずに偏光または非偏光の放射線照射によって、少ない露光量でも良好な液晶配向能を有する液晶配向膜を与える液晶配向剤、前記液晶配向膜の製造方法および表示特性、信頼性等の諸性能に優れた液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば本発明の上記目的は、第1に、
(A)下記式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)中、Xは桂皮酸骨格を有する1価の有機基であり、Yは塩素原子または炭素数1〜20のアルコキシル基であり、nは1〜3の整数である。)
で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解・縮合して得られるポリオルガノシロキサン、ならびに
(B)ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体
を含有する液晶配向剤によって達成される。
本発明の上記目的は、第2に、
基板上に、上記の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射する液晶配向膜の形成方法によって達成される。
本発明の上記目的は、第3に、
上記の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液晶配向剤は、光配向法を適用しうる液晶配向剤として従来知られている液晶配向剤と比較して、少ない放射線照射量で優れた液晶配向性および電気特性を有する液晶配向膜を形成することができる。それゆえ、この液晶配向膜を液晶表示素子に適用した場合、液晶表示素子を従来より安価に製造でき、しかも表示特性、信頼性等の諸性能に優れるものとなる。したがって、これらの液晶表示素子は種々の装置に有効に適用でき、例えば卓上計算機、腕時計、置時計、計数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピューター、液晶テレビ等の装置に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の液晶配向膜は、
(A)上記式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解・縮合して得られるポリオルガノシロキサン(以下、「桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサン」という。)、ならびに
(B)ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体、を含有する。
<(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサン>
本発明で使用される(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンは、上記式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解・縮合することにより得ることができる。
[上記式(1)で表される化合物]
上記式(1)におけるYとしては、メトキシル基またはエトキシル基が好ましい。
nとしては、2または3が好ましく、3が特に好ましい。
上記式(1)で表される化合物は、好ましくは下記式(2)〜(5)
【0012】
【化2】

【0013】
(式(2)中、Rは水素原子、炭素数1〜40のアルキル基または脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基であり、ただし前記アルキル基の水素原子の一部または全部はフッ素原子で置換されていてもよく、Rは単結合、酸素原子、−COO−または−OCO−であり、Rは2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基または2価の縮合環式基であり、Rは単結合、酸素原子、−COO−または−OCO−であり、Rは2価の有機基であり、Rはフッ素原子またはシアノ基であり、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、Yおよびnは、それぞれ、上記式(1)におけるのと同じ意味である。)
【0014】
【化3】

【0015】
(式(3)中、Rは水素原子、炭素数1〜40のアルキル基または脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基であり、ただし前記アルキル基の水素原子の一部または全部はフッ素原子で置換されていてもよく、R10は酸素原子、−COO−または−OCO−であり、R11は単結合または−C−S−(ただし、「*」を付した結合手がケイ素原子側と結合する。)であり、R12は2価のアルキレン基であり、R14はフッ素原子またはシアノ基であり、cは0〜3の整数であり、dは0〜4の整数であり、Yおよびnは、それぞれ、上記式(1)におけるのと同じ意味である。)
【0016】
【化4】

【0017】
(式(4)中、R15およびR16は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基であり、R17はフッ素原子またはシアノ基であり、R18は2価の有機基であり、eは0〜4の整数であり、R15とR16とは互いに結合して環を形成していてもよく、Yおよびnは、それぞれ、上記式(1)におけるのと同じ意味である。)
【0018】
【化5】

【0019】
(式(5)中、R19は2価の有機基であり、R20は水素原子または1価の有機基であり、R19とR20とは互いに結合して環を形成していてもよく、R21はフッ素原子またはシアノ基であり、R22はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜40のアルキル基またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数3〜40の脂環式基であり、fは0〜4の整数であり、Yおよびnは、それぞれ、上記式(1)におけるのと同じ意味である。)
のいずれかで表される化合物である。
【0020】
上記式(2)におけるRの炭素数1〜40のアルキル基としては、例えば炭素数1〜20のアルキル基、ただしこのアルキル基の水素原子の一部または全部はフッ素原子により置換されていてもよい、であることが好ましい。かかるアルキル基の例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、4,4,4−トリフロロブチル基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチル、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロオクチル)エチル基、2−(パーフルオロデシル)エチル基等を挙げることができる。Rの脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基としては、例えばコレステニル基、コレスタニル基、アダマンチル基、下記式(α−1)または(α−2)
【0021】
【化6】

【0022】
(式(α−1)および(α−2)のR24は、それぞれ、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜20のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基である。)
で表される基等を挙げることができる。
の2価の芳香族基としては、例えば1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン基等を;Rの2価の脂環式基としては、例えばトランス1,4−シクロヘキシレン、トランス−トランス−1,4−ビシクロヘキシレン等を;Rの2価の複素環式基としては、例えば1,4−ピリジレン基、2,5−ピリジレン基、1,4−フラニレン基等を;Rの2価の縮合環式基としては、例えばナフチレン基等を、それぞれ挙げることができる。Rとしては、1,4−フェニレン基またはトランス−1,4−シクロヘキシレン基が好ましい。
としては−COO−または−OCO−が好ましい。
の2価の有機基としては、例えば下記式(a−1)〜(a−5)
【0023】
【化7】

【0024】
(上記式中、gは2〜10の整数であり、h、jおよびkは、それぞれ、1〜10の整数であり、(a−2)〜(a−5)における「*」はこれを付した結合手がケイ素原子と結合することを表す。)
のそれぞれで表される基等を、好ましいものとして例示することができる。
としてはフッ素原子が好ましい。
aは0または1が好ましい。
bは0または1が好ましい。
上記式(2)で表される化合物のうち、例えば下記式(2−1)〜(2−48)
【0025】
【化8】

【0026】
【化9】

【0027】
【化10】

【0028】
【化11】

【0029】
【化12】

【0030】
(上記式中、Rは上記式(2)におけるのと同じ意味であり、gは上記式(a−1)におけるのと同じ意味であり、pは1または2であり、qおよびrは、それぞれ、1〜3の整数である。)
のそれぞれで表される化合物等を、好ましいものとして例示することができる。
上記式(3)におけるRは、上記式(2)におけるRについて上記したところと同様である。R12の2価のアルキレン基としては、炭素数2〜10のアルキレン基を挙げることができる。
上記式(3)で表される化合物のうち、例えば下記式(3−1)および(3−2)
【0031】
【化13】

【0032】
(上記式中、Rは上記式(3)におけるのと同じ意味であり、iは2〜10の整数であり、pは1または2である。)
のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
上記式(4)におけるR15およびR16が互いに結合して環を形成する場合、形成される環としては、シクロヘキシル環またはベンゼン環が好ましい、R17はフッ素原子が好ましい、R18としては、上記式(a−1)〜(a−5)のいずれかで表される基が好ましい、eは0または1が好ましい。
上記式(4)で表される好ましい化合物の例として、例えば下記式(4−1)〜(4−30)
【0033】
【化14】

【0034】
【化15】

【0035】
【化16】

【0036】
【化17】

【0037】
(上記式中、R23は上記式(2)におけるRについて説明したところと同様であり、g、h、jおよびkは、それぞれ、上記式(a−1)、(a−2)、(a−4)または(a−5)におけるのと同じ意味であり、pは1または2である。)
のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
上記式(5)で表される化合物としては、例えば下記式(5−1)〜(5−18)
【0038】
【化18】

【0039】
【化19】

【0040】
【化20】

【0041】
(上記式中、R22は上記式(5)におけるのと同じ意味であり、mは1〜10の整数であり、pは1または2であり、qは1〜3の整数である。)
のそれぞれで表される化合物を挙げることができる。
[上記式(1)で表される化合物の合成方法]
上記式(1)で表される化合物は、それぞれ有機化学の定法を組み合わせて利用することにより、合成することができる。
【0042】
例えば上記式(2−1)で表される化合物は、例えば以下の方法により合成することができる。先ず、4−ヒドロキシ桂皮酸をハロゲン化アルカン(ハロゲン原子としては、臭素原子またはヨウ素原子が好ましい。)とを、好ましくは炭酸カリウム等の適当な塩基の存在下で反応させ、次いでアルカリ水で加水分解を行うことにより、中間体4−アルコキシ桂皮酸を得る。次いでこの4−アルコキシ桂皮酸と末端にビニル基を有するハロゲン化物(例えば4−ブロモ−1−ブテン等)とを、好ましくは炭酸カリウム存在下で反応させて得た生成物を、続いて好ましくはヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、白金カルボニルビニルメチル錯体等の適当な触媒を用いてトリアルコキシシランと反応させることにより、上記式(2−1)で表される化合物を合成することができる。
これに準じた方法により、上記式(2−2)〜(2−6)、(2−31)〜(2−33)、(2−46)〜(2−48)、(3−1)、(4−1)〜(4−5)、(4−26)、(5−1)〜(5−4)、(5−9)および(5−14)〜(5−16)のそれぞれで表される化合物を合成することができる。
上記式(2−7)で表される化合物は、例えば上記中間体4−アルコキシ桂皮酸に、3−(グリリジロキシ)プロピルトリアルコキシシランを付加することにより合成することができる。このとき、イミダゾールやテトラブチルアンモニウムブロミド等の適当な触媒を加えてもよい。
これに準じた方法により、上記式(2−8)〜(2−12)、(2−34)〜(2−36)、(4−6)〜(4−10)、(4−27)、(5−5)および(5−10)のそれぞれで表される化合物を合成することができる。
上記式(2−13)で表される化合物は、例えば上記中間体4−アルコキシ桂皮酸に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシランを付加することにより合成することができる。このとき、イミダゾールやテトラブチルアンモニウムブロミド等の適当な触媒を加えてもよい。
これに準じた方法により、上記式(2−14)〜(2−18)、(2−37)〜(2−39)、(4−11)〜(4−15)、(4−28)、(5−6)および(5−11)のそれぞれで表される化合物を合成することができる。
上記式(2−19)で表される化合物は、例えば上記中間体4−アルコキシ桂皮酸に炭酸カリウム存在下でビニルブロミドを反応させて得た生成物に、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなチオールを有するアルコキシシランをマイケル付加することにより合成することができる。このとき触媒として、トリエチルアミンのような塩基を存在させてもよい。
これに準じた方法により、上記式(2−20)〜(2−24)、(2−40)〜(2−42)、(3−2)、(4−16)〜(4−20)、(4−29)、(5−8)および(5−13)のそれぞれで表される化合物を合成することができる。
上記式(2−25)で表される化合物は、例えば上記中間体4−アルコキシ桂皮酸を例えば塩化チオニルで酸塩化物とした後2−ヒドロキシエチルアクリレートを用いてエステル化し、さらに例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなチオールを有するアルコキシシランをマイケル付加ることにより合成することができる。このとき触媒として、トリエチルアミンのような塩基を存在させてもよい。
これに準じた方法により、上記式(2−26)〜(2−30)、(2−43)〜(2−45)、(4−21)、(4−25)、(4−30)、(5−7)および(5−12)のそれぞれで表される化合物を合成することができる。
上記式(5−17)で表される化合物は、例えば以下の方法により合成することができる。先ず、4−エチニルフタル酸無水物と4−アミノ桂皮酸とを、例えばトリエチルアミン存在下において、ジエチルベンゼン中で脱水しながら反応させた後、好ましくは炭酸カリウム下でさらにハロゲン化アルカンを反応させることにより、下記式(5c)
【0043】
【化21】

【0044】
(式(5c)中、R23は上記で使用したハロゲン化アルカンに由来するアルキル基である。)
で表される化合物を中間体として得る。次いでこの中間体を、例えばヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、白金カルボニルビニルメチル錯体などの適宜の触媒の存在下でトリアルコキシシランと反応させることにより、合成することができる。
上記式(5−18)で表される化合物は、例えば上記式(5c)で表される中間体に、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなチオールを有するアルコキシシランをマイケル付加することにより、合成することができる。このとき触媒としてトリエチルアミンのような塩基を存在させてもよい。
[(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンの合成]
本発明で使用される(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンは、上記式(1)で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解・縮合することにより、合成することができる。
【0045】
(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜100,000であることが好ましく、1,000〜10,000であることがより好ましく、さらに1,000〜5,000であることが好ましい。
このような(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンは、好ましくは上記式(1)で表される化合物と他のシラン化合物の混合物を、好ましくは適当な有機溶媒、水および触媒の存在下において加水分解または加水分解・縮合することにより合成することができる。
【0046】
ここで使用することのできる他のシラン化合物としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、トリクロロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリ−i−プロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシラン、トリ−sec−ブトキシシラン、フルオロトリクロロシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、フルオロトリ−n−プロポキシシラン、フルオロトリ−i−プロポキシシラン、フルオロトリ−n−ブトキシシラン、フルオロトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリクロロシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリエトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、
2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、ヒドロキシメチルトリクロロシラン、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−i−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−ブトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−sec−ブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、トリデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、ペンタデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ノナデシルトリメトキシシラン、エイコシルトリメトキシシラン、
【0047】
3−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリクロロシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリ−n−プロポキシシラン、アリルトリ−i−プロポキシシラン、アリルトリ−n−ブトキシシラン、アリルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−i−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジ−n−プロポキシシラン、メチルジ−i−プロポキシシラン、メチルジ−n−ブトキシシラン、メチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−i−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロオ−n−クチル)エチル〕ジクロロシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロオ−n−クチル)エチル〕ジメトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロオ−n−クチル)エチル〕ジエメトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロオ−n−クチル)エチル〕ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロオ−n−クチル)エチル〕ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロオ−n−クチル)エチル〕ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロオ−n−クチル)エチル〕ジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジクロロシラン、
【0048】
(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジメトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジエトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジクロロシラン、(メチル)(ビニル)ジメトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジエトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−sec−ブトキシシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジ−n−プロポキシシラン、ジビニルジ−i−プロポキシシラン、ジビニルジ−n−ブトキシシラン、ジビニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−i−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、クロロジメチルシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、n−プロポキシトリメチルシラン、i−プロポキシトリメチルシラン、n−ブトキシトリメチルシラン、sec−ブトキシトリメチルシラン、t−ブトキシトリメチルシラン、(クロロ)(ビニル)ジメチルシラン、(メトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、(エトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、(クロロ)(メチル)ジフェニルシラン、(メトキシ)(メチル)ジフェニルシラン、(エトキシ)(メチル)ジフェニルシラン等のケイ素原子を1個有するシラン化合物のほか、
【0049】
商品名で、例えばKC−89、KC−89S、X−21−3153、X−21−5841、X−21−5842、X−21−5843、X−21−5844、X−21−5845、X−21−5846、X−21−5847、X−21−5848、X−22−160AS、X−22−170B、X−22−170BX、X−22−170D、X−22−170DX、X−22−176B、X−22−176D、X−22−176DX、X−22−176F、X−40−2308、X−40−2651、X−40−2655A、X−40−2671、X−40−2672、X−40−9220、X−40−9225、X−40−9227、X−40−9246、X−40−9247、X−40−9250、X−40−9323、X−41−1053、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1810、KF6001、KF6002、KF6003、KR212、KR−213、KR−217、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KR401N、KR500、KR510、KR5206、KR5230、KR5235、KR9218、KR9706(以上、信越化学工業(株)製);グラスレジン(昭和電工(株)製);SH804、SH805、SH806A、SH840、SR2400、SR2402、SR2405、SR2406、SR2410、SR2411、SR2416、SR2420(以上、東レ・ダウコーニング(株)製);FZ3711、FZ3722(以上、日本ユニカー(株)製);DMS−S12、DMS−S15、DMS−S21、DMS−S27、DMS−S31、DMS−S32、DMS−S33、DMS−S35、DMS−S38、DMS−S42、DMS−S45、DMS−S51、DMS−227、PSD−0332、PDS−1615、PDS−9931、XMS−5025(以上、チッソ(株)製);メチルシリケートMS51、メチルシリケートMS56(以上、三菱化学(株)製);エチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48(以上、コルコート(株)製);GR100、GR650、GR908、GR950(以上、昭和電工(株)製)等の部分縮合物を挙げることができる。
【0050】
これらの他のシラン化合物のうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランまたはジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0051】
(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを合成するにあたって使用される他のシラン化合物の使用割合は、好ましくは上記式(1)で表される化合物の1モルに対し0〜100モルであり、より好ましくは1〜20モルであり、さらに好ましくは2〜10モルである。
(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを合成するにあたって使用することのできる有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコール等を挙げることができる。
【0052】
上記炭化水素としては、例えばトルエン、キシレン等;上記ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等;上記エステルとしては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル等;上記エーテルとしては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等;上記アルコールとしては、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち非水溶性のものが好ましい。
これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
有機溶媒の使用割合としては、全シラン化合物の100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部であり、より好ましくは50〜1,000重量部である。
(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の水の使用量は、全シラン化合物に対して、好ましくは0.5〜100倍モル、より好ましくは1〜30倍モルである。
【0053】
上記触媒としては例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物等を用いることができる。
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等を挙げることができる。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミン等を、それぞれ挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
【0054】
(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の触媒としては、アルカリ金属化合物または有機塩基が好ましい。アルカリ金属化合物または有機塩基を触媒として用いることにより、好ましくない副反応を生じることなく、高い加水分解・縮合速度で目的とするポリオルガノシロキサンを得ることができるため、生産安定性に優れることとなり好ましい。触媒としては、特に有機塩基が好ましい。
有機塩基の使用量は、有機塩基の種類、温度等の反応条件等により異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えば全シラン化合物に対して好ましくは0.01〜3倍モルであり、より好ましくは0.05〜1倍モルである。
(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の触媒としてアルカリ金属化合物または有機塩基を用いて合成された桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを含有する本発明の液晶配向剤は、保存安定性が極めて優れるため好都合である。その理由は、非特許文献2(Chemical Reviews、95巻、p1409(1995年))に指摘されているように、加水分解、縮合反応において触媒としてアルカリ金属化合物または有機塩基を用いると、ランダム構造、はしご型構造またはかご型構造が形成され、シラノール基の含有割合が少ないポリオルガノシロキサンが得られるためではないかと推察される。シラノール基の含有割合が少ないため、シラノール基同士の縮合反応が抑えられ、本発明の液晶配向剤が後述の他の重合体を含有するものである場合には、シラノール基と他の重合体との縮合反応が抑えられるため、保存安定性に優れる結果になるものと推察される。
【0055】
(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の加水分解または加水分解・縮合反応は、上記式(1)で表される化合物と必要に応じて他のシラン化合物とを有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基および水と混合して、例えば油浴等により加熱することにより実施することが好ましい。
加水分解・縮合反応時には、加熱温度を好ましくは130℃以下、より好ましくは40〜100℃として、好ましくは0.5〜12時間、より好ましくは1〜8時間加熱するのが望ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下に置いてもよい。
反応終了後、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2重量%程度の硝酸アンモニウム水溶液等で洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブス等の乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とする桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンを得ることができる。
【0056】
<(B)ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体>
本発明に使用される(B)重合体としてのポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させることにより得ることができる。また、ポリイミドは上記ポリアミック酸を脱水閉環することにより得ることができる。
[テトラカルボン酸二無水物]
(B)重合体の合成に用いることのできるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−8−メチル−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、下記式(T−1)〜(T−4)
【0057】
【化22】

【0058】
のそれぞれで表されるテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、下記式(T−5)〜(T−8)
【0059】
【化23】

【0060】
のそれぞれで表される化合物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
これらテトラカルボン酸二無水物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0061】
本発明の液晶配向剤に含有される(B)重合体を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物は、上記のうち1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−8−メチル−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物ならびに上記式(T−1)、(T−2)および(T−5)〜(T−8)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「特定テトラカルボン酸二無水物」という。)を含むものであることが好ましい。
本発明の液晶配向剤に含有される(B)重合体を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物は、上記の如き特定テトラカルボン酸二無水物を、全テトラカルボン酸二無水物に対して20モル%以上含むことが好ましく、50モル%以上含むことがより好ましく、特に80モル%以上含むことが好ましい。
【0062】
[ジアミン]
(B)重合体の合成に用いることのできジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル、
6−(4−カルコニルオキシ)ヘキシルオキシ(2,4−ジアミノベンゼン)、6−(4’−フルオロ−4−カルコニルオキシ)ヘキシルオキシ(2,4−ジアミノベンゼン)、8−(4−カルコニルオキシ)オクチルオキシ(2,4−ジアミノベンゼン)、8−(4’−フルオロ−4−カルコニルオキシ)オクチルオキシ(2,4−ジアミノベンゼン)、1−ドデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−テトラデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−ペンタデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−ヘキサデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−オクタデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−コレステリルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、テトラデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、ペンタデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、ヘキサデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、オクタデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、コレステリルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、コレスタニルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、(2,4−ジアミノフェノキシ)パルミテート、(2,4−ジアミノフェノキシ)ステアリレート、(2,4−ジアミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゾエート、下記式(D−1)〜(D−5)
【0063】
【化24】

【0064】
【化25】

【0065】
(式(D−4)中のyは2〜12の整数であり、式(D−5)中のzは1〜5の整数である。)
のそれぞれで表されるジアミン化合物等の芳香族ジアミン;
ジアミノテトラフェニルチオフェン等のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;
メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族または脂環式ジアミン;
ジアミノヘキサメチルジシロキサン等のジアミノオルガノシロキサン等を挙げることができる。
これらジアミン化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0066】
本発明の液晶配向剤に含有される(B)重合体を合成するために用いられるジアミンは、上記のうちp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル、1−ヘキサデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−オクタデシルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−コレステリルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、オクタデシルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、コレステリルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、コレスタニルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)および上記式(D−1)〜(D−5)のそれぞれで表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「特定ジアミン」という。)を含むものであることが好ましい。
本発明の液晶配向剤に含有される(B)重合体を合成するために用いられるジアミンは、上記の如き特定ジアミンを、全ジアミンに対して20モル%以上含むことが好ましく、50モル%以上含むことがより好ましく、特に80モル%以上含むことが好ましい。
【0067】
[ポリアミック酸の合成]
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下において、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは2〜10時間行われる。ここで、有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒を挙げることができる。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(b)が反応溶液の全量(a+b)に対して好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%となるような量である。
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリアミック酸を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離は、上記反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥する方法、あるいは、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法により行うことができる。また、このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、次いで貧溶媒で析出させる方法、あるいは、エバポレーターで減圧留去する工程を1回または数回行う方法により、ポリアミック酸を精製することができる。
【0068】
[ポリイミドの合成]
本発明における(B)重合体としてのポリイミドは、上記の如くして得られたポリアミック酸の有するアミック酸構造を脱水閉環してイミド化することにより製造することができる。このとき、アミック酸構造の全部を脱水閉環して完全にイミド化してもよく、あるいはアミック酸構造のうちの一部のみを脱水閉環してアミック酸構造とイミド構造とが併存する部分イミド化物としてもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、(i)ポリアミック酸を加熱する方法により、または(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
上記(i)のポリアミック酸を加熱する方法における反応温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるイミド化重合体の分子量が低下する場合がある。ポリアミック酸を加熱する方法における反応時間は、好ましくは0.5〜48時間であり、より好ましくは2〜20時間である。
【0069】
一方、上記(ii)のポリアミック酸の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸構造単位の1モルに対して0.01〜20モルとするのが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとするのが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃、より好ましくは10〜150℃であり、反応時間は好ましくは0.5〜20時間であり、より好ましくは1〜8時間である。
上記方法(i)において得られるポリイミドは、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、あるいは得られるポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。一方、上記方法(ii)においては、イポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除くには、例えば溶媒置換などの方法を適用することができる。ポリイミドの単離、精製は、ポリアミック酸の単離、精製方法として上記したのと同様の操作を行うことにより行うことができる。
本発明の液晶配向剤における(B)重合体の使用割合は、(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサン100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部であり、より好ましくは100〜5,000重量部であり、さらに500〜2,000重量部であることが好ましい。
【0070】
<その他の成分>
本発明の液晶配向剤は、上記の如き(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンおよび(B)重合体を必須成分として含有するが、本発明の効果および利点を損なわない範囲において任意的にその他の成分を含有することができる。かかるその他の成分としては、例えば(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンおよび(B)重合体以外の重合体(以下、「他の重合体」という。)分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」という。)、官能性シラン化合物、界面活性剤等を挙げることができる。
上記他の重合体は、本発明の液晶配向剤の溶液特性および得られる液晶配向膜の電気特性をより改善するために使用することができる。かかる他の重合体としては、例えばポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。他の重合体の使用割合は、重合体の合計((A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサン、(B)重合体および他の重合体の合計をいう。以下同じ。)に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下である。
上記エポキシ化合物および官能性シラン化合物は、それぞれ得られる液晶配向膜の基板との接着性を向上する目的で使用することができる。
【0071】
かかるエポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサンなどを好ましいものとして挙げることができる。本発明の液晶配向剤がエポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の架橋反応を効率良く起こす目的で、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等の塩基触媒を併用してもよい。
本発明の液晶配向剤におけるエポキシ化合物の使用割合は、重合体の合計100重量部に対して、好ましくは100重量部以下であり、より好ましくは50重量部以下である。塩基触媒の使用割合は、重合体の合計100重量部に対して好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下である。
【0072】
上記官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができ、さらに特許文献17(特開昭63ー291922号公報)に記載されている如き、テトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物等を挙げることができる。
【0073】
官能性シラン化合物の使用割合は、重合体との合計100重量部に対して、好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは20重量部以下である。
上記界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリアルキレンオキシド界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を挙げることができる。
界面活性剤の使用割合は、液晶配向剤の全体100重量部に対して、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは1重量部以下である。
【0074】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、上述の通り、(A)桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンおよび(B)重合体を必須成分として含有し、そのほかに必要に応じて他の成分を含有するものであるが、好ましくは各成分が有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。
本発明の液晶配向剤を調製するために使用することのできる有機溶媒としては、液晶配向剤に含有される各成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。
本発明の液晶配向剤に好ましく使用することのできる有機溶媒は、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして上記に例示した有機溶媒を挙げることができる。このとき、本発明のポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した貧溶媒を併用してもよい。これら有機溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の液晶配向剤の調製に用いられる好ましい溶媒は、上記した有機溶媒の1種または2種以上を組み合わせて得られるものであって、下記の好ましい固形分濃度において液晶配向剤に含有される各成分が析出せず、且つ液晶配向剤の表面張力が25〜40mN/mの範囲となるものである。
【0075】
本発明の液晶配向剤の固形分濃度、すなわち液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の重量が液晶配向剤の全重量に占める割合は、粘性、揮発性等を考慮して選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。本発明の液晶配向剤は、基板表面に塗布され、液晶配向膜となる塗膜を形成するが、固形分濃度が1重量%未満である場合には、この塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜を得難い場合がある。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得難く、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が不足する場合がある。特に好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に採用する方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合には1.5〜4.5重量%の範囲が特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それによって溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それによって溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とするのが特に好ましい。
本発明の液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃、より好ましくは20℃〜60℃である。
【0076】
<液晶配向膜の形成方法>
本発明の液晶配向剤は、光配向法により液晶配向膜を形成するために好適に使用することができる。
液晶配向膜を形成する方法としては、例えば基板上に本発明の液晶配向膜の塗膜を形成し、次いで該塗膜に光配向法により液晶配向能を付与する方法を挙げることができる。
まず、パターン状の透明導電膜が設けられた基板の透明導電膜側に、本発明の液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法等の適宜の塗布方法により塗布し、例えば40〜250℃の温度で0.1〜120分間加熱して塗膜を形成する。塗膜の膜厚は、溶媒除去後の厚さとして、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0077】
前記基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスの如きガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートの如きプラスチックからなる透明基板等を用いることができる。
前記透明導電膜としては、SnOからなるNESA膜、In−SnOからなるITO膜等を用いることができる。これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法や透明導電膜を形成する際にマスクを用いる方法等が用いられる。
液晶配向剤の塗布に際しては、基板または透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板および透明導電膜上に、予め官能性シラン化合物、チタネート等を塗布しておいてもよい。
【0078】
次いで、前記塗膜に直線偏光もしくは部分偏光された放射線または無偏光の放射線を照射し、場合によってさらに150〜250℃の温度で好ましくは1〜120分間加熱処理を行うことにより、液晶配向能を付与する。ここで、放射線としては、例えば150nm〜800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができるが、300nm〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。用いる放射線が直線偏光または部分偏光している場合には、照射は基板面に垂直の方向から行っても、プレチルト角を付与するために斜め方向から行ってもよく、また、これらを組み合わせて行ってもよい。無偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向である必要がある。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等を使用することができる。前記の好ましい波長領域の紫外線は、前記光源を、例えばフィルター、回折格子等と併用する手段等により得ることができる。
【0079】
放射線の照射量としては、好ましくは1J/m以上10,000J/m未満であり、より好ましくは10〜3,000J/mである。なお、従来知られている液晶配向剤から形成された塗膜に光配向法により液晶配向能を付与する場合、10,000J/m以上の放射線照射量が必要であった。しかし本発明の液晶配向剤を用いると、光配向法の際の放射線照射量が3,000J/m以下、さらに1,000J/m以下であっても良好な液晶配向性を付与することができ、液晶表示素子の製造コストの削減に資する。
なお、本発明における「プレチルト角」とは、基板面と平行な方向からの液晶分子の傾きの角度を表す。
【0080】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶配向剤を用いて形成される液晶表示素子は、例えば以下のようにして製造することができる。
上述のようにして液晶配向膜が形成された基板を1対(2枚)準備し、これらの有する液晶配向膜を、照射した直線偏光放射線の偏光方向が所定の角度となるように対向させ、基板の間の周辺部をシール剤でシールし、液晶を注入、充填し、液晶注入口を封止して液晶セルを構成する。次いで、液晶セルを、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで冷却して、注入時の流動配向を除去することが望ましい。
そして、その両面に、偏光板をその偏光方向がそれぞれ基板の液晶配向膜の配向容易軸と所定の角度をなすように貼り合わせることにより、液晶表示素子とする。液晶配向膜が水平配向性である場合、液晶配向膜が形成された2枚の基板における、照射した直線偏光放射線の偏光方向のなす角度およびそれぞれの基板と偏光板との角度を調整することにより、TN型またはSTN型液晶セルを有する液晶表示素子を得ることができる。一方、液晶配向膜が垂直配向性である場合には、液晶配向膜が形成された2枚の基板における配向容易軸の方向が平行となるようにセルを構成し、これに、偏光板を、その偏光方向が配向容易軸と45°の角度をなすように貼り合わせることにより、垂直配向型液晶セルを有する液晶表示素子とすることができる。
【0081】
前記シール剤としては、例えばスペーサーとしての酸化アルミニウム球および硬化剤を含有するエポキシ樹脂等を用いることができる。
前記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶等を用いることができる。TN型液晶セルまたはSTN型液晶セルの場合、ネマティック型液晶のうちの正の誘電異方性を有するものが好ましく、例えばビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等が用いられる。また前記液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネート等のコレステリック液晶;商品名C−15、CB−15(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメート等の強誘電性液晶等を、さらに添加して使用することもできる。
【0082】
一方、垂直配向型液晶セルの場合には、ネマティック型液晶のうちの負の誘電異方性を有するものが好ましく、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶等が用いられる。
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板等を挙げることができる。
かくして製造された本発明の液晶表示素子は、表示特性、信頼性等の諸性能に優れるものである。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
以下の実施例において重量平均分子量は、以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。

カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm

エポキシ当量は、JIS C2105の“塩酸−メチルエチルケトン法”に準じて測定した。
【0084】
<上記式(1)で表される化合物の合成>
合成例1(化合物(2−1−1)の合成)
下記スキーム1
【0085】
【化26】

【0086】
に従って、化合物(2−1−1)を合成した。
(化合物(2−1−1a)の合成)
1Lのナス型フラスコにp−ヒドロキシ桂皮酸82g、炭酸カリウム304gおよびN−メチル−2−ピロリドン400mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、1−ブロモペンタン166gを加えて100℃で5時間撹拌した。その後、減圧にて溶媒を留去した。ここに、水酸化ナトリウム48gおよび水400mLを加えて3時間還流して加水分解反応を行った。反応終了後、反応系を塩酸で中和し、生じた沈殿を回収してエタノールで再結晶することにより、化合物(2−1−1a)の白色結晶を80g得た。
(化合物(2−1−1b)の合成)
撹拌機、窒素導入管および温度計を備えた100mL三口フラスコに上記で得た化合物(2−1−1a)の7.0g、炭酸カリウム8.3g、ヨウ化カリウム1.0g、4−ブロモ−1−ブテン4.5gおよび1−メチル−2−ピロリドン70mLを仕込み、窒素下、90℃で3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応系にトルエンおよび水を加え、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した後、メタノールで再結晶することにより、化合物(2−1−1b)を7.5g得た。
(化合物(2−1−1)の合成)
還流管および窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに上記で得た化合物(2−1−1b)7.2g、トリメトキシシラン15gおよび0.2Mの塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液を40μLを仕込み、脱気を行った後、窒素下で10時間還流下に反応を行った。反応混合物をシリカゲルのショートカラムに通した後、シリカカラムで精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(2−1−1)を3.5g得た。
合成例2(化合物(2−7−1)の合成)
下記スキーム2
【0087】
【化27】

【0088】
に従って、化合物(2−7−1)を合成した。
還流管を備えた100mLの三口フラスコに、上記で得た化合物(2−1−1a)7.0g、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン4.8g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.48gおよびメチルイソブチルケトン50mLを仕込み、6時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応混合物につき、シリカカラムにて精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(2−7−1)を3.2g得た。
合成例3(化合物(2−13−1)の合成)
下記スキーム3
【0089】
【化28】

【0090】
に従って、化合物(2−13−1)を合成した。
還流管を備えた100mLの三口フラスコに上記で得た化合物(2−1−1a)7.0g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン8.8g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.48gおよびメチルイソブチルケトン50mLを加え、6時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応混合物につき、シリカカラムにて精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(2−13−1)を4.1g得た。
合成例4
下記スキーム4
【0091】
【化29】

【0092】
に従って、化合物(2−25−1)を合成した。
(化合物(2−25−1a)の合成)
還流管を備えた200mLのナスフラスコに、上記で得た化合物(2−1−1a)7.0g、塩化チオニル50mLおよびN,N−ジメチルホルムアミド50μLを仕込み、80℃で1時間反応を行った。反応終了後、減圧下で塩化チオニルを留去し、残存物を塩化メチレンに溶解して水で洗浄を行い、硫酸マグネシウムで乾燥した後、30mLのテトラヒドロフランに溶かした。
上記とは別に、滴下ロート、窒素導入管および温度計を備えた200mLの三口フラスコに2−ヒドロキシエチルアクリレート3.5g、トリエチルアミン3.3gおよびテトラヒドロフラン14mLを仕込んだ。滴下ロートに、上記の化合物(2−1−1a)と塩化チオニルとの反応物のテトラヒドロフラン溶液を仕込み、氷冷下で1時間以上かけて滴下し、そのままさらに3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、酢酸エチルを加え、有機層を水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した後にシリカカラムで精製し、さらに溶媒を除去することにより、化合物(2−25−1a)を5.0g得た。
(化合物(2−25−1)の合成)
温度計、窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに化合物上記で得た(2−25−1a)5.0g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.4gおよびトリエチルアミン0.15gを仕込み、50℃で8時間反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチル20mLを加えて得た有機層をシリカカラムにて精製し、さらに溶媒を除去することにより、化合物(2−25−1)を4.8g得た。
合成例5(化合物(4−1−1)の合成)
下記スキーム5
【0093】
【化30】

【0094】
に従って、化合物(4−1−1)を合成した。
(化合物(4−1a)の合成)
還流管、窒素導入管およびディーンスターク管を備えた1Lのナスフラスコに、デシルこはく酸無水物72g、4−アミノ桂皮酸49g、トリエチルアミン70mL、トルエン500mLおよびテトラヒドロフラン200mLを仕込んで36時間還流下に反応を行った。反応終了後、有機層を、希塩酸水溶液、水で順次に洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥してさらに濃縮した後、エタノールとテトラヒドロフランの混合溶媒で再結晶を行うことにより、化合物(4−1a)の白色結晶を72g得た。
(化合物(4−1b)の合成)
撹拌機、窒素導入管および温度計を備えた500mL三口フラスコに、上記で得た化合物(4−1a)58g、炭酸カリウム42g、ヨウ化カリウム5.0g、4−ブロモ−1−ブテン23gおよび1−メチル−2−ピロリドン350mLを仕込み、窒素下、90℃で3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、トルエンと水を加えて、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した後、メタノールで再結晶することにより、化合物(4−1b)を60g得た。
(化合物(4−1−1)の合成)
還流管および窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに上記で得た化合物(4−1b)11g、トリメトキシシラン15gおよび0.2M塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液を40μLを仕込み、脱気を行った後、窒素下で10時間還流下に反応を行った。反応混合物をシリカゲルのショートカラムに通した後、濃縮し、次いでシリカカラムで精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(4−1−1)を5.2g得た。
【0095】
合成例6(化合物(4−4−1)の合成)
下記スキーム6
【0096】
【化31】

【0097】
に従って、化合物(4−4−1)を合成した。
(化合物(4−4−1a)の合成)
還流管を備えた2Lのナスフラスコに1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸無水物198g、塩化チオニル500mLおよびN,N−ジメチルホルムアミド2mLを仕込み、80℃で1時間還流下に反応を行った。反応終了後、減圧で塩化チオニルを除去し、残存物に塩化メチレンを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および水で順次に洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮、乾固した後、テトラヒドロフラン500mLを加えた。
一方、滴下ロート、温度計および窒素導入管を備えた3Lの三口フラスコに4,4−5,5,5−ペンタフルオロペンタノール178g、ピリジン160mLおよびテトラヒドロフラン1.5Lを仕込み、氷浴で冷却した。滴下ロートに上記の1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸無水物と塩化チオニルとの反応物を含有するテトラヒドロフラン溶液を仕込み、これをゆっくり滴下した後、室温でさらに4時間撹拌して反応を行なった。反応終了後、酢酸エチルにより抽出を行なった。有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカカラムで精製し、さらに溶媒を除去することにより、化合物(4−4−1a)を268g得た。
(化合物(4−4−1b)の合成)
ディーンスターク管を備えた200mLのナスフラスコに上記で得た化合物(4−4−1a)241g、4−アミノ桂皮酸109g、トリエチルアミン190mL、4−ジメチルアミノピリジン16g、トルエン1Lおよびテトラヒドロフラン2Lを仕込み、24時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応混合物を希塩酸および水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、メタノールで再結晶することにより、化合物(4−4−1b)を78g得た。
(化合物(4−4−1c)の合成)
撹拌機、窒素導入管および温度計を備えた1L三口フラスコに上記で得た化合物(4−4−1b)50g、炭酸カリウム28g、ヨウ化カリウム3.3g、4−ブロモ−1−ブテン15gおよび1−メチル−2−ピロリドン600mLを仕込み、窒素下、90℃で3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物にトルエンおよび水を加えた。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した後、メタノールで再結晶することにより、化合物(4−4−1c)を52g得た。
(化合物(4−4−1)の合成)
還流管および窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに、上記で得た化合物(4−4−1c)14g、トリメトキシシラン15gおよび0.2M塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液を40μL加え、脱気を行った後、窒素下で10時間還流下に反応を行った次に、反応液をシリカゲルのショートカラムに通した後、溶媒を除去して粘調の液体を得た。この粘調液につき、シリカカラムで精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(4−4−1)を6.2g得た。
合成例7(化合物4−26−1)の合成)
下記スキーム7
【0098】
【化32】

【0099】
に従って、化合物(4−26−1)を合成した。
(化合物(4−26−1a)の合成
還流管、ディーンスターク管および窒素導入管を備えた300mLの三口フラスコに、4−ヒドロキシフタル酸18gおよびジエチルベンゼン100mLを仕込んで、1時間還流を行った。続いて、ここに4−アミノ桂皮酸16gおよびテトラヒドロフラン100mLを加えて12時間還流下に反応を行った。反応終了後、希塩酸および水で順次に分液洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した後、酢酸エチルとテトラヒドロフランの混合溶剤で再結晶することにより化合物(4−26−1a)を19g得た。
(化合物(4−26−1b)の合成)
500mLのナス型フラスコに、上記で得た化合物(4−26−1a)を15g、炭酸カリウム14gおよびN−メチル−2−ピロリドン150mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、4−ブロモ−1−ブテン6.8gを加えて室温で24時間撹拌した。反応終了後、水を1L加えた後、沈殿を回収し、シリカカラムで精製し、さらに溶媒を除去することにより、化合物(4−26−1b)を10g得た。
化合物(4−26−1c)の合成)
窒素導入管および温度計を備えた200mLの三口フラスコに上記で得た化合物(4−26−1b)9.1g、1−ブロモデカン5.5g、炭酸カリウム6.9gおよび1−メチル−2−ピロリドン100mLを仕込んで100℃で6時間反応を行った。反応終了後、トルエン500mLを加えて水で3回洗浄を行った後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮を行い、さらにエタノールで再結晶を行うことにより、化合物(4−26−1c)を11gを得た。
(化合物(4−26−1)の合成)
還流管および窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに上記で得た化合物(4−26−1c)10g、トリメトキシシラン12gおよび0.2M塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液を40μLを仕込み、脱気を行った後、窒素下で10時間還流下に反応を行った。次に、反応混合物をシリカゲルのショートカラムに通した後、シリカカラムで精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(4−26−1)を6.0g得た。
【0100】
合成例8
(化合物(5−1−1)の合成)
下記スキーム8
【0101】
【化33】

【0102】
に従って、化合物(5−1−1)を合成した。
(化合物(5−1−1a)の合成
還流管、窒素導入管、ディーンスターク管を備えた1Lのナスフラスコに、アリルこはく酸無水物42g、4−アミノ桂皮酸49g、トリエチルアミン70mL、トルエン500mLおよびテトラヒドロフラン200mLを仕込み、36時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応混合物を希塩酸水溶液、水で順次に洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、エタノールおよびテトラヒドロフランの混合溶剤で再結晶を行うことにより、化合物(5−1−1a)の白色結晶を46g得た。
(化合物(5−1−1b)の合成)
窒素導入管および温度計を備えた200mLの三口フラスコに、上記で得た化合物(5−1−1a)29g、1−ブロモデカン22g、炭酸カリウム28gおよび1−メチル−2−ピロリドン300mLを仕込み、100℃で6時間反応を行った。反応終了後、反応混合物にトルエン1.5Lを加えた。有機層を水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮を行い、エタノールで再結晶を行うことにより、化合物(5−1−1b)31gを得た。
(化合物(5−1−1)の合成)
還流管および窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに、上記で得た化合物(5−1−1b)8.5g、トリメトキシシラン12gおよび0.2M塩化白金酸6水和物のイソプロパノール溶液40μLを仕込み、脱気した後、窒素下で10時間還流下に反応を行った。次に、反応混合物をシリカゲルのショートカラムに通した後、シリカカラムで精製を行い、さらに溶媒を除去することにより、化合物(5−1−1)を5.8g得た。
【0103】
<桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンの合成>
合成例9
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、上記で合成した化合物(2−1−1)3.0g、メチルトリメトキシシラン3.0g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン4.0g、メチルイソブチルケトン50gおよびトリエチルアミン1.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水10gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒および水を留去することにより、桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサン(S−1)を得た。このポリオルガノシロキサン(S−1)の重量平均分子量Mwを表1に示した。
合成例10〜17
仕込み原料を表1に示すとおりとした以外は、上記合成例9と同様にして桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサン(S−2)〜(S−9)をそれぞれ得た。
これらの桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwを表1に示した。
なお、表1において、他のシラン化合物の略称はそれぞれ以下の意味である。
ECETS:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
MTMS:メチルトリメトキシシラン
MATMS:3−(メタアクリロキシ)プロピルトリメトキシシラン
【0104】
【表1】

【0105】
<ポリアミック酸の合成>
合成例18
シクロブタンテトラカルボン酸二無水物19.61g(0.1モル)と4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル21.23g(0.1モル)とをN−メチル−2−ピロリドン367.6gに溶解し、室温で6時間反応を行った。次いで、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥することにより、ポリアミック酸PA−1を35g得た。
合成例19
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物22.4g(0.1モル)とシクロヘキサンビス(メチルアミン)14.23g(0.1モル)とをN−メチル−2−ピロリドン329.3gに溶解し、60℃で6時間反応を行った。次いで、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥することにより、ポリアミック酸PA−2を32g得た。
合成例20
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物98g(0.50モル)およびピロメリット酸二無水物109g(0.50モル)ならびにジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルメタン198g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,290gに溶解し、40℃で3時間反応を行った後、N−メチル−2−ピロリドン1,355gを追加することにより、ポリアミック酸PA−3を10重量%含有する溶液約4,050gを得た。この溶液の溶液粘度は135mPa・sであった。
合成例21
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物196g(1.0モル)およびジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル200g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,246gに溶解し、40℃で4時間反応を行った後、N−メチル−2−ピロリドン1,318gを追加することにより、ポリアミック酸PA−4を10重量%含有する溶液約3,960gを得た。この溶液の溶液粘度は220mPa・sであった。
合成例22
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物196g(1.0モル)およびジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル212g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン3,672gに溶解し、40℃で3時間反応させることにより、ポリアミック酸PA−5を10重量%含有する溶液4,080gを得た。このポリアミック酸溶液の溶液粘度は170mPa・sであった。
合成例23
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224g(1.0モル)およびジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテル200g(1.0モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,404gに溶解し、40℃で4時間反応を行った後、N−メチル−2−ピロリドンを1,412g追加することにより、ポリアミック酸PA−6を10重量%含有する溶液4,240gを得た。このポリアミック酸溶液の溶液粘度は190mPa・sであった。
【0106】
<ポリイミドの合成>
合成例24
上記合成例19で得たポリアミック酸PA−2を17.5gとり、これにN−メチル−2−ピロリドン232.5g、ピリジン3.8gおよび無水酢酸4.9gを添加して120℃において4時間脱水閉環反応を行いポリアミック酸をイミド化した。次いで、反応混合液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下で15時間乾燥することにより、ポリイミドPI−1を15g得た。
合成例25
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50モル)および1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン157g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン95g(0.88モル)、2,2−ジトリフルオロメチルー4,4−ジアミノビフェニル32g(0.10モル)、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン(上記式(D−1)で表される化合物。以下同じ。)6.4g(0.010モル)およびオクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン4.0g(0.015モル)をN−メチル−2−ピロリドン960gに溶解し、60℃で9時間反応を行った。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は58mPa・sであった。
得られたポリアミック酸溶液に、N−メチル−2−ピロリドン2,740g、ピリジン396gおよび無水酢酸409gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶剤置換(本操作にて脱水閉環反応に使用したピリジンおよび無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率約95%のポリイミドPI−2を15重量%含有する溶液約2,500gを得た。この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度8.0重量%の溶液として測定した溶液粘度は33mPa・sであった。
【0107】
合成例26
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50モル)および1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン157g(0.50モル)、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン96g(0.89モル)、ビスアミノプロピルテトラメチルジシロキサン25g(0.10モル)および3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン13g(0.020モル)ならびにモノアミンとしてN−オクタデシルアミン8.1g(0.030モル)をN−メチル−2−ピロリドン960gに溶解し、60℃で6時間反応させた。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は60mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン2,700gを追加し、ピリジン396gおよび無水酢酸409gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶剤置換することにより、イミド化率約95%のポリイミドPI−3を15重量%含有する溶液約2,700gを得た。この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度6.0重量%の溶液として測定した溶液粘度は18mPa・sであった。
【0108】
合成例27
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物224g(1.0モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン107g(0.99モル)、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン6.43g(0.010モル)をN−メチル−2−ピロリドン3,039gに溶解し、60℃で6時間反応を行うことにより、溶液粘度約260mPa・sのポリアミック酸溶液を得た。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン2,700gを追加し、ピリジン396gおよび無水酢酸306gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶剤置換することにより、イミド化率約89%のポリイミドPI−4を9.0重量%含有する溶液約3,700gを得た。この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度5.0重量%の溶液として測定した溶液粘度は74mPa・sであった。
合成例28
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50モル)および1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン157g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン89g(0.82モル)、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル32g(0.10モル)、1−(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)−4−(4−トリフルオロメチルベンゾイルオキシ)−シクロヘキサンおよびオクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン4.0g(0.011モル)をN−メチル−2−ピロリドン2,175gに溶解し、60℃で6時間反応を行った。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は110mPa・sであった。
得られたポリアミック酸溶液1,500gに、N−メチル−2−ピロリドン3,000gを追加し、ピリジン221gおよび無水酢酸228gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶剤置換することにより、イミド化率約92%のポリイミドPI−5を10重量%含有する溶液約3,900gを得た。この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度4.5重量%の溶液として測定した溶液粘度は28mPa・sであった。
【0109】
合成例29
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物19.9g(0.089モル)ならびにジアミン化合物としてp−フェニレンジアミン6.8g(0.063モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン3.6g(0.018モル)および下記式(D−6)
【0110】
【化34】

【0111】
で表される化合物4.7g(0.009モル)をN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解し、60℃で4時間反応を行った。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は115mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン325gを追加し、ピリジン14gおよび無水酢酸18gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶剤置換することにより、イミド化率約77%のポリイミドPI−6を15.4重量%含有する溶液約350gを得た。この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は84mPa・sであった。
【0112】
合成例30
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物20.9g(0.093モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン9.2g(0.085モル)および上記式(D−6)で表される化合物4.9g(0.009モル)をN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解し、60℃で4時間反応を行った。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は126mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン325gを追加し、ピリジン7.4gおよび無水酢酸9.5gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶剤置換することにより、イミド化率約54%のポリイミドPI−7を16.1重量%含有する溶液約350gを得た。この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は75mPa・sであった。
【0113】
合成例31
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物18.8g(0.084モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン7.4g(0.068モル)および上記式(D−6)で表される化合物8.9g(0.017モル)をN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解し、60℃で4時間反応させた。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は126mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン325gを追加し、ピリジン6.6gおよび無水酢酸8.5gを添加しれ110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶剤置換することにより、イミド化率約55%のポリイミドPI−8を15.9重量%含有する溶液約350gを得た。この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は75mPa・sであった。
【0114】
合成例32
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物19.1g(0.085モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン7.4g(0.069モル)および下記式(D−7)
【0115】
【化35】

【0116】
で表される化合物8.5g(0.017モル)をN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解し、60℃で4時間反応を行った。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は206mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン325gを追加し、ピリジン6.7gおよび無水酢酸8.7gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶剤置換することにより、イミド化率約52%のポリイミドPI−9を15.8重量%含有する溶液約350gを得た。この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は105mPa・sであった。
【0117】
合成例33
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物17.3g(0.077モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン5.9g(0.054モル)、上記式(D−6)で表される化合物4.1g(0.008モル)および上記式(D−7)で表される化合物7.7g(0.016モル)をN−メチル−2−ピロリドン140gに溶解し、60℃で4時間反応を行った。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は117mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にN−メチル−2−ピロリドン325gを追加し、ピリジン6.1gおよび無水酢酸7.9gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶剤を新たなN−メチル−2−ピロリドンで溶剤置換することにより、イミド化率約55%のポリイミドPI−10を15.4重量%含有する溶液約350gを得た。この溶液を少量分取し、N−メチル−2−ピロリドンを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は109mPa・sであった。
【0118】
<液晶配向剤の調製および保存安定性の評価>
実施例1
上記合成例9で得た桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンS−1の100重量部と、他の重合体として上記合成例17で得たポリアミック酸PA−1の1,000重量部とを合わせ、これに1−メチル−2−ピロリドンおよびブチルセロソルブを加え、溶媒組成が1−メチル−2−ピロリドン/ブチルセロソルブ=50/50(重量比)、固形分濃度が3.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤A−1を調製した。
この液晶配向剤A−1を−15℃で6か月間保管した。保管の前および後に25℃においてE型粘度計により測定した粘度を測定した。溶液粘度の保管前後の変化率が10%未満のものを保存安定性「良」、10%以上のものを保存安定性「不良」として評価したところ、液晶配向剤A−1の保存安定性は「良」であった。
実施例2〜4、10〜13、18、19および23〜28
上記実施例1において、桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンの種類ならびに他の重合体の種類および量を表2に記載のとおりとしたほかは実施例1と同様にして液晶配向剤をA−2〜A−4、A−10〜A−13、A−18、A−19およびA−23〜A−28をそれぞれ調製し、保存安定性を評価した。評価結果は表2に示した。
なお、実施例26および27においては、桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンおよび他の重合体のほか、さらにエポキシ化合物としてそれぞれ表2に記載のものを重合体の合計100重量部に対して20重量部添加した。
表2におけるエポキシ化合物の略称は、それぞれ下記式で表される化合物を表す。
【0119】
【化36】

【0120】
実施例5
上記合成例12で得た桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンS−4の100重量部と、他の重合体として上記合成例28で得たポリイミドPI−6を含有する溶液のポリイミドPI−6に換算にして1,000重量部に相当する量とを合わせ、これに1−メチル−2−ピロリドンおよびブチルセロソルブを加え、溶媒組成が1−メチル−2−ピロリドン/ブチルセロソルブ=50/50(重量比)、固形分濃度が3.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤A−5を調製した。
この液晶配向剤A−5につき、実施例1と同様にして保存安定性を評価したところ、液晶配向剤A−5の保存安定性は「良」であった。
実施例6〜9、14〜17および20〜22
上記実施例5において、使用した桂皮酸骨格を有するポリオルガノシロキサンの種類ならびに重合体溶液に含有される他の重合体の種類および量を表2に記載のとおりとしたほかは実施例1と同様にして液晶配向剤をA−6〜A−9、A−14〜A−17およびA−20〜A−22をそれぞれ調製し、保存安定性を評価した。評価結果は表2に示した。
【0121】
【表2】

【0122】
実施例29
<液晶配向膜の形成および垂直配向型液晶表示素子の製造>
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、上記実施例1で調製した液晶配向剤A−1をスピンナーを用いて塗布し、庫内を窒素置換したオーブン中で200℃で1時間加熱して膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いでこの塗膜表面に、Hg−Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線1,000J/mを、基板法線から40°傾いた方向から照射して液晶配向膜とした。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を1対(2枚)作成した。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、1対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板の紫外線の光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、ネガ型液晶(メルク社製MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより垂直配向型液晶表示素子を製造した。
この液晶表示素子につき、以下の方法により評価した。評価結果は表3に示した。
【0123】
<垂直配向型液晶表示素子の評価方法>
(1)液晶配向性の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、5Vの電圧をON・OFF(印加・解除)したときの明暗の変化における異常ドメインの有無を偏光顕微鏡により観察し、異常ドメインのない場合を「良」とした。
(2)プレチルト角の評価
上記で製造した液晶表示素子につき、非特許文献3(T. J. Scheffer et. al. J. Appl. Phys. vo. 19, p2013(1980))に記載の方法に準拠し、He−Neレーザー光を用いる結晶回転法によりプレチルト角を測定した。
(3)電圧保持率の評価
上記で製造した液晶表示素子に、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR−1を使用した。
(4)焼き付きの評価
上記で製造した液晶表示素子に、直流5Vを重畳した30Hz、3Vの矩形波を60℃の環境温度で2時間印加し、直流電圧を切った直後の液晶セル内に残留した電圧(残留DC電圧)をフリッカ−消去法により求め、この値を焼き付きの指標とした。
【0124】
実施例30〜38
使用した液晶配向剤の種類を表3に記載の通りとしたほかは実施例29と同様にして液晶配向膜を形成し、垂直配向型液晶表示素子を製造して評価した。結果を表3に示した。
実施例39
<液晶配向膜の形成およびTN配向型液晶表示素子の製造>
上記実施例10で調製した液晶配向剤A−10を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上にスピンナーを用いて塗布し、180℃にて1時間加熱することにより、膜厚0.1μmの塗膜を形成した。この塗膜の表面に、Hg−Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて、313nmの輝線を含む偏光紫外線1,000J/mを基板法線から40°傾いた方向から照射することにより、液晶配向能を付与して液晶配向膜を形成した。
上記と同じ操作を繰り返し、液晶配向膜を透明導電膜面上に有するガラス基板を1対(2枚)作製した。
この1対の基板のそれぞれ液晶配向膜を形成した面の周囲部に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、偏光紫外線照射方向が直交となるように基板を重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、基板の間隙に液晶注入口よりポジ型のネマティック型液晶(メルク社製、MLC−6221、カイラル剤入り)を注入して充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分加熱してから室温まで徐冷した。次に、基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、かつ、液晶配向膜の偏光方向と平行となるように貼り合わせることにより、TN配向型液晶表示素子を製造した。
この液晶表示素子の液晶配向性、電圧保持率および焼き付きにつき、実施例29と同様にして評価した。評価結果を表3に示した。
実施例40〜56
使用した液晶配向剤の種類を表3に記載の通りとしたほかは実施例39と同様にして液晶配向膜を形成し、TN配向型液晶表示素子を製造して評価した。結果を表3に示した。
【0125】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)
【化1】

(式(1)中、Xは桂皮酸骨格を有する1価の有機基であり、Yは塩素原子または炭素数1〜20のアルコキシル基であり、nは1〜3の整数である。)
で表される化合物を含むシラン化合物を加水分解・縮合して得られるポリオルガノシロキサン、ならびに
(B)ポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体
を含有することを特徴とする、液晶配向剤。
【請求項2】
上記式(1)で表される化合物が、下記式(2)
【化2】

(式(2)中、Rは水素原子、炭素数1〜40のアルキル基または脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基であり、ただし前記アルキル基の水素原子の一部または全部はフッ素原子で置換されていてもよく、Rは単結合、酸素原子、−COO−または−OCO−であり、Rは2価の芳香族基、2価の脂環式基、2価の複素環式基または2価の縮合環式基であり、Rは単結合、酸素原子、−COO−または−OCO−であり、Rは2価の有機基であり、Rはフッ素原子またはシアノ基であり、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、Yおよびnは、それぞれ、上記式(1)におけるのと同じ意味である。)
で表される化合物である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
上記式(1)で表される化合物が、下記式(3)
【化3】

(式(3)中、Rは水素原子、炭素数1〜40のアルキル基または脂環式基を含む炭素数3〜40の1価の有機基であり、ただし前記アルキル基の水素原子の一部または全部はフッ素原子で置換されていてもよく、R10は酸素原子、−COO−または−OCO−であり、R11は単結合または−C−S−(ただし、「*」を付した結合手がケイ素原子側と結合する。)であり、R12は2価のアルキレン基であり、R14はフッ素原子またはシアノ基であり、cは0〜3の整数であり、dは0〜4の整数であり、Yおよびnは、それぞれ、上記式(1)におけるのと同じ意味である。)
で表される化合物である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
上記式(1)で表される化合物が、下記式(4)
【化4】

(式(4)中、R15およびR16は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基であり、R17はフッ素原子またはシアノ基であり、R18は2価の有機基であり、eは0〜4の整数であり、R15とR16とは互いに結合して環を形成していてもよく、Yおよびnは、それぞれ、上記式(1)におけるのと同じ意味である。)
で表される化合物である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
上記式(1)で表される化合物が、下記式(5)
【化5】

(式(5)中、R19は2価の有機基であり、R20は水素原子または1価の有機基であり、R19とR20とは互いに結合して環を形成していてもよく、R21はフッ素原子またはシアノ基であり、R22はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜40のアルキル基またはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数3〜40の脂環式基であり、fは0〜4の整数であり、Yおよびnは、それぞれ、上記式(1)におけるのと同じ意味である。)
で表される化合物である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
(A)ポリオルガノシロキサンが、塩基性触媒、非水溶性の有機溶剤および水の存在下で加水分解・縮合することにより得られたものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
基板上に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶配向剤を塗布して塗膜を形成し、該塗膜に放射線を照射することを特徴とする、液晶配向膜の形成方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶配向剤から形成された液晶配向膜を具備することを特徴とする、液晶表示素子。
【請求項9】
上記式(4)で表される化合物。
【請求項10】
上記式(5)で表される化合物。

【公開番号】特開2009−258650(P2009−258650A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17431(P2009−17431)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】