説明

液滴吐出ヘッド

【課題】液滴吐出ヘッド内において、機能液に含有される溶媒が蒸発した場合に、溶媒蒸気を大気と換気する換気能力が低下してしまう。
【解決手段】複数のノズル孔が配列されたノズル列と、前記ノズル孔毎に連通する圧力発生室と、前記圧力発生室に供給する機能液を貯留する機能液貯留室と、前記ノズル列の幅の中央部に設けられ、前記機能液貯留室に前記機能液を導入する導入路と、前記ノズル列の幅の内側に設けられ、前記機能液貯留室と大気とを連通する大気開放路とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示すように、複数のノズル孔28が形成されたノズルプレート17と、ノズル孔28毎に連通する圧力発生室と、圧力発生室に供給する機能液を貯留する機能液貯留室と、機能液貯留室に機能液を導入する導入路60と、機能液貯留室と大気とを連通する大気開放路61等を備えた液滴吐出ヘッド1Bが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−148509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の液滴吐出ヘッド1Bでは、大気開放路61が液滴吐出ヘッド1Bのノズル列NLの端部に設置されている。すなわち、機能液が導入される導入路60から離れた位置に大気開放路61が設けられている。このため、機能液中に含有される溶媒が蒸発した場合に、溶媒蒸気を大気と換気する換気能力が低下し、液滴吐出ヘッドの液滴の吐出量ばらつきが発生してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる液滴吐出ヘッドは、複数のノズル孔が配列されたノズル列と、前記ノズル孔毎に連通する圧力発生室と、前記圧力発生室に供給する機能液を貯留する機能液貯留室と、前記ノズル列の幅の中央部に設けられ、前記機能液貯留室に前記機能液を導入する導入路と、前記ノズル列の幅の内側に設けられ、前記機能液貯留室と大気とを連通する大気開放路と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、導入路と大気開放路との距離が短縮される。従って、導入路から導入された機能液に含まれる溶媒から発生した蒸気を効率よく大気に開放させることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる液滴吐出ヘッドは、前記導入路と前記ノズル列の端部に配置された前記ノズル孔との中間部に前記大気開放路が設けられたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ノズル列の各ノズル孔から均一に機能液に含まれる溶媒から発生した蒸気が大気に開放され、さらに、換気能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】液滴吐出ヘッドの構成を示す斜視図。
【図2】液滴吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図。
【図3】液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図。
【図4】吐出量ばらつきを示す実験データ。
【図5】従来の液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各部材の尺度を実際とは異ならせている。
【0012】
図1は、液滴吐出ヘッドの構成を示す斜視図である。詳細には、別の2方向(同図(a),(b))から液滴吐出ヘッドを観察した斜視図である。図1に示すように、液滴吐出ヘッド1は、液滴吐出ヘッド1内に外部から機能液を導入する機能液導入部11と、制御用の回路配線や外部制御ケーブル(図示省略)が接続される2つのコネクター15等を有するヘッド基板12と、機能液を液滴として吐出するヘッド本体13等を備えている。なお、本実施形態では、いわゆる2連の液滴吐出ヘッド1を示し、機能液導入部11には、2連の接続針14が備えられている。また、ヘッド本体13には、複数のノズル孔28が形成されたノズルプレート17が備えられ、図1(b)に示すように、ノズルプレート17のノズル面NFには、2本のノズル列NLが相互に平行に列設されている。各ノズル列NLは、ノズル孔28が等ピッチで配列され、2本のノズル列NLは半ピッチずれた状態で配設されている。このような液滴吐出ヘッド1は、用紙等の上に印字等の描画を行う描画装置等に搭載されるほか、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれた液滴吐出装置(描画装置)に搭載される。そして、有機EL装置の発光層やカラーフィルターのフィルターエレメント等の製造に用いられる。
【0013】
次に、ヘッド本体13の構成について説明する。図2は、液滴吐出ヘッドの構成を示す分解斜視図である。液滴吐出ヘッド1のヘッド本体13は、複数のノズル孔が配列されたノズル列と、ノズル孔毎に連通する圧力発生室と、圧力発生室に供給する機能液を貯留する機能液貯留室と、ノズル列の幅の中央部に設けられ、機能液貯留室に機能液を導入する導入路と、ノズル列の幅の内側に設けられ、機能液貯留室と大気とを連通する大気開放路等を備えている。以下、詳細について説明する。
【0014】
図2に示すように、ヘッド本体13は、複数のノズル孔28が形成されたノズルプレート17と、各ノズル孔に連通する圧力発生室25と各圧力発生室25に供給する機能液を貯留する機能液貯留室26とが形成された流路プレート21と、各圧力発生室25及び機能液貯留室26の一方側の開口部を塞ぐ振動板62と、外部から機能液貯留室26に向けて機能液を導入する導入路60と機能液貯留室26と大気とを連通する大気開放路61とが形成されるとともに、回路基板64に接続された圧電素子23を収容するヘッドケース63等を備えている。
【0015】
本実施形態の液滴吐出ヘッド1は、外部制御ケーブルから各コネクター15を介して送信される駆動信号に基づいて、各圧電素子23を駆動させる。そうすると、振動板62が変位し、圧力発生室25の容積が変化する。そして、振動板62の変位によって圧力発生室25の容積が圧縮されるとノズル孔28から機能液が液滴として吐出される。
【0016】
次に、大気開放路61等の配置等について説明する。図3は、液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図である。導入路60は、ノズル列NLの幅LGに対して中央部に設けられている。また、大気開放路61は、ノズル列NLの幅LGに対して内側に設けられている。なお、本実施形態では、2つの大気開放路61が設けられ、導入路60とノズル列NLの端部に配置されたノズル孔28との中間部に設けられている。そして、導入路60から導入される機能液、或いは、機能液貯留室26に貯留された機能液に含まれる溶媒の蒸発した溶媒蒸気は、大気開放路61を通じて大気に開放される。このようにして、液滴吐出ヘッド1内における溶媒蒸気の換気が行われる。
【0017】
次に、液滴の吐出量ばらつきについて説明する。図4は、機能液の吐出量ばらつきを示す実験データである。具体的には、本実施形態にかかる液滴吐出ヘッド1(図3参照)と従来の液滴吐出ヘッド1B(図5参照)とにおける液滴の吐出量ばらつきを比較したものである。すなわち、大気開放路61がノズル列NLの幅LG内に形成された液滴吐出ヘッド1と、大気開放路61がノズル列NLの幅LG外に形成された液滴吐出ヘッド1Bとの比較実験データである。なお、本実験では、各液滴吐出ヘッド1,1Bを6個ずつ用い、各液滴吐出ヘッド1,1Bの各ノズル孔28から吐出された吐出量を測定した。図4に示すデータは、各液滴吐出ヘッド1,1Bの吐出量のばらつきを平均して表したものである。図4に示すように、液滴吐出ヘッド1の方が、比較対象の液滴吐出ヘッド1Bに比べ、吐出量のばらつきが少ないことが確認された。
【0018】
従って、上記の形態によれば、以下に示す効果がある。
【0019】
ノズル列NLの幅LGの中央部に機能液が導入される導入路60を配置し、同幅LG内に大気開放路61を配置した。これにより、導入路60と大気開放路61との距離が短縮され、機能液の換気効果を高めることができる。これにより、ノズル孔28から吐出される吐出量が平均化され、液滴の吐出量のばらつきを低減させることができる。また、換気するにあたり、特別な追加部品等を設置する必要がないので、構造を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0020】
1…液滴吐出ヘッド、1B…従来の液滴吐出ヘッド、13…ヘッド本体、17…ノズルプレート、21…流路プレート、23…圧電素子、25…圧力発生室、26…機能液貯留室、28…ノズル孔、60…導入路、61…大気開放路、62…振動板、63…ヘッドケース、NL…ノズル列、LG…ノズル列の幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル孔が配列されたノズル列と、
前記ノズル孔毎に連通する圧力発生室と、
前記圧力発生室に供給する機能液を貯留する機能液貯留室と、
前記ノズル列の幅の中央部に設けられ、前記機能液貯留室に前記機能液を導入する導入路と、
前記ノズル列の幅の内側に設けられ、前記機能液貯留室と大気とを連通する大気開放路と、を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出ヘッドにおいて、
前記導入路と前記ノズル列の端部に配置された前記ノズル孔との中間部に前記大気開放路が設けられたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101144(P2012−101144A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249453(P2010−249453)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】