説明

液滴吐出ユニット、液滴吐出ヘッド、及びこれを備えた画像形成装置

【課題】消費電力の増加を抑制した上で、ノズル近傍に存在する液体の粘度の上昇を抑制することができる液滴吐出ユニット、液滴吐出ヘッド、及びこれを備えた画像形成装置を得る。
【解決手段】イジェクタ26には、循環ポンプ48によって、インクが循環する。ここで、駆動制御部は、夫々のイジェクタ28を循環するインクの循環量に基づいて、アクチュエータに異なる予備波形を印加して圧力室内の液体へ付与する圧力を変え、ノズルのメニスカスを振動させる。このように、駆動制御部が、インクの循環量に基づいて異なった予備波形を駆動素子へ印加することで、消費電力の増加を抑制した上で、ノズル30近傍に存在するインクの粘度の上昇を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出する液滴吐出ユニット及び液滴吐出ヘッドと、この液滴吐出ユニット及び液滴吐出ヘッドを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液滴吐出ヘッドのノズルから吐出される液滴の増粘を防ぐため、休止中のノズルのメニスカスに振動を与えたり、画像形成とは無関係に液滴をノズルから吐出させる技術が開示されている。
【0003】
詳細には、画像形成装置は、ノズルから液滴を吐出させない液滴吐出待機時に液滴が吐出しない程度にノズルのメニスカスに間欠的に振動を与える工程と、ノズルから液滴を吐出させた後、一定時間経過すると液滴吐出ヘッドを画像形成とは無関係の退避位置へ退避させ、ノズルから液滴を吐出される工程と、を備えている。
【0004】
つまり、液滴吐出待機時には、全てのノズルのメニスカスに同じ振動を与えることで、液滴の粘度の上昇を防止し、一定時間経過すると液滴吐出ヘッドを画像形成とは無関係の退避位置へ退避させ、ノズルから液滴を吐出される構成となっている。
【0005】
このように、2つの工程を組み合わせることで、ノズル近傍に存在する液体の粘度の上昇を防止することでノズルから液滴を安定して吐出させることができるようになっている。
【特許文献1】特開平9−29996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この画像形成装置では、全てのノズルのメニスカスに同じ振動を与えている構造となっているため、一番厳しい条件に合わせて全てのノズルのメニスカスを振動させなければならないため、消費電力が増加していた。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮し、消費電力の増加を抑制した上で、ノズル近傍に存在する液体の粘度の上昇を抑制することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る液滴吐出ユニットは、液滴を吐出するノズルと、連通路を介して前記ノズルに通じる圧力室と、前記圧力室内の液体へ圧力を付与するアクチュエータと、を有する複数個のイジェクタと、前記イジェクタの前記圧力室に供給される液体が流れる第1流体流路と、前記第1流体流路から前記圧力室へ供給された液体が前記連通路を通じて流れ込む第2流体流路と、前記第1流体流路を通して前記イジェクタへ、前記イジェクタから前記第2流体流路を通して液体を循環させる循環手段と、夫々の前記イジェクタを循環する液体の循環量に基づいて、前記アクチュエータに異なる予備波形を印加して前記圧力室内の液体へ付与する圧力を変える駆動制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、イジェクタには、循環手段によって、第1流体流路を通してイジェクタへ、イジェクタから第2流体流路へ流れる液体が循環する。
【0010】
詳細には、循環手段が作動すると、液体は第1流体流路を通りイジェクタの圧力室へ流れ込む。また、圧力室へ流れ込んだ液体はイジェクタの連通路を通り、第2流体流路を通って循環する。このようにして、夫々のイジェクタの液体が循環する。
【0011】
ここで、駆動制御部は、夫々のイジェクタを循環する液体の循環量に基づいて、アクチュエータに異なる予備波形を印加して圧力室内の液体へ付与する圧力を変え、ノズルのメニスカスを振動させる。これにより、夫々のノズルのメニスカスを振動させ、ノズルから吐出させる液体の増粘の上昇が抑制される。
【0012】
つまり、循環量が少ないイジェクタには大きな予備波形を印加してメニスカスを大きく振動させ、循環量が多いイジェクタには小さな予備波形を印加する。
【0013】
このように、循環量に基づいて異なった予備波形を印加することで消費電力の増加を抑制した上で、ノズル近傍に存在する液体の粘度の上昇を抑制することができる。
【0014】
本発明の請求項2に係る液滴吐出ユニットは、請求項1に記載において、前記循環量は、前記第1流体流路及び前記第2流体流路の流路抵抗に基づいて算出されることを特徴とする。
【0015】
上記構成によると、液体の循環量は、第1流体流路及び第2流体流路の流路抵抗に基づいて算出される。このため、夫々のイジェクタを流れる液体の流量を直接測定する必要がない。
【0016】
本発明の請求項3に係る液滴吐出ユニットは、請求項1又は2に記載において、前記駆動制御部は、前記循環量に基づいて複数個のグループに分けられた前記イジェクタの前記アクチュエータに異なった予備波形を印加することを特徴とする。
【0017】
上記構成によると、駆動制御部は、循環量に基づいて複数個のグループに分けられたイジェクタのアクチュエータに異なった予備波形を印加する。このため、アクチュエータの駆動制御が複雑にならない。
【0018】
本発明の請求項4に係る液滴吐出ユニットは、請求項1〜3何れか1項に記載において、前記駆動制御部は、前記イジェクタを流れる液体の種類に基づいて前記アクチュエータに異なった予備波形を印加することを特徴とする。
【0019】
上記構成によると、駆動制御部は、イジェクタを流れる液体の種類に基づいてアクチュエータに異なった予備波形を印加する。
【0020】
例えば、粘度が高い液体の場合は、大きな予備波形を印加してメニスカスを大きく振動させ、粘度が低い液体の場合は、小さな予備波形を印加する。
【0021】
このように、液体の性質に合った予備波形を印加することで効果的にノズルから吐出される液体の増粘を抑制することでノズルから液滴を安定して吐出させることができる。
【0022】
本発明の請求項5に係る画像形成装置は、請求項1〜4何れか1項に記載された液滴吐出ユニットを備えたことを特徴とする。
【0023】
上記構成によると、画像形成装置が請求項1〜4何れか1項に記載された液滴吐出ユニットを備えているため、ドッド抜けのない高品質な出力画像を得ることができる。
【0024】
本発明の請求項6に係る液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するノズルと、連通路を介して前記ノズルに通じる圧力室と、前記圧力室内の前記液体へ圧力を付与するアクチュエータと、を有する複数個のイジェクタと、前記イジェクタの前記圧力室に供給される液体が流れる第1流体流路と、前記第1流体流路から前記圧力室へ供給された液体が前記連通路を通じて流れ込む第2流体流路と、を備える複数個の液滴吐出ユニットと、夫々の前記液滴吐出ユニットの前記第1流体流路へ液体を供給する第1共通流路と、前記第1共通流路から前記第1流体流路を通して前記液滴吐出ユニットへ供給された液体が前記液滴吐出ユニットの前記第2流体流路を通じて流れ込む第2共通流路と、前記第1共通流路を通して前記液滴吐出ユニットへ、前記液滴吐出ユニットから前記第2共通流路を通して液体を循環させる循環手段と、夫々の前記イジェクタを循環する液体の循環量に基づいて、前記アクチュエータに異なる予備波形を印加して前記圧力室内の液体へ付与する圧力を変える駆動制御部と、を備えることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、複数個の液滴吐出ユニットには、循環手段によって、第1共通流路を通して液滴吐出ユニットへ、さらに、液滴吐出ユニットから第2共通流路へ流れる液体が循環する。
【0026】
詳細には、循環手段が作動すると、液体は第1共通流路を通り、さらに、第1共通流路から分岐して各液滴吐出ユニットの第1流体流路へ流れ込み、夫々のイジェクタの圧力室へ流れ込む。
【0027】
また、圧力室へ流れ込んだ液体は、イジェクタの連通路を通り、第2流体流路を通って第2共通流路に流れ込む。このようにして、夫々の液滴吐出ユニットの液体が循環する。
【0028】
ここで、駆動制御部は、夫々のイジェクタを流れる液体の循環量に基づいて、アクチュエータに異なる予備波形を印加して圧力室内の液体へ付与する圧力を変え、ノズルのメニスカスを振動させる。このように、夫々のノズルのメニスカスを振動させ、ノズルから吐出させる液体の増粘の上昇が抑制される。
【0029】
つまり、循環量が少ないイジェクタには大きな予備波形を印加してメニスカスを大きく振動させ、循環量が多いイジェクタには小さな予備波形を印加する。
【0030】
このように、循環量に基づいて異なった予備波形を印加することで消費電力の増加を抑制した上で、ノズルから吐出される液体の増粘を抑制し、ノズルから液滴を安定して吐出させることができる。
【0031】
本発明の請求項7に係る液滴吐出ヘッドは、請求項6に記載において、前記循環量は、前記第1流体流路、前記第2流体流路、前記第1共通流路及び前記第2共通流路の流路抵抗に基づいて算出されることを特徴とする。
【0032】
上記構成によれば、液体の循環量は、第1流体流路、第2流体流路、第1共通流路及び第2共通流路の流路抵抗に基づいて算出される。このため、夫々のイジェクタを流れる液体の流量を直接測定する必要がない。
【0033】
本発明の請求項8に係る液滴吐出ヘッドは、請求項6又は7に記載において、前記駆動制御部は、前記循環量に基づいて複数個のグループに分けられた前記イジェクタの前記アクチュエータに異なった予備波形を印加することを特徴とする。
【0034】
上記構成によれば、駆動制御部は、液体の循環量に基づいて複数個のグループに分けられたイジェクタのアクチュエータに異なった予備波形を印加する。このため、アクチュエータの駆動制御が複雑にならない。
【0035】
本発明の請求項9に係る液滴吐出ヘッドは、請求項1〜8何れか1項に記載において、前記駆動制御部は、前記イジェクタを流れる液体の種類に基づいて前記アクチュエータに異なった予備波形を印加することを特徴とする。
【0036】
上記構成によれば、駆動制御部は、イジェクタを流れる液体の種類に基づいてアクチュエータに異なった予備波形を印加する。
【0037】
例えば、粘度が高い液体の場合は、大きな予備波形を印加してメニスカスを大きく振動させ、粘度が低い液体の場合は、小さな予備波形を印加する。
【0038】
このように、液体の性質に合った予備波形を印加することで効果的にノズルから吐出される液体の増粘を抑制することができる。
【0039】
本発明の請求項10に係る画像形成装置は、請求項6〜9何れか1項に記載された液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする。
【0040】
上記構成によると、画像形成装置が請求項6〜9何れか1項に記載された液滴吐出ヘッドを備えているため、ドッド抜けのない高品質な出力画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、消費電力の増加を抑制した上で、ノズル近傍に存在する液体の粘度の上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の液滴吐出ユニットが採用された画像形成装置の第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0043】
(全体構成)
図5に示されるように、画像形成装置としてのインクジェット記録装置10は、液滴吐出ユニット12が装着されるキャリッジ14と、キャリッジ14を主走査方向Mに沿って走査させる主走査機構16と、シート材Pを副走査方向Sに沿って搬送する副走査機構18と、メンテナンスステーション20とを備えている。
【0044】
液滴吐出ユニット12は、ノズル30が形成されたノズルプレート32(図2参照)が記録媒体としてのシート材Pと対向するようにキャリッジ14上に装着され、主走査機構16によって主走査方向Mに移動しつつノズル30から液滴としてのインク滴を吐出することにより、シート材Pの一定のバンド領域BEに対して画像の記録を行う。主走査方向への1回の移動が終了すると、副走査機構18によってシート材Pが副走査方向Sに搬送され、再びキャリッジ14が主走査方向Mに移動しながらバンド領域BEを記録する。こうした動作を複数回繰り返すことにより、シート材Pの全面にわたって画像記録を行うことができる。
【0045】
(要部構成)
図1に示されるように、液滴吐出ユニット12には、液滴を吐出するノズル30を備えたイジェクタ26が3列に並んで設けられている。さらに、各列のイジェクタ26の隣には、各イジェクタ26にインクを供給する第1分岐流路34がイジェクタ26の列方向に延びて設けられている。また、各列のイジェクタ26を挟んで第1分岐流路34の反対側には、イジェクタ26から排出されたインクが流れる第2分岐流路36がイジェクタ26の列方向に延びて設けられている。
【0046】
さらに、各第1分岐流路34の端部(図1に示す下端部)には、各第1分岐流路34へインクを供給する第1主流路38が、第1分岐流路34の長手方向と交差する方向に延びて設けられている。
【0047】
また、各第2分岐流路36の端部(図1に示す上端部)には、各第2分岐流路36を通って排出されるインクが流れ込む第2主流路40が、第2分岐流路36の長手方向と交差する方向に延びて設けられている。
【0048】
さらに、イジェクタ26に供給するインクが貯留された液体タンク42が設けられており、第1主流路38の端部(図1に示す左端部)は、流路抵抗が充分小さい流路管44と介して液体タンク42に連通されている。また、第2主流路40の端部(図1に示す右端部)は、流路抵抗が充分小さい流路管46と介して液体タンク42に連通されている。
【0049】
さらに、液体タンク42と第2主流路40を連通させる流路管46には、循環手段としての循環ポンプ48が設けられており、循環ポンプ48を作動させると、液体タンク42に貯留されたインクが、液体タンク42から流路管44を流れて第1主流路38を通り、さらに、第1主流路38から分岐して延びる第1分岐流路34を流れ、各イジェクタ26の圧力室50(図2参照)へ流れ込む。さらに、圧力室50へ流れ込んだインクは、イジェクタ26の連通路76(図2参照)を通り、第2分岐流路36を流れて第2主流路40へ流れ込む。そして、第2主流路40に流れ込んだインクは流路管46を流れて液体タンクへ回収される。このようにして、各イジェクタ26と液体タンク42との間でインクが循環するようになっている。
【0050】
図2に示されるように、イジェクタ26は、インク滴(液滴)を吐出するノズル30と、ノズル30と連通路76を通して通じると共にインクに吐出するための圧力を付与する圧力室50と、圧力室50内のインクへ圧力を付与するアクチュエータ51を備えて構成されている。また、駆アクチュエータ51は、板状の振動板74と駆動素子52を備えている。そして、駆動素子52の上部電極53には、半田バンプ55を介して回路基板57が設けられている。
【0051】
また、第1分岐流路34は、イジェクタ26の列間に配置されると共に、その一部が、ノズル面から見てイジェクタ26と重なるように配置されている。
【0052】
さらに、第2分岐流路36は、イジェクタ26の列間に配置され、各イジェクタ26と通じており、各イジェクタ26から排出されたインクは、第2分岐流路36を通じて第2主流路40(図1参照)へ送られるようになっている。
【0053】
また、本実施形態に係る液滴吐出ユニット12は、凹部形成プレート54、ノズルプレート32、排出路形成プレート56、排出孔形成プレート58、分岐流路形成プレート60、樹脂プレート62、分岐流路形成プレート64、第1供給孔形成プレート66、供給路形成プレート68、第2供給孔形成プレート70、圧力室形成プレート72、振動板74、駆動素子52を備えている。
【0054】
そして、凹部形成プレート54、ノズルプレート32、排出路形成プレート56、排出孔形成プレート58、分岐流路形成プレート60、樹脂プレート62、分岐流路形成プレート64、第1供給孔形成プレート66、供給路形成プレート68、第2供給孔形成プレート70、圧力室形成プレート72、振動板74、駆動素子52は、この順に積層されている。
【0055】
ノズルプレート32には、インク滴を吐出するノズル30が形成されている。凹部形成プレート54には、このノズル30の周縁に凹部54Aが形成されている。凹部54Aは、ノズル30の周縁に形成された段差であり、ノズル30が形成された部分を周囲のプレート面よりも後退させることで、例えば、ノズル30周辺が、シート材Pとの接触による摩擦や、ノズル面の払拭等による機械的な摩擦を受けないようにするものである。
【0056】
また、ノズル30と通じると共にインクに吐出するための圧力を付与する圧力室50が、圧力室形成プレート72に形成されている。この圧力室50は、排出路形成プレート56、排出孔形成プレート58、分岐流路形成プレート60、樹脂プレート62、分岐流路形成プレート64、第1供給孔形成プレート66、供給路形成プレート68及び第2供給孔形成プレート70に形成された連通路76を介して、ノズル30と通じており、圧力室50からノズル30へインクが流通可能となっている。
【0057】
さらに、分岐流路形成プレート64には、第1分岐流路34が形成されており、この
第1分岐流路34から各圧力室50へインクを供給する供給路78が、供給路形成プレート68に形成されている。
【0058】
また、供給路78は、第1供給孔形成プレート66に形成された第1供給孔80を介して、第1分岐流路34と通じている。さらに、供給路78は、第2供給孔形成プレート70に形成された第2供給孔82を介して、圧力室50と通じている。
【0059】
一方、ノズルプレート32の直上に積層された排出路形成プレート56には、連通路76と通じる排出路84が形成されている。この排出路84は、排出孔形成プレート58に形成された排出孔86を介して、第2分岐流路36と通じている。
【0060】
また、樹脂プレート62をクロストークを防止するダンパーとして効率的に働かせるために、分岐流路形成プレート60と分岐流路形成プレート64には、第1分岐流路34、および、第2分岐流路36の、樹脂プレート62を挟んだ対向側領域にダンパー室45、47の空洞が形成されている
この構成により、第1分岐流路34からイジェクタ26に流入したインクは、第1供給孔80、供給路78及び第2供給孔82を通って圧力室50へ流れる。圧力室50へ流れ込んだインクは、連通路76を通りノズル30の上側を流れ、排出路84及び排出孔86を流れて第2分岐流路36へ排出されるようになっている。
【0061】
さらに、循環ポンプ48(図1参照)によって夫々のイジェクタ26を流れるインクの循環量に基づいて、回路基板57を介して駆動素子52に異なる予備波形を印加して圧力室50内の液体へ圧力を付与し、ノズル30のメニスカスを振動させる駆動制御部88が設けられている。なお、予備波形とは、ノズル30からインクを吐出させる本波形と異なり、インクの粘度増加を防止するためにノズル30近傍のインクを攪拌するための波形である。
【0062】
この構成により、駆動素子52へ印加する駆動波形を制御する駆動制御部88が予備駆動波形を回路基板57を介して駆動素子52に印加すると、駆動素子52が圧力室50に充填されるインクを加圧して圧力室50及び連通路76に存在するインクを攪拌するようになっている。
【0063】
(作用・効果)
ここで、本願発明者は、各イジェクタ26に流れるインクの循環量を、第1分岐流路34と第1主流路38から構成される第1流体流路92と、第2分岐流路36と第2主流路40から構成される第2流体流路94の流路抵抗に基づいて算出した。
【0064】
図1に示されるように、インクの循環量が最も少ないイジェクタ26のグループは、マトリックス状に配置されるイジェクタ26の略中央部近傍に配置される範囲A内に配置されるイジェクタ26であった。これらのイジェクタ26をグループAとした。
【0065】
さらに、グループAの次に循環量が少ないイジェクタ26のグループは、範囲Aを囲むように配置された範囲Bに配置されるイジェクタ26であった。これらのイジェクタ26をグループBとした。
【0066】
そして、範囲Bの外の範囲Cに配置される循環量が多いイジェクタ26をグループCとした。このように、循環量に基づいてイジェクタ26を3つのグループに分類した。
【0067】
先ず、本発明者は、この3つのグループに分けたイジェクタ26に同一の予備波形を印加し、その後本波形を印加してノズル30からインク滴を吐出させ、このインク滴の滴速を確認した。
【0068】
図4(A)(B)(C)は、回路基板57を介して駆動素子52に印加される予備波形及び本波形を示し、縦軸は電圧、横軸は時間を表す。そして、図4(A)に示す最も印加時間(パルス幅)が短い予備波形を本波形の前に、全てのイジェクタ26に印加した。
【0069】
図3(A)は、予備波形後に本波形を印加して、ノズル30からインク滴を吐出させた時のインク滴の滴速であり、横軸は最後にノズル30からインク滴を吐出させた時から経過した時間であって、縦軸はインク滴の滴速を示す。
【0070】
インクの循環量の最も少ないグループAのイジェクタ26から吐出されるインク滴については、最後にインク滴を吐出させてから時間がある程度経過した後にインク滴を吐出させると滴速が大きく低下していることが分かる。一方、インクの循環量の最も多いグループCのイジェクタ26から吐出されるインク滴については、最後にインク滴を吐出させてから時間がある程度経過した後にインク滴を吐出させても滴速がほとんど低下していないことが分かる。
【0071】
つまり、循環量の少なグループAのイジェクタ26に対しては、図4(A)に示す予備波形では不十分であることが分かる。なお、本実施形態では、滴速10m/sを基準とし、滴速が低下した場合でも出力画像の低下を防止するため、8m/s以上の滴速を確保することを目標とした。
【0072】
そこで、図2に示す駆動制御部88が、グループ毎に異なる予備波形を駆動素子52に印加した。
【0073】
詳細には、循環量の最も少ないグループAのイジェクタ26に対しては、パルス幅の最も長い図4(C)に示す予備波形を印加し、次に循環量の少ないグループBのイジェクタ26には、図4(C)に示す予備波形のパルス幅より短いパルス幅の図4(B)に示す予備波形を印加した。そして、循環量の最も多いグループCのイジェクタ26には、パルス幅の最も短い図4(A)に示す予備波形を印加した。
【0074】
図3(B)に示されるように、インクの循環量に基づいて駆動制御部88(図2参照)が駆動素子52に異なる予備波形を印加すると、予備波形印加後のインクの滴速は、全てのグループで目標の8m/s以上となった。
【0075】
このように、駆動制御部88が、イジェクタ26を流れるインクの循環量に基づいて異なった予備波形を駆動素子52へ印加することで、同一の予備波形を印加する場合と比較して、消費電力の増加を抑制した上で、ノズル30近傍に存在するインクの粘度の上昇を抑制することができ、さらに、ノズル30からインクを安定して吐出させることができる。
【0076】
また、駆動制御部88は、第1流体流路92及び第2流体流路94(図1参照)の流路抵抗に基づいて算出された循環量に基づいて駆動素子52に異なった予備波形を印加する。このため、夫々のイジェクタ26を流れるインクの流量を直接測定する必要がない。
【0077】
また、個々のイジェクタに最適な駆動波形を設定すると、駆動制御が複雑となり、駆動部のコストがかかり、また、処理速度が遅くなるなどの問題が出るが、本発明では、駆動制御部88は、循環量に基づいて複数個のグループ(本実施形態では、グループA、B、C)に分けられたイジェクタ26の駆動素子52に異なった予備波形を印加する。このため、アクチュエータ51の駆動制御が複雑にならない。
【0078】
また、ノズル30からインクを安定して吐出させることができるため、ドッド抜けのない高品質な出力画像を得ることができる。
【0079】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、予備波形のパルス幅を変えることで、異なった予備波形を作成したが、パルス幅、電圧及び周波数等のパラメータを変えたり、さらには、各パラメータを組み合わせで変えることで異なった予備波形を作成してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、予備波形をインクを吐出される本波形の前に一回だけ印加したが、最後にノズル30がインク滴を吐出させてから連続的に予備波形を印加してもよい。
【0081】
次に本発明の液滴吐出ユニットが採用された画像形成装置の第2実施形態を図6〜図8に従って説明する。
【0082】
なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0083】
図6で示されるように、この実施形態では前記第1実施形態とは違い、液滴吐出ユニット12が2個設けられている。そして、夫々の液滴吐出ユニット12の液体タンク42と液体タンク96には異なる種類の液体が収納されている。
【0084】
詳細には、液体タンク42には、シート材Pに吐出されて画像を形成する着色されたインクが貯留され、液体タンク96には処理液(例えば、シート材Pに先に吐出され、後に吐出されるインクの定着をコントロールし、画質を高める液体)が貯留されている。
【0085】
ここで、本願発明者は、各イジェクタ26に流れるインクの循環量を、第1分岐流路34と第1主流路38から構成される第1流体流路92と第2分岐流路36と第2主流路40から構成される第2流体流路94の流路抵抗と、液体の種類(例えば液体の粘度等)に基づいて算出した。
【0086】
図6に示されるように、第1実施形態同様に、液体タンク42に貯留されるインクが流れるイジェクタ26については、循環量が最もすくないイジェクタ26のグループは、マトリックス状に配置されるイジェクタ26の略中央部近傍に配置される範囲A内に配置されるイジェクタ26であった。これらのイジェクタ26をグループAとした。さらに、第1実施形態同様に範囲Bに配置されるイジェクタ26をグループBとし、範囲Cに配置されるイジェクタ26をグループCとした。
【0087】
一方、液体タンク96に貯留される処理液が流れるイジェクタ26については、循環量が最も少ないイジェクタ26のグループは、マトリックス状に配置されるイジェクタ26の略中央部近傍に配置される範囲A´内に配置されるイジェクタ26であった。これらのイジェクタ26をグループA´とした。さらに、第1実施形態同様に範囲B´に配置されるイジェクタ26をグループB´とし、範囲C´に配置されるイジェクタ26をグループC´とした。
【0088】
インクの循環量は、グループA、グループB、グループA´、グループB´、グループC、グループC´の順番で増えている。
【0089】
先ず、本発明者は、この6つのグループに分けたイジェクタ26に同一の予備波形を印加し、その後本波形を印加してノズル30からインク滴を吐出させ、このインク滴の滴速を確認した。
【0090】
図8(A)(B)(C)(D)(E)は、回路基板57を介して52駆動素子52に印加される予備波形及び本波形示し、縦軸は電圧、横軸は時間を表す。そして、図8(A)に示す最も印加時間(パルス幅)が短い予備波形を本波形の前に、全てのイジェクタ26に印加した。
【0091】
図7(A)は、予備波形後に本波形を印加して、ノズル30からインク滴を吐出させた時のインク滴の滴速であり、横軸は最後にノズル30からインク滴を吐出させた時から経過した時間であって、縦軸はインク滴の滴速を示す。
【0092】
循環量の最も少ないグループAのイジェクタ26から吐出されるインク滴については、最後にインク滴を吐出させてから時間がある程度経過した後にインク滴を吐出させると滴速が大きく低下していることが分かる。一方、循環量の多いグループC及びグループC´のイジェクタ26から吐出されるインク滴については、最後にインク滴を吐出させてから時間がある程度経過した後にインク滴を吐出させても滴速がほとんど低下していないことが分かる。
【0093】
つまり、循環量の少なグループAのイジェクタ26に対しては、図8(A)に示す予備波形では不十分であることが分かる。なお、本実施形態では、滴速10m/sを基準とし、滴速が低下した場合でも出力画像の低下を防止するため、8m/s以上の滴速を確保することを目標とした。
【0094】
そこで、駆動制御部88が、グループ毎に異なる予備波形を駆動素子52に印加した。
【0095】
詳細には、循環量の最も少ないグループAのイジェクタ26には、パルス幅の最も長い図8(E)に示す予備波形を印加し、次に循環量の少ないグループBのイジェクタ26には、図8(E)に示す予備波形のパルス幅より短いパルス幅の図8(D)に示す予備波形を印加した。さらに、次に循環量の少ないグループA´のイジェクタ26には、図8(D)に示す予備波形のパルス幅より短いパルス幅の図8(C)に示す予備波形を印加した。また、次に循環量の少ないグループB´のイジェクタ26には、図8(C)に示す予備波形のパルス幅より短いパルス幅の図8(B)に示す予備波形を印加した。
【0096】
そして、循環量の多いグループC及びグループC´のイジェクタ26には、最もパルス幅の短い図8(A)に示す予備波形を印加した。
【0097】
図7(B)に示されるように、インクの循環量に基づいて駆動制御部88が駆動素子52に異なる予備波形を印加すると、予備波形印加後のインクの滴速は、全てのグループで目標の8m/s以上あった。
【0098】
このように、液体の性質を考慮して予備波形を印加することで効果的にノズルから吐出される液体の増粘を抑制することができ、さらに、ノズルから液滴を安定して吐出させることができる。
【0099】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、予備波形のパルス幅を変えることで、異なった予備波形を作成したが、パルス幅、電圧及び周波数等のパラメータを変えたり、さらには、各パラメータを組み合わせで変えることで異なった予備波形を作成してもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、予備波形をインクを吐出される本波形の前に一回だけ印加したが、最後にノズルがインク滴を吐出させてから連続的に予備波形を印加してもよい。
【0101】
次に本発明の液滴吐出ヘッドが採用された画像形成装置の第3実施形態を図9〜図11に従って説明する。
【0102】
なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0103】
図11に示されるように、この実施形態では第1実施形態とは違い、画像形成装置としてのインクジェット記録装置110には、複数個の液滴吐出ユニット98(図9参照)を備えた液滴吐出ヘッド112が設けられている。以下インクジェット記録装置110について説明する。
【0104】
(全体構成)
インクジェット記録装置110の筐体114内の下部には給紙トレイ116が備えられており、給紙トレイ116内に積層されたシート材Pをピックアップロール118で1枚ずつ取り出すことができる。取り出されたシート材Pは、所定の搬送経路122を構成する複数の搬送ローラ120で搬送される。以下、単に「搬送方向」というときは、記録媒体であるシート材Pの搬送方向をいい、「上流」、「下流」というときはそれぞれ、搬送方向の上流及び下流を意味するものとする。
【0105】
給紙トレイ116の上方には、駆動ロール124及び従動ロール126に張架された無端状の搬送ベルト128が配置されている。搬送ベルト128の上方には記録ヘッドアレイ130が配置されており、搬送ベルト128の平坦部分128Fに対向している。この対向した領域が、記録ヘッドアレイ130から液滴が吐出される吐出領域SEとなっている。搬送経路122を搬送されたシート材Pは、搬送ベルト128で保持されてこの吐出領域SEに至り、記録ヘッドアレイ130に対向した状態で、記録ヘッドアレイ130から画像情報に応じた液滴が吐出される。
【0106】
そして、シート材Pを搬送ベルト128で保持した状態で周回させることで、吐出領域SE内に複数回通過させて、いわゆるマルチパスによる画像記録を行うことができる。したがって、搬送ベルト128の表面が、シート材Pの周回経路となっている。
【0107】
さらに、記録ヘッドアレイ130は、有効な記録領域がシート材Pの幅(搬送方向と直交する方向の長さ)以上とされた長尺状とされ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)の4色それぞれに対応した4つの液滴吐出ヘッド112が搬送方向に沿って配置されており、フルカラーの画像を記録可能になっている。
【0108】
また、記録ヘッドアレイ130は、搬送方向と直交する方向に不動とされていてもよいが、必要に応じて移動するように構成しておくと、マルチパスによる画像記録でより解像度の高い画像を記録したり、液滴吐出ヘッド112の不具合を記録結果に反映させないようにしたりできる。なお、液滴吐出ヘッド112については詳細を後述する。
【0109】
さらに、記録ヘッドアレイ130の近傍(本実施形態では搬送方向の両側)には、それぞれの液滴吐出ヘッド112に対応した4つのメンテナンスユニット134が配置されている。このメンテナンスユニット134は、所定のメンテナンス動作(バキューム、ダミージェット、ワイピング、キャッピング等)を行う。
【0110】
また、記録ヘッドアレイ130の上流側には、帯電ロール136が配置されている。帯電ロール136は、従動ロール126との間で搬送ベルト128及びシート材Pを挟みつつ従動し、シート材Pを搬送ベルト128に押圧する押圧位置と、搬送ベルト128から離間した離間位置との間を移動可能とされている。押圧位置では、接地された従動ロール126との間に所定の電位差が生じるため、シート材Pに電荷を与えて搬送ベルト128に静電吸着させることができる。
【0111】
記録ヘッドアレイ130の下流側には、図示しない剥離プレートが配置されており、シート材Pを搬送ベルト128から剥離するようになっている。
【0112】
剥離されたシート材Pは、排出経路144を構成する複数の排出ローラ142で搬送され、筐体114の上部に設けられた排紙トレイ146に排出される。
【0113】
また、給紙トレイ116と搬送ベルト128の間には、複数の反転用ローラ150で構成された反転経路152が設けられており、片面に画像記録されたシート材Pを反転させて搬送ベルト128に保持させることで、シート材Pの両面への画像記録を容易に行えるようになっている。
【0114】
このようなインクジェット記録装置110では、4色のインクが収容された4台の液滴吐出ヘッド112を備えているので、シート材Pの搬送方向におけるヘッド幅の小型化が可能であり、小型の記録ヘッドアレイ130を実現することができる。
【0115】
(要部構成)
次に、液滴吐出ヘッド112の構成について説明する。
【0116】
図9に示されるように、液滴吐出ヘッド112には、シート材Pの最大幅よりも幅広の長尺状となるように、シート材Pの搬送方向と直交する方向に並べられた複数個(本実施形態では4つ)の液滴吐出ユニット98が設けられている。各液滴吐出ユニット98は、インク滴を吐出する複数個のイジェクタ26と、各イジェクタ26へインクを供給する第1主流路38及び第1分岐流路34と、各イジェクタ26から排出されたインクが流れ込む第2分岐流路36及び第2主流路40とを備えて構成されている。
【0117】
なお、液滴吐出ユニット98は、図9に示す左側から順番に液滴吐出ユニット98A、液滴吐出ユニット98B、液滴吐出ユニット98C、液滴吐出ユニット98Dとするが、特に配置位置を区別しない場合は、液滴吐出ユニット98と記載する。
【0118】
さらに、液滴吐出ヘッド112には、夫々の液滴吐出ユニット98に供給されるインクが貯留された液体タンク154と、この液体タンク154のインクを液滴吐出ユニット98に供給する長尺状の第1共通流路156と、液滴吐出ユニット98から排出されたインクを回収して液体タンク154に戻す長尺状の第2共通流路158が備えられている。詳細には、第1共通流路156は、第1供給流路を構成するフィルター156Aを通してインクを液滴吐出ユニット98へ供給し、第2共通流路158は、第2共通流路158を構成するフィルター158Aを通してインクを回収する。
【0119】
また、第1共通流路156には、循環手段としての循環ポンプ160が第2共通流路158には、循環ポンプ161が設けられており、循環ポンプ160、161を作動させることで、液体タンク154に貯留されたインクを第1共通流路156を通して夫々の液滴吐出ユニット98に供給し、夫々の液滴吐出ユニット98から排出されたインクを第2共通流路158を通して液体タンク154に戻すことができる。このように、複数個の液滴吐出ユニット98と液体タンク154との間でインクが循環されるようになっている。
【0120】
(作用・効果)
ここで、本願発明者は、各イジェクタ26に流れるインクの循環量を、第1分岐流路34と第1主流路38から構成される第1流体流路92と、第2分岐流路36と第2主流路40から構成される第2流体流路94と、第1共通流路156と、第2共通流路158の流路抵抗に基づいて算出した。
【0121】
図9に示されるように、第1実施形態同様に、各液滴吐出ユニット98内では、インクの循環量別に、範囲A、範囲B及び範囲Cの3つのグループに分けられる。
【0122】
そして、図10(A)に示されるように、液滴吐出ユニット98D(最も右側に配置される液滴吐出ユニット98)の範囲Cに配置されるイジェクタ26の循環量が最も多く流量ランク6であった。一方、液滴吐出ユニット98A(最も左側に配置される液滴吐出ユニット98)の範囲Aに配置されるイジェクタ26の循環量が最も少なく流量ランク1であった。流量ランク1が最も循環量が少なくランクが2、3と増えるにつれて循環量が増えるように分類し、流量ランク1、2、3、4、5,6の6個のグループに分類することができた。
【0123】
そして、図10(B)に示されるように、駆動制御部88は、流量ランク毎に、パルス幅、電圧及び周波数を定めた異なった予備波形を各イジェクタ26の駆動素子52へ印加した。この結果、ノズルから吐出するインクの滴速が安定した。
【0124】
このように、駆動制御部88が、第1共通流路156、第1流体流路92、第2共通流路158及び第2流体流路94の流路抵抗に基づいて算出された循環量に基づいて駆動素子52に異なった予備波形を印加する。これにより、消費電力の増加を抑制した上で、ノズル30から吐出されるインクの増粘を抑制することができ、さらに、ノズル30からインクを安定して吐出させることができる。
【0125】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、予備波形をインクを吐出される本波形の前に一回だけ印加したが、最後にノズルがインク滴を吐出させてから連続的に予備波形を印加してもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、液滴吐出ヘッド112は、4個の液滴吐出ユニット98を備えたが、4個ではなく、例えば8個等の他の個数であってもよい。
【0127】
また、本発明は、インクの無駄な消費をなくすため、第2流体流路に流れ込んだ液体を液体タンクに戻し、再利用する循環型を用いて説明したが、循環式に限定されるものでなく、第2流体流路に流れ込んだ液体をそのまま廃棄するような構成においても実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ユニットを示した模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ユニットに採用されたイジェクタを示した断面図である。
【図3】(A)本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ユニットの比較例であって、各グループのイジェクタに同一の予備波形を印加した場合の滴速を示した図面である。(B)本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ユニットの各グループのイジェクタに異なった予備波形を印加した場合の滴速を示した図面である。
【図4】(A)(B)(C)本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ユニットの駆動素子に印加される予備波形を示した図面である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る液滴吐出ユニットを採用したインクジェット記録装置を示した斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る液滴吐出ユニットを示した模式図である。
【図7】(A)本発明の第2実施形態に係る液滴吐出ユニットの比較例であって、各グループのイジェクタに同一の予備波形を印加した場合の滴速を示した図面である。(B)本発明の第2実施形態に係る液滴吐出ユニットの各グループのイジェクタに異なった予備波形を印加した場合の滴速を示した図面である。
【図8】(A)(B)(C)(D)(E)本発明の第2実施形態に係る液滴吐出ユニットの駆動素子に印加される予備波形を示した図面である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る液滴吐出ヘッドを示した模式図である。
【図10】(A)本発明の第3実施形態に係る液滴吐出ヘッドに設けられたイジェクタを循環量別に分けた図面である(B)本発明の第3実施形態に係る液滴吐出ヘッドに設けられたイジェクタに印加する予備波形のパラメータを示した図面である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る液滴吐出ヘッドを採用したインクジェット記録装置を示した概略構成図である。
【符号の説明】
【0129】
10 インクジェット記録装置(画像形成装置)
12 液滴吐出ユニット
26 イジェクタ
30 ノズル
42 液体タンク
48 循環ポンプ(循環手段)
51 アクチュエータ
52 駆動素子
88 駆動制御部
92 第1流体流路
94 第2流体流路
96 液体タンク
98 液滴吐出ユニット
110 インクジェット記録装置(画像形成装置)
112 液滴吐出ヘッド
156 第1共通流路
158 第2共通流路
160 循環ポンプ(循環手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルと、連通路を介して前記ノズルに通じる圧力室と、前記圧力室内の液体へ圧力を付与するアクチュエータと、を有する複数個のイジェクタと、
前記イジェクタの前記圧力室に供給される液体が流れる第1流体流路と、
前記第1流体流路から前記圧力室へ供給された液体が前記連通路を通じて流れ込む第2流体流路と、
前記第1流体流路を通して前記イジェクタへ、前記イジェクタから前記第2流体流路を通して液体を循環させる循環手段と、
夫々の前記イジェクタを循環する液体の循環量に基づいて、前記アクチュエータに異なる予備波形を印加して前記圧力室内の液体へ付与する圧力を変える駆動制御部と、
を備えることを特徴とする液滴吐出ユニット。
【請求項2】
前記循環量は、前記第1流体流路及び前記第2流体流路の流路抵抗に基づいて算出されることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ユニット。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記循環量に基づいて複数個のグループに分けられた前記イジェクタの前記アクチュエータに異なった予備波形を印加することを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴吐出ユニット。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記イジェクタを流れる液体の種類に基づいて前記アクチュエータに異なった予備波形を印加することを特徴とする請求項1〜3何れか1項に記載の液滴吐出ユニット。
【請求項5】
請求項1〜4何れか1項に記載された液滴吐出ユニットを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
液滴を吐出するノズルと、連通路を介して前記ノズルに通じる圧力室と、前記圧力室内の前記液体へ圧力を付与するアクチュエータと、を有する複数個のイジェクタと、
前記イジェクタの前記圧力室に供給される液体が流れる第1流体流路と、
前記第1流体流路から前記圧力室へ供給された液体が前記連通路を通じて流れ込む第2流体流路と、
を備える複数個の液滴吐出ユニットと、
夫々の前記液滴吐出ユニットの前記第1流体流路へ液体を供給する第1共通流路と、
前記第1共通流路から前記第1流体流路を通して前記液滴吐出ユニットへ供給された液体が前記液滴吐出ユニットの前記第2流体流路を通じて流れ込む第2共通流路と、
前記第1共通流路を通して前記液滴吐出ユニットへ、前記液滴吐出ユニットから前記第2共通流路を通して液体を循環させる循環手段と、
夫々の前記イジェクタを循環する液体の循環量に基づいて、前記アクチュエータに異なる予備波形を印加して前記圧力室内の液体へ付与する圧力を変える駆動制御部と、
を備えることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
前記循環量は、前記第1流体流路、前記第2流体流路、前記第1共通流路及び前記第2共通流路の流路抵抗に基づいて算出されることを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
前記駆動制御部は、前記循環量に基づいて複数個のグループに分けられた前記イジェクタの前記アクチュエータに異なった予備波形を印加することを特徴とする請求項6又は7に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
前記駆動制御部は、前記イジェクタを流れる液体の種類に基づいて前記アクチュエータに異なった予備波形を印加することを特徴とする請求項6〜8何れか1項に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項6〜9何れか1項に記載された液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−143168(P2009−143168A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324655(P2007−324655)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】