説明

液滴吐出装置の描画方法

【課題】基板に対し、機能液滴が各画素領域に正確に着弾しなくても、異色の機能液滴が混色することを防止することができる液滴吐出装置の描画方法を提供する。
【解決手段】ワークWと機能液滴吐出ヘッド71とを相対的に走査し、ワークWに機能液を吐出して描画を行なう液滴吐出装置の描画方法であって、走査方向に沿った複数の領域を描画する第1の走査と、第1の走査で描画した複数の領域の間の領域を描画する第2の走査と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対し、複数色の機能液をそれぞれ導入した色別複数の機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、機能液滴を吐出して描画を行う液滴吐出装置の描画方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カラーフィルタの製造に用いられる液滴吐出装置であって、ブラックマトリクス(複数の画素領域)の形成されたガラス基板に対し、R(赤)・G(緑)・B(青)3色のインク(機能液)をそれぞれ導入した色別インクジェットヘッド(機能液滴吐出ヘッド)を相対的に移動させながら、ブラックマトリクスに3色の配色パターンに基づいてインク滴を吐出・着弾させ描画を行うものが知られている。そして、このような液滴吐出装置では、ブラックマトリクスに対してインクを高精度に吐出すべく、インクジェットヘッドに対して基板を相対的に移動させるXYステージ(X軸テーブルおよびY軸テーブル)の位置ずれ量を測定し、その位置ずれを補正するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−258416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液滴吐出装置による描画動作においては、上記のようにXYステージの位置ずれ補正を行ったとしても、XYステージの移動速度ムラ、インク滴の飛行曲がり等により、ブラックマトリクスに対してインクを正確に吐出することは困難である。特に、R・G・B3色のインクが同時に(同一の主走査で)吐出される場合には、隣接する画素領域間において、インク滴が正確に吐出されないことによって、相互に異なる色のインクが基板上で混じり合い、混色してしまうという問題があった。そのため、製造されたカラーフィルタの品質が損なわれていた。
【0005】
本発明は、基板に対し、複数色の機能液滴を同時に吐出・着弾させた場合に、機能液滴が各画素領域に正確に着弾しなくても、異色の機能液滴が混色することを防止することができる液滴吐出装置の描画方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液滴吐出装置の描画方法は、ワークと機能液滴吐出ヘッドとを相対的に走査し、ワークに機能液を吐出して描画を行なう液滴吐出装置の描画方法であって、走査方向に沿った複数の領域を描画する第1の走査と、第1の走査で描画した複数の領域の間の領域を描画する第2の走査と、を有することを特徴とする。
【0007】
この場合、複数種類の機能液を吐出し、第1の走査では、機能液の種類毎に異なる領域を描画することが好ましい。
【0008】
この場合、第2の走査では、第1の走査で描画された領域に、異なる種類の機能液を吐出することが好ましい。
【0009】
また、第2の走査は、複数回行うことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ワーク(基板)を模式的に表した平面図である。
【図2】カラーフィルタにおけるR・G・B3色の配色パターン例を示す図である。
【図3】描画システムの平面模式図である。
【図4】液滴吐出装置の外観斜視図である。
【図5】液滴吐出装置の平面図である。
【図6】液滴吐出装置の正面図である。
【図7】液滴吐出装置の側面図である。
【図8】複数のキャリッジユニットの説明図であり、キャリッジユニットのヘッドプレート廻りを示した図である。
【図9】キャリッジユニットの説明図であり、(a)はキャリッジユニットの外観斜視図、(b)はキャリッジユニットを下側から見た図である。
【図10】描画処理において、ワークに対し、7個のキャリッジユニットがY軸方向に移動する副走査を説明する図である。
【図11】機能液滴吐出ヘッドの外観斜視図である。
【図12】機能液供給手段の説明図であり、(a)は、圧力調整弁廻りの説明図、(b)は圧力調整弁の断面図である。
【図13】メンテナンス手段の外観斜視図である。
【図14】液滴吐出装置の制御系について説明したブロック図である。
【図15】液滴吐出装置による描画処理において、第1回目の主走査を説明する図である。
【図16】図14に続く、第2回目の主走査を説明する図である。
【図17】図15に続く、第3回目の主走査を説明する図である。
【図18】カラーフィルタにおけるR・G・B3色の配色パターンがモザイク配列である場合に、液滴吐出装置による描画処理を説明する図である。
【図19】第2実施形態のキャリッジユニットの底面図である。
【図20】第2実施形態の液滴吐出装置による描画処理を説明する図である。
【図21】カラーフィルタ製造工程を説明するフローチャートである。
【図22】(a)〜(e)は、製造工程順に示したカラーフィルタの模式断面図である。
【図23】本発明を適用したカラーフィルタを用いた液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図24】本発明を適用したカラーフィルタを用いた第2の例の液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図25】本発明を適用したカラーフィルタを用いた第3の例の液晶装置の概略構成を示す要部断面図である。
【図26】有機EL装置である表示装置の要部断面図である。
【図27】有機EL装置である表示装置の製造工程を説明するフローチャートである。
【図28】無機物バンク層の形成を説明する工程図である。
【図29】有機物バンク層の形成を説明する工程図である。
【図30】正孔注入/輸送層を形成する過程を説明する工程図である。
【図31】正孔注入/輸送層が形成された状態を説明する工程図である。
【図32】青色の発光層を形成する過程を説明する工程図である。
【図33】青色の発光層が形成された状態を説明する工程図である。
【図34】各色の発光層が形成された状態を説明する工程図である。
【図35】陰極の形成を説明する工程図である。
【図36】プラズマ型表示装置(PDP装置)である表示装置の要部分解斜視図である。
【図37】電子放出装置(FED装置)である表示装置の要部断面図である。
【図38】表示装置の電子放出部廻りの平面図(a)およびその形成方法を示す平面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明を適用した液滴吐出装置およびその描画方法について説明する。本実施形態の液滴吐出装置は、液晶表示装置等のFPDの製造ラインに組み込まれた描画システムに設置されており、特殊なインクや発光性の樹脂液等の機能液を機能液滴吐出ヘッドに導入して、カラーフィルタ等の基板上にR・G・B3色の機能液滴による成膜部を形成するものである。そこで、まず、液滴吐出装置による機能液滴の吐出対象(描画対象)となる基板(ワーク)について簡単に説明する。
【0012】
図1に示すように、ワークWは、縦1500mm×横1800mmの透明基板(ガラス基板)であり、その周縁部の左右2箇所には、液滴吐出装置1(図4参照)により位置認識される一対のワークアライメントマークWm,Wmがそれぞれ形成されており、その周縁部を除いた縦1360mm×横1630mmの範囲には、区画壁部507b(バンク部)により区画した複数の画素領域507aがマトリクス状に配列されている。各画素領域507aは、区画壁部507bで囲まれた平面視正方形の凹部となっており、後述する機能液滴吐出ヘッド71によりR(赤)・G(緑)・B(青)3色の成膜部(着色層508R、508G、508B)を形成する際に、機能液滴の着弾領域となる(図22参照)。なお、図2(a)に示すように、本実施形態における複数の画素領域507aの配色パターンは、マトリクスの横列においてすべて同色となるストライプ配列であるが、マトリクスの縦列・横列に並んだ任意の3つの画素領域507aが、R・G・Bの3色となるモザイク配列であってもよい(同図(b)参照)。また、複数の画素領域507aが千鳥をなすデルタ配列であってもよい(同図(c)参照)。
【0013】
続いて、本液滴吐出装置を備えた描画システムについて簡単に説明する。図3は、描画システムの平面模式図である。同図に示すように、描画システムSは、3組の描画ユニットSuで構成されており、導入されたワークW(図4参照)上にR・G・B3色の着色層508R、508G、508Bを形成してカラーフィルタを製造するものである。各描画ユニットSuは、元々、R・G・Bの各色にそれぞれ対応しており、順次導入されたワークW(基板)上に着色層を1色分ずつ形成するように設計されたものである。もっとも、後述するように、設置された各液滴吐出装置1は、R・G・B3色の機能液(フィルタ材料)を吐出(描画)可能に構成されているため、各描画ユニットSuは、ワークW上に3色の着色層を形成することができる。すなわち、各描画ユニットSu間でワークWを移載する必要がなく、カラーフィルタを効率よく製造することができる。
【0014】
各描画ユニットSuは、着色層508R、508G、508Bを形成するための液滴吐出装置1と、液滴吐出装置1に並設され、ワークWを搬出入するワーク搬出入装置2と、各装置に接続され、描画ユニットSu全体を制御する上位コンピュータ3とを備えている。また、液滴吐出装置1は、チャンバ装置4に収容されている。チャンバ装置4は、いわゆるサーマルチャンバであり、一定の温度条件でワークWに対する液滴吐出が行われるように、液滴吐出装置1全体を温度管理下で収容している。チャンバ装置4は、液滴吐出装置1全体を直接収容するボックス状のチャンバ本体11と、チャンバ本体11内の温度が一定となるように温度管理を行う空気調和機器12と、これを制御する制御盤(図示省略)とを備えている。図示省略したが、チャンバ本体11の右側面前方には、ワーク搬入・搬出開口となる開閉扉が形成されており、液滴吐出装置1にワークWを導入する場合等には、開閉扉を介してチャンバ本体11に収容された液滴吐出装置1にアクセスできるようになっている。
【0015】
ワーク搬出入装置2は、ワークWを移載するロボットアーム13を備えており、このロボットアーム13により、上記の開閉扉を介して、描画前のワークWを描画ユニットSu内に搬入してこれを液滴吐出装置1に導入すると共に、描画後のワークWを液滴吐出装置1から回収してこれを描画ユニットSu外に搬出する。また、上位コンピュータ3は、パソコン等で構成されており、装置本体16のほか、キーボード17、ディスプレイ18等を備えている(図14参照)。
【0016】
なお、同図に示す符号5は、乾燥装置を設置するための設置スペースであり、状況に応じて、ワークWに吐出させた機能液の機能液溶媒を気化させるための乾燥装置を描画ユニットSu内に設置可能となっている。
【0017】
次に、本発明に係る液滴吐出装置1について説明する。図4ないし図7に示すように、液滴吐出装置1は、床上に設置した大型の共通架台28と、共通架台28上に設置され、ワークW(図4参照)をセットするセットテーブル41を有し、セットテーブル41を介してワークWをX軸方向に往復動(主走査)させるワーク移動手段21(X軸テーブル)と、ワーク移動手段21を跨ぐようにして配設されたヘッド移動手段22(Y軸テーブル)と、それぞれ複数(12個)の機能液滴吐出ヘッド71(図8参照)を搭載すると共に、ヘッド移動手段22に個々に移動自在に取り付けられた複数(7個)のキャリッジユニット23と、7個のキャリッジユニット23に搭載された機能液滴吐出ヘッド71に機能液をそれぞれ供給する7個の機能液供給ユニット101から成る機能液供給手段24と、ヘッド移動手段22によるキャリッジユニット23の移動軌跡上のワーク移動手段21から外側(図5では右側)に外れた位置に配設され、機能液滴吐出ヘッド71を保守するメンテナンス手段25と、セットテーブル41に配設され、メンテナンス手段と共に機能液滴吐出ヘッド71の機能回復に資するフラッシングユニット26とを備えている。
【0018】
また、図示省略したが、液滴吐出装置1は、各手段に液体(機能液および洗浄液)を供給すると共に不要となった液体を回収する液体供給回収手段や、各手段を駆動・制御するための圧縮エアーを供給するエアー供給手段、ワークWをセットテーブル41に吸着セットするためのエアー吸引手段、ワークWの位置認識を行うためのワーク認識カメラ36、キャリッジユニット23の位置認識を行うヘッド認識カメラ37、上記の上位コンピュータ3に接続され液滴吐出装置1全体を統括制御するコントローラ27(制御部162、図14参照)等を備えている。
【0019】
この液滴吐出装置1では、ワーク移動手段21の駆動に同期して、機能液滴吐出ヘッド71を駆動することにより、ワークWの画素領域507aにR・G・B3色の機能液滴を吐出・着弾させ、ワークWに描画処理を行うと共に、ワーク交換等の非描画処理時には、ヘッド移動手段22を駆動し、キャリッジユニット23をメンテナンス手段25に臨ませ、メンテナンス手段25により、機能液滴吐出ヘッド71のメンテナンス処理を行うようになっている。なお、上述したように、液滴吐出装置1は、チャンバ装置4内に収容されており、これらの描画処理やメンテナンス処理を含むほとんどの処理は、チャンバ装置4内で行われる。
【0020】
そして、ワーク移動手段21によるワークWの移動軌跡と、ヘッド移動手段22によるキャリッジユニット23の移動軌跡とが交わる領域が、描画処理を行う描画エリア31となっており、また、ヘッド移動手段22によるキャリッジユニット23の移動軌跡上のワーク移動手段21から外側に外れた領域が、メンテナンス手段25によりメンテナンス処理を行うメンテナンスエリア32となっている。なお、メンテナンスエリア32は、機能液滴吐出ヘッド71を交換するための領域を兼ねている。一方、ワーク移動手段21の一方の端部(図5では下側)は、液滴吐出装置1に対するワークWの搬出入を行うワーク搬出入エリア33となっており、このワーク搬出入エリア33に臨んで、上記のワーク搬出入装置2が設置されている。
【0021】
ワーク移動手段21は、共通架台28上に載置されX軸方向に延在する石定盤30上に配設されており、ワークWを吸着セットする吸着テーブル42および吸着テーブル42を介してワークWのθ位置を微調整(θ補正)するワークθテーブル43を有するセットテーブル41と、セットテーブル41をX軸方向にスライド自在に支持するX軸エアースライダ44と、X軸方向に延在し、セットテーブル41を介してワークWをX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモータ45,45と、X軸リニアモータ45に並設され、X軸エアースライダ44の移動を案内する一対のX軸ガイドレール46,46と、セットテーブル41の位置を把握するためのX軸リニアスケール(図示省略)とを備えている。そして、一対のX軸リニアモータ45,45を駆動すると、一対のX軸ガイドレール46,46をガイドにしながら、X軸エアースライダ44をX軸方向に移動し、セットテーブル41にセットされたワークWがX軸方向に移動する。
【0022】
なお、吸着テーブル42には、ワーク搬出入エリア33に搬入された未処理のワークWをセットテーブル41にセットすると共に、処理済みのワークWをセットテーブル41から回収するためのワーク除給手段51が組み込まれている。ワーク除給手段51は、セットテーブル41に対してワークWを載置・離間させるためのリフトアップ機構56と、リフトアップ機構により吸着テーブル42に載置された未処理のワークWを、その前後端および左右端を挟み込むことで、吸着テーブル42に対して位置決め(プリアライメント)するためのプリアライメント機構57と、イオナイザ等で構成され、ワークWの裏面に剥離帯電した静電気を除去するための除電手段(図示省略)とを有している。
また、X軸エアースライダ44には、フラッシングユニット26が支持されている。
【0023】
一方、ヘッド移動手段22は、Y軸方向に延在する前後一対の支持スタンド29,29上に支持され、描画エリア31およびメンテナンスエリア32間を架け渡すと共に、7個のキャリッジユニット23を、描画エリア31とメンテナンスエリア32との間で個々に移動させるものである。ヘッド移動手段22は、7個のキャリッジユニット23のブリッジプレート75(後述する)がY軸方向に整列するよう、これを両持ちで支持する7組のY軸エアースライダ61と、Y軸方向に延在し、各組のY軸エアースライダ61を介して各ブリッジプレート75をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモータ62,62と、Y軸方向に延在し、7個のブリッジプレート75の移動を案内する一対のY軸ガイドレール63,63と、各キャリッジユニットの移動位置を検出するY軸リニアスケール(図示省略)とを備えている。
【0024】
そして、一対のY軸リニアモータ62,62を駆動すると、7組のY軸エアースライダ61をそれぞれ独立して移動させ、7個のキャリッジユニット23を個別にY軸方向へ移動させることができる。これによれば、7個のキャリッジユニット23に対する個々の移動を、単純な構造で且つ精度良く行うことができる。もちろん、7組のY軸エアースライダ61を同時にY軸方向に移動させることにより、7個のキャリッジユニット23を一体としてY軸方向に移動させることも可能である。
【0025】
なお、各組のY軸エアースライダ61に支持されたブリッジプレート75上には、対応する各キャリッジユニット23に搭載された12個の機能液滴吐出ヘッド71を駆動するヘッド用電装ユニット66と、上記の機能液供給ユニット101とが配設されている。7個のヘッド用電装ユニット66は、相互に干渉することがないよう(ノイズ防止)千鳥状に配置されており、7個の機能液供給ユニット101は、各ヘッド用電装ユニット66に対峙するようにして、千鳥状に配置されている。また、独立移動可能な7個のキャリッジユニット23に対応し、各キャリッジユニット23に接続するチューブやケーブル類を、各キャリッジユニット23の移動に追従可能に収容した7個のY軸ケーブル担持体(ケーブルベア:登録商標)が、7個のヘッド用電装ユニット66の千鳥配置に対応して、二分されて設けられている(図示省略)。もっとも、各ヘッド用電装ユニット66を小型化すれば、千鳥に配置しなくてもよく、7個のヘッド用電装ユニット66をワーク搬出入エリア33側に寄せて1列に並べてもよい。この場合、7個の機能液供給ユニット101についても、ワーク搬出入エリア33側の反対側に寄せて1列に並べることが可能となり、インク交換等の作業が容易となる。
【0026】
図6に示すように、7個のキャリッジユニット23は、ヘッド移動手段22の7組のY軸エアースライダ61によりそれぞれ支持されてY軸方向に並んでいる。そして、7個のキャリッジユニット23の全(12×7個)機能液滴吐出ヘッド71の全ノズル95(吐出ノズル、図9(b)参照)により1の描画ラインL(図10参照)が構成されている。これによれば、キャリッジユニット23を個々にメンテナンスエリア32に移動させることで、メンテナンス手段25によりキャリッジユニット23毎にメンテナンス処理をすることができると共に、キャリッジユニット23毎に機能液滴吐出ヘッド71の交換等を行うことができる。したがって、機能液滴吐出ヘッド71のメンテナンス性およびの交換作業性を損なうことなく、広幅の描画ライン(長ライン)を形成する大型のヘッドユニットを構成することができる。
なお、1の描画ラインLを形成可能であれば、7個のキャリッジユニット23の配置は任意に設定可能である。また、当然のことながら、キャリッジユニット23の個数や、各キャリッジユニット23に搭載する機能液滴吐出ヘッド71の個数も任意に設定可能である。
【0027】
図7ないし図9に示すように、各キャリッジユニット23は、12個の機能液滴吐出ヘッドと、12個の機能液滴吐出ヘッド71を支持するヘッドプレート72と、12個の機能液滴吐出ヘッド71を裏面側からヘッドプレート72に個々に固定するための12個のヘッド保持部材73と、ヘッドプレート72を支持するキャリッジ74と、キャリッジ74を垂設すると共に上記の各組のY軸エアースライダ61により両持ちで支持されるブリッジプレート75とを備えている。また、キャリッジ74は、ヘッドプレート72を介して機能液滴吐出ヘッド71のθ位置を微調整(θ補正)するヘッドθテーブル76を有している。
【0028】
ヘッドプレート72は、ステンレス等から成る平面視略平行四辺形の厚板で構成されており、12個の機能液滴吐出ヘッド71を位置決めすると共に、ヘッド保持部材73により各機能液滴吐出ヘッド71を固定するための12個の装着開口(図示省略)が形成されている。なお、ヘッドプレート72には、機能液供給ユニット101のバルブユニット105(後述する)も固定されている。
【0029】
各機能液滴吐出ヘッド71は、キャリッジ74に搭載された状態では、後述する2本のノズル列94,94がY軸方向と平行になるようにヘッドプレート72に位置決め固定されている。そして、12個の機能液滴吐出ヘッド71は、その幅方向に密に重ね合わせると共に長手方向にノズル列94の長さ分ずつずらすことで階段状にX軸方向およびY軸方向に配設されており、複数のノズル95がY軸方向において連続して、分割描画ラインLD(図10参照)を形成している。すなわち、上記の描画ラインLは、7個の分割描画ラインLDがY軸方向に連続して、構成されている。
なお、各機能液滴吐出ヘッド71は、後述するヘッド内流路(図示省略)の構造上、両端部に位置するノズル95からの吐出量が中央部に位置するノズル95からの吐出量に比べて多くなっているため、両端部のノズル95からは機能液滴を吐出しないようにし、その他のノズル95を吐出ノズルとすることが好ましい。この場合、12個の機能液滴吐出ヘッド71を、それぞれ両端部のノズル95がY軸方向に重複するようにして、配設する。
【0030】
また、ヘッドプレート72に搭載される12個の機能液滴吐出ヘッド71のそれぞれ複数のノズル95がY軸方向において連続して、分割描画ラインLDを形成可能なものであれば、ヘッドプレート72における機能液滴吐出ヘッド71の配置方法は任意に設定可能である。例えば、第2実施形態として後述するが、12個の機能液滴吐出ヘッド71を6個ずつY軸方向に二分すると共に、各組6個の機能液滴吐出ヘッド71を階段状に配置することも可能である(図19参照)。このように、複数の機能液滴吐出ヘッド71を複数組に分割して配置すれば、X軸方向におけるヘッドプレート72の幅を狭くすることができる。また、当然のことながら、各キャリッジユニット23に搭載する機能液滴吐出ヘッド71の個数も任意に設定可能である。
【0031】
図10は、描画処理において、ワークWに対し、7個のキャリッジユニット23がY軸方向に移動する副走査を説明する図である。同図に示すように、各キャリッジユニット23の12個の機能液滴吐出ヘッド71は、同図の右側から4個単位で順に、R・G・B3色の機能液をそれぞれ導入したR系機能液滴吐出ヘッド71R、G系機能液滴吐出ヘッド71G、B系機能液滴吐出ヘッド71Bとなっている。すなわち、各キャリッジユニット23の12個の機能液滴吐出ヘッド71は、各色の全(4個)機能液滴吐出ヘッド71の複数のノズル95により、各色の部分描画ラインLpが構成され、3色の部分描画ラインLpR・LpG・LpBが図示右側からR・G・Bの順序でY軸方向に連なって1の分割描画ラインLDを構成するように配置されている。そして、7個のキャリッジユニット23全体では、各色7本の部分描画ラインLpが図示右側からR・G・Bの順序でY軸方向に連続して、1の描画ラインLを構成している。
【0032】
描画ラインLの長さは、ワークW上に画素領域507aが形成された範囲の長辺の長さ(略1630mm)と比べて、部分描画ラインLpの長さ(90mm)の2倍の寸法分長くなるように設定されており、略1900mmとなっている。そのため、1回の主走査により、ワークW全体に対して機能液滴を吐出・着弾させることができる。
【0033】
もっとも、本実施形態では、上述したように、複数の画素領域507aの配色パターンはX軸方向に並んだ任意の3つの画素がR・G・Bの3色となるものであるのに対し、色別複数の機能液滴吐出ヘッド71がY軸方向に位置ずれして配置されているため、1回の主走査で全画素領域507aに機能液滴を着弾させることはできず、少なくとも3回の主走査に分けて行う必要がある。そして、その3回の主走査のそれぞれの間には、キャリッジユニット23を介して各機能液滴吐出ヘッド71をY軸方向に部分描画ラインLp分移動させる副走査を2回行うこととなる(詳細は後述する)。したがって、7個のキャリッジユニット23は、3回に亘る主走査(およびその間の2回の副走査)の間に、Y軸方向に部分描画ラインLpの2倍の寸法分移動する。すなわち、描画処理に際し、7個のキャリッジユニット23の全機能液滴吐出ヘッド71は、Y軸方向において描画ラインLを部分描画ラインLpの2倍(副走査の回数倍)の寸法分長くした範囲(ヘッド吐出カバー範囲Rh)をカバーすることとなる。
なお、図10では、作図上、Y軸方向において3個の機能液滴吐出ヘッド71に1個の画素領域507aが対応させているが、実際には、1個の機能液滴吐出ヘッド71に複数の画素領域507aが対応している。
【0034】
図11に示すように、機能液滴吐出ヘッド71は、いわゆる2連のものであり、2連の接続針82を有する機能液導入部81と、機能液導入部81に連なる2連のヘッド基板83と、機能液導入部81の下方(同図では上方)に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド内流路が形成されたヘッド本体84とを備えている。接続針82は、後述する機能液タンク103に接続され、機能液滴吐出ヘッド71のヘッド内流路に機能液を供給する。また、ヘッド本体84は、ピエゾ素子等で構成されたキャビティ91と、2本のノズル列94,94を相互に平行に形成したノズル面93を有するノズルプレート92とを有している。各ノズル列94は、複数(180個)のノズル95が等ピッチで並べられて構成されている。また、ヘッド基板83には、フレキシブルフラットケーブルを介して上記のヘッド用電装ユニット66に接続された2連のコネクタ96,96が設けられている。そして、キャビティ91に駆動波形を印加して機能液滴吐出ヘッド71を吐出駆動すると、キャビティ91のポンプ作用により、ノズル95から機能液滴を吐出する。
【0035】
図4および図5に示すように、機能液供給手段24は、7個のキャリッジユニット23に対応する7個の機能液供給ユニット101で構成されている。図8および図12に示すように、各機能液供給ユニット101は、機能液を貯留する複数(12個)の機能液タンク103を有するタンクユニット102と、12個の機能液タンク103および12個の機能液滴吐出ヘッド71をそれぞれ接続する12本の機能液供給チューブ104と、12本の機能液供給チューブ104に介設した12個の圧力調整弁106を有するバルブユニット105とを備えている。各タンクユニット102の12個の機能液タンク103は、4個単位で、R・G・B3色の機能液を1種類ずつ貯留している。そして、各機能液タンク103の機能液が、機能液供給チューブ104を介して、対応する機能液滴吐出ヘッド71に導入される。例えば、上記のR系機能液滴吐出ヘッド71Rは、Rの機能液を貯留した機能液タンク103に接続されており、Rの機能液が導入される。
なお、各機能液タンク103は、機能液を真空パックした機能液パックを樹脂製のカートリッジケースに収容したカートリッジ形式とすることが好ましく、機能液は、予め脱気しておくことが好ましい。
【0036】
図8に示すように、バルブユニット105は、ヘッドプレート72に配設されており、12個の圧力調整弁106と、12個の圧力調整弁106を上記のヘッドプレート72にそれぞれ固定する12個のバルブ固定部材107とを有している。12個の圧力調整弁106は、階段状に配設された12個の機能液滴吐出ヘッド71に倣って、階段状にヘッドプレート72上に配設されている。このように、12個の機能液滴吐出ヘッド71の配置に倣って12個の圧力調整弁106を配置することにより、機能液滴吐出ヘッド71および圧力調整弁106間の機能液供給チューブ104の長さを同一にすることができ、12個の機能液滴吐出ヘッドに供給される機能液の圧力を均一にすることができる。
なお、本実施形態では、各機能液タンク103をブリッジプレート75上に搭載したが、ヘッドプレート72上に搭載する構成としてもよい。これによれば、機能液タンク103から機能液滴吐出ヘッド71に至る機能液供給チューブ104の長さをより短く構成することができ、機能液を効率的に利用することができる。
【0037】
図12に示すように、各圧力調整弁106は、機能液タンク103に連なる1次室111と、機能液滴吐出ヘッド71に連なる2次室112と、1次室111および2次室112を連通する連通流路113とをバルブハウジング110内に形成したものである。2次室112の1の面には外部に面してダイヤフラム114が設けられ、連通流路113にはダイヤフラム114により開閉動作する弁体115が設けられている。
【0038】
機能液タンク103から1次室111に導入された機能液は、2次室112を介して機能液滴吐出ヘッド71に供給されるが、その際、チャンバ装置4内の気圧(通常は大気圧)でもって、ダイヤフラム114が変位する。これにより、連通流路113に設けられた弁体115が開閉動作し、2次室112の機能液圧力がわずかに負圧となるよう、2次室112内の圧力調整がなされる。このような圧力調整弁106を機能液タンク103と機能液滴吐出ヘッド71との間に介設することにより、機能液タンク103および機能液滴吐出ヘッド71間の水頭圧が過度に変動することがないため、機能液滴吐出ヘッド71からの機能液の吐出を安定化することができる。なお、バルブユニット105の設置位置は、ヘッドプレート72上に限定されるものではなく、ブリッジプレート75上に設けることも可能である。
【0039】
図5および図7に示すように、フラッシングユニット26は、フラッシング動作、すなわち機能液滴吐出ヘッド71の予備吐出(捨て吐出)で吐出された機能液滴を受けるものであり、特に、ワークWの交換時等に行う定期フラッシングを受けるためのものである。フラッシングユニット26は、セットテーブル41に対してワークWの往動(図5の下側から上側へ移動)時に先頭となる側に位置して、セットテーブル41の長辺(Y軸方向)に沿って配設され、機能液滴を直接受ける定期フラッシングボックス121と、上記のX軸エアースライダ44に固定され、定期フラッシングボックス121を支持するボックス支持部材122とで構成されている。
【0040】
定期フラッシングボックス121は、平面視長方形の箱状に形成されており、その底面には、機能液を吸収させる吸収材(図示省略)が敷設されている。定期フラッシングボックス121の長辺(Y軸方向)は、上記のヘッド吐出カバー範囲Rhに対応して形成されている。このため、定期フラッシングボックス121は、キャリッジユニット23が副走査を行ってヘッド吐出カバー範囲Rh内でY軸方向に移動した場合にも、7個のキャリッジユニット23に搭載された全機能液滴吐出ヘッド71からフラッシングされた機能液を受けることができる。なお、定期フラッシングボックス121の短辺(X軸方向)も、7個のキャリッジユニット23のX軸方向における長さに対応して形成されていることが好ましい。
【0041】
なお、図示しないが、吸着テーブル42の描画エリア側31には、吐出前フラッシングボックスが設けられている。そして、ワークWをX軸方向に往動すると、キャリッジユニット23は、吐出前フラッシングボックスに臨んだ後、ワークWに臨むことになる。そのため、ワークWに臨む直前に吐出前フラッシングを行うことができ、ノズル詰まりを効果的に防止できる。また、吐出前フラッシングボックスの長辺(Y軸方向)は、定期フラッシングボックス121と同様に、ヘッド吐出カバー範囲Rhに対応して形成されている。
【0042】
また、本実施形態では、ワークWの往動時にのみ機能液滴を吐出・着弾させる構成であるが、ワークWの復動(図5の上側から下側への移動)時にも機能液滴吐出ヘッド71を吐出させてもよく、この場合には、吐出前フラッシングボックスを一対設け、セットテーブル41をX軸方向に挟むようにこれらを配設することが好ましい。これにより、ワークWの往復動に伴う吐出駆動の直前にフラッシングを行うことができる。
このように、フラッシング動作には、ワークWに吐出(描画)をする直前に行われる吐出前フラッシングと、ワークWの交換時のように、ワークWに対する描画を一時的に停止するときに行う定期フラッシングとがある。
【0043】
次に、図13を参照して、メンテナンス手段25について説明する。メンテナンス手段25は、吸引ユニット131と、ワイピングユニット132と、ユニット昇降機構133とを有しており、これらは、メンテナンスエリア32に配設されている(図5および図6参照)。
【0044】
吸引ユニット131は、機能液滴吐出ヘッド71を吸引して、機能液滴吐出ヘッド71から機能液を強制的に排出させるものである。吸引ユニット131は、7個のキャリッジユニット23に対応して、7個の分割吸引ユニット141を有している。そして、7個の分割吸引ユニット141は、7個のキャリッジユニット23の配置に倣って、Y軸方向に配列されていると共に、ユニット昇降機構133により、個々に昇降可能に支持されている。
【0045】
各分割吸引ユニット141は、キャリッジユニット23に対して下側から臨み、12個の機能液滴吐出ヘッド71のノズル面93にそれぞれ封止させる12個のキャップ143を有するキャップユニット142と、キャップユニット142を昇降自在に支持するキャップ支持部材145と、封止させたキャップ143を介して機能液滴吐出ヘッド71に吸引力を作用させるエゼクタ(図示省略)とを備えている。
【0046】
キャップユニット142は、キャリッジユニット23に搭載された12個の機能液滴吐出ヘッド71の並びに対応させて、12個のキャップ143をキャップベース144に配設したものである。そのため、吸引ユニット131全体では、7個のキャリッジユニット23に搭載された全機能液滴吐出ヘッド71の配置パターンに倣って、12×7個のキャップ143が配置されており、全機能液滴吐出ヘッド71にそれぞれ対応するキャップ143を一度に封止させることが可能である。そして、キャップ143をノズル面93に封止させた状態でエゼクタを駆動することにより、ノズル95から機能液を吸引する。これにより、機能液滴吐出ヘッド71内で増粘した機能液を除去することができる。なお、後述するように、吸引ユニット131により吸引がなされた機能液滴吐出ヘッド71は、ノズル面93に機能液が付着する場合があるため、ワイピングユニット132に臨み、ワイピングがなされる。
【0047】
また、吸引ユニット131は、機能液滴吐出ヘッド71の吸引に供されるだけでなく、上述したように定期フラッシングの機能液を受けるように構成されている。すなわち、吸引ユニット131の各キャップ143は、フラッシングボックスの役割を兼ねている。さらに、吸引ユニット131は、液滴吐出装置1の非描画処理時等に、キャップ143を機能液滴吐出ヘッド71のノズル面93に封止させることで、ノズル95の乾燥を防止するためにも用いることが可能である。
【0048】
ワイピングユニット132は、描画エリア31と吸引ユニット131との間、すなわちメンテナンスエリア32の描画エリア31側に配置されており、機能液滴吐出ヘッド71の吸引等により、機能液が付着して汚れたノズル面を、ワイピングシート151を用いて拭き取るものである。このような配置により、ワイピングユニット132は、吸引ユニット131による吸引を終えて、描画エリア31へ個々に移動するキャリッジユニット23に順次臨むことができ、その機能液滴吐出ヘッド71にワイピング処理を行うことができるようになっている。
【0049】
ワイピングユニット132は、ワイピングシート151を(その延在方向に)繰り出す図示上側の繰出しリール152と、繰り出されたワイピングシート281を巻き取る図示下側の巻取りリール153と、繰り出したワイピングシート151に洗浄液を散布する洗浄液供給ユニット(図示省略)と、機能液滴吐出ヘッド71の下側から臨み、ワイピングシート151でノズル面93を拭き取る拭取りユニット154と、これらを支持するワイピングフレーム155とを備えている。なお、ワイピングシート151に供給される洗浄液は、比較的揮発性の高い機能液の溶剤であり、機能液滴吐出ヘッド71のノズル面93に付着する機能液を効率的に除去できるようになっている。
【0050】
そして、ヘッド移動手段22を駆動して、各キャリッジユニット23を1個ずつ順にワイピングユニット132に臨ませて、12個の機能液滴吐出ヘッドのノズル面93に洗浄液を含浸させたワイピングシート151を当接させた状態とし、さらに、ヘッド移動手段22によりキャリッジユニット23をY軸方向(描画エリア31側)へ移動させることで、ワイピングシート151によりノズル面93を払拭する。このようにして、各キャリッジユニット23に搭載された12個の機能液滴吐出ヘッド71を一連にワイピングする。なお、ノズル列94の列方向(Y軸方向)に合致する方向からワイピング動作を行うため、ワイピングシート151の同じ箇所で互いに異なる機能液を払拭することがなく、ノズル面93において機能液が混ざり合ってしまうことがない。
【0051】
ユニット昇降機構133は、吸引ユニット131の7個の分割吸引ユニット141およびワイピングユニット132をそれぞれ個別に昇降可能に支持する8個の分割ユニット昇降機構156を有している。各分割ユニット昇降機構156は、エアーシリンダ等で構成されており、機能液滴吐出ヘッド71を保守する所定のメンテナンス位置(アクセス位置)と所定の退避位置との間で、7個の分割吸引ユニットおよびワイピングユニット132をそれぞれ昇降させるものである。そして、機能液滴吐出ヘッド71の交換時には、各分割ユニット昇降機構156を駆動して、吸引ユニット131およびワイピングユニット132を下降させることで、吸引ユニット131およびワイピングユニット132上に作業領域を確保することができる。
【0052】
このように、機能液滴吐出ヘッド71に対し、吸引ユニット131による吸引処理と、ワイピングユニット132による払拭処理を行うことで、各キャリッジユニット23における機能液滴吐出ヘッド71の吐出機能を良好な状態に維持することができる。しかも、吸引ユニット131を7個のキャリッジユニット23に対応させて7個の分割吸引ユニット141で構成することで、各分割吸引ユニット141の組立作業が容易となる。
【0053】
なお、本実施形態では、図5および図6に示すように、単一のメンテナンスエリア32にメンテナンス手段を設けているが、ヘッド移動手段22によるキャリッジユニット23の移動軌跡上のワーク移動手段21(描画エリア31)から両外側に外れた位置に一対のメンテナンスエリア32を構成し、各メンテナンスエリア32に、メンテナンス手段25を備えるようにしてもよい。これによれば、7個のキャリッジユニット23を、2群(例えば、3個と4個とに)に分けてメンテナンスすることができ、機能液滴吐出ヘッド71の機能回復処理を速やかに行うことができる。また、機能液滴吐出ヘッド71の交換等を行う場合に、対応するキャリッジユニット23を一方のメンテナンス手段25に臨ませてヘッド交換を行うと共に、その他のキャリッジユニット23を他方のメンテナンス手段25に臨ませて機能回復処理を行うことができ、液滴吐出装置1を稼動停止しなくてすむ。そして、このように一対のメンテナンスエリア32を構成する場合には、各メンテナンス手段の吸引ユニット131を構成する分割吸引ユニット141の個数は、3個または4個であればよい。
【0054】
次に、図14を参照して、液滴吐出装置1全体の制御系について説明する。液滴吐出装置1の制御系は、基本的に、上記の上位コンピュータ3と、機能液滴吐出ヘッド71、ワーク移動手段21、ヘッド移動手段22、メンテナンス手段25等を駆動する各種ドライバを有する駆動部161と、駆動部161を含め液滴吐出装置1全体を統括制御する制御部162(コントローラ27)とを備えている。
【0055】
駆動部161は、ワーク移動手段21およびヘッド移動手段22の各モータをそれぞれ駆動制御する移動用ドライバ171と、機能液滴吐出ヘッド71を吐出駆動制御するヘッドドライバ172と、メンテナンス手段25の吸引ユニット131、ワイピングユニット132およびユニット昇降機構133を駆動制御するメンテナンス用ドライバ173とを備えている。
【0056】
制御部162は、CPU181と、ROM182と、RAM183と、P−CON184とを備え、これらは互いにバス185を介して接続されている。ROM182は、CPU181で処理する制御プログラム等を記憶する制御プログラム領域と、描画動作や機能回復処理等を行うための制御データ等を記憶する制御データ領域とを有している。
【0057】
RAM183は、各種レジスタ群のほか、ワークWに描画を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部、ワークWおよび機能液滴吐出ヘッド71の位置データを記憶する位置データ記憶部等の各種記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。P−CON184には、駆動部161の各種ドライバのほか、ワーク認識カメラ36やヘッド認識カメラ37等が接続されており、CPU181の機能を補うと共に、周辺回路とのインタフェース信号を取り扱うための論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON184は、上位コンピュータ3からの各種指令等をそのままあるいは加工してバス185に取り込むと共に、CPU181と連動して、CPU181等からバス185に出力されたデータや制御信号を、そのままあるいは加工して駆動部161に出力する。
【0058】
そして、CPU181は、ROM182内の制御プログラムに従って、P−CON184を介して各種検出信号、各種指令、各種データ等を入力し、RAM183内の各種データ等を処理した後、P−CON184を介して駆動部161等に各種の制御信号を出力することにより、液滴吐出装置1全体を制御している。例えば、CPU181は、機能液滴吐出ヘッド71、ワーク移動手段21およびヘッド移動手段22を制御して、所定の描画条件および所定の移動条件でワークWに描画を行う。
【0059】
ここで、液滴吐出装置1による一連の描画処理について説明する。まず、ワーク搬出入装置2を用いて、ワーク搬出入エリア33に位置するセットテーブル41に未処理のワークWを導入し、これに相前後して、ヘッド移動手段22を駆動して、7個のキャリッジユニット23を描画エリア31(描画ホーム位置)に移動させる。続いて、機能液滴を吐出する前の準備として、吸着テーブル42にセットされたワークWの位置補正が、ワーク移動手段21によるX軸方向の位置補正およびワークθテーブル43よるθ軸方向の位置補正によりなされると共に、各キャリッジユニット23の位置補正が、ヘッド移動手段22によるY軸方向の位置補正およびヘッドθテーブル76によるθ軸方向の位置補正によりなされる。位置補正がなされると、ワークWに形成された複数の画素領域507aが、X軸方向およびY軸方向にマトリクス状に配列された状態となる。
【0060】
図15に示すように、本実施形態では、画素の配色パターンがストライプ配列であり、各色の画素列がY軸方向に沿って形成される。すなわち、X軸方向には、隣接する3個の画素がR・G・Bの3色となるように並ぶ。そして、上述したように、7個のキャリッジユニット23が描画ホーム位置にあるとき、図示右端のキャリッジユニット23の右端のB系機能液滴吐出ヘッド71Bが、図示右端の画素領域507aに臨んでおり、そのY軸方向外側(右側)に位置するR系機能液滴吐出ヘッド71RおよびG系機能液滴吐出ヘッド71Gは、画素領域507aからY軸方向外側に外れて位置している。また、このとき、図示左端のキャリッジユニット23の左端のB系機能液滴吐出ヘッド71Bが、図示左端の画素領域507aに臨んでいる(同図(a)参照)。
【0061】
この状態で、液滴吐出装置1は、コントローラ27(制御部162)による制御を受けながら、ワーク移動手段21によるX軸方向へのワークWのX軸方向への往動に同期して、複数の画素領域507aに対し、ストライプ配列の配色パターンに基づいて、R・G・B3色の機能液滴を同時に吐出・着弾させる主走査を行う。ここで、X軸方向においてR・G・B3色の画素領域507aが交互に配列されているのに対し、色別複数の部分描画ラインLpは、Y軸方向に連続しているため、X軸方向に隣接する画素領域507a間において、相互に異なる色の機能液滴を同一の主走査で吐出・着弾させることがない。すなわち、各機能液滴吐出ヘッド71は、X軸方向に並ぶ3個の画素領域507aのうち、1個の画素領域507aのみに対して機能液滴を吐出することになる(同図(b)参照)。
【0062】
第1回目の主走査(ワークWの往動)が終わると、ワーク移動手段21によりワークWを復動させると共に、ヘッド移動手段22を駆動して、7個のキャリッジユニット23を一体としてY軸方向(図示左側)に部分描画ラインLp分(機能液滴吐出ヘッドの4個分相当)移動させる副走査を行う。図16に示すように、この副走査により、第1回目の主走査においてBの機能液が着弾した画素領域507aに対し、G系機能液滴吐出ヘッド71Gが臨み、Rの機能液が着弾した画素領域507aに対し、B系機能液滴吐出ヘッド71Bが臨み、Gの機能液が着弾した画素領域507aに対し、R系機能液滴吐出ヘッド71Rが臨む。そして、第1回目の主走査時に画素領域507aからY軸方向外側(右側)に外れて位置していたG系機能液滴吐出ヘッド71Gは、図示右端の画素領域507aに臨んでいるが、R系機能液滴吐出ヘッド71Rは、画素領域507aからY軸方向外側に外れたままである。また、第1回目の主走査時に図示左端の画素領域507aに臨んでいた図示左端のキャリッジユニット23の左端のB系機能液滴吐出ヘッド71Bは、画素領域507aからY軸方向外側(左側)に外れて位置しており、その右隣のG系機能液滴吐出ヘッド71Gが図示左端の画素領域507aに臨んでいる(同図(a)参照)。
【0063】
この状態で、第1回目の主走査と同様にして、第2回目の主走査が行われる(同図(b)参照)。ここで、第1回目の主走査において、画素領域507aからY軸方向外側(メンテナンスエリア32側)に外れて位置していたG系機能液滴吐出ヘッド71Gは、その間画素領域507aに対して機能液滴を吐出していないが、第1回目の主走査および第2回目の主走査において、ワークWに臨む直前に吐出前フラッシングボックスに対して吐出前フラッシングを行うため、ノズル95が乾燥することなく、第2回目の主走査において画素領域507aに対し機能液滴を適切に吐出することができる。
【0064】
なお、第1回目の主走査と第2回目の主走査との間に、図示右端のキャリッジユニット23だけをメンテナンスエリア32に移動させ、吸引ユニット131およびワイピングユニット132によりメンテナンス処理を行ってもよい。これによれば、仮に、第1回目の主走査で吐出駆動していないR系機能液滴吐出ヘッド71RおよびG系機能液滴吐出ヘッド71Gが、第2回目の主走査の直前に吐出前フラッシングを行うだけでは完全に機能回復できないほどにノズル95が乾燥してしまっていても、適切に吐出機能の回復を図ることができる。そして、右端のキャリッジユニット23の機能液滴吐出ヘッド71がメンテナンス処理を受けている間、他のキャリッジユニット23の機能液滴吐出ヘッド71は、適宜、定期フラッシングボックス121に対してフラッシング動作を行いながら待機することが好ましい。また、右端のキャリッジユニット23の外に、吐出パターンとの関係から吐出駆動しない機能液滴吐出ヘッド71が存在する場合にも、その機能液滴吐出ヘッド71が搭載されたキャリッジユニット23(およびそれよりメンテナンスエリア32側のキャリッジユニット23)をメンテナンスエリア32に移動させ、吸引ユニット131およびワイピングユニット132によりメンテナンス処理を行ってもよい。
【0065】
第2回目の主走査が終わると、ワーク移動手段21によりワークWをX軸方向へ復動させると共に、ヘッド移動手段22を駆動して、7個のキャリッジユニット23を一体としてY軸方向(図示左側)に部分描画ラインLp分(機能液滴吐出ヘッドの4個分相当)移動させる副走査を行う。図17に示すように、この副走査により、第2回目の主走査においてGの機能液が着弾した画素領域507aに対し、R系機能液滴吐出ヘッド71Rが臨み、Bの機能液が着弾した画素領域507aに対し、G系機能液滴吐出ヘッド71Gが臨み、Rの機能液が着弾した画素領域507aに対し、B系機能液滴吐出ヘッド71Bが臨む。そして、第2回目の主走査時に画素領域507aからY軸方向外側(右側)に外れて位置していたR系機能液滴吐出ヘッド71Rは、図示右端の画素領域507aに臨んでいる。また、第2回目の主走査時に図示左端の画素領域507aに臨んでいた図示左端のキャリッジユニット23の左端のG系機能液滴吐出ヘッド71Gは、画素領域507aからY軸方向外側(左側)に外れて位置しており、その右隣のR系機能液滴吐出ヘッド71Rが図示左端の画素領域507aに臨んでいる(同図(a)参照)。
【0066】
この状態で、第2回目の主走査と同様にして、第3回目の主走査が行われる(同図(b)参照)。ここで、第2回目の主走査において、画素領域507aからY軸方向外側(メンテナンスエリア32側)に外れて位置していたR系機能液滴吐出ヘッド71Rは、その間画素領域507aに対して機能液滴を吐出していないが、第1回目の主走査ないし第3回目の主走査において、ワークWに臨む直前に吐出前フラッシングボックスに対して吐出前フラッシングを行うため、ノズル95が乾燥することなく、第3回目の主走査において画素領域507aに対し機能液滴を適切に吐出することができる。
【0067】
なお、この場合も、第2回目の主走査と第3回目の主走査との間に、図示右端のキャリッジユニット23だけをメンテナンスエリア32に移動させ、吸引ユニット131およびワイピングユニット132によりメンテナンス処理を行ってもよい。さらに、上述したように、描画エリア31から両外側に外れた位置に一対のメンテナンスエリア32を構成している場合には、図示左端のキャリッジユニット23だけを図示左側のメンテナンスエリア32に移動させ、メンテナンス処理を行ってもよい。
【0068】
このように、X軸方向に隣接する画素領域507a間において、相互に異なる色の機能液滴を同一の主走査で吐出・着弾させることなく、ワークW上の全画素領域507aに対する機能液滴の吐出・着弾が完了する。このため、X軸方向に隣接する画素領域507a間の区画壁部507b上に、例えば、第1回目の主走査によりRの機能液滴が着弾し、第2回目の主走査によりGの機能液滴が着弾したとしても、第2回目の主走査でGの機能液滴が着弾する時には、第1回目の主走査で着弾したRの機能液滴がある程度乾燥した状態となっているため、両機能液滴が混ざり合ってしまうことがない。したがって、X軸方向に隣接する画素領域507a間において、異色の機能液滴が混色することを確実に防止することができる。
なお、1回の主走査において、複数回ワークWを往復動させ各画素領域507aに対し複数回機能液滴を吐出・着弾させてもよく、この場合、各往復動毎に、各キャリッジユニット23をY軸方向に微小距離移動させることが好ましい。これによれば、各画素領域507aの全域に隈なく機能液滴を吐出・着弾させることができる。また、図15ないし図17では、作図上、Y軸方向において3個の機能液滴吐出ヘッド71に1個の画素領域507aが対応させているが、上述したように、実際には、1個の機能液滴吐出ヘッド71に複数の画素領域507aが対応している。
【0069】
本実施形態では、上述したように、画素の配色パターンがストライプ配列であって、各色の画素列がY軸方向に沿って形成されているため、Y軸方向に隣接する画素領域507aに対して異色の機能液滴を着弾させることがない。しかし、画素の配色パターンがモザイク配列やデルタ配列である場合には、異色の画素がY軸方向に並んで形成されているため、Y軸方向に隣接する異色の機能液滴吐出ヘッド71に対応するY軸方向に隣接する2個の画素領域507aに対して、同一の主走査で異色の機能液滴を着弾させると、隣接する画素領域間の区画壁部507b上に、異色の機能液滴がそれぞれ着弾し、混色が生ずるおそれがある。このような場合には、2つの画素領域507aへの機能液滴の吐出を相互に異なる主走査で行わせることが好ましい(特に、画素領域507aに吐出する機能液量が多い場合に有効である。)。
【0070】
図18に示すように、例えば、画素の配色パターンがモザイク配列である場合に、Y軸方向に隣接するR系機能液滴吐出ヘッド71RおよびG系機能液滴吐出ヘッド71Gに対応するY軸方向に隣接する2個の画素領域507aに対して、第1回目の主走査では、そのG系機能液滴吐出ヘッド71G(の一部のノズル95)を非駆動とし、そのR系機能液滴吐出ヘッド71Rを駆動として、Rの機能液滴を吐出させ(同図(a)参照)、第2回目の主走査では、そのR系機能液滴吐出ヘッド71Rを非駆動とし、そのG系機能液滴吐出ヘッド71Bを駆動として、Gの機能液滴を吐出させる(同図(a)参照)。これによれば、Y軸方向に隣接する画素領域507a間において、相互に異なる色の機能液滴を同一の主走査で吐出・着弾させることがない。このため、X軸方向に隣接する画素領域507a間だけでなく、Y軸方向に隣接する画素領域507a間においても、異色の機能液滴が混色することを確実に防止することができる。
なお、同図では、作図上、Y軸方向において1個の機能液滴吐出ヘッド71に1個の画素領域507aが対応させているが、上述したように、実際には、1個の機能液滴吐出ヘッド71に複数の画素領域507aが対応している。
【0071】
次に、図19および図20を参照して、液滴吐出装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態の液滴吐出装置1は、上記の第1実施形態の液滴吐出装置1と略同様の構成であるが、第1実施形態では、各キャリッジユニット23の12個の機能液滴吐出ヘッド71を1列の階段状に配置し、4個単位で、R・G・B3色の機能液をそれぞれ導入したR系機能液滴吐出ヘッド71R、G系機能液滴吐出ヘッド71G、B系機能液滴吐出ヘッド71Bとなっているのに対し(図9および図10参照)、第2実施形態では、12個の機能液滴吐出ヘッド71を6個ずつY軸方向に二分すると共に各組6個の機能液滴吐出ヘッド71を階段状に配置し、図19の右側から1個単位で順に、R・G・B3色の機能液をそれぞれ導入したR系機能液滴吐出ヘッド71R、G系機能液滴吐出ヘッド71G、B系機能液滴吐出ヘッド71Bとなっている点で相違する。
【0072】
すなわち、第2実施形態では、各キャリッジユニット23の12個の機能液滴吐出ヘッド71は、各色の4個の機能液滴吐出ヘッド71の複数のノズル95により各色の部分描画ラインLpが4本構成され、3色の部分描画ラインLpR・LpG・LpBが図示右側からこの順序でY軸方向に4回繰り返し連なって1の分割描画ラインLDを構成するように配置されている。このため、第1実施形態に比べ、各部分描画ラインLpの長さは短くなっている。
【0073】
ここで、図20を参照して、第2実施形態の液滴吐出装置1による一連の描画処理について説明する。まず、上記と同様にして、ワークWを吸着テーブル42にセットし、ワークWおよび各キャリッジユニット23の位置補正が行われる。
【0074】
このとき、図示右端のキャリッジユニット23の右端のB系機能液滴吐出ヘッド71Bが、図示右端の画素領域507aに臨んでおり、そのY軸方向外側(右側)に位置するR系機能液滴吐出ヘッド71RおよびG系機能液滴吐出ヘッド71Gは、画素領域507aからY軸方向外側に外れて位置し、また、図示左端のキャリッジユニット23の左端のB系機能液滴吐出ヘッド71Bが、図示左端の画素領域507aに臨んでいる。そして、この状態で第1回目の主走査が行われ、各機能液滴吐出ヘッド71から、X軸方向に並ぶ3個の画素領域507aのうち1個の画素領域507aのみに対して機能液滴が吐出される(同図(a)参照)。
【0075】
第1回目の主走査が終わると、第1回目の主走査においてBの機能液が着弾した画素領域507aに対し、G系機能液滴吐出ヘッド71Gを臨ませ、Rの機能液が着弾した画素領域507aに対し、B系機能液滴吐出ヘッド71Bを臨ませ、Gの機能液が着弾した画素領域507aに対し、R系機能液滴吐出ヘッド71Rを臨ませるべく、7個のキャリッジユニット23を一体としてY軸方向(図示左側)に部分描画ラインLp分(機能液滴吐出ヘッドの1個分相当)移動させる副走査を行う。すなわち、第2実施形態の液滴吐出装置1では、第1実施形態に比べて各部分描画ラインLpの長さが短くなることで、副走査における各機能液滴吐出ヘッド71(キャリッジユニット23)の移動距離を短くすることができる。したがって、副走査を短時間で行うことができる。
【0076】
そして、第1実施形態と同様に吐出前フラッシングを行った上で、第2回目の主走査が行われ、第1回目の主走査においてBの機能液が着弾した画素領域507aに隣接する画素領域507aに対しGの機能液が着弾し、Rの機能液が着弾した画素領域507aに隣接する画素領域507aに対しBの機能液が着弾し、Gの機能液が着弾した画素領域507aに隣接する画素領域507aに対しRの機能液が着弾する(同図(b)参照)。
【0077】
第2回目の主走査が終わると、第2回目の主走査においてBの機能液が着弾した画素領域507aに対し、G系機能液滴吐出ヘッド71Gを臨ませ、Rの機能液が着弾した画素領域507aに対し、B系機能液滴吐出ヘッド71Bを臨ませ、Gの機能液が着弾した画素領域507aに対し、R系機能液滴吐出ヘッド71Rを臨ませるべく、7個のキャリッジユニット23を一体としてY軸方向(図示左側)に部分描画ラインLp分(機能液滴吐出ヘッドの1個分相当)移動させる副走査を行う。ここでも、副走査における各機能液滴吐出ヘッド71(キャリッジユニット23)の移動距離を短くすることができ、副走査を短時間で行うことができる。
【0078】
そして、上記と同様に吐出前フラッシング行った上で、第3回目の主走査が行われ、第2回目の主走査においてBの機能液が着弾した画素領域507aに隣接する画素領域507aに対しGの機能液が着弾し、Rの機能液が着弾した画素領域507aに隣接する画素領域507aに対しBの機能液が着弾し、Gの機能液が着弾した画素領域507aに隣接する画素領域507aに対しRの機能液が着弾する(同図(c)参照)。
【0079】
以上のように、第2実施形態における描画処理についても、副走査における移動距離が異なる点を除き、第1実施形態と同様にして描画処理が行われ、X軸方向に隣接する画素領域507a間において、相互に異なる色の機能液滴を同一の主走査で吐出・着弾させることなく、ワークW上の全画素領域507aに対する機能液滴の吐出・着弾が完了する。したがって、X軸方向に隣接する画素領域507a間において、異色の機能液滴が混色することを確実に防止することができる。
【0080】
また、第2実施形態では、第1実施形態に比べて各部分描画ラインLpが短くなるため、上記のヘッド吐出カバー範囲Rh(Y軸方向において描画ラインLを部分描画ラインLpの2倍(副走査の回数倍)の寸法分長くした範囲)が短くなる。したがって、吐出前フラッシングボックスのY軸方向の長さを短くすることができ、省スペース化に寄与するものとなる。
【0081】
なお、第2実施形態においても、第1回目の主走査と第2回目の主走査との間、および第2回目の主走査と第3回目の主走査との間に、図示右端のキャリッジユニット23だけをメンテナンスエリア32に移動させ、メンテナンス処理を行ってもよい。また、第2実施形態でも、ノズル列94の列方向(Y軸方向)に合致する方向からワイピング動作が行われるが、各キャリッジユニット23において、X軸方向において同位置に配置された機能液滴吐出ヘッド71には、同色の機能液が導入されるため(図19および図20参照)、ワイピングシート151の同じ箇所で互いに異なる機能液を払拭することがなく、ノズル面93において機能液が混ざり合ってしまうことがない。
【0082】
以上のように、本実施形態の液滴吐出装置1によれば、ワークWに対し、R・G・B3色の機能液滴を同時に吐出・着弾させた場合に、機能液滴が各画素領域507aに正確に着弾しなくても、異色の機能液滴が混色することを防止することができる。
【0083】
次に、本実施形態の液滴吐出装置1を用いて製造される電気光学装置(フラットパネルディスプレイ)として、カラーフィルタ、液晶表示装置、有機EL装置、プラズマディスプレイ(PDP装置)、電子放出装置(FED装置、SED装置)、さらにこれら表示装置に形成されてなるアクティブマトリクス基板等を例に、これらの構造およびその製造方法について説明する。なお、アクティブマトリクス基板とは、薄膜トランジスタ、および薄膜トランジスタに電気的に接続するソース線、データ線が形成された基板をいう。
【0084】
まず、液晶表示装置や有機EL装置等に組み込まれるカラーフィルタの製造方法について説明する。図21は、カラーフィルタの製造工程を示すフローチャート、図22は、製造工程順に示した本実施形態のカラーフィルタ500(フィルタ基体500A)の模式断面図である。
まず、ブラックマトリクス形成工程(S101)では、図22(a)に示すように、基板(W)501上にブラックマトリクス502を形成する。ブラックマトリクス502は、金属クロム、金属クロムと酸化クロムの積層体、または樹脂ブラック等により形成される。金属薄膜からなるブラックマトリクス502を形成するには、スパッタ法や蒸着法等を用いることができる。また、樹脂薄膜からなるブラックマトリクス502を形成する場合には、グラビア印刷法、フォトレジスト法、熱転写法等を用いることができる。
【0085】
続いて、バンク形成工程(S102)において、ブラックマトリクス502上に重畳する状態でバンク503を形成する。即ち、まず図22(b)に示すように、基板501およびブラックマトリクス502を覆うようにネガ型の透明な感光性樹脂からなるレジスト層504を形成する。そして、その上面をマトリクスパターン形状に形成されたマスクフィルム505で被覆した状態で露光処理を行う。
さらに、図22(c)に示すように、レジスト層504の未露光部分をエッチング処理することによりレジスト層504をパターニングして、バンク503を形成する。なお、樹脂ブラックによりブラックマトリクスを形成する場合は、ブラックマトリクスとバンクとを兼用することが可能となる。
このバンク503とその下のブラックマトリクス502は、各画素領域507aを区画する区画壁部507bとなり、後の着色層形成工程において機能液滴吐出ヘッド16により着色層(成膜部)508R、508G、508Bを形成する際に機能液滴の着弾領域を規定する。
【0086】
以上のブラックマトリクス形成工程およびバンク形成工程を経ることにより、上記フィルタ基体500Aが得られる。
なお、本実施形態においては、バンク503の材料として、塗膜表面が疎液(疎水)性となる樹脂材料を用いている。そして、基板(ガラス基板)501の表面が親液(親水)性であるので、後述する着色層形成工程においてバンク503(区画壁部507b)に囲まれた各画素領域507a内への液滴の着弾位置のばらつきを自動補正できる。
【0087】
次に、着色層形成工程(S103)では、図22(d)に示すように、機能液滴吐出ヘッド16によって機能液滴を吐出して区画壁部507bで囲まれた各画素領域507a内に着弾させる。この場合、機能液滴吐出ヘッド16を用いて、R・G・Bの3色の機能液(フィルタ材料)を導入して、機能液滴の吐出を行う。なお、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライプ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
【0088】
その後、乾燥処理(加熱等の処理)を経て機能液を定着させ、3色の着色層508R、508G、508Bを形成する。着色層508R、508G、508Bを形成したならば、保護膜形成工程(S104)に移り、図22(e)に示すように、基板501、区画壁部507b、および着色層508R、508G、508Bの上面を覆うように保護膜509を形成する。
即ち、基板501の着色層508R、508G、508Bが形成されている面全体に保護膜用塗布液が吐出された後、乾燥処理を経て保護膜509が形成される。
そして、保護膜509を形成した後、カラーフィルタ500は、次工程の透明電極となるITO(Indium Tin Oxide)などの膜付け工程に移行する。
【0089】
図23は、上記のカラーフィルタ500を用いた液晶表示装置の一例としてのパッシブマトリックス型液晶装置(液晶装置)の概略構成を示す要部断面図である。この液晶装置520に、液晶駆動用IC、バックライト、支持体などの付帯要素を装着することによって、最終製品としての透過型液晶表示装置が得られる。なお、カラーフィルタ500は図22に示したものと同一であるので、対応する部位には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0090】
この液晶装置520は、カラーフィルタ500、ガラス基板等からなる対向基板521、および、これらの間に挟持されたSTN(Super Twisted Nematic)液晶組成物からなる液晶層522により概略構成されており、カラーフィルタ500を図中上側(観測者側)に配置している。
なお、図示していないが、対向基板521およびカラーフィルタ500の外面(液晶層522側とは反対側の面)には偏光板がそれぞれ配設され、また対向基板521側に位置する偏光板の外側には、バックライトが配設されている。
【0091】
カラーフィルタ500の保護膜509上(液晶層側)には、図23において左右方向に長尺な短冊状の第1電極523が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極523のカラーフィルタ500側とは反対側の面を覆うように第1配向膜524が形成されている。
一方、対向基板521におけるカラーフィルタ500と対向する面には、カラーフィルタ500の第1電極523と直交する方向に長尺な短冊状の第2電極526が所定の間隔で複数形成され、この第2電極526の液晶層522側の面を覆うように第2配向膜527が形成されている。これらの第1電極523および第2電極526は、ITOなどの透明導電材料により形成されている。
【0092】
液晶層522内に設けられたスペーサ528は、液晶層522の厚さ(セルギャップ)を一定に保持するための部材である。また、シール材529は液晶層522内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するための部材である。なお、第1電極523の一端部は引き回し配線523aとしてシール材529の外側まで延在している。
そして、第1電極523と第2電極526とが交差する部分が画素であり、この画素となる部分に、カラーフィルタ500の着色層508R、508G、508Bが位置するように構成されている。
【0093】
通常の製造工程では、カラーフィルタ500に、第1電極523のパターニングおよび第1配向膜524の塗布を行ってカラーフィルタ500側の部分を作成すると共に、これとは別に対向基板521に、第2電極526のパターニングおよび第2配向膜527の塗布を行って対向基板521側の部分を作成する。その後、対向基板521側の部分にスペーサ528およびシール材529を作り込み、この状態でカラーフィルタ500側の部分を貼り合わせる。次いで、シール材529の注入口から液晶層522を構成する液晶を注入し、注入口を閉止する。その後、両偏光板およびバックライトを積層する。
【0094】
実施形態の液滴吐出装置1は、例えば上記のセルギャップを構成するスペーサ材料(機能液)を塗布すると共に、対向基板521側の部分にカラーフィルタ500側の部分を貼り合わせる前に、シール材529で囲んだ領域に液晶(機能液)を均一に塗布することが可能である。また、上記のシール材529の印刷を、機能液滴吐出ヘッド16で行うことも可能である。さらに、第1・第2両配向膜524,527の塗布を機能液滴吐出ヘッド16で行うことも可能である。
【0095】
図24は、本実施形態において製造したカラーフィルタ500を用いた液晶装置の第2の例の概略構成を示す要部断面図である。
この液晶装置530が上記液晶装置520と大きく異なる点は、カラーフィルタ500を図中下側(観測者側とは反対側)に配置した点である。
この液晶装置530は、カラーフィルタ500とガラス基板等からなる対向基板531との間にSTN液晶からなる液晶層532が挟持されて概略構成されている。なお、図示していないが、対向基板531およびカラーフィルタ500の外面には偏光板等がそれぞれ配設されている。
【0096】
カラーフィルタ500の保護膜509上(液晶層532側)には、図中奥行き方向に長尺な短冊状の第1電極533が所定の間隔で複数形成されており、この第1電極533の液晶層532側の面を覆うように第1配向膜534が形成されている。
対向基板531のカラーフィルタ500と対向する面上には、カラーフィルタ500側の第1電極533と直交する方向に延在する複数の短冊状の第2電極536が所定の間隔で形成され、この第2電極536の液晶層532側の面を覆うように第2配向膜537が形成されている。
【0097】
液晶層532には、この液晶層532の厚さを一定に保持するためのスペーサ538と、液晶層532内の液晶組成物が外部へ漏出するのを防止するためのシール材539が設けられている。
そして、上記した液晶装置520と同様に、第1電極533と第2電極536との交差する部分が画素であり、この画素となる部位に、カラーフィルタ500の着色層508R、508G、508Bが位置するように構成されている。
【0098】
図25は、本発明を適用したカラーフィルタ500を用いて液晶装置を構成した第3の例を示したもので、透過型のTFT(Thin Film Transistor)型液晶装置の概略構成を示す分解斜視図である。
この液晶装置550は、カラーフィルタ500を図中上側(観測者側)に配置したものである。
【0099】
この液晶装置550は、カラーフィルタ500と、これに対向するように配置された対向基板551と、これらの間に挟持された図示しない液晶層と、カラーフィルタ500の上面側(観測者側)に配置された偏光板555と、対向基板551の下面側に配設された偏光板(図示せず)とにより概略構成されている。
カラーフィルタ500の保護膜509の表面(対向基板551側の面)には液晶駆動用の電極556が形成されている。この電極556は、ITO等の透明導電材料からなり、後述の画素電極560が形成される領域全体を覆う全面電極となっている。また、この電極556の画素電極560とは反対側の面を覆った状態で配向膜557が設けられている。
【0100】
対向基板551のカラーフィルタ500と対向する面には絶縁層558が形成されており、この絶縁層558上には、走査線561および信号線562が互いに直交する状態で形成されている。そして、これらの走査線561と信号線562とに囲まれた領域内には画素電極560が形成されている。なお、実際の液晶装置では、画素電極560上に配向膜が設けられるが、図示を省略している。
【0101】
また、画素電極560の切欠部と走査線561と信号線562とに囲まれた部分には、ソース電極、ドレイン電極、半導体、およびゲート電極とを具備する薄膜トランジスタ563が組み込まれて構成されている。そして、走査線561と信号線562に対する信号の印加によって薄膜トランジスタ563をオン・オフして画素電極560への通電制御を行うことができるように構成されている。
【0102】
なお、上記の各例の液晶装置520,530,550は、透過型の構成としたが、反射層あるいは半透過反射層を設けて、反射型の液晶装置あるいは半透過反射型の液晶装置とすることもできる。
【0103】
次に、図26は、有機EL装置の表示領域(以下、単に表示装置600と称する)の要部断面図である。
【0104】
この表示装置600は、基板(W)601上に、回路素子部602、発光素子部603および陰極604が積層された状態で概略構成されている。
この表示装置600においては、発光素子部603から基板601側に発した光が、回路素子部602および基板601を透過して観測者側に出射されると共に、発光素子部603から基板601の反対側に発した光が陰極604により反射された後、回路素子部602および基板601を透過して観測者側に出射されるようになっている。
【0105】
回路素子部602と基板601との間にはシリコン酸化膜からなる下地保護膜606が形成され、この下地保護膜606上(発光素子部603側)に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜607が形成されている。この半導体膜607の左右の領域には、ソース領域607aおよびドレイン領域607bが高濃度陽イオン打ち込みによりそれぞれ形成されている。そして陽イオンが打ち込まれない中央部がチャネル領域607cとなっている。
【0106】
また、回路素子部602には、下地保護膜606および半導体膜607を覆う透明なゲート絶縁膜608が形成され、このゲート絶縁膜608上の半導体膜607のチャネル領域607cに対応する位置には、例えばAl、Mo、Ta、Ti、W等から構成されるゲート電極609が形成されている。このゲート電極609およびゲート絶縁膜608上には、透明な第1層間絶縁膜611aと第2層間絶縁膜611bが形成されている。また、第1、第2層間絶縁膜611a、611bを貫通して、半導体膜607のソース領域607a、ドレイン領域607bにそれぞれ連通するコンタクトホール612a,612bが形成されている。
【0107】
そして、第2層間絶縁膜611b上には、ITO等からなる透明な画素電極613が所定の形状にパターニングされて形成され、この画素電極613は、コンタクトホール612aを通じてソース領域607aに接続されている。
また、第1層間絶縁膜611a上には電源線614が配設されており、この電源線614は、コンタクトホール612bを通じてドレイン領域607bに接続されている。
【0108】
このように、回路素子部602には、各画素電極613に接続された駆動用の薄膜トランジスタ615がそれぞれ形成されている。
【0109】
上記発光素子部603は、複数の画素電極613上の各々に積層された機能層617と、各画素電極613および機能層617の間に備えられて各機能層617を区画するバンク部618とにより概略構成されている。
これら画素電極613、機能層617、および、機能層617上に配設された陰極604によって発光素子が構成されている。なお、画素電極613は、平面視略矩形状にパターニングされて形成されており、各画素電極613の間にバンク部618が形成されている。
【0110】
バンク部618は、例えばSiO、SiO、TiO等の無機材料により形成される無機物バンク層618a(第1バンク層)と、この無機物バンク層618a上に積層され、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性に優れたレジストにより形成される断面台形状の有機物バンク層618b(第2バンク層)とにより構成されている。このバンク部618の一部は、画素電極613の周縁部上に乗上げた状態で形成されている。
そして、各バンク部618の間には、画素電極613に対して上方に向けて次第に拡開した開口部619が形成されている。
【0111】
上記機能層617は、開口部619内において画素電極613上に積層状態で形成された正孔注入/輸送層617aと、この正孔注入/輸送層617a上に形成された発光層617bとにより構成されている。なお、この発光層617bに隣接してその他の機能を有する他の機能層をさらに形成しても良い。例えば、電子輸送層を形成することも可能である。
正孔注入/輸送層617aは、画素電極613側から正孔を輸送して発光層617bに注入する機能を有する。この正孔注入/輸送層617aは、正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物(機能液)を吐出することで形成される。正孔注入/輸送層形成材料としては、公知の材料を用いる。
【0112】
発光層617bは、赤色(R)、緑色(G)、または青色(B)のいずれかに発光するもので、発光層形成材料(発光材料)を含む第2組成物(機能液)を吐出することで形成される。第2組成物の溶媒(非極性溶媒)としては、正孔注入/輸送層617aに対して不溶な公知の材料を用いることが好ましく、このような非極性溶媒を発光層617bの第2組成物に用いることにより、正孔注入/輸送層617aを再溶解させることなく発光層617bを形成することができる。
【0113】
そして、発光層617bでは、正孔注入/輸送層617aから注入された正孔と、陰極604から注入される電子が発光層で再結合して発光するように構成されている。
【0114】
陰極604は、発光素子部603の全面を覆う状態で形成されており、画素電極613と対になって機能層617に電流を流す役割を果たす。なお、この陰極604の上部には図示しない封止部材が配置される。
【0115】
次に、上記の表示装置600の製造工程を図27〜図35を参照して説明する。
この表示装置600は、図27に示すように、バンク部形成工程(S111)、表面処理工程(S112)、正孔注入/輸送層形成工程(S113)、発光層形成工程(S114)、および対向電極形成工程(S115)を経て製造される。なお、製造工程は例示するものに限られるものではなく必要に応じてその他の工程が除かれる場合、また追加される場合もある。
【0116】
まず、バンク部形成工程(S111)では、図28に示すように、第2層間絶縁膜611b上に無機物バンク層618aを形成する。この無機物バンク層618aは、形成位置に無機物膜を形成した後、この無機物膜をフォトリソグラフィ技術等によりパターニングすることにより形成される。このとき、無機物バンク層618aの一部は画素電極613の周縁部と重なるように形成される。
無機物バンク層618aを形成したならば、図29に示すように、無機物バンク層618a上に有機物バンク層618bを形成する。この有機物バンク層618bも無機物バンク層618aと同様にフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。
このようにしてバンク部618が形成される。また、これに伴い、各バンク部618間には、画素電極613に対して上方に開口した開口部619が形成される。この開口部619は、画素領域を規定する。
【0117】
表面処理工程(S112)では、親液化処理および撥液化処理が行われる。親液化処理を施す領域は、無機物バンク層618aの第1積層部618aaおよび画素電極613の電極面613aであり、これらの領域は、例えば酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理される。このプラズマ処理は、画素電極613であるITOの洗浄等も兼ねている。
また、撥液化処理は、有機物バンク層618bの壁面618sおよび有機物バンク層618bの上面618tに施され、例えば四フッ化メタンを処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)される。
この表面処理工程を行うことにより、機能液滴吐出ヘッド16を用いて機能層617を形成する際に、機能液滴を画素領域に、より確実に着弾させることができ、また、画素領域に着弾した機能液滴が開口部619から溢れ出るのを防止することが可能となる。
【0118】
そして、以上の工程を経ることにより、表示装置基体600Aが得られる。この表示装置基体600Aは、図1に示した液滴吐出装置1のセットテーブル22に載置され、以下の正孔注入/輸送層形成工程(S113)および発光層形成工程(S114)が行われる。
【0119】
図30に示すように、正孔注入/輸送層形成工程(S113)では、機能液滴吐出ヘッド16から正孔注入/輸送層形成材料を含む第1組成物を画素領域である各開口部619内に吐出する。その後、図31に示すように、乾燥処理および熱処理を行い、第1組成物に含まれる極性溶媒を蒸発させ、画素電極(電極面613a)613上に正孔注入/輸送層617aを形成する。
【0120】
次に発光層形成工程(S114)について説明する。この発光層形成工程では、上述したように、正孔注入/輸送層617aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる第2組成物の溶媒として、正孔注入/輸送層617aに対して不溶な非極性溶媒を用いる。
しかしその一方で、正孔注入/輸送層617aは、非極性溶媒に対する親和性が低いため、非極性溶媒を含む第2組成物を正孔注入/輸送層617a上に吐出しても、正孔注入/輸送層617aと発光層617bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層617bを均一に塗布できない虞がある。
そこで、非極性溶媒並びに発光層形成材料に対する正孔注入/輸送層617aの表面の親和性を高めるために、発光層形成の前に表面処理(表面改質処理)を行うことが好ましい。この表面処理は、発光層形成の際に用いる第2組成物の非極性溶媒と同一溶媒またはこれに類する溶媒である表面改質材を、正孔注入/輸送層617a上に塗布し、これを乾燥させることにより行う。
このような処理を施すことで、正孔注入/輸送層617aの表面が非極性溶媒になじみやすくなり、この後の工程で、発光層形成材料を含む第2組成物を正孔注入/輸送層617aに均一に塗布することができる。
【0121】
そして次に、図32に示すように、各色のうちのいずれか(図32の例では青色(B))に対応する発光層形成材料を含有する第2組成物を機能液滴として画素領域(開口部619)内に所定量打ち込む。画素領域内に打ち込まれた第2組成物は、正孔注入/輸送層617a上に広がって開口部619内に満たされる。なお、万一、第2組成物が画素領域から外れてバンク部618の上面618t上に着弾した場合でも、この上面618tは、上述したように撥液処理が施されているので、第2組成物が開口部619内に転がり込み易くなっている。
【0122】
その後、乾燥工程等を行うことにより、吐出後の第2組成物を乾燥処理し、第2組成物に含まれる非極性溶媒を蒸発させ、図33に示すように、正孔注入/輸送層617a上に発光層617bが形成される。この図の場合、青色(B)に対応する発光層617bが形成されている。
【0123】
同様に、機能液滴吐出ヘッド16を用い、図34に示すように、上記した青色(B)に対応する発光層617bの場合と同様の工程を順次行い、他の色(赤色(R)および緑色(G))に対応する発光層617bを形成する。なお、発光層617bの形成順序は、例示した順序に限られるものではなく、どのような順番で形成しても良い。例えば、発光層形成材料に応じて形成する順番を決めることも可能である。また、R・G・Bの3色の配列パターンとしては、ストライプ配列、モザイク配列およびデルタ配列等がある。
【0124】
以上のようにして、画素電極613上に機能層617、即ち、正孔注入/輸送層617aおよび発光層617bが形成される。そして、対向電極形成工程(S115)に移行する。
【0125】
対向電極形成工程(S115)では、図35に示すように、発光層617bおよび有機物バンク層618bの全面に陰極604(対向電極)を、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等によって形成する。この陰極604は、本実施形態においては、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。
この陰極604の上部には、電極としてのAl膜、Ag膜や、その酸化防止のためのSiO、SiN等の保護層が適宜設けられる。
【0126】
このようにして陰極604を形成した後、この陰極604の上部を封止部材により封止する封止処理や配線処理等のその他処理等を施すことにより、表示装置600が得られる。
【0127】
次に、図36は、プラズマ型表示装置(PDP装置:以下、単に表示装置700と称する)の要部分解斜視図である。なお、同図では表示装置700を、その一部を切り欠いた状態で示してある。
この表示装置700は、互いに対向して配置された第1基板701、第2基板702、およびこれらの間に形成される放電表示部703を含んで概略構成される。放電表示部703は、複数の放電室705により構成されている。これらの複数の放電室705のうち、赤色放電室705R、緑色放電室705G、青色放電室705Bの3つの放電室705が組になって1つの画素を構成するように配置されている。
【0128】
第1基板701の上面には所定の間隔で縞状にアドレス電極706が形成され、このアドレス電極706と第1基板701の上面とを覆うように誘電体層707が形成されている。誘電体層707上には、各アドレス電極706の間に位置し、且つ各アドレス電極706に沿うように隔壁708が立設されている。この隔壁708は、図示するようにアドレス電極706の幅方向両側に延在するものと、アドレス電極706と直交する方向に延設された図示しないものを含む。
そして、この隔壁708によって仕切られた領域が放電室705となっている。
【0129】
放電室705内には蛍光体709が配置されている。蛍光体709は、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の蛍光を発光するもので、赤色放電室705Rの底部には赤色蛍光体709Rが、緑色放電室705Gの底部には緑色蛍光体709Gが、青色放電室705Bの底部には青色蛍光体709Bが各々配置されている。
【0130】
第2基板702の図中下側の面には、上記アドレス電極706と直交する方向に複数の表示電極711が所定の間隔で縞状に形成されている。そして、これらを覆うように誘電体層712、およびMgOなどからなる保護膜713が形成されている。
第1基板701と第2基板702とは、アドレス電極706と表示電極711が互いに直交する状態で対向させて貼り合わされている。なお、上記アドレス電極706と表示電極711は図示しない交流電源に接続されている。
そして、各電極706,711に通電することにより、放電表示部703において蛍光体709が励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0131】
本実施形態においては、上記アドレス電極706、表示電極711、および蛍光体709を、図1に示した液滴吐出装置1を用いて形成することができる。以下、第1基板701におけるアドレス電極706の形成工程を例示する。
この場合、第1基板701を液滴吐出装置1のセットテーブル22に載置された状態で以下の工程が行われる。
まず、機能液滴吐出ヘッド16により、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴としてアドレス電極形成領域に着弾させる。この液体材料は、導電膜配線形成用材料として、金属等の導電性微粒子を分散媒に分散したものである。この導電性微粒子としては、金、銀、銅、パラジウム、またはニッケル等を含有する金属微粒子や、導電性ポリマー等が用いられる。
【0132】
補充対象となるすべてのアドレス電極形成領域について液体材料の補充が終了したならば、吐出後の液体材料を乾燥処理し、液体材料に含まれる分散媒を蒸発させることによりアドレス電極706が形成される。
【0133】
ところで、上記においてはアドレス電極706の形成を例示したが、上記表示電極711および蛍光体709についても上記各工程を経ることにより形成することができる。
表示電極711の形成の場合、アドレス電極706の場合と同様に、導電膜配線形成用材料を含有する液体材料(機能液)を機能液滴として表示電極形成領域に着弾させる。
また、蛍光体709の形成の場合には、各色(R,G,B)に対応する蛍光材料を含んだ液体材料(機能液)を機能液滴吐出ヘッド16から液滴として吐出し、対応する色の放電室705内に着弾させる。
【0134】
次に、図37は、電子放出装置(FED装置あるいはSED装置ともいう:以下、単に表示装置800と称する)の要部断面図である。なお、同図では表示装置800を、その一部を断面として示してある。
この表示装置800は、互いに対向して配置された第1基板801、第2基板802、およびこれらの間に形成される電界放出表示部803を含んで概略構成される。電界放出表示部803は、マトリクス状に配置した複数の電子放出部805により構成されている。
【0135】
第1基板801の上面には、カソード電極806を構成する第1素子電極806aおよび第2素子電極806bが相互に直交するように形成されている。また、第1素子電極806aおよび第2素子電極806bで仕切られた部分には、ギャップ808を形成した導電性膜807が形成されている。すなわち、第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807により複数の電子放出部805が構成されている。導電性膜807は、例えば酸化パラジウム(PdO)等で構成され、またギャップ808は、導電性膜807を成膜した後、フォーミング等で形成される。
【0136】
第2基板802の下面には、カソード電極806に対峙するアノード電極809が形成されている。アノード電極809の下面には、格子状のバンク部811が形成され、このバンク部811で囲まれた下向きの各開口部812に、電子放出部805に対応するように蛍光体813が配置されている。蛍光体813は、赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかの色の蛍光を発光するもので、各開口部812には、赤色蛍光体813R、緑色蛍光体813Gおよび青色蛍光体813Bが、上記した所定のパターンで配置されている。
【0137】
そして、このように構成した第1基板801と第2基板802とは、微小な間隙を存して貼り合わされている。この表示装置800では、導電性膜(ギャップ808)807を介して、陰極である第1素子電極806aまたは第2素子電極806bから飛び出す電子を、陽極であるアノード電極809に形成した蛍光体813に当てて励起発光し、カラー表示が可能となる。
【0138】
この場合も、他の実施形態と同様に、第1素子電極806a、第2素子電極806b、導電性膜807およびアノード電極809を、液滴吐出装置1を用いて形成することができると共に、各色の蛍光体813R,813G,813Bを、液滴吐出装置1を用いて形成することができる。
【0139】
第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807は、図38(a)に示す平面形状を有しており、これらを成膜する場合には、図38(b)に示すように、予め第1素子電極806a、第2素子電極806bおよび導電性膜807を作り込む部分を残して、バンク部BBを形成(フォトリソグラフィ法)する。次に、バンク部BBにより構成された溝部分に、第1素子電極806aおよび第2素子電極806bを形成(液滴吐出装置1によるインクジェット法)し、その溶剤を乾燥させて成膜を行った後、導電性膜807を形成(液滴吐出装置1によるインクジェット法)する。そして、導電性膜807を成膜後、バンク部BBを取り除き(アッシング剥離処理)、上記のフォーミング処理に移行する。なお、上記の有機EL装置の場合と同様に、第1基板801および第2基板802に対する親液化処理や、バンク部811,BBに対する撥液化処理を行うことが、好ましい。
【0140】
上記した液滴吐出装置1を各種の電気光学装置(デバイス)の製造に用いることにより、各種の電気光学装置を効率的に製造することが可能である。
【符号の説明】
【0141】
1…液滴吐出装置 21…ワーク移動手段 22…ヘッド移動手段 23…キャリッジユニット 25…メンテナンス手段 26…フラッシングユニット 27…コントローラ 32…メンテナンスエリア 62…Y軸リニアモータ 71…機能液滴吐出ヘッド 95…ノズル 103…機能液タンク 500…カラーフィルタ 507a…画素領域 507b…区画壁部 L…描画ライン Lp…部分描画ライン Rh…ヘッド吐出カバー範囲 W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークと機能液滴吐出ヘッドとを相対的に走査し、前記ワークに機能液を吐出して描画を行なう液滴吐出装置の描画方法であって、
走査方向に沿った複数の領域を描画する第1の走査と、
前記第1の走査で描画した前記複数の領域の間の領域を描画する第2の走査と、を有することを特徴とする液滴吐出装置の描画方法。
【請求項2】
複数種類の機能液を吐出し、前記第1の走査では、機能液の種類毎に異なる領域を描画することを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置の描画方法。
【請求項3】
前記第2の走査では、前記第1の走査で描画された領域に、異なる種類の機能液を吐出することを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出装置の描画方法。
【請求項4】
前記第2の走査は、複数回行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液滴吐出装置の描画方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2011−102982(P2011−102982A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264769(P2010−264769)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【分割の表示】特願2007−211125(P2007−211125)の分割
【原出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】