説明

液滴吐出装置

【課題】液滴吐出ヘッドの保湿において、インクなどの液状体の使用量を削減し、また、液状体排出経路に液状体がつまりにくい液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】液滴吐出ヘッド内の液状体を吸引する吸引ユニットを備えた液滴吐出装置であって、液滴吐出ヘッド28のノズル30を覆い液滴吐出ヘッド28に当接可能なキャップ部80と、キャップ部80内を吸引する吸引ポンプ90と、キャップ部80と吸引ポンプ90とを接続する吸引管83と、吸引管83に設けられ、キャップ部80と吸引ポンプ90の間の経路を遮断し、かつ吸引管83に大気を導入する三方弁85と、を有し、三方弁85を切り替えることで三方弁85からキャップ部80側の経路に液状体を貯留させ、三方弁85から吸引ポンプ90側の経路の液状体を排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドの液滴吐出性能を維持するための吸引ユニットを備えた液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置において、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの吐出性能を維持するために、吸引ユニットが設けられている。
吸引ユニットには、液滴吐出ヘッドのノズル面を覆うキャップとこのキャップの液状体排出口にチューブを介して接続される吸引ポンプと、吸引ポンプから排出されるインクを貯留する排インクタンクとを備えている。吸引ユニットは、液滴吐出ヘッド内にインクなどの液状体を初期充填することや、メンテナンス時に液滴吐出ヘッド側のごみ、気泡などを除去するために備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、この吸引ユニットでは液滴吐出装置が停止しているときに、液滴吐出ヘッドをキャップで覆い、キャップ内にフラッシングなどで液状体を貯めて液滴吐出ヘッドが乾かないように保湿することも行われている。
液滴吐出ヘッドが乾かないように保湿するときには、一旦、インクなどの液状体を吸引して液滴吐出ヘッド側のごみ、気泡などを除去した後、吸引ポンプを止めてキャップ内にフラッシングなどで液状体を貯めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−40538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液滴吐出ヘッドの保湿において、キャップ内にインクを貯めるにはキャップから吸引ポンプまでの経路にある配管チューブにもインクが充填されていなくてはならず、インクが多量に必要である。
また、チューブ内にインクが滞留していることから、特に沈降性の成分を有するインクを利用する場合にはインク成分がチューブ内に沈殿してつまりが発生し、メンテナンスの頻度が増すという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる液滴吐出装置は、液滴吐出ヘッド内の液状体を吸引する吸引ユニットを備えた液滴吐出装置であって、前記液滴吐出ヘッドのノズルを覆い前記液滴吐出ヘッドに当接可能なキャップ部と、前記キャップ部内を吸引する吸引部と、前記キャップ部と前記吸引部とを接続する吸引管と、前記吸引管に設けられ、前記キャップ部と前記吸引部の間の経路を遮断する遮断バルブと、前記遮断バルブの後段に前記吸引管に大気を導入する大気開放バルブと、を有し、前記遮断バルブおよび前記大気開放バルブを切り替えることで前記遮断バルブから前記キャップ部側の経路に液状体を貯留させ、前記大気開放バルブから前記吸引部側の経路の液状体を排出させることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、キャップ部と吸引部とを接続する吸引管に、キャップ部と吸引部の間の経路を遮断する遮断バルブと、遮断バルブの後段に吸引管に大気を導入する大気開放バルブと、が設けられている。
このことから、遮断バルブおよび大気開放バルブを切り替えることで遮断バルブからキャップ部側の経路に液状体を貯留させ、大気開放バルブから吸引部側の経路の液状体を排出させることができる。
つまり、キャップ部にインクなどの液状体を貯留するために従来にくらべて短い経路の吸引管にインクなどの液状体を貯められるので、液状体の使用量を削減できる。そして、遮断バルブから吸引部の間の経路の吸引管には、液状体が吸引されて液状体が残らないため、特に沈降性の成分を有するインクを利用する場合には吸引管内に沈殿してつまりが発生することがなく、メンテナンスの頻度を少なくできる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる液滴吐出装置において、前記遮断バルブおよび前記大気開放バルブとして三方弁が用いられていることが望ましい。
【0010】
この構成によれば、三方弁を用いることで遮断バルブおよび大気開放バルブの機能を一つの部品で構成することができ、吸引ユニットの構成を簡略化することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる液滴吐出装置において、前記キャップ部に大気を導入する大気開放部が設けられていることが望ましい。
【0012】
この構成によれば、キャップ部に大気を導入する大気開放部が設けられていることから、液滴吐出ヘッドの吸引後において負圧になったキャップ部内を大気圧になるまで待つ必要がなく、短時間で確実に大気圧に戻すことができる。このことから、液滴吐出ヘッドからキャップ部をはずす時間が短縮される。また、キャップ部をはずす際にキャップ部内が負圧であることがなくなり、残った液状体の飛び散りを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態の液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図2】実施形態のヘッドユニットの構成を示し、(a)はヘッドユニットの模式平面図、(b)はヘッドユニットの模式側面図、(c)は液滴吐出ヘッドの構造を示す要部模式断面図。
【図3】実施形態の液滴吐出装置の電気制御ブロック図。
【図4】実施形態の吸引ユニットの構成を示す概略図。
【図5】実施形態の三方弁を説明する模式図。
【図6】実施形態の吸引ユニットの吸引動作を説明する模式図。
【図7】実施形態の吸引ユニットの保湿動作を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更している。
(実施形態)
【0015】
本実施形態では液滴吐出装置として、インクジェット法を用いた装置を一例として説明する。インクジェット法は微小な液滴の吐出が可能であるため、基板への微細な描画に適している。
【0016】
<液滴吐出装置>
図1は液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。
液滴吐出装置1は、直方体形状に形成される基台2を備えている。本実施形態では、この基台2の長手方向をY方向とし、水平面上でY方向と直交する方向をX方向とする。そして、X方向およびY方向に直交する方向をZ方向とする。また、液滴を吐出するときに液滴吐出ヘッドと被吐出物とを相対移動する方向を主走査方向と呼び、主走査方向と直交する方向を副走査方向と呼ぶ。副走査方向は改行などをするときに液滴吐出ヘッドと被吐出物とを相対移動する方向である。本実施形態ではY方向を主走査方向とし、X方向を副走査方向とする。
【0017】
基台2の上面2aには、Y方向に延在する一対の案内レール3a,3bがY方向全幅にわたり凸設されている。その基台2の上側には、一対の案内レール3a,3bに対応する図示しない直動機構を備えた走査手段を構成するステージ4が取付けられている。そのステージ4の直動機構は、例えば、ネジ式直動機構を用いることができる。このネジ式直動機構は案内レール3a,3bに沿ってY方向に延びる駆動軸であるネジ軸と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えている。その駆動軸が所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転する図示しないY軸モーターに連結されている。所定のステップ数に相対する駆動信号をY軸モーターに入力するとY軸モーターが正転または逆転する。そして、ステージ4が同ステップ数に相当する分だけ、Y方向に沿って所定の速度で往動または復動するようになっている。往動と復動を繰り返すことを走査移動と呼ぶ。さらに、基台2の上面2aには、案内レール3a,3bと平行に主走査位置検出装置5が配置され、ステージ4の位置が計測できるようになっている。
【0018】
そのステージ4の上面には載置面6が形成され、その載置面6には図示しない吸引式の基板チャック機構が設けられている。そして、操作者が載置面6に基板7を所定位置に位置決めして載置すると、基板チャック機構によってその基板7が固定される。
【0019】
基台2のX方向両側には一対の支持台8a,8bが立設され、その一対の支持台8a,8bにはX方向に延びる案内部材9が架設されている。その案内部材9の上側には吐出する液状体を供給可能に収容する収容タンク10が設置されている。一方、その案内部材9の下側にはX方向に延びる案内レール11がX方向全幅にわたり凸設されている。
【0020】
案内レール11に沿って移動可能に配置されるキャリッジ12は略直方体形状に形成されている。そのキャリッジ12は直動機構を備え、その直動機構は、例えば、ステージ4が備えるネジ式直動機構と同様の機構を用いることができる。そのネジ式直動機構の駆動軸が所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転する図示しないX軸モーターに連結されている。そして、駆動信号がX軸モーターに入力されると、X軸モーターが正転または逆転して、キャリッジ12がX方向に沿って走査移動する。案内部材9とキャリッジ12との間には副走査位置検出装置13が配置され、キャリッジ12の位置が計測される。キャリッジ12の下側にはヘッドユニット14が設置され、ヘッドユニット14のステージ4側の面には図示しない液滴吐出ヘッドが凸設されている。
【0021】
基台2の上側であって、ステージ4の−Y方向には、保守装置15が配置されている。保守装置15は、保守ステージ16と、保守ステージ16の上に配置されているフラッシングユニット17、吸引ユニット18、ワイピングユニット19、重量測定装置20等により構成されている。
【0022】
保守ステージ16は、案内レール3a,3b上に位置し、ステージ4と同様の直動機構を備えている。主走査位置検出装置5を用いて位置を検出し、直動機構を用いて移動する。従って、保守ステージ16は所望の場所に移動し、停止することが可能となっている。
【0023】
フラッシングユニット17は液滴吐出ヘッドから吐出される液滴を受ける装置である。液滴吐出ヘッドはフラッシングユニット17に液状体を吐出することにより、流路を洗浄する。吸引ユニット18は液滴吐出ヘッドに蓋をし、液滴吐出ヘッドから液状体を吸引する機能を備えている。ワイピングユニット19は、液滴吐出ヘッドのノズルが配置されているノズルプレートを拭く装置である。重量測定装置20は吐出する液滴の重量を測定する装置である。
【0024】
保守ステージ16は案内レール3a,3bに沿って移動し、キャリッジ12が案内レール11に沿って移動する。そして、液滴吐出ヘッドと対向する場所にフラッシングユニット17、吸引ユニット18、ワイピングユニット19、重量測定装置20のいずれか1つの装置が配置される。その後、保守装置15は液滴吐出ヘッドを保守する。
【0025】
液滴吐出装置1は四隅に支柱24を備え、支柱24の図中上側には空気制御装置25が設置されている。空気制御装置25は、ファン、フィルター、温度調整装置、湿度調整装置等を備えている。ファン(送風機)は、工場内の空気を取り込んで、フィルターを通過することにより、空気内の塵、埃を除去し、清浄化された空気を供給する。
【0026】
温度調整装置は、液滴吐出装置1の雰囲気温度を所定の温度範囲に保持するように、供給する空気の温度を制御する装置である。湿度調整装置は除湿または加湿した空気を供給することにより液滴吐出装置1の雰囲気湿度を所定の湿度範囲に維持する装置である。
【0027】
4本の支柱24の間にはシート26が配置され、シート26は空気の流れを遮断する。空気制御装置25から供給される空気は空気制御装置25から図中下側の床27に向かって流れる。そして、シート26に囲まれる空間内の塵や埃には重力と空気の流れが作用するので、塵や埃は床27に向かって流動する。従って、基板7に塵や埃が付着し難いようになっている。さらに、シート26が空気の流れを制限することにより、シート26に囲まれる空間内の温度及び湿度がシート26の外から影響され難くなっている。そして、空気制御装置25がシート26に囲まれる空間内の温度及び湿度を所定の状態に維持している。
【0028】
次に、ヘッドユニットの構成について図2を用いて説明する。
図2(a)は、ヘッドユニットを示す模式平面図である。ヘッドユニット14には第1ヘッド28a〜第4ヘッド28dの4個の液滴吐出ヘッド28が配置され、液滴吐出ヘッド28の表面にはノズルプレート29が配置されている。ノズルプレート29には複数のノズル30が配列して形成されている。ノズル30の数及び液滴吐出ヘッド28の数及び配置は吐出するパターンと基板7の大きさに合わせて設定すればよい。
【0029】
図2(b)は、ヘッドユニットの構造を示す模式側面図であり、図2(a)に示すヘッドユニット14を−Y方向から見た図である。ヘッドユニット14はベース板31を備え、ベース板31の上側にはキャリッジ12が配置されている。ベース板31の下側には支持部32を介して駆動回路基板33が配置されている。そして、駆動回路基板33の下側にはヘッド駆動回路34が配置されている。さらに、ベース板31には支持部35を介してヘッド取付板36が配置され、ヘッド取付板36の下面には液滴吐出ヘッド28が配置されている。ヘッド駆動回路34と液滴吐出ヘッド28とは図示しないケーブルにより接続され、ヘッド駆動回路34から出力された駆動信号が液滴吐出ヘッド28に入力される。
ベース板31の下側には供給装置37が配置され、収容タンク10と供給装置37との間及び供給装置37と液滴吐出ヘッド28との間は図示しない接続管により接続されている。そして、収容タンク10から供給される液状体が供給装置37により液滴吐出ヘッド28に供給される。
【0030】
図2(c)は、液滴吐出ヘッドの構造を説明するための要部模式断面図である。液滴吐出ヘッド28はノズルプレート29を備え、ノズルプレート29にはノズル30が形成されている。ノズルプレート29の上側であってノズル30と相対する位置にはノズル30と連通する圧力室38が形成されている。そして、液滴吐出ヘッド28の圧力室38には収容タンク10に貯留されている液状体39が供給される。
【0031】
圧力室38の上側には上下方向に振動して圧力室38内の容積を拡大縮小する振動板40が設置されている。振動板40の上側で圧力室38と対向する場所には上下方向に伸縮して振動板40を振動させる圧電素子41が配設されている。圧電素子41が上下方向に伸縮して振動板40を加圧して振動し、振動板40が圧力室38内の容積を拡大縮小して圧力室38を加圧する。それにより、圧力室38内の圧力が変動し、圧力室38内に供給された液状体39はノズル30を通って吐出される。
【0032】
液滴吐出ヘッド28が圧電素子41を制御駆動するためのノズル駆動信号を受けると、圧電素子41が伸張して、振動板40が圧力室38内の容積を縮小する。その結果、液滴吐出ヘッド28のノズル30からは、縮小した容積分の液状体39が液滴42として吐出される。
なお、液状体としては、紫外線(UV)硬化型インク、水性染料インク、水性顔料インク、油性染料インク、油性顔料インクなどが用いられる。
【0033】
図3は、液滴吐出装置の電気制御ブロック図である。
液滴吐出装置1は液滴吐出装置1の動作を制御する制御部としての制御装置45を備えている。そして、制御装置45はプロセッサーとして各種の演算処理を行うCPU(中央演算処理装置)46と、各種情報を記憶するメモリー47とを備えている。
【0034】
主走査駆動装置48、主走査位置検出装置5、副走査駆動装置49、副走査位置検出装置13、液滴吐出ヘッド28を駆動するヘッド駆動回路34は、入出力インターフェイス50及びデータバス51を介してCPU46に接続されている。さらに、入力装置52、表示装置53、重量測定装置20、吸引ユニット18、ワイピングユニット19も入出力インターフェイス50及びデータバス51を介してCPU46に接続されている。同じく、保守装置15において、保守ステージ16を駆動する保守ステージ駆動装置54及び、保守ステージ16の位置を検出する保守ステージ位置検出装置55も入出力インターフェイス50及びデータバス51を介してCPU46に接続されている。
【0035】
主走査駆動装置48はステージ4の移動を制御する装置であり、副走査駆動装置49はキャリッジ12の移動を制御する装置である。主走査位置検出装置5がステージ4の位置を認識し、主走査駆動装置48がステージ4を駆動することにより、ステージ4を所望の位置に移動及び停止することが可能になっている。同じく、副走査位置検出装置13がキャリッジ12の位置を認識し、副走査駆動装置49がキャリッジ12を駆動することにより、キャリッジ12を所望の位置に移動及び停止することが可能となっている。
【0036】
入力装置52は液滴42を吐出する各種加工条件などを入力する装置である。表示装置53は加工条件や作業状況を表示する装置であり、操作者は表示装置53に表示される情報を基に入力装置52を用いて操作を行う。
【0037】
重量測定装置20は電子天秤及び受け皿を備え、液滴吐出ヘッド28が吐出する液滴42と液滴42を受ける受け皿との重量を電子天秤が測定する。重量測定装置20は、液滴42が吐出される前後の受け皿の重量を測定した後、測定値をCPU46に送信する。
【0038】
保守ステージ駆動装置54は保守ステージ16を移動する装置である。そして、保守ステージ位置検出装置55が保守ステージ16の位置を検出した後、保守ステージ駆動装置54が保守ステージ16を移動することにより、所望の保守装置が液滴吐出ヘッド28と対向する場所に配置される。
【0039】
メモリー47は、RAM、ROM等といった半導体メモリーや、ハードディスク、CD−ROMといった外部記憶装置を含む概念である。機能的には液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト56を記憶する記憶領域が設定される。さらに、基板7内における吐出位置の座標データである吐出位置データ57を記憶するための記憶領域も設定される。
【0040】
さらに、基板7を主走査方向へ移動する主走査移動量とキャリッジ12を副走査方向へ移動する副走査移動量とを記憶するための記憶領域やCPU46のためのワークエリアやテンポラリーファイル等として機能する記憶領域やその他各種の記憶領域が設定される。
【0041】
CPU46は、メモリー47内に記憶されたプログラムソフト56に従って基板7の所定位置に液滴42を吐出するための制御を行うものである。具体的な機能実現部として、液滴吐出ヘッド28から液滴42を吐出して描画するための制御を行う吐出演算部62を有する。吐出演算部62を詳しく分割すれば、吐出演算部62は基板7を主走査方向へ所定の速度で走査移動させるための制御を行う主走査制御部63を有する。他にも、吐出演算部62は液滴吐出ヘッド28を副走査方向へ所定の副走査量で移動させるための制御を行う副走査制御部64を有する。さらに、吐出演算部62は液滴吐出ヘッド28の液滴吐出にかかわる演算をする吐出制御部65を有する。
【0042】
そして、CPU46には他に、吐出する液滴42の重量測定をするための制御を行う重量測定制御部66、液滴吐出ヘッド28を保守するタイミングや保守装置15の動作を制御する保守装置制御部68を有する。
【0043】
つぎに、吸引ユニットの構成について詳しく説明する。
図4は本実施形態の吸引ユニットの構成を示す概略図である。
吸引ユニット18は、キャップ部80と、吸引管83と、吸引部としての吸引ポンプ90と、三方弁85と、排液状体タンク91とを備えている。
キャップ部80には凹部81が設けられ、この凹部81と対向して液滴吐出ヘッド28のノズル30が配置されるように構成されている。キャップ部80は進退駆動機構(図示せず)により矢印A方向に移動が可能であり、液滴吐出ヘッド28のノズル30面に対して、キャップ部80を当接可能に構成されている。なお、キャップ部80は例えばブチルゴムなどの弾性を有する部材で形成され、液滴吐出ヘッド28とキャップ部80とのシール性を高めている。
【0044】
そして、凹部81の底面には貫通穴が設けられ、液状体を排出する排出口82が備えられている。そして排出口82には吸引管83が接続されている。
さらに、凹部81の底面には大気と連通する大気導入口86が設けられている。大気導入口86にはシールリング87を介して大気開放部としての押圧弁88が設けられ、図示しない進退機構により矢印B方向に移動して大気導入口86を開閉することができる。
なお、キャップ部80の凹部81の底面に多孔質シートを配置して、液滴吐出ヘッド28の吸引時における液状体を吸収して液状体のはね返りを防止してもよい。
【0045】
キャップ部80の排出口82に接続された吸引管83は吸引部としての吸引ポンプ90に接続されている。そして、吸引ポンプ90内に吸引された液状体を回収する排液状体タンク91が備えられている。
さらに、キャップ部80の排出口82と吸引ポンプ90とを接続する吸引管83には三方弁85が設けられている。
三方弁85は、キャップ部80から吸引ポンプ90への経路と、この経路に大気を導入する経路とを有し、三方弁85によって切り替えて各経路を選択することができる。
【0046】
この三方弁は、例えば図5に示すように、T字型の流路において3つの方向にバルブVA1,VA2,VA3が設けられている。バルブVA1はキャップ部80からの流路を開閉し、バルブVA2は吸引ポンプ90への流路を開閉し、バルブVA3はバルブVA1とバルブVA2の間で大気への流路を開閉するように構成されている。三方弁を採用することで、これらのバルブVA1,VA2,VA3を切り替えて各経路を選択することができ、コンパクトにバルブ部分を構成することができる。
【0047】
なお、三方弁を用いず、開閉バルブを組み合わせて構成することもできる。例えば一つの開閉バルブを吸引管に設けてキャップ部と吸引ポンプの間の経路を遮断する遮断バルブとし、その後段にT字型配管を設けて大気開放し、そこに開閉バルブを設けて大気開放バルブとすればよい。
また、吸引部として吸引ポンプ90に代えて、シリンダーなどを採用することができる。
【0048】
次に、上記のような吸引ユニットの動作について説明する。
図6は実施形態の吸引ユニットの吸引動作を説明する模式図である。
まず、図6(a)に示すように、ヘッドユニットが保守ステージ上方に移動して停止する。そして、図6(b)に示すように、吸引ユニットのキャップ部80が進退機構により上方に移動して液滴吐出ヘッド28に当接する。
続いて、図6(c)に示すように、吸引ポンプ90が稼動して液滴吐出ヘッド28のインクなどの液状体を吸引する。吸引された液状体はキャップ部80から吸引管83を経て排液状体タンクに排出される。そして、所定の時間だけ吸引が行われ、吸引ポンプ90が停止する。
【0049】
その後、図6(d)に示すように、負圧状態のキャップ部80の凹部内を、押圧弁88を開くことで大気圧に戻す。そして、図6(e)に示すように、吸引ユニットのキャップ部80が進退機構により下方に移動して液滴吐出ヘッド28への当接を開放する。
このようにキャップ部80に大気を導入する押圧弁88が設けられていることから、液滴吐出ヘッド28の吸引後において負圧になったキャップ部80内を大気圧になるまで待つ必要がなく、短時間で確実に大気圧に戻すことができる。このことから、液滴吐出ヘッド28からキャップ部80をはずす時間が短縮される。また、キャップ部80をはずす際にキャップ部80内が負圧であることがなくなり、残った液状体の飛び散りを防止することができる。
なお、この一連の吸引動作において、三方弁85は図5で示したバルブVA1およびVA2が開で、バルブVA3が閉の状態で行われる。
【0050】
図7は実施形態の吸引ユニットの保湿動作を説明する模式図である。
まず、図7(a)に示すように、ヘッドユニットが保守ステージ上方に移動して停止する。そして、図7(b)に示すように、吸引ユニットのキャップ部80が進退機構により上方に移動して液滴吐出ヘッド28に当接する。
【0051】
続いて、図7(c)に示すように、吸引ポンプ90が稼動して液滴吐出ヘッド28のインクなどの液状体を吸引する。吸引された液状体はキャップ部80から吸引管83を経て排液状体タンクに排出される。
ここまでは、三方弁85は図5で示したバルブVA1およびVA2が開で、バルブVA3が閉の状態で行われる。
【0052】
そして、液滴吐出ヘッド28のインクなどの液状体の吸引が完全に行われないときに、三方弁85の切り替えが行われる。三方弁85は図5で示したバルブVA1が閉、バルブVA2およびバルブVA3が開の状態に切り替わる。
このことから、図7(d)に示すように、三方弁85から吸引ポンプ90の経路にある液状体が排出される。また、キャップ部80から三方弁85の間は負圧となっており、液滴吐出ヘッド28から液状体が吸引され、その経路内およびキャップ部80の凹部内に貯まることになる。なお、三方弁85はできるだけキャップ部80に近い部分の吸引管83に設けられるのが好ましい。このようにすれば、キャップ部80から三方弁85の間に貯留される液状体が少なくて済む。
そして、吸引ポンプ90を停止して、その状態を保つことで液滴吐出ヘッド28の保湿を行うことができる。
【0053】
以上のように、キャップ部80と吸引ポンプ90とを接続する吸引管83に、キャップ部80と吸引ポンプ90の間の経路を遮断するバルブと、吸引管83に大気を導入するバルブの役目を果たす三方弁85が設けられている。
このことから、三方弁85を切り替えることで三方弁85からキャップ部80側の経路に液状体を貯留させ、三方弁85から吸引ポンプ90側の経路の液状体を排出させることができる。
つまり、キャップ部80にインクなどの液状体を貯留するために、従来にくらべて短い経路の吸引管83にインクなどの液状体を貯められるので、液状体の使用量を削減できる。また、液滴吐出ヘッド28の吸引作業を利用して保湿作業を行えるため、両者の作業を短時間で行うことができる。
そして、三方弁85から吸引ポンプ90の間の経路の吸引管83には、液状体が吸引されて液状体が残らないため、特に沈降性の成分を有する紫外線(UV)硬化型インクなどを利用する場合には吸引管83内に沈殿してつまりが発生することがなく、メンテナンスの頻度を少なくできる。
【符号の説明】
【0054】
1…液滴吐出装置、2…基台、2a…基台の上面、3a,3b…案内レール、4…ステージ、5…主走査位置検出装置、6…載置面、7…基板、8a,8b…支持台、9…案内部材、10…収容タンク、11…案内レール、12…キャリッジ、13…副走査位置検出装置、14…ヘッドユニット、15…保守装置、16…保守ステージ、17…フラッシングユニット、18…吸引ユニット、19…ワイピングユニット、20…重量測定装置、24…支柱、25…空気制御装置、26…シート、27…床、28…液滴吐出ヘッド、28a…第1ヘッド、28b…第2ヘッド、28c…第3ヘッド、28d…第4ヘッド、29…ノズルプレート、30…ノズル、31…ベース板、32…支持部、33…駆動回路基板、34…ヘッド駆動回路、35…支持部、36…ヘッド取付板、37…供給装置、38…圧力室、39…液状体、40…振動板、41…圧電素子、42…液滴、45…制御装置、46…CPU、47…メモリー、48…主走査駆動装置、49…副走査駆動装置、50…入出力インターフェイス、51…データバス、52…入力装置、53…表示装置、54…保守ステージ駆動装置、55…保守ステージ位置検出装置、56…プログラムソフト、57…吐出位置データ、62…吐出演算部、63…主走査制御部、64…副走査制御部、65…吐出制御部、66…重量測定制御部、68…保守装置制御部、80…キャップ部、81…凹部、82…排出口、83…吸引管、85…三方弁、86…大気導入口、87…シールリング、88…押圧弁、90…吸引ポンプ、91…排液状体タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出ヘッド内の液状体を吸引する吸引ユニットを備えた液滴吐出装置であって、
前記液滴吐出ヘッドのノズルを覆い前記液滴吐出ヘッドに当接可能なキャップ部と、
前記キャップ部内を吸引する吸引部と、
前記キャップ部と前記吸引部とを接続する吸引管と、
前記吸引管に設けられ、前記キャップ部と前記吸引部の間の経路を遮断する遮断バルブと、
前記遮断バルブの後段に前記吸引管に大気を導入する大気開放バルブと、を有し、
前記遮断バルブおよび前記大気開放バルブを切り替えることで前記遮断バルブから前記キャップ部側の経路に液状体を貯留させ、前記大気開放バルブから前記吸引部側の経路の液状体を排出させることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、
前記遮断バルブおよび前記大気開放バルブとして三方弁が用いられていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液滴吐出装置において、
前記キャップ部に大気を導入する大気開放部が設けられていることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−143543(P2011−143543A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3688(P2010−3688)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】