説明

液滴吐出装置

【課題】ワークに対して表面処理を行う表面前処理作業からインクを吐出して、当該インクの硬化作業までの時間を短縮させることができる液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】ワークに機能液を吐出するノズルを有する液滴吐出ヘッドと、前記ワークに表面処理を施す表面処理部と、前記ワークに対して、前記液滴吐出ヘッドと前記表面処理部を、相対的に走査する走査部と、を備えた液滴吐出装置であって、前記表面処理部は、前記ノズルと所定の距離をおいて配置され、前記走査部により、前記液滴吐出ヘッドより先に、前記ワークと対向するように走査される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、UV(紫外線)を照射することにより硬化するUVインクを用いて液滴を吐出する液滴吐出装置が知られている。当該液滴吐出装置は、記録媒体に向けてUVインクを液滴として吐出するヘッドと、記録媒体に付着したUVインクに紫外線を照射して、UVインクを硬化させるUV照射手段等を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−127347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、UVインクを用いた印刷方法では、記録媒体とUVインクとの密着性を向上させるために、ヘッドから液滴吐出して記録媒体にUVインクを付着させる前に、予め、記録媒体の表面を改質する前処理作業が必要となる。従って、前処理を行った後に、液滴を吐出して記録媒体にUVインクを付着させ、付着させたUVインクを硬化させる手順を有することになる。しかしながら、上記前処理は、液滴吐出とインク硬化の作業工程(液滴吐出装置)とは別に設けられた前処理工程(別の前処理装置)において行われるため、記録媒体を前処理してからUVインクを付着させるまでに時間を要する。このため、記録媒体にUVインクが付着されるまでの間、記録媒体を放置或いは保管する間に、ワークの表面状態が、環境汚染の影響を受けたり、ワークの表面に塵等が付着したりして、UVインクの密着性が低下してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる液滴吐出装置は、ワークに機能液を吐出するノズルを有する液滴吐出ヘッドと、前記ワークに表面処理を施す表面処理部と、前記ワークに対して、前記液滴吐出ヘッドと前記表面処理部を、相対的に走査する走査部と、を備えた液滴吐出装置であって、前記表面処理部は、前記ノズルと所定の距離をおいて配置され、前記走査部により、前記液滴吐出ヘッドより先に、前記ワークと対向するように走査されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、表面処理部が、液滴吐出ヘッドの走査方向に対して上流側に設けられ、表面処理部と液滴吐出ヘッドとが同時に移動する。そして、ワークを表面処理させながら、液滴が吐出される。すなわち、液滴が吐出される前に、表面処理によってワークの表面が表面処理(改質等)される。そして、表面処理された領域に液滴が吐出され、ワーク上に機能液が塗布される。従って、ワークの表面処理から液滴吐出までの作業時間を短縮させることができる。そして、表面処理を行ってから液滴吐出までの時間が短いため、ワークに対する環境汚染や有機物の塵等の付着を防止することができ、ワークと機能液との密着性を向上させることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる液滴吐出装置の前記表面処理部が、前記液滴吐出ヘッドに近接して配置されたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、表面処理部が、液滴吐出ヘッドに近接して配置され、走査方向に走査する際、液滴吐出ヘッドと表面処理部とが一定の間隔を維持しながら走査する。従って、表面処理された領域に機能液を付着させる間が短縮され、かつ、表面処理された領域に対して均一に液滴吐出が行われる。これにより、ワークに対する機能液の濡れ性や密着性を均一化させることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる液滴吐出装置の前記表面処理部は、光源と前記光源から出射された紫外線を集光させる集光部と、を有することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ワークに対して集光させた紫外線を照射させることが可能となる。従って、ワークの任意の領域に照射することが可能となり、表面処理効率を高めることができる。また、集光によって紫外線の照射力を高めることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる液滴吐出装置は、前記機能液を硬化する機能液硬化部を備え、前記機能液硬化部は、前記ノズルと所定の距離をおいて配置され、前記走査部により、前記液滴吐出ヘッドより後に、前記ワークと対向するように相対的に走査されることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、液滴吐出ヘッドを走査させ、液滴吐出を行わせながら、ワークに付着した機能液を硬化させるので、液滴吐出から機能液の硬化までの作業時間を短縮させることができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる液滴吐出装置の前記機能液硬化部が、前記液滴吐出ヘッドに近接して配置されたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、機能液硬化部が、液滴吐出ヘッドに近接して配置される。そして、走査方向に走査する際、液滴吐出ヘッドと機能液硬化部とが一定の間隔を維持しながら走査する。従って、液滴を吐出してから付着した機能液を硬化させる間が短縮され、かつ、均一に機能液を硬化させることができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかる液滴吐出装置は、前記液滴吐出ヘッドの走査方向に対して、前記液滴吐出ヘッドの上流側及び下流側に前記表面処理部と前記機能液硬化部とが配置されたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、例えば、2方向に走査する液滴吐出ヘッドを中心として走査方向の両側に表面処理部と機能液硬化部が配置される。従って、全走査方向において、ワークの表面処理作業からワークに塗布された機能液を硬化させる硬化作業までの作業時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態にかかる液滴吐出装置の構成を示す模式図。
【図2】液滴吐出ヘッドの構成を示す断面図。
【図3】第1実施形態にかかる液滴吐出装置の電気制御ブロック図。
【図4】第1実施形態にかかる液滴吐出装置の駆動方法を示す模式図。
【図5】第2実施形態にかかる液滴吐出装置の構成を示す模式図。
【図6】第2実施形態にかかる液滴吐出装置の電気制御ブロック図。
【図7】第2実施形態にかかる液滴吐出装置の駆動方法を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した第1及び第2実施形態について図面に従って説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材ごとに縮小を異ならせて図示している。
【0020】
[第1実施形態]
(液滴吐出装置の構成)
まず、第1実施形態にかかる液滴吐出装置の構成について説明する。図1は、第1実施形態にかかる液滴吐出装置の構成を示す模式図である。図1に示すように、液滴吐出装置1Aは、ワークWに向けて機能液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド10と、液滴吐出ヘッド10とワークWを相対的に走査する走査部20と、ワークWに表面処理を施す表面処理部30を備えている。また、機能液を硬化する機能液硬化部40を備えている。さらに、ワークWを載置するステージ50、液滴吐出ヘッド10のメンテナンスを行うメンテナンス部60等を備えている。そして、これら液滴吐出ヘッド10、走査部20、表面処理部30、機能液硬化部40やメンテナンス部60等を制御する制御部を有している。なお、本実施形態における液滴吐出装置1Aは、ワークWに機能液としてのUVインクを付着させる装置を例に挙げて説明する。
【0021】
図2は、液滴吐出ヘッド10の構成を示す断面図である。図2に示すように、液滴吐出ヘッド10は、ノズルプレート11を備え、ノズルプレート11には、ノズル12が形成されている。ノズル12と相対する位置には、ノズル12と連通するキャビティ13が形成されている。そして、液滴吐出ヘッド10のキャビティ13には、UVインクが貯留された収容タンク(図示省略)からUVインクが供給されるように構成されている。
【0022】
キャビティ13上には、上下方向(Z方向:縦振動)に振動して、キャビティ13内の容積を拡大縮小する振動板14と、上下方向に伸縮して振動板14を振動させる加圧手段としての圧電素子15が配設されている。圧電素子15が上下方向に伸縮することにより振動板14が振動し、振動板14がキャビティ13内の容積を拡大縮小してキャビティ13を加圧する。これにより、キャビティ13内の圧力が変動し、キャビティ13内に供給されたUVインクは、ノズル12を通って液滴Dとして吐出される。
【0023】
なお、本実施形態では、加圧手段として、縦振動型の圧電素子15を用いたが、特にこれに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子を用いるようにしてもよい。また、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用してもよい。さらには、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液を液滴として吐出させる構成を有する液滴吐出ヘッドであってもよい。
【0024】
走査部20は、液滴吐出ヘッド10とワークWを相対的に走査するものである。本実施形態では、ステージ50に載置されたワークWに対して液滴吐出ヘッド10を走査(移動)させ、液滴吐出ヘッド10とワークWとが相対的に走査する構成となっている。具体的には、走査部20は、ガイドレール23と、ガイドレール23に沿って走査可能に配置されたキャリッジ21と、キャリッジ21を走査方向に移動させるための直動機構22で構成されている。そして、キャリッジ21には、液滴吐出ヘッド10が搭載されている。直動機構22は、例えば、ガイドレール23に沿って走査方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを備えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が、所定のパルス信号を受けてステップ単位で正逆転するモーター(図示省略)に連結されている。そして、所定のステップ数に相当する駆動信号をモーターに入力すると、モーターが正転又は逆転して、キャリッジ21が同ステップ数に相当する分だけ走査方向に沿って往動又は復動する。このキャリッジ21の移動により、液滴吐出ヘッド10は、ワークWの液滴吐出領域やメンテナンス部60等に移動することができる。
【0025】
表面処理部30は、ワークWの表面を表面処理するものである。表面処理としては、ワークWの表面の洗浄や改質等の処理が含まれる。表面処理部30は、例えば、紫外線照射装置、コロナ放電装置、プラズマ生成装置、水素バーナー等である。なお、本実施形態では、紫外線照射装置を例に挙げて説明する。表面処理部30は、光源から紫外線を照射する照射部31と、光源と光源から出射された紫外線を集光させる集光部32とを備えている。照射部31は、例えば、エキシマUVランプや低圧水銀ランプ等である。そして、照射部31から照射される紫外線の波長は、例えば、185nm或いは254nmである。
【0026】
表面処理部30は、ノズル12と所定の距離をおいて配置され、走査部20により、液滴吐出ヘッド10より先に、ワークWと対向するように走査される。より具体的には、表面処理部30は、液滴吐出ヘッド10から液滴Dを吐出させながら走査される走査方向X1において、液滴吐出ヘッド10の上流側に液滴吐出ヘッド10とともに走査可能に配置されている。また、表面処理部30は、液滴吐出ヘッド10に近接して配置されている。本実施形態では、表面処理部30は、液滴吐出ヘッド10が搭載されたキャリッジ21の側面部分に配置されている。従って、キャリッジ21が走査方向X1に走査する際、表面処理部30と液滴吐出ヘッド10とが、一定の間隔(距離)を維持しながら同時に走査する。
【0027】
集光部32は、例えば、凸レンズや集光ミラー等であり、照射部31から照射された紫外線を集光させる。集光部32は、ワークWの所定領域に紫外線が照射されるように、ワークWとの距離、或いは、凸レンズ或いは集光ミラーの曲率や材料等を適宜設定することができる。
【0028】
機能液硬化部40は、機能液を硬化させるものである。本実施形態では、機能液としてのUVインクを硬化させる機能を有し、例えば、紫外線照射装置等である。機能液硬化部40は、高圧水銀ランプ等を備えている。そして、機能液硬化部40から照射される紫外線の波長は、例えば、365nmである。
【0029】
機能液硬化部40は、ノズル12と所定の距離をおいて配置され、走査部20により、液滴吐出ヘッド10より後に、ワークWと対向するように相対的に走査される。より具体的には、機能液硬化部40は、液滴吐出ヘッド10から液滴Dを吐出させながら走査される走査方向X1において、液滴吐出ヘッド10の下流側に液滴吐出ヘッド10とともに走査可能に配置されている。また、機能液硬化部40は、液滴吐出ヘッド10に近接して配置されている。本実施形態では、機能液硬化部40は、液滴吐出ヘッド10が搭載されたキャリッジ21の側面部分であって、表面処理部30が配置された部分の反対側に配置されている。従って、キャリッジ21が走査方向X1に走査する際、機能液硬化部40と液滴吐出ヘッド10とが、一定の間隔(距離)を維持しながら同時に走査する。
【0030】
メンテナンス部60は、フラッシングユニット、キャッピングユニットやワイピングユニット、さらに、液滴Dの重量を測定する重量測定装置等を備えている。フラッシングユニットは、液滴吐出ヘッド10内の流路を洗浄するとき、液滴吐出ヘッド10から吐出する液滴Dを受ける装置である。例えば、液滴吐出ヘッド10内に固形物が混入した場合に、フラッシングユニットに向けて液滴吐出ヘッド10から液滴Dを吐出させることにより、固形物を液滴吐出ヘッド10から排除することができる。キャッピングユニットは、液滴吐出ヘッド10に蓋をする装置である。液滴吐出ヘッド10に用いられる機能液は、揮発性を有する場合があり、液滴吐出ヘッド10に内在する機能液の溶媒がノズル12から揮発すると、機能液の粘度が変わり、ノズルが目詰まりすることがある。そこで、液滴吐出ヘッド10に蓋をすることで、ノズル12の目詰まりを防止することができる。ワイピングユニットは、液滴吐出ヘッド10のノズルプレート11を拭く装置である。ノズルプレート11は、液滴吐出ヘッド10において、ワークWと対向するように配置されている部材であるため、例えば、ノズルプレート11に機能液等が付着した場合、ノズルプレート11に付着して機能液がワークWの予定外の場所に付着してしまうことがある。そこで、ノズルプレート11を拭くことにより、ワークWの予定外の場所への機能液の付着を防止することができる。重量測定装置は、例えば、電子天秤と電子天秤に配置された受け皿等で構成されている。そして、受け皿に向けて液滴吐出ヘッド10から液滴Dを吐出し、受け皿に付着した液滴Dの重量を電子天秤によって測定することができる。
【0031】
(電気的制御の構成)
次に、液滴吐出装置1Aの電気的制御の構成について説明する。図3は、液滴吐出装置の電気制御ブロック図である。図3において、液滴吐出装置1Aは、上記に述べた各種部材を制御する制御部70を備えている。例えば、制御部70は、走査部20を駆動させ、ワークWの表面処理を行わせながら、液滴Dを吐出させ、さらに、ワークWに付着したUVインクを硬化させる。以下、詳細について説明する。
【0032】
制御部70は、指令部80と駆動部90とを備え、指令部80は、CPU81、記憶手段としてのROM82、RAM83および入出力インターフェイス84からなり、CPU81が入出力インターフェイス84を介して入力される各種信号を、ROM82、RAM83のデータに基づき処理し、入出力インターフェイス84を介して駆動部90へ制御信号を出力する。
【0033】
駆動部90は、ヘッドドライバー91、モータードライバー92、メンテドライバー93、表面処理用ランプドライバー94及び機能液硬化用ランプドライバー95から構成されている。ヘッドドライバー91は、制御部70から出力された制御信号に基づき、液滴吐出ヘッド10の駆動を制御する。モータードライバー92は、直動機構22のモーターを制御して、キャリッジ21の走査を制御する。ヘッドドライバー91は、モータードライバー92の制御と同調することにより、ワークW上の所定位置に液滴Dを吐出することができる。メンテドライバー93は、メンテナンス部60に配置されたキャッピングユニット、ワイピングユニット、フラッシングユニット及び重量測定装置を制御する。表面処理用ランプドライバー94は、表面処理部30のランプを制御し、機能液硬化用ランプドライバー95は、機能液硬化部40のランプを制御する。ヘッドドライバー91は、モータードライバー92の制御と同調することにより、ワークW上の所定位置に液滴Dを吐出することができる。
【0034】
(液滴吐出装置の駆動方法)
次に、液滴吐出装置1Aの駆動方法について説明する。図4は、液滴吐出装置の駆動方法を示す模式図である。なお、本実施形態では、ワークWの表面に向けてUVインクを液滴Dとして吐出する駆動方法について説明する。
【0035】
図4(a)は、液滴吐出装置1Aの駆動開始状態(一部駆動状態)を示している。まず、ステージ50上の所定の位置にワークWを載置する。この際、必要に応じて、ワークWを吸着手段やガイド部材等により、ステージ50に固定する。そして、液滴吐出ヘッド10、表面処理部30及び機能液硬化部40をワークWと対向する位置に移動させる。その後、走査方向X1にキャリッジ21を走査させる。そして、まず、ワークWの表面に向けて表面処理部30から紫外線Aを照射させる。この際、表面処理部30の集光部32により、集光された紫外線Aが、ワークWに照射される。例えば、図4(c)に示すように、集光された紫外線AがワークWの表面領域のうち一部の照射領域Pに照射するように設定する。当該設定では、UVインクを付着させる領域に紫外線Aが照射されるように照射領域Pを設定する。
【0036】
図4(b)は、液滴吐出装置1Aの駆動状態を示している。図4(b)に示すように、キャリッジ21を走査方向X1に走査させる。その際、表面処理部30と液滴吐出ヘッド10と機能液硬化部40とを同時に駆動させながら走査させる。具体的には、液滴吐出ヘッド10の走査方向X1において、液滴吐出ヘッド10の上流側に配置された表面処理部30から紫外線AをワークWの表面に向けて照射させながら、紫外線Aが照射された照射領域Pに向けてUVインクを液滴Dとして吐出させる。これにより、UVインクがワークWに付着する。そして、ワークWに付着したUVインクに向けて機能液硬化部40から紫外線Bが照射され、ワークWに付着したUVインクが硬化する。このようにして、走査方向X1において、ワークWの表面処理、UVインクの塗布及びUVインクの硬化が一連の駆動で実施される。
【0037】
従って、上記の第1実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0038】
(1)走査方向X1に走査するキャリッジ21に液滴吐出ヘッド10を搭載し、また、表面処理部30を、走査方向X1において液滴吐出ヘッド10の上流側であって、キャリッジ21の側面部に配置するとともに、機能液硬化部40を、走査方向X1において液滴吐出ヘッド10の下流側であって、キャリッジ21の側面部に配置した。これにより、キャリッジ21が走査すると、表面処理部30と液滴吐出ヘッド10と機能液硬化部40とが一定の間隔を維持しながら同時に走査する。そして、キャリッジ21を走査させるとともに、表面処理部30と液滴吐出ヘッド10と機能液硬化部40とを同期させながら駆動させた。従って、表面処理部30によってワークWの表面が改質されてから、改質されたワークWの表面に機能液を液滴Dとして吐出して、ワークWの表面に機能液を付着させるまでの時間を均一、かつ、短くすることができる。また、ワークWを改質してから液滴Dを吐出するまでに、ワークWへの環境汚染や異物付着による不具合の発生を抑制させることができる。そして、ワークWと機能液との密着性を向上させることができる。
【0039】
(2)表面処理部30に集光部32を設け、集光部32によって集光された紫外線AをワークWに照射させた。これにより、紫外線Aの照射強度を高めることができる。さらに、ワークWの表面温度を上げ、ワークWに着弾したUVインクが濡れ広がりやすくなる。これにより、UVインクとワークWとの密着性を向上させることができる。
【0040】
[第2実施形態]
(液滴吐出装置の構成)
次に、第2実施形態にかかる液滴吐出装置の構成について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様の部分には、同じ符号を付している。図5は、第2実施形態にかかる液滴吐出装置の構成を示す模式図である。図5に示すように、ワークWに向けて機能液を液滴として吐出する液滴吐出ヘッド10と、液滴吐出ヘッド10とワークWを相対的に走査する走査部20と、ワークWに表面処理を施す第1及び第2表面処理部30a,30bを備えている。また、機能液を硬化する第1及び第2機能液硬化部40a,40bを備えている。さらに、ワークWを載置するステージ50、液滴吐出ヘッド10のメンテナンスを行うメンテナンス部60等を備えている。そして、これら液滴吐出ヘッド10、走査部20、第1及び第2表面処理部30a,30b、第1及び第2機能液硬化部40a,40bやメンテナンス部60等を制御する制御部を有している。本実施形態では、ワークWに機能液としてのUVインクを付着させる液滴吐出装置1Bを例に挙げて説明する。なお、液滴吐出ヘッド10、走査部20及びメンテナンス部60の構成は、第1実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0041】
第1及び第2表面処理部30a,30bは、ワークWの表面を表面処理するものであり、当該表面処理としては、ワークWの表面の洗浄や改質等の表面処理が含まれる。第1及び第2表面処理部30a,30bは、例えば、紫外線照射装置、コロナ放電装置、プラズマ生成装置、水素バーナー等である。なお、本実施形態では、紫外線照射装置を例に挙げて説明する。第1及び第2表面処理部30a,30bのそれぞれには、光源から紫外線を照射する照射部31と、照射された紫外線を集光させる集光部32とを備えている。照射部31及び集光部32の構成については、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0042】
第1及び第2表面処理部30a,30bのそれぞれが、液滴吐出ヘッド10の走査方向X1,X2において、液滴吐出ヘッド10の上流側に設けられている。さらに詳細には、液滴吐出ヘッド10から液滴Dを吐出しながら走査される走査方向X1に対して、液滴吐出ヘッド10の上流側に第1表面処理部30aが設けられている。また、第1表面処理部30aは、液滴吐出ヘッド10に近接して配置されている。本実施形態の第1表面処理部30aは、液滴吐出ヘッド10が搭載されたキャリッジ21の側面部分に配置されている。また、液滴吐出ヘッド10が液滴Dを吐出しながら走査される走査方向X2に対して、液滴吐出ヘッド10の上流側に第2表面処理部30bが設けられている。また、第2表面処理部30bは、液滴吐出ヘッド10に近接して配置されている。本実施形態の第2表面処理部30bは、液滴吐出ヘッド10が搭載されたキャリッジ21の側面部分(第1表面処理部が配置された側面部分とは反対側の側面部分)に配置されている。従って、キャリッジ21が走査方向X1,X2に走査する際、第1及び第2表面処理部30a,30bと液滴吐出ヘッド10とが、一定の間隔を維持しながら同時に移動するように構成されている。
【0043】
第1及び第2機能液硬化部40a,40bは、機能液を硬化させるものである。本実施形態では、機能液としてのUVインクを硬化させる機能を有し、例えば、紫外線照射装置等である。機能液硬化部40は、高圧水銀ランプ等を備えている。そして、第1及び第2機能液硬化部40a,40bから照射される紫外線の波長は、例えば、365nmである。
【0044】
第1及び第2機能液硬化部40a,40bのそれぞれが、液滴吐出ヘッド10の走査方向X1,X2において、液滴吐出ヘッド10の下流側に設けられている。さらに詳細には、液滴吐出ヘッド10から液滴Dを吐出しながら走査される走査方向X1に対して、液滴吐出ヘッド10の下流側に第1機能液硬化部40aが設けられている。また、第1機能液硬化部40aは、液滴吐出ヘッド10に近接して配置されている。本実施形態の第1機能液硬化部40aは、第2表面処理部30bに隣接して配置されている。また、液滴吐出ヘッド10が液滴Dを吐出しながら走査される走査方向X2に対して、液滴吐出ヘッド10の下流側に第2機能液硬化部40bが設けられている。また、第2機能液硬化部40bは、液滴吐出ヘッド10に近接して配置されている。本実施形態の第2機能液硬化部40bは、第1表面処理部30aに隣接して配置されている。従って、キャリッジ21が走査方向X1,X2に走査する際、第1及び第2機能液硬化部40a,40bと液滴吐出ヘッド10とが、一定の間隔を維持しながら同時に移動するように構成されている。
【0045】
(電気的制御の構成)
次に、液滴吐出装置1Bの電気的制御の構成について説明する。図6は、液滴吐出装置の電気制御ブロック図である。図6において、液滴吐出装置1Bは、上記に述べた各種部材を制御する制御部70を備えている。例えば、制御部70は、走査部20を駆動させ、ワークWの表面処理を行わせながら、液滴Dを吐出させ、さらに、ワークWに付着したUVインクを硬化させる。以下、詳細について説明する。
【0046】
制御部70は、指令部80と駆動部90とを備え、指令部80は、CPU81、記憶手段としてのROM82、RAM83および入出力インターフェイス84からなり、CPU81が入出力インターフェイス84を介して入力される各種信号を、ROM82、RAM83のデータに基づき処理し、入出力インターフェイス84を介して駆動部90へ制御信号を出力する。
【0047】
駆動部90は、ヘッドドライバー91、モータードライバー92、メンテドライバー93、第1及び第2表面処理用ランプドライバー94a,94b、第1及び第2機能液硬化用ランプドライバー95a,95bから構成されている。ヘッドドライバー91は、制御部70から出力された制御信号に基づき、液滴吐出ヘッド10の駆動を制御し、モータードライバー92は、直動機構22のモーターを制御し、キャリッジ21の移動を制御する。すなわち、キャリッジ21に搭載された液滴吐出ヘッド10とキャリッジ21の側面部に配置された第1及び第2表面処理部30a,30b、第1及び第2機能液硬化部40a,40bの移動を制御する。メンテドライバー93は、メンテナンス部60に配置されたキャッピングユニット、ワイピングユニット、フラッシングユニット及び重量測定装置を制御する。第1表面処理用ランプドライバー94aは、第1表面処理部30aのランプを制御し、第2表面処理用ランプドライバー94bは、第2表面処理部30bのランプを制御する。第1機能液硬化用ランプドライバー95aは、第1機能液硬化部40aのランプを制御し、第2機能液硬化用ランプドライバー95bは、第2機能液硬化部40bのランプを制御する。
【0048】
(液滴吐出装置の駆動方法)
次に、液滴吐出装置1Bの駆動方法について説明する。図7は、液滴吐出装置の駆動方法を示す模式図である。なお、本実施形態では、ワークWの表面に向けて機能液としてのUVインクを液滴Dとして吐出する方法について説明する。
【0049】
図7(a)は、液滴吐出装置1Bの駆動開始状態(一部駆動状態)を示している。ステージ50上の所定の位置にワークW1を載置する。この際、必要に応じて、ワークW1を吸着手段やガイド部材等により、ステージ50に固定する。そして、液滴吐出ヘッド10、表面処理部30及び機能液硬化部40をワークW1と対向する位置に移動させる。その後、走査方向X1にキャリッジ21を走査させる。そして、まず、第1表面処理部30aを駆動させ、ワークW1の表面に向けて紫外線Aを照射させる。この際、表面処理部30の集光部32によって紫外線Aが集光され、集光された紫外線Aが、ワークW1の表面領域のうち一部の照射領域Pに照射される(図4(c)参照)。紫外線Aを照射させる領域は、UVインクを付着させる領域となるように、集光部32等を適宜設定する。
【0050】
図7(b)は、走査方向X1における液滴吐出装置1Bの駆動状態を示している。図7(b)に示すように、キャリッジ21を走査方向X1に走査させながら、第1表面処理部30aと液滴吐出ヘッド10と第1機能液硬化部40aとを同時に駆動させる。具体的には、液滴吐出ヘッド10の走査方向X1において、液滴吐出ヘッド10の上流側に配置された第1表面処理部30aから紫外線AをワークW1の表面に照射させながら、紫外線Aが照射された照射領域Pに向けてUVインクを液滴Dとして吐出させる。これにより、UVインクがワークW1に付着する。そして、液滴吐出ヘッド10の下流側に配置された第1機能液硬化部40aから紫外線Bが照射され、ワークW1に付着したUVインクが硬化する。この際、第2表面処理部30bと第2機能液硬化部40bは非駆動状態となる。このようにして、走査方向X1において、ワークW1の表面処理、UVインクの塗布及びUVインクの硬化が一連の駆動で実施される。
【0051】
図7(c)は、走査方向X2における液滴吐出装置1Bの駆動状態を示している。なお、ワークW2の載置方法等は、図7(a)における載置方法等と同様に行う。図7(c)に示すように、キャリッジ21を走査方向X2に走査させながら、第2表面処理部30bと液滴吐出ヘッド10と第2機能液硬化部40bとを同時に駆動させる。具体的には、液滴吐出ヘッド10の走査方向X2において、液滴吐出ヘッド10の上流側に配置された第2表面処理部30bから紫外線AをワークW2の表面に照射させながら、紫外線Aが照射された照射領域Pに向けてUVインクを液滴Dとして吐出させる。これにより、UVインクがワークW2に付着する。そして、液滴吐出ヘッド10の下流側に配置された第2機能液硬化部40bから紫外線Bが照射され、ワークW2に付着したUVインクが硬化する。この際、第1表面処理部30aと第1機能液硬化部40aは非駆動状態となる。このようにして、走査方向X2においても、ワークW2の表面処理、UVインクの塗布及びUVインクの硬化が一連の駆動で実施される。
【0052】
従って、上記の第2実施形態によれば、第1実施形態に効果に加え、以下に示す効果がある。
【0053】
液滴吐出ヘッド10が搭載されたキャリッジ21の走査方向X1,X2に対して、キャリッジ21の両側に第1及び第2表面処理部30a,30b、第1及び第2機能液硬化部40a,40bをそれぞれ配置した。従って、液滴吐出ヘッド10がいずれの走査方向X1,X2に走査しても、ワークWの表面処理作業からワークWに塗布された機能液を硬化させる硬化作業までの作業時間を短縮させることができる。
【0054】
なお、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0055】
(変形例1)第1及び第2実施形態では、機能液硬化部40(第1及び第2機能液硬化部40a,40b)を備えたが、これを省略してもよい。このようにしても、紫外線が照射された照射領域Pでは、ワークWの表面温度が上がるため、照射領域Pに、例えば、溶媒を含む機能液を液滴として吐出して、照射領域Pに機能液を付着させた場合、溶媒分が揮発するため、機能液を硬化させることができる。
【0056】
(変形例2)第1及び第2実施形態では、ワークWに対して液滴吐出ヘッド10を走査させる走査部20を設けたが、これに限定されず、液滴吐出ヘッド10を固定し、ステージ50を走査させ、液滴吐出ヘッド10とワークWとを相対的に走査させる構成であってもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。さらに、液滴吐出ヘッド10、表面処理部30及び機能液硬化部40を固定させることにより、液滴吐出ヘッド10、表面処理部30及び機能液硬化部40の重量等による走査(駆動)負荷を低減させることができる。
【0057】
(変形例3)第1及び第2実施形態では、UVインクを用いた液滴吐出装置1A,1Bについて説明したが、これに限定されない。例えば、金属配線材料を含む機能液を用いて、例えば、絶縁基板等のワークWに機能液を吐出して金属配線を形成する液滴吐出装置であってもよい。この場合において、例えば、撥液処置されたワークWの表面に対して表面処理部30によって紫外線を照射させ、紫外線が照射された部分を親液化させ、親液化された領域に液滴Dを吐出する構成であってもよい。このようにすれば、ワークWに付着する機能液が濡れ広がり、ワークWと金属配線との密着性を高めることができる。また、表面処理部に集光部を備えることにより、集光された紫外線がワークWに照射されることにより、ワークWに照射された部分の温度が上がる。このため、機能液の濡れ広がりが規制され、微細な金属配線膜を形成することができる。
【符号の説明】
【0058】
1A,1B…液滴吐出装置、10…液滴吐出ヘッド、20…走査部、21…キャリッジ、30…表面処理部、30a…第1表面処理部、30b…第2表面処理部、31…照射部、32…集光部、40…機能液硬化部、40a…第1機能液硬化部、40b…第2機能液硬化部、50…ステージ、60…メンテナンス部、70…制御部、X1,X2…走査方向、W…ワーク、P…照射領域、D…液滴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに機能液を吐出するノズルを有する液滴吐出ヘッドと、
前記ワークに表面処理を施す表面処理部と、
前記ワークに対して、前記液滴吐出ヘッドと前記表面処理部を、相対的に走査する走査部と、を備えた液滴吐出装置であって、
前記表面処理部は、前記ノズルと所定の距離をおいて配置され、前記走査部により、前記液滴吐出ヘッドより先に、前記ワークと対向するように走査されることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、
前記表面処理部が、前記液滴吐出ヘッドに近接して配置されたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液滴吐出装置において、
前記表面処理部は、
光源と前記光源から出射された紫外線を集光させる集光部と、を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出装置において、
前記機能液を硬化する機能液硬化部を備え、
前記機能液硬化部は、前記ノズルと所定の距離をおいて配置され、前記走査部により、前記液滴吐出ヘッドより後に、前記ワークと対向するように相対的に走査されることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出装置において、
前記機能液硬化部が、前記液滴吐出ヘッドに近接して配置されたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の液滴吐出装置において、
前記液滴吐出ヘッドの走査方向に対して、前記液滴吐出ヘッドの上流側及び下流側に前記表面処理部と前記機能液硬化部とが配置されたことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−167657(P2011−167657A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35765(P2010−35765)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】