説明

液滴吐出装置

【課題】インク供給路内の顔料が沈降したインクを効果的に撹拌し、濃度の安定したインクを吐出することが可能な液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】液滴吐出装置100は、顔料を含有するインクを収容するインク容器10と、インクを吐出するヘッド40と、インク容器10からヘッド40へインクを供給する供給路30と、供給路30に設けられ、内部にインクの撹拌手段を備えた中間容器20と、中間容器20内のインクを撹拌手段により撹拌を行うか否かを判断する判断手段と、を有する。また、中間容器20が搭載されたキャリッジ50Aを有し、中間容器20は、撹拌手段としての撹拌子15を有し、キャリッジ50Aは、所定の方向に往復動作が可能であり、撹拌子15が、キャリッジ50Aの往復動作に基づいて中間容器20内を移動することにより、中間容器20内のインクを撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクを収容するインクタンクからインク供給管を介して、インクを吐出可能なヘッドに供給するインク供給システムについて知られている。このようなインク供給システムを用いた場合、ヘッドにインクの供給が行われた後、インクの供給が長時間行われないと、インク供給管の流路内に残留したインクに含まれる成分が沈降することがある。インクに含まれる成分が沈降すると、再度ヘッドにインクを供給する際に、ヘッドにインクの安定供給ができなかったり、吐出不良が発生したりすることがある。
【0003】
特に、インクの成分として無機顔料(例えば、酸化チタン等)や金属顔料(例えば、アルミニウム)等を含む場合には、溶媒との比重差の点から、これらの顔料が沈降しやすいという問題がある。
例えば、インク流路内に常に一定量のインクを保持させるサブタンクを設けたインク供給システムについて記載されている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献1には、サブタンク内のインクを撹拌するためにサブタンク内に撹拌球を設けること等について記載されている。このようなサブタンクを設けることによって、インクに含まれる顔料等の成分の沈降を低減させることができる。
しかしながら、従来の技術では、撹拌のタイミングを調整することができず、有効な撹拌を十分に行うことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−272648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、インク供給路内の顔料が沈降したインクを効果的に撹拌し、濃度の安定したインクを吐出することが可能な液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液滴吐出装置は、顔料を含有するインクを収容するインク容器と、
前記インクを吐出するヘッドと、
前記インク容器からヘッドへ前記インクを供給する供給路と、
前記供給路に設けられ、内部に前記インクの撹拌手段を備えた中間容器と、
前記中間容器内のインクを前記撹拌手段により撹拌を行うか否かを判断する判断手段と、を有することを特徴とする。
これにより、インク供給路内の顔料が沈降したインクを効果的に撹拌し、濃度の安定したインクを吐出することが可能な液滴吐出装置を提供することができる。
【0007】
本発明の液滴吐出装置では、前記中間容器が搭載されたキャリッジを有し、
前記中間容器は、前記撹拌手段としての撹拌子を有し、
前記キャリッジは、所定の方向に往復動作が可能であり、
前記撹拌子が、前記キャリッジの往復動作に基づいて前記中間容器内を移動することにより、前記中間容器内のインクを撹拌することが好ましい。
これにより、キャリッジが移動することによって、キャリッジに搭載された中間容器内の撹拌子が移動するので、中間容器内のインクをより容易に撹拌することができる。
【0008】
本発明の液滴吐出装置では、前記撹拌を行うか否かの判断に用いる情報を記憶する記憶手段を有することが好ましい。
これにより、撹拌を行うか否かを迅速にかつ容易に判断することができる。
本発明の液滴吐出装置では、撹拌を行う前に、前記ヘッド内の前記インクを排出するか否かを判断し、
排出すると判断した場合、撹拌前に前記ヘッド内のインクの排出を行なうことが好ましい。
これにより、ヘッド内において顔料の沈降が生じたインクを排出することができ、安定した濃度のインクを記録媒体に対して吐出することができる。
【0009】
本発明の液滴吐出装置では、前記ヘッド内から前記インクを排出する排出量の設定を行ない、前記排出量は、前回のインクを吐出してから経過した時間に応じて変化することが好ましい。
これにより、ヘッド内のインクを排出するか否かをより容易に判断することができる。
本発明の液滴吐出装置では、前記ヘッドからインクを排出する排出量は、前記インク容器と前記中間容器とを接続する供給路の容積よりも小さいことが好ましい。
これにより、インクの無駄を少なくできる。
【0010】
本発明の液滴吐出装置では、前記判断手段として、前記中間容器内の前記インクの濃度を検出する濃度検出器を有することが好ましい。
これにより、撹拌手段により撹拌するタイミングを容易に調整することができ、インク供給路内の顔料が沈降したインクをより効果的に撹拌し、濃度の安定したインクを吐出することができる。
本発明の液滴吐出装置では、前記撹拌を行うか否かの判断は、前回のインクを吐出してから経過した時間を用いて行うことが好ましい。
このような経過時間を用いることで、どの程度撹拌を行うかをより容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る液滴吐出装置を模式的に示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る液滴吐出装置における中間容器を模式的に示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係る液滴吐出装置の中間容器内の沈降し得る成分の沈降状態を示す説明図である。
【図4】本実施形態に係る液体供給装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態に係るインクジェットプリンターを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《液滴吐出装置》
まず、本発明の液滴吐出装置の好適な実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る液体供給装置を模式的に示す側面図、図2は、本実施形態に係る液滴吐出装置における中間容器を模式的に示す斜視図、図3は、本実施形態に係る液滴吐出装置の中間容器内の沈降し得る成分の沈降状態を示す説明図である。
【0013】
液滴吐出装置100は、図1に示すように、顔料を含有するインクを収容するインク容器10と、インクを吐出するヘッド40と、インク容器10からヘッド40へインクを供給するインク供給路30と、インク供給路30に設けられた中間容器20と、ヘッド40および中間容器20が搭載されたキャリッジ50Aとを有している。中間容器20は、その内部に撹拌手段としての撹拌子15を有している。また、中間容器20内のインクの濃度の検出が可能な位置に、図示しない濃度検出器80を有している。キャリッジ50Aは、所定の方向(以下、「主走査方向」ともいう。)MSDに往復運動可能である。
【0014】
<インク容器>
インク容器10は、インクを収容することができる。インク容器10は、図1に示すように、インク供給路30aを介して中間容器20と接続されている。これによって、インクを中間容器20に流通させることができる。
インク容器10は、消費したインクを再度補充できるような構造であることが好ましく、液滴吐出装置100の作動中にインクを補充できる構造であることがより好ましい。液滴吐出装置100の作動を中止せずにインク容器10にインクを補充することにより、作業効率を向上させることができる。
【0015】
[インク]
本明細書中におけるインクには、顔料が含まれている。このようなインクとしては、例えば、民生用のインク組成物、有機ELディスプレー用材料、液晶ディスプレー等のカラーフィルター用材料、FED(面発光ディスプレー)用材料、電気泳動ディスプレー等の電極やカラーフィルター用材料、バイオチップ製造に用いられる生体有機材料等が挙げられる。
【0016】
顔料としては、有機顔料や、金属または金属酸化物からなる顔料等を挙げることができる。有機顔料としては、例えば、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キノフラロン顔料等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等を挙げることができる。
また、金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、亜鉛、チタン等の単体、またはそれらの合金等を挙げることができる。
【0017】
また、金属酸化物としては、二酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等を挙げることができる。
インクは、さらに、有機溶媒や水等の溶媒を含み、上記顔料と溶媒との比重差が1以上の組成のものを用いることができる。このように、インク中の溶媒と顔料との比重差が大きくても、本発明に係る液滴吐出装置100を用いることによって、十分撹拌することができ、成分組成比のばらつきの少ないインクを供給することができる。
【0018】
以下、インク容器10に収容されるインクとして代表的に使用される白色インク組成物について説明する。例えば、白色インク組成物には、白色顔料として上記の二酸化チタンを用いることができる。二酸化チタンの含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、5質量%以上25質量%以下であるのが好ましく、8質量%以上15質量%以下であるのがより好ましい。二酸化チタンの含有量が上記範囲を超えると、ヘッド40の目詰まり等が発生する場合がある。また、二酸化チタンの含有量が上記範囲未満であると、白色度が不足する場合がある。
【0019】
白色インク組成物は、顔料を定着させる樹脂を含むことができる。樹脂としては、アクリル系樹脂(例えば、アルマテックス(三井化学社製))、ウレタン系樹脂(例えば、WBR−022U(大成ファインケミカル社製))等が挙げられる。樹脂の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、0.5質量%以上10質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であるのがより好ましい。
白色インク組成物は、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0020】
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール等の炭素数が4以上8以下の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。これらの中でも炭素数が6以上8以下の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いためより好ましい。
【0021】
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。これらの中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
【0022】
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上10質量%以下であるのがより好ましい。
また、白色インク組成物は、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
【0023】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)等が挙げられる。
【0024】
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミ一・ジャパン社製)等が挙げられる。
さらに、白色インク組成物には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のその他の界面活性剤を含有することもできる。
上記界面活性剤の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であるのがより好ましい。
【0025】
また、白色インク組成物は、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールは、例えば、白色インク組成物をインクジェット記録装置に適用した場合に、インクの乾燥を抑制し、吐出−ツド部分におけるインクの目詰まりを防止することができる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
上記多価アルコールの含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、0.1質量%以上30質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であるのがより好ましい。
【0026】
白色インク組成物は、溶媒として水を含有することができる。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
さらに、白色インク組成物は、必要に応じて、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防衛剤・防腐剤、アロハネート類等の酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、トリエタノールアミン等のpH調整剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、2種以上組み合わせて用いることもできる。
なお、白色インク組成物として、水系インク組成物を例として説明しているが、紫外線硬化型インク等を用いてもよい。
【0027】
<ヘッド>
本実施形態に係る液滴吐出装置は、記録媒体に対してインクを吐出するヘッド40を有する。ヘッド40は複数のノズル孔を有しており、ノズル孔から液体を吐出することができる。本実施形態に係る液滴吐出装置100が有するヘッドは、ライン型ヘッドであっても、シリアル型ヘッドであってもよい。
【0028】
ここで、ライン型ヘッドとは、ヘッドが記録媒体の幅よりも広く形成され、ヘッドが移動せずに記録媒体に液滴を吐出して所望の画像を形成するものを示す。また、シリアル型ヘッドとは、所定の方向に移動可能なキャリッジにヘッドが搭載されており、キャリッジの移動に伴ってヘッドが移動することにより記録媒体に所望の画像を形成するものを示す。
【0029】
図1の例では、ヘッド40は、シリアル型ヘッドであって、キャリッジ50Aに搭載されており、後述するインク供給路30bを介して中間容器20と接続されている。ヘッド40は、インク供給路30bから供給されたインクを吐出することができる。
ヘッド40に供給される液体は、中間容器20において十分撹拌されたものである。そのため、ヘッド40は、成分組成比のばらつきの少ないインクを吐出することができる。
【0030】
<インク供給路>
インク供給路30は、図1に示すように、インク供給路30aとインク供給路30bとから構成されている。
インク供給路30aは、図1に示すように、インク容器10と、中間容器20とを接続している。インク供給路30aは、インク容器10に収容されているインクを中間容器20に流通させることができる。
【0031】
インク供給路30bは、図1に示すように、中間容器20と、ヘッド40とを接続している。インク供給路30bは、中間容器20に供給された液体をヘッド40に流通させることができる。
インク供給路30の形状としては、特に限定されないが、以下のものを挙げることができる。例えば、インク容器10およびヘッド40を単純な直線で結ぶ直線状、たるんだ形状、局所的に高い部分と低い部分とが交互に繰り返される部分を含む波形状、および複数のループが連結される部分を含むループ状等を挙げることができる。
【0032】
インク供給路30の内部には、液体の流動方向に沿ってねじられた仕切り部(図示せず)が設けられていてもよい。仕切り部は、インク供給路30内に導入された液体を撹拌する機能を有している。インク供給路30に導入された液体は、ねじれ構造である仕切り部に沿うようにインク供給路30内を進み、ヘッド40に供給される。これによって、インク供給路30内の液体を充分に撹拌することができる。
【0033】
インク供給路30の材質としては、可撓性を有するものであれば特に限定されるものではなく、エラストマー等を挙げることができる。エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム等の加硫ゴムや、塩化ビニル系、スチレン系、オレフィン系、シリコーン系、フッ素系等のエラストマーを挙げることができる。
インク供給路30の内径は、後述する撹拌子15がインク供給路30内に移動しない大きさであれば、特に限定されるものではない。例えば、液滴吐出装置100を後述するインクジェットプリンター300に適用する場合には、インク供給路30の内径は、2mm以上5mm以下であるのが好ましく、2mm以上4mm以下であるのがより好ましい。
【0034】
<キャリッジ>
本実施形態に係る液滴吐出装置は、所定の方向に移動するキャリッジ50Aを有している。
図1において、キャリッジ50Aは、例えば、駆動源となるキャリッジモーター(図示せず)の動力によって主走査方向MSDに往復運動することができる。中間容器20がキャリッジ50Aに搭載されており、後述する中間容器20内部に撹拌子15を有する場合には、キャリッジ50Aが移動することによって、キャリッジ50Aに搭載された中間容器20内の撹拌子15が移動するので、中間容器20内のインクをより容易に撹拌することができる。また、ヘッドがキャリッジに搭載されているシリアル型ヘッドである場合には、キャリッジ50Aの移動に伴ってヘッド40から液体を吐出することができるので、所望の位置にインクを吐出することができる。
【0035】
<中間容器>
中間容器20は、図1に示すように、インク供給路30の途中に設けられており、インク供給路30aを介してインク容器10と接続され、インク供給路30bを介してヘッド40と接続されている。これにより、インク容器10から供給されたインクは、中間容器20内を通過してヘッド40に供給されるよう構成されている。
【0036】
また、中間容器20は、図1に示すように、その内部に撹拌手段としての撹拌子15と、中間容器20内の所定位置のインクの濃度を検出する濃度検出器80とを有している。
中間容器20は、図1に示すように、キャリッジ50Aに搭載されている。中間容器20がキャリッジ50Aに搭載されていると、中間容器20のみを移動させるための機構を別に設ける必要がなく、キャリッジ50Aの移動機構を利用して中間容器20を移動させることができる。そのため、中間容器20をキャリッジ50Aに搭載すると、撹拌効率の優れた液滴吐出装置100を容易に得られるという観点から優れている。
【0037】
中間容器20およびインク供給路30aの接続部分Jlは、後述するJ2以外の部分に形成されるのであれば、中間容器20のいずれの部分に設けられてもよい。
また、中間容器20およびインク供給路30bの接続部分J2は、J1以外の部分に
形成されるのであれば、中間容器20のいずれの部分に設けられてもよい。
中間容器20の取り付けられている向きや角度等は、撹拌子15がキャリッジ50Aの往復運動に基づいて移動するのであれば、特に限定されるものではない。
【0038】
本実施形態に係る液滴吐出装置100の中間容器20の形状としては、直方体形状、円筒形状、楕円筒形状等を挙げることができる。なお、本明細書において、中間容器20の形状とは、撹拌子15が配置されている容器の内部形状のことをいう。
中間容器20は、図2(A)のように、上面部24と、底面部22と、所定の方向MSDに延びる第1側面部26と、所定の方向MSDに対向する第2側面部28と、を有し、底面部22の所定の方向MSDに直交する断面は、外周部が容器の外側に向かって凸の曲線を含むことが好ましい。具体的には、図2(A)の例では、底面部22は、鉛直方向VDの下向きに凸の曲面を有しており、第1側面部26および第2側面部28と接続され、かつ、連続した面を有している。また、上面部24は、第1側面部26および第2側面部28と接続され、かつ、連続した面を有している。第1側面部26は、所定の方向MSDに沿って延びる対向する2つの面からなる。また、第2側面部28は、インク供給路30aおよび30bに接続されている。第2側面部28は、所定の方向MSDに対して対向して設けられた2つの面からなる。
【0039】
図2(A)において、中間容器20の底面部22は凸曲面であるため、沈降物HIが底面部22の凸部分に集まりやすい。また、撹拌子15は、底面部22の凸部分に位置しやすくなり、底面部22の凸部分に沿って移勤しやすくなる。このように、沈降物HIが撹拌子15の移動する軌道に多く残留しているので、撹拌子15の移動によって沈降物HIをより効率的に撹拌することができる。したがって、容器が図2(A)の形状であると、撹拌効率に優れた液滴吐出装置100を得ることができる。
【0040】
また、図2(A)の中間容器20の他に、図2(B)に示すような中間容器120を用いてもよい。図2(B)の中間容器120は、図2(A)における第1側面部26および上面部24の所定の方向MSDに直交する断面の外周部が中間容器20の外側に向かって凸の曲線を含むようにしたものであり、例えば、中間容器120の所定の方向MSDに直交する断面形状が円形であることができる。具体的には、中間容器120は、図2(A)における上面部24、底面部22、および第1側面部26が一体化した円筒部122と、第2側面部128と、からなり、第2側面部128にインク供給路30aおよび30bが接続されている。第2側面部128は、主走査方向MSDに対して対向して設けられた2つの面からなる。
【0041】
なお、図2 (B)の例では、中間容器120は、円筒部122を有しておりキャリッジ50Aの移動方向MSDと直交する断面形状が円形であるが、中間容器120の取り付けられる向きや角度によっては、断面形状が楕円形の場合もある。
また、中間容器120は、円筒部122を有しているが、円筒形状に代えて楕円筒形状のものを用いてもよい。
【0042】
図2(B)における中間容器120は、円筒形または楕円筒形であるため、中間容器120内に供給された沈降物HIが中間容器120の底部の中央部に集まりやすい。また、撹拌子15は、中間容器120の底部の中央部に位置しやすくなり、底部の中央部に沿って移勤しやすくなる。このように、沈降物HIが撹拌子15の移動する軌道に多く残留しているため、撹拌子15の移動によって沈降物HIをより効率的に撹拌することができる。
【0043】
本実施形態における中間容器20(120)は、さらに、第2側面部28(128)の所定の方向MSDに平行な断面の外周部が、中間容器20の外側に向かって凸の曲線を含むことがより好ましい。このような形状の容器としては、図2(C)における中間容器220が挙げられる。中間容器220は、第2側面部228が中間容器220の外側に向かって凸の曲面形状を有する以外は、図2(B)における中間容器120と同様の形状を有する。具体的には、中間容器220は、円筒部222と、その側面(第2側面部228)と、が接続され連続した面を有している。
【0044】
図2(A)に示すように、中間容器20は、第2側面部28が容器20の外側に向かって凸の曲面を有していない。このため、第2側面部28と底面部22との接続部に沈降した沈降物HIは、撹拌子15が球体や楕円体である場合(後述)において、撹拌子15と接触しにくくなるため、撹拌効率が低下する場合がある。また、図2(B)に示すように、中間容器120も同様である。
【0045】
これに対して、図2(C)に示す中間容器220のように、第2側面部228が中間容器220の外側に向かって凸の曲面を有していると、撹拌子15が球体や楕円体である場合(後述)において、第2側面部228と円筒部222との接続部分に撹拌子15が接触しやすくなる。そのため、第2側面部228と円筒部222との接続部分に沈降した沈降物HIは、撹拌子15によって効果的に撹拌することができる。
【0046】
中間容器20の形状を直方体形状とする場合には、長辺がキャリッジ50Aの移動方向MSDと平行になるように配置することが好ましい。これにより、中間容器20内での撹拌子15の移動領域が広がり、中間容器20内を効率的に移動できるようになるので、インクの撹拌効率を向上することができる。
中間容器20の形状を円筒形状や楕円筒形状とする場合には、主走査方向MSDと直交する中間容器20の断面形状が円形または楕円形となるように設置し、かつ、その長手方向がキャリッジ50Aの移動方向MSDと平行になるように配置することが好ましい。中間容器20の長手方向とキャリッジ50Aの移動方向MSDとが平行になるように中間容器20を設置すると、撹拌子15は、中間容器20の底部の凸部分に沿ってさらに移勤しやすくなる。これにより、撹拌子15の移動によって、中間容器20の底部の凸部分に沈降した沈降物をより効率的に撹拌することができる。
中間容器20は、複数設けられていてもよい。中間容器20が複数設けられていることによって、インクの撹拌効率を向上させることができる。また、中間容器20は、その内部に撹拌子15を複数備えていてもよい。これによって、中間容器20に供給された液体の撹拌効率を向上させることができる。
【0047】
[撹拌子]
撹拌子15は、キャリッジ50Aの往復運動に基づいて、中間容器20の内部を移動して、中間容器20に供給された液体や沈降物HIを撹拌することができる。撹拌子15の軌道および移動方向は、キャリッジ50Aの往復運動、中間容器20へのインク供給量、中間容器20の取り付けられている向きや角度、容器の形状等によって決定される。
【0048】
撹拌子15の形状としては、中間容器20内を移動できる形状であればよく、例えば、球体、楕円体(例えば、ラグビーボール型)、円柱形、楕円柱形、直方体、立方体などを挙げられる。これらの中でも、撹拌子15の形状が球体や楕円体であると、撹拌子15の移動効率を向上させることができる。また、中間容器20の底面部22の所定方向MSDに直交する断面の外周部が中間容器20の外側に向かって凸の曲線を有する場合には、凸部分の頂点に撹拌子15が接触しやすくなるので、底面部22の凸部分に沈降した沈降物の撹拌効率が向上する。
【0049】
また、撹拌子15は、中間容器20に供給される液体の比重よりも高い比重の材質を用いることが好ましく、2.5以上の比重の材質を用いることがより好ましい。例えば、撹拌子15の材質としては、ケイ酸塩を主成分とするガラスや、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、金属(例えば、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、鉄、およびこれらのいずれかを含む合金)等を挙げることができる。撹拌子15の比重が中間容器20に供給されるインクの比重よりも高いことによって、沈降物HIの撹拌を効果的に行うことができる。
【0050】
なお、上記説明では、撹拌手段として撹拌子15を用いた機構について説明したが、これに限定されず、例えば、撹拌手段としては、移動装置を前後左右に移動させることによって移動装置に固定された中間容器を移動させて内部のインクを撹拌させる機構、超音波等によって容器内のインクを振動させて償拝させる機構、容器を傾けることによって中間容器内のインクを移動させて撹拌させる機構、中間容器の外部から磁石を移動させることによって容器内に配置された磁性体を移動させて中間容器内のインクを撹拌させる機構、ポンプ等を用いて中間容器内に空気を送ることにより中間容器内のインクを撹拌させる機構等が挙げられる。撹拌手段がと記のような機構を有していれば、液滴吐出装置がライン型ヘッドもしくはシリアル型ヘッドを有していることに関わらず、中間容器内のインクを撹拌することができる。
【0051】
[濃度検出器]
中間容器20には、中間容器20内の所定位置のインクの濃度を検出する濃度検出器80が設けられている。この濃度検出器80は、中間容器20内の所定位置のインクの濃度を測定することにより、中間容器20内のインクを撹拌手段により撹拌を行うか否かを判断する判断手段として機能するものである。
【0052】
このような判断手段を備えることにより、撹拌手段により撹拌するタイミングを容易に調整することができ、インク供給路30内の顔料が沈降したインクを効果的に撹拌し、濃度の安定したインクを吐出することができる。
このような濃度検出器80としては、例えば、吸光光度計を挙げることができる。吸光光度計を用いることにより、中間容器20内のインク濃度をより容易に測定することができる。
【0053】
また、液滴吐出装置100は、撹拌を行うか否かの判断に用いる情報を記憶する記憶手段(図示せず)を有している。
このような情報としては、均一に分散した状態のインク濃度を採用した場合、当該情報とインク濃度とを比較することにより、撹拌を行うか否かを迅速にかつ容易に判断することができる。
【0054】
また、撹拌を行うか否かの判断に用いる情報として、前回のインクを吐出してから経過した時間を併用することができる。このような経過時間を用いることで、どの程度撹拌を行うかをより容易に判断することができる。
なお、前回のインクを吐出してから経過した時間が短い場合には、濃度検出器80で濃度を検出するのを不要と判断し、インクの吐出を行うことができる。
【0055】
<制御手段>
本実施形態に係る液体供給装置100は、制御手段(図示せず)を有していてもよい。
制御手段は、CPUとメモリーとを有するコンピューターを利用して構成されることができ、インク容器10、キャリッジ50A、およびヘッド40を制御する機能を担う制御手段は、インク容器10からヘッド40に対するインクの供給量や供給タイミング等を制御したり、キャリッジ50Aの往復移動回数、移動速度、および移動距離等を制御したり、ヘッドから吐出されるインクの吐出タイミングや吐出量を制御したりすることができる。
【0056】
また、制御手段には、上述した撹拌を行うか否かの判断に用いる情報を記憶されており、撹拌を行うか否かの判断も行う。
また、制御手段では、中間容器20内のインクの撹拌を行う前に、ヘッド40内のインクを排出するか否かを判断し、排出すると判断した場合、排出する排出量を設定し、排出を制御することができる。これにより、インク供給路30a内において顔料の沈降が生じたインクを排出することができ、安定した濃度のインクを記録媒体に対して吐出することができる。なお、インク排出は、吸引部380によるヘッドからのインクの吸引により行なうが、ヘッドから吸引部380などに向けてインクを吐出させ行なっても良い。
【0057】
排出するか否かの判断は、例えば、前回のインクを吐出してから経過した時間情報に基づいて判断することができる。これにより、ヘッド40内のインクを排出するか否かをより容易に判断することができる。
また、制御手段には、計時手段が備えられていてもよく、液滴吐出装置100の停止時間(前回のインクを吐出してから経過した時間)等を測定することができる。この計時手段は、時間を計測することができるものであれば特に限定されず、タイマー等を用いることができる。
【0058】
《印刷命令の実行フロー》
次に、上記液滴吐出装置100の制御処理について説明する。
図4は、本実施形態に係る液滴吐出装置100の制御処理を示すフローチャートである。
制御手段は、まず、入力手段からの印刷命令の入力信号を受信したか否かの判断を行う(ステップS11)。
【0059】
制御手段において印刷命令の入力信号を受信しない場合には、液体供給装置100は、再度印刷命令の入力信号が受け付けられるまで待機状態となる(ステップSllでN)。
一方、制御手段が、入力手段からの印刷命令を受け付けると(ステップSllでY)、
インクの沈降状態の確認を行なう。具体的には、前回のインクを吐出してから経過した時間(経過時間)を確認するかあるいは中間容器20内の所定位置のインク濃度を吸光光度計により測定する(ステップS12)。
【0060】
次に、制御手段は、上記経過時間あるいはインク濃度の情報から中間容器20内のインクを撹拌するか否かを判断する(ステップS13)。なお、経過時間が短い場合には、インク濃度の測定命令を行わないようすることができる。
制御手段が撹拌を行わないと判断した場合(ステップS13でN)、ヘッド40に印刷命令を送信し、印刷を実行させる(ステップS18)。
【0061】
一方、制御手段が撹拌を行うと判断した場合(ステップS13でY)、制御手段は、前回のインクを吐出してから経過した時間(経過時間)に基づいて、ヘッド40内のインクを排出するか否かを判断する(ステップS14)。
排出しないと判断した場合(ステップS14でN)は、撹拌を行うよう命令を送信し、撹拌を実行させる(ステップS17)。
【0062】
一方、排出を行うと判断した場合(ステップS14でY)は、経過時間に基づいて排出量を設定し(ステップS15)、その設定に基づいて排出命令を送信し、排出を実行させる(ステップS16)。なお、排出量は最大でも、インク容器と中間容器を接続するインク供給路30aの容積よりも小さくすることが好ましい。
ヘッド40内のインクを排出した後に、制御手段は、撹拌命令を送信し、撹拌を実行させる(ステップS17)。
撹拌が終了した後、制御手段は、印刷命令を送信し、印刷を実行させる(ステップS18)。
【0063】
《インクジェットプリンター》
本発明に係る液滴吐出装置は、インクジェットプリンターに適用することができる。本実施形態では、液滴吐出装置100が適用されたシリアル型ヘッドを備えたインクジェットプリンター300について説明する。なお、本発明に係る液滴吐出装置をシリアル型ヘッドを備えたインクジェットプリンターに適用した例を示したが、これに限定されるものではない。本発明に係るインクジェットプリンターは、例えばライン型ヘッドを備えたインクジェットプリンターに適用してもよい
図5は、本実施形態に係るインクジェットプリンターを模式的に示す斜視図である。
【0064】
本実施形態にかかるインクジェットプリンター300は、図6に示すように、制御部360と、インク容器10と、中間容器20と、インク供給路30と、ヘッド40と、駆動部50と、給紙部70と、吸引部380と、を有する。
インク容器10、中間容器20、インク供給路30、ヘッド40、およびインクについては上記液滴吐出装置の欄で説明したので、その説明を省略する。
【0065】
制御部360は、液滴吐出装置で用いた制御手段と共用することができ、CPUとメモリーとを有するコンピューターを利用して構成されることができる。制御部360は、インク容器10、駆動部50、給紙部70、および吸引部380等を制御する機能を担う。
駆動部50は、キャリッジ50Aと、駆動ベルト50Bと、キャリッジモーター50Cと、を有する。駆動部50は、フレキシブルケーブル62を介して制御部360と接続されており、制御部360によって制御されている。
【0066】
駆動部50は、キャリッジ50Aを所定の方向MSDに往復動作させる機能を有する。具体的には、キャリッジ50Aの駆動源となるキャリッジモーター50Cの動力によって、キャリッジ50Aと接続されている駆動ベルト50Bを駆動させ、キャリッジ50Aを所定の方向MSDへ往復動作させる。
キャリッジ50Aには、上述したように、中間容器20と、ヘッド40とが搭載されている。
【0067】
記録紙Pへの印刷は、「印刷命令の実行フロー」において説明した内容と同様であるので、その説明を省略する。
ヘッド40は、液滴を吐出する複数のノズルを有することができる。また、吐出ヘッド40の液滴の吐出方法は、特に限定されるものではなく、例えば、インクジェット吐出方法を利用することができる。インクジェット吐出方法としては、従来公知の方法はいずれも使用でき、例えば、ピエゾ式インクジェット、サーマルジェット式インクジェット等を挙げることができる。
【0068】
給紙部70は、その駆動源となる給紙モーター(図示せず)と、給紙モーターの作動により回転する給紙ローラー72と、を備えている。給紙部70は、記録用紙Pを主走査方向MSDと交差する副走査方向に搬送することができる。
吸引部380は、キャップ装置382と、チューブポンプ(図示せず)と、を備える。吸引部380は、ヘッド40にキャップ装置382を接続してヘッド40の液体の吐出面を密閉した後、キャップ装置382に接続されたポンプローラー(図示せず)によってチューブ(図示せず)内の空気を排出することにより、ヘッド40内のインクを排出することができる。なお、吸引部380による吸引方法は、ヘッド40内のインクを排出できるのであれば、特に限定されるものではない。
【0069】
本実施形態に係るインクジェットプリンター300は、撹拌子15によってインクを効率よく撹拝することができる。そのため、本実施形態に係るインクジェットプリンター300は、成分組成比のばらつきの少ないインクをヘッド40から吐出することができる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
上記説明では、液滴吐出装置100をインクジェットプリンター300等の画像記録装置に適用した場合について説明したが、これに限定されず、例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射装置、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)、電気泳動ディスプレー等の電極やカラーフィルターの形成に用いられる液体材料噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機材料噴射装置としても好適に用いられる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[1]白色インク組成物の調製
下記の組成からなる白色インク組成物を調製した。
二酸化チタン(平均粒径240nm):10質量%
1,2−−キサンジオール:5質量%
グリセリン:10質量%
トリエタノールアミン:0.9質量%
BYK−348 (ビックケミ一・ジャパン株式会社製):0.5質量%
超純水:残分
合計100質量%
【0072】
[2]試験1
[2−1]吸光度測定
50mLサンプル瓶に上記白色インク組成物を入れてから、初期および所定の放置時間(経過時間)後の各時間において、ビンの上部の上澄み液の部分から1mLインクを取り出し、蒸留水を加えて100倍希釈した。次いで、分光光度計(製品名「Spectrophotometer U−3300」、株式会社日立製作所製)を用いて、希釈したインクの波長500nmにおける吸光度(abs値)を測定した。初期のインクにおける吸光度に対する各放置時間後にインクの吸光度の%を算出した。
【0073】
[2−2]白色度測定
初期および前回のインクの使用からの各経過時間において、テストパターンの印刷を行った。印刷方法は、インクジェットプリンター(製品名「PX−G930」、セイコーエプソン社製)に上記白色インク組成物を充填し、初期および所定の放置時間(経過時間)後の各時間において、1mLのインクを排出してから印刷を開始し、720×720dipの記録解像度のベタパターンを3×3cmの大きさで記録した。反射分光光度計 Spectrolino(GretagMachbeth製)で、得られベタパターンのL*値を測定した。
【0074】
[2−3]テストパターン目視評価
上記[2−2]のテストパターンを目視により、初期のインクによるテストパターンとの白さの違いが目立つものを×、目立たないものを○とし、評価した。
これらの結果を表1に示した。
【0075】
【表1】

【0076】
本ケースにおいて、表1からわかるように、経過時間(20時間)までは攪拌不要であり、これを越えると攪拌が必要であることがわかる。したがって、経過時間(20時間)を記憶手段に記憶しておき、経過時間がこれを超えたら攪拌を行う。あるいは、初期吸光度に対する吸光度73%を記憶手段に記憶しておきサブタンク濃度検出手段で検出した濃度がこれを下回ったら攪拌を行う。なお、プリンターではサブタンク内の希釈しないインクの濃度を検出するが、本試験では10倍希釈濃度であるので、希釈しないサンプルの吸光度を同様に測定し求めるか、あるいは、10倍希釈サンプルの吸光度から希釈しないインクの吸光度を計算で求めればよい。あるいは実際のサブタンクにおけるセンサー検出位置における吸光度として予め測定しておけばよい。
【0077】
[3]試験2
[3−1]白色度測定
インクジェットプリンター(製品名「PX−W8000」、セイコーエプソン社製)に、内部に撹拌子が配置されており、直径20mm、高さ65mmの円筒形状の中間容器を図5と同様に設置した。なお、撹拌子は、球体のステンレス鋼(比重7.9)であって、直径が中間容器の直径に対して95%(19mm)となるものを用いた。また、インク容器と中間容器を接続するインク供給路(図1の30aに相当)の容積は20mLであった。
【0078】
このようなインクジェットプリンターに上記白色インク組成物を充填し、初期および所定の放置時間(経過時間:25時間、30時間および35時間)後の各時間において、キャリッジを46cm/秒の速度で、23cmの距離を50回往復運動させて、中間容器内の白色インク組成物の撹拌を行った。その後、以下のA〜Dの各条件で、720×720dipの記録解像度のベタパターンを3×3cmの大きさで記録した。反射分光光度計 Spectrolino(GretagMachbeth製)で、得られベタパターンのL*値を測定した。
【0079】
A:攪拌して印刷開始直後に印刷したテストパターンの評価。ただし攪拌後に1mLだけノズルからインクを排出してから印刷。
B:Aの条件から連続してテストパターン印刷を行い、白色度が最も低下したテストパターンの評価。
C:攪拌前にノズルから5mLインクを排出してから攪拌してから1mLインクを排出して、印刷開始しテストパターンを連続印刷して、最も白色度の低いテストパターンの評価。
D:Cに準ずる条件で、排出量10mLの場合。
【0080】
[3−2]テストパターン目視評価
上記[3−1]のテストパターンを目視により、初期のインクによるテストパターンとの白さの違いが目立つものを×、目立たないものを○とし、評価した。
これらの結果を表2に示した。
【0081】
【表2】

【0082】
表2から、攪拌を行うことにより、印刷開始直後の白色度は初期のものに回復することがわかる(A)。中間容器内の沈降物が十分攪拌されるからであると考えられる。このことから、印刷量が少ない場合であれば、撹拌を行なうことで良好な白色度で印刷が可能である。一方、印刷開始してから印刷が進むにつれて、次第に白色度が低下した(B)。これはインク供給路30aにおいてインクが沈降してその上澄みインクが中間容器20内に供給されたためと考える。また、攪拌前にノズルからインクを排出してから攪拌を行ったところ、印刷が進んでも白色度の低下が少なくなった(C)。また、排出量が多いほうが白色度の低下が少なかった(D)。以上から、撹拌前にインクの排出を行なうことで、印刷開始後の、白色度が最も低下するテストパターンの白色度を、排出せずに攪拌した場合よりも高くすることができることがわかる。また、排出量を多くするほど、白色度を高くすることができることがわかる。また、必要な排出量は経過時間により変化することがわかる。これは、経過時間が長いほどインク供給路内のインクもより沈降しており、より薄い上澄みインクが中間容器に供給されるからである。また、インクの排出量は、インク容器と中間容器を接続するインク供給路の容積よりも小さくすることができた。さらにまた、印刷量が少ない場合は、経過時間が長くて本来撹拌前にインクの排出が必要な場合であっても、インクの排出を行わずに撹拌して印刷を行ない、印刷量が多い場合は、撹拌前にインクを排出してから撹拌を行い印刷することで、場合に応じた印刷を行い白色度を確保することも可能である。例えば、印刷前に、印刷データなどから、印刷量を計算して、印刷量が所定の量以下の場合はインクの排出を不要、所定の量を超える場合はインクの排出を要と判断しても良い。
【符号の説明】
【0083】
10…インク容器 15…撹拌子 20、120、220…中間容器 22…底面部 24…上面部 26…第1側面部 28、128、228…第2側面部 30、30a、30b…インク供給路 40…ヘッド 50…駆動部 50A…キャリッジ 50B…駆動ベルト 50C…キャリッジモーター 62…フレキシブルケーブル 70…給紙部 72…給紙ローラー 80…濃度検出器 100…液滴吐出装置 122、222…円筒部 300…インクジェットプリンター 360…制御部 380…吸引部 382…キャップ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を含有するインクを収容するインク容器と、
前記インクを吐出するヘッドと、
前記インク容器からヘッドへ前記インクを供給する供給路と、
前記供給路に設けられ、内部に前記インクの撹拌手段を備えた中間容器と、
前記中間容器内のインクを前記撹拌手段により撹拌を行うか否かを判断する判断手段と、を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記中間容器が搭載されたキャリッジを有し、
前記中間容器は、前記撹拌手段としての撹拌子を有し、
前記キャリッジは、所定の方向に往復動作が可能であり、
前記撹拌子が、前記キャリッジの往復動作に基づいて前記中間容器内を移動することにより、前記中間容器内のインクを撹拌する請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記撹拌を行うか否かの判断に用いる情報を記憶する記憶手段を有する請求項1または2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
撹拌を行う前に、前記ヘッド内の前記インクを排出するか否かを判断し、
排出すると判断した場合、撹拌前に前記ヘッド内のインクの排出を行なう請求項1ないし3のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記ヘッド内から前記インクを排出する排出量の設定を行ない、前記排出量は、前回のインクを吐出してから経過した時間に応じて変化する請求項4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記ヘッドからインクを排出する排出量は、前記インク容器と前記中間容器とを接続する供給路の容積よりも小さい請求項4または5に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記判断手段として、前記中間容器内の前記インクの濃度を検出する濃度検出器を有する請求項1ないし6のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記撹拌を行うか否かの判断は、前回のインクを吐出してから経過した時間を用いて行う請求項1ないし7のいずれかに記載の液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−148532(P2012−148532A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10571(P2011−10571)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】