説明

液滴塗布装置および液滴塗布方法

【課題】基板に設けられているマークの位置をマーク近傍のみでセンシングする。
【解決手段】基板3に形成されたマーク12の基板センサ9による検出位置に基づいて、センサ制御部10による光照射制御と吐出タイミング補正部11による吐出タイミング補正とを行う。したがって、基板センサ9によって、マーク12の近傍のみをセンシングすることが可能になる。さらに、マーク12の近傍のみをセンシングすることによって、描画実行中に着弾液滴等による外乱を防止することが可能になり、光照射による基板表面あるいは着弾液滴の変質や劣化を防いで基板3上のマーク12の位置を再現よく高精度に検出することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液滴吐出ヘッドによって機能液を塗布する液滴塗布装置および液滴塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、微小なインク液滴をドット状に精度よく塗布できるインクジェット方式の液滴塗布装置は、液晶表示装置のカラーフィルターや有機EL(Electro-Luminescence)表示装置の製造方法として期待されている。近年、上記液晶表示装置や有機EL表示装置の量産化が進み、画素の高精細化が望まれている。それに伴って、上記インクジェット方式の液滴塗布装置においても、基板に対する機能液滴の着弾精度を向上させるための技術が必要になってきている。
【0003】
上記インクジェット方式の液滴塗布装置において、基板位置は、基板搬送手段等に設けられたリニアエンコーダのカウント数等によって把握されるのが一般的である。しかしながら、基板の大型化に伴って、基板固定時のアライメント誤差や搬送中のヨーイング等の機械的誤差を小さくすることが困難になってきている。それだけではなく、さらなる画素の高精細化に伴って、要求される着弾精度を、基板固定時のアライメント精度や装置の動作精度のみで満足することが困難になってきている。
【0004】
これらの理由から、基板自体に設けたマーク等を検出することによって基板位置を直接検出し、着弾精度を向上させる技術が必要になってきている。
【0005】
尚、基板位置を検出してインクジェット塗布を行う技術として、基板に設けたリニアスケールの検出結果に基づいて液滴吐出タイミング補正する技術が知られている(例えば、特開2004‐337727号公報(特許文献1))。
【0006】
さらに、インクジェット方式の液滴塗布装置において用いられる機能液や液滴塗布対象基板の種類が多様化しつつあり、上述のような基板位置検出を行う上では、印刷実行時の環境や機能液あるいは基板の物性等を考慮した検出方法や検出センサが必要になってきている。上記印刷実行時における環境の問題としては、インクミストや着弾液滴等によるセンサやリニアスケールの汚染等がある。また、機能液あるいは基板の物性等の問題としては、有機ELパネル製造工程等の感光材料を機能液や基板として用いる場合における基板センシング時の光照射の抑制等がある。これらの問題に対し、インクジェット印刷実行時の環境下においても検出センサの劣化を防いで精度を保つための技術として、検出センサを印刷対象物から遮断する技術が知られている(例えば特開平4‐39045号公報(特許文献2))。
【0007】
具体的には、上記特許文献1に開示された液滴吐出装置では、基板上の非描画領域に複数のマーク列からなるリニアスケールを設けている。さらに、機能液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)を搭載したヘッドユニット上には、上記リニアスケールと対応する位置にリニアセンサが設けられている。そして、上記基板の描画領域にインクを吐出する際に、リニアスケールをリニアセンサで検出することによって、基板とラインヘッドとのずれを割り出し、このずれに基づいてインク吐出タイミングを補正することによって、高精度なインク吐出を可能にしている。
【0008】
また、上記特許文献2に開示された画像形成装置では、記録媒体上に塗布したテストパターンの濃淡を読み取るための読み取りセンサを保護筐体とシャッターとによって印刷対象物から遮断し、上記読み取りセンサがインクミストの影響を受けて劣化や精度悪化を起こすことを防止している。上記シャッターは通常閉じた状態であり、テストパターン読み取り動作の直前に開放することによって、上記読み取りセンサがインクミストに曝される時間を必要最小限にとどめることを可能にしている。これによって、インクジェット塗布装置搭載のセンサの劣化を防ぎ、マーク検出精度を高く保つことを可能にしている。
【0009】
しかしながら、上記各特許文献に開示された従来の技術では、インクジェット塗布装置において、機能液滴あるいは基板に対して、光照射による悪影響を及ぼすことなく、基板マークの位置を高精度に再現よく検出することは不可能である。
【0010】
すなわち、上記特許文献1に開示された液滴吐出装置では、基板にリニアスケールを設けてはいるが、印刷環境下においてリニアスケールにインクが付着する等によって、検出精度が悪化する問題を解決する技術が開示されてはいない。さらに、リニアスケールを描画領域内に設ける実施例も開示されてはいるものの、印刷実行時の描画領域内の検出方法については述べられてはいない。上記特許文献1を含め、一般的なリニアスケール検出手段としては光学センサが用いられている。しかしながら、例えば、光照射によって基板の親水・撥水等の表面状態の変質や機能液滴の感光等が起こりうる可能性をなくすための技術は開示されていない。
【0011】
また、上記特許文献2に開示された画像形成装置では、テストパターン印字実行と読み取りセンサによるテストパターン読み取り実行とは一連した動作である。したがって、テストパターン印字終了後、印刷対象物は読み取りセンサのポジションまで搬送され、これを受けてシャッターが開放されて読み取り動作が開始されることになる。つまり、シャッターの開閉タイミングを含めて、全ての動作は、例えばリニアエンコーダ等の搬送装置基準で行われるか、または、予め設定された所定のタイミングで行われている。すなわち、上記特許文献2に開示されている技術は、上述したような基板大面積化に伴うインクジェット高精度着弾技術における困難性など、装置精度のみでは解決できない課題には適用できるものではないと言える。それは、搬送中の基板位置を、搬送装置基準によってではなく、基板マーク基準によって把握するためには、少なくとも基板マークの検出結果に基づいた何らかの制御が必要だからである。
【特許文献1】特開2004‐337727号公報
【特許文献2】特開平4‐39045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、この発明の課題は、搬送中の基板に設けられているマークの位置をマーク近傍のみでセンシングすることによって正確に検出することができる液滴塗布装置および液滴塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、この発明の液滴塗布装置は、
複数個の液滴吐出ヘッドが配列されたヘッド保持部と、
液滴塗布の対象となる担持体を、上記ヘッド保持部に対面させると共に、上記ヘッド保持部に対して所定方向に相対的に搬送する搬送部と、
上記担持体の上記ヘッド保持部との対向面における少なくとも液滴が塗布される塗布領域の近傍に形成されたマークと、
上記ヘッド保持部に取り付けられて、上記マークを光学的に検出する検出部と、
上記検出部による上記担持体の上記塗布領域の近傍における少なくとも上記搬送方向下流側に形成された上記マークの検出結果に基づいて、上記検出部による上記担持体への光照射が上記マークが形成されている領域に対して行われるように、上記検出部による光照射の可否を制御する光照射制御部と
を備えたことを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、搬送部によって、担持体が、ヘッド保持部に対面した状態で上記ヘッド保持部に対して所定方向に相対的に搬送される。そして、上記担持体の塗布領域の近傍における上記搬送方向下流側に形成されたマークが、上記ヘッド保持部に取り付けられた検出部によって検出される。そうすると、光照射制御部によって、上記検出部による上記マークの検出結果に基づいて、上記検出部による上記担持体への光照射の可否が、上記検出部による光照射が上記マークが形成されている領域に対して行われるように制御される。
【0015】
したがって、上記担持体における上記マークが形成されていない領域に対して上記検出部によって光照射が行われることが無くなるため、上記担持体が有機ELパネルのような感光性を有する材料で構成されている場合であっても、光照射の影響による感光や劣化を最小限に抑えることができる。また、上記担持体の表面に対して親水・撥水処理パターニングが行われている場合であっても、上記担持体の表面状態に及ぼす悪影響を最小限に抑えることができる。
【0016】
また、1実施の形態の液滴塗布装置では、
上記光照射制御部は、上記検出部による上記担持体の上記塗布領域の近傍における上記搬送方向下流側に形成された上記マークの検出結果に加えて、上記搬送方向上流側に形成された上記マークの検出結果に基づいて、上記検出部による上記担持体への光照射の可否を制御するようになっている。
【0017】
この実施の形態によれば、上記検出部によって、上記担持体の塗布領域の近傍における上記搬送方向下流側と上流側とに形成されたマークが検出される。したがって、上記搬送部によって、上記担持体が上記所定方向に往復スキャンされる場合にも、スキャン開始時に上記マークを検出することができる。その場合であっても、上記担持体における上記マークが形成されていない領域に対して上記検出部による光照射が行われることは無い。
【0018】
また、1実施の形態の液滴塗布装置では、
上記マークは、上記担持体における上記塗布領域内にも形成されており、
上記光照射制御部は、上記検出部による上記担持体の上記塗布領域の近傍における上記搬送方向下流側に形成された上記マークの検出結果に基づいて、上記検出部による上記担持体への光照射が上記総てのマークが形成されている領域に対して行われるように、上記検出部による光照射の可否を制御するようになっている。
【0019】
この実施の形態によれば、上記検出部によって、上記担持体における塗布領域の近傍における上記搬送方向下流側に形成されたマークが検出される。そうすると、上記光照射制御部によって、上記検出部による上記マークの検出結果に基づいて、上記検出部による上記担持体への光照射の可否が、上記検出部による光照射が上記総てのマークが形成されている領域に対して行われるように制御される。したがって、上記マークが上記担持体の上記塗布領域内に形成されていても、上記担持体における上記マークが形成されていない領域に対して上記検出部による光照射が行われることは無い。
【0020】
また、1実施の形態の液滴塗布装置では、
上記検出部による上記マークの検出結果に基づいて、上記各液滴吐出ヘッドによる液滴吐出のタイミングを補正する吐出タイミング補正部
を備えている。
【0021】
この実施の形態によれば、上記検出部による上記マークの検出は、上記担持体の上記マークが形成されていない領域に対して光照射することなく行われる。したがって、上記担持体上の画素のバンク部や着弾液滴等による外乱の影響を無くすことができる。さらに、上記担持体が感光性を有する材料で構成されたり、上記担持体の表面に親水・撥水処理が行われたりしている場合でも、光照射の影響による感光や劣化および表面処理に及ぼす悪影響を最小限に抑えて、再現性良く高精度で行われる。したがって、吐出タイミング補正部によって、上記マークの検出結果に基づいて行われる液滴吐出のタイミング補正も、精度良く行うことができる。
【0022】
また、1実施の形態の液滴塗布装置では、
上記液滴および上記担持体の少なくとも何れか一方は、感光性を有する材料を含んでいる。
【0023】
この実施の形態によれば、上記検出部による上記マークの検出は、上記担持体の上記マークが形成されていない領域に対する光照射を行うことなく行われる。したがって、上記液滴および上記担持体の少なくとも何れか一方が感光性を有する材料を含んでいる場合でも、光照射の影響による感光や劣化を最小限に抑えて、再現性良く高精度に行うことができる。
【0024】
また、1実施の形態の液滴塗布装置では、
上記光照射制御部は、上記検出部における光照射用の電源をオンオフ制御することによって、上記光照射の可否を制御するようになっている。
【0025】
この実施の形態によれば、上記光照射制御部によって行われる上記検出部による光照射の可否の制御は、上記検出部における光照射用の電源をオンオフ制御することによって行われる。したがって、上記検出部による光照射の可否を、確実に制御することができる。
【0026】
また、1実施の形態の液滴塗布装置では、
上記検出部と上記担持体との間に配置されて、上記検出部から出射されて上記担持体に向かう光の光路を開閉するシャッターを備え、
上記光照射制御部は、上記シャッターによる上記光路の開閉を制御することによって、上記光照射の可否を制御するようになっている。
【0027】
この実施の形態によれば、上記光照射制御部によって行われる上記検出部による光照射の可否の制御は、上記検出部から出射されて上記担持体に向かう光路を開閉するシャッターの動作を制御することによって行われる。したがって、上記検出部による照射光の強度を安定に保つことが可能になる。さらに、上記シャッターによって、上記検出部を、インクミスとの飛散等の液滴塗布環境から保護することができる。
【0028】
また、1実施の形態の液滴塗布装置では、
上記検出部は、反射型の光センサである。
【0029】
この実施の形態によれば、上記検出部を反射型の光センサで構成するので、発光素子等を別に設ける必要が無く、本液滴塗布装置の簡素化を図ることができる。
【0030】
また、この発明の液滴塗布方法は、
液滴塗布の対象となる担持体における液滴吐出ヘッドが配列されたヘッド保持部との対向面に、液滴を吐出すべき位置を特定するためのマークを形成し、
上記担持体を、搬送部によって、上記ヘッド保持部に対面させると共に、上記ヘッド保持部に対して所定方向に相対的に搬送し、
上記ヘッド保持部に取り付けられた検出部によって、上記搬送されている上記担持体上の上記マークを光学的に検出し、
上記検出部による上記マークの検出結果に基づいて、光照射制御部によって、上記検出部による上記担持体への光照射が上記マークが形成されている領域に対して行われるように、上記検出部による光照射の可否を制御し、
上記検出部による上記マークの検出結果に基づいて、吐出タイミング補正部によって、上記各液滴吐出ヘッドによる液滴吐出のタイミングを補正する
ことを特徴としている。
【0031】
上記構成によれば、搬送部によって、担持体が、ヘッド保持部に対面した状態で上記ヘッド保持部に対して所定方向に相対的に搬送される。そして、上記担持体に形成されたマークが、上記ヘッド保持部に取り付けられた検出部によって検出される。そうすると、光照射制御部によって、上記検出部による上記マークの検出結果に基づいて、上記検出部による上記担持体への光照射の可否が、上記検出部による光照射が上記マークが形成されている領域に対して行われるように制御される。
【0032】
したがって、上記担持体における上記マークが形成されていない領域に対して上記検出部によって光照射が行われることが無くなるため、上記担持体上の画素のバンク部や着弾液滴等による外乱の影響を無くすことができる。また、上記担持体が有機ELパネルのような感光性を有する材料で構成されている場合であっても、光照射の影響による感光や劣化を最小限に抑えることができる。また、上記担持体の表面に対して親水・撥水処理パターニングが行われている場合であっても、上記担持体の表面状態に及ぼす悪影響を最小限に抑えることができる。
【0033】
さらに、上記検出部による上記マークの検出が再現性良く高精度で行われるので、上記マークの検出結果に基づいて吐出タイミング補正部によって行われる液滴吐出のタイミング補正も、精度良く行うことができる。
【0034】
また、1実施の形態の液滴塗布方法では、
上記担持体に対する上記マークの形成では、上記マークを複数形成するようになっており、
上記マークの検出結果に基づく上記光照射の可否の制御は、上記検出部による上記担持体の搬送方向の最も下流側に形成された上記マークの検出結果に基づいて、上記検出部による上記担持体への光照射が上記総てのマークが形成されている領域に対して行われるように、上記検出部による光照射の可否を制御するようになっており、
上記マークの検出結果に基づく上記液滴吐出のタイミングの補正は、上記担持体に形成されている総てのマークの検出結果に基づいて行われるようになっている。
【0035】
この実施の形態によれば、上記検出部によって、上記担持体における搬送方向の最も下流側に形成されたマークが検出される。そうすると、上記光照射制御部によって、上記検出部による上記マークの検出結果に基づいて、上記検出部による上記担持体への光照射の可否が、上記検出部による光照射が上記総てのマークが形成されている領域に対して行われるように制御される。したがって、上記マークが上記担持体の上記塗布領域内にも形成されている場合でも、上記担持体における上記マークが形成されていない領域に対して上記検出部による光照射が行われることは無い。
【0036】
さらに、上記担持体には複数の上記マークが形成されており、上記吐出タイミング補正部による上記液滴吐出のタイミング補正は、上記総てのマークの検出結果に基づいて行われる。したがって、上記担持体の搬送中におけるヨーイング等の誤差を補正することが可能になる。そのために、特に液晶表示装置や有機EL表示装置等の大画面の製造における着弾技術を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0037】
以上より明らかなように、この発明によれば、搬送部によって、担持体が、ヘッド保持部に対面した状態で上記ヘッド保持部に対して所定方向に相対的に搬送されると、上記担持体に形成されているマークが、上記ヘッド保持部に取り付けられた検出部によって検出され、光照射制御部によって、上記検出部による上記マークの検出結果に基づいて、上記検出部による上記担持体への光照射の可否が、上記検出部による光照射が上記マークが形成されている領域に対して行われるように制御されるので、上記担持体における上記マークが形成されていない領域に対して上記検出部によって光照射が行われることを防止できる。
【0038】
したがって、上記担持体上における上記マークが形成されていない領域での画素のバンク部や着弾液滴等による外乱の影響を無くすことができる。また、上記担持体が有機ELパネルのような感光性を有する材料で構成されている場合であっても、光照射の影響による感光や劣化を最小限に抑えることができる。また、上記担持体の表面に対して親水・撥水処理パターニングが行われている場合であっても、上記担持体の表面状態に及ぼす悪影響を最小限に抑えることができる。
【0039】
さらに、上記検出部による上記マークの検出が高精度で行われるので、上記マークの検出結果に基づいて吐出タイミング補正部によって行われる液滴吐出のタイミング補正も、精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。図1は、本実施の形態の液滴塗布装置における概略構成を示す外観斜視図である。
【0041】
図1に示すように、機能液滴を塗布するための複数の液滴吐出ヘッド1が、ヘッド保持部2に固定されている。液滴吐出ヘッド1は、アライメント装置(図示せず)によって精度良く配列され、各々の相対的位置関係が予め設定されている。上記担持体としての基板3は、上記搬送部としての基板搬送装置4に吸着固定され、ヘッド保持部2に対して所定の方向に等速搬送されて、液滴吐出ヘッド1によって液滴塗布が行われる。尚、液滴着弾対象となるのは、カラーフィルターや有機EL表示装置等の画素を形成するためのキャビティ部5であることが望ましい。
【0042】
上記搬送される基板3の位置は、基板搬送装置4に設けられたリニアスケール6の読み値によって取得される。ここで、液滴吐出ヘッド1の各ノズル7の吐出タイミングは、例えば、ダミー基板(図示せず)に対して吐出を行って着弾位置を観測装置(図示せず)によって得ることによって予め設定されており、リニアスケール6をカウントして得られるカウント数によって設定されている。尚、白抜きの矢印8は、基板3のヘッド保持部2に対する相対的搬送方向を示している。その場合、基板3に対してヘッド保持部2を搬送するように構成しても一向に構わない。
【0043】
上記ヘッド保持部2には上記検出部としての基板センサ9が取り付けられており、ヘッド保持部2の近傍には、上記光照射制御部としてのセンサ制御部10および吐出タイミング補正部11が設置されている。基板センサ9と各液滴吐出ヘッド1の各ノズル7との位置関係は、他の計測装置(図示せず)によって予め取得されている。また、搬送される基板3には、吐出タイミング補正を行うためのマーク12が形成されている。上記基板センサ9は、マーク12を検出するものであり、例えば反射率の差異によってマーク12を検出する反射型の光センサで構成するのが望ましい。
【0044】
液滴塗布動作実行中において、搬送中の基板3上のマーク12が基板センサ9によって検出された場合、基板センサ9からの検出信号はセンサ制御部10に送出され、センサ制御部10からマーク12の位置情報が吐出タイミング補正部11に送出される。そして、センサ制御部10によって、上記検出信号に基づいて、基板センサ9が光照射を行う際の照射時間および照射タイミングを制御するのである。この光照射制御方法については後述する。尚、本実施の形態では、センサ制御部10は基板センサ9の電源のオンオフを制御することによって光照射を制御する方法を用いている。また、上記位置情報は、例えばリニアスケール6のカウント数であるのが望ましい。そこで、センサ制御部10は、リニアスケール検出部(図示せず)からのリニアスケールの検出信号に基づいて、基板センサ9から上記検出信号を受けるまでのリニアスケール6のカウント数を得るようになっている。
【0045】
また、上記センサ制御部10による光照射制御に並行して、上記位置情報を受けた吐出タイミング補正部11は、各液滴吐出ヘッド1の吐出タイミング補正値を算出し、各液滴吐出ヘッド1による液滴吐出のタイミングを補正する。この液滴吐出タイミング補正方法については後述する。
【0046】
上記構成によれば、上記基板センサ9によるマーク12の検出タイミングに基づいて、センサ制御部10による光照射制御と、吐出タイミング補正部11による吐出タイミング補正とを行うことができる。したがって、センサ制御部10の光照射制御によって、基板センサ9はマーク12の近傍のみをセンシングすることが可能になる。その結果、不要な光照射を行うことが無くなり、基板3が例えば有機ELパネルのような感光性を有する材料で構成されている場合でも、光照射の影響による感光や劣化を防ぐことが可能になる。また、有機ELパネルおよびカラーフィルターの製造工程においては、基板表面に対して親水・撥水処理パターニングを行うのであるが、このような処理が行われた基板3の表面状態に及ぼす悪影響も最小限に抑えることが可能になる。
【0047】
ここで、図1に示す上記センサ制御部10では基板センサ9の電源のオンオフを制御することによって光照射を制御しているが、この発明は、これに限定されるものではない。図2は、センサ制御部10による他の光照射制御方法を示す。図2においては、基板センサ9の光照射を制御するために、機械的なシャッター13を設置している。そして、センサ制御部10は、基板センサ9からの検出信号に基づいて、基板センサ9がマーク12を検出したタイミングでシャッター13の開閉を行うのである。このシャッター13を用いた構成によれば、図1における基板センサ9の電源のオンオフ制御の場合に比して、基板センサ9による照射光の強度を安定に保つことが可能になるだけでなく、シャッター13によって基板センサ9をインクミストの飛散等の液滴塗布環境から保護することが可能になる。シャッター13の開閉タイミングについては、図1に示すセンサ制御部10の場合と同様に、マーク12の検出タイミングに基づくタイミングである。尚、光照射制御方法の詳細については後述する。
【0048】
ところで、上記シャッター13は、回動によって開閉を繰り返す機構が望ましい。例えば、シャッター13は高精度に回転可能な光透過用のスリットを有する回転盤であって、マーク12が基板センサ9の直下を通過するタイミングに合わせて上記スリットが照射光を透過させるように、センサ制御部10によって回転速度が制御されるのである。あるいは、シャッター13を開閉させるタイミングをセンサ制御部10からの電気信号で制御しても構わない。
【0049】
また、図1における上記基板センサ9の電源のオンオフ制御および図2におけるシャッター13の開閉制御に代わる構成として、例えば電界を印加することによって光の透過と遮断とを繰り返す液晶材料を用いて、基板センサ9の光照射を制御するように構成することも可能である。
【0050】
次に、上記基板3に形成されるマーク12の配置について説明する。図3に、上記光照射制御および上記吐出タイミング補正の基準となるマーク12の配置例を示す。図3において、画素を形成するキャビティ部5の集合体である1パネル分の領域(破線で囲まれた領域)を塗布領域14と定義し、白抜きの矢印の方向に液滴塗布が行われるものとする。
【0051】
図3(a)では、上記塗布領域14の近傍における塗布方向の下流側にマーク12を形成している。この場合には、マーク12の検出タイミングが、塗布領域14に対する塗布開始のタイミングとなり、基板センサ9による光照射はマーク12の検出と同時に停止される。この場合、塗布領域14は一括して1スキャンで塗布されることが望ましい。
【0052】
図3(b)では、図3(a)の場合に加えて、塗布領域14の近傍における塗布方向の上流側にもマーク12を形成している。この場合には、複数回に亘って往復スキャンが行われる場合でも、マーク12の検出タイミングによって塗布領域14に対する塗布の開始を把握することが可能になる。この場合にも、マーク12の検出と同時に基板センサ9による光照射は停止され、1スキャン終了毎に基板センサ9による光照射が開始される。
【0053】
図3(c)では、図3(b)の場合に加えて、塗布領域14内にも複数のマーク12を形成している。この場合には、各マーク12のうち一部の特定のマーク12(例えば、塗布領域14の近傍に位置するマーク12)の検出タイミングに基づいて基板センサ9による光照射の停止と開始とを制御して、総てのマーク12の近傍のみをセンシングするようにしている。このように、塗布領域14内にも複数のマーク12を形成してセンシングすることによって、上記吐出タイミング補正時において、基板3の搬送中におけるヨーイング等の誤差を補正することが可能になり、特に大画面の製造における着弾技術を向上させることが可能になるのである。
【0054】
図3(d)は、例えば、液晶表示装置のカラーフィルターや有機EL表示装置等の量産体制において、大型の基板3から複数のパネルを製造する場合を示す。この場合には、2列に配列された各塗布領域14に対して、上記図3(a)〜図3(c)のマーク形成方法の何れを適用しても、1枚の基板3に対するマーク12の配置状態は、上記図3(c)によるマーク12の配置状態と同等になる。したがって、上記図3(c)の場合と同等の光照射制御を適用することができる。このように形成されたマーク12を全て検出することによって、1スキャンで複数の塗布領域14に塗布する場合であっても、着弾精度を保持することができるのである。
【0055】
尚、上記各マーク12は、各キャビティ部5に対して予め精度良く位置決めされて設置されていることが望ましい。また、マーク12は、例えば金属膜や酸化膜や化学装飾等によって形成されることが望ましく、形成場所近傍における基板3の部分と、光反射率および透過率等の光学特性や段差等の形状特性(物理特性)等に差異を設けることが望ましい。また、画素を形成するキャビティ部5における一部のキャビティ部5(例えば、塗布領域14における塗布方向の下流側の端に位置するキャビティ部5)と他のキャビティ部5とに、光反射率や透過率および段差等による差異を設けて、上記一部のキャビティ部5をマーク12として利用することも可能である。
【0056】
次に、上記センサ制御部10による光照射制御方法について、図4〜図7に従って説明する。
【0057】
図4は、上記マーク12と基板センサ9との位置関係、および、センサ制御部10の制御内容を示す。マーク12は、基板センサ9に対して白抜き矢印8で示される主走査方向に等速で搬送される。
【0058】
図4(a)の状態では、上記基板センサ9は、上記センサ制御部10によって電源がオンされて光照射を行っており、マーク12の検出の待機状態になっている。図4(b)の状態では、基板センサ9がマーク12を検出している。マーク12が検出されると、直ちに図4(c)の状態に移行して、センサ制御部10によって基板センサ9の電源がオフされて光照射が禁止される。尚、マーク12の配置方法が上記図3(a)である場合には、これでセンサ制御部10による光照射制御は終了となる。
【0059】
互いの位置関係が既知である各マーク12に対する光照射タイミングが、内部メモリ等に予め登録されている。そして、複数のマーク12を検出する場合には、上記内部メモリ等から、センサ制御部10によって、次のマーク12に対する光照射タイミングが読み出される。そして、図4(d)の状態では、基板センサ9が次のマーク12の近傍に差し掛かって、再び基板センサ9の電源がオンされて、光照射が行われている。このような光照射制御を行うことによって、塗布領域14内におけるマーク12近傍以外の箇所で光照射が行われることはないのである。尚、上述したように、マーク12は、基準と見立てたキャビティ部5あるいはそのキャビティ部5の集合列であっても構わない。
【0060】
図5は、上記センサ制御部10によって行われる光照射制御時における基板センサ9の電源(センサ電源)のオンオフ波形と基板センサ9の出力(センサ出力)波形とを、基板搬送装置4に設けられたリニアエンコーダ6を基準として示したものである。尚、ここでは、光照射制御を基板センサ9の電源のオンオフで行う場合を示しているが、図2に示すようなシャッター13の開閉で行っても一向に構わない。
【0061】
図5(a)においては、先ず、上記センサ制御部10によって、塗布動作のスタートの合図を受けて、上記センサ電源がオンされ、第1番目のマーク12の検出待機状態に入る。ここでは、マーク12の検出は反射率の差異によって行う構成とし、上記センサ出力は基板3からの反射光の受光量を表している。ここでは、基板センサ9による受光量のピークとボトムとの中点値を、マーク12の検出を判定するための閾値と定め、この閾値を跨いだ時点におけるリニアエンコーダ6のカウント値「a」をマーク検出位置として取得するようにしている。
【0062】
こうして、上記センサ制御部10によって第1番目のマーク12検出時のリニアエンコーダ6のカウント値「a」が得られると、このカウント値「a」がマーク12の位置情報として、センサ制御部10から吐出タイミング補正部11に送られる。尚、吐出タイミング補正部11による吐出タイミング補正については後述する。以下、センサ制御部10による光照射制御について、具体的に説明する。
【0063】
上記カウント値「a」を取得したセンサ制御部10は、ある時間Tが経過した時点bにおいて、上記センサ電源をオフにする。それと同時に、センサ制御部10はマーク形成仕様データに基づいた光照射タイミングを上記内部メモリ等から読み出す。そして、この光照射タイミングに基づいて、時点aからの経過時間が所定時間Aである時点dを中心として前後時間Tの期間だけ上記センサ電源をオンする。すなわち、図5(a)における例においては、上記「所定時間A」を上記「光照射タイミング」としている。このようにして、時点cから時点fまでの光照射によって、第2番目のマーク検出位置eが取得される。以下、同様にして、時点gから時点jまでの間の光照射によって、第3番目のマーク検出位置iが取得されるのである。ここで、上記各時点を表すアルファベットは、上述したように「リニアエンコーダ6のカウント値」である。
【0064】
ここで、上記基板3の搬送中における誤差等によって、上記センサ電源のオン時間「時点c〜時点f」に対するマーク検出位置eおよび上記センサ電源のオン時間「時点g〜時点j」に対するマーク検出位置iの位置関係は前後する。したがって、マーク検出位置からの所定時間Aに基づいて得られた検出予定時点を中心に上記センサ電源のオン時間を設定する際の上記所定時間Tは、上述のようなマーク検出位置の誤差が上記センサ電源のオン時間内に含まれるように設定する必要がある。しかしながら、例えば、塗布領域14内に形成されたマーク12を検出する場合等マーク12の近傍のみを検出すべき場合には、検出予定地点の前後マージン2Tは、できるだけ小さく設定することが望ましい。
【0065】
次に、図5(b)においては、第1番目のマーク検出信号(時点a)をトリガーにして上記センサ電源をオフにすると共に、上記内部メモリ等から読み出された上記光照射タイミングである「所定時間A」に基づいて得られた検出予定時点の前マージンTによって、上記センサ電源のオン時間「時点b〜時点c」を設定している。
【0066】
この制御によれば、時点b(a+A−T)において、上記センサ電源がオンになって第2番目のマーク12の検出待機状態に入る。そして、第2番目のマーク12が検出された時点cがセンサ制御部10によって認識されると、直ちに上記センサ電源がオフされる。以下、同様に、時点d(c+A−T)で上記センサ電源がオンされ、時点eでマーク12の検出および上記センサ電源のオフが実行される。この図5(b)の場合にも、上記センサ電源のオン時点bに対するマーク検出位置cや上記センサ電源のオン時点dに対するマーク検出位置eの位置関係は前後する。しかしながら、図5(a)に示す光照射制御に比べると、前マージンTのみで上記センサ電源のオン時間が設定されるため光照射時間は約半分となり、センシング領域をよりマーク12の近傍のみに限定することが可能になる。
【0067】
以下、上述した光照射制御動作について、図6および図7に示すフローチャートに従って詳細に説明する。
【0068】
図6は、「1スキャンについて検出すべきマーク12が一つである場合」におけるセンサ制御部10による光照射制御動作を含む描画処理動作のフローチャートである。図6において、描画が開始されると、ステップS1で、基板センサ9の電源がオンされる。ステップS2で、基板3の等速搬送が開始される。ステップS3で、基板センサ9からの検出信号に基づいてマーク12が検出されると、基板3上におけるマーク検出座標(リニアエンコーダ6のカウント値)が取得される。ステップS4で、上記取得されたマーク検出座標が吐出タイミング補正部11に送出される。ステップS5で、基板センサ9の電源がオフされる。その後、引き続き描画動作が行われ、ステップS6で、基板3の等速搬送が終了されると、描画処理動作が終了する。
【0069】
尚、上記ステップS4において、マーク検出座標が吐出タイミング補正部11に送出された後のフローチャートについては後述する。また、複数のマーク12のうち、上記特定のマーク12のみを検出する場合等も、図6と同様のフローチャートによって光照射制御動作を行うことができる。また、複数回の往復走査を行う場合には、往路と復路とが切り換わる度に図6に示すフローチャートの先頭から実行するものとする。
【0070】
図7は、「1スキャンについて検出すべきマークが複数個ある場合」におけるセンサ制御部10による光照射制御動作を含む描画処理動作のフローチャートである。図7において、ステップS11で、基板センサ9の電源がオンされる。ステップS12で、基板3の等速搬送が開始される。ステップS13で、基板センサ9からの検出信号に基づいてマーク12が検出されると、基板3上におけるマーク検出座標(リニアエンコーダ6のカウント値)が取得される。ステップS14で、上記取得されたマーク検出座標が、吐出タイミング補正部11に送出される。ステップS15で、基板センサ9の電源がオフされる。
【0071】
ステップS16で、図5(a)において「所定時間A」で例示されるような「光照射タイミング」が上記内部メモリ等から読み出される。ステップS17で、上記リニアスケール6のカウント値が、上記ステップS16において読み出された「所定時間A」に基づいて得られた「次の電源オン時のカウント値」に至ったか否かを判別することによって、基板センサ9の電源の「オンタイミング」になったか否かが判別される。その結果、「オンタイミング」でない場合には、基板センサ9の電源をオフしたまま、基板3の等速搬送および描画動作が継続される。一方、「オンタイミング」に至った場合には、ステップS18に進む。
【0072】
ステップS18で、上記基板センサ9の電源がオンされる。ステップS19で、基板センサ9からの検出信号に基づいてマーク12が検出されると、基板3上におけるマーク検出座標が取得される。ステップS20で、上記取得されたマーク検出座標が、吐出タイミング補正部11に送出される。ステップS21で、リニアスケール6のカウント値が、上記ステップS16において読み出された「所定時間A」に基づいて得られた「電源オフ時のカウント値」に至ったか否かを判別することによって、基板センサ9の電源の「オフタイミング」であるか否かが判別される。その結果、「オフタイミング」でない場合には、基板センサ9の電源をオンしたまま、基板3の等速搬送および描画動作が継続される一方、「オフタイミング」に至った場合には、ステップS22に進む。ステップS22で、基板センサ9の電源がオフされる。
【0073】
ステップS23で、例えば、検出対象のマーク12として予め設定された総てのマーク12が検出されたか否かを判別することによって、1スキャンが終了したか否かが判別される。その結果、1スキャンが終了していない場合には、上記ステップS17に戻って、次のマーク12検出動作に移行する。一方、1スキャンが終了した場合には、ステップS24に進む。ステップS24で、基板3の等速搬送が終了されると、描画処理動作が終了する。
【0074】
尚、図5(b)に示すマーク検出信号をトリガーにして基板センサ9の電源をオフにする光照射制御の場合には、図7に示す描画処理動作のフローチャートのステップS19においてマーク12を検出した後直ぐに基板センサ9の電源をオフにするので、ステップS21による判断は省略することが可能である。
【0075】
また、上記「1スキャン」とは、描画動作において、「描画開始から基板3を液滴吐出ヘッド1に対して一方向に完全に搬送し終えるまで」を意味している。したがって、基板2の往復走査を行う場合には、往路と復路とが切り換わる度に図7のフローチャートの先頭から実行するものとする。
【0076】
次に、上記吐出タイミング補正部11によって行われる吐出タイミング補正処理動作について、図8に示すフローチャートに従って、詳細に説明する。図8は、吐出タイミング補正部11による吐出タイミング補正処理動作を含む描画処理動作のフローチャートであり、主に図6のフローチャートにおける上記ステップS4および図7のフローチャートにおける上記ステップS14,S20の後に続くフローチャートを示している。
【0077】
図8において、描画が開始されると、ステップS31で、予め内部メモリ等に格納されている各液滴吐出ヘッド1毎の吐出指定座標YPが取得される。尚、吐出指定座標YPは、例えばダミー基板等に吐出させ際の着弾位置を計測すること等によって事前に設定したものであり、各液滴吐出ヘッド1の各ノズル7が所望の印字を行うための吐出タイミングがマーク基準で与えられている。その後、図6および図7に示すフローチャートで説明したように、基板3の等速搬送が開始され、基板センサ9の電源がオンされ、マーク12が検出され、マーク検出座標が取得され、この取得されたマーク検出座標が吐出タイミング補正部11に送出されてくる。
【0078】
そうすると、ステップS32で、上記センサ制御部10から送出されてくるマーク検出座標に基づいて、検出されたマーク12の位置を基準として目標に着弾させるための基板マーク基準座標YMが取得される。ステップS33で、上記ステップS31において取得された吐出指定座標YPと、上記ステップS32において取得された基板マーク基準座標YMとの差分値が、補正値「D」として算出される。ステップS34で、上記算出された補正値Dによって、ステージ座標YS(すなわち、リニアエンコーダ6のカウント値)が、「YS+D」にシフトされる。ステップS35で、上記リニアエンコーダ6のカウント値(シフトされたカウント値)を取得することによって、現在のステージ座標YSが取得される。ステップS36で、上記ステップS35において取得されたステージ座標YSが、上記ステップS31において取得された吐出指定座標YPのステージ座標(つまりリニアエンコーダ6のカウント値)への換算値YP’に至ったか否かが判別される。その結果、吐出指定座標YPの上記換算値YP’に至っていない場合には、上記ステップS35に戻って次のステージ座標YSの取得に移行する。一方、吐出指定座標YPに至った場合には、ステップS37に進む。
【0079】
ステップS37で、上記各液滴吐出ヘッド1によって、ノズル7から液滴が吐出される。ステップS38で、1スキャンが終了したか否かが判別される。その結果、1スキャンが終了していない場合には上記ステップS31に戻る。一方、1スキャンが終了した場合には描画処理動作が終了する。
【0080】
尚、図8に示す描画処理動作においては、一つのマーク12が検出される毎に補正値Dが算出されて吐出タイミング補正が行われており、一つのマーク12が検出されてから次のマーク12が検出されるまでの区間は同じ補正値Dに基づいた補正が行われ、描画が行われるのである。また、本実施の形態においては、各液滴吐出ヘッド1(ノズル7)毎に設定された吐出指定座標YP(印字データ)を書き換えることなく、現在のリニアエンコーダ6のカウント値であるステージ座標YSに補正を加えるようにしている。そのため、例えば基板3の大型化等によって上記印字データが膨大になった場合でも、吐出タイミング補正処理に掛かる負担を軽減することが可能である。
【0081】
以上のように、本実施の形態においては、上記基板3に形成されたマーク12の基板センサ9による検出位置に基づいて、センサ制御部10による光照射制御と吐出タイミング補正部11による吐出タイミング補正とを行うようにしている。したがって、基板センサ9によって、マーク12の形成領域を含む極狭い領域のみをセンシングすることが可能になる。さらに、マーク12の近傍のみをセンシングすることによって、液滴塗布実行中に発生する画素のバンク部や着弾液滴等による外乱を防止することが可能になる。また、マーク12の近傍のみをセンシングすることによって、光照射による基板表面あるいは着弾液滴の変質や劣化を防ぐことができ、基板3上のマーク12の位置を再現よく高精度に検出することが可能になる。
【0082】
この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲内で種々の変更が可能であり、実施の形態中に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についてもこの発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明の液滴塗布装置における概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】図1とは異なる液滴塗布装置における外観斜視図である。
【図3】図1および図2におけるマークの配置例を示す図である。
【図4】図1におけるマークと基板センサとの位置関係およびセンサ制御部の制御内容を示す図である。
【図5】光照射制御時における基板センサの電源のオンオフ波形と基板センサの出力波形とを示す図である。
【図6】1スキャンについて検出すべきマークが一つである場合における光照射制御動作を含む描画処理動作のフローチャートである。
【図7】1スキャンについて検出すべきマークが複数個ある場合における光照射制御動作を含む描画処理動作のフローチャートである。
【図8】吐出タイミング補正処理動作を含む描画処理動作のフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
1…液滴吐出ヘッド、
2…ヘッド保持部、
3…基板、
4…基板搬送装置、
5…キャビティ部、
6…リニアスケール、
7…ノズル、
9…基板センサ、
10…センサ制御部、
11…吐出タイミング補正部、
12…マーク、
13…シャッター、
14…塗布領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の液滴吐出ヘッドが配列されたヘッド保持部と、
液滴塗布の対象となる担持体を、上記ヘッド保持部に対面させると共に、上記ヘッド保持部に対して所定方向に相対的に搬送する搬送部と、
上記担持体の上記ヘッド保持部との対向面における少なくとも液滴が塗布される塗布領域の近傍に形成されたマークと、
上記ヘッド保持部に取り付けられて、上記マークを光学的に検出する検出部と、
上記検出部による上記担持体の上記塗布領域の近傍における少なくとも上記搬送方向下流側に形成された上記マークの検出結果に基づいて、上記検出部による上記担持体への光照射が上記マークが形成されている領域に対して行われるように、上記検出部による光照射の可否を制御する光照射制御部と
を備えたことを特徴とする液滴塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴塗布装置において、
上記光照射制御部は、上記検出部による上記担持体の上記塗布領域の近傍における上記搬送方向下流側に形成された上記マークの検出結果に加えて、上記搬送方向上流側に形成された上記マークの検出結果に基づいて、上記検出部による上記担持体への光照射の可否を制御するようになっている
ことを特徴とする液滴塗布装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液滴塗布装置において、
上記マークは、上記担持体における上記塗布領域内にも形成されており、
上記光照射制御部は、上記検出部による上記担持体の上記塗布領域の近傍における上記搬送方向下流側に形成された上記マークの検出結果に基づいて、上記検出部による上記担持体への光照射が上記総てのマークが形成されている領域に対して行われるように、上記検出部による光照射の可否を制御するようになっている
ことを特徴とする液滴塗布装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の液滴塗布装置において、
上記検出部による上記マークの検出結果に基づいて、上記各液滴吐出ヘッドによる液滴吐出のタイミングを補正する吐出タイミング補正部
を備えたことを特徴とする液滴塗布装置。
【請求項5】
請求項1に記載の液滴塗布装置において、
上記液滴および上記担持体の少なくとも何れか一方は、感光性を有する材料を含んでいる
ことを特徴とする液滴塗布装置。
【請求項6】
請求項1に記載の液滴塗布装置において、
上記光照射制御部は、上記検出部における光照射用の電源をオンオフ制御することによって、上記光照射の可否を制御するようになっている
ことを特徴とする液滴塗布装置。
【請求項7】
請求項1に記載の液滴塗布装置において、
上記検出部と上記担持体との間に配置されて、上記検出部から出射されて上記担持体に向かう光の光路を開閉するシャッターを備え、
上記光照射制御部は、上記シャッターによる上記光路の開閉を制御することによって、上記光照射の可否を制御するようになっている
ことを特徴とする液滴塗布装置。
【請求項8】
請求項1に記載の液滴塗布装置において、
上記検出部は、反射型の光センサである
ことを特徴とする液滴塗布装置。
【請求項9】
液滴塗布の対象となる担持体における液滴吐出ヘッドが配列されたヘッド保持部との対向面に、液滴を吐出すべき位置を特定するためのマークを形成し、
上記担持体を、搬送部によって、上記ヘッド保持部に対面させると共に、上記ヘッド保持部に対して所定方向に相対的に搬送し、
上記ヘッド保持部に取り付けられた検出部によって、上記搬送されている上記担持体上の上記マークを光学的に検出し、
上記検出部による上記マークの検出結果に基づいて、光照射制御部によって、上記検出部による上記担持体への光照射が上記マークが形成されている領域に対して行われるように、上記検出部による光照射の可否を制御し、
上記検出部による上記マークの検出結果に基づいて、吐出タイミング補正部によって、上記各液滴吐出ヘッドによる液滴吐出のタイミングを補正する
ことを特徴とする液滴塗布方法。
【請求項10】
請求項9に記載の液滴塗布方法において、
上記担持体に対する上記マークの形成では、上記マークを複数形成するようになっており、
上記マークの検出結果に基づく上記光照射の可否の制御は、上記検出部による上記担持体の搬送方向の最も下流側に形成された上記マークの検出結果に基づいて、上記検出部による上記担持体への光照射が上記総てのマークが形成されている領域に対して行われるように、上記検出部による光照射の可否を制御するようになっており、
上記マークの検出結果に基づく上記液滴吐出のタイミングの補正は、上記担持体に形成されている総てのマークの検出結果に基づいて行われるようになっている
ことを特徴とする液滴塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−207088(P2008−207088A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45515(P2007−45515)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】