説明

液状物検出センサ、液状物検出方法及び複合材構造物の形成方法

【課題】加工が容易であるとともに、光の応答特性のバラツキの少ない液状物検出センサを提供することを目的とする。
【解決手段】光源25から供給された光を伝送する第1の光路22と、第1の光路22を伝送された光が外部へ散乱する湾曲部(光散乱部)23と、湾曲部23から進入した光を所定位置まで伝送する第2の光路24と、を備え、第1の光路22、湾曲部23及び第2の光路24は、光透過性材料から構成され、湾曲部23における外部への光の散乱量は、第1の光路22における外部への光の散乱量又は第2の光路24における外部への光の散乱量よりも多い液状物検出センサ21。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状物を検出するセンサに関するものであり、特に繊維基材に液体樹脂を真空含浸していく含浸作業中に含浸の状態を把握することのできる液状物検出センサ、液状物検出方法、さらにはそのような液状物検出センサを備えた複合材構造物の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量かつ高強度を有した材料として、FRP(Fiber Reinforced Plastic)、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)等の複合材料が、航空機の主翼、船舶、大型風車の回転翼、鉄道車両、建築分野の構造部材等をはじめとする様々な分野で多用されている。FRP、CFRP(以下、単にFRPと総称する)は、ガラス繊維やカーボン繊維等の強化繊維からなる状、あるいはマット状の強化繊維基材を型によって成形した状態で、熱硬化性樹脂等の樹脂を含浸させ、これを硬化させることで、所定形状に形成される。
【0003】
ここで、FRPによって形成した部材(以下、FRP部材)には、所定の強度が要求される。FRP部材の強度は、強化繊維基材に樹脂を確実に含浸させることで担保される。
したがって、特にFRP部材を工業的に生産する現場では、成形時に、樹脂を強化繊維基材に確実に含浸させるための工夫がなされている。このような工夫の一つとして、強化繊維基材を型上に配置し、これをバッグ材で覆った後、バッグ材と型で囲まれた空間を真空ポンプ等で吸引して減圧(負圧)とし、この空間に樹脂を導入する、真空バッグ法というものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ここで、図7を参照しつつ、真空バッグ法により大型のFRP製品を製造する手法の一例を説明する。図7に示すように、型1の上面には強化繊維基材3の積層体を設置しその上にパスメディア2が敷かれる。パスメディア2は、空隙を多数有している網または布でなるシートであり、このパスメディア2の面に沿って液体樹脂を迅速に面状に浸透・拡散させることができる。
【0005】
パスメディア2の上面のうち、中央部分には樹脂供給パイプ4が配置される。樹脂供給パイプ4には、樹脂貯留槽8に貯留された樹脂が供給される。そして、パスメディア2及び樹脂供給パイプ4を含めて強化繊維基材3の上面からバッグフィルム5が覆われる。バッグフィルム5の周縁部分と型1との間はシールされる。
【0006】
吸引パイプ6は、その先端がシールを貫通して強化繊維基材3に臨んでおり、その基端には真空吸引装置7が接続され、樹脂供給の前にバッグ内部を減圧しておく。
【0007】
樹脂含浸をする際には、真空吸引装置7を作動させたままでバック内部の減圧を保った状態で、樹脂供給パイプ4に液体樹脂を供給する。そうすると、液体樹脂は樹脂供給パイプ4からパスメディア2に供給され、パスメディア2の面に沿って迅速に面状に浸透・拡散する。このようにしてパスメディア2により面状に拡散した液体樹脂は、強化繊維基材3の上面側から含浸(真空含浸)していく。
【0008】
大型のFRP製品では、樹脂を含浸する面積が広いので、製品全体を一括して樹脂含浸をすることができない。これは、広い面積を一括して樹脂含浸をしようとすると、樹脂未含浸部が広い面積で発生したり、樹脂含浸に伴い追い出されていくガスが広い面の各所に残ったりするからである。
【0009】
したがって、未含浸部のない高品質のFRPを得るためには、液状樹脂の流動状況を把握し、樹脂の注入のタイミングを制御する必要がある。ゆえに、液状樹脂の流動状況を把握するためのセンサが高品質なFRPを得るために重要な役割を持っており、各種センサを用いて樹脂流動を検出する試みがなされてきた。
【0010】
液状の樹脂を検出するセンサの1つとして、誘電センサが知られている。図9は、誘電センサ10の構成を示す図である。誘電センサ10は、プラスチックフィルム13上に、配線11及び12を配設して構成されている。配線11は電源14の+端子に接続され、配線12は電源14の−端子に接続されている。この誘電センサ10を強化繊維基材間に配設し樹脂含浸を行うと、誘電センサ10の配線11及び12に液体樹脂が接触し、樹脂内のイオンにより回路に電流が流れるようになる。この時、回路に発生する電位差を電圧計15で検出することで、樹脂の存在を検出できる。また、樹脂の硬化に伴いイオンが減少し、電流が小さくなることを利用し樹脂の硬化状況を検出することもできる。
しかし、誘電センサ10は、所定の面積を有するフィルム状のものであるため樹脂含浸の障害となる。また、導電性を有するカーボン強化繊維基材間に配設すると、回路が短絡する虞があった。
【0011】
以上の問題を有しない液状物検出センサが特許文献2に開示されている。この液状物検出センサは、光を出射する出射面を先端、もしくは先端の近傍に有する第1の光ファイバと、該第1の光ファイバから出射された光を受光する入射面を先端、もしくは先端の近傍に有する第2の光ファイバから構成される。この液状物検出センサは、線径の小さい光ファイバを用いているため、強化繊維基材間に配設しても、樹脂含浸の阻害はほとんどない。また、光の応答を用いているので、カーボン強化繊維基材への使用も問題がない。
この液状物検出センサは、第1の光ファイバの出射面と第2の光ファイバの入射面の間に樹脂が存在しない場合、第1の光ファイバから放出された光は、第2の光ファイバに入射することはないが、樹脂が存在する場合、屈折率の変化により第2の光ファイバにも光が入射し、樹脂の存在が検出できるというものである。
しかし、特許文献2の液状物検出センサは、第1の光ファイバの出射面、第2の光ファイバの入射面を精密に加工することは容易ではない。特に、この液状物検出センサにおける光の反射は、出射面を加工する際に意図せず作製された突起によるものであり、光の応答特性のバラツキがあり、液状物の検出信頼性が不十分である。光の応答特性を制御するために、突起の形状を所望の形状に加工することもまた容易ではない。
【0012】
本願出願人も樹脂含浸センサを特許文献3において提案しているが、この樹脂含浸センサは、目視により樹脂含浸を検出するものであり、また構造が複雑である。
【0013】
【特許文献1】特開2003−11136号公報
【特許文献2】特開2001−27678号公報
【特許文献3】特開2004−203021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、加工、製作が容易であるとともに、光の応答特性のバラツキの少ない液状物検出センサを提供することを目的とする。また、本発明は、そのような液状物検出センサを用いた、液状物検出方法を提供する。さらに本発明は、そのような液状物検出センサを用いながら、FRP等の複合材構造物を形成する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる目的のもと、本発明の液状物検出センサは、光源から供給された光を伝送する第1の光路と、第1の光路を伝送された光が外部へ散乱する光散乱部と、この光散乱部から進入した光を所定位置まで伝送する第2の光路と、を備える。そして、第1の光路、光散乱部及び第2の光路は、光透過性材料からなる一体の線状材から構成され、光散乱部における外部への光の散乱量は、第1の光路における外部への光の散乱量又は第2の光路における外部への光の散乱量よりも多いことを特徴としている。
本発明の液状物検出センサにおいて、光散乱部の周囲を取り囲む物質が大気である場合と、液状物である場合とで、外部への光の散乱量が相違する。この性質を利用して本発明の液状物検出センサは、液状物の存在を検出する。光散乱部における外部への光の散乱量を、第1の光路における外部への光の散乱量又は第2の光路における外部への光の散乱量よりも多くすることにより、大気と液状物である場合の外部への光の散乱量の相違を明確にすることができる。
【0016】
本発明の液状物検出センサは、第1の光路、光散乱部及び第2の光路を、一体の線状材から構成することができるので、加工、作製が容易である。例えば、光透過性材料から構成される一本の線状材を所定位置で折り曲げるという簡単な工程により、本発明の液状物検出センサを作製することができる。折り曲げられた部分が光散乱部を構成し、折り曲げられた部分を境界とする一方の直線状部分が第1の光路を、他方の直線状部分が第2の光路を構成する。また、折り曲げられた構成の液状物検出センサは、光散乱部が、第1の光路と光の伝送方向が相違することになる。このように、光の伝送方向が相違することを利用して、外部への光の散乱を促進する。さらに、折り曲げの角度を制御することは容易であり、また、外部への光の散乱量は折り曲げの角度によって特定することができるので、本発明による液状物検出センサは、光の応答特性のバラツキを低減することができる。
【0017】
光透過性材料から構成される一本の線状材を略180°折り曲げた場合には、第1の光路と第2の光路とが略平行に併設されることになる。この形態によれば、光散乱部における外部への光の散乱を十分に確保することができる。
【0018】
本発明の液状物検出センサにおいては、第1の光路及び第2の光路は、遮光性材料あるいは光路となる材料よりも屈折率の小さい透過性の材料でその表面を被覆することが好ましい。第1の光路及び第2の光路は、光を伝送することが目的であり、外部への光の散乱を防止することが、光散乱部との光の散乱量の相違を明確にする上で好ましいからである。
なお、以上の「折り曲げ」は、直線状のものを加工することを一応想定しているが、例えば、射出成形により当初より折り曲げられた形態のものを作製することも可能であり、本発明はこのような形態をも包含する。
【0019】
本発明は、液状物の存在をセンサで検出する方法を提供する。この液状物検出方法は、センサが、光透過性材料から構成され、直線状の第1の光路と、第1の光路に連設される湾曲部と、湾曲部に連設される直線状の第2の光路を備えている。そして、このセンサの第1の光路に所定強度の光を供給しつつ、第2の光路から出射される光の強度の変動をモニタリングすることにより液状物の存在を検出することができる。
【0020】
本発明の液状物検出方法は、1つの上記センサを用いて液状物の存在を検出することができるが、複数のセンサを所定間隔で配置し、各センサにおける光の強度の変動をモニタリングすることにより、液状物が所定位置に順次到達しているか検出することができる。
【0021】
本発明をFRPの形成に適用し、強化繊維と樹脂を含む複合材で所定形状の複合材構造物を形成する新規な方法が提供される。この方法は、複合材構造物に対応した形状を有する型の表面に強化繊維基材を沿わせた状態で、強化繊維基材を、気密性を有する気密シートで覆い、気密シートの外周部を型に対して気密にシールするとともに成形領域を形成する工程と、気密シート内の成形領域を減圧する工程と、成形領域に樹脂を注入し、強化繊維基材に樹脂を含浸させる工程と、を備え、樹脂を含浸させる工程において、成形領域であって樹脂の含浸方向に配置した複数の樹脂検出センサにより樹脂の含浸状況をモニタリングし、樹脂検出センサは、光透過性材料から構成され、第1の光路と、第1の光路に連設される湾曲部と、湾曲部に連設される第2の光路を備え、第1の光路に所定強度の光を供給しつつ、第2の光路から出射される光の強度の変動により樹脂の含浸状況をモニタリングすることを特徴とする。
以上の複合材構造物の形成方法は、樹脂の含浸方向に複数の樹脂検出センサを配置しているため、樹脂の含浸が適正に進行しているか把握することができる。しかも、樹脂検出センサは、第1の光路と、第1の光路に連設される湾曲部と、湾曲部に連設される第2の光路からなる極めて簡易な構成であるとともに、光を利用したセンサであるため、誘電センサとは異なり強化繊維基材が導電性を有する炭素繊維から構成されていても適正に樹脂の含浸状況を把握することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、加工が容易であるとともに、光の応答特性のバラツキの少ない液状物検出センサが提供される。この液状物検出センサは、線状材から構成することができるので、樹脂含浸を阻害する程度が誘電センサに比べて著しく低い。また、本発明の液状物検出センサは、光を用いるものであるため、カーボン繊維に対して電気的な短絡を起こすことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における液状物検出センサ21を含む液状物検出装置20の概略構成を示す図である。図1に示すように、液状物検出装置20は、液状物検出センサ21と、液状物検出センサ21に対して光を供給する光源25と、液状物検出センサ21を伝送された光を受光してその強度を検出する光検出器26とを備えている。
【0024】
液状物検出センサ21は、アクリルファイバから構成されている。このアクリルファイバの一方端から供給された光は、アクリルファイバ外へ散乱し、あるいは減衰するものの、他方端から出射される。アクリルファイバ外への光の散乱度合いは、アクリルファイバを取り囲む環境によって異なる。本実施の形態による液状物検出センサ21は、この性質を利用して液状物、例えば液状樹脂の存在を検出するものである。
【0025】
液状物検出センサ21は、第1の光路22、湾曲部(光散乱部)23及び第2の光路24という3つの部分から構成される。第1の光路22、湾曲部23及び第2の光路24は一体のアクリルファイバを曲げ加工により形成されている。
第1の光路22は、光源25から供給された光を湾曲部23まで伝送させる部分である。第1の光路22は、図1に示すように、直線状に延在している。したがって、第1の光路22を伝送される光の外部への散乱は少ない。第1の光路22は曲がっていてもよいが、光の散乱が少ない直線状の方が液状物検出にとっては有利である。
【0026】
第1の光路22を伝送されてきた光は湾曲部23に進入する。湾曲部23に進入した光は、湾曲部23内を伝送されるが、湾曲部23を構成するアクリルファイバの外周面で反射する成分、外部へ散乱する成分がある。本実施の形態による液状物検出センサ21は、外部へ意図的に光を散乱させるために湾曲部23を設けている。前述したように、湾曲部23における光の散乱の度合いは、湾曲部23の周囲に存在する物質によって変動する。
【0027】
湾曲部23を伝送された光は、第1の光路22と平行に配置されている第2の光路24に進入する。第2の光路24に進入した光は、第2の光路24を伝送され、光検出器26に供給される。第2の光路24も直線状であることから、伝送過程における光の外部への散乱は湾曲部23に比べて少ない。光検出器26としてはフォトダイオード等の光電変換素子を用いることができ、この光検出器26は、第2の光路24から照射された光の強度に応じた電圧を検出することができる。
【0028】
次に、液状物検出センサ21による液状物の検出原理を図2に基づいて説明する。
図2の上段は湾曲部23の周囲が大気の場合を示し、図2の下段は湾曲部23の周囲が液状物の場合を示している。以下説明するように、両者には第2の光路24を伝送される光の強度に差異がある。
図2の上段及び図2の下段ともに、第1の光路22を伝送され、かつ湾曲部23に進入した光の強度は同じものとする。図2の上段及び図2の下段において、湾曲部23内を伝送される光の一部は湾曲部23から外部へ散乱する。この外部への光の散乱は、周囲が大気の場合の図2の上段に比べて、湾曲部23の周囲が液状物である図2の下段の方が、湾曲部23の外表面における屈折率の関係で多くなる。したがって、第2の光路24を伝送される光の強度は、周囲が大気の図2の上段が相対的に大きく、湾曲部23の周囲が液状物の図2の下段は相対的に小さくなる。
したがって、周囲が大気の状態から液状物に変わると、光検出器26で出力される電圧は低くなる。この電圧の変化により、液状物検出装置20は、液状物の存在を検出することができる。
【0029】
液状物検出装置20が検出対象とする液状物は限定されない。前述したFRP作製のために用いられる液状の樹脂は勿論、液体、ゲル状物、スラリ等を広く包含する。また、樹脂としては、エポキシ、不飽和ポリエステル、フェノール、ビニルエステルなどの熱硬化性樹脂や、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂、および熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を混合したものなどをいう。
液状物が固化するものの場合には、その固化の状況を把握することができる。例えば、樹脂が液状態から硬化完了するまでの過程においては、樹脂の硬化に伴い樹脂の屈折率が変化するため、検出される光の強度が変化する。この光強度の変化を測定することで、樹脂の硬化状況を把握できるのである。
【0030】
以上の液状物検出センサ21は、アクリルファイバを略180°だけ折り曲げて作製しているが、本発明はこの形態に限定されない。前述したように、湾曲部23は外部への光の散乱を促進させるために設けたものであるから、第1の光路22に比べて外部への光の散乱を促進させることができる形態であれば、加工・作製が可能である限り、本発明は許容する。例えば図3(a)に示す形態とすることもできる。すなわち、図3(a)の液状物検出装置30は、前述した液状検出装置20と同様に、光源35から供給される第1の光路32、第1の光路32を伝送される光が進入する湾曲部(光散乱部)33、湾曲部33を伝送される光が進入する第2の光路34から構成される液状物検出センサ31、及び第2の光路34を伝送される光が供給される光検出器36を備え、湾曲部33がアクリルファイバをおよそ90°だけ曲げ加工することにより構成されている。
【0031】
また、以上の液状物検出センサ21は、第1の光路22、第2の光路23が平行に併設されており、光源25及び光検出器26を併設させることができるが、図3(b)に示す形態とすることもできる。すなわち、図3(b)の液状物検出装置40は、前述した液状検出装置20と同様に、光源45から供給される第1の光路42、第1の光路42を伝送される光が進入する湾曲部(光散乱部)43、湾曲部43を伝送される光が進入する第2の光路44から構成される液状物検出センサ41、及び第2の光路44を伝送される光が供給される光検出器46を備え、湾曲部43がアクリルファイバを1回転捩る、つまり360°曲げ加工することにより構成されている。
その他、湾曲部は楕円形、多角形等の形態であっても本発明は機能する。
【0032】
以上の液状物検出センサ21は、アクリルファイバにより構成された例を示したが、第1の光路22、湾曲部23及び第2の光路24は、光を伝送可能なものであれば如何なる材料を用いることができる。例えば、光ファイバにより液状物検出センサを構成することができる。その例を図4に示してある。図4に示す液状物検出センサ51は、その基本的構成は液状物検出センサ21と同じである、つまり、液状物検出センサ51は、光源から供給される光を受光する第1の光路52、第1の光路52を伝送される光が進入する湾曲部(光散乱部)53、湾曲部53を伝送される光が進入する第2の光路54を備えている。液状物検出センサ51は第1の光路52、湾曲部53及び第2の光路54が光ファイバから構成されている。光ファイバは、コアとコアの周囲を被覆する外層とから構成されており、この外層は光を透過しない。そこで、この実施の形態では、湾曲部53の一部について外層を剥いでいる。したがって、液状物検出センサ51は、第1の光路52がコア52a及びその周囲を被覆する外層52b、第2の光路54がコア54a及びその周囲を被覆する外層54bから構成される。また、湾曲部53は、コア53aと、その周囲の一部を被覆する外層53bとから構成されている。湾曲部53の中で外層53bが存在しない領域で光の外部への散乱が生じる。
なお、外層については、これを除去しなくても湾曲させることで光ファイバの外層としての機能、すなわち光をファイバ内に反射させ外に出さないようにする機能を失う場合には外層を取り除かなくても良い。
光ファイバは、アクリルファイバよりも光伝送時の光の減衰が小さいため、液状物検出センサ51を長尺とする場合に有利である。なお、アクリルファイバ等のように周囲に被覆が存在しないものを用いる場合に、塗料等で被覆することが光の減衰を低減するために有効である。
【0033】
<第2実施形態>
さて、以上説明した液状物検出センサ21、31、41、51は、1本のアクリルファイバ又は光ファイバ(以下、光透過ファイバと総称することがある)で、1つのセンサを構成しているが、図5に示すように、複数のセンサを備えた液状物検出センサ61とすることもできる。
液状物検出センサ61は、センサ部62、63、64、65及び66と5つのセンサ部を備えている。センサ部62は、第1の光路62a、湾曲部62b及び第2の光路62cとから構成されている。
同様に、センサ部63は、第1の光路63a、湾曲部63b及び第2の光路63cとから構成されている。センサ部64は、第1の光路64a、湾曲部64b及び第2の光路64cとから構成されている。センサ部65は、第1の光路65a、湾曲部65b及び第2の光路65cとから構成されている。センサ部66は、第1の光路66a、湾曲部66b及び第2の光路66cとから構成されている。
【0034】
図示しない光源から第1の光源62aに対して光が供給され、かつ供給された光は第1の光路62aを伝送されて湾曲部62bに進入する。湾曲部62bを伝送された光は、第2の光路62cに進入し、かつ第2の光路62cを伝送される。
センサ部62の第2の光路62cを伝送された光は、センサ部63の第1の光路63aに進入する。第1の光路63aに進入した光は第1の光路63aを伝送されて湾曲部63bに進入する。湾曲部63bを伝送された光は、第2の光路63cに進入し、かつ第2の光路63cを伝送される。
センサ部63の第2の光路63cを伝送された光は、センサ部64の第1の光路64aに進入する。第1の光路64aに進入した光は第1の光路64aを伝送されて湾曲部64bに進入する。湾曲部64bを伝送された光は、第2の光路64cに進入し、かつ第2の光路64cを伝送される。
以後、光源から供給された光は順次センサ部65及び66を伝送されて、センサ部66の第2の光路66cを介して図示しない光検出器に供給される。
【0035】
以上の液状物検出センサ61において、センサ部62〜66の湾曲部62b〜66bが液状物で囲まれたときに、各湾曲部62b〜66bにおける光の外部への散乱量が相違するように設定しておく。例えば、液状物で囲まれたときの湾曲部62bにおける光の外部への散乱量をS62とすると、湾曲部62b〜66bにおける液状物で囲まれたときの光の外部への散乱量を、湾曲部63bをS63、湾曲部64bをS64、湾曲部65bをS65、湾曲部66bをS66となるように湾曲部62b〜66bを構成する。ただし、S62≠S63≠S64≠S65≠S66である。このように、湾曲部62b〜66bにおける光の外部への散乱量を相違させるには、湾曲部62b〜66bの光路長を相違させればよい。または、湾曲部62b〜66bを塗料にて被覆し、かつ被覆する面積を相違させることによっても液状物で囲まれたときの光の外部への散乱量を相違させることができる。
【0036】
いま、湾曲部62b〜66bの全てがその周囲が大気で囲まれているときに、所定強度の光を第1の光路62aに対して投入して第2の光路66cから図示しない光検出器に対して供給される光の強度をLとする。このような前提の下で、湾曲部62bのみが液状物で取り囲まれたとすると、光検出器に対して供給される光の強度は、L−S62となる。また、湾曲部64bのみが液状物で取り囲まれたとすると、光検出器に対して供給される光の強度は、L−S64となる。さらに、湾曲部63b及び65bが液状物で取り囲まれたとすると、光検出器に対して供給される光の強度は、L−S63−S65となる。したがって、光検出器で検出した光の強度がL−S62であれば、湾曲部62bの位置まで液状物で到達したと、光検出器で検出した光の強度がL−S64であれば、湾曲部64bの位置まで液状物で到達したと判断することができる。さらに、光検出器で検出した光の強度がL−S63−S65であれば、湾曲部63bの位置及び湾曲部65bの位置まで液状物で到達したと判断することができる。
【0037】
以上の通りであり、液状物検出センサ61は、同一平面状の異なる位置における液状物の到達状況を検出することができる。しかもこの液状物検出センサ61は、光源及び光検出器を各々一台用意するだけで、同一平面状の異なる位置における液状物の到達状況を検出することができる利点がある。
【0038】
<第3実施形態>
第3実施形態は、液状物検出センサの具体的用途を示すものである。
本発明は、前述したように、樹脂の含浸状態を検出することを目的としてなされたが、液状物検出センサは、樹脂の含浸状況の検出のみならず、広く液状物の検出に適用することができる。
例えば、図7は、真空バッグ法に用いる樹脂の水位検出に用いた例を示している。すなわち、含浸に用いられる樹脂を溜めておく樹脂貯留槽8内の所定高さに液状物検出センサ21を設置しておく。
真空ポンプ7でバッグフィルム5内を減圧しつつ、樹脂貯留槽8内の溶融樹脂をバッグフィルム5内に含浸させると、樹脂貯留槽8内の溶融樹脂が消費される。液状物検出センサ21により、溶融樹脂の液面の変動を検出する。液面の変動の検出は、光検出器26で検出される光強度の変動をモニタリングすることにより把握することできる。液面の変動の検出をすることにより、樹脂貯留槽8内の溶融樹脂の量が一定となるように、図示しない樹脂供給装置から溶融樹脂を樹脂貯留槽8内に供給する。そうすることにより、バッグフィルム5内への樹脂の含浸を安定して行うことができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。この実施例は、図1に示す形態の液状物検出センサ21を用いて、真空バッグ法による強化繊維基材からなる積層体の樹脂含浸状況を検出し、さらに含浸された樹脂の硬化状況を検出するものである。
図6に示すように、バッグフィルム5で覆われた300×600×5(mm)のガラス強化繊維基材3(積層枚数5枚)の上面に、液状物検出センサ21を100mm間隔で設置し、図6の右側から樹脂を流入させた時の各点における樹脂到達時間を測定した。このとき、液状物検出センサ21の湾曲部(光散乱部)23が、ガラス強化繊維基材3の幅方向中央部に位置するように配置した。各液状物検出センサ21には、第1の光路22に光を供給する光源25が、また第2の光路24から出射される光の強度を検出する光検出器26が付随している。そして、樹脂の含浸の開始と同時に各液状物検出センサ21の第1の光路22に対して光源25から光を供給し、かつ第2の光路24から出射した光の強度を光検出器26でモニタリングした。
【0040】
なお、液状物検出センサ21は、φ2mm、長さ800mmのアクリルファイバを図1に示す形状に加工した。光源25および光検出器26には光源検出器一体型のアンプユニット(キーエンス製FS−12RM)を使用した。液状物検出センサ21を接続し、大気中での光量を測定したところ、デジタル表示で1200であった。
各液状物検出センサ21の湾曲部23の近傍に誘電センサを設置し、液状物検出センサ21と誘電センサの2種類のセンサにて樹脂の含浸及び硬化状況をモニタリングした。その結果を図8に示す。なお、図8は、複数のセンサのうちの1つについて示している。実際は、図8に示す線図がセンサの数だけ時間差で得られる。
【0041】
図8(b)に示すように、誘電センサでは、樹脂が接触することにより電流が流れ、電圧が発生すし、樹脂の硬化進行に伴って電圧が小さくなる。樹脂の硬化が完了すると電圧は0になることが知られている。
一方、図8(a)に示すように、液状物検出センサ21において、光検出器26で計測される光量の履歴は、誘電センサからの電圧の履歴とリンクする。つまり、樹脂の含浸により光検出器26から計測される光量が最初に低下を開始した時点で、液状物検出センサ21に含浸された樹脂が接触することがわかる。これは、湾曲部23が樹脂に接触することにより、外部への光の散乱量が増加するからである。その後、従い光検出器26から計測される光量は徐々に低下するが、これは樹脂の硬化が進行していることを示している。光量が一定になると、樹脂の硬化が完了したことを示している。以上のように、アクリルファイバを用いて作製された液状物検出センサ21においても、誘電センサの電圧変化と同時期に光量の変化が検出された。したがって、液状物検出センサ21における光強度の変化は、樹脂との接触及び硬化に伴うものであり、液状物検出センサ21の有効性が確認された。また、複数の液状物検出センサ21を配置することにより、所定領域内における樹脂含浸及び樹脂硬化の進行状況を把握することができる。なお、光源25から液状物検出センサ21に対して供給した光に対して、光検出器26で受光した光の強度は、樹脂の含浸状態で17%であった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態の液状物検出装置の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の液状物検出装置の検出原理を説明するための図である。
【図3】第1実施形態の変形例を示す図である。
【図4】第1実施形態の他の変形例を示す図である。
【図5】第2実施形態の液状物検出センサの構成を示す図である。
【図6】実施例における樹脂含浸検出方法を示す図である。
【図7】第3実施形態における真空バック法により樹脂含浸をする含浸装置を示す図である。
【図8】実施例における樹脂の検出結果を示すグラフである。
【図9】誘電センサを示す図である。
【符号の説明】
【0043】
20…液状物検出装置、21,31,41,51,61…液状物検出センサ、22,32,42,52…第1の光路、23,33,43,53…湾曲部(光散乱部)、24,34,44,54…第2の光路、25…光源、26…光検出器、62,63,64,65,66…センサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から供給された光を伝送する第1の光路と、
前記第1の光路を伝送された光が外部へ散乱する光散乱部と、
前記光散乱部から進入した光を所定位置まで伝送する第2の光路と、
を備え、
前記第1の光路、前記光散乱部及び前記第2の光路は、光透過性材料からなる一体の線状材から構成され、
前記光散乱部における外部への光の散乱量は、前記第1の光路における外部への光の散乱量又は前記第2の光路における外部への光の散乱量よりも多いことを特徴とする液状物検出センサ。
【請求項2】
前記第1の光路と前記第2の光路とが略平行に併設されていることを特徴とする請求項1に記載の液状物検出センサ。
【請求項3】
前記第1の光路及び前記第2の光路は、遮光性材料でその表面が被覆されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液状物検出センサ。
【請求項4】
前記光散乱部は、前記第1の光路と光の伝送方向が相違することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液状物検出センサ。
【請求項5】
液状物の存在をセンサで検出する方法であって、
前記センサは、
光透過性材料から構成され、直線状の第1の光路と、前記第1の光路に連設される湾曲部と、前記湾曲部に連設される直線状の第2の光路を備え、
前記第1の光路に所定強度の光を供給しつつ、前記第2の光路から出射される光の強度の変動をモニタリングすることを特徴とする液状物検出方法。
【請求項6】
複数の前記センサを所定間隔で配置し、前記各センサにおける光の強度の変動をモニタリングすることを特徴とする請求項5に記載の液状物検出方法。
【請求項7】
強化繊維と樹脂を含む複合材で所定形状の複合材構造物を形成する方法であって、
前記複合材構造物に対応した形状を有する型の表面に強化繊維基材を沿わせた状態で、前記強化繊維基材を、気密性を有する気密シートで覆い、前記気密シートの外周部を前記型に対して気密にシールするとともに成形領域を形成する工程と、
前記気密シート内の前記成形領域を減圧する工程と、
前記成形領域に樹脂を注入し、前記強化繊維基材に前記樹脂を含浸させる工程と、を備え、
前記樹脂を含浸させる工程において、前記成形領域であって前記樹脂の含浸方向に配置した複数の樹脂検出センサにより前記樹脂の含浸状況をモニタリングし、
前記樹脂検出センサは、光透過性材料から構成され、第1の光路と、前記第1の光路に連設される湾曲部と、前記湾曲部に連設される第2の光路を備え、
前記第1の光路に所定強度の光を供給しつつ、前記第2の光路から出射される光の強度の変動により前記樹脂の含浸状況をモニタリングすることを特徴とする複合材構造物の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−218653(P2007−218653A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37659(P2006−37659)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】