説明

液状皮膚外用剤

【課題】N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンを配合した(1)使用時の肌のつっぱり感のなさ、(2)使用後の肌柔軟性について優れた皮膚外用剤を提供することを目的とするものである。
【解決手段】次の成分(a)(b);(a)N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン、(b)2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび/または2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール配合する液状皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状皮膚外用剤に関し、さらに詳細にはN−アセチル−L−ヒドロキシプロリンを安定に配合し、使用時のつっぱり感の低減、使用後の肌柔軟性に優れた液状皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、加齢、紫外線曝露等により生じる皮膚のしわやたるみ、張りや弾力性の低下等の皮膚の老化が問題となっている。この皮膚の老化を予防、あるいは改善するために、ビタミンA、大豆抽出物、海藻抽出物等の細胞賦活剤等が加えられている。(特許文献1参照)しかしながら、これらの細胞賦活剤を有する成分では、老化防止効果が充分でなかったり、あるいは、化粧料中で分解など変質して所期の薬効が得られない場合があり、その改善が望まれていた。
【0003】
最近の研究から、皮膚保湿や老化に有効な物質として、繊維芽細胞のコラーゲン合成を促進したり、表皮の水分保持機能を向上させる物質としてN−アセチル−L−ヒドロキシプロリンが見出されている。(特許文献2参照)
【特許文献1】特開平10−182411号公報(第1頁〜第9頁)
【特許文献2】国際公開第WO00/51561号パンフレット(第1頁〜第39頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンは強酸性の物質であり、皮膚外用剤に配合する場合、適当な塩基性物質で中和する必要がある。しかしながら、一般的な中和剤である水酸化ナトリウムや水酸化カリウムといったアルカリ金属の水酸化物を用いた場合、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン金属塩による、使用時の肌のつっぱり感などが生じる場合があった。また、肌に塗布した後の肌の柔軟性も十分なものではなかった。このような欠点を補うために油分や水溶性高分子を配合し、使用時のつっぱり感や使用後の肌柔軟性を改善する検討がなされている。しかし、油分や水溶性高分子を配合できない低粘性の液状の皮膚外用剤においては、これらの欠点を解決する手段は見出されていなかった。
【0005】
そこで本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンの中和剤として、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび/または2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールを用いることにより、低粘性の液状皮膚外用剤において、使用後の肌のつっぱり感がなく、後肌の柔軟性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、成分(a)N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンと成分(b)2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび/または2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールを配合することを特徴とする液状皮膚外用剤である。また成分(a)の配合量が0.1〜5質量%であり、成分(b)の配合量が0.05〜3質量%であることを特徴とする液状皮膚外用剤、更に成分(a)と成分(b)の配合質量比(a)/(b)が1〜20であることを特徴とする液状皮膚外用剤、更に油分の配合量が0.5%以下であることを特徴とする液状皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンを配合する、油分や水溶性高分子を多量に配合しない低粘性の液状皮膚外用剤において、使用時の肌のつっぱり感を軽減させ、皮膚の柔軟性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の構成について詳細に説明する。
本発明に用いられる成分(a)のN−アセチル−L−ヒドロキシプロリンは保湿や老化防止などの効果を目的として配合されるものである。N−アセチル−L−ヒドロキシプロリンはコラーゲンやエラスチンの構成アミノ酸の一種として自然界に広く存在するアミノ酸であるヒドロキシプロリンのN−アセチル誘導体であり国際公開第00/51561号パンフレットに記載されている製造方法等で製造することができる。
【0009】
本発明の液状皮膚外用剤における成分(a)の配合量は、特に限定されるものではないが、0.01〜10質量%(以下%と略す)が好ましく、さらに好ましくは0.1〜5%である。この範囲にあると保湿や老化防止効果に優れ、良好な経時安定性が得られることから好ましい。
【0010】
本発明に用いられる成分(b)の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび/または2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールは、成分(a)の部分中和または完全中和を目的とし配合するものであり、成分(a)を配合した皮膚外用剤の使用時の肌のつっぱり感を軽減させ、皮膚の柔軟性を向上させて安定に配合させる成分である。
【0011】
本発明の液状皮膚外用剤における成分(b)の配合量は0.01〜10%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜1%である。この範囲にあると、肌のつっぱり感を軽減させ、皮膚の柔軟性を向上させられることから好ましい。
【0012】
本発明の液状皮膚外用剤において成分(a)による肌のつっぱり感の軽減と、皮膚の柔軟性の向上の観点から、成分(a)と成分(b)の配合質量比(a)/(b)が1〜20であることが好ましく、更に好ましくは1〜10である。この範囲であれば、肌のつっぱり感を軽減させ、皮膚の柔軟性の向上させられることから好ましい。
【0013】
本発明の液状皮膚外用剤には、油分を配合することができるが、油分の配合量は0.5%以下が好ましく、0.3%以下がより好ましい。油分の配合量を0.5%以下にすることにより、皮膚外用剤の粘性を低く保つことができるので、使用時ののび広がりが良好となる。本発明に配合することができる油分は、通常の化粧料に使用されるものであれば、天然系油であるか、合成油であるか、或いは、半固体、液体であるか等の性状は問わず、炭化水素類、ロウ類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル油、シリコーン油類、フッ素系油類等を使用することができる。例えば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類、トリ2−エチルヘキサン酸セチル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット等の合成エステル油、オリーブ油、ヒマシ油、ホホバ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、杏仁油、パーシック油、サフラワー油、ヒマワリ油、アボガド油、メドゥホーム油、ツバキ油、アーモンド油、エゴマ油、ゴマ油、ボラージ油、シア脂等の植物や動物由来の油脂、ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ゲイロウ等のロウ類等が挙げられる。
【0014】
本発明の液状皮膚外用剤には、水溶性高分子を配合にも良いが、その配合量は0.05%以下が好ましい。水溶性高分子の量を0.05%以下にすることにより皮膚外用剤の粘性を低く保つことができ、使用時ののび広がりが良好となる。本発明に配合することができる水溶性高分子として、カラギーナン、ペクチン、寒天、ローカストビーンガム等の植物系高分子、キサンタンガム、ヒアルロン酸等の糖系高分子、ゼラチン等の動物系高分子、デンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸系高分子、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー等のアクリル酸系高分子等が挙げられる。
【0015】
本発明における液状皮膚外用剤には、油分の配合量に応じて界面活性剤を配合することができるが、その配合量は、1.0%が好ましい。界面活性剤の量を1.0%以下にすることにより、肌のつっぱり感のないみずみずしい使用感を得ることができる。本発明に配合することができる界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、など特に限定されないが、皮膚に対する刺激性などの点からノニオン界面活性剤が好ましい。具体的に例示するなら、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられ、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であるが、本発明はこれらになんら限定される物ではない。
【0016】
本発明の液状皮膚外用剤には、上記必須成分の他に、成分(b)以外の中和剤、酸化防止剤、pH調整剤、香料、抗菌剤、防腐剤、美容成分等を、本発明の効果を損なわない範囲にて配合することができる。
【0017】
本発明における液状皮膚外用剤とは、25℃の粘度がブルックフィールド型回転粘度計による測定値で1〜2000mPa・sのものを指す。この範囲の粘度であると、肌のつっぱり感のないみずみずしい使用感を得ることができる。
【0018】
本発明の液状皮膚外用剤の剤型は、特に限定されるものではなく、水型、可溶化型、水中油型乳化のいずれの水性剤型においても適用できる。
【0019】
本発明の液状皮膚外用剤の用途は、化粧水、美容液、ボディローション、乳液、パック、クレンジング料、メーキャップ皮膚外用剤、エアゾール等を例示することができ、その使用法は、手で使用する方法、不織布に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【実施例1】
【0020】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0021】
本発明品1〜7および比較品1〜4:化粧水
表1、表2に示す組成の化粧水を下記製造方法にて調製した。得られた化粧水の(1)使用時の肌のつっぱり感のなさ、(2)使用後の肌柔軟性について下記の評価方法により評価し結果を併せて、表1、表2に示した。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
(製造方法)
A:成分(1)〜(5)を均一に溶解する。
B:成分(6)〜(16)を均一に溶解する。
C:AをBに添加し、化粧水を得た。
【0025】
〔皮膚の柔軟性、つっぱり感のなさ;評価方法〕
化粧料専門評価パネル20名の前記発明品および比較品の化粧水を使用してもらい、(1)使用時の肌のつっぱり感のなさ、(2)使用後の肌柔軟性について、以下に示す評価基準により、5段階評価し、さらに全パネルの平均点より、以下に示す判定基準により判定した。
【0026】
[評価基準]
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
[判定基準]
◎:平均点4.5点以上
○:平均点3.5点以上4.5点未満
△:平均点2.5点以上3.5点未満
×:平均点2.5点未満
【0027】
表1、表2の結果から明らかなように、本発明に係わる本発明品1〜7は、比較品と比較して(1)使用時の肌のつっぱり感のなさ、(2)使用後の肌柔軟性について優れた化粧水であった。またいずれの発明品も25℃における粘度値は1000〜1200mPa・sであった。これに対し、成分(b)を配合しない、また、他の塩基性物質を用いて成分(a)を中和した比較例1〜3では、肌の柔軟性、肌のつっぱり感のなさ共に良好ではなかった。
【実施例2】
【0028】
化粧水
(成分) (%)
1.ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.3
2.セスキオレイン酸ソルビタン 0.1
3.テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 0.3
4.エタノール 10.0
5.香料 適量
6.精製水 残量
7.クエン酸 0.1
8.クエン酸ナトリウム 0.1
9.N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン (注1) 2.0
10.2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール 0.6
11.水酸化カリウム 0.04
12.エデト酸二ナトリウム 0.1
13.グリセリン 10.0
(注1):協和発酵社製
【0029】
(製法)
A:成分(1)〜(5)を均一に溶解する。
B:成分(6)〜(13)を均一に溶解する。
C:AをBに添加し、化粧水を得た。
【0030】
実施例2の化粧水は、25℃における粘度値は1200mPa・sであり、(1)使用時の肌のつっぱり感のなさ、(2)使用後の肌柔軟性について優れた化粧水であった。
【実施例3】
【0031】
液状美容液
(成分) (%)
1.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 0.2
2.セスキオレイン酸ソルビタン 0.1
3.トリオクタン酸グリセリル 0.2
4.ホホバ油 0.2
5.スクワラン 0.1
6.精製水 残量
7.エデト酸二ナトリウム 0.1
8.メチルパラベン 0.2
9.フェノキシエタノール 0.5
10.グリセリン 5.0
11.乳酸ナトリウム 0.5
12.N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン (注1) 1.0
13.2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール 0.3
14.キサンタンガム 0.05
15.精製水 10.0
16.エタノール 3.0
17.香料 適量
(注1):協和発酵社製
【0032】
(製法)
A:成分(14)を70℃に加熱した成分(15)で膨潤する。
B:成分(1)〜(5)を70℃で混合溶解する。
C:成分(6)〜(13)を70℃で加熱溶解後、Bに添加し、乳化する。
D:Cを室温まで冷却後、成分(16)、(17)とAを添加し、美容液を得た。
【0033】
実施例3の液状美容液は、25℃における粘度値は1500mPa・sであり、(1)使用時の肌のつっぱり感のなさ、(2)使用後の肌柔軟性について優れた液状美容液であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)、(b);
(a)N−アセチル−L−ヒドロキシプロリン
(b)2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールおよび/または2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール
を配合することを特徴とする液状皮膚外用剤。
【請求項2】
成分(a)の配合量が0.1〜5質量%であり、成分(b)の配合量が0.05〜3質量%であることを特徴とする請求項1記載の液状皮膚外用剤。
【請求項3】
成分(a)と成分(b)の配合質量比(a)/(b)が1〜20であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の液状皮膚外用剤。
【請求項4】
油分の配合量が0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3何れかの項記載の液状皮膚外用剤。

【公開番号】特開2007−269666(P2007−269666A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95915(P2006−95915)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】