説明

液面検出装置

【課題】 超音波振動子から発射された超音波が伝送管の実体に伝播することを抑制して精度の良い液面検出が可能な液面検出装置を提供する。
【解決手段】 ブラケット7は、その外表面に設けられた複数の円錐状突起74の各先端で、すなわち円錐の頂点で伝送管であるガイドパイプ9およびボディ12に接している。このため、ブラケット7とガイドパイプ9およびボディ12との接触面積は極小さくなっているので、超音波センサ3が発振した際にブラケット7からガイドパイプ9およびボディ12に伝達される振動エネルギは極わずかあるいは0となる。これにより、超音波センサ3から発射された超音波がガイドパイプ9およびボディ12の実体に伝播することを確実に抑制できるので、超音波センサ3が受信するノイズを抑制して精度の良い液面検出が可能な燃料液面検出装置1を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内の液体の液面位置を検出するための液面検出装置に関するものであり、たとえば自動車に装備される燃料タンク内の燃料液面を検出する用途に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、タンク内の液体の液面レベルを検出する液面検出装置としては、たとえば、タンク1に深さ方向に細い管状の伝送管を装着し、この伝送管の底部の水密ケースに超音波振動子を装着し、超音波振動子から超音波を発射し且つ超音波の液面からの反射波を超音波振動子で受信することにより液面を正確に計測するものがある。(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上述した液面検出装置においては、超音波振動子と水密ケースの底面との間に充填材を設けて、超音波振動子から漏れる超音波パルスを吸収している。
【特許文献1】特開平6−249697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の液面検出装置の構成において、超音波振動子を内蔵する水密ケースは、伝送管に一体的に設けられている。
【0005】
このような構成によると、超音波振動子から発射された超音波は、伝送管内に充満する液体中に伝播するとともに、水密ケースから伝送管自体へも伝達されて伝送管の実体中を伝播する。伝送管の実体中を伝播する超音波は伝送管の端部等で反射し、再び伝送管の実体中を進行して超音波振動子に入射する。すなわち、超音波振動子は、液面からの反射波および伝送管の端部からの反射波の2種類の反射波を受信することになる。液面からの反射波は液面位置検出に必要な信号であるが、伝送管の端部からの反射波はいわゆるノイズであり、このノイズにより正確な液面検出が妨げられるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記のような点に鑑みなされたものであり、その目的は、超音波振動子から発射された超音波が伝送管の実体に伝播することを抑制して精度の良い液面検出が可能な液面検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0008】
本発明の請求項1に記載の液面検出装置は、液体を貯蔵するタンク内の底部に超音波発振素子を配置し、超音波発振素子から発射された超音波タンク内の液面における反射波を超音波発振素子により受信して液面位置を検出する液面検出装置であって、超音波発振素子を密閉的に収納するケースと、その一端側にケースが取り付けられるとともにその内部空間が超音波発振素子から発射された超音波の伝播経路を形成する略筒状の伝送管とを備え、ケースおよび伝送管の取り付け部にケースおよび伝送管間の振動伝播を抑制する防振手段を介在させたことを特徴としている。
【0009】
超音波発振素子が振動して超音波を発射すると、超音波発振素子の振動がケースに伝達されケースが振動する。
【0010】
上述の構成によれば、このケースの振動は、ケースと伝送管の間に介在する防振手段により減衰されるので、ケースから伝送管に伝達される振動エネルギは極わずかあるいは0となる。
【0011】
これにより、超音波振動子から発射された超音波が伝送管の実体に伝播することを確実に抑制して精度の良い液面検出が可能な液面検出装置を実現することができる。
【0012】
本発明の請求項2に記載の液面検出装置は、防振手段はケースおよび伝送管の少なくとも一方に設けられた突起部であり、ケースおよび伝送管は突起部の先端で当接していることを特徴としている。
【0013】
互いに固定されている2つの部材において、一方の部材が振動してその振動が他方の部材に伝達される場合、一方から他方へ伝達される振動エネルギの大きさは、両部材の接触面積により変化する。すなわち、両部材の接触面積が大きいほど一方から他方へ伝達される振動エネルギの大きさは大きくなる。
【0014】
上述の構成によれば、ケースおよび伝送管は突起部の先端で当接しているため、ケースおよび伝送管の接触面積はきわめて小さくなっている。したがって、超音波発振素子が発振した際に、ケースから伝送管に伝達される振動エネルギは極わずかあるいは0となる。
【0015】
これにより、超音波振動子から発射された超音波が伝送管の実体に伝播することを確実に抑制して精度の良い液面検出が可能な液面検出装置を実現することができる。
【0016】
本発明の請求項3に記載の液面検出装置は、突起部の先端は点状または線状であることを特徴としている。
【0017】
これにより、ケースおよび伝送管の接触面積を確実に微少とすることができる。
【0018】
本発明の請求項4に記載の液面検出装置は、防振手段は柔軟なゴム材料または樹脂材料であることを特徴としている。
【0019】
この場合、超音波発振素子が発振した際に、ケースの振動は柔軟な防振手段を介して伝送管に伝達される。このとき、ケースの振動は、防振手段内を伝播中に防振手段のダンパ作用により減衰され、伝送管へ伝達される振動エネルギは極わずかあるいは0となる。
【0020】
これにより、超音波振動子から発射された超音波が伝送管の実体に伝播することを確実に抑制して精度の良い液面検出が可能な液面検出装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の第1実施形態による液面検出装置について、自動車の燃料タンク内の燃料液面位置を検出するための燃料液面検出装置1に適用した場合を例に図に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1における燃料タンク2の部分断面図である。図1において、図の上下方向が自動車の上下方向である。
【0023】
図2は、図4中のII−II線断面図である。
【0024】
図3は、図1中のIII−III線断面図である。
【0025】
図4は、図2中のIV−IV線断面図である。
【0026】
図5は、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1における電気回路構成を説明する模式図である。
【0027】
燃料液面検出装置1は、図1に示すように、液体である燃料14を貯蔵するタンクとしての燃料タンク2、超音波発振素子である超音波センサ3、超音波センサ3から発せられた超音波の伝播経路を形成する伝送管としてのボディ12とから構成されている。
【0028】
すなわち、燃料液面検出装置1は、機能的な見地から見て、大きくは、超音波センサ3を中心とした超音波送受信機能要素と、超音波センサ3と燃料14の液面14a間における超音波伝播経路を形成する超音波伝播経路機能要素の2つの機能要素から構成されている。
【0029】
以下に、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1の構成について説明する。
【0030】
先ず、超音波センサ3を中心とした超音波送受信機能要素について説明する。
【0031】
超音波発振素子である超音波センサ3は、ピエゾ効果(電圧が印加されると体積が変化する一方、外部から力を受けると電圧を発生する特性)を有する物質、たとえばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等により円盤状に形成されている。超音波センサ3の表面31および裏面32には、図2に示すように、外部と電気的に接続される電極33が形成されている。両電極33は、それぞれ超音波センサ3の表面31のほぼ全面および裏面32のほぼ全面に亘って形成されている。超音波センサ3は、両電極33間に電圧を印加されると、上述したピエゾ効果により板厚方向である軸方向(図2において左右方向)に振動して超音波を発射する。両電極33には、両電極33を外部に電気的に接続するためのリード部材であるリード線6がそれぞれ接続されている。各リード線6は、それぞれ電極33にはんだ付けされている。また、超音波センサ3は、ケースであるブラケット7およびカバー8内に密閉的に収納されている。
【0032】
ケースの一方としてのブラケット7は、たとえば樹脂材料から略有底円筒状に形成され、図2に示すように、その底部71に、超音波センサ3が配置されている。ブラケット7の底部71と反対側の開口端部72(図2中において右端)には、ケースの他方としてのカバー8が装着されている。カバー8は、ブラケット7の開口端部72に密着して固定され、これにより、超音波センサ3をブラケット7内に密閉している。また、ブラケット7の外表面には、図2に示すように、防振手段としての突起部である突起74が設けられている。突起74は、ブラケット7の外表面側を底面とする円錐状に形成されている。突起74は複数個設けられ、カバー8が装着されたブラケット7がボディ12に取り付けられると、突起74は、その先端としての円錐の頂点において、伝送管であるボディ12の内面およびガイドパイプ9の端面に、図2に示すように、当接している。なお、各突起74の形状は、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1においては同一に形成されている。また、ブラケット7の表面において、各突起74は、ボディ12内におけるブラケット7の姿勢が一義的に定まり且つ全ての突起74の先端がガイドパイプ9あるいは9ボディ12に当接するように設定されている。
【0033】
すなわち、ブラケット7は、図4に示すように、3個の突起74によりガイドパイプ9に当接している。この場合、ガイドパイプ9に当接している3個の突起74は、図4に示すように、ガイドパイプ9と略同心上の円弧上に120度間隔で配置されているので、ブラケット7は、ガイドパイプ9に安定して当接できる。また、ブラケット7は、図2に示すように、突起74によりボディ12に当接している。この場合、ボディ12に当接している突起74は、図4に示すように、ブラケット7の外表面上に120度間隔で配置されているので、ブラケット7は、ボディ12の孔部12bと同軸状の位置関係を安定して維持できる。
【0034】
カバー8は、たとえば樹脂材料から形成され、図2に示すように、その係止爪82をブラケット7の係止孔73に係止させてブラケット7に固定されている。また、カバー8には、超音波センサ3に接続されたリード線6をカバー8の外側へ延出させるための貫通孔81が設けられている。カバー8のブラケット7と反対側(図2の右側)表面には、図2に示すように、コネクタ部83が形成されている。コネクタ部83には導電性材料からなるターミナル84が配設されている。ターミナル84には、一端が超音波センサ3の電極33に接続されたリード線6の他端が、はんだ付け等により接続されている。コネクタ部83に、外部の電気回路から延出されている図示しないコネクタを係合させることにより、超音波センサ3は外部の電気回路と電気的に接続される。また、カバー8と超音波センサ3との間には、緩衝部材4が配置されている。
【0035】
緩衝部材4は、柔軟な樹脂材料あるいはゴム材料等から形成されている。本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1においては、緩衝部材4は、ニトリルゴムから形成されている。緩衝部材4は、ブラケット7にカバー8が固定されると、ブラケット7内において圧縮されて弾性変形した状態となる。この緩衝部材4の弾性力により、超音波センサ3はブラケット7に押し付けられるので、超音波センサ3はブラケット7内の所定位置に固定される。緩衝部材4は、超音波センサ3から背後(図2における右方)へ漏れる超音波パルスを吸収する役目も果たしている。これにより、超音波センサ3から発射される超音波パルスは、伝送管であるガイドパイプ9内の燃料14中へ向けて(図2の左方に向けて)のみ進行する。
【0036】
伝送管であるボディ12は、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1においては樹脂材料、たとえば、燃料タンク2内の燃料14に対して安定性に優れる樹脂材料から形成されている。ボディ12は、超音波センサ3を保持固定する、詳しくは、超音波センサ3を収納しているブラケット7を保持固定するための係止爪12aを備えている。係止爪12aは複数個、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置においては、4個設けられている。係止爪12aは、ブラケット7の蓋としてのカバー8の端部に係止すると弾性変形し、その弾性力によりカバー8はガイドパイプ9側(図2において左側)へ押圧される。また、ボディ12は、実際に超音波の伝播経路となる、ガイドパイプ9、反射板11およびガイドパイプ10を備えている。すなわち、ガイドパイプ9およびガイドパイプ10の内部空間が超音波の伝播経路となっている。また、ガイドパイプ9およびガイドパイプ10は、図1に示すように、それらの軸線A、Bを直交させて配置されているが、両ガイドパイプ9、10の中間に配置した反射板11で超音波を反射させることにより、両ガイドパイプ9、10間に超音波を伝播させている。
【0037】
ガイドパイプ9は、金属材料から形成され、ガイドパイプ9の一端側(図1において右側)は、超音波センサ3を保持固定しているブラケット7に当接している。詳しくは、図2に示すように、ブラケット7に設けられた突起74の先端、つまり円錐の頂点に当接している。本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1では、ガイドパイプ9は、アルミニウムダイカスト用合金により形成されている。また、ガイドパイプ9は、その軸線Aと直交する方向における断面形状が、図3に示すように、円形に形成されるとともに、その超音波センサ3側端部(図1の右端)における内径寸法がd1、後述する反射板11側端部(図1の左端)における内径寸法がd2となっている。また、ガイドパイプ9は、その軸線Aと直交する方向における断面積が、超音波センサ3から遠ざかるに連れて、すなわち図1において右端から左方向に向かうに連れて小さくなるように形成されている。言い換えると、ガイドパイプ9は、その軸線Aと直交する方向における断面の直径が、超音波センサ3から遠ざかるに連れて小さくなるように形成されている。すなわち、図1に示すように、d1>d2という関係が成り立っている。また、ガイドパイプ9には、図1に示すように、段部91が形成されている。段部91は、図3に示すように、リング状に形成されるとともに、超音波センサ3に対向する面として形成されている。したがって、超音波センサ3から発射された超音波の一部は段部91に入射する。この超音波は、段部91で反射して超音波センサ3に向かって進み、超音波センサ3に入射することになる。
【0038】
また、ガイドパイプ9の超音波センサ3と反対側(図1において左側)には、超音波センサ3から発射された超音波を燃料タンク2内の液面14aに向けて反射するための反射板11が、図1に示すように、配置されている。反射板11は、金属材料から形成されている。本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1では、反射板11は、鉄系金属、たとえばステンレス鋼板により形成されている。反射板11は、図1に示すように、その反射面11aに入射した超音波センサ3から発射された超音波を、液面14aへ向けて反射するように設置されている。詳しくは、ガイドパイプ9の軸線A上を進む超音波を、液面14aへの入射角が0°となる方向、つまり液面14aに直交する方向に向けて反射するように設置されている。すなわち、反射板11は、図1に示すように、液面に対して45°傾斜させて設けられている。
【0039】
反射板11から液面14a間の超音波伝播経路を形成する伝送管であるガイドパイプ10は、ガイドパイプ9と同様に、ステンレス鋼管から形成されている。また、ガイドパイプ10は、その軸線Bと直交する方向における断面形状が円形に形成されるとともに、その直径が全長に亘り一様に直径寸法d3に形成されている。ガイドパイプ10の直径寸法d3は、ガイドパイプ9の反射板11側端部における直径寸法d2と等しく形成されている。また、ガイドパイプ10の液面14a側先端位置は、図1に示すように、燃料タンク2内の燃料14貯蔵量が最大時、つまり満タン時における液面14bよりも、所定長さだけ上方に突き出すように設定されている。
【0040】
以上説明した、ガイドパイプ9、反射板11およびガイドパイプ10は、ガイドパイプ9の軸線Aとガイドパイプ10の軸線Bとが、図1に示すように、反射板11の反射面11a上において交差するような位置関係を形成している。
【0041】
ボディ12は、超音波伝播経路としてのガイドパイプ9、反射板11およびガイドパイプ10相互の位置関係を高精度に維持しつつそれらを保持固定している。
【0042】
次に、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1の電気回路構成について図5に基づき説明する。
【0043】
図5の電気回路構成図に示すように、制御回路15は、イグニッションスイッチ17を介してバッテリ18に接続されている。また、制御回路15は、超音波センサ3が接続されている。また、制御回路15は、表示部16が接続されている。
【0044】
制御回路15は、たとえばマイクロコンピュータ等から構成され、超音波センサ3へパルス状電圧信号を印加するためのパルス発生回路15a、超音波センサ3から出力される反射波受信信号を処理し、それに基づいて液面位置を算出する演算回路15b、および演算回路15bにより算出された液面位置信号に基づき表示部16を駆動する駆動信号を出力する駆動回路15cから構成されている。制御回路15は、イグニッションスイッチ17がONされてバッテリ18から電力が供給されると、燃料液面検出装置1は作動を開始する。
【0045】
表示部16は、たとえば指針計器あるいは液晶パネル等からなり、自動車の運転席正面のコンビネーションメータ(図示せず)内に設置されている。表示部16は、制御回路15の駆動回路15cに駆動されて演算回路15bにより算出された液面14a位置、すなわち燃料タンク2内の燃料14残量を運転者が視認可能に表示する。
【0046】
次に、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1における、燃料液面検出作動について説明する。
【0047】
パルス発生回路15aによりパルス状電圧信号が印加されると、超音波センサ3はパルス状の超音波を燃料タンク2内の燃料14中に発射する。すなわち、超音波センサ3の発振面31が振動し、発振面31の振動がブラケット7の底部へ伝わり、さらにブラケット7の外側の表面から超音波が燃料14中に発射される。この超音波の一部は、ガイドパイプ9内を進行して段部91に入射する。そこで反射されて、再び超音波センサ3の発振面31に入射する。一方、超音波センサ3から燃料14中に発射されたパルス状超音波の一部は、ガイドパイプ9内を進行して反射面11aに入射する。そこで反射されて、ガイドパイプ10内を液面14aへ向かって進む。さらに、液面14aで反射されて、往路と同一の経路、すなわちガイドパイプ10、反射面11a、ガイドパイプ9を経て超音波センサ3に入射する。
【0048】
すなわち、超音波センサ3は、パルス発生回路15aに駆動されて1つの超音波パルスを発射すると、それに対応して、上述したように2つの反射パルス、つまり段部91からの反射パルスと液面14aからの反射パルスとを受信する。超音波センサ3から段部91までの伝播経路長さは、図1から明らかなように、超音波センサ3から液面14aまでの伝播経路長さよりも短いので、超音波センサ3は、先ず、段部91からの反射パルスを受信し、次に、液面14aからの反射パルスを受信する。超音波センサ3は、これらの反射パルスを受信する度に電圧信号を発生し、この電圧信号は演算回路15bに入力される。
【0049】
演算回路15bは、パルス発生回路15aがパルス状電圧信号を発してから上述の2つの反射パルスを検出するまでの時間をそれぞれ算出する。
【0050】
ここで、段部91は、超音波センサ3に対して予め定められた位置に設けられている。すなわち、段部91と超音波センサ3との距離が既知である。したがって、演算回路15bは、パルス発生回路15aがパルス状電圧信号を発してから段部91からの反射パルスを受信するまでの時間と段部91と超音波センサ3との距離に基づいて、燃料14中における超音波パルスの伝播速度を算出する。次に、このようにして算出した燃料14中における超音波パルスの伝播速度とパルス発生回路15aがパルス状電圧信号を発してから液面14aからの反射パルスを受信するまでの時間とに基づいて、液面14a位置、つまり図1中における液面14a高さHを算出し、さらに予め記憶されている燃料タンク2形状に基づいて、燃料タンク2内の燃料14残量を算出する。
【0051】
駆動回路15cは、表示部16に演算回路15bが算出した液面14a高さHあるいは燃料14残量を表示させるための信号、たとえば指針軸(図示せず)を液面14a高さHあるいは燃料14残量に対応した角度まで回動させるための駆動信号を出力する。これにより、表示部16により燃料タンク2内の液面14a高さHあるいは燃料14残量が表示される。
【0052】
次に、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1の特徴である、ブラケット7に設けられた突起74の作用および効果について説明する。
【0053】
超音波センサ3にパルス状電圧信号が印加されると、超音波センサ3の発振面31が振動し、発振面31の振動がブラケット7へ伝達されてブラケット7が振動し、それによりブラケット7の外側の表面から超音波が燃料14中に発射される。
【0054】
ここで、従来の液面検出装置においては、ブラケットである水密ケースが伝送管に密着固定されているため、超音波振動子の振動が水密ケースから伝送管自体へも伝達されて伝送管の実体中を伝播する。伝送管の実体中を伝播する超音波は伝送管の端部等で反射し、再び伝送管の実体中を進行して超音波振動子に入射する。すなわち、超音波振動子は、液面からの反射波および伝送管の端部からの反射波の2種類の反射波を受信することになる。液面からの反射波は液面位置検出に必要な信号であるが、伝送管の端部からの反射波はいわゆるノイズであり、このノイズにより正確な液面検出が妨げられるという問題がある。
【0055】
これに対して、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1においては、ブラケット7は、その外表面に設けられた複数の円錐状突起74の各先端で、すなわち円錐の頂点で伝送管であるガイドパイプ9およびボディ12に接している。このため、ブラケット7とガイドパイプ9およびボディ12との接触面積は極小さくなっているので、超音波センサ3が発振した際にブラケット7からガイドパイプ9およびボディ12に伝達される振動エネルギは極わずかあるいは0となる。
【0056】
これにより、超音波センサ3から発射された超音波がガイドパイプ9およびボディ12の実体に伝播することを確実に抑制できるので、超音波センサ3が受信するノイズを抑制して精度の良い液面検出が可能な燃料液面検出装置1を実現することができる。
【0057】
(第2実施形態)
図6には、本発明の第2実施形態による燃料液面検出装置1の部分断面図を示す。
【0058】
本発明の第2実施形態による燃料液面検出装置1では、防振手段である突起部が形成される部材を一部変更している。すなわち、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1では、防振手段である突起部としての突起74を全てケースであるブラケット7に形成しているが、本発明の第2実施形態による燃料液面検出装置1では、そられの一部を伝送管であるボディ12側に設けている。すなわち、図6に示すように、ボディ12の孔部12bの内壁に突起12cとして形成している。
【0059】
この構成によっても、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1の場合と同様に、超音波センサ3が発振した際にブラケット7からガイドパイプ9およびボディ12に伝達される振動エネルギを極わずかあるいは0とすることができる。したがって、超音波センサ3から発射された超音波がガイドパイプ9およびボディ12の実体に伝播することを確実に抑制して、超音波センサ3が受信するノイズを抑制して精度の良い液面検出が可能な燃料液面検出装置1を実現することができる。
【0060】
なお、この場合、ガイドパイプ9に当接する突起74をも廃止して、代わりにガイドパイプ9の端面に突起を設けブラケット7に当接させる構成としてもよい。
【0061】
(第3実施形態)
図7には、本発明の第3実施形態による燃料液面検出装置1の部分断面図を示す。
【0062】
本発明の第3実施形態による燃料液面検出装置1では、防振手段を突起部から柔軟なゴム材料に変更している。すなわち、図7に示すように、ブラケット7とガイドパイプ9およびボディ12間にゴム材料からなる防振部材19を配置して、ブラケット7を、防振部材19を介してガイドパイプ9およびボディ12に押圧させている。
【0063】
なお、防振部材19としては、使用される燃料14に対して安定性が高い材質、つまり燃料14中に長期間浸漬されても柔軟性、すなわちダンパ作用を維持できるような材質を選定しなければならないことは言うまでもない。
【0064】
この構成によれば、超音波センサ3が発振した際に、ブラケット7の振動は柔軟な防振部材19を介してガイドパイプ9およびボディ12に伝達される。このとき、ブラケット7の振動は、防振部材19内を伝播中に防振部材19のダンパ作用により減衰され、ガイドパイプ9およびボディ12へ伝達される振動エネルギは極わずかあるいは0となる。
【0065】
これにより、超音波センサ3から発射された超音波がガイドパイプ9およびボディ12の実体に伝播することを確実に抑制できるので、超音波センサ3が受信するノイズを抑制して精度の良い液面検出が可能な燃料液面検出装置1を実現することができる。
【0066】
なお、以上説明した、本発明の第3実施形態による燃料液面検出装置1において、防振部材19をブラケット7とボディ12間にのみ配置するとともに、ブラケット7に、第1実施形態における突起74を設け、突起74とガイドパイプ9とを当接させる構成としてもよい。
【0067】
また、以上説明した、本発明の第1、第2実施形態による燃料液面検出装置1においては、ガイドパイプ9に当接する突起74の個数を3個としているが、3個に限定する必要は無く、ボディ12の孔部12b内においてブラケット7の所定の姿勢が維持される、すなわち超音波センサ3の表面33がガイドパイプ9の軸線Aに直交するような姿勢が安定して維持可能であれば、何個であってもよい。
【0068】
また、以上説明した、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1においてはボディ12に当接する突起74の個数を同一円周上に3個とし、また、第2実施形態による燃料液面検出装置1においてはブラケット7に当接する突起12cの個数を同一円周上3個としているが、同一円周上3個に限定する必要は無く、ボディ12の孔部12b内においてブラケット7の所定の姿勢が維持される、すなわち超音波センサ3の表面33がガイドパイプ9の軸線Aに直交するような姿勢が安定して維持可能であれば、何個であってもよい。
【0069】
また、以上説明した、本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1における突起74の形状、および第2実施形態による燃料液面検出装置1における突起12cの形状を円錐形としているが、円錐形に限る必要は無く、他の形状、たとえば角錐状としてもよい。また、突起74および突起12cの先端を点状としているが、点状に限る必要は無く、線状あるいは微小な面状であってもよい。要は、ブラケット7から突起74あるいは突起12cを経てガイドパイプ9およびボディ12へ伝達されるエネルギが極めて小さいような形状であればよい。
【0070】
また、以上説明した、本発明の第1〜第3実施形態による燃料液面検出装置1においては、ガイドパイプ9をアルミニウムダイカスト用合金から、ガイドパイプ10をステンレス鋼管からそれぞれ形成しているが、これらの金属材料に限る必要は無く、他の種類の金属材料を用いても良い。たとえば、ガイドパイプ9を鉄鋼材料から、ガイドパイプ10をアルミニウム管からそれぞれ形成してもよい。さらに、ガイドパイプ9およびガイドパイプ10を金属材料以外の材質、たとえば樹脂材料やセラミックス材料等から形成してもよい。その内部の液体中に超音波を高効率で伝播させることができる材質であればよい。
【0071】
また、本発明の第1〜第3実施形態による燃料液面検出装置1においては、ガイドパイプ9に段部91を設けているが、特に段部91を設けなくてもよい。この場合、たとえば、燃料タンク2内の燃料14温度を温度センサ(図示せず)等により検出し、それにより燃料14中の超音波伝播速度を補正して液面14a高さHを算出することにより、高精度で液面14a高さHを算出することができる。
【0072】
また、以上説明した各実施形態は、本発明による液面検出装置を自動車の燃料液面検出装置1に適用した場合を例に説明したが、燃料液面検出装置1以外に適用してもよい。すなわち、車両に搭載される他の液体、たとえば、エンジンオイル、ブレーキフルードあるいはウィンドウォッシャ液等の液面検出、あるいは液体輸送用車両に備えられた液体輸送用タンク内の液面を検出するために適用してもよい。さらには、自動車・車両以外の各種民生用機器の液体容器における液面検出の用途に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1における燃料タンク2の部分断面図である。
【図2】図4中のII−II線断面図である。
【図3】図1中のIII−III線断面図である。
【図4】図2中のIV−IV線断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による燃料液面検出装置1における電気回路構成を説明する模式図である。
【図6】本発明の第2実施形態による燃料液面検出装置1の部分断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態による燃料液面検出装置1の部分断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 燃料液面検出装置(液面検出装置)
2 燃料タンク(タンク)
21 底面(底部)
3 超音波センサ(超音波発振素子)
31 表面
32 裏面
33 電極
4 緩衝部材
41 切欠き
5 スリーブ(カバー)
6 リード線
7 ブラケット(ケース)
71 底部
72 開口端部
73 係止孔
74 突起(防振手段、突起部)
8 カバー(ケース)
81 貫通孔
82 係止爪
83 コネクタ部
84 ターミナル
9 ガイドパイプ
91 段部
10 ガイドパイプ
11 反射板
11a 反射面
12 ボディ
12a 係止爪
12b 孔部
12c 突起(防振手段、突起部)
13 電線
14 燃料(液体)
14a 液面
14b 液面
15 制御回路
15a パルス発生回路
15b 演算回路
15c 駆動回路
16 表示部
17 イグニッションスイッチ
18 バッテリ
19 防振部材(防振手段、柔軟なゴム)
A 軸線
B 軸線
H 液面高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯蔵するタンク内の底部に超音波発振素子を配置し、
前記超音波発振素子から発射された超音波の前記タンク内の液面における反射波を前記超音波発振素子により受信して前記液面位置を検出する液面検出装置であって、
前記超音波発振素子を密閉的に収納するケースと、
その一端側に前記ケースが取り付けられるとともにその内部空間が前記超音波発振素子から発射された超音波の伝播経路を形成する略筒状の伝送管とを備え、
前記ケースおよび前記伝送管の取り付け部に前記ケースおよび前記伝送管間の振動伝播を抑制する防振手段を介在させたことを特徴とする液面検出装置。
【請求項2】
前記防振手段は前記ケースおよび前記伝送管の少なくとも一方に設けられた突起部であり、前記ケースおよび前記伝送管は前記突起部の先端で当接していることを特徴とする請求項1に記載の液面検出装置。
【請求項3】
前記先端は点状または線状であることを特徴とする請求項2に記載の液面検出装置。
【請求項4】
前記防振手段は柔軟なゴム材料または樹脂材料であることを特徴とする請求項1に記載の液面検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−119046(P2006−119046A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308723(P2004−308723)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】