説明

深溝溶接装置及び方法

【課題】 溶接装置を提供する。
【解決手段】 溶接装置は、1以上のコアを有するトーチ本体と、1以上のコアから離れる方向に延在する複数のコンタクトチップと、複数のコンタクトチップに近接して配置され、複数のコンタクトチップと略同じ方向に延在する複数のガス供給管とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は概して溶接に関し、特に深溝溶接に関する。
【背景技術】
【0002】
金属不活性ガス(MIG:ミグ)溶接などのガス金属アーク溶接は、消耗ワイヤ電極(本明細書ではワイヤ電極とも呼ばれる)、供給電源、及びシールドガスを溶接領域に案内するためのシステムを採用する。ワイヤ電極とシールドガスは、供給電源と電気接続する「トーチ」を介して溶接領域に連続的に送り込まれる。加工物は、供給電源で回路を閉じるアース線によって接続される。ワイヤ電極は、アークを形成するのに適した電流量を供給することができる電源を使用して、接地以上の電位で保持される。ワイヤ電極が加工物に接すると、アークが形成されて、加工物とワイヤ電極の金属を局部的に溶かすことにより、溶融池が形成され、それが冷えて溶接部を形成する。シールドガスは溶融池を酸化から保護し、1以上の所望アーク特性を提供する。
【非特許文献1】Ogawa, et al. "Development of Narrow Gap Tandem GMAW Process" 12th Bulgarian Welding Society Conference 2004. #17269569. 10 pages
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
溶接速度を向上させる一般的な方法は、さらなるワイヤ電極の対応量を溶かすために電流を対応して増加させて、ワイヤ電極の送り速度を向上させることである。しかしながら、電流を対応して増加させることによって生じる過剰な発熱は、加工物の望ましくない歪みを引き起こす可能性がある。2本のワイヤを使用するミグ溶接(ツインワイヤ溶接とも呼ばれる)もまた、溶接速度を向上させることによって、生産性を高めることができる。しかしながら、単一の従来電源を使用する極めて近接したツインワイヤ溶接は、アークの不安定性による深い狭開先溶接、隣接する磁場の相互作用に伴う金属転移、各ワイヤ電極に対応するアークのエネルギーの変動等への適用には適していない。ワイヤ電極の冷却とシールドガスの送出のプロセス要求を得るための以前の試みで得られたツインワイヤ溶接トーチは、例えば、蒸気タービン部品の製造に使用される深い狭開先には適合しないものであった。
【0004】
したがって、これらの欠点を克服する深溝溶接構成に関する技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、溶接装置を含む。溶接装置は、1以上のコアを有するトーチ本体と、1以上のコアから離れる方向に延在する複数のコンタクトチップと、複数のコンタクトチップに近接して配置され、複数のコンタクトチップと略同じ方向に延在する複数のガス供給管とを含む。
【0006】
本発明の別の実施形態は、1以上のコアを有するトーチ本体と、1以上のコアから離れる第1の方向に延在する複数のコンタクトチップと、複数のコンタクトチップに近接して配置され、複数のコンタクトチップと略同じ方向に延在する複数のガス供給管とを有する溶接装置を使用して、溶接速度を向上させる方法を含む。この方法は、複数のコンタクトチップの1以上を前方コンタクトチップとして、複数のコンタクトチップの他の1以上を後方コンタクトチップとして規定するステップと、溶接装置を第2の方向に移動させるステップと、溶接速度を向上させるために、前方コンタクトチップと後方コンタクトチップの少なくともいずれかを他方から独立して制御するステップとを含む。
【0007】
これら及びその他の利点や特徴は、添付図面に関連させて提供される以下の本発明の好適な実施形態の詳細な説明からより容易に理解されるであろう。
【0008】
同一参照符号は同様の要素を示す例示図面である添付図面を参照されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態は、トーチと、溶接材料の共通の溶融池に供給された2本のワイヤ電極を使用した狭開先ミグ溶接のプロセスを提供する。トーチは、狭開先での操作が可能であって、現在使用されている単一のワイヤ電極ミグ溶接システムと比べて要する溶接時間が減少する。実施形態では、プロセスは、ワイヤ電極の溶接速度と溶着速度が高いために、溶接生産性の向上を促進する。実施形態では、各ワイヤ電極はそれぞれの電源に接続されて、溶接電圧、電流レベル、及び例えば連続又はパルス変調電源供給波形等の溶接電源供給波形の独立調整が可能になる。
【0010】
実施形態では、溶着金属の組成は、2つの別個のコンタクトチップの各々に対してワイヤ電極の直径、合金成分及び送り速度の1以上を独立して変化させることによってカスタマイズすることができ、金属学的及び機械的特性が向上する。2本のワイヤ電極の使用により、必要な溶接パスの数が減少するとともに、スラグ除去の量を最小限にし、スラグ巻込みの機会を減少させることによって生産性と溶接品質を向上させる。さらに、入熱パラメータの制御が向上することにより、寸法の狂いを低減することができる。
【0011】
図1を参照すると、狭開先溶接用の特定のユーティリティ(本明細書ではトーチと呼ばれる)を有するデュアルワイヤ溶接トーチ100の実施形態の上面拡大斜視部品図が示される。トーチ100は、取付板105と、トーチ本体110と、それを介して消耗ワイヤ対125が供給される2つのコンタクトチップ115、120と、複数のガス供給管130、135とを含む。実施形態では、トーチ本体110は1以上のヘッドアセンブリ140(本明細書ではコアと呼ばれる)を含む。1以上のコア140は、溶接で発生した熱を除去するための水冷ジャケットを含み、2つのコンタクトチップ115、120の融解を防ぐ。2つのコンタクトチップ115、120は、1以上のコア140から前方の方向線97で示された方向に延在する。実施形態では、トーチ100は2つのガス供給管130、135を含む。
【0012】
実施形態は2つのコンタクトチップ115、120を有するように説明されるが、本発明の範囲はそのように限定されず、本発明が例えば3、4又はそれ以上の複数のコンタクトチップ115、120を有するトーチ100にも適用されることを理解されたい。
【0013】
絶縁ヘッドブロック145は、コア140と1以上のカプラー150の間に配置されて、それらを接続する。カプラー150は、外部供給電源、消耗ワイヤ送給装置及び冷水器(図示ぜす)に接続される。当業者には理解されるように、外部供給電源は溶接電流を提供し、消耗ワイヤ送給装置は消耗ワイヤ対125の供給を行い、冷水器はコア140の水冷ジャケットを介して水を循環させる。
【0014】
実施形態では、トーチ本体110は2つのコア140とコンタクトチップホルダ対155を含み、コア140とコンタクトチップ115、120の間のインタフェースを形成する。コンタクトチップホルダ対155はコア140から前方の第1の方向に延在し、コンタクトチップ115、120を保持する。コンタクトチップホルダ155はそれぞれ、例えばコレット等のアジャスター160を含み、コンタクトチップ115、120を保持し、コンタクトチップホルダ155のアジャスター160を超えて延在するコンタクトチップ115、120の長さの交換や調節を可能にする。
【0015】
コンタクトチップ115、120は、消耗ワイヤ対125に対して溶接電流と位置案内を提供する。実施形態では、コンタクトチップ115、120は銅製であり、電源から消耗ワイヤ対125までの有益な電気伝導率と、コンタクトチップホルダ155を介したコア140の水冷ジャケットへの熱伝導率を提供する。実施形態では、コンタクトチップ115、120は約1/4インチの直径を有しており、狭開先への配置が容易である。実施形態では、コンタクトチップ115、120は、コンタクトチップホルダ対155の少なくともいずれかよりも4インチ以上長く延在する。別の実施形態では、コンタクトチップ115、120は、コンタクトチップホルダ対155の少なくともいずれかよりも6インチ以上長く延在する。さらに別の実施形態では、コンタクトチップ115、120は、コンタクトチップホルダ対155の少なくともいずれかよりも8インチ以上長く延在する。
【0016】
絶縁体が各コンタクトチップ115、120の外部に配置され(すなわち、それらを取り囲み)、各コンタクトチップ115、120の後端165(コンタクトチップホルダ155のチップ対のそれぞれ1つの中に配置される)から最前端170(本明細書ではチップ170と呼ばれる)に向かって延在する。絶縁体は各コンタクトチップ115、120の後端165からチップ170に向かって延在し、各コンタクトチップ115、120を他方及び加工物から熱的かつ電気的に絶縁する。実施形態では、絶縁体は1以上のガラス繊維スリーブとワニスを含み、例えば変圧器の積層に使用することができる。別の実施形態では、絶縁体はセラミック被覆を含む。
【0017】
実施形態では、トーチ100は、コンタクトチップ115、120の間の位置決め角175を形成する。アジャスター180はまた、位置決め角175の調節によって、2つのコンタクトチップ115、120の相対位置、すなわち配向の物理的調節を可能にする。実施形態では、アジャスター180は、2つのコア140間の離隔距離185を変更することによって位置決め角を調節する。
【0018】
次に図2を参照すると、トーチ100のチップ170端の斜視図が示される。アジャスター180の実施形態は、コンタクトチップ115、120の一方の他方に対する方向線98で示されたオフセット方向への並進をもたらすと考えられる。
【0019】
図1をもう一度参照すると、シールドガスは、例えば継手又はニップル等のカップリング190を介してガス供給管130、135によって供給される。シールドガスはコンタクトチップ115、120の各々のチップ170を冷却し、アークの安定性の維持と溶接材料の溶融池の酸化の防止に適した遮蔽を行う。1つ以上のガス供給管130、135の使用によって、溶接材料の溶融池に極めて近接した1つ以上のシールドガスの特別な混合が可能になり、溶接特性が向上する。実施形態では、ガス供給管130、135はコンタクトチップ115、120から離れており、コンタクトチップホルダ対155と1以上のコア140の中間で機械結合する1以上のガスブロック195から前方に突出する。ガス供給管130、135がコンタクトチップ115、120と略同じ方向に突出することによって、ガス供給管130、135とコンタクトチップ115、120は、以下でさらに説明し、図3で示されるように、単一の溝の中に配置することが可能になる。実施形態では、ガス供給管130、135は2つのコンタクトチップ115、120の外部でトーチ100の反対側に沿って配置される。もう1つの方法を挙げると、コンタクトチップ115、120はガス供給管130、135の間に配置される。実施形態では、ガス供給管130、135は約3/8インチの直径である。
【0020】
図2と併せて図1を参照すると、ガス供給管130、135は2つのコンタクトチップ115、120に略平行なので、ガス供給管130、135とコンタクトチップ115、120は、以下でさらに説明し、図3で示されるように、単一の溝の中に配置することが可能になる。実施形態では、ガス供給管130、135は各々が、例えば位置決めねじ又はクランプ等のアジャスター196を介してガスブロック195に固定される。2つのコンタクトチップ115、120間の位置決め角175の調節により、ガス供給管130、135間の角が同様に変化する。ガス供給管130、135の少なくともいずれかの配向の調節はアジャスター196を緩めることによって行われ、ガスブロック195の回転とガスブロック195に対するガス供給管130、135の並進の少なくともいずれかが可能になる。コア140の周りをガスブロック195が回転すると、対応するガス供給管130、135が2つのコンタクトチップ115、120に対してオフセット方向98に並進する。ガスブロック195に対してガス供給管130、135が並進すると、2つのコンタクトチップ115、120に対するガス供給管130、135の長さが調節される。
【0021】
実施形態は円形断面を有するガス供給管130、135を備えるものとして示されるが、本発明の範囲はそのように限定されず、卵形、楕円形及び長方形等の代わりの断面形状を有するガス供給管130、135を有するトーチ100にも適用されると理解されたく、この断面形状は、例えば溶接作業中のトーチ100の移動と略垂直な方向に約3/8インチの断面寸法を有する。実施形態は、ガス供給管130、135を2つのコンタクトチップ115、120に関して略平行に位置付けるガスブロック195を有するものとして説明されるが、本発明の範囲はそのように限定されるものではなく、本発明が、ガス供給管130、135を例えば2つのコンタクトチップ115、120に大まかに近づくか又は離れるような他の角度に位置付けることができる他の取付手段を有するトーチ100にも適用されると理解されたい。
【0022】
消耗ワイヤ対125の各消耗ワイヤがコンタクトチップ115、120の各々のチップ170を通り抜けると、コンタクトチップ115、120のチップ170の最前部で局部摩耗が生じることが、当業者には理解されるであろう。局部摩耗は、消耗ワイヤ対125の各消耗ワイヤがコンタクトチップ115、120のチップ170を超えて片持ち状態で延在する際に作用する案内力によって引き起こされる。チップ170の摩耗の結果、チップ170の最前部の内径が大きくなる。チップ170の内径の増大は、チップ170の内径と消耗ワイヤ対125の対応する一方との間の間隔量を増大させることになり、チップ170による消耗ワイヤ対125の対応する一方の位置決め案内の精度が低下するので望ましくない。チップ170の内径の増大によって、2つのコンタクトチップ115、120から消耗ワイヤ対125の対応する一方の各々までの電流の伝導経路が変化した結果、アークの1以上の特性も変化する。2つのコンタクトチップ115、120の1以上のチップ170の最前(かつ最摩耗)部の除去によって、本質的に摩耗の少ない内径を有するそれぞれの新しいチップ170が形成され、消耗ワイヤ対125の対応する一方に対する位置決め案内精度の向上と、電流伝導経路の整合性の強化がもたらされる。したがって、コンタクトチップホルダ155から迅速にコンタクトチップ115、120を除去するためにアジャスター160を使用することによって、チップ170の最前部を都合良く除去することが可能になり、2つのチップ170間の適切な相対位置を維持しながら、アーク特性に関連させて一貫したワイヤ案内と電流伝導経路がもたらされる。さらに、チップ170の最前部のそのような除去は、2つのコンタクトチップ115、120の全体的な耐用年数とトーチ100のサービスインターバルを延長させる。
【0023】
次に図3を参照すると、トーチ100を有する器具構成200の概略側面図が示される。実施形態では、トーチ100は、蒸気タービンダイヤフラムバンド224を蒸気タービンダイヤフラムウェブ226に溶接するために使用される。器具構成200の2つのパラメータは、開先角度θと開先深さ230を含む。本明細書で開示されるトーチ100は、3度ほどの小さな開先角度θを有する約12インチまでの開先深さ230の中での溶接に適している。前述の例は、限定ではなく例示のためのものであると理解されたい。
【0024】
溶接プロセスによって発生する電流フローで生じる磁場の影響は、アークの1以上の特性に影響する可能性がある。これらの影響は、シールドガスの送出に関する課題と同様に、例えばバンド224とウェブ226の間の深い狭開先内では増強され、そのような開先内での溶接がより困難になる。さらに、バンド224とウェブ226のサイズの差によって、バンド224とウェブ226が熱を吸収する能力に関して不均衡が生まれる。溶接速度によって処理能力を向上させる一般的な方法は、ワイヤ電極の送り速度の向上に対応して溶接電流も増加させて、送り速度の向上によってもたらされる金属をさらに溶かすことである。しかしながら、熱吸収能力の不均衡は、溶接電流の増加によって溶接速度が増加しそうになると、加えられる熱量が過剰になり、より小さな部分の歪みを招くことが多々ある。したがって、溶接パラメータ選択によって入熱を慎重に制御することにより、歪みが減少する。
【0025】
図1において方向線99で示される第2の方向への(図3のページ面への)トーチ100の並進に対応して、コンタクトチップ115は前方コンタクトチップとして規定され、コンタクトチップ120は後方コンタクトチップとして規定される。方向線99で示される方向へのトーチ100の並進は、2つのコンタクトチップ115、120と略同一平面上の動きとして規定される。方向線99と反対の方向へのトーチ100の並進に対応して、コンタクトチップ120は前方コンタクトチップとして規定され、コンタクトチップ115は後方コンタクトチップとして規定されることを理解されたい。
【0026】
アークの特性と溶接品質は、さまざまな溶接パラメータの選択によって向上することがわかった。溶接パラメータのカスタマイズ、すなわち2つのコンタクトチップ115、120の各々を他方のコンタクトチップ115、120から独立して制御することによって、材料の溶着速度と溶接速度が向上し、全体の溶接品質が向上し、過度の歪みが避けられることがわかった。例えば、当技術分野で共同運動性制御アルゴリズムと呼ばれるものを前方コンタクトチップで使用することが好ましいことがわかったが、それは例えば溶接電流、溶接電圧及び溶接電源供給波形等の1以上の他の溶接パラメータを消耗ワイヤ対125の対応する一方の送り速度の変化に対応させるものである。また、消耗ワイヤ対125の対応する一方の送り速度から独立して、溶接電流が脈動、すなわちオフ状態からオン状態へ急速に変化するパルス制御アルゴリズムを後方コンタクトチップで使用することが好ましいこともわかった。さらに、消耗ワイヤ対125の対応する一方の送り速度が大きいことは、後方コンタクトチップよりも前方コンタクトチップにとって好ましいことである。実施形態では、トーチ100の使用によって溶接速度の向上が促進されると、全体の入熱量が減少し、その結果歪みも低減する。
【0027】
開示されたデュアルワイヤ構成を利用した試みは、5インチの深さと3度の開先を有する蒸気タービンダイヤフラムで実行された。本明細書で開示されたように、トーチ100と溶接パラメータを使用することによって、そのような深い狭開先に単一のワイヤプロセスを適用した場合の約2倍の溶接速度の満足できる溶接がもたらされた。
【0028】
前述の内容を考慮すると、トーチ100は狭開先での溶接速度を向上させる方法を補助するものである。この方法は、2つのコンタクトチップ115、120の一方を前方コンタクトチップとして、2つのコンタクトチップ115、120の他方を後方コンタクトチップとして規定するステップと、トーチ100を2つのコンタクトチップ115、120と略同一平面上の方向線99で示される第2の方向に移動させるステップと、溶接速度を向上させるために、前方コンタクトチップと後方コンタクトチップの少なくともいずれかを他方から独立して制御するステップとを含む。
【0029】
方法の実施形態は、共同運動性制御アルゴリズムを前方コンタクトチップに適用するステップを含む。この方法の別の実施形態は、パルス制御アルゴリズムを後方コンタクトチップに適用するステップを含む。
【0030】
実施形態では、前方及び後方コンタクトチップの少なくともいずれかを他方から独立して制御するステップは、消耗ワイヤ電極対125の各々の直径、消耗ワイヤ電極対125の各々の送り速度、消耗ワイヤ電極対125の各々の組成、消耗ワイヤ電極対125の各々に加えられる溶接電圧の大きさ、消耗ワイヤ電極対125の各々に加えられる溶接電流の大きさ、及び消耗ワイヤ電極対125の各々に加えられる溶接電源供給波形の1以上を制御することである。実施形態では、前方コンタクトチップに対応する消耗ワイヤ電極の送り速度は、後方コンタクトチップに対応する消耗ワイヤ電極の送り速度よりも大きくなる。
【0031】
開示されたように、本発明の幾つかの実施形態は以下の利点の幾つかを含むことができる。例えば、深い狭開先内で溶接材料の高い溶着速度を達成する能力、入熱を制御して加工物の歪みを低減する能力、スラグ巻込みの可能性を減少させることによって溶接品質を強化する能力、生産性を向上させることによって製造加工費を削減する能力、特有の金属学的かつ機械的特性を含む正確に制御された化学的性質を有する特別な溶接材料を提供する能力、全体の入熱量を減少させる能力、溶接材料の溶融池に極めて近接した1つ以上のシールドガスを混合して、溶接特性を向上させる能力などである。
【0032】
例示的実施形態を参照して本発明を説明したが、その範囲から逸脱することなく本発明にさまざまな変更を加えることができ、その要素と同等物を代替的に利用できることが当業者には理解されるであろう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく本発明の教示にさまざまな修正を加えて、特定の状況や材料に適用することができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の(又は単なる)形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は添付請求項の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことを目的としている。また、図面及び明細書において、本発明の例示的実施形態を開示し、具体的な用語を採用しているが、限定目的ではなく、特に明記のない限り一般的かつ説明的な意味においてのみ使用する。したがって、本発明の範囲はこれらに限定されない。さらに、第1、第2等の用語は、順番や重要性を示すのではなく、ある要素を別の要素から区別するために用いられる。さらに、単数形で記載した用語であっても、数量を限定するものではなく、そのものが1以上存在することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る溶接トーチの上面拡大斜視部品図を示す。
【図2】本発明の実施形態に係るトーチのチップ端の斜視図を示す。
【図3】本発明の実施形態に係るトーチを有する器具構成の概略側面図を示す。
【符号の説明】
【0034】
97 方向線
98 方向線
99 方向線
100 デュアルワイヤ溶接トーチ
105 取付板
110 トーチ本体
115 コンタクトチップ
120 コンタクトチップ
125 消耗ワイヤ電極
130 ガス供給管
135 ガス供給管
140 ヘッドアセンブリすなわちコア
145 絶縁ヘッドブロック
150 カプラー
155 コンタクトチップホルダ
160 アジャスター
165 後縁
170 前縁すなわちチップ
175 位置決め角
180 アジャスター
185 離隔距離
190 カップリング
195 ガスブロック
196 アジャスター
200 器具配列
224 蒸気タービンダイヤフラムバンド
226 蒸気タービンダイヤフラムウェブ
230 開先深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のコアを有するトーチ本体と、
1以上のコアから離れる方向に延在する複数のコンタクトチップと、
複数のコンタクトチップに近接して配置され、複数のコンタクトチップと略同じ方向に延在する複数のガス供給管と
を備える溶接装置。
【請求項2】
ガス供給管の1以上がコンタクトチップの1以上と略平行に配置される、請求項1記載の装置。
【請求項3】
トーチ本体が2つのコアを有する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
複数のコンタクトチップの1以上が複数のガス供給管の間に配置される、請求項1記載の装置。
【請求項5】
複数のコンタクトチップが複数のガス供給管の間に配置される、請求項4記載の装置。
【請求項6】
複数のコンタクトチップの1以上の配向を調節するためのアジャスターと、
複数のガス供給管の1以上の配向を調節するためのアジャスターの少なくともいずれかをさらに有する、請求項1記載の装置。
【請求項7】
複数のコンタクトチップの1以上の配向を調節するためのアジャスターが、複数のコンタクトチップの2以上の間の角度を調節する、請求項6記載の装置。
【請求項8】
複数のコンタクトチップの1以上が銅からなる、請求項1記載の装置。
【請求項9】
複数のコンタクトチップの1以上の直径が約1/4インチである、請求項1記載の装置。
【請求項10】
1以上のコアから延在する複数のコンタクトチップホルダをさらに有しており、複数のコンタクトチップの1以上が複数のコンタクトチップホルダの1以上よりも4インチ以上長く延在する、請求項9記載の装置。
【請求項11】
複数のコンタクトチップの1以上が複数のコンタクトチップホルダの1以上よりも6インチ以上長く延在する、請求項10記載の装置。
【請求項12】
複数のコンタクトチップの1以上が複数のコンタクトチップホルダの1以上よりも8インチ以上長く延在する、請求項11記載の装置。
【請求項13】
1以上のコアが水冷ジャケットを有する、請求項1記載の装置。
【請求項14】
複数のコンタクトチップの1以上の外部に配置された絶縁体をさらに有する、請求項1記載の装置。
【請求項15】
絶縁体がガラス繊維スリーブとワニスの少なくともいずれかからなる、請求項14記載の装置。
【請求項16】
1以上のコアを有するトーチ本体と、1以上のコアから離れる第1の方向に延在する複数のコンタクトチップと、複数のコンタクトチップに近接して配置され、複数のコンタクトチップと略同じ方向に延在する複数のガス供給管とを有する溶接装置を使用して、溶接速度を向上させる方法であって、
複数のコンタクトチップの1以上を前方コンタクトチップとして、複数のコンタクトチップの他の1以上を後方コンタクトチップとして規定するステップと、
溶接装置を第2の方向に移動させるステップと、
溶接速度を向上させるために、前方コンタクトチップと後方コンタクトチップの少なくともいずれかを他方から独立して制御するステップとからなる、
前記方法。
【請求項17】
制御ステップが、共同運動性制御を前方コンタクトチップに適用することである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
制御ステップが、パルス制御を後方コンタクトチップに適用することである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
制御ステップが、消耗ワイヤ直径、消耗ワイヤ送り速度、消耗ワイヤ組成、溶接電圧の大きさ、溶接電流の大きさ、及び溶接電源供給波形の1以上を制御することである、請求項16記載の方法。
【請求項20】
制御ステップが、前方コンタクトチップの消耗ワイヤ送り速度を後方コンタクトチップの消耗ワイヤ送り速度よりも大きくなるように制御することである、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−168348(P2008−168348A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1734(P2008−1734)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】