説明

深絞り型包装機および深絞り型包装システム

【課題】 上側フィルムと下側フィルムとの間に確実に間隙を形成し、摘み部分を形成すること
【解決手段】 硬質の下側フィルムにポケット部を成型し、ポケット部内に被包装物が挿入された状態の下側フィルムに軟質の上側フィルムを被覆し、両フィルムの所定部位をシールして密封するとともに一部を未シール部として摘み部分を形成し、横カッター手段にて両フィルムのシールされた部位を横方向にカットし、さらに搬送方向に沿ってカットして個々の包装体を製造する深絞り型包装機である。横カッター手段の下流側に摘み部分Tを折り曲げる折り曲げ装置20を設ける。折り曲げ装置は、抑え部材22と受け部材23とで上下からフィルム11,16を挟んだ状態で、付勢部材21が摘み部分を付勢することで、摘み部分を折り曲げる。付勢部材が離反すると、硬質の下側フィルムは曲がった状態を保持するため、摘み部分の両フィルム間に隙間が生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深絞り型包装機および深絞り型包装システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
深絞り型包装体は、図1に示すように、相対的に肉厚で硬質のフィルム(下側フィルム)を成型して形成される凹状のポケット部2aを有する容器本体2と、そのポケット部2a内に被包装物を収納した状態でその容器本体2の開口部を閉塞する相対的に肉薄で軟質のフィルム(上側フィルム3)とを備えた構成を採る。容器本体2は、ポケット部2aの周囲に外側に突出するフランジ部2bを有し、上側フィルム3はそのフランジ部2bの全周に渡って熱シールされることで無端状のシール部4が形成され、ポケット部2aの内部を密封するようになっている。
【0003】
容器本体2のフランジ部2aの全面に上側フィルム3を熱シールし、フランジ部2bと上側フィルム3の外周縁を一致させた場合、フランジ部2bから上側フィルム3を引きはがすことが非常に困難となる。そこで、係る構成の深絞り型包装体の開封を容易にするために たとえば、特許文献1や特許文献2のように、上側フィルム3の外周縁の一部をフランジ部2bと未接着にし、摘み部分Tを形成したものがある。この構造からなる深絞り型包装体では、その摘み部分Tを指で挟み持った状態で上側フィルム3をフランジ部2bから引き離す方向に引っ張ることで、簡単に当該上側フィルム3をフランジ部2bから離脱させて開封することができる。そして、特許文献1,2に開示された発明では、さらに摘み部分Tの形状に特徴を持たせている。つまり、これらの特許文献の目的とするところは、開封の際の摘み部分Tがシール時に熱溶着してしまうのを防止し、かつ上下のフィルムの間に間隙を形成することにより、上下のフィルム(摘み部分)を持って容易に開封を行うことができるようにしたものである。
【特許文献1】実公昭37−21987
【特許文献2】特開2000−23639
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1,2に開示したように、摘み部分の形状を工夫をしたとしても、以下のような問題が発生する。すなわち、この種の深絞り型包装体は、下側フィルムにポケット部を形成し、そのポケット部内に被包装物となる内容物を入れ、上側フィルムで蓋をし、下側フィルムのポケット部の未形成領域と、それに対向する上側フィルムのフィルム部位を上下から挟み込むと共に加熱することでポケット部の周囲を溶着シールを行いポケット部内を密封する。このとき、摘み部分を構成する領域は、加圧しない(シール装置のシーラのシール面の一部に凹部を設ける)ことで未シール状態とする。この後、上記の融着シールした部位の所定位置、つまり、前後のポケット部の間であってフィルムの搬送方向と直交する方向に横カットし、次いで、左右のポケット部(横方向に並ぶポケット部)の間をフィルムの搬送方向に沿って縦カットすることにより、個々の深絞り型包装体が製造される。
【0005】
そして、縦カットや横カットする際に、摘み部分となる未シール状態の領域の所定位置をカットすることで、製造された深絞り型包装体における摘み部分は、その周縁がフリーとなる。しかし、実際には、図1(b)に示すように、横カット処理にともない、摘み部分となるべき未シールの領域の一部において、上側フィルムと下側フィルムとが付着されてしまうことがある。これは、通常横カットを行うカッター装置は、押し切りカッターであり、交換可能な刃と、その刃の受け部とにより上下フィルムのカットを行っている。そのため、特に、カッターの刃先が摩耗して切れ味が低下してくると、カッターの刃(所定の幅を持つ)と受け部との間で上側フィルムと下側フィルムとが所定の力で加圧されることになり、横カットを行う横カッター装置は、上下のフィルムを熱シールするシール装置のすぐ後に設けられることから、横カッター装置の刃と受け部とで挟み込まれた上側フィルムと下側フィルムは、ある程度の高い温度となっていることもあいまって、挟み込まれた部分で軽く両フィルム同士が互いに付着してしまう。
【0006】
このため包装体の開封するためには、まず上側フィルムと下側フィルムを分離して摘み部分をフリー状態にして指等で掴み持つことができるようにする必要がある。もちろん、カッターの刃や受け部には、シール装置のようにヒータ等が内蔵されているわけではないので、熱融着されている部位ほどには接着強度が強くならず、摘み部分をフリー状態にするために上側フィルムと下側フィルムとを分離することはできるものの、係る一作業が必要となるためユーザにとっては煩雑であることには違いがない。
【0007】
本発明は、上側フィルムと下側フィルムとの間に確実に間隙を形成し、摘み部分を形成することができる深絞り型包装機および深絞り型包装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明に係る深絞り型包装機は、(1)間欠的に搬送される硬質の下側フィルムに対し、凹状のポケット部を成型する成型装置と、その成型装置の下流側に配置され、前記ポケット部内に被包装物が挿入された状態の前記下側フィルムに対して軟質の上側フィルムを被覆する手段と、前記下側フィルムの前記ポケット部が形成されていないフィルム部位と、それに接触する前記上側フィルムのフィルム部位のうち、前記ポケット部の外周囲を囲む領域をシールして前記ポケット部を密封するシール手段と、前記下側フィルムと前記上側フィルムの前記シールされた所定部位を搬送方向と交差する横方向にカットする横カッター手段と、その横カッター手段の下流側に配置され、前記下側フィルム並びに前記上側フィルムの前記シールされた所定部位を搬送方向に沿ってカットする縦カッター手段と、を備えた深絞り型包装機において、前記シール手段は、前記下側フィルムの前記ポケット部が形成されていないフィルム部位と、それに接触する前記上側フィルムのフィルム部位のうちの一部を未シール部として摘み部分を形成する機能を持ち、前記横方向のカット位置は前記摘み部分を含むように設定し、前記横カッター手段は、少なくとも前記摘み部分を含んで搬送方向にも一部カットする機能を持ち、前記横カッター手段の下流側に、前記摘み部分を下方に折り曲げる折り曲げ手段を配置するようにした。
【0009】
硬質と軟質は、相対的なものであり、折り曲げ加工・処理をした場合に、その折り曲げられた状態・形態を保持するのが硬質なフィルムとなり、その折り曲げられた状態を保持しないのが軟質なフィルムとなる。この硬質と軟質は、実施形態で例示列挙したように、その構成する材質の種類自体を異ならせるようにしてもよいし、フィルムの厚さを変える(薄い方が軟質)ことによっても実現できる。また、実施形態で示した材質は、一例であり、他の材質を用いてももちろん良い。
【0010】
この発明によれば、横カッター手段で摘み部分の周囲の適宜位置がカットされ、その後に、折り曲げ手段によってその摘み部分が下方に付勢されて折り曲げられる。すると、本発明では、下側フィルムは硬質なフィルムを用いているので、折り曲げ手段により折り曲げられた状態を保持するが、上側フィルムは軟質なフィルムを用いているので折り曲げ手段による下方への付勢力が解除すると、元の状態に戻ろうとする(少なくとも、折り曲げられた状態を維持することはない)。その結果、上側フィルムと下側フィルムとの間に確実に隙間を形成することが可能となり、深絞り型包装体の開封を容易に行うことができる。
【0011】
(2)前記折り曲げ手段は、前記摘み部分を下方に付勢する付勢手段と、前記下側フィルムと前記上側フィルムにおける前記付勢手段で付勢される摘み部分に近接し、前記横カッター手段でカットされていないフィルム部位を上下から挟み込んで保持する保持手段と、を備えるとよい。
【0012】
(3)上記の(2)の発明を前提とし、前記保持手段は、前記上側フィルムに接触する抑え部材と、前記下側フィルムに接触する受け部材とを備え、前記受け部材は、前記ポケット部を収納可能な枠部材を有するとともに、その枠部材の上面のうち前記摘み部分に対向する部位は切欠かれるようにするとよい。枠部材は、実施形態のように有底(上面中央に凹所が形成)のものでも良いし、底が抜けた(上下に開口した)ものでもよい。切り欠きは、実施形態では凹部としたが、上下に貫通する貫通孔としたり、側面側も開口された状態としても良い。要は、付勢手段で付勢され、下方に折り曲げられた摘み部分が入り込む空間が確保されればよい。
【0013】
(4)また、上記の(2)の発明を前提とし、前記保持手段は、前記上側フィルムに接触する抑え部材と、前記下側フィルムに接触する受け部材とを備え、前記受け部材は、帯板からなり、その帯板の上面の前記付勢部材に対向する位置に、前記摘み部分が挿入可能な切欠きが形成されるようにしてもよい。この切欠きも、上記の(3)と同様に、有底の凹部でも良いし、完全に上下に貫通する孔部としても良いし、実施形態のように側面にも開口する形態としても良い。
【0014】
(5)本発明に係る深絞り型包装システムは、間欠的に搬送される硬質の下側フィルムに対し、凹状のポケット部を成型する成型装置と、その成型装置の下流側に配置され、前記ポケット部内に被包装物が挿入された状態の前記下側フィルムに対して軟質の上側フィルムを被覆する手段と、前記下側フィルムの前記ポケット部が形成されていないフィルム部位と、それに接触する前記上側フィルムのフィルム部位のうち、前記ポケット部の外周囲を囲む領域をシールして前記ポケット部を密封するシール手段と、前記下側フィルム並びに前記上側フィルムの所定部位をカットして、個々の包装体を製造するカッター手段と、を備え、前記シール手段は、前記下側フィルムの前記ポケット部が形成されていないフィルム部位と、それに接触する前記上側フィルムのフィルム部位のうちの一部を未シール部として摘み部分を形成する機能を持ち、前記カッター手段におけるカット位置は前記摘み部分を含み、前記包装体はその摘み部分がフリー状態になるようにした深絞り型包装機と、その深絞り型包装機から搬出されたる包装体における摘み部分を下方に折り曲げる折り曲げ装置と、を備えて構成することができる。
【0015】
このように個々の深絞り型包装体に分離した後で、折り曲げ装置により摘み部分を折り曲げるようにしても、上記の(1)から(4)の発明と同様に、摘み部分の上側フィルムと下側フィルムとの間に隙間を形成することができ、開封容易な包装体とすることができる。この発明における折り曲げ装置は、(2)から(4)に記載の各構成を適用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、フィルムの所定位置を切断した後に、摘み部分となる部分を折り曲げるための折り曲げ手段(折り曲げ装置)を設けたので、上側フィルムと下側フィルムとの間に確実に隙間を形成することが可能となり、深絞り型包装体の開封を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図2は、本発明の好適な一実施の形態を示している。本実施形態の深絞り型包装機は、上流側に配置された原反ロール10から連続して引き出された下側フィルム11を水平方向に搬送するフィルム搬送装置12を備える。このフィルム搬送装置12は、下側フィルム11の両側縁の外側に配置された一対のエンドレスチェーンと、そのエンドレスチェーンに取り付けられた下側フィルム11の長手方向の両側縁を掴む多数の爪と、を備え、係る爪にて下側フィルム11の両側縁を掴んだ状態で搬送する。なお、下側フィルム11は、延伸フィルム等の比較的硬質なフィルムが用いられる。
【0018】
このフィルム搬送装置12の搬送途中の上流側には、成型装置13が配置される。この成形装置13は、下側フィルム11を真空吸引し、下側に突出する凹状のポケット部14を成型する。そして、成型装置13の下流側の所定位置にて、ポケット部14内に被包装物を自動或いは手動にて供給するようにしている。上記のように、下側フィルム11は、比較的硬質なフィルムを用いて構成されているので、一旦ポケット部14が形成されたならば、その形状を保持する。
【0019】
一方、下側フィルムの搬送ラインの上方には、別の原反ロール15が設置されており、この原反ロール15から連続して上側フィルム16が引き出され、その引き出された上側フィルム16は、上記被包装物の供給地点の下流側所定位置にて下側フィルム11の上に重ね合わされるようになっている。なお、上側フィルム16は、PE,PET等の比較的軟質なフィルムが用いられる。
【0020】
この両フィルム11,16の重合地点の下流側には、シール装置17が配置され、このシール装置17にて、下側フィルム11と上側フィルム16の所定位置、つまり、ポケット部14の周囲の両フィルム11,16の接触部位を上下から挟み込むとともに加熱して熱シールする。これにより、被包装物がポケット部14内に密封される。また、このシール装置17にポケット部14内の空気を吸引除去する機能を設け、両フィルム11,16を熱シールする前にポケット部14内の空気を吸引除去することで、被包装物がポケット部14内にて真空状態で密封するように構成する場合もある。また、吸引除去する機能に替えて、所定のガスを充填する機能を設けることで、ポケット部14内を窒素等の不活性ガスに置換することもできる。さらにシール装置17は、ポケット部14が形成されていない下側フィルム11と上側フィルム16の対向するフィルムのほぼ全面をシールするようになっているが、シール面の一部に凹部を設け、フィルムの一部の領域に未シール部を形成するようになっている。この未シール部を形成する領域は、ポケット部14の4つの角部のうちの1つの先端側とし、最終的な包装体における摘み部分を構成する位置としている。係る構成は、従来と同様にものを用いることができる。なお、この摘み部分は、上側フィルム16と下側フィルム11とが未接着状態で、その未接着状態でフリーとなっている上側フィルム16をつまむと共に、上側に引っ張ることで、上側フィルム16が下側フィルム11から離反し、包装体を容易に開封するためのものである。
【0021】
シール装置17のさらに下流側には、横カッター装置18並びに縦カッター装置19が順次設けられ、両フィルム11,16のシール部位を横方向,縦方向にそれぞれカットすることにより、個々の深絞り型包装体ごとに分離製造する。
【0022】
横カッター装置18は、フィルムを挟んで上下に配置されるカッター刃18aと、受け部18bと、を備え、それらカッター刃18a,受け部18bはシリンダ18c等の駆動手段によりタイミングを合わせて昇降移動する。この横カッター装置18は、押し切りカッターであり、カッター刃18aの刃の形状に沿って下側,上側フィルム11,16が切断される。そして、本実施形態では、下側,上側フィルム11,16を横方向(搬送方向と直交する方向)に切断するための直線状の刃部ととともに、最終的な包装体における角に丸みを形成するためのRカット用の刃部を備える。これにより、横カッター装置18を通過すると、図3に示すようなカットラインKLが形成され、下側,上側フィルム11,16は、横方向には完全に切断(両端は、フィルム搬送装置12の爪部12により把持されている)されるとともに、最終的な包装体における角部が打ち抜かれて所定形状の孔部Kが形成される。また、上記のRカットされた部分は、シール装置17にて下側フィルム11と上側フィルム16とがシールされずに形成される摘み部分Tの形成領域に望むようになっている。
【0023】
また、縦カッター装置19は、フィルムの搬送方向と直交する方向に回転軸を有する上下一対の円盤型のカッターを複数組備え、上下のカッターにて下側,上側フィルム11,16を挟み込むことで搬送方向と平行にカットする。本実施形態では、図3に示すように、ポケット部14が横一列で3個形成するため、左右のポケット部14の間と、両サイドを切断する必要があり、合計4組のカッターを有する。下側,上側フィルム11,16が、縦カッター装置19を通過することで切断されるフィルム位置は、横カッター装置18で打ち抜かれた孔部Kを結ぶ線となる。よって、縦カッター装置19を通過することで、ポケット部14の周囲が切断されて、個々の深絞り型包装体が製造される。そして、その製造される深絞り型包装体は、四隅の頂点部分がRカットされて丸みを帯びた形状となる。
【0024】
ここで本実施形態では、横カッター装置18と縦カッター装置19の間に、折り曲げ装置20を設けている。この折り曲げ装置20は、摘み部分Tを構成する部分の折り曲げを行うもので、具体的には図4に示すように構成される。
【0025】
折り曲げ装置20は、フィルムの上方側に摘み部分Tの折り曲げを行うために下方に付勢する付勢部材21と、摘み部分以外の部分を抑える抑え部材22を配置し、フィルムの下方側に受け部材23を配置した構成を採る。付勢部材21と抑え部材22は、第1シリンダ24に連結され昇降移動する基板25の下面に取り付けられる。このとき、付勢部材21は、摘み部分Tに対向する位置に配置され、基板25に直接固定されている。よって、第1シリンダ24の動きに合わせて基板25と一体になって昇降移動する。また、付勢部材21は、その下端面21aが、傾斜面(テーパー面)となる。この下端面21aは、内側から外側に向けて徐々にその下端位置が下方に位置するような形状を採る。そして、第1シリンダ24の動作にともない付勢部材21が下降移動した場合、その下端面21aが、摘み部分Tを構成する下側フィルム11,上側フィルム16を下方に押し下げるような寸法・形状に設定される。
【0026】
抑え部材22は、上側フィルムのほぼ全面(上記の付勢部材21の設置領域を除く)に接触可能な平板からなり、その上面に連結された支持軸28を介して基板25に吊り下げ支持される。基板25には上下に貫通する貫通孔が形成され、支持軸28はその貫通孔内を貫通してその上端を基板25の上面よりも突出させ、その状態で支持軸28の上端の突出部位に止め金具(たとえばナットなど)を連結する。支持軸28は、基板25に設けた貫通孔に沿って昇降移動し、止め金具が基板25の上面に接触した状態ではそれ以上の下降移動が抑止される。さらに、基板25の下方に位置する支持軸28には、コイルスプリング等のバネ26が装着され、そのバネ26の両端は、基板25の下面と抑え部材22の上面に接触する。よって、抑え部材22は、基板25の昇降に追従して昇降移動するものの、下降移動中に抑え部材22に対して反力としてバネ26の弾性力以上の力が加わった場合には、抑え部材22は下降移動を停止し、さらに基板25が下降移動しようとした場合にはバネ26が弾性変形(圧縮変形)して基板25の下降移動を許容する(支持軸28が相対的に基板25に対して上昇移動する)。
【0027】
バネ26は、コイルスプリングに限ることはなく、板バネその他の各種の構成のものを用いることができる。さらに、ゴム等の弾性部材を用いることもできる。この抑え部材22は、付勢部材21により摘み部分Tを下方に付勢した際に、その他のフィルム部分(特に、摘み部分T近傍)が持ち上がってしまい摘み部分Tを折り曲げることができなくなることを抑制するためのものである。よって、係る持ち上がりが防止できる程度の弾性力を有していればよい。さらに、摘み部分Tの近傍のシールされたフィルム部位の持ち上がりを防止できればよいので、たとえば、抑え部材22がある程度の重さがあり、自重によりフィルム部分の持ち上がりを抑えることができれば、必ずしもバネその他の弾性部材を設けなくても良い。この場合に、付勢部材21の下端面21aの位置と、抑え部材22の下面の位置が相対的に昇降移動する必要があるので、上記のように支持軸を用いて基板25に連結しても良い。また、基板25に対してガイドレールやその他の機構により相対的に昇降移動可能に抑え部材22を連結するようにしてもよい。
【0028】
さらにまた、抑え部材22は、本実施形態では、上側フィルム16のほぼ全面を覆う平板から構成したが、たとえば、下側フィルム11と上側フィルム16のシール部分に接触するようにしたり(ポケット部14の上方では接触しない)、摘み部分Tの近傍のシール部分のみと接触するようにした形状の他、任意の形状を採ることができる。
【0029】
一方、受け部材23は、上面にポケット部14が挿入する凹所23aが形成された矩形状の枠を有し、その下方に設けられた第2シリンダ27に連結される。よって、受け部材23は、第2シリンダ27の動作に連動して昇降移動し、上方位置においては、下側フィルム11のシールされたフィルム部位の下面に接触する。さらに、受け部材23の上面のうち、摘み部分Tに対応する部分は、平面三角形状の凹部23bが形成されている。
【0030】
第1,第2シリンダ24,27は同期して往復移動し、付勢部材21,抑え部材22と、受け部材23とは、同期して接近離反移動し、接近した状態では、下側フィルム11,上側フィルム16のシール部分が、抑え部材22と受け部材23とで挟み込まれるようになっている。
【0031】
次に、本実施形態の要部となる上記の折り曲げ装置20の作用を説明する。図5(a)に示すように、基本状態では、付勢部材21,抑え部材22は上昇位置にあり、受け部材23は下降位置にあり、共に、下側フィルム11並びに上側フィルム16とは非接触となる。よって、フィルム搬送装置12の動作にともない、下側フィルム11と上側フィルム16とは、シール装置17にて適宜位置がシールされて一体化した状態のまま搬送される。
【0032】
フィルム搬送装置12は、下側フィルム11と上側フィルム16とを間欠状態で搬送するもので、ポケット部14が受け部材23の凹所23a上に位置したときに両フィルム11,16搬送が一時停止する。この一時停止している期間において、成型装置13においては下側フィルム11に対してポケット部を形成し、シール装置17においては下側フィルム11と上側フィルム16との所定位置を熱シールし、横カッター装置18では下側フィルム11と上側フィルム16の所定位置をカットする処理を行う。そして、折り曲げ装置20は、第1,第2シリンダ24,27が作動し、基板25(付勢部材21 、抑え部材22)は下降移動し、受け部材23は上昇移動する。すると、図5(b)に示すように、抑え部材22の下面が上側フィルム16のほぼ全面と接触すると共に、付勢部材21の下端面21aの先端が上側フィルム16の摘み部分Tの形成領域に接触する。また、受け部材23は、下側フィルム11のシール部分に接触する。これにより、下側フィルム11と上側フィルム16のシール部分は、その上下から抑え部材22と受け部材23とで挟み込まれる。
【0033】
さらに上側の第1シリンダ24のシリンダロッドが下降すると、基板25が下降し、それにともない付勢部材21も下降するため、その下端面21aが接触する摘み部分Tを下方に付勢する。このとき、抑え部材22はそれ以上下降移動しないため、図5(c)に示すように摘み部分Tを下方に折り曲げる。つまり、摘み部分Tは、下端面21aに沿って傾斜する。
【0034】
その後、上下の第1,第2シリンダ24,26が逆方向(シリンダロッドが本体内に収納される方向)に作動し、付勢部材21,抑え部材22並びに受け部材23は、離反し、図5(d)に示すようにそれぞれの基準位置に復帰する。すると、上側フィルム16は軟質フィルムであるので、変形させても元に戻るが、下側フィルム11は硬質フィルムであるので変形が維持される。よって、図示するように、下側フィルム11のみが曲がった状態を保つので、下側フィルム11と上側フィルム16との間に間隙が形成される。また、仮に横カッター装置18にてカット処理される際に、下側フィルム11と上側フィルム16とが付着したとしても、その付着の力は弱いので剥がれる。
【0035】
図4,図5では、図示の便宜上、1つの包装体の摘み部分Tを折り曲げるための構成を示したが、実際には上記の付勢部材21,抑え部材22並びに受け部材23は、少なくとも横一列に存在する3個分の包装体(ポケット部14並びに摘み部分T)に対して処理する必要がある。よって、たとえば、図4に示す構成のものを横一列に3個並べても良いし、抑え部材並びに受け部材を、横一列の3個分をまとめて挟み込むことができるような形態(受け部材は、横長な矩形状本体の上面所定位置に3個の凹所を形成し、抑え部材は横長な平板とし、さらに、所定の3カ所に付勢部材を取り付ける形態)にしたりするなど各種の構成を採ることができる。そして、本実施形態では、図2にも示すように、前後の2列分(合計6個)に対して一括して折り曲げ処理ができるようにしている。
【0036】
図6は本発明の別の実施形態を示している。本実施形態では、上記の実施形態を基本とし、受け部材の構造を変えている。すなわち、本実施形態では、受け部材23′として、搬送方向に延びるように平行に配置された複数本のガイドレールから構成するようにした。このガイドレールは、ポケット部14の非形成領域となる下側フィルム11と上側フィルム16のシール部分に対向する位置に配置し、さらに、摘み部分Tに対向する領域に平面三角形状の凹部23b′を設けている。
【0037】
係る構成を採ると、受け部材23′は、下側フィルム11(ポケット部14)の搬送の邪魔にならないので、下側フィルム11に対して常時接触或いは近接する位置に設置でき、下側シリンダが不要となる。なお、その他の構成並びに作用効果は、上記の作用効果と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0038】
なお、上述した各実施形態では、いずれも横カッター装置18と縦カッター装置19の間に折り曲げ装置20を配置した深絞り型包装機について説明したが、本発明はこれに限ることはなく、縦カッター装置19の下流側に折り曲げ装置20を配置しても良い。この場合に、折り曲げ装置20は、深絞り型包装機の1つの構成要素として実現しても良いし、深絞り型包装機とは別の装置として深絞り型包装機の下流側に設置し、深絞り型包装機から搬出される包装体の摘み部分に対して折り曲げ装置で折り曲げ加工をするような深絞り型包装システムとして構築しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】従来の深絞り型包装体の一例を示す図である。
【図2】本発明に係る深絞り型包装機の好適な一実施形態を示す図である。
【図3】横カッター装置18を通過後のフィルムの状態を示す図である。
【図4】折り曲げ装置を示す図である。
【図5】折り曲げ装置の作用を説明する図である。
【図6】別の実施形態の要部を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
11 下側フィルム
13 成型装置
14 ポケット部
16 上側フィルム
17 シール装置
18 横カッター装置
19 縦カッター装置
20 折り曲げ装置
21 付勢部材
22 抑え部材
23,23′ 受け部材
23b 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠的に搬送される硬質の下側フィルムに対し、凹状のポケット部を成型する成型装置と、
その成型装置の下流側に配置され、前記ポケット部内に被包装物が挿入された状態の前記下側フィルムに対して軟質の上側フィルムを被覆する手段と、
前記下側フィルムの前記ポケット部が形成されていないフィルム部位と、それに接触する前記上側フィルムのフィルム部位のうち、前記ポケット部の外周囲を囲む領域をシールして前記ポケット部を密封するシール手段と、
前記下側フィルムと前記上側フィルムの前記シールされた所定部位を搬送方向と交差する横方向にカットする横カッター手段と、
その横カッター手段の下流側に配置され、前記下側フィルム並びに前記上側フィルムの前記シールされた所定部位を搬送方向に沿ってカットする縦カッター手段と、
を備えた深絞り型包装機において、
前記シール手段は、前記下側フィルムの前記ポケット部が形成されていないフィルム部位と、それに接触する前記上側フィルムのフィルム部位のうちの一部を未シール部として摘み部分を形成する機能を持ち、
前記横方向のカット位置は前記摘み部分を含むように設定し、
前記横カッター手段は、少なくとも前記摘み部分を含んで搬送方向にも一部カットする機能を持ち、
前記横カッター手段の下流側に、前記摘み部分を下方に折り曲げる折り曲げ手段を配置した
ことを特徴とする深絞り型包装機。
【請求項2】
前記折り曲げ手段は、
前記摘み部分を下方に付勢する付勢手段と、
前記下側フィルムと前記上側フィルムにおける前記付勢手段で付勢される摘み部分に近接し、前記横カッター手段でカットされていないフィルム部位を上下から挟み込んで保持する保持手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の深絞り型包装機。
【請求項3】
前記保持手段は、前記上側フィルムに接触する抑え部材と、前記下側フィルムに接触する受け部材とを備え、
前記受け部材は、前記ポケット部を収納可能な枠部材を有するとともに、その枠部材の上面のうち前記摘み部分に対向する部位は切欠かれていることを特徴とする請求項2に記載の深絞り型包装機。
【請求項4】
前記保持手段は、前記上側フィルムに接触する抑え部材と、前記下側フィルムに接触する受け部材とを備え、
前記受け部材は、帯板からなり、その帯板の上面の前記付勢部材に対向する位置に、前記摘み部分が挿入可能な切欠きが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の深絞り型包装機。
【請求項5】
間欠的に搬送される硬質の下側フィルムに対し、凹状のポケット部を成型する成型装置と、
その成型装置の下流側に配置され、前記ポケット部内に被包装物が挿入された状態の前記下側フィルムに対して軟質の上側フィルムを被覆する手段と、
前記下側フィルムの前記ポケット部が形成されていないフィルム部位と、それに接触する前記上側フィルムのフィルム部位のうち、前記ポケット部の外周囲を囲む領域をシールして前記ポケット部を密封するシール手段と、
前記下側フィルム並びに前記上側フィルムの所定部位をカットして、個々の包装体を製造するカッター手段と、
を備え、
前記シール手段は、前記下側フィルムの前記ポケット部が形成されていないフィルム部位と、それに接触する前記上側フィルムのフィルム部位のうちの一部を未シール部として摘み部分を形成する機能を持ち、
前記カッター手段におけるカット位置は前記摘み部分を含み、前記包装体はその摘み部分がフリー状態になるようにした深絞り型包装機と、
その深絞り型包装機から搬出されたる包装体における摘み部分を下方に折り曲げる折り曲げ装置と、を備えた深絞り型包装システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−95305(P2010−95305A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269660(P2008−269660)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000206093)大森機械工業株式会社 (138)
【Fターム(参考)】