説明

混合ガス供給装置及びそれを用いた燃料電池システム並びに混合ガス供給方法

【課題】低温環境下において、燃料ガスと付臭剤とを容易に混合することが可能な技術を提供する。
【解決手段】燃料ガスと付臭剤とが混合された混合ガスを供給するための混合ガス供給装置は、燃料ガスを供給する燃料ガス供給部と、付臭剤を含み燃料ガスに付臭剤を付加するために用いられる付臭剤付加材を貯蔵する付臭剤付加材貯蔵部と、燃料ガスと付臭剤とを混合するための混合室と、燃料ガス供給部から混合室に燃料ガスを供給するための燃料ガス供給路と、付臭剤付加材貯蔵部から混合室に付臭剤付加材を供給するための付臭剤付加材供給路と、混合室に供給された付臭剤付加材を加熱することで、混合室に供給された燃料ガスに付臭剤を付加する付臭剤付加処理部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスと付臭剤とが混合された混合ガスを供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムでは、燃料電池のアノード側に水素等の燃料ガスを供給し、また、カソード側に空気等の酸化ガスを供給して、アノード及びカソードにおける電気化学反応を利用して発電する。一般に、燃料ガスには、漏洩を早期に検知するために付臭剤が付加されて用いられる(下記特許文献1,2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−111167号公報
【特許文献2】特開2004−134272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
低温環境下において、燃料電池システムでは、付臭剤が凝固又は凝縮するために燃料ガスに付臭剤が混ざり難いという問題があった。しかし、従来は、これに関して十分な工夫がなされていないのが実情であった。
【0005】
なお、上述した課題は、燃料電池システムに限らず、燃料ガスと付臭剤との混合ガスを供給する場合に共通する問題であった。
【0006】
本発明は、低温環境下において、燃料ガスと付臭剤とを容易に混合することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の混合ガス供給装置は、燃料ガスと付臭剤とが混合された混合ガスを供給するための混合ガス供給装置であって、前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給部と、前記付臭剤を含み前記燃料ガスに前記付臭剤を付加するために用いられる付臭剤付加材を、貯蔵する付臭剤付加材貯蔵部と、前記燃料ガスと、前記付臭剤と、を混合するための混合室と、前記燃料ガス供給部から前記混合室に前記燃料ガスを供給するための燃料ガス供給路と、前記付臭剤付加材貯蔵部から前記混合室に前記付臭剤付加材を供給するための付臭剤付加材供給路と、前記混合室に供給された付臭剤付加材を加熱することで、前記混合室に供給された燃料ガスに前記付臭剤を付加する付臭剤付加処理部と、を備えることを要旨とする。
【0008】
本発明の混合ガス供給装置は、混合室に供給された付臭剤付加材を加熱して燃料ガスに付臭剤を付加するので、低温環境下においても、燃料ガスと付臭剤とを容易に混合することができる。また、付臭剤付加材を加熱するので加熱範囲が比較的小さくて済む。
【0009】
上記混合ガス供給装置において、前記付臭剤付加材は、熱可塑性を有する被覆層と、前記被覆層内に充填された前記付臭剤と、を有するようにしてもよい。
【0010】
このようにすることで、混合ガス供給装置の置かれた環境の温度変化によって被覆層内の付臭剤の状態(固体/液体/気体)が変化しても、同じ方法で燃料ガスに付臭剤を付加することができる。また、温度変化によって被覆層内の付臭剤の状態が変化しても、付臭剤付加材によって付加可能な付臭剤の量を一定に保つことができる。
【0011】
上記混合ガス供給装置において、前記付臭剤付加材は、固体状の前記付臭剤で構成されており、前記付臭剤付加処理部によって加熱されると昇華して気体となるようにしてもよい。
【0012】
このようにすることで、付臭剤付加材を加熱することで、付臭剤を昇華させて気体とすることができ、燃料ガスと混合させることができる。
【0013】
上記混合ガス供給装置において、前記付臭剤付加材貯蔵部は、前記混合室よりも上部に配置されており、前記付臭剤付加材は、重力を利用して、前記付臭剤付加材供給路を通って前記付臭剤付加材貯蔵部から前記混合室に供給されるようにしてもよい。
【0014】
このようにすることで、付臭剤付加材は自重で混合室に向かって落下するので、付臭剤付加材貯蔵部から混合室に付臭剤付加材を送るために特別な装置が必要とならず、従って、混合ガス供給装置の製造コストの上昇を抑制することができる。
【0015】
上記混合ガス供給装置において、前記付臭剤付加材の形状は球形であるようにしてもよい。
【0016】
このようにすることで、付臭剤付加材を混合室に落下させ易くできる。
【0017】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、上記混合ガス供給装置を備える燃料電池システムとして構成することもできる。また、混合ガス供給装置や燃料電池システムといった装置発明の他に、混合ガス供給方法等の方法発明の形態で実現することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1の実施例:
B.第2の実施例:
C.変形例:
【0019】
A.第1の実施例:
図1は、本発明の一実施例としての混合ガス供給装置を適用した燃料電池システムの概要構成を示す説明図である。この燃料電池システム1000は、燃料電池200と、混合ガス供給部100と、付臭剤除去部190と、制御部500と、を備えている。燃料電池200は、固体高分子型の燃料電池である。本実施例において、燃料電池システム1000は、電気車両に搭載され、動力源としての電力をモータ等を有する車両駆動部(図示省略)に供給する。なお、燃料電池システム1000は電気車両において用いられる場合に限らず、据え置き型の発電用システム等としても用いることができる。
【0020】
混合ガス供給部100は、水素ガスタンク160と、水素ガス流出路172と、第1水素ガス供給路174と、第2水素ガス供給路176と、三方コック170と、電磁弁171と、付臭剤カプセル貯蔵部130と、電磁弁125と、付臭剤カプセル供給路120と、混合室110と、赤外線射出部140と、混合ガス排出路182と、逆止弁180と、を備えている。
【0021】
水素ガスタンク160には、水素ガスが貯蔵されている。三方コック170は、水素ガス流出路172と第1水素ガス供給路174と第2水素ガス供給路176とを接続する。第1水素ガス供給路174は、一端が三方コック170に接続されており、他端が混合室110と連通している。第2水素ガス供給路176は、一端が三方コック170に接続されており、他端が付臭剤カプセル貯蔵部130と連通している。電磁弁171は、第2水素ガス供給路176に配置されており、開閉することで第2水素ガス供給路176に水素ガスを流入させたり流入を止めたりする。
【0022】
付臭剤カプセル貯蔵部130には、球形の付臭剤カプセル10が多数貯蔵されている。この付臭剤カプセル10は、パラフィンの被覆層12と、その被覆層12内部に充填された付臭剤14とからなる。付臭剤カプセル10の直径は、およそ1cmである。なお、被覆層12の材料としては、パラフィンに限らず、熱可塑性を有する任意の物質を採用することができる。本実施例では、付臭剤14として、t−ブチルメルカプタン(TBM)が用いられる。
【0023】
なお、付臭剤としては、TBMに代えて他の付臭剤を用いることができる。例えば、1−ペンテンを用いることもできる。また、2−メチル1−ブテン、アレン、エチルアレン、1,4−ペンタジエン、1−ブチン、スチレン、ビニルアセチレン、オクテン、デセン、プロピレン、イソブテン、ジイシブチレン、イソプレン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−ビニルシクロヘキセン−1,5−エチリデン−2−ノルボルネン、シクロヘキセン、1−メチルピロール、ピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2−プロピルピラジン、2−ピコリン、α,p−ジメチルスチレン、クメン、リモネン、メシチレン、3−メチルインドール、ミルセン、α―ピネン、1−オクタノール、2−アルコキシ−3−アルキルピラジン、2−メトキシ−3−エチルピラジン、2−メトキシ−3−n−プロピルピラジン、2−メトキシ−3−iso−プロピルピラジン、2−メトキシ−3−n−ブチルピラジン、2−メトキシ−3−iso−ブチルピラジン、2−エトキシ−3−メチルピラジン、2−エトキシ−3−エチルピラジン、2−エトキシ−3−n−プロピルピラジン、2−エトキシ−3−iso−プロピルピラジン、2−エトキシ−3−n−ブチルピラジン、2−エトキシ−3−iso−ブチルピラジン、2,3−ブタンジオール、または、これらの混合物を用いることもできる。
【0024】
付臭剤カプセル供給路120は、一端が混合室110と連通し、他端が電磁弁125を介して付臭剤カプセル貯蔵部130に接続されている。そして、電磁弁125は、開閉することで、付臭剤カプセル貯蔵部130と付臭剤カプセル供給路120との間を連通させたり閉塞したりする。混合室110は、中空形状であり、水素ガスと付臭剤とを混合させて混合ガスを生成するために用いられる。この混合室110は、外壁の一部に赤外線照射窓114を有している。この赤外線照射窓114は、赤外線透過性を有するCaF2(フッ化カルシウム)からなり、Y軸方向の長さ(高さ)は、付臭剤カプセル10の直径よりも若干長い程度である。また、混合室110の内部には、赤外線照射窓114に向かって徐々に下るように傾斜が付けられた傾斜面112が配置されている。この傾斜面112は、金属製のメッシュ構造を有する。なお、この金属メッシュの開口部分は付臭剤カプセル10よりも小さい。赤外線射出部140は、赤外線照射窓114を介して混合室110内部に赤外線を照射する。混合ガス排出路182は、一端が混合室110と連通し、他端が燃料電池200のアノード側に連通している。逆止弁180は、混合ガス排出路182に配置されており、混合ガスが混合室110から燃料電池200へと流れるようにし、混合室110に逆流するのを抑制する。付臭剤除去部190は、混合ガス排出路182に配置されており、付臭剤を除去する。なお、付臭剤除去部190は、多孔質材料(活性炭やゼオライト等)からなり、混合ガス中の付臭剤を吸着することにより除去する。
【0025】
なお、水素ガスタンク160は、請求項における燃料ガス供給部に相当する。また、付臭剤カプセル10は請求項における付臭剤付加材に、付臭剤カプセル貯蔵部130は付臭剤付加材貯蔵部に、水素ガス流出路172及び第1水素ガス供給路174は請求項における燃料ガス供給路に、付臭剤カプセル供給路120は請求項における付臭剤付加材供給路に、赤外線射出部140は請求項における付臭剤付加処理部に、それぞれ相当する。
【0026】
燃料電池200において、カソード側には、酸化ガスとしての空気が供給され、電気化学反応に用いられた後、余ったガス(酸化オフガス)が大気へと排出される。一方、アノード側には、混合ガス供給部100から燃料ガスとしての水素ガスが供給される。このとき、混合ガス供給部100は、水素ガスに付臭剤を付加して混合ガスを生成し、この混合ガスを燃料電池200のアノード側に送ることで水素ガスを供給するようにしている。水素ガスに付臭剤を付加するのは、混合ガス排出路182において水素ガスが漏洩したことを検知できるようにするためである。また、混合ガス中の付臭剤は、燃料電池200に流入する直前で付臭剤除去部190によって除去される。付臭剤を除去するのは、燃料電池200内の触媒が付臭剤によって被毒されるのを抑制するためである。そして、混合ガス供給部100では、低温環境下においても、燃料ガスに付臭剤を付加できるように構成されている。
【0027】
具体的には、制御部500は、所定の期間(例えば2秒)おきに、電磁弁125を所定期間(例えば1秒間)だけ開放する。そうすると、付臭剤カプセル貯蔵部130内の付臭剤カプセル10が、自重によって付臭剤カプセル供給路120を介して混合室110に落下する。このとき、制御部500は、電磁弁125の開放に合わせて電磁弁171も同じ期間だけ開放する。電磁弁171が開放されることから、第2水素ガス供給路176を介して水素ガスが付臭剤カプセル貯蔵部130に流入する。したがって、この水素ガスの流れによっても、付臭剤カプセル10は、下向きの力を受けて混合室110に向かって落下する。混合室110内を落下した付臭剤カプセル10は、傾斜面112に着地して赤外線照射窓114に向かって転がる。そして、付臭剤カプセル10は、赤外線照射窓114の近傍まで来ると、赤外線射出部140によって赤外線を照射される。そうすると、被覆層12を構成するパラフィンが溶けると共に、内部に充填されているTBM14が気化して混合室110内に拡散する。一方、水素ガスタンク160から流出した水素ガスは、水素ガス流出路172及び第1水素ガス供給路174を通って混合室110に常時送り込まれている。したがって、混合室110内において、気化した付臭剤(TBM)と水素ガスとが混合されることとなる。そして、この混合ガスは、混合ガス排出路182を介して燃料電池200に供給される。
【0028】
以上の構成によって、混合ガス供給部100では、低温で付臭剤が気化しないような環境下であっても、赤外線射出部140によって付臭剤カプセル10を加熱するので、付臭剤カプセル10内の付臭剤を気化させて水素ガスに付加することができる。このとき、赤外線射出部140の加熱範囲は、赤外線照射窓114の大きさ程度である。したがって、混合室110全体若しくは水素ガスタンク160全体を加熱範囲とする構成に比べて、加熱するための消費電力の上昇を抑えることができる。なお、溶解したパラフィンは、傾斜面112のメッシュ開口部分から液滴20として、混合室110の底に落下して溜まる。したがって、この底に溜まったパラフィン21を回収することで、パラフィンの回収を容易に行うことができる。
【0029】
燃料電池200のアノード側では、混合ガス供給部100によって供給された混合ガス中の水素ガスを用いて電気化学反応が行われる。そして、余ったガス(燃料オフガス)は循環されて、再び燃料電池200において電気化学反応に用いられる。制御部500は、燃料電池200における水素の使用率が高くなると、燃料電池200に供給される混合ガスの量を増やす。この場合、混合ガス中の付臭剤の濃度が一定のままであると、混合ガス量の増加によって、付臭剤除去部190において除去可能な限界量を超えた付臭剤が流入し、付臭剤の一部が除去されずに燃料電池200に流入する場合が発生し得る。そして、付臭剤は、燃料電池200において消費されず、また、燃料オフガスは循環されるので、燃料電池200に流入する付臭剤の量が徐々に増えるおそれがある。
【0030】
そこで、燃料電池システム1000では、燃料電池200における水素使用率が高くなると、混合ガス供給部100において混合ガス中の付臭剤濃度を下げるように構成されている。なお、燃料電池200において水素使用率が高くなる場合としては、例えば、運転手が電気車両のスピードを上昇させるためにアクセルペダル22を踏み込んだ場合が考えられる。この場合、アクセルの踏み込み量(アクセル開度とも呼ぶ)に応じた信号(以下、「アクセル開度信号」と呼ぶ)Wtがアクセルセンサ24から制御部500に通知されることとなる。
【0031】
制御部500は、アクセルセンサ24から高い水素使用率に応じたアクセル開度信号Wtを通知されると、水素ガスタンク160から流出する水素ガス量を増加させると共に、電磁弁125の1回あたりの開放期間を短くする。例えば、前述のように1秒間であった開放期間を、0.5秒間とする。そうすると、1回の開放で落下する付臭剤カプセル10の数はおよそ半分となる。それゆえ、混合室110内において単位時間あたりに気化するTBMの量もおよそ半分となり、混合ガスにおける付臭剤の濃度を下げることができる。なお、制御部500には、予めアクセル開度と1回あたりの開放期間とを対応付けたテーブルが記憶されている。そして、制御部500は、このテーブルを参照することで、通知されたアクセル開度信号Wtに基づいて電磁弁125の開放期間を決定する。以上のような構成とすることで、混合ガス中の付臭剤濃度を適当な濃度となるように調整することができ、燃料電池200の触媒が被毒されるのを抑制することができる。
【0032】
B.第2の実施例:
図2は、第2の実施例における燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。この燃料電池システム1000aは、付臭剤を貯蔵する構成、及び傾斜面112の構成において、燃料電池システム1000(図1)と異なり、他の構成は、第1の実施例と同じである。
【0033】
具体的には、本実施例では、付臭剤はナフタレン(昇華性を有する)であり、球状の固体のナフタレン(以下、「付臭剤球」と呼ぶ)10aとして、付臭剤カプセル貯蔵部130に貯蔵されている。また、傾斜面112aは、金属製の平板である点において、傾斜面112(図1)と異なる。このような構成において、傾斜面112aに落下した付臭剤球10aは、傾斜面112を赤外線照射窓114に向かって転がり、赤外線照射窓114近傍において赤外線射出部140によって赤外線を照射される。そうすると、付臭剤球10aを構成するナフタレンは昇華して気体となり、混合室110内部において水素ガスと混合する。このような構成を有する燃料電池システム1000aも、第1の実施例の燃料電池システム1000と同様な効果を有している。なお、第1の実施例と異なり、付臭剤は被覆層で覆われていないので、溶解した被覆層を回収する必要がない。
【0034】
なお、ナフタレンに代えて、他の昇華性物質、例えば、1−メントールを付臭剤として用いることもできる。また、パラジクロルベンゼン、アダマンタン、メチルナフタレン、カンフル、2,4,6−トリイソプロピル−1,3,5−トリオキサン、アントラキノン、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、安息香酸、無水フェニルマレイン酸、フェナントレイン、ニコチン酸や、これら昇華性物質の混合物を、付臭剤として用いることもできる。
【0035】
C.変形例:
なお、上記各実施例における構成要素の中の、独立クレームでクレームされた要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0036】
C1.変形例1:
上述した各実施例では、付臭剤は、付臭剤カプセル10又は付臭剤球10aとして付臭剤カプセル貯蔵部130に貯蔵されていたが、これらに代えて、常温で液体の付臭剤を、被覆層に充填せずそのまま貯蔵するようにしてもよい。かかる構成において、液体の付臭剤を少しずつ混合室110に滴下し、落ちた付臭剤滴を赤外線射出部140によって加熱して気化するようにしてもよい。このような構成においても、低温化環境下において付臭剤を水素ガスに付加することができ、また、滴下した付臭剤滴を加熱するので、加熱するための消費電力の増加を抑制することができる。すなわち、一般には、燃料ガスに付臭剤を付加するための任意の付臭剤付加材を、本発明の混合ガス供給装置において使用することができる。なお、付臭剤を滴下させる構成では、滴下する頻度や滴下する付臭剤の量を調整することで、混合ガス中の付臭剤濃度を調整することができる。
【0037】
C2.変形例2:
上述した各実施例では、混合ガス中の付臭剤濃度を調整するために、電磁弁125の1回あたりの開放期間を調整していたが、これに代えて、開放期間は一定のままで、開放する頻度を変化させることで、付臭剤濃度を調整するようにしてもよい。具体的には、例えば、上述した各実施例のように、2秒おきに電磁弁125を開放していたのを、付臭剤濃度を低下させる場合に4秒おきに開放するようにしてもよい。また、赤外線射出部140において赤外線の照射量を調整することで、付臭剤濃度を調整するようにしてもよい。例えば、付臭剤濃度を低下させようとする場合に、赤外線の照射量を低下させて単位時間あたりに気化する付臭剤の量を低下させるようにしてもよい。また、予め互いに大きさの異なる複数種類の付臭剤カプセル(付臭剤球)を貯蔵しておき、混合室110に落下させる付臭剤カプセル(付臭剤球)の種類を変えることで付臭剤濃度を調整するようにしてもよい。例えば、付臭剤濃度を低下させようとする場合に、より小さい付臭剤カプセル(付臭剤球)を落下させるようにしてもよい。すなわち、一般には、混合室110において単位時間あたりに気化する付臭剤の量を変化させることで、混合ガス中の付臭剤濃度を調整することができる。
【0038】
C3.変形例3:
上述した各実施例では、付臭剤カプセル10及び付臭剤球10aを加熱するのに赤外線射出部140を用いていたが、これに代えて、傾斜面112及び傾斜面112aを電熱線で構成し、この傾斜面112及び傾斜面112aを発熱させることで付臭剤カプセル10及び付臭剤球10aを加熱するようにしてもよい。すなわち、一般には、付臭剤カプセル10や付臭剤球10aを加熱する加熱部を備え、その加熱によって混合室110において水素ガスに付臭剤を付加することができるものを、付臭剤付加処理部として本発明の混合ガス供給装置に用いることができる。
【0039】
C4.変形例4:
上述した各実施例では、制御部500は、アクセルセンサ24からのアクセル開度信号Wtに基づいて、混合ガス中の付臭剤濃度を調整するようにしていたが、これに代えて、燃料電池200内の付臭剤濃度を直接計測し、その計測した濃度に基づいて混合ガス中の付臭剤濃度を調整するようにしてもよい。具体的には、例えば、燃料電池200内部や燃料オフガス排出路等に付臭剤の濃度センサを設置する。そして、制御部500は、濃度センサで計測した付臭剤濃度値を定期的に取得し、計測濃度が所定の値よりも高ければ付臭剤濃度を下げる、または、所定の濃度よりも低ければ付臭剤濃度を高くするように調整してもよい。
【0040】
C5.変形例5:
上述した各実施例では、付臭剤カプセル貯蔵部130に水素ガスを供給して付臭剤カプセル10及び付臭剤球10aを混合室110に落下させるようにしていたが、これに代えて、付臭剤カプセル10及び付臭剤球10aの自重のみによって混合室110に落下させる構成としてもよい。この場合、第2水素ガス供給路176は省略することができる。また、付臭剤カプセル貯蔵部130を、混合室110と同じ高さ又はより低い位置に配置し、重力を利用せずに水素ガスによってのみ、混合室110に付臭剤カプセル10及び付臭剤球10aを混合室110に供給するようにしてもよい。
【0041】
C6.変形例6:
上述した各実施例では、付臭剤カプセル10及び付臭剤球10aは、球形であったが、これに代えて、他の任意の形状であってもよい。例えば、立方体形状や円柱形状等であってもよい。
【0042】
C7.変形例7:
上述した各実施例では、水素ガスは、水素ガスタンク160に貯蔵されていたが、これに代えて、水素吸蔵合金に貯蔵するようにしてもよい。また、アルコールや天然ガス等を改質して水素ガスを発生させるようにしてもよい。すなわち、一般には、水素ガスを混合室110に供給することが可能な任意の構成の燃料ガス供給部を、本発明の混合ガス供給装置において使用することができる。
【0043】
C8.変形例8:
上述した各実施例では、固体高分子型の燃料電池を本発明に適用した場合について説明したが、本発明は、他のタイプの燃料電池にも適用可能である。
【0044】
C9.変形例9:
上述した各実施例では、混合ガス供給部100は、燃料電池200用の燃料ガス(水素ガス)を供給するものであったが、これに限らず、他の用途で用いられる燃料ガスを供給するものであってもよい。例えば、バーナー等において燃焼させて炎を出すために用いられるガスであってもよい。すなわち、一般には、酸化反応によってエネルギーを放出する燃料ガスを供給するために、本発明の混合ガス供給装置を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施例としての混合ガス供給装置を適用した燃料電池システムの概要構成を示す説明図である。
【図2】第2の実施例における燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
10…付臭剤カプセル
10a…付臭剤球
12…被覆層
14…付臭剤
20…液滴
21…パラフィン
22…アクセルペダル
24…アクセルセンサ
100…混合ガス供給部
110…混合室
112…傾斜面
112a…傾斜面
114…赤外線照射窓
120…付臭剤カプセル供給路
125…電磁弁
130…付臭剤カプセル貯蔵部
140…赤外線射出部
160…水素ガスタンク
170…三方コック
171…電磁弁
172…水素ガス流出路
174…第1水素ガス供給路
176…第2水素ガス供給路
180…逆止弁
182…混合ガス排出路
190…付臭剤除去部
200…燃料電池
500…制御部
1000…燃料電池システム
1000a…燃料電池システム
Wt…アクセル開度信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと付臭剤とが混合された混合ガスを供給するための混合ガス供給装置であって、
前記燃料ガスを供給する燃料ガス供給部と、
前記付臭剤を含み前記燃料ガスに前記付臭剤を付加するために用いられる付臭剤付加材を、貯蔵する付臭剤付加材貯蔵部と、
前記燃料ガスと、前記付臭剤と、を混合するための混合室と、
前記燃料ガス供給部から前記混合室に前記燃料ガスを供給するための燃料ガス供給路と、
前記付臭剤付加材貯蔵部から前記混合室に前記付臭剤付加材を供給するための付臭剤付加材供給路と、
前記混合室に供給された付臭剤付加材を加熱することで、前記混合室に供給された燃料ガスに前記付臭剤を付加する付臭剤付加処理部と、
を備える混合ガス供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の混合ガス供給装置において、
前記付臭剤付加材は、熱可塑性を有する被覆層と、前記被覆層内に充填された前記付臭剤と、を有する、混合ガス供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の混合ガス供給装置において、
前記付臭剤付加材は、固体状の前記付臭剤で構成されており、前記付臭剤付加処理部によって加熱されると昇華して気体となる、混合ガス供給装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の混合ガス供給装置において、
前記付臭剤付加材貯蔵部は、前記混合室よりも上部に配置されており、
前記付臭剤付加材は、重力を利用して、前記付臭剤付加材供給路を通って前記付臭剤付加材貯蔵部から前記混合室に供給される、混合ガス供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載の混合ガス供給装置において、
前記付臭剤付加材の形状は球形である、混合ガス供給装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の混合ガス供給装置を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
燃料ガスと付臭剤とが混合された混合ガスを供給するための混合ガス供給方法であって、
(a)前記付臭剤を含み前記燃料ガスに前記付臭剤を付加するために用いられる付臭剤付加材を、貯蔵する工程と、
(b)前記燃料ガスと前記付臭剤とを混合するための混合室に、前記燃料ガスと、前記付臭剤付加材と、を供給する工程と、
(c)前記混合室に供給された付臭剤付加材を加熱することで、前記混合室に供給された燃料ガスに前記付臭剤を付加する工程と、
を備える混合ガス供給方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−260838(P2008−260838A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104368(P2007−104368)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】