説明

混合相セラミック酸化物三元合金触媒製剤及びその触媒製造方法

窒素酸化物と一酸化炭素と炭化水素とを同時変換するための多相触媒、多相触媒を含む触媒組成物、触媒組成物の製造方法を提供する。多相触媒は一般式CeLn1−xx+sMOで表すことができ、式中、Lnは、天然鉱石から採取された単相混合ランタニド由来の元素の混合物、単一のランタニド、又は人工ランタニドの混合物であり、Aは、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Cs、Rb又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素であり、Mは、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Cu、V、Zr、Pt、Pd、Rh、Ru、Ag、Au、Al、Ga、Mo、W、Ti又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素である。0≦x<1.0、0≦y<10、0≦s<10である。y>0の場合のみs=0であり、s>0の場合のみy=0である。多相触媒は、白金及び/又はロジウムを含む蛍石型構造の酸化物からなる上層を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2000年11月15日に出願された、出願番号第09/713,120号の一部継続出願である2002年4月22日に出願の出願番号第10/127,979号の一部継続出願であり、それらの出願は参照により完全に本明細書に組み込まれる。出願番号第09/713,120号は、米国特許法第119条(e)の下で、2001年4月23日に出願された米国特許仮出願第60/286,186号の利益も請求した。
【0002】
本発明は、一般に、窒素酸化物と一酸化炭素と炭化水素とを同時に変換することができる三元触媒に関し、特に、多相触媒を含む三元触媒製剤に関する。多相触媒は、類似した組成を有する単相触媒よりも高い活性を有する。本発明は、触媒の活性を高めるための貴金属成分を有する酸化物層をさらに含む多相触媒にも関する。
【背景技術】
【0003】
窒素酸化物、一酸化炭素及び炭化水素ガスは、内燃機関からの排気ガス中の有毒成分である。窒素酸化物、一酸化炭素及び炭化水素の同時変換である「三元変換」は、自動車及び他の乗物の排出基準を満たすために望ましい。同時変換は、一般に、エンジン排気マニホールドの下流に設置される触媒変換装置ユニットで行われる。従来の触媒変換装置における触媒では、排気ガス中の有毒成分の効率的な三元変換を達成するため、好適な酸化物担体にPd、Pt及びRhなどの多量の貴金属を含み、触媒上の他の「助触媒(プロモーター)」と一緒に分散される。一般に、従来の触媒では、触媒1立方フィートにつき30〜300gの貴金属が使用される。
【0004】
貴金属のコストの高さと供給量の限定という理由から、従来の系よりも利用する貴金属の濃度をずっと低いものとしつつ、三元変換を効率的に実行できる触媒製剤が求められている。一般に、低含量の貴金属による従来の触媒は、より高含量の貴金属による触媒よりも速やかに老化するため、寿命が短い傾向がある。寿命が長く、従来の触媒より低含量の貴金属を利用する、三元触媒製剤の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、市販されている従来の系よりも、貴金属の必要な添加量を5〜15倍少ないものとしつつ、高効率で作用する、改善された三元触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、窒素酸化物、一酸化炭素及び炭化水素の同時変換のための多相触媒を提供する。触媒は、下記一般式によって表される。
【数1】

式中のAは、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Cs、Rb及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素である。Lnは、天然鉱石から採取された単相混合ランタニド由来の元素の混合物、単一のランタニド、又は人工ランタニドの混合物である。Mは、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Cu、V、Zr、Pt、Pd、Rh、Ru、Ag、Au、Al、Ga、Mo、W、Ti及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素である。xは、0≦x<1.0によって定義される数である。yは、0≦y<10によって定義される数である。sは、0≦s<10によって定義される数である。zは、z>0によって定義される数である。y>0の場合のみs=0であり、s>0の場合のみy=0である。
【0007】
本発明の一実施形態では、多相触媒は、ペロブスカイト相及び非ペロブスカイト相を含む。ペロブスカイト相は、一般式
【数2】

によって表される。非ペロブスカイト相は、酸化セリウム、式AOによって表されるアルカリ土類酸化物、式AOによって表されるアルカリ酸化物、アルカリ土類炭酸塩又はそれらの任意の組合せでよい。
【0008】
本発明の別の態様は、触媒組成物を提供する。触媒組成物は、基質;ウォッシュコート;及び下記一般式によって表される多相触媒を含む。
【数1】

式中のLnは、天然鉱石から採取された単相混合ランタニド由来の元素の混合物、単一のランタニド、又は人工ランタニドの混合物である。Aは、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Cs、Rb及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素である。Mは、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Cu、V、Zr、Pt、Pd、Rh、Ru、Ag、Au、Al、Ga、Mo、W、Ti及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素である。xは、0≦x<1.0によって定義される数である。yは、0≦y<10によって定義される数である。sは、0≦s<10によって定義される数である。zは、z>0によって定義される数である。y>0の場合のみs=0であり、s>0の場合のみy=0である。
【0009】
本発明の一実施形態では、基質は金属又はセラミックのハニカム支持体であってよい。
【0010】
ウォッシュコートは、アルミナ及び酸化セリウムベースの物質を含むことができる。本発明の別の実施形態では、酸化セリウムベースの物質は、
【数3】

又は
【数4】

であってよく、上記式において、0<a<1である。Lanは、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu及びYbからなる群から選択される少なくとも1つの希土類である。c>0.15であり、0.15>d>0.01である。δ1及びδ2は、酸素欠損度である。
【0011】
本発明の一実施形態では、触媒組成物は、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム及び銀からなる群から選択される少なくとも1つの貴金属成分を含むことができる。本発明の別の実施形態では、触媒組成物は、少なくとも1つの卑金属を含むことができる。本発明のさらに別の実施形態では、触媒組成物は、式
【数4】

を有する酸化セリウムベースの物質を含む層を含むことができる。式中のLanは、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho又はYbの少なくとも1つである。c>0.15、0.15>d>0.01である。また、δ2は酸素欠損度である。酸化セリウムベースの物質は、蛍石結晶構造を有する。層は、パラジウム、白金及びロジウムからなる群から選択される少なくとも1つの貴金属成分を含むこともできる。本発明の一実施形態において、層は、白金及びロジウムの貴金属成分を含む。別の実施形態において、層は、非貴金属成分としてアルミナを含むことができる。
【0012】
本発明のさらなる態様は、触媒組成物を作製する方法を提供する。その方法は、以下の工程を含む。
(a)基質を提供する工程と、
(b)基質の上にウォッシュコートを形成するための少なくとも1つの担体物質を提供する工程と、
(c)基質によって支持される多相触媒を形成するための、一般カチオン式、
【数5】

を有する溶液を提供する工程。
式中のLnは、単一のランタニド、人工ランタニドの混合物、又は天然鉱石から採取された単相混合ランタニド由来の元素の混合物である。Aは、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Cs、Rb及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素である。Mは、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Cu、V、Zr、Pt、Pd、Rh、Ru、Ag、Au、Al、Ga、Mo、W、Ti及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素である。xは、0≦x<1.0によって定義される数であり、yは、0≦y<10によって定義される数であり、sは、0≦s<10によって定義される数である。式中、y>0の場合のみs=0であり、s>0の場合のみy=0である。zは、z>0によって定義される数である。
(d)基質、ウォッシュコート及び多相触媒を含む触媒組成物を形成する工程。
【0013】
本発明の一実施形態に従って、触媒組成物は、以下の工程によって形成することができる。(a)基質の上へ担体物質をスラリー沈着させてウォッシュコートの層を形成する工程と、(b)溶液をウォッシュコートに含浸させる工程と、(c)基質、ウォッシュコート及び含浸溶液を焼成して、基質の上に多相触媒を形成する工程。
【0014】
本発明の代わりの実施形態では、触媒組成物は、以下の工程によって形成することができる。(a)溶液からバルク型の多相触媒を形成する工程と、(b)担体物質及びバルク多相触媒のスラリー懸濁液を形成する工程と、(c)基質の上にスラリー懸濁液を沈着させて基質の上に多相触媒を形成する工程。
【0015】
本発明の別の実施形態では、触媒組成物は、以下によって形成することができる。(a)溶液を担体物質に含浸させることと、(b)溶液を含浸させた担体物質を焼成して、担体物質上の分散多相触媒の形の多相触媒を形成することと、(c)分散多相触媒を有する担体物質を基質の上にスラリー沈着させて基質の上に多相触媒を形成すること。
【0016】
一実施形態では、本方法は触媒組成物の上に層を形成することを含むこともでき、その層は式
【数4】

を有する酸化セリウムベースの物質を含む。式中のLanは、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho又はYbの少なくとも1つである。c>0.15、0.15>d>0.01である。また、δ2は酸素欠損度である。酸化セリウムベースの物質は、蛍石結晶構造を有する。
【0017】
本発明の別の態様に従い、自動車排気ガス中の窒素酸化物、一酸化炭素及び炭化水素を同時変換するための方法が提供される。その方法は、以下を含む。
(a)触媒組成物を提供する工程であって、その触媒組成物は、a)基質、b)ウォッシュコート、及びc)一般式、
【数1】

によって表される多相触媒を含み、式中のLnは、天然鉱石から採取された単相混合ランタニド由来の元素の混合物、単一のランタニド、又は人工ランタニドの混合物である。Aは、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Cs、Rb及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素である。Mは、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Cu、V、Zr、Pt、Pd、Rh、Ru、Ag、Au、Al、Ga、Mo、W、Ti及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素である。xは、0≦x<1.0によって定義される数であり、yは0≦y<10によって定義される数であり、sは0≦s<10によって定義される数であり、zは、z>0によって定義される数である。式中では、y>0の場合のみs=0であり、s>0の場合のみy=0である工程。
(b)排気を触媒組成物と接触させる工程。
【0018】
一実施形態において、触媒組成物は、式
【数4】

を有する酸化セリウムベースの物質を含む層を含むこともできる。式中のLanは、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho又はYbの少なくとも1つである。c>0.15、0.15>d>0.01である。また、δ2は酸素欠損度であり、化セリウムベースの物質は蛍石結晶構造を有する。
【0019】
本発明は、添付の請求項においてその最も完全な範囲で定義され、その好ましい実施形態において下に記載される。
【0020】
多相触媒について記載する。多相触媒は、類似した組成を有する単相触媒よりも高い活性を有する。理論によって限定されることを望まないが、複数の触媒相を完全に混和すると、多相触媒が高温に曝露されたとき、複数相の凝集又は焼結を遅らせると考えられている。本発明の実施形態の多相触媒は、触媒変換装置内で、窒素酸化物、一酸化炭素及び炭化水素の同時変換するために用いることができる。それらは、下記のように他の用途に適用することもできる。自動車触媒変換装置内の三元触媒として記載された多相触媒の実施形態は、それらに限定することを意図するものではない。
【0021】
本発明の一態様は、一般式
【数1】

によって表される多相触媒を提供し、式中のAは、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Cs、Rb及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されるアルカリ又はアルカリ土類元素である。Lnは、天然鉱石から採取された単相混合ランタニド由来の元素の混合物、単一のランタニド、又は人工ランタニドの混合物である。また、Mは、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Cu、V、Zr、Pt、Pd、Rh、Ru、Ag、Au、Al、Ga、Mo、W、Ti及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素である。xは、0≦x<1.0によって定義される数であり、yは、0≦y<10によって定義される数であり、sは、0≦s<10によって定義される数であり、zは、z>0によって定義される数である。式中、s>0の場合のみy=0である。
【0022】
本発明の実施形態に従って、MはFe及び/又はMnであってよい。下付き文字xは、0.1〜0.8又は0.2〜0.6の範囲であってよい。下付き文字yは、0.2〜2、0.2〜1.5又は0.4〜1.2の範囲であってよい。下付き文字sは、0.2〜4、0.4〜3又は0.6〜2.8の範囲であってよい。下付き文字zは、多相触媒の成分、成分の酸化状態、及び下付き文字x、y、sによって決まる。場合によっては、下付き文字zは、約2y−1/2x+s+3と概算することができる。本発明の実施形態に従って、zは約3〜33、約3〜28、約3〜23、又は約3〜18の範囲である。
【0023】
単相混合ランタニドは、化合物の結晶構造中のカチオン位置を様々なランタニドで占めた単一の化合物である。また、単相混合ランタニドのカチオン位置は、様々なランタニドで占めることができる。本発明の例示的な実施形態において、単相混合ランタニドは、バストネサイト鉱石から生成される。それは、いくつかのランタニドのカチオン及び硝酸塩、炭酸塩、又は塩化物アニオンを含むことができる。単相混合ランタニドは水和物質でもよく、即ち、それは水和水を含むことができる。バストネサイトが混合ランタニドフッ化炭酸塩の鉱石であることは、当技術分野で公知である。バストネサイトの混合ランタニドフッ化炭酸塩は、[LnF]及び[CO]の別々の層を有する結晶構造を採用してもよく(Y.Niら、Am.Mineral、78(1993)415頁)、FはOHによって置換されてもよい(M.Fleisher、Can.Mineral、16(1978)361頁)。したがって、ヒドロキシルイオンが、一相性(単層)物質の格子内のアニオン位置を占めてもよい。
【0024】
別のランタニド(Ln)誘導体を、当技術分野で公知である方法によってバストネサイトから調製することができる。そのような方法の例は、B.T.KilbournによるCer.Eng.Sc.Proc.、6(1985)1331〜1341頁、及び、Fathi HabashiによるThe Discovery and Industrialization of the Rare Earths、UNOCAL 76 MOLYCORP(1994)、図14に記載されている。Kilbournの参考文献及びHabashiの参考文献は、参照により完全に本明細書に組み込まれる。バストネサイト鉱石から得られるLn誘導体に関連する一般的なフローチャートを、図1に示す。バストネサイトを、先ず粉砕及び浮遊選鉱によって処理して、バストネサイト濃縮物を生成する。Ln炭酸塩、Ln塩化物又はLn硝酸塩は、バストネサイト濃縮物から酸溶解により生成することができる。或いは、バストネサイト濃縮物を塩酸で浸出させて、可解性画分及び不溶性画分を形成させてもよい。ランタン濃縮物は可溶性画分から得られ、セリウム濃縮物は不溶性画分から得られる。
【0025】
バストネサイト鉱石から得られる単相混合ランタニド誘導体の調製の詳細な説明が、米国特許第5,939,354号明細書及び第5,977,017号明細書に記載され、その両方は参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0026】
単相混合ランタニド由来の元素の混合物は、ありのまま(natural)のランタニドの比率又は変更された(modified)ランタニドの比率を有することができる。ありのままのランタニドの比率は、天然のランタニド鉱石中における分布比率と同一であるか、それに近似する比率である。例えば、バストネサイト鉱石は、一般に、ランタニド酸化物ベースで、4.0%の酸化Pr、50.5%の酸化Ce、33.7%の酸化La、及び11.8%の酸化Ndを含有する。バストネサイト鉱石における比率と同じ比率のランタニドを有するランタニド混合物は、ありのままのランタニドの比率を有するとみなされよう。この比率は、鉱体だけでなく鉱物自体においても、先天的に変化しやすいことから、変化する場合のあることを理解すべきである。「変更された」ランタニドの比率を有する混合物は、ありのままのランタニド比率と、ランタニド鉱石中の比率が異なるランタニドを含む。本発明において、用語「変更された比率」は、精製された単一のランタニドの混合物を除外するものと理解すべきである。
【0027】
バストネサイト濃縮物、及びバストネサイト濃縮物の酸溶解によって生成されるLn誘導体の両方は、これらの物質中のランタニドの比率がバストネサイト鉱石中のランタニドの比率と同じであるので、ありのままのランタニドの比率を有する。ランタン濃縮物及びセリウム濃縮物中のランタニドの比率は、バストネサイト鉱石中のランタニドの比率とは異なるので、ランタン濃縮物及びセリウム濃縮物の両方は、変更された比率のランタニドを有する。ありのままの比率のランタニドを有するバストネサイト濃縮物と比較して、ランタン濃縮物ではセリウムが低減され、セリウム濃縮物ではセリウムが濃縮される。
【0028】
本発明の一実施形態では、天然の鉱石から採取された単相混合ランタニド由来のランタニドの混合物は、バストネサイト鉱石から得られる。本発明の別の実施形態では、Lnは、バストネサイト鉱石から得られるランタン濃縮物に由来するランタニドの混合物である。本発明の代わりの実施形態では、Lnは単一のランタニドプラセオジムである。
本明細書で用いられる用語「人工ランタニドの混合物」は、精製されたランタニドの混合物である。
【0029】
本発明の一実施形態において、多相触媒は、ペロブスカイト相及び非ペロブスカイト相を含み、ペロブスカイト相は式
【数2】

で表される。本発明の実施形態に従って、多相触媒のペロブスカイト相は、Ln0.8Sr0.2Mn0.88Pd0.12、Ln0.8Sr0.2Mn0.94Pd0.06、Ln0.60Sr0.40Mn0.95Pd0.05、Ln0.64Sr0.36Mn0.72Pd0.28、及びLn0.80Sr0.20Mn0.65Pd0.35からなる群から選択されるカチオン式によって表すことができる。
【0030】
本発明の一実施形態では、多相触媒の非ペロブスカイト相は、酸化セリウム、不純物を添加した酸化セリウム、式AOによって表されるアルカリ酸化物、式AOによって表されるアルカリ土類酸化物、アルカリ土類炭酸塩、アルカリ炭酸塩、又はそれらの組合せである。本発明の一実施形態では、多相触媒中のアルカリ土類酸化物AOは、SrOである。他の混合金属酸化物相が、多相触媒中に存在してもよい。
【0031】
本発明の実施形態に従って、多相触媒は、一般カチオン式
【数5】

によって表される比率で、水溶性塩を単一の水溶液に溶解することによって形成できる。本明細書で用いるように、溶解されて上記一般カチオン式を有する溶液を形成する水溶性塩は、前駆体塩と呼ばれる。一実施形態では、前駆体塩の均一な非晶質の乾燥溶液は、水溶液から水を除去することによって調製される。水は、溶液を加熱することによる蒸発を通して除去することができる。或いは、溶解性の塩の水溶液の上に、空気を吹き込むことによって水を除去することができる。乾燥溶液を焼成して、多相触媒を形成することができる。一実施形態では、1つ又は複数の塩が前駆体塩の溶液から結晶する可能性を最小にするために、溶液を制御された方法で乾燥させる。前駆体塩の溶液からの塩の結晶化は、触媒の活性に悪影響を及ぼすことがある。
【0032】
代わりの実施形態では、多相触媒前駆体を共沈殿させるために、沈殿剤が前駆体塩の水溶液に加えられる。多相触媒は、多相触媒前駆体を焼成することによって形成される。一実施形態では、シュウ酸又はシュウ酸の水溶液が沈殿剤として用いられる。共沈殿によって水溶液から多相触媒前駆体を形成するためには、クエン酸など、他の沈殿剤が好適である。一実施形態では、前駆体塩を含む水溶液の流れを、シュウ酸の水溶液の流れと混合させて、多相触媒前駆体を形成する。別の実施形態では、前駆体を焼成して多相触媒を形成する前に、多相触媒前駆体を乾燥させる。
【0033】
溶解性塩の任意の方法を用いて、溶液を形成することができる。好適な溶解性の塩には、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、酸化物、炭酸塩などが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の一実施形態では、塩の沈殿を阻止又は最小にすることによって溶液を安定させるために、リンゴ酸などの酸を溶解性の塩の水溶液に加える。リンゴ酸を用いる場合、一般に約9〜10重量%のリンゴ酸を水溶液に加える。
【0034】
多相触媒は、多相触媒の所望の相化学的性質を形成するため、十分に高い温度まで乾燥溶液又は多相触媒前駆体を加熱することによって、溶解性の塩の乾燥溶液又は多相触媒前駆体から形成される。十分に高い温度とは、形成される多相触媒によって決まるが、AがSrでありMがMnである本発明の一実施形態において、均一な乾燥溶液又は多相前駆体は、通常、約500℃〜1000℃の温度に加熱される。本発明の他の実施形態では、乾燥溶液又は多相前駆体を、約600℃〜900℃の温度又は約700℃〜850℃の温度に加熱して、多相触媒を形成する。多相触媒を形成するための温度範囲は、カチオン式及び使用した特定のカチオンによって決まる。十分に高い温度は、多相触媒の一部の実施形態のための、AがSrでありMがMnである実施形態のための範囲より高くても、又は低くてもよいことを理解すべきである。
【0035】
本発明の実施形態に従って、乾燥溶液又は多相触媒前駆体を約1〜100時間、約2〜50時間又は約3〜10時間加熱して多相触媒を形成するが、その時間は多相触媒の製剤によって異なる。多相触媒の形成に適する条件は、本明細書の教示を考慮して、不必要な実験なしで当分野の技術者が決定することができる。
【0036】
本発明の例示的な実施形態では、カチオン溶液又は多相触媒前駆体を室温の流動空気中で乾燥させ、約150℃の空気中で熱処理し、約700℃で約10時間焼成して、一般式
【数1】

の多相触媒を形成する。
【0037】
理論によって限定されることを望まないが、多相触媒が均一な乾燥溶液を焼成することによって形成される場合、2つ以上の相の多相触媒の完全混和が形成されると考えられている。多相触媒の複数の相の完全混和は、多相触媒が高温に曝露させられるときの、複数の相の凝集又は焼結を遅らせると考えられている。
【0038】
本発明の多相触媒の実施形態は、触媒組成物を作製するために用いることができる。従って、本発明の別の態様は、 (a)基質と、(b)ウォッシュコートと、(c)下記一般式
【数1】

によって表される多相触媒と、を含む触媒組成物を提供する。
多相触媒の組成物は、すでに記載されている。
【0039】
本明細書で用いるように、基質は、触媒を支持するための当技術分野で公知である任意の支持体構造である。本発明の一実施形態では、基質はビーズ又はペレットの形態である。ビーズ又はペレットは、アルミナ、シリカアルミナ、シリカ、チタニア、それらの混合物、又は任意の適する物質から作ることができる。本発明の例示的な実施形態では、基質はハニカム支持体である。ハニカム支持体は、セラミック製のハニカム支持体又は金属製のハニカム支持体でよい。セラミック製ハニカム支持体は、例えば、シリマナイト、ジルコニア、ペタル石、黝輝石、ケイ酸マグネシウム、ムライト、アルミナ、ムライト、コージェライト(MgAlSi18)、他のアルミニウム‐シリケート物質、又はそれらの組合せから作ることができる。他のセラミック製支持体も、好適である。
【0040】
支持体が金属製ハニカム支持体である場合、金属は、耐熱性の卑金属合金、特に鉄が実質的又は主要な成分である合金でよい。金属支持体の表面は、合金の耐食性を改善するために、合金の表面に酸化物層を形成することによって、約1000℃より高温で酸化させてもよい。合金の表面の酸化物層は、モノリス支持体の表面へのウォッシュコートの粘着を高めることもできる。好ましくは、金属製であれセラミック製であれ、基質支持体のすべては、三次元の支持体構造を提供する。
【0041】
本発明の一実施形態では、基質は、モノリスが伸長した複数の精密な並行流路を有する、モノリス担体でよい。流路は、任意の好適な断面形状及びサイズのものでよい。流路は、例えば、台形、長方形、四角形、折曲状、六角形、卵形又は円形とすることができ、その他の好適な形状としてもよい。モノリスは、1平方インチの断面積につき、約60〜1200個以上のガス注入口又は流路を含むことができるが、より少数の流路を用いてもよい。
【0042】
基質の上には、ウォッシュコートを配置できる。本明細書で用いるように、用語「ウォッシュコート」は、基質又は固体支持体構造上の、酸化物固体からなるコーティングを指す。ウォッシュコート中の酸化物固体は、担体物質酸化物、1つ又は複数の触媒酸化物、又は、担体物質酸化物及び触媒酸化物の混合物でよい。担体物質は多孔質の固体酸化物であり、分散相に対し広い表面積を提供するために用いられる。担体物質は、高温並びに様々な還元及び酸化性の条件下において、通常安定である。
【0043】
担体物質は、最初は、粉末の形態であることが好ましい。担体物質は、支持体の上にウォッシュコートを形成するための、当技術分野で公知である不活性の粉末、又は任意の他の担体物質でよい。担体物質の例としては、これに限定されないが、粉末、例えばガンマアルミナ、セリアベースの粉末、又は、チタニア、シリカ、(転位及びアルファ相)アルミナ、セリア、ジルコニア、Ce1−aZrの任意の混合物、並びに、可能な不純物添加セリア製剤のすべてが含まれる。ウォッシュコートは、ランタニド酸化物(Ln)及び/又は酸化ストロンチウム(SrO)を含むこともできる。
【0044】
アルミナは、一般的に高表面積担体固体又は支持体として、ウォッシュコートに利用される。ウォッシュコート中のアルミナは、通常「ガンマアルミナ」又は「活性アルミナ」と呼ばれ、一般的に60m/g以上、しばしば約200m/g以上のBET表面積を有する。活性アルミナは、通常ガンマ及びデルタ相のアルミナの混合物であるが、エタ、カッパ及びシータのアルミナ相を含むこともできる。
【0045】
ウォッシュコートがアルミナを含む場合、本発明の実施形態に従って、ウォッシュコートは、約10〜100質量%のアルミナ、約40〜70質量%のアルミナ、又は約55〜65質量%のアルミナを含むことができる。アルミナが高温に曝露させられる際、アルミナがガンマ相からアルファ相に望ましくない相転位することを遅らせるため、任意選択で、アルミナに調節剤を加えてもよい。調節剤又は熱安定剤としては、例えば、希土類酸化物、酸化ケイ素、IVB族金属(ジルコニウム、ハフニウム又はチタン)の酸化物、又はアルカリ土類酸化物から選択される、1つ又は複数の調節剤又は安定剤を含めることができる。
【0046】
本発明の一実施形態では、ランタニド硝酸塩及び/又は硝酸ストロンチウムの溶液を、アルミナの調節剤として担体酸化物物質に加える。ランタニド硝酸塩溶液は、単一のランタニド硝酸塩、例えば硝酸ランタンを含むことができ、又は、溶液はランタニド硝酸塩の混合物を含むことができる。ランタニド硝酸塩及び/又は硝酸ストロンチウムを加熱又は焼成すると、ランタニド酸化物(Ln)及び/又は酸化ストロンチウムが生成する。ランタニド硝酸塩又は硝酸ストロンチウムは、単独で添加できるが、本発明の例示的な実施形態では、ランタニド硝酸塩及び硝酸ストロンチウムの両方を、ウォッシュコートに加える。
【0047】
アルミナを高温に曝露させるとき、酸化ストロンチウム及び/又はランタニド酸化物は、アルミナの表面積の安定化の助けとなる。本発明の一実施形態では、ランタニド硝酸塩溶液は、ランタン濃縮物から得られる混合ランタニドの溶液であるが、他のランタニド源のものも好適である。ウォッシュコートが形成される前に、ランタニド硝酸塩及び/又は硝酸ストロンチウムを担体固体及び/又は触媒固体のスラリーに加えてもよく、又は、ランタニド硝酸塩及び/又は硝酸ストロンチウムを、既に形成されているウォッシュコートに加えてもよい。
【0048】
ウォッシュコートが触媒酸化物を含む場合、触媒酸化物はバルク型又は分散型でよい。「バルク」とは、触媒酸化物が、微細な個別の粒子として存在することを意味する。「分散型」の触媒は、担体物質の表面上の、多数の小さな触媒粒子から構成される。
【0049】
本発明の一実施形態では、バルク型の多相触媒は、多相触媒のための溶解性前駆体塩の水溶液を適当な比率で形成し、水溶液を乾燥させ、乾燥溶液を焼成することによって形成できる。本発明の代わりの実施形態では、溶解性前駆体塩を適当な比率で水に溶解し、シュウ酸などの物質を前駆体塩の水溶液に加えて多相触媒前駆体を沈殿させ、沈殿した多相触媒前駆体を乾燥させ、焼成して、バルク型の多相触媒を形成する。
【0050】
「分散型の」多相触媒は、溶解性前駆体塩を水に溶解し、担体酸化物に溶液を含浸させ、担体酸化物及び含浸された前駆体塩を焼成して分散型の多相触媒を形成することによって調製できる。優れた実施形態では、担体酸化物及び含浸溶液を、焼成前に徐々に乾燥させる。担体固体及び含浸溶液の乾燥を、制御して遅く行うと、含浸溶液中の1つ又は複数の塩の結晶化の可能性を低減できることがわかっている。一実施形態では、担体固体中の乾燥した含浸溶液は、均一且つ非晶質である。
【0051】
本発明の一実施形態では、触媒組成物は、少なくとも1つの酸化セリウムベースの物質を含むことができる。酸化セリウムベースの物質は、2つの目的のうち、少なくとも1つの役目を果たすことができる。第1に、酸化セリウムベースの物質は、触媒組成物の多相触媒、又は他の成分のための、支持体又は担体物質とすることができる。第2に、酸化セリウム物質は、酸素貯蔵材料(OSM)として作用できる。自動車の変換装置を乗物の排ガスに曝露させる際、排気は通常、濃いもの(リッチ)と薄いもの(リーン)とが交互する。酸素貯蔵材料は、濃い排気に酸素を供給し、薄い排気から酸素を取り込み、供給ガス中の酸素供給の変動に対し、触媒のバッファー(緩衝)の役割を果たす。酸素貯蔵材料が三元触媒組成物中に存在する場合、注入口の空燃比は、変換効率を損なわずに、かなり変動させることができる。
【0052】
Peter Eastwoodは、ここに参照により本明細書に組み込まれる、「Critical Topics in Exhaust Gas Treatment」(Research Studies Press社、Baldock、Hertfordshire、England、2000)の第5章で、セリア(酸化セリウム、つまりCeO)の他の利点を記載している。
【0053】
酸化セリウムベースの物質は、バルク型又は分散型でよい。酸化セリウムベースの物質がバルク型である場合、それは、微細な個別の粒子として存在する。分散型の酸化セリウムベースの物質は、別の物質の上に分散しているか、又はその中に含浸させられる。
【0054】
酸化セリウムベースの物質が800℃以上の温度に加熱されると、一般に、酸化セリウムベースの物質の総表面積は減少する。高温に曝露されている間における、酸化セリウムベースの物質の焼結の程度を低減させるために、1つ又は複数の金属酸化物を酸化セリウムベースの物質に加えることができる。酸化セリウムベースの物質に加えることができる金属酸化物は、例えば、ZrO、Al、La又は他の希土類酸化物の1つ又は複数でよい。この目的において本出願では、酸化イットリウムが希土類酸化物として考えられる。本発明の一実施形態では、酸化セリウムベースの物質は、下記式
【数3】

を有する組成物を有し、上記式において、0<a<1であり、δ1は酸素欠損度である。一般に、0≦δ1≦(1−a)/2である。酸化セリウムベースの物質の、式中における酸素欠損度は、酸化セリウムベースの物質が酸素を取り込むとき、及び放出するときに変化する。
【0055】
本発明の代わりの実施形態では、酸化セリウムベースの物質は、下記式
【数4】

を有する組成物を有し、式中のLanは、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho又はYbの少なくとも1つである。c>0.15であり、0.15>d>0.01である。酸化セリウムベースの物質は蛍石結晶構造を有し、δ2は酸素欠損度である。一般に、0≦δ2≦(1−c−d)/2である。酸化セリウムベースの物質は、複合体又は完全な固体溶液であってよい。複数の酸化セリウムベースの物質が、触媒組成物に含まれてもよい。
【0056】
本発明の実施形態に従って、下付き文字aは、約0.07〜0.70の範囲、約0.15〜0.53の範囲、又は約0.15〜0.28の範囲であってよい。本発明の実施形態に従って、下付き文字cは、約0.15〜0.8の範囲、約0.32〜0.74の範囲、又は約0.5〜0.74の範囲であってよい。本発明の実施形態に従って、下付き文字yは、約0.01〜0.15の範囲、約0.02〜0.11の範囲、又は約0.04〜0.10の範囲であってよい。
【0057】
本明細書において、特定の酸化セリウムベースの物質の式は、酸素に「2−δ」ではなく「2」と下付き文字を書き込むことによって一般に単純化される。例えば、式Ce0.68Zr0.322−δ1は、本明細書では「Ce0.68Zr0.32」に単純化される。
【0058】
市販の酸化セリウムベースの物質Ce0.68Zr0.32は例示的な酸化セリウムベースの物質であるが、他の酸化セリウムベースの物質も適する。
【0059】
本発明の一実施形態では、1つ又は複数の酸化セリウムベースの物質がウォッシュコートに含まれてもよい。本発明の実施形態に従って、ウォッシュコートは、約5〜10質量%、約10〜80質量%、又は約20〜60質量%の、酸化セリウムベースの物質を含むことができる。
【0060】
本発明の一実施形態では、触媒組成物は、式
【数4】

を有する酸化セリウムベースの物質の層を含むことができる。式中のLanは、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho又はYbの少なくとも1つである。c>0.15、0.15>d>0.01である。酸化セリウムベースの物質は蛍石結晶構造を有し、δ2は、酸素欠損度である。一般に、0≦δ2≦(1−c−d)/2である。触媒組成物には、ウォッシュコート中の1つ又は複数の酸化セリウムベースの物質に加えて、層中の酸化セリウムベースの物質が含まれてもよい。もしくは、層中の酸化セリウムベースの物質が、触媒組成物中の唯一の酸化セリウムベースの物質であってもよい。
【0061】
本発明の一実施形態では、層は、酸化セリウムベースの物質成分に加えて、成分として、アルミナを含むこともできる。酸化セリウムベースの物質、又は酸化セリウムベースの物質及びアルミナの層は、ウォッシュコートの下の下層として、又は、ウォッシュコートの上の上層として触媒組成物に含まれてもよい。触媒組成物のウォッシュコートが酸化セリウムベースの物質を含む場合、層中の酸化セリウムベースの物質はウォッシュコート中の酸化セリウムベースの物質と同じでも異なってもよい。
【0062】
一実施形態では、層は、唯一の非貴金属成分としてアルミナを含むことができる。
【0063】
本発明の一実施形態では、層が、蛍石型構造の酸化物に加えて、非貴金属成分としてアルミナを含む場合、アルミナの熱安定性を増加させるために、ランタニド酸化物及び/又は酸化ストロンチウム又はそれらの前駆体などの添加剤をアルミナに加えることができる。アルミナが層に含まれる場合、層中のアルミナは、ウォッシュコート中のアルミナと同じでも又は異なってもよい。アルミナが層に含まれる場合、本発明の実施形態に従って、層中の蛍石結晶構造を有する酸化物に対するアルミナの重量比は、約0.1:1〜約1:0.4の間、約0.5:1〜約1:0.8の間、又は約1:1であってよい。
【0064】
触媒組成物は、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、銀(Ag)などの少なくとも1つの貴金属成分を含むことができる。本発明の一実施形態では、貴金属成分を、触媒組成物の多相触媒中に含むことができる。多相触媒中の貴金属成分は、多相触媒の一般式
【数1】

のMに含まれる、任意の貴金属のほかに加えるものであってよい。或いは、貴金属成分は、ウォッシュコート中の触媒組成物に含まれてもよい。本発明の一実施形態では、少なくとも1つの貴金属成分又は貴金属の水溶性塩を水に溶解させ、触媒組成物に1つ又は複数の水溶性塩を含む水溶液を含浸させて、貴金属成分又は貴金属を触媒組成物に導入する。
【0065】
或いは、又はさらに、1つ又は複数の卑金属、例えば鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)又はコバルト(Co)を触媒組成物に含むか、又はその中に導入することができる。卑金属の水溶性塩を水に溶解し、触媒組成物に水溶性卑金属塩の水溶液を含浸させることによって、卑金属を触媒組成物に加えることができる。本発明の代わりの実施形態では、1つ又は複数の卑金属化合物を触媒組成物の1つ又は複数の成分と一緒に混和することによって、卑金属を触媒組成物に加えることができる。
【0066】
本発明の実施形態に従って、酸化セリウムベースの物質又は酸化セリウムベースの物質及びアルミナの層は、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)などの貴金属成分又は貴金属を含むことができる。貴金属成分に加えて、又はその代わりに、層は、鉄、ニッケル、マンガン、コバルト又は銅などの卑金属を含むことができる。層中の貴金属成分又は卑金属は、触媒組成物の残りの部分に含まれる貴金属成分又は卑金属のほかに加えるものであってよい。或いは、層中の貴金属成分又は卑金属は、触媒組成物の唯一の貴金属成分又は卑金属であってよい。
【0067】
層中の貴金属成分及び/又は卑金属は、酸化セリウムベースの物質、アルミナ、又は酸化セリウムベースの物質及びアルミナの両方で支持してもよい。一実施形態では、異なる貴金属成分及び/又は卑金属、或いは異なる比率の貴金属成分及び/又は卑金属を、層中の酸化セリウムベースの物質、アルミナ、又は酸化セリウムベースの物質及びアルミナの両方で支持してもよい。
【0068】
本発明の一実施形態では、酸化セリウムベースの物質又は酸化セリウムベースの物質及びアルミナの層は、パラジウム、白金及びロジウムからなる群から選択される少なくとも1つの貴金属成分を含む。本発明の別の実施形態では、層は、白金及び/又はロジウムを含む。白金又はロジウムは単独で層に含まれてもよいが、本発明の例示的な実施形態では、層は白金及びロジウムの両方を含む。本発明の実施形態に従って、層中のロジウムに対する白金の重量比は、約0.3:1〜約3:1の間、約0.4〜約2の間、又は約1:1であってよく、そこでは、重量比のすべては白金及びロジウム金属に換算されて計算される。別の例示的な実施形態では、層は、唯一の貴金属成分としてロジウムを含む。
【0069】
本発明の実施形態に従って、触媒組成物への白金の添加は、すべて白金金属に換算して、約1〜10g/ftの間、約2〜6g/ftの間、又は約4g/ftであってよい。触媒組成物へのロジウムの添加は、すべてロジウム金属に換算して、約2g/ft〜8g/ftの間、約3g/ft〜6g/ftの間、又は約4g/ftであってよい。
【0070】
本発明の実施形態に従って、触媒組成物への酸化セリウムベースの物質又は酸化セリウムベースの物質及びアルミナの層の添加は、約20g/L〜130g/Lの間、約30g/L〜100g/Lの間、又は約60g/Lであってよい。触媒組成物への層の添加量には、非貴金属成分、アルミナ及び/又は酸化セリウムベースの物質の添加、並びに貴金属成分の添加が含まれることを理解すべきである。
【0071】
本発明のさらなる態様は、窒素酸化物と一酸化炭素と炭化水素とを同時変換する触媒組成物の作製方法を提供する。その方法は、(a)基質を提供することと、(b)基質の上にウォッシュコートを形成するための少なくとも1つの担体物質を提供することと、(c)基質によって支持される多相触媒を形成するための溶液であって、
【数5】

の一般カチオン式を有する溶液を提供することと、(d)基質と、ウォッシュコートと、多相触媒とを含む触媒組成物を形成することと、を含む。
【0072】
多相触媒を形成するための基質、ウォッシュコート及び溶液については、既に記載されている。
【0073】
ウォッシュコートは、当技術分野で公知である任意の方法によって、基質上に、担体物質及び/又は触媒酸化物から、形成できる。基質上にウォッシュコートを形成する方法の例が、米国特許第5,939,354号及び第5,977,017号に詳述され、その両方は参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0074】
本発明の一実施形態では、担体物質及び/又は触媒固体を水溶液に混合してスラリーを形成し、次に、スラリーを基質上に沈着させて、即ち洗って、ウォッシュコートを形成する。スラリーは、任意の好適な方法で基質上に沈着させることができる。例えば、基質をスラリー中に浸すこと、又は、スラリーを基質の上へ噴霧することができる。当分野の技術者に公知である、基質の上へスラリーを沈着させる他の方法を、代わりの実施形態で用いることができる。基質が、平行流路を有するモノリス担体である場合、ウォッシュコートを流路の壁に形成することができる。流路の中を流れるガスは、流路の壁の上のウォッシュコートに、並びに、ウォッシュコートに支持されている物質に接触する。
【0075】
本発明の一実施形態では、ウォッシュコートは、基質の上に1つ又は複数の担体物質を沈着させるスラリーによって形成される。多相触媒を形成するための溶液は、ウォッシュコートに含浸させる。基質、ウォッシュコート及び含浸溶液を焼成して、多相触媒及び触媒組成物を形成する。一実施形態では、ウォッシュコート及び含浸溶液を、焼成の前に乾燥させる。本発明の一実施形態では、ウォッシュコートは、多相触媒に加えて他の触媒酸化物を含むことができる。
【0076】
本発明の代わりの実施形態では、多相触媒を形成するための溶液を担体物質に含浸させ、担体物質及び含浸溶液を乾燥、焼成し、ウォッシュコートは、担体物質及び含浸溶液を焼成した後に形成する。別の実施形態では、ウォッシュコート及び含浸溶液を、ウォッシュコートの形成後に焼成する。
【0077】
本発明のさらに別の実施形態では、多相触媒をバルク形態として、溶液から形成する。基質上にバルクの多相触媒を沈着させるスラリーによって、基質上にウォッシュコートを形成する。基質及び基質上のウォッシュコートを乾燥させ、任意選択で焼成する。生じた触媒組成物は、バルクの多相触媒を、ウォッシュコート中の唯一の担体物質として含む。
【0078】
本発明の代わりの実施形態では、バルクの多相触媒を溶液から形成させる。バルクの多相触媒を担体酸化物固体と混合し、ウォッシュコートを、バルク多相触媒及び担体酸化物の混合物から基質上に形成させる。基質及びウォッシュコートを乾燥させ、任意選択で焼成し、触媒組成物を形成する。
【0079】
本方法の実施形態は、触媒組成物の上に層を形成することをさらに含むことができる。層は、任意の適する方法によって触媒組成物の上に形成することができる。本発明の一実施形態では、非貴金属成分であるアルミナのスラリー、及び/又は蛍石結晶構造を有する酸化物を、混合又は粉砕し、ウォッシュコート及び/又は多相触媒の上に、上層としてコーティングする。一実施形態では、焼成多相触媒組成物及び上層を、乾燥させて、約550℃で約2時間熱処理する。
【0080】
別の実施形態では、非貴金属成分のスラリーを、下層として基質上にコーティングし、下層を乾燥、焼成し、ウォッシュコート及び/又は多相触媒を、下層の上に置く。一実施形態では、下層、ウォッシュコート及び/又は多相触媒を乾燥、焼成する。
【0081】
層が貴金属成分を含む本発明の一実施形態では、水の中の貴金属成分の水溶性塩の適当な量を、非貴金属成分アルミナの水スラリー、及び/又は蛍石結晶構造を有する酸化セリウムベースの物質と組み合わせてもよい。アルミナのスラリー及び/又は酸化物及び貴金属成分の水溶性塩を完全に混合又は粉砕し、ウォッシュコート及び/又は多相触媒にコーティングするか又は混合する。層が下層である一実施形態では、スラリーを基質の上にコーティングする。
【0082】
本発明の一実施形態では、層が蛍石結晶構造を有する酸化セリウムベースの物質、並びに非貴金属成分としてアルミナを含む場合、貴金属成分の水溶性塩を非貴金属成分の任意の組合せと組み合わせることができる。水溶性塩は、酸化物成分、アルミナ成分、又は酸化物成分及びアルミナ成分の両方と組み合わせることができる。
【0083】
パラジウム、白金及びロジウムからなる群から選択される少なくとも1つの貴金属成分で層を調製するために、様々な水溶性のパラジウム、白金及びロジウムの塩を用いることができる。水溶性塩には、それらに限定されないが、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、クロロ白金酸、アミン可溶化水酸化白金、例えば白金のヘキサヒドロキシモノエタノールアミン複合体、ジアンミンジニトロ白金(II)、硝酸白金、塩化ロジウム又は硝酸ロジウムが含まれる。本発明の一実施形態では、層の調製において、硝酸白金及び硝酸ロジウムの少なくとも1つを、水溶性の白金及びロジウムの塩として用いる。本発明の代わりの実施形態では、硝酸パラジウム及び塩化ロジウムの少なくとも1つを、水溶性のパラジウム及びロジウムの塩として用いることができる。
【0084】
本明細書で記載される多相触媒組成物の本発明の実施形態は、類似した組成を有する単相触媒と比較して、改善された三元触媒活性を有する。多相触媒組成物は、自動車、小さなガソリンエンジンを含む内燃機関の排気ガス、及び産業廃棄ガスから、不飽和及び飽和炭化水素、窒素酸化物並びに一酸化炭素を除去するために用いることができる。それらは、高い熱安定性及び化学物質安定性も示す。さらに、それらは、市販の従来のシステムよりも、必要とする貴金属添加が5〜15倍少ない。
【0085】
したがって、混合相触媒は、広範囲の適用を有する。例えば、多相触媒は、広範囲の内燃機関からの排気物質の浄化のために用いることができる。それらは、ポリマー及びプラスチックの分野で、工業化学物質、肥料及び製品の生産のために、工業用触媒反応で用いることもできる。それらは、油に由来するすべての工程及び製品でさらに用いることができる。それらは、それらに限定されないが、揮発性炭化水素、塩素化炭化水素及びMTBEを含む工業工程からの排出物の浄化のために用いることができる。
【0086】
詳細には、多相触媒は、例えば、あらゆる種類のオットーサイクル及びディーゼルサイクルの内燃機関(アンモニア又は炭化水素の取込みでSCR(選択接触還元)能力を備えているオットーサイクル希薄混合気燃焼エンジン、オットーサイクル及びディーゼルサイクルのエンジンを含む)からのガス状及び粒子状の排出物、オレフィン重合、水素化反応、合成ガス(一酸化炭素及び水素混合物又は二酸化炭素も含んでいる混合物)からのメタノール合成、アルケンのヒドロホルミル化、フィッシャー‐トロブシュ合成、炭化水素の異性化、芳香族化反応、触媒性クラッキング反応、水素化による油由来の炭化水素からの硫黄及び/又は窒素及び/又は酸素の除去を含む反応、水素を含むガス混合物を生成するためのメタノール及び他の炭化水素及び炭化水素混合物(例えば、ガソリン)のスチームリホーミング、水素ガスが燃料電池で用いられる後者の反応、アルケンのエポキシ化、炭化水素の部分的及び/又は選択的な酸化、並びに、MTBEを含む揮発性有機化合物(VOC)の酸化の制御のために用いることができる。多相触媒は、還元剤として、炭化水素又はエタノールによる、固定汚染源のNOx低減のためのSCR触媒として用いることができる。
【0087】
本発明の触媒組成物の実施形態は、自動車排気ガス中の窒素酸化物と、一酸化炭素と、炭化水素とを同時変換するための方法において用いることができる。多相触媒を含む触媒組成物が提供される。自動車排気ガスは、触媒組成物と接触させる。排気ガスを触媒組成物と接触させることで、ガス状の排気流出物を、空気汚染の観点から比較的無害な物質に変換する。排気ガスを、約1気圧の気相中で触媒組成物と接触させる。多少の酸化及び還元は低温で起こることがあるが、通常、反応は少なくとも150℃の高温で、より好ましくは約200℃〜900℃の温度で実行される。したがって、本発明の触媒組成物の実施形態は、炭化水素、酸素を含有する有機化合物、及び一酸化炭素の、酸化並びに窒素酸化物の同時還元を促進するのに有用である。
【0088】
以下の実施例は、本発明の範囲を例示するためのものであり、限定するものではない。当分野の技術者に公知である他の方法を代わりに用いることができることを、理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】バストネサイト及びその混合されたランタニド誘導体の加工経路のフローチャートである。
【図2】実施例4の多相触媒組成物に関するR対三元変換の割合のグラフである。
【図3】実施例8の単相触媒組成物に関するR対三元変換の割合のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0090】
[触媒組成物及びその作製方法]
ウォッシュコートの調製
以下の実施例では、一般的なウォッシュコートの調製について記載する。特に明記しない限り、以下実施例におけるウォッシュコートは、通常、以下の方法に類似した成分、成分比及び手順で調製したものである。
【0091】
ウォッシュコートは、通常、2000mlの脱イオン水に、Ce0.68Zr0.32 655gと、アルミナ粉末 982gと、Sr(NO 66.3gと、127質量%の(Molycorp社、Mountain Pass、Californiaから硝酸ランタン製品コード5248として市販されている)混合ランタニド硝酸塩溶液18.3gと、を混合して調製した。スラリーは、支持体にコーティングするのに適する流動性となるまで、Szegvari IS型Atrittorで粉砕した。
【0092】
1平方インチにつき600個のセルを有するコージェライトハニカム支持体を、スラリーに浸した。余分なスラリーは、エアジェットで支持体から吹き飛ばした。支持体を室温において流動空気で乾燥させ、約150℃の空気中で熱処理し、750℃で4時間焼成した。
【実施例1】
【0093】
多相触媒の調製及び活性試験
(Lnに換算して)27.0重量%の(Molycorp社、Mountain Pass、Californiaから硝酸ランタン製品コード5248として市販されている、バストネサイト鉱石に由来する)混合ランタニド硝酸塩溶液22.24gと、(CeOに換算して)28.5重量%の硝酸セリウム溶液21.85gと、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)2.0gと、酢酸マンガン(Mn(OAc)・4HO)10.48gと、(パラジウム金属に換算して)11.08重量%の硝酸パラジウム溶液5.62gと、を300ccの水の中で合わせることによって、Ce0.80Ln0.80Sr0.20Mn0.88Pd0.12のカチオン比率を有する溶液を形成した。硝酸ランタン製品コード5248は、ランタン濃縮製品である。ガンマアルミナ及びCe0.68Zr0.32の混合物(3:1の重量比)でコーティングした1平方インチにつき600個のセルを有するコージェライトハニカムを溶液に浸し、余分な溶液を吹き飛ばした。それを室温において流動空気中で乾燥させ、約150℃の空気中で熱処理し、次に700℃の空気中で10時間熱処理した。最終物は、触媒1立方フィートにつき(パラジウム金属に換算して)11.7gの濃度でパラジウムを含有していた。
【0094】
触媒の三元変換活性は、空間速度100,000時間−1で、燃料カットガス化学特性(56秒の化学量論組成(stoichiometric)、4s A/F 〜20)として、1000℃で10時間の高温エージングした後に測定した。活性性能測定は、500℃で1.0Hz周波数及び0.4A/F振幅を有するチューブからの(perturbed)供給流中で実施した。化学量論的ガス混合物の三元変換効率は、NO、CO、HCについて、それぞれ96.5%、97.8%及び96.5%と測定された。
【実施例2】
【0095】
多相触媒の調製及び活性試験
27.0重量%の(Molycorp社、Mountain Pass、Californiaから硝酸ランタン製品コード5248として市販されている、バストネサイト鉱石に由来する)混合ランタニド硝酸塩溶液22.24g、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)19.98g、酢酸マンガン(Mn(OAc)・4HO)10.48g、(パラジウム金属に換算して)11.08重量%の硝酸パラジウム溶液5.62g、を300ccの水の中で合わせることによって、Ln0.8Sr2.0Mn0.88Pd0.12のカチオン比率を有する溶液を形成した。ガンマアルミナ及びCe0.68Zr0.32の混合物(3:1の重量比)でコーティングした1平方インチにつき600個のセルを有するコージェライトハニカムを溶液に浸し、余分な溶液を吹き飛ばした。これを室温において流動空気中で乾燥させ、約150℃の空気中で熱処理し、次に700℃の空気中で10時間熱処理した。最終物は、触媒1立方フィートにつき(パラジウム金属に換算して)9.2gの濃度のパラジウムを含有していた。
【0096】
触媒の三元変換活性は、空間速度100,000時間−1で、燃料カットガス化学特性(56秒の化学量論組成、4s A/F 〜20)として、1000℃で10時間の高温エージングした後に測定した。活性性能測定は、450℃で1.0Hz周波数及び0.4A/F振幅を有するチューブからの供給流中で実施した。化学量論的ガス混合物の三元変換効率は、NO、CO及びHCについて、それぞれ96.1%、95.8%及び92.5%と測定された。
【実施例3】
【0097】
多相触媒の調製及び活性試験
27.0重量%の(Molycorp社、Mountain Pass、Californiaから硝酸ランタン製品コード5248として市販されている、バストネサイト鉱石に由来する)混合ランタニド硝酸塩溶液44.48g、(CeOに換算して)28.5重量%の硝酸セリウム溶液43.70g、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)38.52g、酢酸マンガン(Mn(OAc)・4HO)20.96g、(パラジウム金属に換算して)11.08重量%の硝酸パラジウム溶液10.44gを、300ccの水の中で合わせることによって、Ce0.80Ln0.80Sr2.0Mn0.88Pd0.12のカチオン比率を有する溶液を形成した。ガンマアルミナ及びCe0.68Zr0.32の混合物(3:1の重量比で合計添加量が185g/L)でコーティングした1平方インチにつき600個のセルを有するコージェライトハニカムを溶液に浸し、余分な溶液を吹き飛ばした。これを室温において流動空気中で乾燥させ、約150℃の空気中で熱処理し、次に700℃の空気中で10時間熱処理した。最終物は、触媒1立方フィートにつき(パラジウム金属に換算して)19.3gの濃度のパラジウムを含有していた。
【0098】
触媒の三元変換活性は、空間速度100,000時間−1で、燃料カットガス化学特性(56秒の化学量論組成、4s A/F 約20)として、1000℃で10時間の高温エージングした後に測定した。活性性能測定は、500℃で1.0Hz周波数及び0.4A/F振幅を有するチューブからの供給流中で実施した。化学量論的ガス混合物の三元変換効率は、NO、CO及びHCについて、それぞれ99.1%、98.8%及び97.5%と測定された。
【実施例4】
【0099】
多相触媒の調製及び活性試験
27.0重量%の(Molycorp社、Mountain Pass、Californiaから硝酸ランタン製品コード5248として市販されている、バストネサイト鉱石に由来する)混合ランタニド硝酸塩溶液44.48g、(CeOに換算して)28.5重量%の硝酸セリウム溶液43.70g、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)38.52g、酢酸マンガン(Mn(OAc)・4HO)20.96g、(パラジウム金属に換算して)11.08重量%の硝酸パラジウム溶液5.22gを、300ccの水の中で合わせることによって、Ce0.80Ln0.80Sr2.0Mn0.94Pd0.06のカチオン比率を有する溶液を形成した。ガンマアルミナ及びCe0.68Zr0.32の混合物(3:1の重量比で合計添加量が185g/L)でコーティングした1平方インチにつき600個のセルを有するコージェライトハニカムを溶液に浸し、余分な溶液を吹き飛ばした。これを室温において流動空気中で乾燥させ、約150℃の空気中で熱処理し、次に700℃の空気中で10時間熱処理した。最終物は、触媒1立方フィートにつき(パラジウム金属に換算して)20.3gの濃度のパラジウムを含有していた。
【0100】
触媒の三元変換活性は、空間速度100,000時間−1で、燃料カットガス化学特性(56秒の化学量論組成、4s A/F 〜20)として、1000℃で10時間の高温エージングした後に測定した。活性性能測定は、500℃で1.0Hz周波数及び0.4A/F振幅を有するチューブからの供給流中で実施した。化学量論的ガス混合物の三元変換効率は、NO、CO及びHCについて、それぞれ99.2%、99.1%及び97.5%と測定された。結果を、図2のグラフに示す。
【実施例5】
【0101】
多相触媒の調製及び活性試験
27.0重量%の(Molycorp社、Mountain Pass、Californiaから硝酸ランタン製品コード5248として市販されている、バストネサイト鉱石に由来する)混合ランタニド硝酸塩溶液44.48g、(CeOに換算して)28.5重量%の硝酸セリウム溶液43.70g、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)38.52g、酢酸マンガン(Mn(OAc)・4HO)20.96g、(パラジウム金属に換算して)11.08重量%の硝酸パラジウム溶液10.44g、を300ccの水の中で合わせることによって、Ce0.80Ln0.80Sr2.0Mn0.88Pd0.12のカチオン比率を有する溶液を形成した。ガンマアルミナ及びCe0.24Zr0.67La0.09の混合物(1.5:1の重量比で合計添加量が185g/L)でコーティングした1平方インチにつき600個のセルを有するコージェライトハニカムを溶液に浸し、余分な溶液を吹き飛ばした。これを室温において流動空気中で乾燥させ、約150℃の空気中で熱処理し、次に700℃の空気中で10時間熱処理した。最終物は、触媒1立方フィートにつき(パラジウム金属に換算して)21.0gの濃度のパラジウムを含有していた。
【0102】
触媒の三元変換活性は、空間速度100,000時間−1で、燃料カットガス化学特性(56秒の化学量論組成、4s A/F 〜20)として、1000℃で10時間の高温エージングした後に測定した。活性性能測定は、500℃で1.0Hz周波数及び0.4A/F振幅を有するチューブからの供給流中で実施した。化学量論的ガス混合物の三元変換効率は、NO、CO及びHCについて、それぞれ99.4%、98.9%及び96.9%と測定された。この性能は、触媒1立方フィートにつき280gの総貴金属が添加されている、商業用「トリメタルシステム」と類似していた。
【0103】
以下の実施例では、バルク型多相触媒の調製について記載する。
【実施例6】
【0104】
バルク型多相触媒の調製及び活性試験
(Molycorp社、Mountain Pass、Californiaから硝酸ランタン製品コード5248として市販されている、バストネサイト鉱石に由来する)混合ランタニド硝酸塩溶液、硝酸セリウム溶液、硝酸ストロンチウム、酢酸マンガン、及び硝酸パラジウム溶液を、水の中で合わせることによって、Ce1.50Ln0.60Sr0.40Mn0.95Pd0.05のカチオン比率を有する溶液を形成した。溶液を110℃で24時間乾燥炉の中で乾燥させ、次に、400℃で熱処理し、最後に800℃で10時間熱処理した。X線回折データに示すように、粉末はセリア及びペロブスカイトの二相混合であり、全体の比表面積は1グラムにつき12平方メートルであった。粉末をボールミル内でCe0.24Zr0.67La0.09及びアルミナと混合し、600セルのコージェライトハニカム上にスラリーをコーティングした。(パラジウム金属に換算した)Pd濃度は、乾燥及び高温熱処理の後、触媒1立方フィートにつき18.0gであった。
【0105】
触媒の三元変換活性は、空間速度100,000時間−1で、燃料カットガス化学特性(56秒の化学量論組成、4s A/F 〜20)として、1000℃で10時間の高温エージングした後に測定した。活性性能測定は、500℃で1.0Hz周波数及び0.4A/F振幅を有するチューブからの供給流中で実施した。化学量論的ガス混合物での、又はその近くでの三元変換効率は、NO、CO及びHCについて、それぞれ93.1%、97.8%及び97.5%と測定された。
【実施例7】
【0106】
多相触媒の調製及び活性試験
1平方インチにつき600個のセルを有するコージェライトハニカムを、ガンマアルミナ及びCe0.24Zr0.67La0.09のスラリー混合物(1.5:1の重量比)でコーティングした。コーティングの前に、(Molycorp社、Mountain Pass、Californiaから硝酸ランタン製品コード5248として市販されている、バストネサイト鉱石に由来する)混合ランタニド硝酸塩溶液及び硝酸ストロンチウムから作製した溶液を、スラリーに加えた。ランタニド硝酸塩溶液及び硝酸ストロンチウムの量は、スラリー中に存在する他の固体の各100gに対し、2gのSrO及び2gのLnに相当する量となるよう添加した。ハニカムを、150℃(2時間)、400℃(2時間)及び750℃(4時間)で加熱した。ウォッシュコート添加量は、185g/Lであった。
【0107】
27.0重量%の(Molycorp社、Mountain Pass、Californiaから硝酸ランタン製品コード5248として市販されている、バストネサイト鉱石に由来する)混合ランタニド硝酸塩溶液168.35g、(CeOに換算して)28.5重量%の硝酸セリウム溶液165.60g、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)145.05g、酢酸マンガン(Mn(OAc)・4HO)76.61g、(パラジウム金属に換算して)11.50重量%の硝酸パラジウム溶液110.99gを、水と合わせて、総量3.0Lの溶液を作ることによって、Ce0.64Ln0.64Sr1.60Mn0.72Pd0.28のカチオン比率を有する溶液を形成した。
【0108】
ウォッシュコーティングしたコージェライトハニカムを溶液に浸し、余分な溶液を吹き飛ばした。これを乾燥させ、低温で熱処理し、次に、空気中で、700℃で4時間熱処理した。最終物は、触媒1立方フィートにつき(パラジウム金属に換算して)25.0gの濃度のパラジウムを含有していた。
【0109】
触媒の三元変換活性は、空間速度100,000時間−1で、燃料カットガス化学特性(56秒の化学量論組成、4s A/F 〜20)として、1000℃で10時間の高温エージングした後に測定した。活性性能測定は、500℃で1.0Hz周波数及び0.4A/F振幅を有するチューブからの供給流中で実施した。化学量論的ガス混合物の三元変換効率は、NO、CO及びHCについて、それぞれ97.5%、98.9%及び99.0%と測定された。
【0110】
以下の実施例では、単相触媒の調製について記載する。
【実施例8】
【0111】
単相触媒の調製及び活性試験
上記の実施例と対照的に、実施例8の三元触媒は、過剰なCe及びSrを含んでいなかった。それは、組成物Ln0.80Sr0.20Mn0.88Pd0.12を有する単相ペロブスカイトと記載することができる。27.0重量%の(Molycorp社、Mountain Pass、Californiaから硝酸ランタン製品コード5248として市販されている、バストネサイト鉱石に由来する)混合ランタニド硝酸塩溶液22.24g、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)2.0g、酢酸マンガン(Mn(OAc)・4HO)10.48g、(パラジウム金属に換算して)11.08重量%の硝酸パラジウム溶液5.62gを、300ccの水の中で合わせることによって、触媒を形成した。ガンマアルミナ及びCe0.68Zr0.32の混合物(3:1の重量比)でコーティングした1平方インチにつき600個のセルを有するコージェライトハニカムを溶液に浸し、余分な溶液を吹き飛ばした。これを室温において流動空気中で乾燥させ、約150℃の空気中で熱処理し、次に700℃の空気中で10時間熱処理した。最終物は、触媒1立方フィートにつき(パラジウム金属に換算して)19.6gの濃度のパラジウム濃度を含有していた。
【0112】
触媒の三元変換活性は、空間速度100,000時間−1で、燃料カットガス化学特性(56秒の化学量論組成、4s A/F 〜20)として、1000℃で10時間の高温エージングした後に測定した。活性性能測定は、500℃で1.0Hz周波数及び0.4A/F振幅を有するチューブからの供給流中で実施した。化学量論的ガス混合物の三元変換効率は、NO、CO及びHCについて、それぞれ89.3%、92.8%及び91.5%と測定された。結果を、図3のグラフに示す。実施例8の単相触媒の性能は、上の実施例で記載した多相触媒の性能よりも、かなり劣っていた。
【0113】
実施例9及び10では、上層のない多相触媒、及び上層のある多相触媒の調製について記載する。
【実施例9】
【0114】
多相触媒の調製
27.0%の(Molycorp社、Mountain Pass、Californiaから硝酸ランタン製品コード5248として市販されている、バストネサイト鉱石に由来する)混合ランタニド硝酸塩溶液1549g、(CeOに換算して)28.5重量%の硝酸セリウム溶液1485g、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)1342g、酢酸マンガン(Mn(OAc)・4HO)699.5g、リンゴ酸2166g、(パラジウム金属に換算して)12.4重量%の硝酸パラジウム溶液952.4gを、合わせることによって、Ce0.80Ln0.80Sr2.00Mn0.90Pd0.35のカチオン比率を有する溶液を形成した。溶液を、脱イオン水で20:1の容量に希釈した。スラリー中において、他の固体100gに対し2gのSrO及び2gのランタニド酸化物に相当する量として十分なSr(NO及び混合ランタニド硝酸塩を含み、アルミナとCe0.24Zr0.67La0.09とが1.5:1である懸濁液から形成されたウォッシュコート135.3gで、1平方インチにつき600個のセルを有するコージェライトハニカムをコーティングした。コーティングしたハニカムを溶液に浸し、余分な溶液を吹き飛ばした。これを室温において流動空気中で乾燥させ、約150℃の空気中で熱処理し、次に700℃の空気中で4時間熱処理した。最終物は、触媒1立方フィートにつき(パラジウム金属に換算して)27.9グラムの濃度のパラジウムを含んでいた。
【0115】
以下の実施例では、白金及びロジウムを含有する上層を有する多相触媒の調製について記載する。
【実施例10】
【0116】
白金及びロジウムを含有する上層を有する多相触媒の調製
27.0%の(Molycorp社、Mountain Pass、Californiaから硝酸ランタン製品コード5248として市販されている、バストネス石鉱石に由来する)混合ランタニド硝酸塩溶液242.9g、(CeOに換算して)28.5重量%の硝酸セリウム溶液232.8g、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)210.4g、酢酸マンガン(Mn(OAc)・4HO)109.7g、(パラジウム金属に換算して)11.5重量%の硝酸パラジウム溶液161.0gを、300ccの水の中で合わせることによって、Ce0.80Ln0.80Sr2.00Mn0.90Pd0.35のカチオン比率を有する溶液を形成した。2%相当量のSrO及びLnを有する、ガンマアルミナ及びCe0.68Zr0.32の混合物(1.5:1の重量比)から形成した133gのウォッシュコートでコーティングした、1平方インチにつき600個のセルを有するコージェライトハニカムを溶液に浸し、余分な溶液を吹き飛ばした。これを室温において流動空気中で乾燥させ、約150℃の空気中で熱処理し、次に700℃の空気中で10時間熱処理して、多相触媒を形成した。最終物は、触媒1立方フィートにつき(パラジウム金属に換算して)28グラムのパラジウムを含んでいた。
【0117】
合計10.805gの塩化ロジウム(金属に換算して40.0重量%ロジウム)を、脱イオン水30gに溶解した。塩化ロジウム溶液を、(白金金属に換算して)9.90重量%のジニトロジアンミン白金(II)水43.657gと合わせた。この溶液を、42.9%Ce0.24Zr0.67La0.09固体を含有する水性スラリー3873gに加えた。これを、ボールミル内で完全に粉砕した。粉砕したスラリーを、多相触媒の上に上層としてコーティングした。上層を有する触媒を、周囲条件下の流動空気中で、4時間乾燥させた。乾燥させた触媒を、150℃で1時間、及び550℃で2時間熱処理した。上層は、55g/Lの添加した。触媒は、触媒1立方フィートあたり、4.05gの白金及び4.05gのロジウムを含んでいた。
【0118】
実施例9及び10の、上層を有する多相触媒と上層を有しない多相触媒について、下記の実施例で活性を比較する。
【実施例11】
【0119】
上層を有する多相触媒と上層を有しない多相触媒との、三元活性の比較
実施例9及び10の多相触媒の三元変換活性を、空間速度100,000時間−1で、燃料カットガス化学特性(56秒の化学量論組成、4s A/F 〜20)として、1000℃で10時間の高温エージングした後に測定した。活性性能の測定は、275〜400℃の温度範囲で、1.0Hz周波数及び0.4A/Fの振幅を有するチューブからの供給流で、振動点火検査にて実施した。NO、CO及びHCのT50温度、並びに、NO、CO及びHCの化学量論的混合物、又はほぼ化学量論的な混合物の400℃での三元変換活性を、下の表1に示す。
【0120】
【表1】

【0121】
400℃での変換のデータが示すように、白金/ロジウム上層を有する実施例10の触媒は、上層を有しない実施例9の触媒よりも、特にNO変換についてかなり高い活性を示した。400℃でのNO変換は、上層を有しない実施例9の触媒の68.2%と比較して、上層を有する実施例10の触媒で91.0%であった。このように、白金及びロジウムを含有する上層を加えることで、NO変換のための触媒活性がかなり増加した。
【実施例12】
【0122】
多相触媒の調製
ウォッシュコートとして、異なるアルミナを用いたこと以外は、実施例9に類似した多相触媒となるよう、触媒を調製した。実施例9のウォッシュコートのアルミナは、平均孔径が約8nmであった。これに対し、実施例12の多相触媒のウォッシュコートを調製するために用いたアルミナは、平均孔径が約20nmであった。最終触媒は、触媒1立方フィートにつき(パラジウム金属に換算して)24.9グラムのパラジウムを含んでいた。
【0123】
以下の実施例では、白金及びロジウム含む上層を有する多相触媒の調製について記載する。上層は、酸化セリウムベースの物質及びアルミナの両方を含む。
【実施例13】
【0124】
Ce0.24Zr0.66La0.040.06、アルミナ、白金及びロジウムを含む上層を有する多相触媒の調製
実施例12の触媒に類似する触媒を調製した。触媒は、触媒1立方フィートにつき(パラジウム金属に換算して)25.25gのパラジウムを含有していた。
【0125】
実施例12のウォッシュコートを形成するために用いたのと同じアルミナと、Ce0.24Zr0.66La0.040.06とを、1:1.5の重量比率で混合した物を加えて水性スラリーを形成した。十分な硝酸ストロンチウム及び硝酸ランタン濃縮物をスラリーに加えて、上層の上に2重量%SrO及び2重量%LnOに相当するものを形成した。
【0126】
これらを摩砕ミル内で完全に粉砕した。硝酸ロジウム及び硝酸白金の水溶液を、粉砕したスラリーに加えた。スラリーを、多相触媒の上に上層としてコーティングした。上層を有する触媒を、周囲条件下の流動空気中で、4時間乾燥させた。乾燥させた触媒を、150℃で1時間、及び550℃で2時間熱処理した。上層は65.4g/L添加した。触媒は、触媒1立方フィートあたり、白金を4.07gとロジウムを4.07g含んでいた。
【0127】
上層を有する多相触媒と上層を有しない多相触媒である、実施例12と実施例13の触媒の活性について、以下の実施例で対比を行う。
【実施例14】
【0128】
上層を有する多相触媒と上層を有しない多相触媒の三元活性の比較
実施例12及び13の多相触媒の三元変換活性を、空間速度100,000時間−1で燃料カットガス化学特性(56秒の化学量論組成、4s A/F 〜20)として、980℃で40時間高温エージングした後に測定した。活性性能の測定は、400℃の温度において、1.0Hz周波数及び0.4A/Fの振幅を有するチューブからの供給流で、振動変換検査で実施した。100,000時間−1の空間速度における、NO、CO及びHCについてのほぼ化学量論的な混合物の400℃における三元変換活性を、下の表2に示す。
【0129】
【表2】

【0130】
白金/ロジウム及びアルミナ/Ce0.24Zr0.66La0.040.06上層を有する実施例13の触媒は、上層を有しない実施例12の触媒よりも、特にNO変換についてかなり高い活性を有した。400℃でのNO変換は、上層を有しない実施例12の触媒の65.3%と比較して、上層を有する実施例13の触媒で87.3%であった。したがって、白金及びロジウムを含有する上層を加えることは、NO変換のための触媒活性をかなり増加させた。
【実施例15】
【0131】
ロジウムを含む上層を有する多相触媒の調製及び試験
硝酸ロジウムの水溶液を、Ce0.24Zr0.67La0.09固体の水性スラリーと合わせる。これをボールミルで完全に粉砕し、実施例1の多相触媒の上にコーティングする。上層を有する触媒を、周囲条件下の流動空気中で、4時間乾燥させる。乾燥させた触媒を、150℃で1時間、及び550℃で2時間熱処理する。ロジウムを含む上層を有する多相触媒は、ロジウムを含む上層を有しない実施例1の触媒よりも、高い活性を有する有効な三元触媒であると予想される。
【実施例16】
【0132】
白金/Al及びロジウム/Ce0.24Zr0.67La0.09を含む上層を有する多相触媒の調製及び試験
硝酸ロジウムの水溶液を、アルミナの水性スラリーと合わせる。硝酸白金の水溶液を、Ce0.24Zr0.67La0.09の水性スラリーと合わせる。2つのスラリーを合わせ、ボールミルで完全に粉砕する。合わせたスラリーを、実施例2の多相触媒の上にコーティングする。上層を有する触媒を、周囲条件下の流動空気中で、4時間乾燥させる。乾燥させた触媒を、150℃で1時間、及び550℃で2時間熱処理した。白金/アルミナ及びロジウム/Ce0.24Zr0.67La0.09を含む上層を有する多相触媒は、白金/アルミナ及びロジウム/Ce0.24Zr0.67La0.09を含む上層を有しない実施例2の触媒よりも、高い活性を有する有効な三元触媒であると予想される。
【実施例17】
【0133】
Al及びCe0.24Zr0.67La0.09上に白金及びロジウムを含む上層を有する多相触媒の調製及び試験
硝酸ロジウム及び硝酸白金の水溶液を、アルミナ及びCe0.24Zr0.67La0.09の水性スラリーと合わせる。スラリーをボールミルで完全に粉砕し、実施例3の多相触媒の上にコーティングする。上層を有する触媒を、周囲条件下の流動空気中で、4時間乾燥させる。乾燥させた触媒を、150℃で1時間、及び550℃で2時間熱処理した。アルミナ及びCe0.24Zr0.67La0.09上に白金及びロジウムを含む上層を有する多相触媒は、白金及びロジウムを含む上層を有しない実施例3の触媒よりも、高い活性を有する有効な三元触媒であると予想される。
【実施例18】
【0134】
Al及びCe0.24Zr0.67La0.09上に白金及びロジウムを含む下層を有する多相触媒の調製及び試験
硝酸ロジウム及び硝酸白金の水溶液を、アルミナ及びCe0.24Zr0.67La0.09の水性スラリーと合わせる。スラリーをボールミルで完全に粉砕し、コージェライトハニカム基質の上にコーティングする。コーティングしたハニカムを周囲条件下の流動空気中で4時間乾燥させ、150℃で1時間、及び550℃で2時間熱処理する。
【0135】
Ce0.80Ln0.80Sr2.0Mn0.94Pd0.06のカチオン比率を有する溶液を、実施例4の方法によって形成する。溶液をガンマアルミナ及びCe0.68Zr0.32の混合物と合わせることによって、スラリーを形成する。スラリーをハニカム支持体の上にコーティングして、白金及びロジウムを含む下層を形成する。物品を室温において流動空気中で乾燥させ、約150℃の空気中で熱処理し、次に700℃の空気中で10時間熱処理する。白金及びロジウムを含む下層を有する触媒は、白金及びロジウムを含む下層を有しない実施例4の触媒よりも、高い活性を有する有効な三元触媒であると予想される。
【0136】
以下の実施例では、多相触媒の形成の後、触媒組成物にパラジウムを含浸させる。
【実施例19】
【0137】
含浸させたパラジウムを有する多相触媒の調製
カチオン比率がCe0.80Ln0.80Sr2.00Mn1.00である溶液を形成する。スラリー中において、他の固体100gにつき2gのSrO及び2gのランタニド酸化物に相当する量として、十分なSr(NO及び混合ランタニド硝酸塩を含み、アルミナとCe0.24Zr0.67La0.09とが1.5:1である懸濁液として形成されたウォッシュコートで、1平方インチにつき600個のセルを有するコージェライトハニカムをコーティングした。コーティングしたハニカムを溶液に浸し、余分な溶液を吹き飛ばした。これを室温において流動空気中で乾燥させ、約150℃の空気中で熱処理し、次に700℃の空気中で4時間熱処理した。生じた多相触媒組成物は、パラジウムを含まない。
【0138】
硝酸パラジウムの水溶液を調製し、多相触媒組成物に含浸させた。含浸させた触媒を室温の流動空気中で乾燥させ、空気中で、700℃の空気で4時間熱処理した。パラジウム含浸させた多相触媒は、対応するパラジウムを含まない多相触媒よりも、大きな活性を有する有効な三元触媒であると予想される。
【実施例20】
【0139】
Alの上に白金を含む上層を有する多相触媒の調製及び試験
硝酸白金の水溶液を、アルミナの水性スラリーと合わせる。スラリーをボールミルで完全に粉砕し、実施例3の多相触媒の上にコーティングする。上層を有する触媒を、周囲条件下の流動空気中で、4時間乾燥させる。乾燥させた触媒を、150℃で1時間、及び550℃で2時間熱処理する。アルミナの上に白金を含むアルミナ上層を有する多相触媒は、アルミナの上に白金を含む上層を有しない実施例3の触媒よりも、高い活性を有する有効な三元触媒であると予想される。
【0140】
本発明は、その必須の特徴を逸脱せずに、他の特定の形態で実現することができる。記載されている実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないとみなすべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の記載ではなく、添付の請求項によって示される。請求項の同等物の意味及び範囲に含まれるすべての変更は、それらの範囲に包含されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物、一酸化炭素及び炭化水素を同時変換するための多相触媒であって、下記一般式で表され、
【数1】

上記式中のAは、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Cs、Rb及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素であり、
Lnは、天然鉱石から採取された単相混合ランタニド由来の元素の混合物、単一のランタニド、又は人工ランタニドの混合物であり、
Mは、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Cu、V、Zr、Pt、Pd、Rh、Ru、Ag、Au、Al、Ga、Mo、W、Ti及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素であり、
xは、0≦x<1.0によって定義される数であり、
yは、0≦y<10によって定義される数であり、
sは、0≦s<10によって定義される数であり、
zは、z>0によって定義される数であり、
y>0の場合のみs=0であり、s>0の場合のみy=0である多相触媒。
【請求項2】
多相触媒が、ペロブスカイト相及び非ペロブスカイト相を含む請求項1に記載の多相触媒。
【請求項3】
ペロブスカイト相が、一般式
【数2】

で表される請求項2に記載の多相触媒。
【請求項4】
ペロブスカイト相が、Ln0.8Sr0.2Mn0.88Pd0.12、Ln0.8Sr0.2Mn0.94Pd0.06、Ln0.60Sr0.40Mn0.95Pd0.05、Ln0.64Sr0.36Mn0.72Pd0.28及びLn0.80Sr0.20Mn0.65Pd0.35からなる群から選択されるカチオン式を有する請求項3に記載の多相触媒。
【請求項5】
非ペロブスカイト相が、酸化セリウム、式AOによって表されるアルカリ土類酸化物、式AOによって表されるアルカリ酸化物、アルカリ土類炭酸塩及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される請求項2に記載の多相触媒。
【請求項6】
非ペロブスカイト相が酸化セリウムである請求項5に記載の多相触媒。
【請求項7】
非ペロブスカイト相が、式AOで表されるアルカリ土類酸化物である請求項5に記載の多相触媒。
【請求項8】
アルカリ土類酸化物がSrOである請求項7に記載の多相触媒。
【請求項9】
多相触媒が、酸化セリウムの第1の非ペロブスカイト相、及び式AOによって表されるアルカリ土類酸化物の第2の非ペロブスカイト相を含む請求項5に記載の多相触媒。
【請求項10】
アルカリ土類酸化物がSrOである請求項9に記載の多相触媒。
【請求項11】
ペロブスカイト相が、Ln0.64Sr0.36Mn0.72Pd0.28及びLn0.80Sr0.20Mn0.65Pd0.35からなる群から選択されるカチオン式を有する請求項10に記載の多相触媒。
【請求項12】
Lnがランタン濃縮物から得られる請求項1に記載の多相触媒。
【請求項13】
Lnが、バストネサイトから採取された単相混合ランタニド由来の元素の混合物である請求項1に記載の多相触媒。
【請求項14】
zは2y−1/2x+s+3である請求項1に記載の多相触媒。
【請求項15】
(a)基質と、
(b)ウォッシュコートと、
(c)下記式で表される多相触媒とを含み、
【数1】

式中のLnは、天然鉱石から採取された単相混合ランタニド由来の元素の混合物、単一のランタニド、又は人工ランタニドの混合物であり、
Aは、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Cs、Rb及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素であり、
Mは、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Cu、V、Zr、Pt、Pd、Rh、Ru、Ag、Au、Al、Ga、Mo、W、Ti及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素であり、
xは、0≦x<1.0によって定義される数であり、
yは、0≦y<10によって定義される数であり、
sは、0≦s<10によって定義される数であり、
zは、z>0によって定義される数であり、
y>0の場合のみs=0であり、s>0の場合のみy=0である触媒組成物。
【請求項16】
基質が、金属又はセラミックのハニカム支持体である請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項17】
ウォッシュコートが、アルミナ及び酸化セリウムベースの物質を含む請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項18】
アルミナがガンマアルミナである請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項19】
酸化セリウムベースの物質が、
【数3】

及び
【数4】

からなる群から選択され、
0<a<1であり、
Lanは、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu及びYbからなる群から選択される少なくとも1つの希土類であり、
c>0.15であり、
0.15>d>0.01であり、
δ1及びδ2は、酸素欠損度である請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項20】
酸化セリウムベースの物質が、Ce0.68Zr0.32及びCe0.24Zr0.67La0.09からなる群から選択される請求項19に記載の触媒組成物。
【請求項21】
ウォッシュコートが、ガンマアルミナ、Ce0.24Zr0.67La0.09、SrO及びLnを含む請求項17に記載の触媒組成物。
【請求項22】
多相触媒が、ペロブスカイト相及び非ペロブスカイト相を含む請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項23】
ペロブスカイト相が、一般式
【数2】

によって表される請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項24】
ペロブスカイト相が、Ln0.8Sr0.2Mn0.88Pd0.12、Ln0.8Sr0.2Mn0.94Pd0.06、Ln0.60Sr0.40Mn0.95Pd0.05、Ln0.64Sr0.36Mn0.72Pd0.28及びLn0.80Sr0.20Mn0.65Pd0.35からなる群から選択されるカチオン式を有する請求項23に記載の触媒組成物。
【請求項25】
非ペロブスカイト相が、酸化セリウム、式AOによって表されるアルカリ土類酸化物、式AOによって表されるアルカリ酸化物、アルカリ土類炭酸塩及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項26】
非ペロブスカイト相が酸化セリウムである請求項25に記載の触媒組成物。
【請求項27】
非ペロブスカイト相が、式AOで表されるアルカリ土類酸化物である請求項25に記載の触媒組成物。
【請求項28】
アルカリ土類酸化物がSrOである請求項27に記載の触媒組成物。
【請求項29】
酸化セリウムの第1の非ペロブスカイト相及びSrOの第2の非ペロブスカイト相を含む請求項25に記載の触媒組成物。
【請求項30】
ペロブスカイト相が、Ln0.8Sr0.2Mn0.88Pd0.12、Ln0.8Sr0.2Mn0.94Pd0.06、Ln0.60Sr0.40Mn0.95Pd0.05、Ln0.64Sr0.36Mn0.72Pd0.28及びLn0.80Sr0.20Mn0.65Pd0.35からなる群から選択されるカチオン式を有する請求項29に記載の触媒組成物。
【請求項31】
白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム及び銀からなる群から選択される少なくとも1つの貴金属成分をさらに含む請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項32】
少なくとも1つの貴金属成分は、少なくとも1つの貴金属成分の水溶性塩の溶液を触媒組成物に含浸させることにより導入される請求項31に記載の触媒組成物。
【請求項33】
少なくとも1つの卑金属をさらに含む請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項34】
少なくとも1つの卑金属は、少なくとも1つの卑金属の水溶性塩の水溶液を触媒組成物に含浸させることによって、又は、少なくとも1つの卑金属を含む少なくとも1つの化合物を、触媒組成物の少なくとも1つの成分と混練することによって、触媒組成物に導入される請求項33に記載の触媒組成物。
【請求項35】
さらに、非貴金属成分として下記一般式である酸化セリウムベースの物質を含む層を備え、
【数4】

式中、Lanは、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho又はYbの少なくとも1つであり、
c>0.15、0.15>d>0.01であり、
δ2は、酸素欠損度であり、
酸化セリウムベースの物質は蛍石結晶構造を有する請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項36】
層が、上層である請求項35に記載の触媒組成物。
【請求項37】
層が、パラジウム、白金及びロジウムからなる群から選択される少なくとも1つの貴金属成分をさらに含む請求項35に記載の触媒組成物。
【請求項38】
層が、白金及びロジウムの貴金属成分を含む請求項35に記載の触媒組成物。
【請求項39】
層が、ロジウム貴金属成分を含む請求項35に記載の触媒組成物。
【請求項40】
層が、非貴金属成分としてアルミナをさらに含む請求項37に記載の触媒組成物。
【請求項41】
層中において、酸化セリウムベースの物質に対するアルミナの重量比が0.1:1〜1:0.4である請求項40に記載の触媒組成物。
【請求項42】
少なくとも1つの貴金属成分は、少なくとも1つの貴金属成分の少なくとも水溶性塩を、層の少なくとも1つの非貴金属成分と合わせることによって、層に導入される請求項37に記載の触媒組成物。
【請求項43】
少なくとも1つの水溶性塩は、硝酸白金及び硝酸ロジウムからなる群から選択される請求項42に記載の触媒組成物。
【請求項44】
少なくとも1つの水溶性塩が、硝酸白金及び塩化ロジウムからなる群から選択される請求項42に記載の触媒組成物。
【請求項45】
層中において、ロジウム貴金属成分に対する白金貴金属成分の重量比が0.3:1〜3:1である請求項38に記載の触媒組成物。
【請求項46】
層中において、ロジウム貴金属成分に対する白金貴金属成分の重量比が1:1である請求項38に記載の触媒組成物。
【請求項47】
触媒組成物中における層の添加は、20g/リットルを超え、130g/リットル未満である請求項38に記載の触媒組成物。
【請求項48】
触媒組成物中における白金貴金属成分の添加は1g/ft〜10g/ftであり、触媒組成物中におけるロジウム貴金属成分の添加は2g/ft〜8g/ftである請求項38に記載の触媒組成物。
【請求項49】
触媒組成物を作製する方法であって、
基質を提供する工程と、
基質の上にウォッシュコートを形成するための少なくとも1つの担体物質を提供する工程と、
一般カチオン式
【数5】

式中、Lnは、単一のランタニド、人工ランタニドの混合物、又は
天然鉱石から採取された単相混合ランタニド由来の元素の混合物であり、
Aは、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Cs、Rb及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素であり、
Mは、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Cu、V、Zr、Pt、Pd、Rh、Ru、Ag、Au、Al、Ga、Mo、W、Ti及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素であり、
xは、0≦x<1.0によって定義される数であり、
yは、0≦y<10によって定義される数であり、
sは、0≦s<10によって定義される数であり、
zは、z>0によって定義される数であり、
y>0の場合のみs=0であり、s>0の場合のみy=0
を有し、基質によって支持される多相触媒を形成するための溶液を提供する工程と、
(d)基質、ウォッシュコート及び多相触媒を含む触媒組成物を形成する工程とを含む方法。
【請求項50】
工程(d)が、
(a)基質の上に担体物質をスラリー沈着させてウォッシュコート層を形成することと、
(b)溶液をウォッシュコートに含浸させることと、
(c)基質、ウォッシュコート及び含浸溶液を焼成して、基質の上に多相触媒を形成することとを含む請求項49に記載の方法。
【請求項51】
工程(d)が、
(a)溶液からバルク型の多相触媒を形成することと、
(b)担体物質及びバルク多相触媒のスラリー懸濁液を形成することと、
(c)基質の上にスラリー懸濁液を沈着させて基質の上に多相触媒を形成することとを含む請求項49に記載の方法。
【請求項52】
バルク型の多相触媒を形成することが、溶液を焼成することを含む請求項51に記載の方法。
【請求項53】
焼成の前に、ウォッシュコート及び含浸溶液を乾燥させることをさらに含む請求項50に記載の方法。
【請求項54】
バルク型の多相触媒を形成することが、溶液から多相触媒前駆体を共沈させること、及び多相触媒前駆体を焼成することを含む請求項51に記載の方法。
【請求項55】
多相触媒前駆体を共沈させることが、溶液をシュウ酸に接触させることを含む請求項54に記載の方法。
【請求項56】
工程(d)が、
(a)溶液を担体物質に含浸させることと、
(b)溶液を含浸させた担体物質を焼成して、担体物質上に多相触媒を分散させた多相触媒を形成することと、
(c)分散多相触媒を有する担体物質を、スラリー沈着させて基質上に多相触媒を形成することとを含む請求項49に記載の方法。
【請求項57】
基質が金属又はセラミックのハニカム支持体である請求項49に記載の方法。
【請求項58】
複数の担体物質が提供され、ウォッシュコートがアルミナ及び酸化セリウムベースの物質を含む請求項49に記載の方法。
【請求項59】
アルミナがガンマアルミナである請求項58に記載の方法。
【請求項60】
酸化セリウムベースの物質が、
【数6】

及び
【数4】

からなる群から選択され、
式中、0<a<1であり、
Lanは、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu及びYbからなる群から選択される少なくとも1つの希土類であり、
c>0.15、0.15>d>0.01であり、
δ1及びδ2は、酸素欠損度である請求項58に記載の方法。
【請求項61】
酸化セリウムベースの物質が、Ce0.68Zr0.32及びCe0.24Zr0.67La0.09からなる群から選択される請求項60に記載の方法。
【請求項62】
ウォッシュコートが、ガンマアルミナ、Ce0.24Zr0.67La0.09、SrO及びLnを含む請求項58に記載の方法。
【請求項63】
多相触媒が、ペロブスカイト相及び非ペロブスカイト相を含む請求項49に記載の方法。
【請求項64】
ペロブスカイト相が、一般式
【数2】

によって表される請求項63に記載の方法。
【請求項65】
ペロブスカイト相が、Ln0.8Sr0.2Mn0.88Pd0.12、Ln0.8Sr0.2Mn0.94Pd0.06、Ln0.60Sr0.40Mn0.95Pd0.05、Ln0.64Sr0.36Mn0.72Pd0.28及びLn0.80Sr0.20Mn0.65Pd0.35からなる群から選択されるカチオン式を有する請求項63に記載の方法。
【請求項66】
非ペロブスカイト相が、酸化セリウム、式AOによって表されるアルカリ土類酸化物、式AOによって表されるアルカリ酸化物、アルカリ土類炭酸塩及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される請求項63に記載の方法。
【請求項67】
非ペロブスカイト相が酸化セリウムである請求項66に記載の方法。
【請求項68】
非ペロブスカイト相が、式AOで表されるアルカリ土類酸化物である請求項64に記載の方法。
【請求項69】
アルカリ土類酸化物がSrOである請求項66に記載の方法。
【請求項70】
非ペロブスカイト相が、酸化セリウムの第1の非ペロブスカイト相及びSrOの第2の非ペロブスカイト相を含む請求項66に記載の方法。
【請求項71】
触媒組成物の上に層を形成することをさらに含み、層は非貴金属成分として式
【数4】

を有する酸化セリウムベースの物質を含み、
式中のLanは、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho又はYbの少なくとも1つであり、
c>0.15、0.15>d>0.01であり、
δ2は、酸素欠損度であり、
酸化セリウムベースの物質は蛍石結晶構造を有する請求項49に記載の方法。
【請求項72】
層が上層である請求項71に記載の方法。
【請求項73】
層が、パラジウム、白金及びロジウムからなる群から選択される少なくとも1つの貴金属成分をさらに含む請求項71に記載の方法。
【請求項74】
層が、白金及びロジウムからなる群から選択される少なくとも1つの貴金属成分をさらに含む請求項71に記載の方法。
【請求項75】
層が、非貴金属成分としてアルミナをさらに含む請求項73に記載の方法。
【請求項76】
酸化セリウムベースの物質に対するアルミナの重量比が0.1:1〜1:0.4である請求項75に記載の方法。
【請求項77】
貴金属成分が、少なくとも1つの貴金属成分の少なくとも水溶性塩の溶液を、層の少なくとも1つの非貴金属成分に含浸させることによって、層に導入される請求項75に記載の方法。
【請求項78】
少なくとも1つの水溶性塩が、硝酸白金及び硝酸ロジウムからなる群から選択される請求項77に記載の方法。
【請求項79】
少なくとも1つの水溶性塩が、硝酸白金及び塩化ロジウムからなる群から選択される請求項77に記載の方法。
【請求項80】
層中において、ロジウム貴金属成分に対する白金貴金属成分の重量比が0.3:1〜3:1である請求項74に記載の方法。
【請求項81】
層中において、ロジウム貴金属成分に対する白金貴金属成分の重量比が1:1である請求項74に記載の方法。
【請求項82】
触媒組成物中の層の添加が、20g/リットル〜130g/リットルである請求項71に記載の方法。
【請求項83】
触媒組成物への白金貴金属成分の添加が1g/ft〜10g/ftであり、触媒組成物中のロジウム貴金属成分の添加が2g/ft〜8g/ftである請求項74に記載の方法。
【請求項84】
自動車排気ガス中の窒素酸化物、一酸化炭素及び炭化水素を同時変換するための方法であって、
(a)
(a)基質と、(b)ウォッシュコートと、(c)下記一般式、
【数1】

によって表され、
式中の、Lnは、天然鉱石から採取された単相混合ランタニド由来の元素の混合物、単一のランタニド、又は人工ランタニドの混合物であり、
Aは、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Na、K、Cs、Rb及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素であり、
Mは、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Cu、V、Zr、Pt、Pd、Rh、Ru、Ag、Au、Al、Ga、Mo、W、Ti及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される元素であり、
xは、0≦x<1.0によって定義される数であり、
yは、0≦y<10によって定義される数であり、
sは、0≦s<10によって定義される数であり、
zは、z>0によって定義される数であり、
y>0の場合のみs=0であり、s>0の場合のみy=0である多相触媒と、
を含む触媒組成物を提供する工程と、
(b)排ガスを触媒組成物と接触させる工程と、を含む方法。
【請求項85】
接触させる工程を、少なくとも150℃の温度、及び1気圧でおこなう請求項84に記載の方法。
【請求項86】
触媒組成物が、さらに、一般式
【数4】

である酸化セリウムベースの物質を含む層を備え、
式中のLanは、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho又はYbの少なくとも1つであり、
c>0.15、0.15>d>0.01であり、
δ2は酸素欠損度であり、
酸化セリウムベースの物質は、蛍石結晶構造を有する請求項84に記載の方法。
【請求項87】
層が上層である請求項86に記載の方法。
【請求項88】
層が、パラジウム、白金及びロジウムからなる群から選択される少なくとも1つの貴金属成分をさらに含む請求項86に記載の方法。
【請求項89】
非貴金属成分として、アルミナを含む層をさらに含む請求項15に記載の触媒組成物。
【請求項90】
層が貴金属成分として白金をさらに含む請求項89に記載の触媒組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−511430(P2012−511430A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544444(P2011−544444)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/066411
【国際公開番号】WO2011/068509
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(509352945)田中貴金属工業株式会社 (99)
【Fターム(参考)】