説明

混和性ポリイミドブレンド

約50モル%を超えるレゾルシノール系エステル結合を含有するポリアリーレート又はポリエステルカーボネートから製造された組成物は、ポリイミド樹脂との混和性ブレンドを生じる。ポリイミドとレゾルシノール系ポリエステル又はレゾルシノール系ポリエステルカーボネートのブレンドもまた、他のアリールアルキルポリエステル樹脂と組み合わせて混合したときに混和性ブレンドを生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い耐熱性及び透明性と向上した流動性及び衝撃を併せもつポリイミドとレゾルシノール系ポリエステル又はレゾルシノール系ポリエステルカーボネートポリマーとの混和性ブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーをブレンドして新しい組成物を製造することは周知である。しかし、有用な機械的性質を与えるポリマー対を見出すのは困難である。大きいポリマー分子には不利な混合の自由エネルギーのため、通常は、2種のポリマーが互いに分離し、殆ど又は全く親和性をもたないようなブレンドが生成する。これらのブレンドは機械的性質に劣り、成形品やフィルムの製造にはあまり有用ではない。2種のポリマーが充分な親和性を示し、良好な機械的性質を有するブレンドを得るのに充分なポリマー間の接着力を生じる事例はごく限られている。ポリマーが、混合の不利な熱力学を克服すると共に2種のポリマーが互いに溶解し合う密な混合物を形成するのに充分な親和性を有する事例は非常に稀である。かかる混和性ブレンドは、透明であり、良好な機械的及びレオロジー的性質を示すことが多いという点で非常に有用である。長年の実験・研究にもかかわらず、ポリマーの混和性を演繹的に予測するのは依然として非常に難しい。
【特許文献1】米国特許第3803085号明細書
【特許文献2】米国特許第3847867号明細書
【特許文献3】米国特許第3850885号明細書
【特許文献4】米国特許第3852242号明細書
【特許文献5】米国特許第3855178号明細書
【特許文献6】米国特許第3905942号明細書
【特許文献7】米国特許第3983093号明細書
【特許文献8】米国特許第4217438号明細書
【特許文献9】米国特許第4334053号明細書
【特許文献10】米国特許第4443591号明細書
【特許文献11】米国特許第5916997号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者は、アリールポリエステル及びアリールポリエステルカーボネート構造の驚くほど小さい変化で、相分離する不透明なブレンドを十分に混和性で透明なブレンドに変えることができるということを見出した。ビスフェノールA(BPA)系ではなくレゾルシノール系のアリールエステル結合を組み込むことによって、ポリイミド、殊にポリエーテルイミドと混和性であるポリエステルカーボネートが得られる。
【0004】
さらに驚くべきことに、3種の異なるポリマー、すなわちレゾルシノール系ポリエステルカーボネート、ポリイミド及びポリエステルのブレンドも混和性で透明であることが判明した。かかるポリイミドを含む混和性ブレンドは、ポリエステルカーボネート又はポリアリーレートが約50モル%以上のレゾルシノール系アリールエステル結合を含有する組成物で最良に達成される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ポリイミドと特定のレゾルシノール系ポリエステル樹脂及びレゾルシノール系ポリエステルカーボネート樹脂とのブレンドが、混和性であり単一のガラス転移(Tg)を示すことを見出した。これらの組成物は極めて特異的で、混和性を示すのに約50モル%以上のレゾルシノール系結合が必要とされる。
【0006】
この驚くべき混和性はまた、レゾルシノール系ポリエステル及びポリエステルカーボネート及びポリイミドをさらにポリエチレンテレフタレート(PET)のようなアルキルアリールポリエステルと組み合わせて混合する3成分ブレンドでも観察できる。
【0007】
これらの2成分及び3成分ブレンドはいずれも、高いガラス転移温度及び高い加熱撓み(HDT)温度と共に良好な流動性及び衝撃強さを有する。この混和性ブレンドは高いパーセント透過率の良好な光学的性質を示す。母材のポリイミド樹脂と比較して色が低減し、溶融加工性が改良される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
一実施形態では、組成物は、混合物全体の1〜99重量%の1種以上のレゾルシノール系ポリアリーレート樹脂及び99〜1wt%の1種以上のポリイミド樹脂からなる。別の実施形態では、組成物は、混合物全体の1〜99重量%の1種以上のレゾルシノール系ポリエステルカーボネート樹脂及び99〜1wt%の1種以上のポリイミド樹脂からなる。
【0009】
レゾルシノール系ポリアリーレート樹脂は、レゾルシノール又は官能化レゾルシノールと、アリールジカルボン酸又はアリールエステル結合の形成に適切なジカルボン酸誘導体、例えばカルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル及びカルボン酸塩との反応生成物に由来する単位を約50モル%以上含有するべきである。
【0010】
別の実施形態では、組成物は、約70%以上のパーセント透過率と約150℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する。混和性のポリエーテルイミド−レゾルシノール系ポリアリーレート又はレゾルシノール系ポリエステルカーボネートブレンドは、母材のポリイミド樹脂と比較して、高い透明性及び低いヘイズ並びに向上した溶融流動性を示す。
【0011】
レゾルシノール系ポリアリーレートは、さらに、ビスフェノールと、ポリエステルカーボネートコポリマーを製造するホスゲンのようなカーボネート形成性化学種との反応に由来するカーボネート結合を含有していてもよい。
【0012】
本発明の別の実施形態では、レゾルシノールポリアリーレートカーボネートコポリマーは、イソフタル酸及びテレフタル酸、レゾルシノール並びに任意成分としてビスフェノールA、並びにホスゲンの反応生成物からなる。ある態様では、レゾルシノールポリエステルカーボネートコポリマーは、例えば、レゾルシノール部分をジカルボン酸部分と予め反応させてポリエステルブロックを形成した後、前記ブロックをビスフェノール及びカーボネート部分と反応させて、コポリマーのポリカーボネート部分を形成することによって、ビスフェノールジカルボン酸エステル結合の数が最小化されるようにして製造される。
【0013】
注目すべき幾つかの組成物は10〜50%のレゾルシノール系ポリエステルと50〜90%のポリイミドを有する。
【0014】
本発明の一つの態様では、本発明の組成物はアリーレートポリエステル連鎖構成単位を含有するポリマーからなる。前記連鎖構成単位は、1種以上の芳香族ジカルボン酸残基と組み合わせて1種以上のジフェノール残基を含む。一実施形態では、ジフェノール残基は、一般に本明細書を通じてレゾルシノール又はレゾルシノール部分と称する式Iに示す1,3−ジヒドロキシベンゼン部分に由来する。本発明に関して使用するレゾルシノール又はレゾルシノール部分は、特に断らない限り非置換1,3−ジヒドロキシベンゼンと置換1,3−ジヒドロキシベンゼンの両者を含む。
【0015】
【化1】

式I中、Rは1以上のC1−12アルキル、C〜C24アリール、アルキルアリール又はハロゲンであり、nは0〜3である。
【0016】
適切なジカルボン酸残基としては、単環式部分から誘導された芳香族ジカルボン酸残基がある。様々な実施形態では、適切なジカルボン酸残基として、イソフタル酸、テレフタル酸、又はイソフタル酸とテレフタル酸の混合物に由来するものがある。また、適切なジカルボン酸残基として、多環式部分から誘導されたものもあり、その具体例としては、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、及びナフタレンジカルボン酸、殊にナフタレン−2,6−ジカルボン酸がある。ある実施形態では、芳香族ジカルボン酸残基は、典型的には次式IIで示されるようにイソフタル酸及び/又はテレフタル酸の混合物に由来する。
【0017】
【化2】

従って、一実施形態では、本発明は、典型的には次式IIIで示されるレゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖構成単位を含む熱的に安定なポリマーを提供する。
【0018】
【化3】

式中、Rとnは既に定義した通りである。
【0019】
本発明は、その一つの態様において、無水物結合を実質的に含まないレゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖構成単位からなるポリマーを製造する界面重合方法を用いて製造された樹脂からなる組成物を提供する。この方法は、水と、実質的に水と不混和性の1種以上の有機溶媒との混合物中で、1種以上のレゾルシノール部分と1種以上の触媒を合わせて混合する第1の工程を含んでいる。適切なレゾルシノール部分は次式IVの単位を含む。
【0020】
【化4】

式中、RはC1−12アルキル、C〜C24アリール、アルキルアリール又はハロゲンの1以上であり、nは0〜3である。アルキル基は、存在する場合、通例直鎖、枝分れ、又は環式アルキル基であり、両方の酸素原子に対してオルト位に位置することが最も多いが他の環位置も考えられる。適切なC1−12アルキル基としては、特に限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ノニル、デシル、及びアリール置換アルキル、例えばベンジルがある。特定の実施形態では、アルキル基はメチルである。適切なハロゲン基はブロモ、クロロ、及びフルオロである。nの値は、様々な実施形態では0〜3であり得、ある実施形態では0〜2、さらに他の実施形態では0〜1であり得る。一実施形態では、レゾルシノール部分は2−メチルレゾルシノールである。別の実施形態では、レゾルシノール部分は、nがゼロである非置換レゾルシノール部分である。この方法はさらに、1種以上の触媒を反応混合物と合わせて混合することを含んでいる。前記触媒は、酸クロライド基の総モル量を基準にして、様々な実施形態では0.01〜10モル%の総レベルで、ある実施形態では0.2〜6モル%の総レベルで存在し得る。適切な触媒は第三アミン、第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩、ヘキサアルキルグアニジニウム塩、及びこれらの混合物からなる。適切な第三アミンとしては、トリエチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及びこれらの混合物がある。その他の考えられる第三アミンとしては、N−C〜C−アルキル−ピロリジン、例えばN−エチルピロリジン、N−C〜C−ピペリジン、例えばN−エチルピペリジン、N−メチルピペリジン、及びN−イソプロピルピペリジン、N−C〜C−モルホリン、例えばN−エチルモルホリン及びN−イソプロピル−モルホリン、N−C〜C−ジヒドロインドール、N−C〜C−ジヒドロイソインドール、N−C〜C−テトラヒドロキノリン、N−C〜C−テトラヒドロイソキノリン、N−C〜C−ベンゾ−モルホリン、1−アザビシクロ−[3.3.0]−オクタン、キヌクリジン、N−C〜C−アルキル−2−アザビシクロ−[2.2.1]−オクタン、N−C〜C−アルキル−2−アザビシクロ−[3.3.1]−ノナン、並びにN−C〜C−アルキル−3−アザビシクロ−[3.3.1]−ノナン、N,N,N’,N’−テトラアルキルアルキレン−ジアミン、例えばN,N,N’,N’−テトラエチル−1,6−ヘキサンジアミンがある。様々な実施形態では、第三アミンはトリエチルアミン及びN−エチルピペリジンである。
【0021】
適切なジカルボン酸二ハロゲン化物は、単環式部分から誘導された芳香族ジカルボン酸ジクロライドからなり得、その具体例としては、イソフタロイルジクロライド、テレフタロイルジクロライド、又はイソフタロイルジクロライドとテレフタロイルジクロライドの混合物がある。適切なジカルボン酸二ハロゲン化物はまた、多環式部分から誘導された芳香族ジカルボン酸ジクロライド(その具体例としては、ジフェニルジカルボン酸ジクロライド、ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロライド、及びナフタレンジカルボン酸ジクロライド、殊にナフタレン−2,6−ジカルボン酸ジクロライドがある)、又は単環式及び多環式芳香族ジカルボン酸ジクロライドの混合物からなり得る。一実施形態では、ジカルボン酸ジクロライドは、典型的には次式Vで示されるようなイソフタロイル及び/又はテレフタロイルジクロライドの混合物からなる。
【0022】
【化5】

イソフタロイル及びテレフタロイルジクロライドのいずれか一方又は両方が存在し得る。ある実施形態では、ジカルボン酸ジクロライドは、イソフタロイル対テレフタロイルのモル比が約0.25〜4.0:1、他の実施形態ではそのモル比が約0.4〜2.5:1、さらに他の実施形態ではモル比が約0.67〜1.5:1であるイソフタロイルジクロライドとテレフタロイルジクロライドの混合物からなる。
【0023】
ジカルボン酸ハロゲン化物は、本発明のポリマーを製造するための唯一の方法を提供する。レゾルシノールアリーレート結合を製造するためのその他の経路、例えばジカルボン酸、ジカルボン酸エステル、殊に活性化エステル、又はジカルボン酸塩若しくは部分塩を使用するものも考えられる。
【0024】
本発明の方法と組成物において、1種以上の連鎖停止剤(以後、封鎖剤ということもある)も存在し得る。1種以上の連鎖停止剤を添加する目的は、レゾルシノールアリーレートポリエステル連鎖構成単位からなるポリマーの分子量を制限し、従って制御された分子量と好都合な加工性を有するポリマーを提供することである。通例、レゾルシノールアリーレート含有ポリマーがその後の目的のために反応性の末端基をもっている必要がない場合、1種以上の連鎖停止剤を添加する。連鎖停止剤がない場合、レゾルシノールアリーレート含有ポリマーは、コポリマーの形成のようなその後の用途のために溶液中で使用してもよいし、又は溶液から回収してもよい。このような用途では、レゾルシノール−アリーレートポリエステルセグメント上に反応性の末端基、通例ヒドロキシが存在することを必要とし得る。連鎖停止剤はモノフェノール性化合物、モノカルボン酸クロライド、及び/又はモノクロロホルメートの1種以上でよい。通例、この1種以上の連鎖停止剤は、モノフェノール性化合物の場合レゾルシノール部分を基準にして、またモノカルボン酸クロライド及び/又はモノクロロホルメートの場合酸ジクロライドを基準にして、0.05〜10モル%の量で存在し得る。
【0025】
適切なモノフェノール性化合物としては、フェノール、C〜C22アルキル置換フェノール、p−クミル−フェノール、p−第三−ブチルフェノール、ヒドロキシジフェニルのような単環式フェノール、p−メトキシフェノールのようなジフェノールのモノエーテルがある。アルキル置換フェノールとしては、米国特許第433053号に記載されているような8〜9個の炭素原子を有する枝分れ鎖アルキル置換基をもつものがある。ある実施形態では、モノフェノール性連鎖停止剤はフェノール、p−クミルフェノール、及びモノ安息香酸レゾルシノールである。
【0026】
適切なモノカルボン酸クロライドとしては、ベンゾイルクロライド、C〜C22アルキル置換ベンゾイルクロライド、トルオイルクロライド、ハロゲン置換ベンゾイルクロライド、ブロモベンゾイルクロライド、シンナモイルクロライド、4−ナジミドベンゾイルクロライド、及びこれらの混合物のような単環式モノカルボン酸クロライド、トリメリト酸無水物クロライド、及びナフトイルクロライドのような多環式モノカルボン酸クロライド、並びに単環式と多環式のモノカルボン酸クロライドの混合物がある。炭素原子数22以下の脂肪族モノカルボン酸のクロライドも適切である。アクリロイルクロライド及びメタクリロイルクロライドのような脂肪族モノカルボン酸の官能化クロライドも適している。適切なモノクロロホルメートとしては、単環式モノクロロホルメート、例えばフェニルクロロホルメート、アルキル置換フェニルクロロホルメート、p−クミルフェニルクロロホルメート、トルエンクロロホルメート、及びこれらの混合物がある。
【0027】
連鎖停止剤は、レゾルシノール部分と組み合わせて混合することも、ジカルボン酸ジクロライドの溶液中に含有させることも、又は予備縮合物の製造後の反応混合物に添加することもできる。モノカルボン酸クロライド及び/又はモノクロロホルメートを連鎖停止剤として使用する場合、これらはジカルボン酸ジクロライドと一緒に導入することが多い。これらの連鎖停止剤は、ジカルボン酸クロライドが既に実質的に又は完全に反応した時点で反応混合物に添加することもできる。フェノール性化合物を連鎖停止剤として使用する場合、これらは一実施形態ではレゾルシノール部分と酸クロライド部分との反応中に、又は、シアヌル酸別の実施形態ではその反応の開始前に、反応混合物に添加することができる。ヒドロキシ末端停止レゾルシノールアリーレート含有予備縮合物又はオリゴマーを製造するときには、連鎖停止剤は存在しないか又はオリゴマーの分子量の制御を補助するために小量でのみ存在し得る。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、三官能性以上の官能性カルボン酸クロライド及び/又は三官能性以上の官能性フェノールのような1種以上の枝分れ剤を含ませることも考えられる。かかる枝分れ剤は、含ませる場合、通例使用するジカルボン酸ジクロライド又はレゾルシノール部分を基準にして0.005〜1モル%の量で使用することができる。適切な枝分れ剤としては、例えば、三官能性以上のカルボン酸クロライド、例えばトリメシン酸三酸クロライド、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸テトラクロライド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸テトラクロライド又はピロメリト酸テトラクロライド、及び三官能性以上のフェノール、例えば4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス−[4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニルイソプロピル)−フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニルイソプロピル]−フェノキシ)−メタン、1,4−ビス−[(4,4−ジヒドロキシトリフェニル)メチル]−ベンゼンがある。フェノール性枝分れ剤は最初にレゾルシノール部分と共に導入してもよく、一方酸クロライド枝分れ剤は酸ジクロライドと一緒に導入してもよい。
【0029】
本発明は、その実施形態の1つにおいて、本方法で製造され、ポリエステル鎖の2以上のモノマー単位を結合する無水物結合を実質的に含まない熱的に安定なレゾルシノールアリーレートポリエステルを含む。特定の実施形態では、前記ポリエステルは、次式VIで示されるようなイソフタル酸とテレフタル酸の混合物に由来するジカルボン酸残基を含んでいる。
【0030】
【化6】

式中、RはC1−12アルキル、C〜C24アリール、アルキルアリール又はハロゲンの1以上であり、nは0〜3であり、mは約8以上である。様々な実施形態では、nはゼロであり、mは約10〜約300である。イソフタレート対テレフタレートのモル比は、一実施形態では約0.25〜4.0:1、別の実施形態では約0.4〜2.5:1、さらに別の実施形態では約0.67〜1.5:1である。無水物結合を実質的に含まないとは、前記ポリエステルが、前記ポリマーを約280〜290℃の温度に5分間加熱したときに、一実施形態では30%未満、別の実施形態では10%未満の分子量の低下を示すことを意味する。
【0031】
また、本出願人の米国特許第5916997号に開示されているようなソフトブロックセグメントを含有するレゾルシノールアリーレートコポリエステルも本発明の範囲に包含される。本明細書で使用する場合、用語ソフトブロックは、ポリマーの幾つかのセグメントが非芳香族モノマー単位から製造されていることを示す。かかる非芳香族モノマー単位は一般に脂肪族であり、ソフトブロック含有ポリマーに柔軟性を付与することが知られている。これらのコポリマーには、式I、VII、及びVIIIの構造単位を含むものがある。
【0032】
【化7】

式中、Rとnは既に定義した通りであり、Zは二価芳香族基であり、RはC3−20直鎖アルキレン、C3−10枝分れアルキレン、又はC4−10シクロ−若しくはビシクロアルキレン基であり、RとRは各々独立に次式の基を表す。
【0033】
【化8】

ここで、式VIIIはポリエステルのエステル結合の約1〜約45モルパーセントを占める。本発明の追加の実施形態は、式VIIIが、様々な実施形態ではポリエステルのエステル結合の約5〜約40モルパーセントを占め、他の実施形態ではポリエステルのエステル結合の約5〜約20モルパーセントを占める組成物を提供する。別の実施形態は、Rが一実施形態ではC3−14直鎖アルキレン、又はC5−6シクロアルキレンを表し、別の実施形態ではRがC3−10直鎖アルキレン又はC−シクロアルキレンを表す組成物を提供する。式VIIは芳香族ジカルボン酸残基を表す。式VII中の二価芳香族基Zは、様々な実施形態では上記定義の適切なジカルボン酸残基の1以上、ある実施形態では1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、又は2,6−ナフチレンの1以上に由来し得る。様々な実施形態では、Zは約40モルパーセント以上の1,3−フェニレンを含む。ソフトブロック連鎖構成単位を含有するコポリエステルの様々な実施形態では、式I中のnはゼロである。
【0034】
様々な実施形態では、レゾルシノールアリーレート連鎖構成単位を含有するコポリエステルは、約1〜約45モル%のセバケート又はシクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレート単位を含むものである。特定の実施形態では、レゾルシノールアリーレート連鎖構成単位を含有するコポリエステルは、イソフタル酸レゾルシノールとセバシン酸レゾルシノール単位を8.5:1.5〜9.5:0.5のモル比で含むものである。一実施形態では、前記コポリエステルは、セバコイルクロライドをイソフタロイルジクロライドと組み合わせて用いて製造される。
【0035】
本発明は、そのもう1つ別の実施形態では、レゾルシノールアリーレート含有ブロックセグメントを有機カーボネートブロックセグメントと組み合わせて含むブロックコポリエステルカーボネートを含む。かかるコポリマー中のレゾルシノールアリーレート連鎖構成単位からなるセグメントは無水物結合を実質的に含まない。無水物結合を実質的に含まないとは、そのコポリエステルカーボネートが、前記コポリエステルカーボネートを約280〜290℃の温度に5分間加熱したときに、一実施形態では10%未満、別の実施形態では5%未満の分子量の低下を示すことを意味する。このブロックコポリエステルカーボネートとしては、典型的には次式IXで示されるように、アリーレートブロックと有機カーボネートブロックとを交互に含むものがある。
【0036】
【化9】

式中、Rとnは既に定義した通りであり、Rは1以上の二価有機基である。
【0037】
アリーレートブロックは、mで表される重合度(DP)が、一実施形態では約4以上であり、別の実施形態では約10以上、別の実施形態では約20以上、さらに別の実施形態では約30〜150である。pで表される有機カーボネートブロックのDPは、一実施形態では一般に約2以上であり、別の実施形態では約10〜20以上、さらに別の実施形態では約2〜200である。ブロックの分布は、カーボネートブロックに対してアリーレートブロックの所望の重量割合を有するコポリマーが得られるようなものとすることができる。一般に、アリーレートブロックの含有量は一実施形態では約10〜95重量%であり、別の実施形態では約50〜95重量%である。
【0038】
イソフタレートとテレフタレートの混合物が式IXに示されているが、アリーレートブロック中のジカルボン酸残基は上記定義のいかなる適切なジカルボン酸残基、又は適切なジカルボン酸残基の混合物に由来するものでよく、例えば脂肪族二酸ジクロライドに由来するもの(いわゆる「ソフトブロック」セグメント)でもよい。様々な実施形態では、nはゼロであり、アリーレートブロックはイソフタル酸及びテレフタル酸残基の混合物に由来するジカルボン酸残基からなり、イソフタレート対テレフタレートのモル比は一実施形態では約0.25〜4.0:1であり、別の実施形態では約0.4〜2.5:1、さらに別の実施形態では約0.67〜1.5:1である。
【0039】
有機カーボネートブロックで、各Rは独立に二価有機基である。様々な実施形態では、前記基は1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素からなり、ポリマー中のR基の総数の約60パーセント以上は芳香族有機基であり、残りは脂肪族、脂環式、又は芳香族基である。適切なR基としては、m−フェニレン、p−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、4,4’−ビ(3,5−ジメチル)−フェニレン、2,2−ビス(4−フェニレン)プロパン、6,6’−(3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ[1H−インダン])、及び(一般又は具体的)名称又は式で米国特許第4217438号に開示されているジヒドロキシ置換芳香族炭化水素に対応するもののような類似の基がある。
【0040】
ある実施形態では、各Rは芳香族有機基であり、他の実施形態では次式Xの基である。
【0041】
【化10】

式中、各AとAは単環式二価アリール基であり、Yは1又は2個の炭素原子がAとAを離隔している橋架け基である。式X中の遊離原子価結合は通常、Yに対してAとAのメタ位又はパラ位にある。Rが式Xを有する化合物はビスフェノール類であり、簡潔にするために用語「ビスフェノール」は本明細書中でジヒドロキシ置換芳香族炭化水素を示すために使用することがある。しかし、ビスフェノールでないこの種の化合物も適宜使用できる。
【0042】
式X中で、AとAは通例非置換フェニレン又はその置換誘導体を表し、具体的な置換基(1以上)はアルキル、アルケニル、及びハロゲン(特に臭素)である。一実施形態では、非置換フェニレン基が好ましい。AとAの両方がp−フェニレンであることが多いが、両方がo−若しくはm−フェニレンであってもよいし、又は一方がo−若しくはm−フェニレンで、他方がp−フェニレンであってもよい。
【0043】
橋架け基Yは、1又は2個の原子がAとAを離隔しているものである。特定の実施形態では、1個の原子がAとAを離隔している。この種の具体的な基は、−O−、−S−、−SO−又は−SO−、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチルメチレン、エチレン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデン、及び類似の基である。
【0044】
ある実施形態では、gem−アルキレン(一般に「アルキリデン」といわれる)基が好ましい。しかし、不飽和基も包含される。ある実施形態では、好ましいビスフェノールは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−AすなわちBPA)であり、Yがイソプロピリデンで、AとAが各々p−フェニレンであるものである。反応混合物中に存在するレゾルシノール部分のモル過剰に応じて、カーボネートブロック中のRは少なくとも部分的にレゾルシノール部分からなっていてもよい。言い換えると、本発明の一部の実施形態では、式Xのカーボネートブロックは、レゾルシノール部分と1以上の他のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素との組合せからなり得る。
【0045】
ジブロック、トリブロック、及び多ブロックコポリエステルカーボネートが本発明に包含される。レゾルシノールアリーレート連鎖構成単位からなるブロックと、有機カーボネート連鎖構成単位からなるブロックとの間の化学結合は次の1以上からなり得る。
(a)例えば、典型的には次式XIで示されるような、アリーレート部分の適切なジカルボン酸残基と有機カーボネート部分の−O−R−O−部分との間のエステル結合。
【0046】
【化11】

式中、Rは既に定義した通りである。
(b)下記式XIIに示されるような、レゾルシノールアリーレート部分のジフェノール残基と有機カーボネート部分の−(C=O)−O−部分との間のカーボネート結合。
【0047】
【化12】

式中、Rとnは既に定義した通りである。
【0048】
タイプ(a)のエステル結合がかなりの割合で存在する結果、コポリエステルカーボネート中に望ましくない色が生成する可能性がある。本発明が理論に制限されることはないが、例えば、式XI中のRがビスフェノールAであり、式XIのその部分が後の加工処理及び/又は露光時にフリース転位を受けたときに色が生じ得ると考えられる。一実施形態では、コポリエステルカーボネートは、実質的に、レゾルシノールアリーレートブロックと有機カーボネートブロックとの間にカーボネート結合を有するジブロックコポリマーからなる。別の実施形態では、コポリエステルカーボネートは、実質的に、レゾルシノールアリーレートブロックと有機カーボネート末端ブロックとの間にカーボネート結合を有するトリブロックカーボネート−エステル−カーボネートコポリマーからなる。
【0049】
熱的に安定なレゾルシノールアリーレートブロックと有機カーボネートブロックとの間に1以上のカーボネート結合を有するコポリエステルカーボネートは、通例、本発明の様々な実施形態で製造され、一実施形態では1以上、また別の実施形態では2以上のヒドロキシ末端部位を含有するレゾルシノールアリーレート含有オリゴマーから製造される。このオリゴマーは、通例、重量平均分子量が、一実施形態では約10000〜約40000、別の実施形態では約15000〜約30000である。熱的に安定なコポリエステルカーボネートは、第三アミンのような触媒の存在下で前記レゾルシノールアリーレート含有オリゴマーをホスゲン、1種以上の連鎖停止剤及び1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素と反応させることによって製造できる。
【0050】
熱可塑性ポリイミドは次の一般式(XIII)を有する。
【0051】
【化13】

式中、aは2以上、通例約10〜約1000以上、さらに好ましくは約10〜約500であり、Vは四価リンカーであり、このリンカーがポリイミドの合成又は使用を妨げない限り制限はない。適切なリンカーとしては、特に限定されないが、(a)約5〜約50個の炭素原子を有する置換又は非置換で飽和、不飽和又は芳香族の単環式及び多環式基、(b)1〜約30個の炭素原子を有する置換又は非置換で線状又は枝分れの飽和又は不飽和アルキル基、又はこれらの組合せがある。適切な置換及び/又はリンカーとしては、特に限定されないが、エーテル、エポキシド、アミド、エステル、及びこれらの組合せがある。好ましいリンカーとしては、特に限定されないが、次式(XIV)のような四価芳香族基がある。
【0052】
【化14】

式中、Wは−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−C2y−(yは1〜5の整数)、及びこれらのフッ素化誘導体、例えばペルフルオロアルキレン基からなる群から選択される二価部分、又は式−O−Z−O−の基であり、−O−又は−O−Z−O−基の二価結合は3,3’、3,4’、4,3’、又は4,4’位にあり、Zとしては、特に限定されないが、次式(XV)の二価基がある。
【0053】
【化15】

式(XIII)中のRとしては、特に限定されないが、(a)約6〜約20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、及びそのハロゲン化誘導体、(b)約2〜約20個の炭素原子を有する直鎖又は枝分れ鎖アルキレン基、(c)約3〜約20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、又は(d)次の一般式(XVI)の二価基のような置換又は非置換二価有機基がある。
【0054】
【化16】

式中、Qとしては、特に限定されないが、−O−、−S−、−C(O)−、−SO−、−SO−、−C2y−(yは1〜5の整数)、及びこれらのフッ素化誘導体、例えばペルフルオロアルキレン基からなる群から選択される二価部分がある。
【0055】
好ましい群のポリイミドとしては、ポリアミドイミド及びポリエーテルイミド、特に溶融加工処理可能な当技術分野で公知のポリエーテルイミド、例えば製造と性質が米国特許第3803085号及び同第3905942号に記載されているものがある。
【0056】
好ましいポリエーテルイミド樹脂は2以上、通例約10〜約1000以上、さらに好ましくは約10〜約500の次式(XVII)の構造単位を含んでいる。
【0057】
【化17】

式中、Tは−O−又は式−O−Z−O−の基であり、−O−又は−O−Z−O−基の二価結合は3,3’、3,4’、4,3’、又は4,4’位にあり、Zとしては、特に限定されないが、上記定義の式(XV)の二価基がある。
【0058】
一実施形態では、ポリエーテルイミドは、上記エーテルイミド単位に加えて、さらに次式(XVIII)のポリイミド構造単位を含有するコポリマーであってもよい。
【0059】
【化18】

式中、Rは式(XIII)に対して既に定義した通りであり、Mとしては、特に限定されないが、次式(XIX)の基がある。
【0060】
【化19】

ポリエーテルイミドは、下記式(XX)の芳香族ビス(エーテル無水物)と下記式(XXI)の有機ジアミンとの反応を始めとして当業者に周知の方法のいずれかによって製造することができる。
【0061】
【化20】

式中、TとRは式(XIII)と(XVI)で上記したように定義される。
【0062】
特定の芳香族ビス(エーテル無水物)及び有機ジアミンの例は、例えば米国特許第3972902号及び同第4455410号(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。)に開示されている。式(XX)の芳香族ビス(エーテル無水物)の具体例としては、3,3−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル−2,2−プロパン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物及び4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、並びにこれらの様々な混合物がある。
【0063】
ビス(エーテル無水物)は、双極性非プロトン性溶媒の存在下におけるニトロ置換フェニルジニトリルと二価フェノール化合物の金属塩との反応生成物の加水分解とそれに続く脱水によって製造することができる。上記式(XX)に包含される好ましい群の芳香族ビス(エーテル無水物)としては、特に限定されないが、Tが次式(XXII)のものであり、エーテル結合が、例えば好ましくは3,3’、3,4’、4,3’、又は4,4’位にある化合物、及びこれらの混合物がある。
【0064】
【化21】

式中、Qは上記定義の通りである。
【0065】
本発明の方法ではいかなるジアミノ化合物も使用可能である。適切な化合物の例は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、4−メチルノナメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2、2−ジメチルプロピレンジアミン、N−メチル−ビス(3−アミノプロピル)アミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、ビス(3−アミノプロピル)スルフィド、1,4−シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレン−ジアミン、5−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレン−ジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、1,5−ジアミノナフタレン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(2−クロロ−4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,4−ビス(b−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−b−アミノ−t−ブチルフェニル) エーテル、ビス(p−b−メチル−o−アミノフェニル)ベンゼン、ビス(p−b−メチル−o−アミノペンチル)ベンゼン、1,3−ジアミノ−4−イソプロピルベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル及び1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンがある。これらの化合物の混合物も存在し得る。好ましいジアミノ化合物は芳香族ジアミン、殊にm−及びp−フェニレンジアミン、スルホニルジアニリン及びこれらの混合物である。
【0066】
一実施形態では、ポリエーテルイミド樹脂は、各Rが独立にp−フェニレン又はm−フェニレン又はこれらの混合物であり、Tが次式(XXIII)の二価基である式(V)の構造単位を含んでいる。
【0067】
【化22】

ポリイミド、特にポリエーテルイミドを製造する多くの方法の中には、米国特許第3847867号、同第3850885号、同第3852242号、同第3855178号、同第3983093号、及び同第4443591号に開示されているものがある。これらの特許は、例示として、ポリイミドを製造するための一般的及び特定の方法を教示する目的で挙げるものである。
【0068】
ポリエーテルイミドは、340〜370℃で6.6キログラム(kg)の重りを用いてAmerican Society for Testing Materials(ASTM)のD1238に準拠して約0.1〜約10グラム/分(g/min)のメルトインデックスを有する。一実施形態では、ポリエーテルイミド樹脂は、ポリスチレン標準を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィーに準拠して約10000〜約150000グラム/モル(g/モル)の量平均分子量(Mw)を有する。別の実施形態では、ポリエーテルイミドは20000〜60000のMwを有する。かかるポリエーテルイミド樹脂は通例、m−クレゾール中25℃で測定して約0.2デシリットル/グラム(dl/g)超、好ましくは約0.35〜約0.7dl/gの固有粘度を有する。
【0069】
本明細書に記載したブレンドに有用な幾つかのポリエーテルイミドの例が、ASTM D5205−96「Standard Classification System for Polyetherimide (PEI) Materials」に挙げられている。
【0070】
ポリイミドは、組成物の総重量を基準にして約1〜約99重量パーセントの量で存在する。この範囲内で、ポリイミドの量は約20重量パーセント以上、さらに具体的には約50重量パーセント以上、さらに一段と具体的には約70重量パーセント以上であり得る。また、この範囲内で、ポリイミドの量は、約90重量パーセント以下、さらに具体的には約80重量パーセント以下、さらに一段と具体的には約75重量パーセント以下であり得る。
【0071】
別の実施形態では、
a)ポリエーテルイミド1〜99%、
b)50モル%以上のレゾルシノール結合を含有するアリールポリエステル樹脂99〜1%、
c)アリールアルキルポリエステル0〜30%、
d)リン含有安定剤0〜2%
の混和性ポリマーブレンドを含んでなる組成物が考えられる。
【0072】
他の態様では、
a)50〜99重量の1種以上のポリエーテルイミド樹脂、
b)1〜50重量の、50モル%以上のレゾルシノール結合を含有する1種以上のアリールポリエステルカーボネート樹脂、
c)0〜30重量の1種以上のアリールアルキルポリエステル樹脂、
d)0〜2重量の1種以上のリン含有安定剤
の混和性ポリマーブレンドを含んでなる組成物が考えられる。
【0073】
本発明の組成物はまた、例えば、特に限定されないが、二酸化チタン、硫化亜鉛及びカーボンブラックのような着色剤、ヒンダードフェノール、ホスファイト、ホスホナイト、チオエステル及びこれらの混合物のような安定剤、並びに離型剤、滑剤、難燃剤、煙抑制剤及びドリップ抑制剤、例えばフルオロポリマーを主体とするものを始めとする様々な添加剤と組み合わせて混合することもできる。ホスホネート又はホスファイト化合物又はこれらの混合物を使用することは、幾つかの事例において、色及び安定性を改良するために望ましいであろう。別の事例においては、アリールホスホネート、ホスファイト化合物若しくはこれらの混合物又はこれらとヒンダードフェノール酸化防止剤との組合せを使用し得る。スルホン酸塩を主体とする難燃剤、例えばペルフルオロアルキル金属スルホン酸塩、アリールスルホン酸塩又はこれらの混合物が有用であろう。ブロモ又はクロロ化合物も、幾つかの事例では難燃剤として使用することができる。紫外光安定剤も有効量で組成物に添加することができる。これらの添加剤は、その有効なレベル及び配合方法と共に当技術分野で公知である。添加剤の有効量は広い範囲で変化するが、通常は組成物全体の重量を基準にして約0.01〜30重量%以上までの量で存在する。幾つかの事例において、透明性と低いヘイズを保持する組成物が得られる添加剤が望ましいであろう。
【0074】
離型剤の例はアルキルカルボン酸エステル、例えばペンタエリトリトールテトラステアレート、グリセリントリステアレート及びエチレングリコールジステアレートである。離型剤は通例、配合物の0.05〜0.5重量%で組成物中に存在する。好ましい離型剤は、その離型剤が溶融加工処理中に溶融ポリマー繊維混合物から損失するのを防ぐために高い分子量をもっており、通例約200を超える。
【0075】
本発明の組成物は、材料を配合物中に望まれるあらゆる追加の添加剤と密に混和することを含む各種の方法で上記成分とブレンドすることができる。好ましい手法としては溶融ブレンドがあるが、溶液ブレンドも可能である。工業用ポリマー加工処理施設での溶融ブレンド装置の利用可能性から、溶融加工処理法が一般に好ましい。かかる溶融加工処理法に使用する装置の具体例としては、同方向回転及び逆方向回転式押出機、単軸式押出機、コニーダー、ディスクパックプロセッサー並びに様々な他のタイプの押出装置がある。本方法におけるメルトの温度は、樹脂の過剰な劣化・分解を避けるために最低にするのが好ましい。溶融樹脂組成物中のメルト温度は約250〜約370℃に維持するのが望ましいことが多いが、加工処理装置中の樹脂の滞留時間が短く保たれるのであれば、さらに高い温度を使用することができる。ある実施形態では、溶融加工処理された組成物はダイ中の小さい出口孔を通って押出機のような加工処理装置を出、得られた溶融樹脂のストランドは、そのストランドを水浴に通過させることによって冷却される。冷却ストランドは、包装及びさらなる取扱いのために小さいペレットに切断することができる。
【0076】
本発明の組成物は多くの方法で製造することができる。好ましい方法としては、例えば、射出成形、圧縮成形、異形押出、シート又はフィルム押出、ガスアシスト成形、構造用発泡成形及び熱成形がある。かかる物品の例としては、特に限定されないが、調理器具、給食用品、医療機器、トレイ、プレート、ハンドル、ヘルメット、動物の檻、電気コネクター、電気装置のエンクロージャー、エンジン部品、自動車エンジン部品、照明用ソケット及び反射板、電動機部品、配電装置、通信装置、コンピューターなど、例えばスナップフィットコネクターに成形された装置がある。本明細書に記載したレゾルシノールポリアリーレート系ブレンド樹脂はまたフィルム及びシート並びに積層系の成分にも製造することができる。
【実施例】
【0077】
当業者は、さらに苦労することなく、本明細書の記載を用いて本発明を利用することができると考えられる。以下の実施例は、本発明を実施する上での追加の指針を当業者に提供するためのものである。ここに挙げる実施例は、本研究の単なる代表例であり、本発明の教示に寄与するものである。従って、これらの実施例は、いかなる意味でも本発明を限定するものではない。
【0078】
本発明の実施例
レゾルシノール系ポリエステルカーボネート樹脂とポリエーテルイミド又はポリエーテルイミドスルホン樹脂の混合物を2.5インチの単軸式真空ベント押出機で押し出すことによってブレンドを調製した。組成は全て組成物全体のwt%で示す。全てのレゾルシノールポリエステルカーボネートブレンドは、押出の前に添加した0.06%のトリアリールホスファイト安定剤を含んでいた。押出機は約285〜340℃に設定した。ブレンドを真空下約90ppmで押し出した。押出物を冷却し、ペレット化し、120℃で乾燥した。試験試料を、30秒のサイクル時間を用いて340〜350℃の設定温度、120℃の金型温度で射出成形した。性質はASTM試験法で測定した。
【0079】
メルトフローインデックス(MFI)は、乾燥したペレットに対してASTM D1238に準拠して337℃で6.6Kgの重りを用いて測定した。成形した試料は全て、試験前に50%の相対湿度で48h以上調整した。
【0080】
アイゾット衝撃値は室温で3.1mmの太さの棒に対してASTM D256に準拠して測定した。Tgは、示差走査熱量測定によってASTM法D3418を用いて加熱速度20℃/min.の第2の走査で測定した。加熱撓み温度(HDT)は3.1mmの太さの棒に対してASTM D648に準拠して0.45〜1.82MPaで測定した。パーセント透過率(%T)は3.1mmの射出成形部品に対してATM D1003に準拠して測定した。二軸又は機器衝撃は102×3.1mmのディスクに対して23℃、0℃及び−20℃でASTM法D3763を用いて測定し、総衝撃エネルギーを記録する。黄色度(YI)は3.1mmの射出成形チップに対してASTM法D6290に準拠して測定した。文字は比較例を表し、数字は本発明の実施例を表すことに留意されたい。
【0081】
材料
ITR樹脂は、イソフタロイルクロライドとテレフタロイルクロライドの1:1混合物とレゾルシノール、ビスフェノールA(BPA)及びホスゲンとの縮合で製造されたポリマーである。
【0082】
ポリマーは、エステル結合とカーボネート結合の概略モル比で命名されている。
【0083】
ITR9010は、約81モル%のレゾルシノールエステル結合、8モル%のレゾルシノールカーボネート結合及び約11モル%のBPAカーボネート結合である。Tg=131℃。
【0084】
ITR8020は、約74モル%のレゾルシノールエステル結合、7モル%のレゾルシノールカーボネート結合及び約19モル%のBPAカーボネート結合である。Tg=130℃。
【0085】
ITR6040は、約51モル%のレゾルシノールエステル結合、15モル%のレゾルシノールカーボネート結合及び約34モル%のBPAカーボネート結合である。Tg=125℃。
【0086】
ITR2080は、約19モル%のレゾルシノールエステル結合、6モル%のレゾルシノールカーボネート結合及び約75モル%のBPAカーボネート結合である。Tg=136℃。
【0087】
PEI=ULTEM 1000ポリエーテルイミド、GE Plastics製。
【0088】
PEIS=ULTEM XH6050ポリエーテルイミドスルホン、GE Plastics製。
【0089】
PET=0.85IVポリエチレンテレフタレート、Kosa Co.。
【0090】
実施例A〜E、1〜4(表1)は、PEIとITR 6040及びITR 2080とのブレンド並びにPEI対照樹脂を示す。ITR 6040ブレンド(約51モル%のレゾルシノールエステル結合)、すなわち実施例1〜4は全て透明であり、70%を越える%Tを示していることに留意されたい。ITR 2080(約19モル%のレゾルシノール系エステル結合)を用いた対照実験B〜Eは不透明で低い%Tであり、このことは混和性ブレンドを達成するためのポリエステルカーボネート樹脂中の高いモル%のレゾルシノール結合の重要性を示している。PEI対照(実施例A)と比較して、実施例1〜4は優れた低温二軸衝撃と優れた溶融流動性(向上したMFI)を示している。実施例1〜4はまた増大した%Tと共に低減した黄色度(YI)も示している。
【0091】
【表1】

表2に、本発明の別の実施例を示す。実施例9〜11はITR9010(約81モル%レゾルシノール系エステル結合)を有する透明で高い流動性のPEIブレンドを示している。実施例11は、50%を超えるレゾルシノール系結合を有するITRを高レベルでPEIとブレンドしても透明性を保持することを示している。実施例12は、ITR8020(約74モル%レゾルシノール系エステル結合)を有する透明なPEIブレンドを示している。実施例13は、ITR 9010とポリエーテルイミドスルホン(PEIS)の透明で色の薄い高い流動性のブレンドを示している。
【0092】
【表2】

表3に、PEI、ITR 9010及びPETの3成分透明ブレンドの例を示す。これら3種の樹脂は上記のようにして混合し、押し出し、射出成形した。実施例FはPETとPEIの対照ブレンドである。実施例14と15のレゾルシノール系ポリエステルカーボネート、PEI及びPETのブレンドは、対照試料Fと比較して向上したアイゾット衝撃強さ、増大した%T及び高いHDTを示している。
【0093】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のポリイミド樹脂とレゾルシノール系ポリエステルカーボネート、レゾルシノール系ポリアリーレート及びこれらの混合物からなる群から選択される第2の樹脂との混和性ポリマーブレンドを含んでなる組成物であって、上記ポリエステルカーボネート及びポリアリーレートがレゾルシノール由来のアリールエステル結合を50モル%以上有する組成物。
【請求項2】
前記ポリイミド樹脂が、ポリエーテルイミド、ポリエーテルイミドスルホン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリイミドが、
(a)ビスフェノールA二無水物、オキシジフタル酸無水物、ピロメリト酸二無水物、ジフタル酸無水物、スルホニル二無水物、ベンゾフェノン二無水物及びこれらの混合物からなる群から選択されるアリール二無水物と、
(b)m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、オキシジアニリン、ビス−アミノフェノキシベンゼン、ビス−アミノフェノキシビフェニル、ビス−アミノフェニルフェニルスルホン、ジアミノジフェニルスルフィド及びこれらの混合物からなる群から選択されるアリールジアミンと
から製造されたものである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
さらに、リン含有安定剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
さらに、ホスファイト、ホスホナイト及びこれらの混合物からなる群から選択される安定剤を含む、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記混和性ポリマーブレンドが、ASTM D1003に準拠して約50%以上のパーセント透過率を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記混和性ポリマーブレンドが、ASTM D3418に準拠して約150℃以上のガラス転移温度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記混和性ポリマーブレンドが、ASTM D256に準拠して約100J/m以上のアイゾット衝撃強さを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
さらに、1種以上のアルキルアリールポリエステル樹脂を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記アリールアルキルポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタノエート、ポリブチレンナフタノエート、ポリプロピレンナフタノエート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
a)ポリエーテルイミド1〜99%、
b)50モル%以上のレゾルシノール結合を含有するアリールポリエステル樹脂99〜1%、
c)アリールアルキルポリエステル0〜30%、
d)リン含有安定剤0〜2%
の混和性ポリマーブレンドを含んでなる組成物。
【請求項12】
a)1種以上のポリエーテルイミド樹脂50〜99重量%、
b)50モル%以上のレゾルシノール結合を含有する1種以上のアリールポリエステルカーボネート樹脂1〜50重量%、
c)1種以上のアリールアルキルポリエステル樹脂0〜30重量%、
d)1種以上のリン含有安定剤0〜2重量%
の混和性ポリマーブレンドを含んでなる、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記レゾルシノール系ポリアリーレートが以下の構造を有する、請求項1記載の組成物。
【化1】

式中、Rは1以上のC1−12アルキル、C〜C24アリール、アルキルアリール又はハロゲンであり、nは0〜3であり、mは約8以上である。
【請求項14】
前記レゾルシノール系ポリエステルカーボネート樹脂が、以下の構造を有するカーボネート結合を含有するコポリマーである、請求項1記載の組成物。
【化2】

式中、Rは1以上のC1−12アルキル、C〜C24アリール、アルキルアリール又はハロゲンであり、nは0〜3であり、Rは1以上の二価有機基であり、mは約4〜150であり、pは約2〜200である。
【請求項15】
がビスフェノール化合物に由来する、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
さらに、エステル系離型剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
前記エステル系離型剤が約200以上の分子量を有する、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
さらに、臭素若しくは塩素含有化合物、スルホン酸塩、オルガノホスフェート、フッ素化ポリマー又はこれらの混合物からなる群から選択される難燃剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
請求項1記載の組成物から製造された物品。
【請求項20】
当該物品透明であってASTM D1003による%透過率が50%以上である、請求項19記載の物品。

【公表番号】特表2008−504428(P2008−504428A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519295(P2007−519295)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/022351
【国際公開番号】WO2006/012250
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】