混注監査システム
【課題】混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報の整合性を正確に且つ簡単に確認できる混注監査システムを提供すること。
【解決手段】 混注作業の場に設けられ,上記混注作業を撮影するための混注作業撮像装置と,上記混注作業の場から離れた場所に混注作業を表示するための監査者側混注作業モニタを備え,上記監査者側混注作業モニタは,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業と,上記薬剤管理サーバに記憶された上記混注情報の両方を同時に表示することができるモニタとしてなる混注監査システムであり,これによって混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報の整合性を正確に且つ簡単に確認できる混注監査システムを提供することが出来る。
【解決手段】 混注作業の場に設けられ,上記混注作業を撮影するための混注作業撮像装置と,上記混注作業の場から離れた場所に混注作業を表示するための監査者側混注作業モニタを備え,上記監査者側混注作業モニタは,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業と,上記薬剤管理サーバに記憶された上記混注情報の両方を同時に表示することができるモニタとしてなる混注監査システムであり,これによって混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報の整合性を正確に且つ簡単に確認できる混注監査システムを提供することが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,薬剤を混合して注射薬を生成するための混注作業を監視する混注監査システムに関し,特に,従来行われていなかった,混注作業の動作を,混注作業者から離れた場所で監査することのできる監査システムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような混注作業は,患者の容態に直接関係するものであるので,きわめて綿密な手順で実行されなければならない。特に,抗癌剤のような劇薬においては,その原料である混合前の薬剤や或いは混注で出来上がった薬剤自身,健常者にとっては間違って吸収すると健康を害する恐れのあるものも少なくない。
そのため,例えば日本病院薬剤師会から「入院患者のための注射剤調剤指針(平成12年12月)」などが公表され,薬剤の有効性,安全性を確保するために,患者情報に基づいて,投与量,投与手技,投与速度,投与機関などの処方内容の適正を確認し,疑義のあるときは処方医に問い合わせ,納得したうえで調剤処理を行うこと,とされている。
【0003】
そして上記のような注射薬調剤の手順や手技は次のようである。
即ち,コンピュータによりトータルに管理されるシステムによって,医師が入力した注射薬オーダを所定時間以内或いは所定時に注射処方箋として出力し,
1.処方監査・計量(混合)指示
2.計量準備
3.無菌調整(輸液との混合)
4.混合後監査,ラベル貼り付け
5.計数(個人別セット)・ラベル添付
6.最終監査
の順に調剤が行われるのが,一般的である。
【0004】
このように混注作業には,その安全性を考慮して,多くの段階ごとに監査を行わねばならないが,とりわけ上記3.の無菌調整はその手技自体(混合薬剤のチェック,混合の仕方,加振の程度,加振の時間など),さまざまな段階でのチェック(監査)が必要である。
特に混注に用いられる薬剤の量を間違うと,致命的な結果となることは明白である。そのため,多数の薬剤のマスターデータを記憶したマスターデータベースと,患者に1回に施用される複数種の薬剤を調剤して支給容器に収容する手順を示す調剤パターンであって,固形薬剤の有無,液状薬剤の有無,溶解剤の有無,希釈液の有無,支給容器の種類,のうちの一部又は全部をパラメータとする調剤パターンを,複数とおり予め設定して記憶させた調剤パターン記憶手段と,を備え,前記複数ステップからなる調剤手順は,支給容器の初期重量を測定するステップと,薬剤 を混注 した調剤後の支給容器の最終重量を測定するステップを含むようにすることで,初期重量と最終重量とを比較して,混注原料となる薬剤の投与量が適切であったかどうかを監査するようにした処方薬調剤支援システム(特許文献1)が従来から知られている。
【0005】
この従来技術では,上記のように使用される薬剤の量的管理が正確に行われるという点で,特に薬剤の量的管理が厳しく行われる抗癌剤などの処方薬調剤支援システムとして優れたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−208842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,薬剤の混注作業においては,投与量の適切さはもとより重要であるが,上記したように混注されるべき薬剤の混合の仕方,加振の程度,加振の時間など,混注作業者の混注動作という数値化しにくい評価対象が含まれており,上記従来公知の技術は,このような数値的には評価困難な混注動作についての監査には,まったく役立たないものであった。
そのため従来の監査の実態においては,上記のような数値に表しにくい混注動作そのものの監査のために,混注作業が始まってから終わるまで,混注作業者のそばに監査者が寄り添って監査を行わねばならないことになっている。
【0008】
しかしながら監査者は,ある混注作業者に専属するということはなく,複数の作業者の混注作業を監査しなければならない。そのため,上記のように監査者が作業者に寄り添って監査を行う方法では,監査者が次々と別の作業者の場所まで行って監査して回らねばならなかった。これは監査者にとって,実際上大きい負担となっている。
すなわち,鑑査者が例えば1つの監査室にいながらにして,次々と別の混注作業を監査できれば,監査者の負担は一挙に解消される。
【0009】
また,前記したように混注動作の監査という作業は,極めて緻密な観察力を必要とするものであるので,同時に2つの作業を監査するということは監査ミスを生じる可能性がある。従って,1人の監査者が複数の混注動作をモニタを介して監査するとしても,監査の実態としてはそれを同時に行うというのではなく,モニタ上の表示を切り替えて,常に1つの混注作業を監査するようなシステムとすることが望ましい。
さらに,混注作業を監査する場合,混注に用いる薬剤の内容に関する情報(混注情報)について,対象患者についての混注情報をモニタで見ながら監査を行うべきことは当然であるが,混注作業者の作業が正しく行われているかどうかという監査の最も重要な対象については,混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報との整合性を正確に且つ簡単に確認できるようにすることがきわめて重要である。
【0010】
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,上記のような数値的には評価しにくい混注作業者の動作についての評価を,混注作業の場から離れた場所で行うことが出来るようにして,監査者の負担を軽減することの出来るシステムを提供することである。
また同時に,混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報との整合性を正確に且つ簡単に確認できるような混注監査システムを提供することである。
また,別の目的として,視覚的監査を複数の混注作業に対して一箇所で集中的に実行できるようにして,監査の効率を一挙に向上させることができるシステムを提供すること,更には,上記のように混注作業の場から離れた場所に居ながらにして次々と別の混注作業を監査しうるようにすることの出来るシステムを提供することである。
また,上記のようなシステムにおいては,監査者は混注作業の間違いなどを指摘するための混注作業者側モニタを設けることが必要となるが,この混注作業者側モニタによって上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を表示できるようにすれば,2つの別機能のモニタを兼用することが出来,経済的である。本発明はこのような経済的なシステムを提供することをも,別の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は,注射用薬剤を混合する混注作業を混注作業者とは別の監査者によって監査するための混注監査システムであって,混注作業者のいる混注作業の場と,混注作業を監査する監査者のいる監視室等の混注作業の場から離れた場所を接続するシステムであり,上記混注作業者のいる場所には,後記する監査者側入力装置により入力された内容を混注作業者に表示するための混注作業者側表示手段が設けられる一方,上記混注作業の場から離れた監視室等には,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業を表示するための監査者側混注作業モニタと,混注作業の場で作業する作業員に対する指示を入力するための監査者側入力装置とが設けられる。
これにより,監査者は,上記上記混注作業を撮影するための混注作業撮像装置により撮像された混注作業者の混注動作を,監査者側混注作業モニタによって混注作業の場から離れた監査室等に居ながらにして監視することができる。この点,従来の監査システムでは,混注動作という視覚的な動作の監視については,監査者が混注作業者の近くにいてその動作を逐一観察しなければならなかったので,常に監査者が混注作業者と一緒に居て監査しなければならなかったので,監査者が四方八方に歩き回らねばならなかったが,本発明では,上記のように監査者が監査室等に居ながらにして混注作業者の混注動作を監査できるようになり監査者が大きい負担から開放されることになった。
さらに本発明は,上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を記憶する薬剤管理サーバと,を備えてなる混注監査システムにおいて,上記監査者側混注作業モニタは,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業と,上記薬剤管理サーバに記憶された上記混注情報の両方を同時に表示することができるモニタであることを特徴とする混注監査システムである。
【0012】
上記したように従来の混注監査システムはきわめて効率の悪い作業であったが,上記したように本発明においては,監査者は,複数の混注現場に置かれた複数の混注作業撮像装置から送られてくる混注動作の画像を,別の監査室等において1人で集中的に監視することができるので,1名の監査者が複数の混注作業者の動作を監査することができ,監査の能率を一挙に高めることに成功したものである。
また,混注作業を監査する場合,混注に用いる薬剤の内容に関する情報(混注情報)について,対象患者についての混注情報をモニタで見ながら監査を行うべきことは当然であるが,混注作業者の作業が正しく行われているかどうかという監査の最も重要な対象については,混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報との整合性を正確に且つ簡単に確認できるようにすることがきわめて重要である。この点,本発明では,前記したように,上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を記憶する薬剤管理サーバと,を備えてなる混注監査システムにおいて,上記監査者側混注作業モニタは,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業と,上記薬剤管理サーバに記憶された上記混注情報の両方を同時に表示することができるモニタであることを特徴とする混注監査システムであるので,混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報とを1つのモニタで同時に見ながら監査を行うことが出来るので,混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報の整合性を正確に且つ簡単に確認できる混注監査システムを完成することが出来た。
前記したように混注動作の監査という作業は,極めて緻密な観察力を必要とするものであるので,同時に2つの作業を監査するということは監査ミスを生じる可能性がある。従って,本発明の別の実施形態としては,1人の監査者が複数の混注動作をモニタを介して監査するとしても,監査の実態としてはそれを同時に行うというのではなく,モニタ上の表示を切り替えて,常に1つの混注作業を監査するようなシステムが提供される。
監査の実態においては,同一の時間には1人の監査者が1つの混注動作を監視することになるが,1つの監査が終われば,別の混注作業者の場所に移動することなく,次の混注作業者の要請に応じて監査室等にいながらにして別の混注作業の監視を続行できる。そういう意味で,本発明では,1対多の関係が成立するのである。
【0013】
また,実際の混注監査は,混注作業者と監査者との意思の疎通を必要とする。例えば,薬剤の混合動作が鈍いと判断すれば,監査者はもっときつく振るように指示をしなければならないし,監査規定に適合する動作であると判断すれば,監査合格により混注動作を終了してよいといった指示を監査者から混注作業者に送らねば監査自体が成立しない。
そのため,この発明では,上記のように,混注作業の場所に,監査者側入力装置により入力された内容を混注作業者に表示するための混注作業者側表示手段を設ける一方,上記混注作業の場から離れた監査室等に,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業を表示するための監査者側混注作業モニタと,混注作業の場で作業する作業員に対する指示を入力するための監査者側入力装置を設けて,混注作業者と監査者との意思の疎通を可能としている。
【0014】
また,本発明のほかの実施形態においては,上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を記憶する薬剤管理サーバと,混注作業の場に設けられ,上記薬剤管理サーバに接続されて上記混注情報を表示するための混注作業者側混注情報モニタを備えてなるように構成することが出来る。
これにより従来,混注作業の場に混注情報を記載した注射箋などの紙を持ち込まねばならなかったために,注射箋などの紙がアルコールなどの消毒剤の噴霧により印刷が消えたり,濡れてしわくちゃになって,字が読み辛くなるなどの問題があったが,上記混注作業者側混注情報モニタによりこのような問題が一挙に解消されることになる。
【0015】
さらに,本発明の別の態様として,上記混注作業者側混注情報モニタが,上記混注作業者側表示手段を兼ねている混注監査システムが提供される。もちろん,このようなモニタであれば,終了した手順を順次消して行くなどの処理も非常に簡単に実行できるので,その面でも混注作業者の負担が軽減されると共に,作業の適切化が図られる。
上記のように本発明では基本的に,監査者が混注作業の間違いなどを指摘するための混注作業者側表示手段を設けることが必要となるが,この混注作業者側表示手段によって上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を表示できるようにすれば,すなわち,混注作業者側表示手段と混注作業者側混注情報モニタを兼用すれば,上記2つの別機能のモニタ(表示手段)を兼用することが出来,経済的なシステムを達成できる。
更に別の態様としては,監査者側混注作業モニタが,複数の上記混注作業撮像装置からの映像を切り替え表示可能であるように構成したものが提供される。このように複数の上記混注作業撮像装置からの映像を切り替え表示することで,一度に複数の監査が行われることによる不注意ミスの発生を防止することができる。
或いは,監査者側混注作業モニタが,混注作業者側からの要求に応じて,上記混注作業撮像装置からの映像を切り替え表示可能であるように構成可能である。このような構成によって,混注作業者が,次々に別の画面を監査者に見せたいときに,能率よく画面を切り替えて監査を受けることができるので,広い作業について監査が円滑に進むと共に監査の効率が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,数値的に評価しにくい混注作業者の動作という本来混注作業者のそばについて監査しなければならない評価要因を,混注作業者と離れた監査室等に居ながらにして視覚的に監査することができるので,監査者の負担が一挙に軽減されると共に,そのような視覚的監査を複数の混注作業に対して一箇所で集中的に実行できるので,監査の効率を著しく向上させることができ,さらに混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報の整合性を正確に且つ簡単に確認できる混注監査システムを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のシステムを適用することの出来る注射薬処方の要求から注射薬投与までの流れの概要を示す流れ図。
【図2】本発明に係るシステムをサポートするためのハードウエアの概略構成図。
【図3】混注作業の概要を示す流れ図。
【図4】混注作業を支援する薬剤管理サーバと混注作業者側表示手段の制御手段との情報処理の手順を示すフロー図。
【図5】混注作業者側表示手段或いは監査者側混注作業モニタにおける初期メニューを示す図。
【図6】混注作業者側表示手段或いは監査者側混注作業モニタにおいて,混注監査モニタメニュー或いは遠隔監査モニタメニューを選択した場合の初期画面の一例を示す図。
【図7】混注作業者側表示手段或いは監査者側混注作業モニタにおいて患者情報が表示された画面を示す図。
【図8】監査対象のシリンジが表示されている状態の画面を示す図。
【図9】図8の状態で,混注の詳細情報を表示している画面を示す図。
【図10】遠隔監査モニタにおける表示画面を示す図。
【図11】混注作業に用いる安全キャビネットの一例を示す正面図。
【図12】図11に示した安全キャビネットの斜視図。
【図13】同安全キャビネットの扉部詳細を示す斜視図。
【図14】同安全キャビネット内での作業の状況を示す斜視図。
【図15】別の安全キャビネット内での作業の状況を示す斜視図。
【図16】更に別の安全キャビネット内での作業の状況を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明のシステムを適用することの出来る注射薬処方の要求から注射薬投与までの流れの概要を示す流れ図,図2は,本発明に係るシステムをサポートするためのハードウエアの概略構成図,図3は,混注作業の概要を示す流れ図,図4は,混注作業を支援する薬剤管理サーバと混注作業者側表示手段の制御手段との情報処理の手順を示すフロー図,図5は,混注作業者側表示手段或いは監査者側混注作業モニタにおける初期メニューを示す図,図6は,混注作業者側表示手段或いは監査者側混注作業モニタにおいて,混注監査モニタメニュー或いは遠隔監査モニタメニューを選択した場合の初期画面の一例を示す図,図7は,混注作業者側表示手段或いは監査者側混注作業モニタにおいて患者情報が表示された画面を示す図,図8は,監査対象のシリンジが表示されている状態の画面を示す図,図9は,図8の状態で,混注の詳細情報を表示している画面を示す図,図10は,遠隔監査モニタにおける表示画面を示す図,図11は,混注作業に用いる安全キャビネットの一例を示す正面図,図12は,図11に示した安全キャビネットの斜視図,図13は,同安全キャビネットの扉部詳細を示す斜視図,図14は,同安全キャビネット内での作業の状況を示す斜視図,図15は,別の安全キャビネット内での作業の状況を示す斜視図,図16は,更に別の安全キャビネット内での作業の状況を示す斜視図である。
【0019】
まず,図1の流れ図を用いて,本発明のシステムを適用する背景技術である処方のオーダから薬剤の投与までの処理の流れの概要を説明する。
処理は薬剤師側の処理から始まる。手順の番号をT1,T2,…で表す。
医師側で作成された注射剤の処方・調整箋を受け取る(オーダを受け取る(T1))と,薬剤師は受け取った注射剤の処方に間違いがないかの監査を行う(T2)。
【0020】
続いて,上記処方に従った上記注射剤の処方箋が作成される(T3)。
処方された注射剤が混注の対象外(T4)であれば,混注処理なくして直接調剤し,監査(T5)を経て交付(T6)される。
処方箋に記載された注射剤が混注対象薬剤であれば(T7),混注のための薬剤を取り揃え,薬品集計表(T8)と共に,取り揃えた薬剤の名称や本数の監査を行う(T9)。また,後記する混注作業においては,正しい薬剤であるかのチェックが必要なので,そのための患者名や薬剤の明細が記載されたラベルが作成される(T10)。
これらの監査済みの薬品とラベルがセットにされて保管される(T11)。
【0021】
ここまでが,混注作業の準備であり,通常は,混注作業の前日に完了される。
ここでの監査の状況や,作成された薬品の内容,患者のID,患者名,混注の実施日などの混注内容に関するデータを含むラベルの内容は,全て薬剤師側の端末から入力され,後記する薬剤管理サーバ1に送られ,混注情報データベース3に記憶される。
次に実際の混注作業は,薬剤の化学反応が進むことにより薬効が失われたりすることを防止するために,投薬直前に行われる。混注作業に当たっては,患者名などの識別情報に基づいて前日にセットにされた調剤薬の組み合わせたものが払い出される。セットにされた調剤薬とラベルは混注に当たって適正であるかどうかが,監査(前監査)される(T12)。
例えば,図7の明細情報中の,「完了/本数」に記載の1/2の数字は,現在2本中1本が監査完了していること,即ち前監査の状況を表示している。
その後に混注作業が混注作業者によって実行される(T13)。この時,混注作業が適正に行われているかについて,薬剤の使用量のみでなく,混注動作についても監査が行われる。本発明はこの実際の混注動作についての監査システムに関するものであり,詳細は後述される。
混注作業の途中において,混注中の溶解溶液についても抜き取り監査が必要に応じて実施される(T14)。
例えば,混注に溶解が必要な場合,溶解液を抜き取った時点でシリンジ溶解画像取得ボタンB14(図8,図9参照)を混注作業者が押下すると,上記溶解液を抜き取った時点でのシリンジの静止画像が取得される。また図8の明細情報欄に表示された溶解画像の欄に,図8のように「取得」の文字が表示される。
混注作業が終了すると,出来上がった混注後の注射薬剤について,必要な監査が行われる(後監査)(T15)。
この最終監査である後監査においては,混注作業者から監査要求が出される。これは具体的には,混注作業者が図9の明細情報中の,監査開始ボタンB12を再び押すことで実行される。
また,上記監査要求が伝達されると,図10に示す遠隔監査モニタ側で,監査者が監査を行おうとする号機ボタン(図10の上段に表示)を押下する。この信号を受信すると,調整室制御部19は図9に示される混注作業者側表示手段23(図2参照)の画面中の明細情報におけるシリンジ監査の下に「監査」の文字を表示する。この表示は,更に図10に示す監査者側の遠隔監査モニタ内の承認ボタンB15が押されることにより,「OK」の表示に変化する。
このとき,図10の混注監査モニタ画面の明細情報中の溶解画像のセルも「取得」から「OK」に変化する。
こうして最終監査が終わった薬剤は,交付され(T16),投与される(T17)。
【0022】
続いて,本発明の実施形態に係る混注監査システムについて説明する。
詳細な説明に先立ってその概要を記載すると以下の通りである。
この混注監査システムは,基本的に注射用薬剤を混合する混注作業を混注作業者とは別の監査者によって監査するための混注監査システムであり,特に,上記混注作業の動作について混注作業者と監査者が終始一緒に居なくても混注動作を監査することの出来る点で新規なシステムである。 そのために本発明の実施形態においては,混注作業の場に,上記混注作業を撮影するための混注作業撮像装置(例えば後記するCCDカメラ)を設けて,混注動作を撮影する。
この混注作業撮像装置によって撮像された混注動作の映像は,上記混注作業の場から離れた監視室に送られる。監視室には,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業を表示するための監査者側混注作業モニタが設けられ,混注作業が監査者に表示される。
【0023】
また,上記監視室には,混注作業の場で作業する作業員に対する指示を入力するための監査者側入力装置が設けられ,他方,混注作業の場には,上記監査者側入力装置により入力された内容を混注作業者に表示するための混注作業者側表示手段が設けられ,監査者側入力装置から入力された監査の結果(混注作業が正しく行われているかどうかの判断の結果)に従って,混注作業が修正されたり,続行されたりする。
これによって,監査者は,混注作業の場に居なくても,混注動作が適切かどうかの監査も含めて,監査を行うことが出来るようになる。
【0024】
また,上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を記憶する薬剤管理サーバを設ける一方,混注作業の場には,上記薬剤管理サーバに接続されて上記混注情報を表示するための混注作業者側混注情報モニタを設けることで,混注作業者は,この混注作業者側混注情報モニタを見ながら混注作業を行うことが出来るので,注射箋などの紙が消毒剤などで濡れて読み辛くなるといった問題が解消される。
【0025】
上記混注作業者側混注情報モニタは,上記混注作業者側表示手段と兼用したものでもかまわない。これによりモニタを省略することが出来,経済的である。
上記した監査者側混注作業モニタが複数の上記混注作業撮像装置からの映像を表示することが出来るようにすることも可能である。一台の監査者側混注作業モニタで複数人の混注作業を監査することが出来るので,監査者の負担が著しく軽減される。
【0026】
この場合,監査者側混注作業モニタが複数の上記混注作業撮像装置からの映像を1つ1つ切り替えて表示可能とすることで,一度に複数の監査を行って監査ミスを生じる危険性を回避することが出来る。
【0027】
<システム全体構成>
混注監査システムの概要は以上のようなものである。
まず混注監査システムのハード構成について,図2以下の図面を参照して説明する。
このシステムは,図2に示すとおり,混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を記憶する混注情報データベース3に接続された薬剤管理サーバ1を中心に構成される。
上記薬剤管理サーバ1には,医師が操作する診療データベース5が接続されている。
前記上記薬剤管理サーバ1には,更に,監査室側制御部9が接続されている。監査室側制御部9には,後記する混注作業撮像装置21で撮像された映像を表示するための監査者側混注作業モニタ11と,混注作業の場で作業する作業員に対する指示を入力するための監査者側入力装置13が接続されている。
上記監査室側制御部9,監査者側混注作業モニタ11及び監査者側入力装置13は,後記する混注作業の場とは離れた場所,例えば監査室15内に設けられている。
【0028】
一方,上記監査室15とは別のクリーンルーム18内には,1ないし複数の安全キャビネットやクリーンベンチ17a,17b,17c…が設けられている。
更に上記安全キャビネットやクリーンベンチ17a,17b,17c…(以下調整室17という)には,それぞれ前記薬剤管理サーバ1に接続された調整室制御部19が設けられている。調整室制御部19には,それぞれ混注作業を撮影するためのCCDキャメラなどの混注作業撮像装置21と,監査者側入力装置13により入力された内容を混注作業者に表示するためのモニタなどの混注作業者側表示手段23とが接続されている。この混注作業者側表示手段23は,調整室制御部19を介して上記薬剤管理サーバ1に接続され,前記監査者側入力装置13から入力された監査者からの監査承認,監査NGなどの指示を表示することができる。また,混注作業者側表示手段23は,前記混注情報データベース3に接続された薬剤管理サーバ1と調整室制御部19を介して接続されており,各種の混注情報を表示することができる。即ち,この混注作業者側表示手段23は,上記混注情報を表示するための混注作業者側混注情報モニタと兼用される。これにより,モニタに関するコストを低減することが出来る。もちろん,それぞれのモニタを別個に設けても良い。以下の実施形態では,兼用した場合を説明する。
【0029】
前記薬剤管理サーバ1は,上記した複数の調整室制御部19全てと接続されている。
従って,前記監査者側混注作業モニタ11は,前記した監査室側制御部9,薬剤管理サーバ1,調整室制御部19を介して,各調整室制御部19に接続された複数の混注作業撮像装置21による撮像画像を逐一切り替えて表示することが出来る。切り替えの手法は後記される。
また,各調整室17に設けられた各混注作業者側表示手段23は,調整室制御部19及び薬剤管理サーバ1を介して前記監査者側入力装置13と接続されており,上記監査者側入力装置13から入力された監査者の判断などを表示することが出来る。
【0030】
<調整室の構成>
続いて,図11〜図16を参照して,上記調整室17の具体的構成例を説明する。
この例では調整室17が安全キャビネットである場合について説明するが,クリーンベンチその他であってもかまわない。
図11及び12に示すように,安全キャビネットとしての前記調整室17は,上下方向の中ほどに,前面をガラス扉31で仕切られた作業室33を備えている。ガラス扉31によって,作業室33と作業者が仕切られ,作業者が直接薬剤に接することが防止される。
【0031】
ガラス扉31の下端には開放部35が形成され,この開放部35から作業者は上記作業室33内に手を差し込んで,混注作業を行う。上記ガラス扉31には,前記混注作業者側表示手段23の一例である,瞬間調光ガラス31aが取り付けられている。瞬間調光ガラス31aは,透明液晶などにより構成され,透明なマトリックス状電極に通電すると,通電された部分の偏光状態が変化することで,ガラス上に文字その他の画像を表示することが出来る例えば,透明液晶型表示装置,反射型液晶表示素子などの周知のモニタ装置であり,何らかの補助光源を設けたものでもよい。
上記したように瞬間調光ガラス31aの詳細は周知であるので,ここでは説明を省略するが,それ自身透明であるので,作業者は,この瞬間調光ガラス31aを通してこの瞬間調光ガラス31aで描かれた文字などの画像を読み取りつつ,その奥の作業室33内の作業対象を観察しながら,混注作業を行うことが出来る。図13は,上記のような瞬間調光ガラス31aに画像Kが表示されている状態を示している。
【0032】
また,作業室33内には,図14に示すように,前記混注作業撮像装置21の一例であるCCDカメラ21aが設けられている。作業者は,図14に示すように上記CCDカメラ21aに作業対象物(この場合は,薬剤を吸い込んでいる状態のシリンジS)をかざして,CCDカメラ21aでの撮影を可能とする。
混注作業者側表示手段23は,上記のように瞬間調光ガラス31aのようなものでもよいが,図15に示したような作業室33の奥壁37に取り付けられた液晶ディスプレイ23bでもよく,或いは,作業者のメガネやヘッドセットに透明液晶型表示装置,反射型液晶表示素子などが仕組まれたマイクロディスプレイのような表示手段であっても良い。
このような電子機器としてのディスプレイは,環境を汚さない点で,極めて都合がよいが,特に環境に汚染を与えない薬剤を使用する場合には,上記ディスプレイに変えて,図16に示されるような紙の指示箋33cも適用可能である。
なお,図11中の39は,作業室33内の空気を清浄化して排気するためのHEPAフィルタである。
【0033】
<混注手順>
次に図3以下の図面を参照して,前記T13の混注作業の詳細について説明する。以下S1,S2,…は処理手順を示す。
図3は,混注前後の手順を含む作業全体の流れ図であり,混注作業自身については,図4に示される。作業に先立って混注作業者は,患者ID及び混注日データを前記薬剤管理サーバに接続された端末に入力して,薬剤師から混注対象の薬剤及びその溶解液を取得し(S1),それを持って,クリーンルーム18に入る。その後作業者は,指定された所定の安全キャビネット或いはクリーンベンチ(調整室17)の前に座り,所持した薬剤を前記した作業室33内に置く。
【0034】
作業が行われていない状態では,前記監査者側混注作業モニタ11及び混注作業者側表示手段23には,図5に示す混注監査システムの初期メニュー画面が表示されている。
監査者側混注作業モニタ11及び混注作業者側表示手段23における表示画面は基本的に同じものが表示されてもよいが,それぞれ異なる画面でも良い。この実施形態ではほとんど同じ画面が表示されるが,一部(例えば図10)だけは異なる場合を示す。
混注作業者が,図5の混注監査モニタボタンB1を押すと,図6の混注監査モニタ画面が混注作業者側表示手段23に表示される。ここではまだ何も設定されていないので,全ての欄は空白である。
作業者はここでこれから混注を行うべく,混注の内容を決める情報を入力しenterキーを押す。混注の内容は例えば患者IDと実施日を入力することで,決定される。
この時,すでに図1の処方オーダ手順で述べたように,患者ID,患者名,混注実施日,投薬実施日などの混注情報は,ラベルに記載されると共に,混注管理サーバ1に接続された混注情報データベース3に記憶されているので,上記のように作業者が混注作業者側表示手段23に設けられた図外の入力部から,上記患者IDや混注実施日などのデータを入力することで,今回の混注に関する全ての混注情報が検索され,図7のように患者情報が混注情報モニタ画面の患者情報欄に表示される(S2)。
【0035】
また図6の画面左側の,処方情報欄内の全てボタン(B11)を押すと,前記混注情報データベース3に記憶されているこの患者のための処方された混注予定の全ての薬剤情報が,処方情報欄G1に図7のように表示される。
更に,上記のように処方情報欄G1に表示された薬剤の中で,混注の用意が完了している薬剤(例えばこの場合には,Rp1−1のランダ注50mg 溶解液100mg)が右側の明細表示欄G2に表示される。これらは全て前記混注情報データベース3を検索することで得られた情報である。
こうして,これから行おうとする混注の内容が,混注作業者側表示手段23に表示されると,混注作業者は,作業室33に置いた混注用薬剤及びそれに付されたラベルの内容と,混注作業者側表示手段23の表示内容とを照合することにより,混注作業に先だった前監査を実行する(S3)。この作業は,手作業である。
【0036】
図7の混注明細情報欄には,1つのRp,即ち1つの注射剤の処方しか表示されていないが,複数の注射剤の混注が必要であれば,複数の処方が表示される。
続いて混注業務が開始される(S4)。
混注作業及びその監査業務は,図4の手順に従って行われる。
この手順は,混注作業者側の調整室制御部19及び監査室側制御部9の処理手順を中心としたものである。
処理は,S11の監査者の確認手順から始まる。ここでは,適宜の方法で呼び出された監査室15内の監査者を確認する手順である。通常は,監査者は監査室内の監査室側制御部9に接続された監査者側入力装置13から前記図5に示された初期メニューの遠隔監査モニタボタンB2を押し,そこで自己のIDやパスワードなどを入力することで,適正な監査者であることが照合されているので,S11の確認手順では,上記のように既に入力されているIDやパスワードと,前記ラベルに記載されたバーコードなどの読み込みによって抽出されたあらかじめ指定された監査者のIDやパスワードを照合することで,監査者が予定された者かどうかが判断される。もちろん他の方法であっても良い。
【0037】
適正な監査者であることが確認されると,図7に示された混注監査モニタ画面中の監査開始ボタンB12が押されるのを待つ(S12)。監査開始ボタンB12が押されることがいわゆる監査要求依頼となる。
上記動画モニタボタンB13が押される(S12でオン)と,前記作業室33内に設けられた混注作業撮像装置の一例であるCCDカメラ21aの駆動が開始される。また同時に,上記CCDカメラ21aによって撮像されたシリンジや薬剤ビン,薬剤チューブなどの画像が,図8の左端部に表示された動画モニタ画面G3に表示される。
【0038】
更に,上記調整室制御部19(監査室側制御部9)が薬剤管理サーバ1を介して混注情報データベース3を,前記患者IDなどによって検索して,図9に示すような混注の明細が明細情報欄G4に表示される(S14)。この混注明細には,例えば,混注対象である薬剤や溶解液の内容や,混注手順そのほかの注意事項などが含まれ,混注作業者はこの明細を見ながら混注作業を行う。この場合,混注処方箋や,注意書きなどの紙情報を見る必要がないので,汚染された紙の処理などの問題や,紙が汚れ手読みにくくなるといった問題が生じない。またその場で種々の気がついた事項などを入力することもできるので,事後の処置に間違いがなくなる効果も期待できる。
【0039】
続いて,調整室制御部19は,混注開始指示の入力を待つ(S15)。
例えば,混注作業者側から上記したように監査要求(前記監査開始ボタンB12の押下)が出されると,監査室側制御部9に接続された監査室側混注作業モニタ11にビープ音が発生し,監査者がいずれかの号機番号(図10の上段に表示され,調整室17ごとに設定されている)ボタンを押下しないと上記ビープ音が解除されないようにしてもよい。即ち,上記号機番号ボタンを押すことが,混注開始指示となる。
この混注作業開始指示が発せられると,混注作業者が混注作業を開始する(S16)。
混注は,前記した画面に表示された混注処理手順や注意書きに沿って行われる。特に,この場合は,シリンジに入れた注射薬を溶解液で混合させる処理であるので,シリンジ内での薬剤の溶解状態や,作業者によるシリンジを振る動作が監査の対象である。このとき監査者はシリンジ溶解画像を取得するべく,シリンジ溶解画像取得ボタンB14を押す。このボタンの押下信号を受けると(S17でオン),調整室制御部19は,CCDカメラ21aによって取得されたシリンジSの画像を監査室側制御部9に送る。監査者側制御部9は,この画像を監査者側混注作業モニタ11に表示する。具体的には,この画像は,図10の動画モニタ欄G6に表示される。
【0040】
このような混注作業中,監査者は,必要に応じてマイクやビープ音などによって,作業者に混注動作についての指示を伝えることができる。例えば,シリンジをもっと強く振ってください,とかシリンジをもっとカメラに近づけてください,といった監査に必要な指示である。
もちろん明細情報欄G4に表示された混注手順や注意書きに従っていない動作があった場合なども,手順をやり直す指示などが伝えられる。
こうして混注手順が最終段階に達したと判断されると,監査者或いは作業者は,図9の監査開始ボタンB12を押す(S19でON)。
上記のようにカメラを用いた監査の利点を生かすために,監査者は混注作業者に,どの薬剤を混合,若しくは溶解させたかが視覚的に分かるように,混注作業者に使用した空瓶を撮像範囲内に置くように指示することもできる。これにより,使用済みの空瓶B0などが,図10に示すように動画モニタ欄G5に表示され,あたかも監査者が混注作業者のそばで監査しているような正確な監査が実行可能となる。
【0041】
前記のような混注作業の動作に関する監査のほかにもちろん溶解液の量的或いは質的監査も必要である。そのため,上記監査開始ボタンB12がおされる(S19でオン)と,これに応じてシリンジ内の溶解液の状態を示す溶解量監査取得画像が,図10の右下の左側の溶解量監査取得画面G6に表示される。
システムの設計段階で,或いはこの混注作業に先立って,種々の溶解度ごとの溶解液の映像が,前記薬剤管理サーバ1に接続された混注情報データベース3の溶解量マスタに記憶されている。 上記監査開始ボタンB12の押下信号を受けると,監査室側制御部9は,今回の溶解液の溶解度に対応した溶解液の画像を,上記溶解量マスタから選択して前記図10の右下右の溶解量マスタ情報欄G7に表示する(S20)。
監査者は上記溶解量監査取得画像と溶解量マスタ情報の両画像を比較して溶解液の量に関する監査を実行することができる。
【0042】
このようにして監査が終了したと判断すると,監査者は図10の承認ボタンB15を押すか,監査不承認を表すNGボタンB16を押す。これらのボタンの押下信号を受けると,監査室側制御部9は,承認ボタンB15が押されたか(S21でON),NGボタンB16が押されたか(S22でオン)を判断する。いずれのボタンも押されないうちは,いずれかのボタンが押されるまで待つ。
なお,上記承認ボタンB15が押されると,その時の監査者側混注作業モニタ11に表示されたシリンジの画像が静止画像として保存される。そして図5の混注歴問い合わせのメニューが実行された時,この保存画像を参照することができる。これによって任意の薬剤における混注歴を確認することができる。もちろん,混注の動作を示す動画を保存して,混注動作についても混注歴として参照可能とすることも可能である。
前記S21において承認ボタンB15が押されたと判断されると,監査室側制御部9及び調整室制御部19は,同じ患者についての別の処方が必要かどうかを判断し(S23),別の処方があると判断する(S23でYES)と,S14に戻り,次の処方についての明細を表示してその後の混注手順を繰り返す。
また次処理がないと判断された場合(S23でNO)には,この患者についての処方は完了したので,作業者としては図3の最終監査に進む(S15(図3参照))。
【0043】
また,監査室側制御部9及び調整室制御部19は,混注作業者による別の患者の混注監査が要求されていないか,即ち別の作業者によるS1に示された別の処方データの入力が行われているかどうかを薬剤管理サーバ1に蓄積されているデータから判断する(S26)。ここで別作業が入力されていないと判断されると,S1(図3参照)に戻って,次の入力を待つ。
また別作業があると判断した場合には,監査室側制御部9は,この作業室33の制御部19との接続を遮断して,別作業において指定された別の作業室の制御部19に接続する(S27)。これによって,処理はS11に戻る。
このように監査室側制御部9は一度に一つの作業室側制御部19としか接続しないようにプログラムされているので,監査者が2つの監査を同時に行うことによるミスの発生を未然に防止することができる。
以上述べたS11〜S26の処理によって,混注作業が実行されていく。
そして前記したように1つの混注作業が終了するとその都度図3のS15で示す最終監査が行われる。最終監査は出来上がった溶解液の状態のチェックであり,形状,色などについてマニュアルに従った監査を作業者が行う。
最終監査が終了すると出来上がった薬剤は薬局に交付される(S16)。
【符号の説明】
【0044】
1…薬剤管理サーバ
3…混注情報データベース
9…監査者側制御部
11…監査者側混注作業モニタ
13…監査者側入力装置
15…監査室
17…調整室
18…クリーンルーム
19…調整室制御部
21…混注作業撮像装置
23…混注作業者側表示手段
B1,B2…ボタン
S1,S2…処理手順(ステップ)番号
【技術分野】
【0001】
本発明は,薬剤を混合して注射薬を生成するための混注作業を監視する混注監査システムに関し,特に,従来行われていなかった,混注作業の動作を,混注作業者から離れた場所で監査することのできる監査システムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような混注作業は,患者の容態に直接関係するものであるので,きわめて綿密な手順で実行されなければならない。特に,抗癌剤のような劇薬においては,その原料である混合前の薬剤や或いは混注で出来上がった薬剤自身,健常者にとっては間違って吸収すると健康を害する恐れのあるものも少なくない。
そのため,例えば日本病院薬剤師会から「入院患者のための注射剤調剤指針(平成12年12月)」などが公表され,薬剤の有効性,安全性を確保するために,患者情報に基づいて,投与量,投与手技,投与速度,投与機関などの処方内容の適正を確認し,疑義のあるときは処方医に問い合わせ,納得したうえで調剤処理を行うこと,とされている。
【0003】
そして上記のような注射薬調剤の手順や手技は次のようである。
即ち,コンピュータによりトータルに管理されるシステムによって,医師が入力した注射薬オーダを所定時間以内或いは所定時に注射処方箋として出力し,
1.処方監査・計量(混合)指示
2.計量準備
3.無菌調整(輸液との混合)
4.混合後監査,ラベル貼り付け
5.計数(個人別セット)・ラベル添付
6.最終監査
の順に調剤が行われるのが,一般的である。
【0004】
このように混注作業には,その安全性を考慮して,多くの段階ごとに監査を行わねばならないが,とりわけ上記3.の無菌調整はその手技自体(混合薬剤のチェック,混合の仕方,加振の程度,加振の時間など),さまざまな段階でのチェック(監査)が必要である。
特に混注に用いられる薬剤の量を間違うと,致命的な結果となることは明白である。そのため,多数の薬剤のマスターデータを記憶したマスターデータベースと,患者に1回に施用される複数種の薬剤を調剤して支給容器に収容する手順を示す調剤パターンであって,固形薬剤の有無,液状薬剤の有無,溶解剤の有無,希釈液の有無,支給容器の種類,のうちの一部又は全部をパラメータとする調剤パターンを,複数とおり予め設定して記憶させた調剤パターン記憶手段と,を備え,前記複数ステップからなる調剤手順は,支給容器の初期重量を測定するステップと,薬剤 を混注 した調剤後の支給容器の最終重量を測定するステップを含むようにすることで,初期重量と最終重量とを比較して,混注原料となる薬剤の投与量が適切であったかどうかを監査するようにした処方薬調剤支援システム(特許文献1)が従来から知られている。
【0005】
この従来技術では,上記のように使用される薬剤の量的管理が正確に行われるという点で,特に薬剤の量的管理が厳しく行われる抗癌剤などの処方薬調剤支援システムとして優れたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−208842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら,薬剤の混注作業においては,投与量の適切さはもとより重要であるが,上記したように混注されるべき薬剤の混合の仕方,加振の程度,加振の時間など,混注作業者の混注動作という数値化しにくい評価対象が含まれており,上記従来公知の技術は,このような数値的には評価困難な混注動作についての監査には,まったく役立たないものであった。
そのため従来の監査の実態においては,上記のような数値に表しにくい混注動作そのものの監査のために,混注作業が始まってから終わるまで,混注作業者のそばに監査者が寄り添って監査を行わねばならないことになっている。
【0008】
しかしながら監査者は,ある混注作業者に専属するということはなく,複数の作業者の混注作業を監査しなければならない。そのため,上記のように監査者が作業者に寄り添って監査を行う方法では,監査者が次々と別の作業者の場所まで行って監査して回らねばならなかった。これは監査者にとって,実際上大きい負担となっている。
すなわち,鑑査者が例えば1つの監査室にいながらにして,次々と別の混注作業を監査できれば,監査者の負担は一挙に解消される。
【0009】
また,前記したように混注動作の監査という作業は,極めて緻密な観察力を必要とするものであるので,同時に2つの作業を監査するということは監査ミスを生じる可能性がある。従って,1人の監査者が複数の混注動作をモニタを介して監査するとしても,監査の実態としてはそれを同時に行うというのではなく,モニタ上の表示を切り替えて,常に1つの混注作業を監査するようなシステムとすることが望ましい。
さらに,混注作業を監査する場合,混注に用いる薬剤の内容に関する情報(混注情報)について,対象患者についての混注情報をモニタで見ながら監査を行うべきことは当然であるが,混注作業者の作業が正しく行われているかどうかという監査の最も重要な対象については,混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報との整合性を正確に且つ簡単に確認できるようにすることがきわめて重要である。
【0010】
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,上記のような数値的には評価しにくい混注作業者の動作についての評価を,混注作業の場から離れた場所で行うことが出来るようにして,監査者の負担を軽減することの出来るシステムを提供することである。
また同時に,混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報との整合性を正確に且つ簡単に確認できるような混注監査システムを提供することである。
また,別の目的として,視覚的監査を複数の混注作業に対して一箇所で集中的に実行できるようにして,監査の効率を一挙に向上させることができるシステムを提供すること,更には,上記のように混注作業の場から離れた場所に居ながらにして次々と別の混注作業を監査しうるようにすることの出来るシステムを提供することである。
また,上記のようなシステムにおいては,監査者は混注作業の間違いなどを指摘するための混注作業者側モニタを設けることが必要となるが,この混注作業者側モニタによって上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を表示できるようにすれば,2つの別機能のモニタを兼用することが出来,経済的である。本発明はこのような経済的なシステムを提供することをも,別の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は,注射用薬剤を混合する混注作業を混注作業者とは別の監査者によって監査するための混注監査システムであって,混注作業者のいる混注作業の場と,混注作業を監査する監査者のいる監視室等の混注作業の場から離れた場所を接続するシステムであり,上記混注作業者のいる場所には,後記する監査者側入力装置により入力された内容を混注作業者に表示するための混注作業者側表示手段が設けられる一方,上記混注作業の場から離れた監視室等には,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業を表示するための監査者側混注作業モニタと,混注作業の場で作業する作業員に対する指示を入力するための監査者側入力装置とが設けられる。
これにより,監査者は,上記上記混注作業を撮影するための混注作業撮像装置により撮像された混注作業者の混注動作を,監査者側混注作業モニタによって混注作業の場から離れた監査室等に居ながらにして監視することができる。この点,従来の監査システムでは,混注動作という視覚的な動作の監視については,監査者が混注作業者の近くにいてその動作を逐一観察しなければならなかったので,常に監査者が混注作業者と一緒に居て監査しなければならなかったので,監査者が四方八方に歩き回らねばならなかったが,本発明では,上記のように監査者が監査室等に居ながらにして混注作業者の混注動作を監査できるようになり監査者が大きい負担から開放されることになった。
さらに本発明は,上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を記憶する薬剤管理サーバと,を備えてなる混注監査システムにおいて,上記監査者側混注作業モニタは,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業と,上記薬剤管理サーバに記憶された上記混注情報の両方を同時に表示することができるモニタであることを特徴とする混注監査システムである。
【0012】
上記したように従来の混注監査システムはきわめて効率の悪い作業であったが,上記したように本発明においては,監査者は,複数の混注現場に置かれた複数の混注作業撮像装置から送られてくる混注動作の画像を,別の監査室等において1人で集中的に監視することができるので,1名の監査者が複数の混注作業者の動作を監査することができ,監査の能率を一挙に高めることに成功したものである。
また,混注作業を監査する場合,混注に用いる薬剤の内容に関する情報(混注情報)について,対象患者についての混注情報をモニタで見ながら監査を行うべきことは当然であるが,混注作業者の作業が正しく行われているかどうかという監査の最も重要な対象については,混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報との整合性を正確に且つ簡単に確認できるようにすることがきわめて重要である。この点,本発明では,前記したように,上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を記憶する薬剤管理サーバと,を備えてなる混注監査システムにおいて,上記監査者側混注作業モニタは,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業と,上記薬剤管理サーバに記憶された上記混注情報の両方を同時に表示することができるモニタであることを特徴とする混注監査システムであるので,混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報とを1つのモニタで同時に見ながら監査を行うことが出来るので,混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報の整合性を正確に且つ簡単に確認できる混注監査システムを完成することが出来た。
前記したように混注動作の監査という作業は,極めて緻密な観察力を必要とするものであるので,同時に2つの作業を監査するということは監査ミスを生じる可能性がある。従って,本発明の別の実施形態としては,1人の監査者が複数の混注動作をモニタを介して監査するとしても,監査の実態としてはそれを同時に行うというのではなく,モニタ上の表示を切り替えて,常に1つの混注作業を監査するようなシステムが提供される。
監査の実態においては,同一の時間には1人の監査者が1つの混注動作を監視することになるが,1つの監査が終われば,別の混注作業者の場所に移動することなく,次の混注作業者の要請に応じて監査室等にいながらにして別の混注作業の監視を続行できる。そういう意味で,本発明では,1対多の関係が成立するのである。
【0013】
また,実際の混注監査は,混注作業者と監査者との意思の疎通を必要とする。例えば,薬剤の混合動作が鈍いと判断すれば,監査者はもっときつく振るように指示をしなければならないし,監査規定に適合する動作であると判断すれば,監査合格により混注動作を終了してよいといった指示を監査者から混注作業者に送らねば監査自体が成立しない。
そのため,この発明では,上記のように,混注作業の場所に,監査者側入力装置により入力された内容を混注作業者に表示するための混注作業者側表示手段を設ける一方,上記混注作業の場から離れた監査室等に,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業を表示するための監査者側混注作業モニタと,混注作業の場で作業する作業員に対する指示を入力するための監査者側入力装置を設けて,混注作業者と監査者との意思の疎通を可能としている。
【0014】
また,本発明のほかの実施形態においては,上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を記憶する薬剤管理サーバと,混注作業の場に設けられ,上記薬剤管理サーバに接続されて上記混注情報を表示するための混注作業者側混注情報モニタを備えてなるように構成することが出来る。
これにより従来,混注作業の場に混注情報を記載した注射箋などの紙を持ち込まねばならなかったために,注射箋などの紙がアルコールなどの消毒剤の噴霧により印刷が消えたり,濡れてしわくちゃになって,字が読み辛くなるなどの問題があったが,上記混注作業者側混注情報モニタによりこのような問題が一挙に解消されることになる。
【0015】
さらに,本発明の別の態様として,上記混注作業者側混注情報モニタが,上記混注作業者側表示手段を兼ねている混注監査システムが提供される。もちろん,このようなモニタであれば,終了した手順を順次消して行くなどの処理も非常に簡単に実行できるので,その面でも混注作業者の負担が軽減されると共に,作業の適切化が図られる。
上記のように本発明では基本的に,監査者が混注作業の間違いなどを指摘するための混注作業者側表示手段を設けることが必要となるが,この混注作業者側表示手段によって上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を表示できるようにすれば,すなわち,混注作業者側表示手段と混注作業者側混注情報モニタを兼用すれば,上記2つの別機能のモニタ(表示手段)を兼用することが出来,経済的なシステムを達成できる。
更に別の態様としては,監査者側混注作業モニタが,複数の上記混注作業撮像装置からの映像を切り替え表示可能であるように構成したものが提供される。このように複数の上記混注作業撮像装置からの映像を切り替え表示することで,一度に複数の監査が行われることによる不注意ミスの発生を防止することができる。
或いは,監査者側混注作業モニタが,混注作業者側からの要求に応じて,上記混注作業撮像装置からの映像を切り替え表示可能であるように構成可能である。このような構成によって,混注作業者が,次々に別の画面を監査者に見せたいときに,能率よく画面を切り替えて監査を受けることができるので,広い作業について監査が円滑に進むと共に監査の効率が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,数値的に評価しにくい混注作業者の動作という本来混注作業者のそばについて監査しなければならない評価要因を,混注作業者と離れた監査室等に居ながらにして視覚的に監査することができるので,監査者の負担が一挙に軽減されると共に,そのような視覚的監査を複数の混注作業に対して一箇所で集中的に実行できるので,監査の効率を著しく向上させることができ,さらに混注作業の映像などの実体的対象と,その混注作業の混注情報の整合性を正確に且つ簡単に確認できる混注監査システムを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のシステムを適用することの出来る注射薬処方の要求から注射薬投与までの流れの概要を示す流れ図。
【図2】本発明に係るシステムをサポートするためのハードウエアの概略構成図。
【図3】混注作業の概要を示す流れ図。
【図4】混注作業を支援する薬剤管理サーバと混注作業者側表示手段の制御手段との情報処理の手順を示すフロー図。
【図5】混注作業者側表示手段或いは監査者側混注作業モニタにおける初期メニューを示す図。
【図6】混注作業者側表示手段或いは監査者側混注作業モニタにおいて,混注監査モニタメニュー或いは遠隔監査モニタメニューを選択した場合の初期画面の一例を示す図。
【図7】混注作業者側表示手段或いは監査者側混注作業モニタにおいて患者情報が表示された画面を示す図。
【図8】監査対象のシリンジが表示されている状態の画面を示す図。
【図9】図8の状態で,混注の詳細情報を表示している画面を示す図。
【図10】遠隔監査モニタにおける表示画面を示す図。
【図11】混注作業に用いる安全キャビネットの一例を示す正面図。
【図12】図11に示した安全キャビネットの斜視図。
【図13】同安全キャビネットの扉部詳細を示す斜視図。
【図14】同安全キャビネット内での作業の状況を示す斜視図。
【図15】別の安全キャビネット内での作業の状況を示す斜視図。
【図16】更に別の安全キャビネット内での作業の状況を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明のシステムを適用することの出来る注射薬処方の要求から注射薬投与までの流れの概要を示す流れ図,図2は,本発明に係るシステムをサポートするためのハードウエアの概略構成図,図3は,混注作業の概要を示す流れ図,図4は,混注作業を支援する薬剤管理サーバと混注作業者側表示手段の制御手段との情報処理の手順を示すフロー図,図5は,混注作業者側表示手段或いは監査者側混注作業モニタにおける初期メニューを示す図,図6は,混注作業者側表示手段或いは監査者側混注作業モニタにおいて,混注監査モニタメニュー或いは遠隔監査モニタメニューを選択した場合の初期画面の一例を示す図,図7は,混注作業者側表示手段或いは監査者側混注作業モニタにおいて患者情報が表示された画面を示す図,図8は,監査対象のシリンジが表示されている状態の画面を示す図,図9は,図8の状態で,混注の詳細情報を表示している画面を示す図,図10は,遠隔監査モニタにおける表示画面を示す図,図11は,混注作業に用いる安全キャビネットの一例を示す正面図,図12は,図11に示した安全キャビネットの斜視図,図13は,同安全キャビネットの扉部詳細を示す斜視図,図14は,同安全キャビネット内での作業の状況を示す斜視図,図15は,別の安全キャビネット内での作業の状況を示す斜視図,図16は,更に別の安全キャビネット内での作業の状況を示す斜視図である。
【0019】
まず,図1の流れ図を用いて,本発明のシステムを適用する背景技術である処方のオーダから薬剤の投与までの処理の流れの概要を説明する。
処理は薬剤師側の処理から始まる。手順の番号をT1,T2,…で表す。
医師側で作成された注射剤の処方・調整箋を受け取る(オーダを受け取る(T1))と,薬剤師は受け取った注射剤の処方に間違いがないかの監査を行う(T2)。
【0020】
続いて,上記処方に従った上記注射剤の処方箋が作成される(T3)。
処方された注射剤が混注の対象外(T4)であれば,混注処理なくして直接調剤し,監査(T5)を経て交付(T6)される。
処方箋に記載された注射剤が混注対象薬剤であれば(T7),混注のための薬剤を取り揃え,薬品集計表(T8)と共に,取り揃えた薬剤の名称や本数の監査を行う(T9)。また,後記する混注作業においては,正しい薬剤であるかのチェックが必要なので,そのための患者名や薬剤の明細が記載されたラベルが作成される(T10)。
これらの監査済みの薬品とラベルがセットにされて保管される(T11)。
【0021】
ここまでが,混注作業の準備であり,通常は,混注作業の前日に完了される。
ここでの監査の状況や,作成された薬品の内容,患者のID,患者名,混注の実施日などの混注内容に関するデータを含むラベルの内容は,全て薬剤師側の端末から入力され,後記する薬剤管理サーバ1に送られ,混注情報データベース3に記憶される。
次に実際の混注作業は,薬剤の化学反応が進むことにより薬効が失われたりすることを防止するために,投薬直前に行われる。混注作業に当たっては,患者名などの識別情報に基づいて前日にセットにされた調剤薬の組み合わせたものが払い出される。セットにされた調剤薬とラベルは混注に当たって適正であるかどうかが,監査(前監査)される(T12)。
例えば,図7の明細情報中の,「完了/本数」に記載の1/2の数字は,現在2本中1本が監査完了していること,即ち前監査の状況を表示している。
その後に混注作業が混注作業者によって実行される(T13)。この時,混注作業が適正に行われているかについて,薬剤の使用量のみでなく,混注動作についても監査が行われる。本発明はこの実際の混注動作についての監査システムに関するものであり,詳細は後述される。
混注作業の途中において,混注中の溶解溶液についても抜き取り監査が必要に応じて実施される(T14)。
例えば,混注に溶解が必要な場合,溶解液を抜き取った時点でシリンジ溶解画像取得ボタンB14(図8,図9参照)を混注作業者が押下すると,上記溶解液を抜き取った時点でのシリンジの静止画像が取得される。また図8の明細情報欄に表示された溶解画像の欄に,図8のように「取得」の文字が表示される。
混注作業が終了すると,出来上がった混注後の注射薬剤について,必要な監査が行われる(後監査)(T15)。
この最終監査である後監査においては,混注作業者から監査要求が出される。これは具体的には,混注作業者が図9の明細情報中の,監査開始ボタンB12を再び押すことで実行される。
また,上記監査要求が伝達されると,図10に示す遠隔監査モニタ側で,監査者が監査を行おうとする号機ボタン(図10の上段に表示)を押下する。この信号を受信すると,調整室制御部19は図9に示される混注作業者側表示手段23(図2参照)の画面中の明細情報におけるシリンジ監査の下に「監査」の文字を表示する。この表示は,更に図10に示す監査者側の遠隔監査モニタ内の承認ボタンB15が押されることにより,「OK」の表示に変化する。
このとき,図10の混注監査モニタ画面の明細情報中の溶解画像のセルも「取得」から「OK」に変化する。
こうして最終監査が終わった薬剤は,交付され(T16),投与される(T17)。
【0022】
続いて,本発明の実施形態に係る混注監査システムについて説明する。
詳細な説明に先立ってその概要を記載すると以下の通りである。
この混注監査システムは,基本的に注射用薬剤を混合する混注作業を混注作業者とは別の監査者によって監査するための混注監査システムであり,特に,上記混注作業の動作について混注作業者と監査者が終始一緒に居なくても混注動作を監査することの出来る点で新規なシステムである。 そのために本発明の実施形態においては,混注作業の場に,上記混注作業を撮影するための混注作業撮像装置(例えば後記するCCDカメラ)を設けて,混注動作を撮影する。
この混注作業撮像装置によって撮像された混注動作の映像は,上記混注作業の場から離れた監視室に送られる。監視室には,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業を表示するための監査者側混注作業モニタが設けられ,混注作業が監査者に表示される。
【0023】
また,上記監視室には,混注作業の場で作業する作業員に対する指示を入力するための監査者側入力装置が設けられ,他方,混注作業の場には,上記監査者側入力装置により入力された内容を混注作業者に表示するための混注作業者側表示手段が設けられ,監査者側入力装置から入力された監査の結果(混注作業が正しく行われているかどうかの判断の結果)に従って,混注作業が修正されたり,続行されたりする。
これによって,監査者は,混注作業の場に居なくても,混注動作が適切かどうかの監査も含めて,監査を行うことが出来るようになる。
【0024】
また,上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を記憶する薬剤管理サーバを設ける一方,混注作業の場には,上記薬剤管理サーバに接続されて上記混注情報を表示するための混注作業者側混注情報モニタを設けることで,混注作業者は,この混注作業者側混注情報モニタを見ながら混注作業を行うことが出来るので,注射箋などの紙が消毒剤などで濡れて読み辛くなるといった問題が解消される。
【0025】
上記混注作業者側混注情報モニタは,上記混注作業者側表示手段と兼用したものでもかまわない。これによりモニタを省略することが出来,経済的である。
上記した監査者側混注作業モニタが複数の上記混注作業撮像装置からの映像を表示することが出来るようにすることも可能である。一台の監査者側混注作業モニタで複数人の混注作業を監査することが出来るので,監査者の負担が著しく軽減される。
【0026】
この場合,監査者側混注作業モニタが複数の上記混注作業撮像装置からの映像を1つ1つ切り替えて表示可能とすることで,一度に複数の監査を行って監査ミスを生じる危険性を回避することが出来る。
【0027】
<システム全体構成>
混注監査システムの概要は以上のようなものである。
まず混注監査システムのハード構成について,図2以下の図面を参照して説明する。
このシステムは,図2に示すとおり,混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を記憶する混注情報データベース3に接続された薬剤管理サーバ1を中心に構成される。
上記薬剤管理サーバ1には,医師が操作する診療データベース5が接続されている。
前記上記薬剤管理サーバ1には,更に,監査室側制御部9が接続されている。監査室側制御部9には,後記する混注作業撮像装置21で撮像された映像を表示するための監査者側混注作業モニタ11と,混注作業の場で作業する作業員に対する指示を入力するための監査者側入力装置13が接続されている。
上記監査室側制御部9,監査者側混注作業モニタ11及び監査者側入力装置13は,後記する混注作業の場とは離れた場所,例えば監査室15内に設けられている。
【0028】
一方,上記監査室15とは別のクリーンルーム18内には,1ないし複数の安全キャビネットやクリーンベンチ17a,17b,17c…が設けられている。
更に上記安全キャビネットやクリーンベンチ17a,17b,17c…(以下調整室17という)には,それぞれ前記薬剤管理サーバ1に接続された調整室制御部19が設けられている。調整室制御部19には,それぞれ混注作業を撮影するためのCCDキャメラなどの混注作業撮像装置21と,監査者側入力装置13により入力された内容を混注作業者に表示するためのモニタなどの混注作業者側表示手段23とが接続されている。この混注作業者側表示手段23は,調整室制御部19を介して上記薬剤管理サーバ1に接続され,前記監査者側入力装置13から入力された監査者からの監査承認,監査NGなどの指示を表示することができる。また,混注作業者側表示手段23は,前記混注情報データベース3に接続された薬剤管理サーバ1と調整室制御部19を介して接続されており,各種の混注情報を表示することができる。即ち,この混注作業者側表示手段23は,上記混注情報を表示するための混注作業者側混注情報モニタと兼用される。これにより,モニタに関するコストを低減することが出来る。もちろん,それぞれのモニタを別個に設けても良い。以下の実施形態では,兼用した場合を説明する。
【0029】
前記薬剤管理サーバ1は,上記した複数の調整室制御部19全てと接続されている。
従って,前記監査者側混注作業モニタ11は,前記した監査室側制御部9,薬剤管理サーバ1,調整室制御部19を介して,各調整室制御部19に接続された複数の混注作業撮像装置21による撮像画像を逐一切り替えて表示することが出来る。切り替えの手法は後記される。
また,各調整室17に設けられた各混注作業者側表示手段23は,調整室制御部19及び薬剤管理サーバ1を介して前記監査者側入力装置13と接続されており,上記監査者側入力装置13から入力された監査者の判断などを表示することが出来る。
【0030】
<調整室の構成>
続いて,図11〜図16を参照して,上記調整室17の具体的構成例を説明する。
この例では調整室17が安全キャビネットである場合について説明するが,クリーンベンチその他であってもかまわない。
図11及び12に示すように,安全キャビネットとしての前記調整室17は,上下方向の中ほどに,前面をガラス扉31で仕切られた作業室33を備えている。ガラス扉31によって,作業室33と作業者が仕切られ,作業者が直接薬剤に接することが防止される。
【0031】
ガラス扉31の下端には開放部35が形成され,この開放部35から作業者は上記作業室33内に手を差し込んで,混注作業を行う。上記ガラス扉31には,前記混注作業者側表示手段23の一例である,瞬間調光ガラス31aが取り付けられている。瞬間調光ガラス31aは,透明液晶などにより構成され,透明なマトリックス状電極に通電すると,通電された部分の偏光状態が変化することで,ガラス上に文字その他の画像を表示することが出来る例えば,透明液晶型表示装置,反射型液晶表示素子などの周知のモニタ装置であり,何らかの補助光源を設けたものでもよい。
上記したように瞬間調光ガラス31aの詳細は周知であるので,ここでは説明を省略するが,それ自身透明であるので,作業者は,この瞬間調光ガラス31aを通してこの瞬間調光ガラス31aで描かれた文字などの画像を読み取りつつ,その奥の作業室33内の作業対象を観察しながら,混注作業を行うことが出来る。図13は,上記のような瞬間調光ガラス31aに画像Kが表示されている状態を示している。
【0032】
また,作業室33内には,図14に示すように,前記混注作業撮像装置21の一例であるCCDカメラ21aが設けられている。作業者は,図14に示すように上記CCDカメラ21aに作業対象物(この場合は,薬剤を吸い込んでいる状態のシリンジS)をかざして,CCDカメラ21aでの撮影を可能とする。
混注作業者側表示手段23は,上記のように瞬間調光ガラス31aのようなものでもよいが,図15に示したような作業室33の奥壁37に取り付けられた液晶ディスプレイ23bでもよく,或いは,作業者のメガネやヘッドセットに透明液晶型表示装置,反射型液晶表示素子などが仕組まれたマイクロディスプレイのような表示手段であっても良い。
このような電子機器としてのディスプレイは,環境を汚さない点で,極めて都合がよいが,特に環境に汚染を与えない薬剤を使用する場合には,上記ディスプレイに変えて,図16に示されるような紙の指示箋33cも適用可能である。
なお,図11中の39は,作業室33内の空気を清浄化して排気するためのHEPAフィルタである。
【0033】
<混注手順>
次に図3以下の図面を参照して,前記T13の混注作業の詳細について説明する。以下S1,S2,…は処理手順を示す。
図3は,混注前後の手順を含む作業全体の流れ図であり,混注作業自身については,図4に示される。作業に先立って混注作業者は,患者ID及び混注日データを前記薬剤管理サーバに接続された端末に入力して,薬剤師から混注対象の薬剤及びその溶解液を取得し(S1),それを持って,クリーンルーム18に入る。その後作業者は,指定された所定の安全キャビネット或いはクリーンベンチ(調整室17)の前に座り,所持した薬剤を前記した作業室33内に置く。
【0034】
作業が行われていない状態では,前記監査者側混注作業モニタ11及び混注作業者側表示手段23には,図5に示す混注監査システムの初期メニュー画面が表示されている。
監査者側混注作業モニタ11及び混注作業者側表示手段23における表示画面は基本的に同じものが表示されてもよいが,それぞれ異なる画面でも良い。この実施形態ではほとんど同じ画面が表示されるが,一部(例えば図10)だけは異なる場合を示す。
混注作業者が,図5の混注監査モニタボタンB1を押すと,図6の混注監査モニタ画面が混注作業者側表示手段23に表示される。ここではまだ何も設定されていないので,全ての欄は空白である。
作業者はここでこれから混注を行うべく,混注の内容を決める情報を入力しenterキーを押す。混注の内容は例えば患者IDと実施日を入力することで,決定される。
この時,すでに図1の処方オーダ手順で述べたように,患者ID,患者名,混注実施日,投薬実施日などの混注情報は,ラベルに記載されると共に,混注管理サーバ1に接続された混注情報データベース3に記憶されているので,上記のように作業者が混注作業者側表示手段23に設けられた図外の入力部から,上記患者IDや混注実施日などのデータを入力することで,今回の混注に関する全ての混注情報が検索され,図7のように患者情報が混注情報モニタ画面の患者情報欄に表示される(S2)。
【0035】
また図6の画面左側の,処方情報欄内の全てボタン(B11)を押すと,前記混注情報データベース3に記憶されているこの患者のための処方された混注予定の全ての薬剤情報が,処方情報欄G1に図7のように表示される。
更に,上記のように処方情報欄G1に表示された薬剤の中で,混注の用意が完了している薬剤(例えばこの場合には,Rp1−1のランダ注50mg 溶解液100mg)が右側の明細表示欄G2に表示される。これらは全て前記混注情報データベース3を検索することで得られた情報である。
こうして,これから行おうとする混注の内容が,混注作業者側表示手段23に表示されると,混注作業者は,作業室33に置いた混注用薬剤及びそれに付されたラベルの内容と,混注作業者側表示手段23の表示内容とを照合することにより,混注作業に先だった前監査を実行する(S3)。この作業は,手作業である。
【0036】
図7の混注明細情報欄には,1つのRp,即ち1つの注射剤の処方しか表示されていないが,複数の注射剤の混注が必要であれば,複数の処方が表示される。
続いて混注業務が開始される(S4)。
混注作業及びその監査業務は,図4の手順に従って行われる。
この手順は,混注作業者側の調整室制御部19及び監査室側制御部9の処理手順を中心としたものである。
処理は,S11の監査者の確認手順から始まる。ここでは,適宜の方法で呼び出された監査室15内の監査者を確認する手順である。通常は,監査者は監査室内の監査室側制御部9に接続された監査者側入力装置13から前記図5に示された初期メニューの遠隔監査モニタボタンB2を押し,そこで自己のIDやパスワードなどを入力することで,適正な監査者であることが照合されているので,S11の確認手順では,上記のように既に入力されているIDやパスワードと,前記ラベルに記載されたバーコードなどの読み込みによって抽出されたあらかじめ指定された監査者のIDやパスワードを照合することで,監査者が予定された者かどうかが判断される。もちろん他の方法であっても良い。
【0037】
適正な監査者であることが確認されると,図7に示された混注監査モニタ画面中の監査開始ボタンB12が押されるのを待つ(S12)。監査開始ボタンB12が押されることがいわゆる監査要求依頼となる。
上記動画モニタボタンB13が押される(S12でオン)と,前記作業室33内に設けられた混注作業撮像装置の一例であるCCDカメラ21aの駆動が開始される。また同時に,上記CCDカメラ21aによって撮像されたシリンジや薬剤ビン,薬剤チューブなどの画像が,図8の左端部に表示された動画モニタ画面G3に表示される。
【0038】
更に,上記調整室制御部19(監査室側制御部9)が薬剤管理サーバ1を介して混注情報データベース3を,前記患者IDなどによって検索して,図9に示すような混注の明細が明細情報欄G4に表示される(S14)。この混注明細には,例えば,混注対象である薬剤や溶解液の内容や,混注手順そのほかの注意事項などが含まれ,混注作業者はこの明細を見ながら混注作業を行う。この場合,混注処方箋や,注意書きなどの紙情報を見る必要がないので,汚染された紙の処理などの問題や,紙が汚れ手読みにくくなるといった問題が生じない。またその場で種々の気がついた事項などを入力することもできるので,事後の処置に間違いがなくなる効果も期待できる。
【0039】
続いて,調整室制御部19は,混注開始指示の入力を待つ(S15)。
例えば,混注作業者側から上記したように監査要求(前記監査開始ボタンB12の押下)が出されると,監査室側制御部9に接続された監査室側混注作業モニタ11にビープ音が発生し,監査者がいずれかの号機番号(図10の上段に表示され,調整室17ごとに設定されている)ボタンを押下しないと上記ビープ音が解除されないようにしてもよい。即ち,上記号機番号ボタンを押すことが,混注開始指示となる。
この混注作業開始指示が発せられると,混注作業者が混注作業を開始する(S16)。
混注は,前記した画面に表示された混注処理手順や注意書きに沿って行われる。特に,この場合は,シリンジに入れた注射薬を溶解液で混合させる処理であるので,シリンジ内での薬剤の溶解状態や,作業者によるシリンジを振る動作が監査の対象である。このとき監査者はシリンジ溶解画像を取得するべく,シリンジ溶解画像取得ボタンB14を押す。このボタンの押下信号を受けると(S17でオン),調整室制御部19は,CCDカメラ21aによって取得されたシリンジSの画像を監査室側制御部9に送る。監査者側制御部9は,この画像を監査者側混注作業モニタ11に表示する。具体的には,この画像は,図10の動画モニタ欄G6に表示される。
【0040】
このような混注作業中,監査者は,必要に応じてマイクやビープ音などによって,作業者に混注動作についての指示を伝えることができる。例えば,シリンジをもっと強く振ってください,とかシリンジをもっとカメラに近づけてください,といった監査に必要な指示である。
もちろん明細情報欄G4に表示された混注手順や注意書きに従っていない動作があった場合なども,手順をやり直す指示などが伝えられる。
こうして混注手順が最終段階に達したと判断されると,監査者或いは作業者は,図9の監査開始ボタンB12を押す(S19でON)。
上記のようにカメラを用いた監査の利点を生かすために,監査者は混注作業者に,どの薬剤を混合,若しくは溶解させたかが視覚的に分かるように,混注作業者に使用した空瓶を撮像範囲内に置くように指示することもできる。これにより,使用済みの空瓶B0などが,図10に示すように動画モニタ欄G5に表示され,あたかも監査者が混注作業者のそばで監査しているような正確な監査が実行可能となる。
【0041】
前記のような混注作業の動作に関する監査のほかにもちろん溶解液の量的或いは質的監査も必要である。そのため,上記監査開始ボタンB12がおされる(S19でオン)と,これに応じてシリンジ内の溶解液の状態を示す溶解量監査取得画像が,図10の右下の左側の溶解量監査取得画面G6に表示される。
システムの設計段階で,或いはこの混注作業に先立って,種々の溶解度ごとの溶解液の映像が,前記薬剤管理サーバ1に接続された混注情報データベース3の溶解量マスタに記憶されている。 上記監査開始ボタンB12の押下信号を受けると,監査室側制御部9は,今回の溶解液の溶解度に対応した溶解液の画像を,上記溶解量マスタから選択して前記図10の右下右の溶解量マスタ情報欄G7に表示する(S20)。
監査者は上記溶解量監査取得画像と溶解量マスタ情報の両画像を比較して溶解液の量に関する監査を実行することができる。
【0042】
このようにして監査が終了したと判断すると,監査者は図10の承認ボタンB15を押すか,監査不承認を表すNGボタンB16を押す。これらのボタンの押下信号を受けると,監査室側制御部9は,承認ボタンB15が押されたか(S21でON),NGボタンB16が押されたか(S22でオン)を判断する。いずれのボタンも押されないうちは,いずれかのボタンが押されるまで待つ。
なお,上記承認ボタンB15が押されると,その時の監査者側混注作業モニタ11に表示されたシリンジの画像が静止画像として保存される。そして図5の混注歴問い合わせのメニューが実行された時,この保存画像を参照することができる。これによって任意の薬剤における混注歴を確認することができる。もちろん,混注の動作を示す動画を保存して,混注動作についても混注歴として参照可能とすることも可能である。
前記S21において承認ボタンB15が押されたと判断されると,監査室側制御部9及び調整室制御部19は,同じ患者についての別の処方が必要かどうかを判断し(S23),別の処方があると判断する(S23でYES)と,S14に戻り,次の処方についての明細を表示してその後の混注手順を繰り返す。
また次処理がないと判断された場合(S23でNO)には,この患者についての処方は完了したので,作業者としては図3の最終監査に進む(S15(図3参照))。
【0043】
また,監査室側制御部9及び調整室制御部19は,混注作業者による別の患者の混注監査が要求されていないか,即ち別の作業者によるS1に示された別の処方データの入力が行われているかどうかを薬剤管理サーバ1に蓄積されているデータから判断する(S26)。ここで別作業が入力されていないと判断されると,S1(図3参照)に戻って,次の入力を待つ。
また別作業があると判断した場合には,監査室側制御部9は,この作業室33の制御部19との接続を遮断して,別作業において指定された別の作業室の制御部19に接続する(S27)。これによって,処理はS11に戻る。
このように監査室側制御部9は一度に一つの作業室側制御部19としか接続しないようにプログラムされているので,監査者が2つの監査を同時に行うことによるミスの発生を未然に防止することができる。
以上述べたS11〜S26の処理によって,混注作業が実行されていく。
そして前記したように1つの混注作業が終了するとその都度図3のS15で示す最終監査が行われる。最終監査は出来上がった溶解液の状態のチェックであり,形状,色などについてマニュアルに従った監査を作業者が行う。
最終監査が終了すると出来上がった薬剤は薬局に交付される(S16)。
【符号の説明】
【0044】
1…薬剤管理サーバ
3…混注情報データベース
9…監査者側制御部
11…監査者側混注作業モニタ
13…監査者側入力装置
15…監査室
17…調整室
18…クリーンルーム
19…調整室制御部
21…混注作業撮像装置
23…混注作業者側表示手段
B1,B2…ボタン
S1,S2…処理手順(ステップ)番号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射用薬剤を混合する混注作業を混注作業者とは別の監査者によって監査するための混注監査システムであって,
混注作業の場に設けられ,上記混注作業を撮影するための混注作業撮像装置と,
上記混注作業の場から離れた場所に設けられ,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業を表示するための監査者側混注作業モニタと,
上記混注作業の場から離れた場所に設けられ,混注作業の場で作業する作業員に対する指示を入力するための監査者側入力装置と,
上記監査者側入力装置により入力された内容を混注作業者に表示するための混注作業者側表示手段と,
上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を記憶する薬剤管理サーバと,
を備えてなる混注監査システムにおいて,
上記監査者側混注作業モニタは,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業と,上記薬剤管理サーバに記憶された上記混注情報の両方を同時に表示することができるモニタであることを特徴とする混注監査システム。
【請求項2】
上記薬剤管理サーバは,さらに,種々の溶解度ごとの溶解液の画像を記憶するものであり,上記監査者側混注作業モニタは,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業と,上記薬剤管理サーバに記憶された上記混注情報に加えて,さらに,混注される溶解液の溶解度に対応した溶解液の画像を同時に表示することができるモニタである請求項1に記載の混注監査システム。
【請求項3】
混注作業の場に設けられ,上記薬剤管理サーバに接続されて上記混注情報を表示するための混注作業者側混注情報モニタを備えてなる請求項1あるいは2のいずれかに記載の混注監査システム。
【請求項4】
上記混注作業者側混注情報モニタが,上記混注作業者側表示手段を兼ねている請求項1あるいは2のいずれかに記載の混注監査システム。
【請求項5】
監査者側混注作業モニタが,複数の上記混注作業撮像装置からの映像を表示可能である請求項1〜4のいずれかに記載の混注監査システム。
【請求項6】
監査者側混注作業モニタが,複数の上記混注作業撮像装置からの映像を切り替え表示可能である請求項5に記載の混注監査システム。
【請求項7】
監査者側混注作業モニタが,混注作業者側からの要求に応じて,上記混注作業撮像装置からの映像を切り替え表示可能である請求項5或いは6のいずれかに記載の混注監査システム。
【請求項1】
注射用薬剤を混合する混注作業を混注作業者とは別の監査者によって監査するための混注監査システムであって,
混注作業の場に設けられ,上記混注作業を撮影するための混注作業撮像装置と,
上記混注作業の場から離れた場所に設けられ,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業を表示するための監査者側混注作業モニタと,
上記混注作業の場から離れた場所に設けられ,混注作業の場で作業する作業員に対する指示を入力するための監査者側入力装置と,
上記監査者側入力装置により入力された内容を混注作業者に表示するための混注作業者側表示手段と,
上記混注のための薬剤,その混合手順及び混合処理上の注意事項を含む混注情報を記憶する薬剤管理サーバと,
を備えてなる混注監査システムにおいて,
上記監査者側混注作業モニタは,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業と,上記薬剤管理サーバに記憶された上記混注情報の両方を同時に表示することができるモニタであることを特徴とする混注監査システム。
【請求項2】
上記薬剤管理サーバは,さらに,種々の溶解度ごとの溶解液の画像を記憶するものであり,上記監査者側混注作業モニタは,上記混注作業撮像装置によって撮像された混注作業と,上記薬剤管理サーバに記憶された上記混注情報に加えて,さらに,混注される溶解液の溶解度に対応した溶解液の画像を同時に表示することができるモニタである請求項1に記載の混注監査システム。
【請求項3】
混注作業の場に設けられ,上記薬剤管理サーバに接続されて上記混注情報を表示するための混注作業者側混注情報モニタを備えてなる請求項1あるいは2のいずれかに記載の混注監査システム。
【請求項4】
上記混注作業者側混注情報モニタが,上記混注作業者側表示手段を兼ねている請求項1あるいは2のいずれかに記載の混注監査システム。
【請求項5】
監査者側混注作業モニタが,複数の上記混注作業撮像装置からの映像を表示可能である請求項1〜4のいずれかに記載の混注監査システム。
【請求項6】
監査者側混注作業モニタが,複数の上記混注作業撮像装置からの映像を切り替え表示可能である請求項5に記載の混注監査システム。
【請求項7】
監査者側混注作業モニタが,混注作業者側からの要求に応じて,上記混注作業撮像装置からの映像を切り替え表示可能である請求項5或いは6のいずれかに記載の混注監査システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図11】
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【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−279738(P2010−279738A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192293(P2010−192293)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【分割の表示】特願2007−48634(P2007−48634)の分割
【原出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(592246705)株式会社湯山製作所 (202)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【分割の表示】特願2007−48634(P2007−48634)の分割
【原出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(592246705)株式会社湯山製作所 (202)
【Fターム(参考)】
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