説明

混練押出機、及びコンパウンドの検査方法

【課題】コンパウンド製造中にフィラーに関係する異常を検知してロットアウト品を低減することが可能な混練押出機、及びコンパウンドの検査方法を提供する。
【解決手段】混練押出機1は、ダイ部5の構成及び構造と、第二ダイ8の下流に設けられる撮影装置10及び画像解析評価装置11とによって、フィラーの凝集有無や分散状況をコンパウンド15の製造開始前、製造終了直前、或いは製造中における任意のタイミング等で評価することができるように構成されている。ダイ部5の第一ダイス7は、コンパウンド用として押し出すことができるように設けられている。第二ダイ8は、検査用として押し出すことができるように設けられている。第二ダイ8から押し出されると、フィルム状樹脂16となる。樹脂送り切替部9は、フィラーを含む溶融樹脂の送り方向を切り替える部分として設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ内で混練されたフィラーを含む溶融樹脂を押し出す混練押出機と、コンパウンド(混練加工品)の検査方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックのベース樹脂(ニート樹脂)にフィラー(充填剤)や添加剤を配合することにより、物性を改善したり用途に応じた特性が得られるようにしたコンパウンド(混練加工品)は、従来より知られている。コンパウンドは、スクリュー式の混練押出機により溶融及び混練を行った後、造粒装置を経てペレット状製品に加工されるのが一般的である(例えば下記特許文献1参照)。コンパウンドは、この内部にフィラーが十分に分散されていることが重要である。
【0003】
フィラーの分散状況や凝集有無を確認(品質検査)するためには、別工程でコンパウンドをプレスして大きく引き伸ばし、この引き伸ばしたものを用いて確認することが例えば行われている。
【特許文献1】特開2005−335240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィラーの分散状況や凝集有無を確認(品質検査)するため、別工程でコンパウンドをプレスして大きく引き伸ばすようでは、コンパウンド製造時においてのフィラーに関係する例えば異常を見つけることはできない。従って、異常を発見した時には多くのロットアウト品が製造されていると考えられ、これが問題点となっている。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、コンパウンド製造中にフィラーに関係する異常を検知してロットアウト品を低減することが可能な混練押出機、及びコンパウンドの検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の混練押出機は、シリンダと、該シリンダ内に回転可能に配置されるスクリューと、前記シリンダに設けられるホッパと、前記シリンダの端部に設けられるダイ部と、前記スクリューを回転駆動する駆動装置とを備え、前記ダイ部を介して前記シリンダ内で混練されたフィラーを含む溶融樹脂を押し出す混練押出機において、前記ダイ部は、コンパウンド用として前記フィラーを含む溶融樹脂を所定形状に押し出す第一ダイと、検査用として前記フィラーを含む溶融樹脂をフィルム状に押し出す第二ダイと、前記フィラーを含む溶融樹脂の送り方向を前記第一ダイ及び/又は前記第二ダイに切り替える樹脂送り切替部とを有し、前記第二ダイの下流には、該第二ダイから押し出されたフィルム状樹脂に所定の光を当てて該フィルム状樹脂をカメラにて撮影する撮影装置と、該撮影装置から送られた画像データに基づき解析をして前記フィルム状樹脂中のフィラーの凝集有無や分散状況を評価する画像解析評価装置とを設けることを特徴としている。
【0007】
また、上記課題を解決するためになされた請求項2記載の本発明のコンパウンドの検査方法は、シリンダ内で混練されたフィラーを含む溶融樹脂をコンパウンド用として所定形状に押し出す第一ダイと、前記フィラーを含む溶融樹脂を検査用としてフィルム状に押し出す第二ダイと、前記フィラーを含む溶融樹脂の送り方向を前記第一ダイ及び/又は前記第二ダイに切り替える樹脂送り切替部と、を有するダイ部をシリンダの端部に備える混練押出機を用い、フィラーの凝集有無や分散状況を評価する必要がある場合には、前記樹脂送り切替部を操作して前記第二ダイからフィルム状樹脂を押し出し、この後に該押し出されたフィルム状樹脂に所定の光を当てて該フィルム状樹脂をカメラにて撮影するとともに画像データを生成し、さらに該画像データを生成した後にはこの生成データに基づき明暗の割合又は色調の違いを判別して評価結果を出力することを特徴としている。
【0008】
このような特徴を有する本発明によれば、フィラーの凝集有無や分散状況を評価する必要がある場合に、混練押出機のダイ部に設けられた樹脂送り切替部を操作して検査用のフィルム状樹脂を押し出すことにより、上記の評価をすることができるようになる。つまり、コンパウンド製造中にフィラーに関係する異常を検知することが可能になる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、2に記載された本発明によれば、コンパウンド製造中にフィラーに関係する異常を検知することができるという効果を奏する。また、製造中に異常検知をすることができれば、ロットアウト品を低減することができるという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の混練押出機の一実施の形態を示す模式的な構成説明図である。また、図2はダイ部を示す図であり、(a)は第一ダイスを用いてのコンパウンド製造時状態を示す図、(b)は第一ダイスの形状を示す図、(c)は第二ダイを用いての検査時状態を示す図、(d)は第二ダイの形状を示す図である。また、図3は本発明のコンパウンドの検査方法の一実施の形態を示す模式的な図であり、(a)は反射光利用の場合の撮影装置における図、(b)は透過光利用の場合の撮影装置における図、(c)は画像解析評価装置における判別の説明図である。
【0011】
図1において、引用符号1は本発明の混練押出機を示している。混練押出機1は、シリンダ2と、このシリンダ2内に回転可能に配置されるスクリュー3と、シリンダ2に設けられるホッパ4と、シリンダ2の端部に設けられるダイ部5と、スクリュー3を回転駆動する駆動装置6とを備えて構成されている。ダイ部5は、第一ダイス7と、第二ダイ8と、樹脂送り切替部9とを有している。また、混練押出機1は、第二ダイ8の下流に撮影装置10及び画像解析評価装置11を設けている。第一ダイス7の下流には、従来同様に図示しない冷却装置と造粒装置12とが設けられている。
【0012】
混練押出機1は、上記構成の如くスクリュー式の混練押出機であって、ホッパ4を介してプラスチックのベース樹脂やフィラーや添加剤がシリンダ2に投入されると、このシリンダ2内で溶融及び混練が行われるようになっている。溶融及び混練が行われた後、フィラーを含む溶融樹脂13(図2参照)は、第一ダイス7から押し出されてコンパウンド用樹脂14となり、図示しない冷却装置で冷却された後に造粒装置12においてペレット状製品のコンパウンド15に加工されるようになっている。
【0013】
上記フィラーに関しては、特に限定するものでないが、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が一例として挙げられるものとする(一般的に知られているフィラー類である)。
【0014】
本発明の混練押出機1は、ダイ部5の構成及び構造と、第二ダイ8の下流に設けられる撮影装置10及び画像解析評価装置11とによって、フィラーの凝集有無や分散状況をコンパウンド15の製造開始前、製造終了直前、或いは製造中における任意のタイミング等で評価することができるように構成されている(上記検査頻度は一例であるものとする。ロット毎に行うのも有効である)。尚、本形態において、シリンダ2、スクリュー3、ホッパ4、及び駆動装置6は公知のものを用いているものとする。
【0015】
図2において、ダイ部5は、上記の如く第一ダイス7、第二ダイ8、及び樹脂送り切替部9を有している。第一ダイス7は、フィラーを含む溶融樹脂13をコンパウンド用に押し出す部分として設けられている。第一ダイス7は、円形に貫通する穴を例えば千鳥状に配置するようにして形成されている。
【0016】
第二ダイ8は、フィラーを含む溶融樹脂13を検査用に押し出す部分として設けられている。第二ダイ8は、フィラーを含む溶融樹脂13をフィルム状に押し出すことができるように開口形成されている。第二ダイ8から押し出されたフィラーを含む溶融樹脂13は、フィルム状樹脂16となって撮影装置10へ送られるようになっている(図1参照)。
【0017】
樹脂送り切替部9は、フィラーを含む溶融樹脂13の送り方向を第一ダイス7及び/又は第二ダイ8に切り替える部分として設けられている。樹脂送り切替部9は、切替コックのような形状及び機能を有しており、ダイ部5の内部に位置する胴部17には、複数の切替樹脂通路18が形成されている。樹脂送り切替部9は、本形態において、このひねりを手動で行っているが、自動化してもよいものとする。
【0018】
図1及び図3において、第二ダイ8から押し出されてフィルム状となったフィルム状樹脂16は、撮影装置10に送られると、この撮影装置10を構成する図示しない光源からの所定の光19が当てられ、この状態でカメラ20により撮影されるようになっている。ここで、所定の光19は、例えば白色光、青色光、赤色光等であるものとする。撮影装置10は、図3(a)の場合、反射光を利用して撮影をするようになっている。一方、図3(b)の場合は、透過光を利用して撮影をするようになっている。
【0019】
尚、フィルム状樹脂16に所定の光19を当てると、フィラー(例えば水酸化マグネシウム)を含んだ状態が撮影され、これが撮影装置10において画像データ化されるようになっている。画像データ化された後は、この画像データが画像解析評価装置11へと送られるようになっている。
【0020】
画像解析評価装置11においては、撮影装置10から送られた画像データに基づき解析を行って、フィルム状樹脂16中のフィラー21の凝集有無や分散状況が評価されるようになっている。そして、この評価結果は、例えば画像解析評価装置11に設けられる図示しない表示部等に出力されるようになっている(画像解析評価装置11は、特に図示しないが、演算部や制御部や記憶部や入出力部や表示部等を有している)。
【0021】
上記評価に関してもう少し具体的な例を挙げると、先ず、撮影装置10から送られた画像データを図3(c)に示す如く画像処理し、黒色部と白色部(又は色調)の割合を演算する(樹脂部分とフィラー部分とが明暗又は色調で表すことができるようにする)。次に、演算した値が規定範囲に収まっているか否かを判別し、規定範囲に収まっていればフィラーは分散していると判断してこの評価結果を出力する(分散してないと判断した時も評価結果を出力する)。
【0022】
以上、図1ないし図3を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、フィラーの凝集有無や分散状況を評価する必要がある場合、例えばコンパウンド15の製造中であっても評価をすることができる。例えばコンパウンド15の製造中にフィラーに関係する異常を検知することができれば、従来と比べて格段にロットアウト品を低減することができる。この他、従来と比べて評価が別工程にならないという効果も奏する。
【0023】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の混練押出機の一実施の形態を示す模式的な構成説明図である。
【図2】ダイ部を示す図であり、(a)は第一ダイスを用いてのコンパウンド製造時状態を示す図、(b)は第一ダイスの形状を示す図、(c)は第二ダイを用いての検査時状態を示す図、(d)は第二ダイの形状を示す図である。
【図3】本発明のコンパウンドの検査方法の一実施の形態を示す模式的な図であり、(a)は反射光利用の場合の撮影装置における図、(b)は透過光利用の場合の撮影装置における図、(c)は画像解析評価装置における判別の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 混練押出機
2 シリンダ
3 スクリュー
4 ホッパ
5 ダイ部
6 駆動装置
7 第一ダイス(第一ダイ)
8 第二ダイ
9 樹脂送り切替部
10 撮影装置
11 画像解析評価装置
12 造粒装置
13 フィラーを含む溶融樹脂
14 コンパウンド用樹脂
15 コンパウンド
16 フィルム状樹脂
17 胴部
18 切替樹脂通路
19 所定の光
20 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、該シリンダ内に回転可能に配置されるスクリューと、前記シリンダに設けられるホッパと、前記シリンダの端部に設けられるダイ部と、前記スクリューを回転駆動する駆動装置とを備え、前記ダイ部を介して前記シリンダ内で混練されたフィラーを含む溶融樹脂を押し出す混練押出機において、
前記ダイ部は、コンパウンド用として前記フィラーを含む溶融樹脂を所定形状に押し出す第一ダイと、検査用として前記フィラーを含む溶融樹脂をフィルム状に押し出す第二ダイと、前記フィラーを含む溶融樹脂の送り方向を前記第一ダイ及び/又は前記第二ダイに切り替える樹脂送り切替部とを有し、
前記第二ダイの下流には、該第二ダイから押し出されたフィルム状樹脂に所定の光を当てて該フィルム状樹脂をカメラにて撮影する撮影装置と、該撮影装置から送られた画像データに基づき解析をして前記フィルム状樹脂中のフィラーの凝集有無や分散状況を評価する画像解析評価装置とを設ける
ことを特徴とする混練押出機。
【請求項2】
シリンダ内で混練されたフィラーを含む溶融樹脂をコンパウンド用として所定形状に押し出す第一ダイと、前記フィラーを含む溶融樹脂を検査用としてフィルム状に押し出す第二ダイと、前記フィラーを含む溶融樹脂の送り方向を前記第一ダイ及び/又は前記第二ダイに切り替える樹脂送り切替部と、を有するダイ部をシリンダの端部に備える混練押出機を用い、フィラーの凝集有無や分散状況を評価する必要がある場合には、前記樹脂送り切替部を操作して前記第二ダイからフィルム状樹脂を押し出し、この後に該押し出されたフィルム状樹脂に所定の光を当てて該フィルム状樹脂をカメラにて撮影するとともに画像データを生成し、さらに該画像データを生成した後にはこの生成データに基づき明暗の割合又は色調の違いを判別して評価結果を出力する
ことを特徴とするコンパウンドの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−262461(P2009−262461A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116650(P2008−116650)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】