説明

混練機、成形装置及び被混練物の流動体の製造方法

【課題】一度に混練される一定量以上の被混練物を排出することができる混練機、成形装置、及び被混練物の流動体の製造方法を提供すること。
【解決手段】被混練物Wを混練する混練部10と、混練された被混練物Wの流動体W1が貯留されるバッファー部20と、流動体W1をバッファー部20の外部に排出する排出部30と、を備え、混練部10は、軸状の混練スクリュー12と、混練スクリュー12を軸回りに回転させる混練スクリュー駆動部14と、混練スクリュー14を囲繞して混練スクリュー12との間に被混練物Wを混練する混練空間Q1を形成するとともに混練空間Q1で混練された被混練物Wの流動体W1を排出する混練部排出口11bが設けられた混練シリンダー部11aと、混練部排出口11bを開閉する混練部開閉機構と、混練空間Q1内で被混練物Wを循環させる循環流路13と、を有し、バッファー部20は、流動体W1を攪拌する攪拌部25を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練機、成形装置及び被混練物の流動体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業用材料や医療用材料の特性を向上させるために、複数のポリマー同士、もしくはポリマーと有機粉末や無機粉末といった被混練物を混練する様々な装置が検討されている。そのような装置の1つとして、特許文献1に示すように、スクリュー(混練スクリュー)にその先端面と基端側の側面とを連結する貫通孔(循環流路)を形成して内部帰還形のスクリューとした混練機が知られている。
この混練機によれば、スクリューを高速で回転させることにより、投入された被混練物を循環させながら被混練物に強い剪断力を与えて溶融させ、被混練物の分散相サイズを数十ナノメータ程度まで小さくなるように分散させた押出し成形品が製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−313608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の混練機では、一定量の被混練物を循環させ流動体にして混練するので、混練された被混練物を排出してから次の混練を行う必要がある。このため、混練された被混練物を一定量以上の流動体として一度に取出すことができず、混練機から排出された流動体で押出し成形を行う場合には一定量以上を必要とする押出し成形品を製造することができなかった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、一度に混練される一定量以上の被混練物を排出することができる混練機、成形装置、及び被混練物の流動体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の混練機は、被混練物を混練する混練部と、該混練部によって混練された被混練物の流動体が貯留されるバッファー部と、前記流動体を前記バッファー部の外部に排出する排出部と、を備えてなり、前記混練部は、軸状の混練スクリューと、該混練スクリューを軸回りに回転させる混練スクリュー駆動部と、前記混練スクリューを囲繞して該混練スクリューとの間に前記被混練物を混練する混練空間を形成するとともに該混練空間で混練された前記被混練物の流動体を排出する混練部排出口が設けられた混練シリンダー部と、前記混練部排出口を開閉する混練部開閉機構と、前記混練空間内で前記被混練物を循環させる循環流路と、を有し、前記バッファー部は、前記流動体を攪拌する攪拌部を有することを特徴としている。
【0007】
この発明によれば、混練部では混練スクリュー駆動部により混練スクリューを回転させ、混練スクリューと混練シリンダー部との間の混練空間で循環流路を通じて被混練物を循環させて被混練物を一定量ずつ混練することができる。そして、混練部開閉機構によって混練部排出口を開くことで混練部排出口から被混練物を流動体として排出することができる。これらを順に繰返すことにより、混練部から混練が終了した一定量以上の流動体をバッファー部に貯留することができる。そして、バッファー部に貯留された流動体は、攪拌部によって攪拌された後に排出部によって装置外部に排出される。
このように、バッファー部に一定量以上の流動体を貯留してから排出できるので、流動体を排出するタイミングを調整することが可能となり、混練部で一度に混練される一定量以上の被混練物の流動体をまとめて排出することができる。このとき、攪拌部によって流動体が攪拌されることで、混練部において被混練物を混練する過程で流動体の内部に混入した気泡が好適に除去され、さらに装置外部に排出される直前の流動体が均一に混合されるので、流動体の品質を安定させることができる。
【0008】
また、本発明の混練機は、前記攪拌部は、前記バッファー部の内部に中心軸線回りに回転自在に配置された攪拌軸と、該攪拌軸を前記中心軸線回りに回転動作させる攪拌軸駆動部と、前記攪拌軸に固定されたプロペラ部と、を有することが好ましい。
この場合、プロペラ部が被混練物の流動体に接触することによって流動体が攪拌される。このとき、プロペラ部は流動体の内部の気泡を流動体の表面に掻き出すように移動させることができるので、流動体の内部の気泡の除去を素早く行うことができる。
【0009】
また、本発明の混練機は、前記バッファー部は前記攪拌部を複数備えることが好ましい。
この場合、攪拌部が複数あるため、流動体の攪拌に要する時間が短縮でき、混練部において一定量の被混練物を混練するのにかかる所定の時間内でバッファー部の内部の流動体を十分に攪拌することができる。
【0010】
また、本発明の混練機は、前記混練部と前記バッファー部との間に、互いに噛み合う一対のギアを有し前記流動体を前記バッファー部へ搬送するギアポンプが介在されていることが好ましい。
この場合、ギアポンプによって流動体をバッファー部へ搬送することができる。従って、搬送に伴って混練部の内部の流動体が減少して混練空間内の圧力が低下している場合にも、混練部の内部に残された被混練物の流動体を安定してバッファー部へと搬送することができる。
【0011】
また、本発明の混練機は、前記バッファー部はその内部を減圧するための減圧機構を有することが好ましい。
この場合、バッファー部の内部が減圧されているので、攪拌部によって流動体の表面に移動された気泡は速やかに崩壊する。従って、流動体の内部の気泡の除去が速やかに行われる。
【0012】
本発明の成形装置は、上述の混練機と、該混練機によって混練され前記排出部から排出された前記流動体を所定の形状に成形する成形部と、を備えることを特徴としている。
この発明によれば、混練機によって一定量以上の被混練物の流動体が攪拌部によって均一に混合された状態で排出部から連続的に排出される。排出部から排出された流動体は成形部に供給され、流動体が所定の形状に成形される。従って、混練部で一度に混練可能な一定量以上の流動体を要する成形品を製造することができる。
【0013】
また、本発明の被混練物の流動体の製造方法は、被混練物を混練して被混練物の流動体にする混練工程と、該混練工程に続いて前記流動体を貯留可能なバッファー部に前記流動体を搬送する搬送工程と、前記バッファー部の内部で前記流動体を攪拌する攪拌工程と、を備えることを特徴としている。
この発明によれば、混練工程に続いて搬送工程によって流動体がバッファー部に貯留され、続いて攪拌工程によってバッファー部の内部の流動体が均一に攪拌され、さらに内部の気泡が除去される。このため、気泡が好適に除去された均質な流動体を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の混練機によれば、混練部で混練された被混練物の流動体がバッファー部の内部に貯留され、攪拌部で攪拌されながら外部へ排出されるので、一度に混練される一定量以上の被混練物を排出することができる。さらに、被混練物の粘度が高い場合にも、攪拌部によって被混練物の流動体がバッファー部内で攪拌されるので、好適に気泡の除去が行われる。
また、本発明の成形装置によれば、排出部から一定量以上の被混練物の流動体が連続的に排出されて成形部へと供給されるので、一定量以上の流動体を要する押出し成形品等の製品を製造することができる。
また、本発明の被混練物の流動体の製造方法によれば、攪拌工程によってバッファー部に搬送された流動体が均一に混合されるとともに流動体の内部の気泡が好適に除去されるので、均質な流動体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の1実施形態の混練機を示す斜視図である。
【図2】同混練機を一部断面で示す斜視図である。
【図3】同混練機を一部断面で示す側面図である。
【図4】同混練機の使用時の動作を一部断面で示す側面図である。
【図5】同混練機の使用時の動作を一部断面で示す側面図である。
【図6】同混練機の使用時の動作を一部断面で示す側面図である。
【図7】同混練機の使用時の動作を一部断面で示す斜視図である。
【図8】同混練機のバッファー部への被混練物の流動体の供給過程を示すグラフである。
【図9】同混練機の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の1実施形態の混練機、成形装置、及び被混練物の流動体の製造方法について図1から図9を参照して説明する。まず、図1から図3を参照して本実施形態の混練機の構成について詳述する。図1は、本実施形態の混練機を示す斜視図である。
混練機1は、一定量の被混練物Wを混練する混練部10と、混練部10によって混練された被混練物Wの流動体が貯留されるバッファー部20と、流動体をバッファー部の外部に排出する排出部30と、を備える。本実施形態では、被混練物Wは高分子材料と粉末材料とからなる2種類の材料で構成されている。
【0017】
高分子材料の被混練物Wとしては、熱可塑性を有する材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン(低密度・高密度・直鎖状低密度・超高分子量)、アイオノマー樹脂(例えばエチレン−メタクリル酸コポリマーアイオノマー樹脂等)、ポリプロピレン(ホモ・ランダム・ブロック・アタクチック・シンジオタクチック)、超高分子量ポリプロピレン、ポリブテン、4−メチルペンテン−1ポリマー、環状ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン、ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂など)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、酢酸セルロース、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート等)、ポリアミド系樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、生分解性ポリマー、及びその共重合体などを用いることができる。
【0018】
また、粉末粒子の被混練物Wとしては、分子材料と複合化できる材料であれば特に限定されるものではなく、たとえば無機物では硫酸バリウム・炭酸カルシウムなどの金属無機塩、アルミナなどの金属酸化物、窒化ホウ素などの窒素化合物、粉末炭素・針状炭素、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの単一物もしくは複合物、有機物ではポリ4フッ化エチレン粉末・超高分子量粉末・ポリイミド粉末などを添加してもよい。無機物と有機物との複合粒子であっても構わない。また、上記無機粒子の添加量についても、高分子材料と複合化できる量であれば特に限定されるものではない。無機粒子の複合化に際して、使用する無機粒子は単独であっても、二種類以上の複合であっても良い。
【0019】
また、被混練物Wにおいて樹脂混合物に分散させる成分として常用の各種添加成分、例えば、相溶化剤、結晶核剤、着色防止剤、酸化防止剤、離型剤、可塑剤、熱安定剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤などの添加剤を用いても良い。
【0020】
図2は、混練機1を一部破断して示す斜視図である。図1及び図2に示すように、混練部10は、略円柱状の混練スクリュー12と、混練スクリュー12を回転させる混練スクリュー駆動部14と、混練スクリュー12を囲繞して混練スクリュー12との間に被混練物Wを混練する混練空間Q1を形成するとともに混練空間Q1で混練された被混練物Wの流動体W1を排出する混練部排出口11bが設けられた混練シリンダー部11aと、混練部排出口11bを開閉する混練部開閉機構18と、混練空間Q1内で被混練物Wを循環させる循環流路13と、を有する。
【0021】
本実施形態の混練シリンダー部11aは、混練部本体11の内部に円柱状の穴部として水平方向に延びて形成されている。また、混練スクリュー12は外周部に螺旋状のスクリュー12aが形成され、混練シリンダー部11aの内部に混練シリンダー部11aと同軸に配置されている。これにより、混練スクリュー12は混練空間Q1内で混練部排出口11bの方向に被混練物Wを搬送できるようになっている。
また、混練部排出口11bは、混練シリンダー部11aの軸線方向に沿って形成されている(図3参照)。
また、本実施形態の循環流路13は、混練スクリュー12の内部に形成されている。すなわち、循環流路13は、混練スクリュー12の先端側である混練部排出口11b側の端部に形成された先端側開口13aから混練スクリュー12の基端側において混練スクリュー12の外周面に形成された基端側開口13bまで延びて設けられている。基端側開口13bは、混練スクリュー12の径方向に対向する外周面の二箇所に開口されている。
【0022】
混練スクリュー駆動部14は、混練スクリュー12の基端側で混練部本体11の外面に取付けられ、混練スクリュー12を例えば2段階に速度を変えて回転させることが可能になっている。
【0023】
図3は、混練機1を一部断面で示す側面図である。図3に示すように、混練部開閉機構18は、混練部排出口11bの軸線に直交する方向に進退動作して流路を塞ぐことが可能な板状の混練シャッター18aと、混練シャッター18aを進退動作させる混練シャッター開閉部18bと、を有する。
【0024】
混練部本体11には、上面から鉛直下方に延びて混練シリンダー部11aの内部に連通する材料投入口15aが形成され、この材料投入口15aには被混練物W(図1参照)を貯留し材料投入口15aに供給するホッパー15が取付けられている。
また、図3に示すように、混練部10とバッファー部20との間には、互いに噛み合う一対のギア42、43を有し流動体W1をバッファー部20へ搬送するギアポンプ40が介在されている。ギア42、43は図示しないポンプモーターによってケース41の内部で回転動作し、これによりギア42、43とケース41との間に生じる空間に沿って流動体W1をバッファー部20側へ搬送することができる。
【0025】
バッファー部20には、混練部排出口11bに連通するバッファー部開口24が形成されており、これに連通して被混練物の流動体W1が貯留されるバッファー空間Q2が形成されている。バッファー空間Q2は、円柱状の孔部が二つ隣接する形状で、径方向断面視で繭型の輪郭を有するように形成されている。バッファー空間Q2は、排出部30のカバー34(図1参照)によって密閉された空間になっている。
【0026】
バッファー空間Q2の容積は、混練空間Q1の容積よりも大きいことが好ましく、例えばバッファー空間Q2の容積は混練空間Q1の容積の4〜5倍程度に設定されていてもよい。これは、混練部10において被混練物Wを混練している最中にバッファー部20から流動体W1を途切れることなく排出させるためであるとともに、バッファー部20から流動体W1が完全に排出される前に混練部10で混練された後続の流動体W1の全量をバッファー空間Q2に充填可能にするためである。
【0027】
また、バッファー部20には、バッファー空間Q2に貯留された流動体W1を攪拌する攪拌部25が設けられている。攪拌部25は、バッファー空間Q2に中心軸線回りに回転自在に配置された攪拌軸21と、攪拌軸21を中心軸線回りに回転動作させる攪拌軸駆動部23(図2参照)と、攪拌軸21に固定されたプロペラ部22と、を有する。
【0028】
本実施形態では、バッファー部20は攪拌部25を複数備える。すなわち、攪拌軸21はバッファー空間Q2における上記の孔部のそれぞれにおいて、孔部のそれぞれの中心線に沿って一本ずつ配置され、それぞれの攪拌軸21に対してプロペラ部22が固定されている。
【0029】
図2に戻って、攪拌軸21はバッファー部20の壁部に形成された貫通孔20aに回転自在に挿通され、バッファー部20の外部に突出されている。バッファー部20の外部に突出された攪拌軸の端部は攪拌軸駆動部23に連結されている。攪拌軸駆動部23の詳細は図示していないが、攪拌軸駆動部23は、回転動作可能なモーター等の動力源と、動力源の動力を減速あるいは加速して攪拌軸に伝達するギア等の動力伝達手段とを好適に組み合わせて構成することができる。
【0030】
図3に示すように、プロペラ部22は、二つの長尺なブレード22aが直交して組み合わされている。ブレード22aの長手方向の長さは、バッファー空間Q2の内壁に接触しないように適宜のクリアランスを有し、バッファー空間Q2に貯留された流動体W1が少量であってもプロペラ部22が流動体W1に接触可能な長さに設定されている。
【0031】
バッファー部20は、バッファー空間Q2の内部を減圧するための減圧機構27を有する。本実施形態では、減圧機構27はバッファー空間Q2の上部からバッファー部20の外面に連通する大気流路26を通じてバッファー空間Q2の内部の大気を吸引する吸引ポンプである。
【0032】
図1及び図2に示すように、排出部30は、バッファー部20のバッファー空間Q2を密閉するカバー34と、カバー34から突出し、バッファー空間Q2に連通する排出流路が形成された排出パイプ31と、排出パイプ31の内部で回転自在に配置された排出スクリュー33と、排出スクリュー33を軸回りに回転動作させる排出スクリュー駆動部32とを備える。
排出スクリュー33は、一端がバッファー空間Q2の内部に挿入されており、バッファー部20の内部の後端面20bまで延びている。また、排出スクリュー33はバッファー空間Q2の内部にある流動体W1に接触可能である。また、排出パイプ31はバッファー部20の外部に排出部開口31aを有し、流動体W1をバッファー部20の外部に排出するための排出口になっている。
【0033】
排出部開口31aは、流動体W1を所定の形状に形成する図示しない成形部に接続可能であり、公知の押出し成形機等の成形部を適宜採用して接続できるようになっている。混練機1と成形部とを組み合わせることによって被混練物Wの流動体W1から押出し成形品を成形する成形装置を構成することができる。
【0034】
以上に説明する構成の、本実施形態の混練機及び成形装置の使用時の動作、及び被混練物の流動体の製造方法について、図4から図8を参照しながら説明を行う。
図4は、混練機1の使用時の動作を示す側面図である。混練機1は、初期状態では混練シャッター18aによって混練部排出口11bは閉鎖されており、混練空間Q1は材料投入口15aが外部に開口されている。
【0035】
使用者は混練スクリュー駆動部14を駆動して混練スクリュー12を軸回りに回転させる。このとき、混練スクリューの2段階の回転速度のうち速い方の第2の回転速度で回転させる。そして、ホッパー15に貯留された被混練物Wのうち一度に混練部10で混練される一定量を、材料投入口15aを通して混練シリンダー部11aの内部に投入する。
【0036】
すると、図4に示すように、混練シリンダー部11a内に投入された被混練物Wは、混練スクリュー12のスクリュー12aの回転により混練空間Q1を通って混練スクリュー12の先端側へ移動されてゆく。
この間、被混練物Wは混練空間Q1において混練スクリュー12から剪断力を受けて発熱、溶融し、被混練物Wが流動体W1となって混練されてゆく。そして、混練スクリュー12の先端に到達した流動体W1は、混練スクリュー12と混練シリンダー部11aとの間で大きな剪断力を受けつつ先端側開口13a(図2参照)から循環流路13(図2参照)に流入し、基端側開口13b(図2参照)から再び混練スクリュー12の外周面へと排出されて混練空間Q1内を通じて混練スクリュー12の先端側に押出される。こうして、一定量の被混練物Wは流動体W1として、混練空間Q1及び循環流路13内を循環しながら繰返し混練されてゆく(混練工程S1)。
【0037】
このようにして、被混練物Wが一定時間混練されて一回目の混練が終了すると、図5に示すように、混練部開閉機構18によって混練シャッター18aが開放されて混練部排出口11bから流動体W1が排出される。このとき、混練スクリュー駆動部14は、上述の第2の回転速度よりも低速な第1の回転速度で混練スクリュー12を回転させ、混練空間にある流動体W1が順次混練部排出口11bへと搬送される。混練部排出口11bに搬送された流動体W1はギアポンプ40によってバッファー部20側へと搬送され、流動体W1はバッファー部20のバッファー空間Q2に充填される(搬送工程S2)。
【0038】
図6に示すように、バッファー部20において攪拌軸21が軸回りに回転されており、攪拌軸21に固定されたプロペラ部22が流動体W1を攪拌する(攪拌工程S3)。これにより、流動体W1はバッファー部開口24近傍からバッファー空間Q2の全体に均等に押し広げられる。
【0039】
混練空間Q1において混練された流動体W1がすべてバッファー部20へと搬送されたら、ギアポンプ40を停止させ、さらに混練部開閉機構18を動作させて混練シャッター18aによって混練部排出口11bを閉鎖させ、上述と同様に被混練物Wを混練空間Q1及び循環流路13内で混練して後続の流動体W1を製造する。
【0040】
バッファー部20では、攪拌部25のプロペラ部22によって流動体W1が攪拌され、必要に応じて減圧機構27が駆動されてバッファー空間Q2の内部の大気がバッファー部20の外部に排出される。これにより、攪拌によって流動体W1の内部から表面に移動された気泡が流動体W1の表面で崩壊し、流動体W1の内部の気泡が除去される。
混練部10における混練工程S1は、バッファー部20のバッファー空間Q2に所定量の流動体W1が貯留されるまで繰り返され、その間、バッファー部20に貯留された流動体W1は攪拌工程S3が継続されている。
【0041】
バッファー部20に所定量の流動体W1が貯留されたら、排出スクリュー駆動部32が駆動され、排出スクリュー33が軸回りに回転動作される。すると、図7に示すように、バッファー空間Q2の内部で攪拌されていた流動体W1は排出スクリュー33と排出パイプ31とによって生じる空間へと押圧移動され、排出部開口31aから押出される。
排出部開口31aから押出された流動体W1は、上述した成形部等によって所定の形状に成形され、押出し成形品となる。
【0042】
以下では、混練部10からバッファー部20への流動体W1の搬送と、バッファー部20からの流動体W1の排出の関係について図8を参照して説明する。図8は、バッファー部20のバッファー空間Q2における流動体W1の残量を経時的に示すグラフである。縦軸には流動体W1の量を示し、横軸には時間を示している。
【0043】
図8に示すように、初期状態(時間T0)では、バッファー空間Q2に貯留される流動体の残量はV0(まったく貯留されていない)である。時間T0から時間T1の間では、混練部10において一回目の混練工程S1が行われている。
時間T1から時間T2の間では搬送工程S2が行われ、バッファー部20へ流動体W1が搬送される。このとき、バッファー空間Q2の内部では流動体W1の残量が残量V0から残量V2まで増加する。残量V2はバッファー空間Q2の容積以下の量であり、バッファー空間Q2における流動体W1の残量が残量V2を超えた後に排出部30の動作が開始される。なお、一回の混練工程で残量V0からV2まで増加させるだけの混練ができない場合には混練工程S1と搬送工程S2とを繰り返して流動体W1を製造する。
【0044】
排出部30では、時間T2以降は連続的に排出スクリュー33が動作され、排出スクリュー33の動作によって流動体W1が連続的に排出されている。このとき、混練部10においては時間T2から時間T3までの間に後続の被混練物Wを混練する混練工程S1が行われている。
時間T3では、バッファー空間Q2における流動体W1の残量は残量V1になっている。残量V1は、バッファー空間Q2から排出部30へと流動体W1を搬送する際に流動体W1が途切れずに供給できる量として設定されている。流動体W1の残量が残量V1を下回った際には、混練部10で二回目に混練された被混練物Wの流動体(便宜的に「後続の流動体W2」と称する)が上述と同様に搬送工程S2によってバッファー部20へと搬送され、攪拌工程S3によって攪拌される。
【0045】
このとき、攪拌工程S3によって、先行して製造された流動体W1と後続の流動体W2とが攪拌部25によって攪拌され、均質な混合物となる。このように、流動体W1と後続の流動体W2が均一に混合され、バッファー空間Q2における残量は再び残量V2まで増加する。
このように、時間T2以降はバッファー空間Q2には少なくとも残量V1以上の流動体W1が残っているので、排出部30が連続的に駆動されてもバッファー部20の内部の流動体W1が枯渇することが抑制されている。従って、排出部30から一定量以上の流動体を排出することができ、一定量以上の流動体を要する成形品を成形することができる。
【0046】
上述したように、本実施形態の混練機、成形装置、被混練物の流動体の製造方法によれば、混練部排出口11bからバッファー部20へと排出された流動体W1は、攪拌部25によって攪拌され、バッファー空間Q2に均等に押し広げられる。従って、混練部において一度に混練される一定量以上の被混練物を排出することができる。
【0047】
また、排出部から一定量以上の被混練物の流動体が連続的に排出されて成形部へと供給されるので、一定量以上の流動体を要する押出し成形品等の製品を製造することができる。
さらに、攪拌部25に設けられたプロペラ部22によって流動体W1の内部に残留する気泡を流動体W1の表面まで移動させることができるので、被混練物の粘度が高い場合にも、攪拌部によって被混練物の流動体がバッファー部内で攪拌されるので、好適に気泡の除去が行われ、均質な流動体を製造することができる。これにより、流動体を用いて押出し成形品を製造した際の寸法精度を向上させることができる。
【0048】
また、バッファー部20に減圧機構27が設けられているので、バッファー部20の内部において流動体W1の表面にある気泡の消失を促進することができ、気泡の除去を迅速に行うことができる。
【0049】
以下では、本実施形態の混練機1の変形例について図9を参照して説明する。図9は混練機1におけるバッファー部20を示す断面図である。
図9に示すように、本変形例では、プロペラ部22に代えて、一つの攪拌軸21に対して複数のプロペラ部222a、222b、222c、222d、222eが設けられている。また、排出部30の排出スクリュー33に代えて、排出スクリュー233が設けられている。排出スクリュー233は、バッファー空間Q2への挿入深さが排出スクリュー33よりも浅く設定されている。
このような構成であってもプロペラ部222a、222b、222c、222d、222eによってバッファー部20の内部で流動体W1を攪拌し、排出スクリュー233によって流動体W1を排出することができる。このとき、攪拌軸一つあたり複数のプロペラ部を設けたことでバッファー空間Q2の異なる箇所で同時に攪拌が行われ、攪拌工程に要する時間を短縮することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、本実施形態ではプロペラ部22のブレード22aの形状は長尺な形状としたが、ブレード22aがねじりや折り曲げ等の形状を有し、プロペラ部22の回転によって流動体W1を攪拌軸21の軸線方向に押圧移動可能な構成とすることもできる。この場合、バッファー空間Q2の内部で所定の位置に流動体W1を移動させることができ、排出スクリュー33のバッファー空間Q2への挿入深さが浅い場合でも、攪拌された流動体W1を好適に排出部まで搬送することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 混練機
10 混練部
11a 混練シリンダー部
12 混練スクリュー
13 循環流路
14 混練スクリュー駆動部
18 混練部開閉機構
20 バッファー部
21 攪拌軸
22 プロペラ部
23 攪拌軸駆動部
25 攪拌部
27 減圧機構
30 排出部
40 ギアポンプ
S1 混練工程
S2 搬送工程
S3 攪拌工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被混練物を混練する混練部と、
該混練部によって混練された被混練物の流動体が貯留されるバッファー部と、
前記流動体を前記バッファー部の外部に排出する排出部と、
を備えてなり、
前記混練部は、
軸状の混練スクリューと、
該混練スクリューを軸回りに回転させる混練スクリュー駆動部と、
前記混練スクリューを囲繞して該混練スクリューとの間に前記被混練物を混練する混練空間を形成するとともに該混練空間で混練された前記被混練物の流動体を排出する混練部排出口が設けられた混練シリンダー部と、
前記混練部排出口を開閉する混練部開閉機構と、
前記混練空間内で前記被混練物を循環させる循環流路と、
を有し、
前記バッファー部は、
前記流動体を攪拌する攪拌部を有することを特徴とする混練機。
【請求項2】
前記攪拌部は、
前記バッファー部の内部に中心軸線回りに回転自在に配置された攪拌軸と、
該攪拌軸を前記中心軸線回りに回転動作させる攪拌軸駆動部と、
前記攪拌軸に固定されたプロペラ部と、
を有する請求項1に記載の混練機。
【請求項3】
前記バッファー部は、前記攪拌部を複数備える請求項1または2に記載の混練機。
【請求項4】
前記混練部と前記バッファー部との間に、
互いに噛み合う一対のギアを有し前記流動体を前記バッファー部へ搬送するギアポンプが介在されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の混練機。
【請求項5】
前記バッファー部は、その内部を減圧するための減圧機構を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の混練機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の混練機と、
該混練機によって混練され前記排出部から排出された前記流動体を所定の形状に成形する成形部と、
を備えることを特徴とする成形装置。
【請求項7】
被混練物を混練して被混練物の流動体にする混練工程と、
該混練工程に続いて前記流動体を貯留可能なバッファー部に前記流動体を搬送する搬送工程と、
前記バッファー部の内部で前記流動体を攪拌する攪拌工程と、
を備える被混練物の流動体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−20341(P2011−20341A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167104(P2009−167104)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】