説明

添加剤組成物

【課題】内燃エンジンにおける燃焼中発生するすす粒子による潤滑油の劣化を防止する添加剤の提供。
【解決手段】固体および半固体から選ばれた形状で存在する少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤を含んだ放出添加剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体および半固体から選ばれた形状で存在する少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤(dispersant viscosity index improver)を含んだ放出添加剤組成物(release additive composition)に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンは、特にディーゼル燃料エンジン内において、炭素質のすす粒子を生成する。燃焼中、当燃料は小さな液滴の形状で燃焼室内に注入される。すす粒子は不完全燃焼した燃料の液滴から形成され、シリンダーやリング上に存在し得る。燃焼室内でピストンが上下に動くのに伴い、すす粒子はシリンダーを通ってピストンやリングの潤滑油システムに移動し、最終的にオイルタンクに入る。すすはまたEGRシステムからオイルに入ることもある。従って、エンジンオイル中のすすはエンジンの潤滑に関する問題の一因となり得る。
【0003】
すすはさらに、直接燃料噴射システムを備えた現代のガソリンエンジンにおける問題となり得る。当燃料噴射システムは、より少ない排気とより強力なパワーを生成するようにデザインされたが、エンジンの潤滑油内でのすすの形成を増加させた。それにより、オイル中のすす粒子の濃度が許容限度を越えるのを防ぐため、より頻繁な間隔でのオイル交換が必要とされる。
【0004】
潤滑油内に漂っているすす粒子には、粘度を上昇させ磨耗粒子を生成する効力がある。従って、すすは研磨剤の役目を果たし、エンジン部品における磨耗の原因となる。潤滑剤組成物の寿命にわたってゆっくりと放出される分散剤を含んだ潤滑剤組成物は、エンジンの磨耗に関連した研磨性のすすの最小化、およびエンジンオイルの換油期限の改善のような特性の少なくとも一つをもたらすことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開示に従って、固体および半固体から選ばれた形状で存在する少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤を含んだ放出添加剤組成物;主要量の基油と少量の固体および半固体から選ばれた形状で存在する少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤を含んだ放出添加剤組成物を含んだ潤滑剤組成物;また、固体および半固体から選ばれた形状で存在する少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤を含んだ放出添加剤組成物を潤滑システムに添加することを含んでなる、エンジンオイルの換油期限を改良する方法が提供される。
【0006】
当開示のさらなる目的および利点を以下の記述で部分的に説明する。またこれらは当開示の実施によって確認される。当開示の目的および利点は、添付の請求項で特に指摘されている要素および組み合わせを用いて実現され、達成される。
【0007】
前述の概要および以下の詳細な説明は例証および説明のみのものであり、請求された通りに当開示を制限するものではないことを理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
放出添加剤組成物を使用することのできるエンジンには、これらに限定はされないが、内燃エンジン、定置エンジン、発電機、ディーゼルおよび/またはガソリンエンジン、ハイウェイおよび/またはオフハイウェイ用エンジン、2サイクルおよび4サイクルエンジ
ン、航空機用エンジン、ピストンエンジン、船舶用エンジン、鉄道用エンジン、生分解性燃料用エンジン、その他が含まれる。一つの実施態様において当エンジンには、排ガス再循環システム、接触コンバータ、ディーゼル微粒子除去フィルター、NOxトラップ、その他のような後処理装置が装備される。
【0009】
本開示に基づき、エンジンオイル内のすすの量および凝集は放出添加剤組成物を使用することによって減少され、それによって堆積物の形成およびすすの凝集の減少、車両保守時間の間隔の増加、およびエンジンの寿命の延長などの特性の、少なくとも一つをもたらすことが可能である。また、すすの量は潤滑剤組成物を放出添加剤組成物と接触させることによっても減少することができる。開示された分散剤粘度指数向上剤は潤滑剤組成物中にゆっくりと放出され、それにより潤滑剤組成物の寿命にわたって存在するため、いかなる特定の理論を限定することなく、開示された放出添加剤組成物の使用によって上記に開示された特性の少なくとも一つを達成することができると信じられている。当技術分野の通常の技術を有する技術者は、潤滑剤組成物の寿命が、これらに限定はされないが、エンジンの操作、エンジンのタイプ、エンジンの修理、車両のマイレージ、潤滑剤組成物中の基油の質などを含む様々な要因に基づいて決まることを理解している。
【0010】
当明細書中で使用される「放出」という用語は、添加剤組成物の成分が、例えば潤滑剤組成物の寿命など、長期にわたって放出されることを意味すると理解される。この放出速度は、潤滑システム中の添加剤組成物の位置、添加剤組成物の組成、組成物の形状、および/または潤滑剤組成物中への添加剤組成物の添加方法のような様々な要因により加減される。当技術分野の通常の技術を有する技術者は、添加剤組成物の望ましい放出速度を得るために、上述の要因のいずれかおよび/またはすべてを変更することができる。
【0011】
当放出添加剤組成物は、添加剤組成物が潤滑剤組成物と接触している限り、潤滑システム内のどこにあっても良い。例えば、当放出添加剤組成物は、フィルター、ドレンパン、オイルのバイパスループ、キャニスター、ハウジング、油槽、フィルターのポケット、フィルター内のキャニスター、フィルター内の網、バイパスシステム内のキャニスター、バイパスシステム内の網、その他のうちの少なくとも一箇所に位置することが可能である。ある実施態様において、潤滑システムにはオイルフィルターが含まれる。当オイルフィルターには、当明細書に開示された放出添加剤組成物が含まれる。
【0012】
別の実施態様では、オイルフィルターには、例えば拡散不能な障壁により仕切ることができ、それによって少なくとも一つのポケットが作られるような、スリーブあるいはカップのようなハウジングが含まれる。各ポケットには、同一の、類似した、および/または異なった放出添加剤組成物が含まれ、このとき当組成物は半固体あるいは固体のような、同一の形状、類似した形状、および/または異なった形状であり得る。この概念の非限定的な例には、固体状の分散剤粘度指数向上剤と半固体状の酸化防止剤を含んだ放出添加剤組成物を含んで成る一つのポケットと、半固体状の分散剤粘度指数向上剤を含んだ放出添加剤組成物を含んで成る二番目のポケットが含まれる。添加剤組成物および/または使用済みの添加剤組成物を簡単に除去して、新しい添加剤組成物および/またはリサイクルされた添加剤組成物と交換することができるため、フィルターは放出添加剤組成物を設置するためにふさわしい場所である。
【0013】
さらに別の実施態様では、放出添加剤は潤滑システム内の任意の場所に位置され得る。例えば、放出添加剤は、オイルフィルターの外側の「汚い」側に位置することも、あるいはオイルフィルターの外側の「きれいな」側に位置することもできる。当技術分野の通常の技術を有する技術者は、放出添加剤組成物が潤滑剤組成物と接触している限り、潤滑システム内の放出添加剤の位置は重要ではないことを理解している。
【0014】
なお、放出添加剤組成物の放出速度は、添加剤組成物の組成および/または形状によって加減される。例えば、放出添加剤組成物には、選択的に完全に溶解するような成分、あるいは弱油溶性であり、そのための耐用寿命の最後まで残っているような成分、またはそれらの組み合わせの、少なくとも一つの成分が含むことができる。放出速度はポリマーの分子量、グラフトの度合い(「DOG」)、ポリマーの含量、およびキャッピングアミンの種類などによっても加減される。通常、分散剤粘度指数向上剤について、分子量、DOG、およびポリマー含量が増加するのに伴い、潤滑剤組成物中への放出速度は遅くなると予想される。キャッピングアミンの選択もまた放出速度の要因となり得る。例えば、いくつかのキャッピングアミンは、架橋や水素結合をしたり、あるいは生成物が潤滑剤組成物中に溶解する速度を増加あるいは減少させる役割をするその他の可溶化作用を有するものもある。
【0015】
さらに添加剤組成物は、半固体、固体、またはそれらの組み合わせの形状である。非限定的例には、半固体状の分散剤粘度指数向上剤を含んだオイルフィルター、固体状の分散剤粘度指数向上剤と半固体状の酸化防止剤を含んだオイルフィルター、そして固体状の分散剤粘度指数向上剤と半固体状の過塩基性の清浄剤を含んだオイルフィルターが含まれる。当明細書で使用される「半固体」状とは、固体と液体の中間程度の剛性および粘度を有する成分を意味すると理解される。例えばこの一つの成分は室温(23℃)では液体あるいは自由流動体ではない。
【0016】
なお、添加剤組成物の放出速度は、組成物の硬度を変えることによって加減することができる。例えば半固体の添加剤組成物は、固体の添加剤組成物に比べて、潤滑剤組成物への放出速度がより速くなり得る。当技術分野の通常の技術を有する技術者は、希望の放出速度に基づいて添加剤組成物の形状を選択することができる。
【0017】
当添加剤組成物の希望の形状、希望の添加速度、希望の放出速度、希望の操作方法、および/または上述のいずれかの組み合わせに基づいた既知の任意の方法により、放出添加剤組成物が潤滑システムに添加される。ある実施態様では、添加剤組成物は半固体であり、注入ポンプ、あるいはオイルフィルター内の容器を使用することによって潤滑システムに添加される。別の実施態様では添加剤組成物は固体であり、オーガーを使用して潤滑油システム中に導入される。放出添加剤組成物は、潤滑剤組成物の寿命のような長時間にわたってゆっくりと潤滑剤組成物中に放出される、あるいは短時間で迅速に放出されるが潤滑剤組成物の寿命にわたって潤滑剤組成物中に残存するように企図されている。
【0018】
潤滑剤組成物には少量の放出添加剤組成物が含まれる。当明細書で使用されている「少量の」とは、潤滑剤組成物中の総重量に対し、約50重量%未満、例えば約40重量%未満、さらなる例では約30重量%未満であることを意味すると理解される。
【0019】
実施態様では、潤滑剤組成物は主要量の基油を含むこともできる。当基油は、例えば鉱油、植物油、パラフィン油、ナフテン油、芳香油、合成油、それらの誘導体、およびそれらの混合物のような天然油から選択することができる。当合成油は、アルファオレフィンのオリゴマー、エステル、フィッシャー・トロプシュ(Fischer−Tropsch)プロセスから派生するオイル、およびガス−ツー−リキッド原料の少なくとも一つを含むことができる。「主要量の」とは、約50%以上を意味すると理解される。
【0020】
本開示に基づき、放出添加剤組成物には少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤が含まれる。当分散剤粘度指数向上剤は、官能化されたオレフィンコポリマーである。ポリマー基質あるいはコポリマー基質は、エチレンとプロピレンから、あるいはエチレンと少なくとも一つのCからC23のアルファオレフィンの範囲内の高級オレフィンから生成される。
【0021】
ここで使用されるポリマーの非限定的例には、エチレンと、少なくとも一つのCからC23のアルファオレフィンのコポリマーが含まれる。ある実施態様では、エチレンとプロピレンのコポリマーが使用される。コポリマーを形成するためのプロピレンの代わりとして適切な、あるいはターポリマーを形成するためにエチレンおよびプロピレンと組み合わせて使用される、その他のアルファオレフィンに、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよびスチレン;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエンのようなα,ω.−ジオレフィン;4−メチルブテン−1,5−メチルペンテン−1、および6−メチルヘプテン−1のような分岐鎖アルファオレフィン;およびそれらの混合物が含まれる。
【0022】
しばしばインターポリマーとして表される、より複雑なポリマー基質を、三番目の成分を用いて生成することができる。インターポリマー基質の生成に通常使用される、この三番目の成分は、非共役ジエンおよび非共役トリエンから選択されたポリエンモノマーである。当非共役ジエン成分は、連鎖中に5から14の炭素原子を有するものである。例えば、当ジエンモノマーは、その構造中のビニル基の存在を特徴とし、また環式化合物およびビシクロ化合物を含むことができる。代表的なジエンに、1,4−ヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,5−ヘプタジエン、および1,6−オクタジエンが含まれる。インターポリマーの生成に、一つ以上のジエンの混合物を使用することができる。ある実施態様において、ターポリマーあるいはインターポリマー基質の生成用の非共役ジエンは1,4−ヘキサジエンである。
【0023】
当トリエン成分は、少なくとも二つの非共役二重結合と、約30までの炭素原子を連鎖内に有している。当発明のインターポリマーの生成に有用な典型的なトリエンには、1−イソプロピリデン−3α,4,7,7α.−テトラヒドロインデン、1−イソプロピリデンジシクロペンタジエン、ジヒドロ−イソジシクロペンタジエン、および2−(2−メチレン−4−メチル−3−ペンテニル)(2.2.1)ビシクロ−5−ヘプテンがある。
【0024】
エチレン−プロピレンまたは高級アルファオレフィンコポリマーには、約15モル%から80モル%のエチレンと約85モル%から20モル%のCからC23のアルファオレフィン、例えばモル比が35モル%から75モル%のエチレンと約65モル%から25モル%のCからC23のアルファオレフィン、また例えば比率が50モル%から70モル%のエチレンと50モル%から30モル%のCからC23のアルファオレフィン、またさらなる例としては比率が55モル%から65モル%のエチレンと45モル%から35モル%のCからC23のアルファオレフィンが含まれる。
【0025】
上記のポリマーのターポリマー変形には、約0.1モル%から10モル%の非共役ジエンあるいは非共役トリエンが含まれる。
【0026】
ポリマーおよびコポリマーという用語は、エチレンコポリマー、ターポリマー、またはインターポリマーを含むように総称的に使用される。これらの物質は、エチレンコポリマーの基本的な特性が著しく変わらない限り、その他の少量のオレフィンモノマーを含むことができる。
【0027】
エチレン−オレフィンコポリマー基質の形成に使用される重合反応は、慣用のチーグラー・ナッタ(Ziegler−Natta)あるいはメタロセン触媒システムの存在下で一般に行われる。この重合媒体は特定されておらず、当技術分野に精通した技術者に知られているように、溶液、スラリー、あるいは気相プロセスが含まれる。溶液重合を行う場合の溶媒は、アルファオレフィンの重合の反応条件下で液体であるような任意の適切な不活性炭化水素溶媒である。適切な炭化水素溶媒の非限定的な例には、ヘキサンのような、約5から約8の炭素原子を有する直鎖パラフィンが含まれる。芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエンなどのような単一のベンゼン核を有する芳香族炭化水素や、上述の直鎖パラフィン炭化水素および芳香族炭化水素と同様の範囲の沸点を有する飽和環状炭化水素が適切である。選択された溶媒は少なくとも一つの上述の炭化水素の混合物である。スラリー重合を行う場合、重合の為の液相は、例えば液体プロピレンである。ある実施態様において、当重合媒体には、触媒成分に支障をきたすような物質は含まれていない。
【0028】
ゲル透過クロマトグラフィーで決定された、コポリマー基質の数平均分子量、Mnは約700から約500,000、例えば約700から約100,000である。ポリマー基質の分子量分布、Mw/Mnは約15未満、例えば約1から約10である。
【0029】
エチレン系重合不飽和カルボン酸物質は、アシル化されたエチレンコポリマーを形成するため、次いで所定のポリマー骨格上にグラフトされる。エチレンコポリマーへのグラフト化に適したこれらのカルボン酸反応物質には、少なくとも一つのエチレン結合と、少なくとも一つの、例えば二つのカルボン酸あるいはその無水物基、または酸化あるいは加水分解によって当該のカルボキシル基に変換可能な極性基が含まれる。例えばカルボン酸反応物質は、アクリル系、メタクリル系、桂皮酸系、クロトン酸系、マレイン酸系、フマル酸系、およびイタコン酸系の反応物質の中から選択される。さらなる例として、カルボン酸反応物質は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、そしてこれらの二つ以上の混合物の中から選択される。たとえばその市場での入手の可能性および反応の容易さのため、無水マレイン酸あるいはその誘導体を使用することができる。不飽和エチレンコポリマーあるいはターポリマーの場合、イタコン酸あるいはその無水物は、フリーラジカルのグラフトプロセス中に架橋構造を形成する傾向が低いために使用される。
【0030】
エチレン系不飽和カルボン酸物質は、グラフト化されたポリマーに、一般的に反応物質1モルにつき一つあるいは二つのカルボキシル基を提供する。すなわちメタクリル酸メチルは1分子当り一つのカルボキシル基をグラフト化されたポリマーに提供し、一方無水マレイン酸は1分子当り二つのカルボキシル基をグラフト化されたポリマーに提供することができる。
【0031】
ポリマー100グラムにつき、約0.5グラムから約4.0グラムのカルボン酸試薬の量で、無水マレイン酸のようなカルボン酸試薬をポリマー骨格上にグラフト化することができ、また重量%で表すことができる。例えば、ポリマー骨格100gmにつき1.8gmの無水マレイン酸を含む生成物を形成するために、10,000モル重量のポリマーを十分な量の無水マレイン酸と反応させた場合、結果として得られるグラフト生成物は、DOGが1.8重量%で10,000モル重量のE−Pコポリマーである。偶然にも、この添加剤はポリマー分子一つにつき無水マレイン酸1.8分子を含んでいる。この無水マレイン酸とポリマーとの比率は、カルボン酸試薬とオレフィンコポリマーとの比率として記述することができる。二つ目の例で、もし20,000モル重量のE−PコポリマーをE−Pポリマー100gmにつき1.8gmの無水マレイン酸と反応させた場合、結果として得られる生成物はDOGが1.8重量%で20,000モル重量のE−Pコポリマーであり、カルボン酸試薬とオレフィンコポリマーの比率は3.6となる。三つ目の例で、DOGが1.8重量wt%で公称値70,000モル重量のE−Pポリマーは、カルボン酸試薬とオレフィンポリマーとの比率が12.6である。ある実施態様では、最小限で、ポリマー分子一つにつきカルボン酸試薬一分子が使用される。
【0032】
押し出し成形機またはインテンシブミキサーにおけるように、アシル化されたオレフィンコポリマーを形成するためのグラフト反応は、通常溶液中であるいはバルクで、フリーラジカル反応開始剤の助けを借りて行われる。この重合反応がヘキサン溶液中で行われる
場合、その開示が引用することにより本明細書に含まれている、米国特許第4,340,689号、4,670,515号および4,948,842号に記載されるようにヘキサン中でグラフト反応を行うことが経済的に適している。結果として得られるポリマー中間体は、その構造内にランダムにカルボン酸アシル化官能基を有していることを特徴とする。
【0033】
アシル化されたオレフィンコポリマーの形成のバルク法において、当オレフィンコポリマーを押し出し成形機、インテンシブミキサー、あるいは素練り機のようなゴムあるいはプラスチック加工装置に供給し、温度約150℃から約400℃まで加熱し、そしてエチレン系不飽和カルボン酸試薬とフリーラジカル反応開始剤を、別々に融解されたポリマーに共に送り込み、グラフト化を起こすことができる。引用することによって当明細書に含まれている米国特許第5,075,383号に従い、エチレンコポリマーのせん断およびグラフト化を起こすような混合条件で、当反応を任意的に行うことができる。当加工装置は、通常ポリマーの酸化防止、およびグラフト反応の未反応試薬や副生物の排出を助けるために、窒素パージされる。当加工装置内での滞留時間は、所望の度合いのアシル化をもたらし、またアシル化されたコポリマーの排気による精製を可能にするために十分なものである。アシル化されたコポリマーを溶解するために、鉱油あるいは合成潤滑油を排気段階の後に当加工装置に任意的に加えても良い。
【0034】
エチレン系不飽和カルボン酸物質のポリマー骨格へのグラフト化に使用されるフリーラジカル反応開始剤には、過酸化物、ヒドロペルオキシド、過エステル、およびアゾ化合物、例えば沸点が100℃以上で、グラフト化の温度領域内で熱分解してフリーラジカルを生じるような化合物が含まれる。これらのフリーラジカル反応開始剤の代表例に、アゾブチロニトリル、過酸化ジクミル、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ビス−t−ブチル過酸化物、および2,5−ジメチルヘキサ−3−イン−2,5−ビス−t−ブチル過酸化物などがある。当反応開始剤は、反応混合物の重量に対し、約0.005重量%から約1重量%の量で使用される。
【0035】
ハロゲン化反応、熱反応あるいは「エン」反応、またはそれらの混合のような、エチレン−オレフィンコポリマーとエチレン系不飽和カルボン酸試薬との反応を行なう、当技術分野で知られているその他の方法を、フリーラジカルグラフトプロセスの代わりに用いることができる。このような反応は、フリーラジカルや酸化の副産物の生成を避けるため、不活性環境下で、温度約250℃から約400℃で反応物質を加熱することにより、鉱油中であるいはバルクで容易に行うことができる。
【0036】
アシル化されたオレフィンコポリマーを、カップリング化合物や性能向上化合物と反応させることができる。当反応の順序は、どのような順序でも良いし、また同時でも良い。ある実施態様では、性能向上化合物をまずオイルあるいはアシル化されたオレフィンコポリマーの溶媒溶液と反応させ、続いてカップリング化合物が加えられる。反応物質は両方ともアシル化されたコポリマーのフリーカルボン酸官能基と結合するため、カップリング化合物と性能向上化合物との比率は、カップリング化合物および性能向上化合物とアシル化されたオレフィンコポリマーとの比率と同様、粘度指数の向上・分散性やその他の性能基準の所望のバランスを提供するための調整が可能である。
【0037】
本開示の目的のため、カップリング化合物は、一つ以上のアミン、チオール、および/または二つ以上のアシル化されたオレフィンコポリマーを連結または結合させるように、アシル化されたオレフィンコポリマーと反応することのできるヒドロキシ官能基を含んだ化合物であると定義される。
【0038】
ここで使用されているカップリング化合物には、有機ポリアミン、ポリアルコール、ポ
リヒドロキシまたはチオールアミン、アミド−アミンおよびアミノグアニジンが含まれ、ここで有機基は脂肪族、環状脂肪族、芳香族、複素環式、あるいはそれらの組み合わせであり、ここで当有機基には、これらに限定はされないが、−−O−−、−−N−−、−−S−−、−−Si−−および−−P−−のような基を含んだ有機ヘテロ原子を有することができる。
【0039】
有機ポリアミンの代表例としては、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジ−(1,3−プロピレン)トリアミン、トリ−(1,3−プロピレン)テトラミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、N,N−ジ−(2−アミノエチル)エチレンジアミン、N,N−ジ−(2−アミノエチル)プロピレンジアミン、N−(オレアリールアミノプロピル)1,3−プロピレンジアミン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、ポリアミンH、ポリアミン400、またはダウ・ポリアミンE−100などの商品名で市販されている、分子一つにつき5−7のN−原子を含むポリエチレンアミン混合物、およびジメチルチオトルエンジアミンの2,4−異性体と2,6−異性体の混合物である、ETHACURE(R)300(アルベマール社(Albemarle Corporation))のような芳香族ジアミン混合物が含まれる。
【0040】
当技術分野でデンドリマーとしても知られている、分岐または星状分岐ポリアミンを使用することもできる。このようなデンドリマーは、例えば、その開示が引用することにより本明細書に含まれている、米国特許第4,587,329号および4,737,550号、またPCT公開出願WO93/14147およびWO95/02008に記載されている。核の基および官能基により連結されている反復構造ユニットがデンドリマーを特徴付ける。反復ユニットは世代と呼ばれる。一般的に、アミン基によって連結され1級アミンにより終了している1から4世代を有するポリアミンデンドリマーが、特に有用である。一般的なポリアミンデンドリマーは、例えば1,4−ジアミノブタンを核として生成され、次にマイケル付加によってアクリロニトリルと反応し、それに続いてシアノ基の1級アミンへの水素化が起こる。二番目の世代とアクリロニトリルとの交互の反応とそれに続く水素化により、8つの分岐を有するポリアミンが生成される。有用な核分子の例として、これらに限定はされないが、アンモニア、ポリメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、線状および分岐ポリエチレンイミン、1,3,5−トリス−(アミノメチル)ベンゼンのような,ポリアミノアルキルアレーン、およびメラミン、そしてメラミントリス−(ヘキサメチレンジアミン)のような[メラミンの]誘導体が含まれる。世代の形成に特に有用な化合物は、α、β−不飽和カルボン酸化合物およびシアノ化合物、アジリジン、およびアリキレンジアミンである。
【0041】
その他の適切な有機ポリアミンには、nが約3から約59の値、例えば約10から約35の値であり、アルキレン基は独立して、約2から約7、例えば約2から約4の炭素原子を有する直鎖あるいは分岐鎖である、NH−アルキレン−(−−O-−アルキレン)−−NHを化学式とするポリオキシアルキレンポリアミンが含まれる。化学式R−(−アルキレン−(−−O-−アルキレン)−−NHのポリオキシアルキレンポリアミンも同様に、炭素原子の総数が約2から約60、例えば約2から約40であることを条件として、mは約1から約28の値であり、Rは炭素数10以下の多価飽和炭化水素ラジカルであり、このときR基上の置換基の数は値「a」で表され、これは3から6の数値である。当アルキレン基は独立して、約2から約7、例えば約2から約4の炭素原子を有する直鎖あるいは分岐鎖である。
【0042】
上述のポリオキシアルキレンポリアミンは、平均分子量が約200から約4000の間、例えば約400から約2000の、例えばポリオキシアルキレンジアミンやポリオキシアルキレントリアミンであり得る。ポリオキシアルキレンポリアミンには、平均分子量が約200から約2000のポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、およびポリオキシプロピレントリアミンが含まれる。当ポリオキシアルキレンポリアミンは、例えばハンツマン・ケミカル社(Huntsman Chemical Company)から「Jeffamines D−230、D−400、D−1000、D−2000、T−403」などの商品名で市販されており、入手が可能である。
【0043】
他の特に有用な有機ポリアミンの種類に、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)およびオリゴマーや、PACMと、PACMのオリゴマー分子一つにつき、平均して2から6またはそれ以上、例えば3から4のシクロヘキシル環を含んだそれらの異性体および同族体との混合物が含まれる。PACMオリゴマーの総合窒素含有量は、8重量%から16重量%、例えば10重量%から14重量%である。
【0044】
PACMオリゴマーは、成分の分別あるいは蒸留によって、メチレンジアニリンの高圧接触水素化により生成されたPACM含有生成物からの重油副産物あるいは残油として得ることができる。メチレンジアニリンの水素化と、その結果として得られた水素化生成物からのPACMオリゴマーの分離は、その全体が引用することによりその開示が当明細書に組み込まれている、米国特許第2,511,028号、2,606,924号、2,606,925号、2,606,928号、3,914,307号、3,959,374号、4,293,687号、4,394,523号、4,448,995号、および4,754,070号に開示されているプロセスを含む、既知の方法で行うことができる。
【0045】
当明細書において有用な適切なポリアルコールカップリング化合物には、少なくとも二つの反応性のヒドロキシ基を含んだポリオール化合物が含まれる。当ポリアルコールには通常、一つの分子につき、約100以下の炭素原子と、約2から10、例えば約3から8のヒドロキシ基が含まれる。これらのポリオールは、構造および化学組成において極めて多様性がある。例えばこれらには、所望に応じ、置換されているものや置換されていないもの、立体障害されているものやされていないもの、分岐鎖や直鎖のものなどがある。一般的なポリオールに、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコールのようなアルキレングリコール、およびジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコールのようなポリグリコール、及び他のアルキレングリコール、並びにアルキレンラジカルが約2から約8の炭素原子を含んでいる、ポリアルキレングリコールが含まれる。その他の有用なポリアルコールには、グリセロール、グリセロールのモノメチルエーテル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ヘキサンジオール、ピナコール、エリスリトール、アラビトール、ソルビトール、マニトールなどが含まれる。
【0046】
また、複素環ポリオールならびに、2,2,6,6−テトラメチロールシクロヘキサノール、テトラヒドロ−3,3,5,5−テトラキス−(ヒドロキシメチル)−4−ピラノール、テトラヒドロ−3,3,5−トリス−(ヒドロキシメチル)−5−メチル−4−ピラノールのような環状ポリ(メチロール)化合物も、本開示のカップリング化合物として使用することができる。この複素環ポリオールおよび環状ポリ(メチロール)化合物は、その開示の全体が当明細書に組み込まれている、米国特許第4,797,219号でより詳しく説明されている。
【0047】
ここで特に有用な有機ポリヒドロキシあるいはチオールアミンに、2−(2−アミノエチル)アミノエタノール、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジ−(2−ヒドロキシエチル)1,3−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン−
2−プロピレンオキシド(HMDA−2PO)、ヘキサメチレンジアミン−3−プロピレンオキシド(HMDA−3PO)、ヘキサメチレンジアミン−4−プロピレンオキシド(HMDA−4PO)、ジメチルアミノプロピルアミン−2−プロピレンオキシド(DMAPA−2PO)、およびヒドロキシ芳香族化合物(例えばフェノール、アルキル置換フェノールなど)、アルデヒド(例えばホルムアルデヒド、ホルマリン、クリオサル(clyoxal)など)、およびポリアルケニルポリアミン(例えばペンタエチレンヘキサミンおよびテトラエチレンペンタミン)から形成されるマンニッヒ縮合生成物が含まれる。適切なポリチオールアミンにはアミノメルカプトトリアゾールが含まれる。
【0048】
有機アミド−アミンには、エチレンジアミンとメチルアクリレート、または1,4−ブタンジアミンとメチルアクリレートのような、アルキレンジアミンとアルキルアクリレートの反応から得られる、線状および分岐の生成物が含まれる。米国特許第4,587,329号および4,737,550号に記載のアミド−アミンデンドリマーは、アルキレンジアミンとアルキルアクリレートまたはアクリルアミドとの交互の反応により生成される。アシル化されたオレフィンポリマーを結合するため、4以下の世代を有するアミド−アミンデンドリマーを使用することができる。
【0049】
さらに有用なのは、アミノグアニジン重炭酸塩(AGBC)のようなアミノグアニジンである。
【0050】
性能向上化合物には以下から選択されたポリアミン化合物が含まれる:
(a) 以下の化学式のN−アリールフェニレンジアミン:
【0051】
【化1】

【0052】
ここでRは水素、−−NH−アリール、−−NH−アリールアルキル、−−NH−アルキル、またはアルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、アルカリール、ヒドロキシアルキルあるいはアミノアルキルであることができる、約4から約24の炭素原子を有する分岐鎖あるいは直鎖ラジカルであり;Rは−−NH、CH−−(CH−−NH、CH−アリール−NHであり、nは1から10の値であり;またRは水素、アルキル、アルケニル、アルコキシル、アラルキル、約4から約24の炭素原子を有するアルカリールである;
(b) アミノチアゾール、アミノベンゾチアゾール、アミノベンゾチアジアゾール、およびアミノアルキルチアゾールから成る群から選択されたアミノチアゾール;
(c)以下の化学式で表されるアミノカルバゾール:
【0053】
【化2】

【0054】
ここでRおよびRは、同一であっても異なっても良く、また水素、アルキル、アルケニル、または約1から約14の炭素原子を有するアルコキシラジカルである;
(d) 以下の化学式で表されるアミノインドール:
【0055】
【化3】

【0056】
ここでRは水素、約1から約14の炭素原子を有するアルキルラジカルである;
(e) 以下の化学式で表されるアミノピロール:
【0057】
【化4】

【0058】
ここでRは約2から約6の炭素原子を有する二価のアルキレンラジカルであり、またRは水素または約1から約14の炭素原子を有するアルキルラジカルである;
(f) 以下の化学式で表されるアミノインダゾリノン:
【0059】
【化5】

【0060】
ここでRは水素あるいは約1から約14の炭素原子を有するアルキルラジカルである;
(g) 以下の化学式で表されるアミノメルカプトトリアゾール:
【0061】
【化6】

【0062】
ここでRは存在しないこともあり、またアルキル、アルケニル、アリールアルキル、およびアリールから成る群から選択された、C−C10の線状あるいは分岐炭化水素であることができる;
(h) 以下の化学式で表されるアミノペリミジン:
【0063】
【化7】

【0064】
ここでRは、水素、アルキル、または約1から約14の炭素原子を有するアルコキシルラジカルである;
(i) 1−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−(3−アミノプロピル)イミダゾールのようなアミノアルキルイミダゾール;および
(j) 4−(3−アミノプロピル)モルホリンのようなアミノアルキルモルホリン。
【0065】
当開示の一つの態様では、ここで使用されるポリアミンは、N−アリールフェニレンジアミン、例えばN−フェニルフェニレンジアミンであり、さらなる例ではN−フェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−1,3−フェニレンジアミン、およびN−フェニル−1,2−フェニレンジアミンである。
【0066】
当ポリアミンは、オレフィンコポリマーのカップリングおよび/またはゲル化を避けるように、1級アミン基を一つだけ含むことができる。
【0067】
アシル化されたオレフィンポリマーとカップリング化合物および/またはポリアミンのような性能向上化合物との間の反応は、不活性条件下で、天然あるいは合成潤滑油中で容易に行うことができる。ある実施態様では、界面活性剤は使用されない。約120℃から200℃、例えば140℃から180℃の温度で、水および/またはその他の低分子量の副生物を除去するための不活性ガスパージとともに、内容物がかくはんされる。反応時間は約30分から16時間の間で変化する。
【0068】
当組成物には、分散剤、非分散性の粘度指数向上剤、過塩基性の清浄剤、酸化防止剤、清浄剤、グラファイト、二硫化モリブデン、炭酸マグネシウム、シリカ、アルミナ、チタ
ニア、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ライム、粘土、ゼオライト、極圧(EP)添加剤、磨耗減少剤、消泡剤、摩擦減少剤、防湿剤、曇り点降下剤、流動点降下剤、鉱油および/またはそれらの合成油混合物、またそれらの組み合わせのような、他の添加剤が含まれることもある。これらの添加剤は単独で、又は組み合わせて使用することができる。これらの添加剤は、任意的な追加の添加剤パッケージ内などで、単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0069】
現代のモーターオイルのような潤滑剤組成物は、予め形成された添加剤パッケージと、精製基油あるいは合成基油ストックとを組み合わせることによって生成される。潤滑剤組成物には、様々な異なった潤滑添加剤パッケージが含まれ得る。潤滑添加剤は、液状の方が処理および測定しやすいため、通常は固体であるこれらの添加剤は少量の基油ストックで溶かすことができる。
【0070】
一つの実施態様では、開示された放出添加剤組成物を潤滑システムに加えることを含む、エンジンオイルの換油期限を改良する方法が開示される。
【実施例】
【0071】
例1 公称値66,000モル重量のエチレン−プロピレンポリマー
機械的なかくはん棒、空気注入チューブ、サーモカップル、及びコンデンサーを備えた丸底フラスコに、無水マレイン酸のグラフト度が1.99重量%の、エチレン-プロピレンコポリマー、アフトンケミカル社(Afton Chemical)のDSM製、PA−1275を300gm加える。この試薬を窒素ガスで覆い、160℃まで加熱する。激しくかくはんしながら、キャッピングアミン、n−フェニル−フェニレンジアミン(1.4gm)を反応物質に加える。当反応物質を160℃で1時間かくはんする。分析データ:%N=0.088重量%。当生成物は冷却により固体化した。
【0072】
例2 公称値20,000モル重量のエチレン−プロピレンポリマー
機械的なかくはん棒、空気注入チューブ、サーモカップル、及びコンデンサーを備えた丸底フラスコに、無水マレイン酸のグラフト度が2.1重量%の、20,000モル重量のエチレン−プロピレンコポリマー600gmを加える。この試薬を窒素ガスで覆い、160℃まで加熱する。激しくかくはんしながら、キャッピングアミン、n−フェニル−フェニレンジアミン(4.7gm)を反応物質に加える。当反応物質を160℃で2時間かくはんする。分析データ:%N=0.14重量%。当生成物は冷却により固体化した。
【0073】
例3 公称値10,000モル重量のエチレン−プロピレンポリマー
機械的なかくはん棒、空気注入チューブ、サーモカップル、及びコンデンサーを備えた丸底フラスコに、無水マレイン酸のグラフト度が1.76重量%の、10,000モル重量のエチレン−プロピレンコポリマー600gmを加える。この試薬を窒素ガスで覆い、160℃まで加熱する。激しくかくはんしながら、キャッピングアミン、n−フェニル−フェニレンジアミン(6.5gm)を反応物質に加える。当反応物質を160℃で2時間かくはんする。分析データ:%N=0.19重量%。当生成物は冷却により固体化した。
【0074】
例4 公称値20,000モル重量のエチレン−プロピレンポリマー
機械的なかくはん棒、空気注入チューブ、サーモカップル、及びコンデンサーを備えた丸底フラスコに、無水マレイン酸のグラフト度が2.1重量%の、20,000モル重量のエチレン−プロピレンコポリマー600gmを加える。この試薬を窒素ガスで覆い、160℃まで加熱する。激しくかくはんしながら、キャッピングアミン、アミノグアニジン重炭酸塩(3.5gm)を反応物質に加える。当反応物質を160℃で2時間、あるいは濃すぎて混ぜられなくなるまでかくはんする。分析データ:%N=0.267重量%。当生成物は冷却により固体化した。
【0075】
例5 公称値20,000モル重量のエチレン−プロピレンポリマー
機械的なかくはん棒、空気注入チューブ、サーモカップル、及びコンデンサーを備えた丸底フラスコに、無水マレイン酸のグラフト度が2.1重量%の、20,000モル重量のエチレン−プロピレンコポリマー600gmを加える。この試薬を窒素ガスで覆い、160℃まで加熱する。激しくかくはんしながら、キャッピングアミン、n−フェニル−フェニレンジアミン3.5gmをゆっくりと反応物質に加える。当反応物質を160℃で1時間かくはんする。アミノグアニジン重炭酸塩0.87gmを当反応物質にゆっくり加える。当反応物質を160℃で1時間かくはんする。分析データ:%N=0.216重量%。当生成物は冷却により固体化した。
【0076】
本明細書および添付の請求項の目的のため、特記されていない限り、数量やパーセンテージ、または比率を表す全ての数値、また明細書および請求項で使用されている他の数値はすべて、あらゆる場合において「約」という言葉で修飾されていると考えられる。従って、それに反する指定がない限り、明細書および添付の請求項で示されている数値パラメータは、本開示によって得ようとされている希望の特性によって変化し得る近似値である。少なくとも、また当請求項の範囲に対する均等の原則の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも報告された多くの有効数字と通常の四捨五入の適用を考慮に入れて解釈されるべきものである。
【0077】
本明細書および添付の請求項の英文において、「a」、「an」、および「the」などの単数形を表す単語が使用されていても、明白に、はっきりと単数であることが限定されていない限り、複数の意を含むことに注意されたい。従って、例えば「an antioxidant」という表現には二つ以上の異なった抗酸化剤が含まれる。また、ここで使用される「含む(include)」という表現およびその文法的な変化形は、リストに挙げられた項目が、それらに代用するあるいは付加され得る他の同様の項目を除外しないように、非限定的であることを意図したものである。
【0078】
特定の実施態様について説明してきたが、現時点で予見されていないあるいは予見できない代替案、変更、変化、改良点、および実質的な均等物が出願人あるいは当技術分野に精通した他の技術者に発見されることもある。従って、添付の請求項は、提出されたもの、そして修正される可能性のあるものとして、このような代替案、変更、変化、改良点、および実質的な均等物をすべて含むことを意図している。
【0079】
本発明の主な特徴及び態様を示せば以下のとおりである。
1.固体および半固体から選ばれた形状で存在する少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤を含んだ放出添加剤組成物。
2.上記1に記載の組成物であり、少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤が固体である組成物。
3.上記2に記載の組成物であり、少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤が半固体である組成物。
4.上記1に記載の組成物であり、少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤の数平均分子量が約700から約500,000である組成物。
5.上記1に記載の組成物であり、少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤の数平均分子量が約700から約100,000である組成物。
6.上記1に記載の組成物であり、少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤のグラフト化の度合いが約1.0から約3.0の間である組成物。
7.上記1に記載の組成物であり、少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤が、N−フェニル−フェニレンジアミンおよびアミノグアニジン重炭酸塩から選択されたアミンを含んでいる組成物。
8.上記1に記載の組成物であり、さらに酸化防止剤を含んでいる組成物。
9.上記8に記載の組成物であり、当酸化防止剤が半固体である組成物。
10.上記8に記載の組成物であり、当酸化防止剤がアルキル置換フェノールである組成物。
11.以下を含んだ潤滑剤組成物:
‐主要量の基油;および
‐少量の固体および半固体から選ばれた形状で存在する少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤を含んだ放出添加剤組成物。
12.上記11に記載の潤滑剤組成物であり、当基油が鉱油、植物油、パラフィン油、ナフテン油、芳香油、合成油、それらの誘導体、およびそれらの混合物から成る群から選択される潤滑剤組成物。
13.潤滑システムであり、上記1に記載の少なくとも一つの放出添加剤組成物が、少なくとも一つのフィルター、ドレンパン、オイルのバイパスループ、キャニスター、ハウジング、油槽、フィルターのポケット、フィルターのキャニスター、フィルターの網、バイパスシステムのキャニスター、およびバイパスシステムの網、その他に位置するシステム。
14.上記13に記載のシステムであり、少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤が半固体であるシステム。
15.上記13に記載のシステムであり、当放出添加剤組成物がフィルター内にあるシステム。
16.上記13に記載のシステムであり、当フィルターが少なくとも一つのポケットを含んでおり、また少なくとも一つのポケットがそれぞれ少なくとも一つの放出添加剤組成物を含んでいるシステム。
17.上記16に記載のシステムであり、少なくとも一つのポケットが各々異なった少なくとも一つの放出添加剤組成物を含んでいるシステム。
19.固体および半固体から選ばれた形状で存在する少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤を含んだ放出添加剤組成物を潤滑システムに加えることを含んだ、エンジンオイルの換油期限を改良する方法。
20.上記19に記載の方法であり、さらに酸化防止剤を含む方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体および半固体から選ばれた形状で存在する少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤を含んでなる放出添加剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤が固体である組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物であって、少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤が半固体である組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物であって、少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤の数平均分子量が約700から約500,000である組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物であって、少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤の数平均分子量が約700から約100,000である組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物であって、少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤のグラフト化の度合いが約1.0から約3.0の間である組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物であって、少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤が、N−フェニル−フェニレンジアミンおよびアミノグアニジン重炭酸塩から選択されたアミンを含んでなる組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物であって、さらに酸化防止剤を含んでなる組成物。
【請求項9】
潤滑システムであって、請求項1に記載の少なくとも一つの放出添加剤組成物が、少なくとも一つのフィルター、ドレンパン、オイルのバイパスループ、キャニスター、ハウジング、油槽、フィルターのポケット、フィルターのキャニスター、フィルターの網、バイパスシステムのキャニスター、およびバイパスシステムの網、その他に位置するシステム。
【請求項10】
固体および半固体から選ばれた形状で存在する少なくとも一つの分散剤粘度指数向上剤を含んでなる放出添加剤組成物を潤滑システムに加えることを含んでなる、エンジンオイルの換油期限を改良する方法。

【公開番号】特開2007−9203(P2007−9203A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173693(P2006−173693)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】