説明

添接板及び構造物の組立て方法

【課題】組立て部材同士の位置関係を現場対応にて微調整が可能な添接板及び該添接板を用いた構造物の組立て方法を提供する。
【解決手段】所定の組立て部材に位置合わせされる一方のパイロットホール2Lと、他の組立て部材に位置合わせされる他方のパイロットホール2Rとからなるパイロットホール対を備える添接板1であって、予め決められた規定孔芯間距離P1に設定されたパイロットホール対2L1,2R1、2L4,2R4、2L5,2R5及び2L8,2R8と、上記規定孔芯間距離P1と異なる変位孔芯間距離P2に設定されたパイロットホール対2L2,2R2、2L3,2R3、2L6,2R6及び2L7,2R7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添接板及び構造物の組立て方法に関するものであり、特に、橋梁を構成する組立て部材を組立てる際に用いられる添接板及び該添接板を用いた組立て方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁等の構造物を、複数の組立て部材を組立てることによって形成する場合、架設場所近くの製作ヤードにて個々の組立て部材を形成し、これらの組立て部材を架設場所に搬送して組立てている。
通常、個々の組立て部材は、僅かながら寸法誤差や、形状の歪み等を含んでいる。このため、このような組立て部材を組立てると、個々の組立て部材の寸法誤差や形状の歪み等が累積して全体として大きな寸法誤差や歪みが生じてしまう。そこで、大きな寸法誤差や歪みの発生を回避するために、いわゆる仮組立て作業が行われ、検査が行われる。このような仮組立て作業によって個々の組立て部材の寸法誤差や形状の歪みが検査され、個々の組立て部材の寸法誤差や形状の歪みが許容範囲内となるように調整される。
【0003】
ところで、仮組立て作業にて組立てられた組立て部材は、仮組立て作業後に解体される。そして、個々の組立て部材ごとに架設場所に搬送された後に再度組立てられる。ここで、仮組立て作業と同様に組立て部材を組立てられないと、取り付け誤差が生じて橋梁に寸法誤差や形状の歪みが生じてしまい、仮組立て作業にて行った調整が無駄となる。すなわち、架設場所における組立て作業において、仮組立て作業の再現性が担保される必要がある。
【0004】
このため、従来では、仮組立て作業において所定の組立て部材と他の組立て部材とをパイロットホールが形成された添接板を用いて仮固定し、架設場所において、同じ添接板のパイロットホールにドリフトピンを打って所定の組立て部材と他の組立て部材との位置を固定することによって、所定の組立て部材と他の組立て部材とが仮組立て作業と同様に位置合わせされるようにしている。
【非特許文献1】前田典昭,「ドリフトピン接合の性能」,林産試場報,第4巻,第2号,p.11−18
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、仮組立て場所と実際の架設場所とが異なる。このため、温度環境によって組立て部材が伸縮したり、設置地盤によって組立て部材の沈み込みが違ったりする等の変化が生じ、仮組立て場所と同様に組立てることが困難な場合がある。このような場合において、仮組立て場所と同様に組立てを再現しようとした場合には、天候状態が変化するのを待ったり、地盤改良を行ったり等の多大の労力と時間が必要となるため、現場対応にて臨機応変に、組立て部材同士のギャップ間を変更する等の対応を行うことが望まれる。ところが、添接板のパイロットホールは、仮組立て作業での組立て状態に対応して形成されている。このため、現場対応にて組立て部材の配置を意図的にずらしたい場合が生じても、少しでも添接板と組立て部材との位置関係がずれるとパイロットホールにドリフトピンを打って位置を固定することができなくなるため、意図的に組立て部材の位置関係をずらすことができなかった。
【0006】
また、近年は、各組立て部材の三次元座標値を計測し、当該計測値に基づいてシミュレーションを行うことで、仮組立てを行わずに組立て部材の形状を調整する方法が提案されている。このような場合であっても、シミュレーション段階に添接板のパイロットホールの位置が決められてしまうため、現場対応にて組立て部材の位置関係を意図的にずらすことはできない。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、現場架設据付誤差、現場溶接での変形による仮組形状の再現化など組立て部材同士の位置関係を現場対応にて微調整が可能な添接板及び該添接板を用いた構造物の組立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の添接板は、所定の組立て部材に位置合わせされる一方のパイロットホールと、他の組立て部材に位置合わせされる他方のパイロットホールとからなるパイロットホール対を備える添接板であって、予め決められた規定孔芯間距離に設定されたパイロットホール対と、上記規定孔芯間距離と異なる変位孔芯間距離に設定されたパイロットホール対とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような特徴を有する本発明の添接板によれば、孔芯間距離が異なるパイロットホール対を複数備えている。このため、所定の組立て部材と他の組立て部材との位置関係をずらした場合であっても、所定の組立て部材と他の組立て部材との間の距離に応じた孔芯間距離のパイロットホール対を用いることによって、ドリフトピンを打って所定の組立て部材と他の組立て部材との位置を固定することができる。
【0010】
また、本発明の添接板においては、金属材料によって形成されているという構成を採用することができる。
【0011】
また、本発明の添接板においては、上記組立て部材が、橋梁の構成部材であるという構成を採用することができる。
【0012】
また、本発明の構造物の組立て方法は、複数の組立て部材によって構成される構造物の組立て方法であって、予め決められた規定孔芯間距離に設定されたパイロットホール対と、上記規定孔芯間距離と異なる変位孔芯間距離に設定されたパイロットホール対と、を備える添接板を用い、所定の組立て部材と他の組立て部材との位置関係が上記規定孔芯間距離に対してずれた場合に、上記変位孔芯間距離を用いて上記所定の組立て部材と上記他の組立て部材とを固定することを特徴とする。
【0013】
このような本発明の構造物の組立て方法によれば、規定孔芯間距離に設定されたパイロットホール対と変位孔芯間距離(規定孔芯間距離に対してずれて設定された孔芯間距離)を備えた添接板を用いて、所定の組立て部材と他組立て部材との位置が固定される。そして、所定の組立て部材と他の組立て部材との位置関係が規定孔芯間距離に対してずれた場合に、孔芯間距離を用いて、所定の組立て部材と他の組立て部材との位置が固定される。
このように、本発明の構造物の組立て方法によれば、所定の組立て部材と他の組立て部材との位置関係に応じた孔芯間距離のパイロットホール対を用いることによって、ドリフトピンを打って所定の組立て部材と他の組立て部材との位置を固定することができる。
【0014】
また、本発明の構造物の組立て方法においては、上記添接板によって上記所定の組立て部材と上記他の組立て部材とのギャップ間距離が固定されるという構成を採用することができる。
【0015】
また、本発明の構造物の組立て方法においては、上記所定の組立て部材と上記他の組立て部材とが溶接接合される場合に、溶接接合される箇所と異なる箇所同士が上記添接板によって接続されることで、上記所定の組立て部材と上記他の組立て部材とが固定されるという構成を採用することもできる。
【0016】
また、本発明の構造物の組立て方法においては、上記所定の組立て部材と上記他の組立て部材とが溶接接合される場合に、溶接接合される箇所同士が上記添接板によって接続されることで、上記所定の組立て部材と上記他の組立て部材とが固定されるという構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、所定の組立て部材と他の組立て部材との位置関係が所定の孔芯間距離に対してずれた場合であっても、孔芯間距離の異なるパイロットホール対を用いて所定の組立て部材と他の組立て部材とを固定することができる。よって、組立て部材同士の位置関係を現場対応にて微調整することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る添接板及び構造物の組立て方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本第1実施形態の添接板1の平面図である。
添接板1は、金属材料から形成された板材であり、図1に示すように、パイロットホール2が複数形成されている。なお、本実施形態において各パイロットホール2の孔径は24.5mmとされている。
【0020】
パイロットホール2は、図1に示すように、添接板1の一方側の端部11寄り(紙面左方向)に形成された左群2Lと、添接板1の他方側の端部12寄り(紙面右方向)に形成された右群2Rとに分けて構成されている。そして、複数のブロック(組立て部材)を組立てることによって橋梁(構造物)を組立てる場合には、左群2Lのパイロットホール2が所定のブロックに対して位置合わせされ、右群2Rのパイロットホール2が他のブロックに対して位置合わせされる。
【0021】
また、左群2Lのパイロットホール2の各々は、右群2Rのパイロットホール2の各々と対を構成している。本実施形態においては、左群2Lのうち最も添接板1の右側端部12寄りでかつ上段に位置するパイロットホール2L1が、右群2Rのうち最も添接板1の左側端部11寄りでかつ上段に位置するパイロットホール2R1と対を成している。
また、左群2Lのうち最も添接板1の右側端部12寄りでかつ下段に位置するパイロットホール2L2が、右群2Rのうち最も添接板1の左側端部11寄りでかつ下段に位置するパイロットホール2R2と対を成している。
また、左群2Lのうち二番目に添接板1の右側端部12寄りでかつ上段に位置するパイロットホール2L3が、右群2Rのうち二番目に添接板1の左側端部11寄りでかつ上段に位置するパイロットホール2R3と対を成している。
また、左群2Lのうち二番目に添接板1の右側端部12寄りでかつ下段に位置するパイロットホール2L4が、右群2Rのうち二番目に添接板1の左側端部11寄りでかつ下段に位置するパイロットホール2R4と対を成している。
また、左群2Lのうち三番目に添接板1の右側端部12寄りでかつ上段に位置するパイロットホール2L5が、右群2Rのうち三番目に添接板1の左側端部11寄りでかつ上段に位置するパイロットホール2R5と対を成している。
また、左群2Lのうち三番目に添接板1の右側端部12寄りでかつ下段に位置するパイロットホール2L6が、右群2Rのうち三番目に添接板1の左側端部11寄りでかつ下段に位置するパイロットホール2R6と対を成している。
また、左群2Lのうち最も添接板1の左側端部11寄りでかつ上段に位置するパイロットホール2L7が、右群2Rのうち最も添接板1の右側端部12寄りでかつ上段に位置するパイロットホール2R7と対を成している。
また、左群2Lのうち最も添接板1の左側端部11寄りでかつ下段に位置するパイロットホール2L8が、右群2Rのうち最も添接板1の右側端部12寄りでかつ下段に位置するパイロットホール2R8と対を成している。
【0022】
そして、本実施形態においては、パイロットホール対2L1,2R1の孔芯間距離は、規定孔芯間距離P1に設定されている。また、パイロットホール対2L2,2R2の孔芯間距離は、パイロットホール2L2とパイロットホール2R2とが各々1mm添接板1の中央寄りに形成されることによって、規定孔芯間距離P1よりも2mm短い変位孔芯間距離P2に設定されている。なお、ここで言う規定孔芯間距離P1とは、橋梁を構成するブロックを、いわゆる仮組立てをした場合に規定される所定のブロックと他のブロックとの隙間に合わせて設定される値であり、所定のブロックと他のブロックとを上記隙間で配置した際に、パイロットホール2L1,2R1が、各ブロックに形成された孔径24.5mmのブロック孔に合致する距離である。また、仮組立てを行わず、各ブロックの三次元座標値を計測し、当該計測値に基づいてシミュレーションを行うことで、ブロックの形状を調整する方法を採用する場合には、シミュレーションにて規定される所定のブロックと他のブロックとの隙間に合わせて規定孔芯間距離が設定される。
【0023】
そして、本実施形態においては、パイロットホール対2L4,2R4、パイロットホール対2L5,2R5及びパイロットホール対2L8,2R8が規定孔芯間距離P1に設定されている。また、パイロットホール対2L3,2R3、パイロットホール対2L6,2R6及びパイロットホール対2L7,2R7が変位孔芯間距離P2に設定されている。
【0024】
すなわち、本実施形態においては、添接板1は、仮組立てあるいはシミュレーションによって予め決められた規定孔芯間距離P1に設定されたパイロットホール対2L1,2R1、2L4,2R4、2L5,2R5及び2L8,2R8と、規定孔芯間距離P1と異なる変位孔芯間処理P2に設定されたパイロットホール対2L2,2R2、2L3,2R3、2L6,2R6及び2L7,2R7とを備えている。
【0025】
次に、このように構成された添接板1を用いた橋梁の組立て方法について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は、全てのパイロットホール対が規定孔芯間距離P1に設定された従来の添接板1を用いて橋梁の組立て方法について説明する模式図であり、図3が、本実施形態の添接板1を用いた橋梁の組立て方法について説明する模式図である。
【0026】
橋梁を組立てる場合には、上述のように、左群2Lのパイロットホール2が一方のブロックB1に対して位置合わせされ、右群2Rのパイロットホール2が他方のブロックB2に対して位置合わせされる。そして、パイロットホール2のうち、一部(例えば半数)にドリフトピンが打ち込まれる。この結果、ドリフトピンが、パイロットホール2を挿通して各ブロックB1,B2に形成されたブロック孔に打ち込まれ、ブロックB1とブロックB2の位置関係すなわち隙間が固定される。その後、残りのパイロットホール2に直径が22mmのボルトを挿通して固定することによって、各ブロックB1,B2とが確実に固定される。
【0027】
ここで、図2(a)に示すように、各ブロックB1,B2の隙間が仮組立てあるいはシミュレーションにて設定された距離Gである場合には、従来の添接板3のパイロットホール4(直径24.5mm)とブロックB1,B2のブロック孔A(直径24.5mm)とが完全一致する。このため、半数のパイロットホール4に対してドリフトピン5を挿入してブロックB1,B2の位置関係を固定し、その後、残りのパイロットホール4にボルト6を挿入して固定することができる。
しかしながら、温度環境の変化や設置地盤の影響によって、ブロックの形状等が変化し、現場対応にてブロックB1とブロックB2の隙間を距離Gよりも短い距離G−dに合わせる必要が生じた場合に、従来の添接板3のパイロットホール4では、全てのパイロットホール対が規定孔芯間距離P1に設定されているため、パイロットホール4が図2(b)に示すように、パイロットホール4とブロックB1,B2のブロック孔Aとが一致しなくなる。例えば、予め決められた隙間の距離Gが10mmであり、この隙間を現場対応にて8mmに変更しようとした場合には、ブロックB1,B2が互いに1mmずつ近寄ることとなるため、パイロットホール4とブロック孔Aとが1mmずれることとなる。このような場合であっても、パイロットホール4(直径24.5mm)よりも小さなボルト6(直径22mm)をパイロットホール4に挿入することはできるが、ドリフトピン5(直径24.5mm)をパイロットホール4に挿入することができなくなる。したがって、ボルト挿入前のブロックB1,B2の位置合わせを行うことができず、結果、ブロックB1,B2の隙間を現場対応にて8mmに変更することはできなかった。
【0028】
一方、本実施形態の添接板1によれば、図3(a)に示すように、各ブロックB1,B2の隙間が仮組立てあるいはシミュレーションにて設定された距離Gである場合には、添接板1のパイロットホール対のうち、規定孔芯間距離P1に設定されたパイロットホール対2L1,2R1、2L4,2R4、2L5,2R5及び2L8,2R8とブロックB1,B2のブロック孔Aとが完全に一致する。また、変位孔芯間処理P2に設定されたパイロットホール対2L2,2R2、2L3,2R3、2L6,2R6及び2L7,2R7とブロックB1,B2のブロック孔Aとが1mmずれて合う。このため、パイロットホール対2L1,2R1、2L4,2R4、2L5,2R5及び2L8,2R8に対してドリフトピン5を挿入してブロックB1,B2の位置関係を固定し、その後、パイロットホール対2L2,2R2、2L3,2R3、2L6,2R6及び2L7,2R7にボルト6を挿入して固定することができる。
また、ブロックB1,B2の隙間を現場対応にて8mmに変更しようとした場合には、ブロックB1,B2が互いに1mmずつ近寄ることとなるため、図3(b)に示すように、変位孔芯間処理P2に設定されたパイロットホール対2L2,2R2、2L3,2R3、2L6,2R6及び2L7,2R7とブロックB1,B2のブロック孔Aとが完全に一致する。また、規定孔芯間距離P1に設定されたパイロットホール対2L1,2R1、2L4,2R4、2L5,2R5及び2L8,2R8とブロックB1,B2のブロック孔Aとが1mmずれて合う。このため、パイロットホール対2L2,2R2、2L3,2R3、2L6,2R6及び2L7,2R7に対してドリフトピン5を挿入してブロックB1,B2の位置関係を固定し、その後、パイロットホール対2L1,2R1、2L4,2R4、2L5,2R5及び2L8,2R8にボルト6を挿入して固定することができる。
【0029】
このように、本実施形態の添接板1及び該添接板1を用いた橋梁の組立て方法によれば、添接板1が、仮組立てあるいはシミュレーションによって予め決められた規定孔芯間距離P1に設定されたパイロットホール対2L1,2R1、2L4,2R4、2L5,2R5及び2L8,2R8と、規定孔芯間距離P1と異なる変位孔芯間処理P2に設定されたパイロットホール対2L2,2R2、2L3,2R3、2L6,2R6及び2L7,2R7とを備えている。このため、ブロックB1,B2間の隙間を変更した場合であっても、少なくとも一部のパイロットホール2がブロックB1,B2のブロック孔Aと完全に一致するため、パイロットホール2にドリフトピン5を挿入してブロックB1,B2の位置関係を固定することができる。よって、現場対応にて、ブロックB1,B2の隙間を微調整することが可能となる。
【0030】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0031】
上記第1実施形態では、添接板1を用いてブロックB1とブロックB2との隙間を固定する組立て方法について説明した。これに対して本実施形態においては、所定箇所同士が溶接されるブロックの位置合わせを添接板1を用いて行う組立て方法について説明する。
【0032】
図4は、本実施形態における組立て方法について説明するための模式図である。この図に示すように、本実施形態における組立て方法では、ブロックB3,B4の下部同士が添接板1によって接続されている。そして、ブロックB3,B4の上部には、溶接部Xが形成されており、下部同士が添接板1によって接続された状態で、溶接部X同士が溶接される。これによって、ブロックB3とブロックB4とが溶接接合される。
【0033】
すなわち、本実施形態では、ブロックB3とブロックB4とが溶接接合される場合に、溶接接合される箇所である溶接部Xと異なる箇所同士が添接板1によって接続されることで、ブロックB3とブロックB4とが固定され、その後、溶接される。
【0034】
このような本実施形態の組立て方法でも添接板1を用いているため、上記第1実施形態と同様に、現場対応にてブロックB3とブロックB4との位置関係を微調整することができる。
【0035】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について説明する。なお、本第3実施形態の説明において、上記第1あるいは第2実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0036】
上記第1実施形態では、添接板1を用いてブロックB1とブロックB2との隙間を固定する組立て方法について説明した。また、上記第2実施形態では、溶接箇所と異なる箇所にてブロックB3,B4を添接板1にて接続することによってブロックB3,B4の位置合わせを行う組立て方法について説明した。これに対して、本実施形態では、溶接箇所にてブロック同士を添接板1にて接続することによってブロックの位置合わせを行う組立て方法について説明する。
【0037】
図5は、本実施形態における組立て方法について説明するための模式図である。この図に示すように、本実施形態における組立て方法では、ブロックB5,B6の上部同士が添接板1によって接続されている。そして、ブロックB5,B6の上部同士が溶接接合される。
【0038】
すなわち、本実施形態では、ブロックB5とブロックB6とが溶接接合される場合に、溶接接合される箇所同士が添接板1によって接続されることで、ブロックB5とブロックB6とが固定され、その後、溶接される。
【0039】
このような本実施形態の組立て方法でも添接板1を用いているため、上記第1実施形態と同様に、現場対応にてブロックB5とブロックB6との位置関係を微調整することができる。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る添接板及び構造物の組立て方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態においては、規定孔芯間距離を10mm、変位孔芯間距離を8mmとして説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。また、変位孔芯間距離の規定孔芯間距離に対する変位量は、全てのパイロットホール対において一定である必要はなく、異なる変位量に設定された変位孔芯間距離のパイロットホイール対があっても良い。例えば、添接板は、上記実施形態のように規定孔芯間距離に対して2mm短くされた変位孔芯間距離のパイロットホール対と、規定孔芯間距離に対して1mm短くされた変位孔芯間距離のパイロットホール対との両方を備えていても良い。これによって、現場対応にて、ブロックを1mmあるいは2mm近づけて配置することが可能となる。
なお、予め、現場対応にて変更可能なブロックの変位量を検証しておき、この検証結果にて許容される範囲で、変位孔芯間距離の規定孔芯間距離に対する変位量を設定することが好ましい。これによって、許容される変位量を外れてブロックが位置合わせされることを防止することができる。
【0042】
また、上記実施形態においては、ブロックを組立てることによって橋梁を組立てる方法について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、組立て部材を組立てることによって構造物を組立てる際に用いられる添接板、及び、この添接板を用いた組立て方法全般に適用することができる。例えば、本発明を、建屋の組立て方法等に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態における添接板の平面図である。
【図2】従来の添接板を用いた橋梁の組立て方法を説明するための模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態における添接板を用いた橋梁の組立て方法を説明するための模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態における添接板を用いた橋梁の組立て方法を説明するための模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態における添接板を用いた橋梁の組立て方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0044】
B1〜B6……ブロック(組立て部材)、P1……規定孔芯間距離、P2……変位孔芯間距離、1……添接板、2,2L1〜2L8,2R1〜2R8……パイロットホール、2L……差群(パイロットホール群)、2R……右群(パイロットホール群)、5……ドリフトピン、6……ボルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の組立て部材に位置合わせされる一方のパイロットホールと、他の組立て部材に位置合わせされる他方のパイロットホールとからなるパイロットホール対を備える添接板であって、
予め決められた規定孔芯間距離に設定されたパイロットホール対と、前記規定孔芯間距離と異なる変位孔芯間距離に設定されたパイロットホール対とを備えることを特徴とする添接板。
【請求項2】
金属材料によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の添接板。
【請求項3】
前記組立て部材は、橋梁の構成部材であることを特徴とする請求項1または2記載の添接板。
【請求項4】
複数の組立て部材によって構成される構造物の組立て方法であって、
予め決められた規定孔芯間距離に設定されたパイロットホール対と、前記規定孔芯間距離と異なる変位孔芯間距離に設定されたパイロットホール対と、を備える添接板を用い、
所定の組立て部材と他の組立て部材との位置関係が前記規定孔芯間距離に対してずれた場合に、前記変位孔芯間距離を用いて前記所定の組立て部材と前記他の組立て部材とを固定することを特徴とする構造物の組立て方法。
【請求項5】
前記添接板によって前記所定の組立て部材と前記他の組立て部材とのギャップ間距離が固定されることを特徴とする請求項4記載の構造物の組立て方法。
【請求項6】
前記所定の組立て部材と前記他の組立て部材とが溶接接合される場合に、溶接接合される箇所と異なる箇所同士が前記添接板によって接続されることで、前記所定の組立て部材と前記他の組立て部材とが固定されることを特徴とする請求項4記載の構造物の組立て方法。
【請求項7】
前記所定の組立て部材と前記他の組立て部材とが溶接接合される場合に、溶接接合される箇所同士が前記添接板によって接続されることで、前記所定の組立て部材と前記他の組立て部材とが固定されることを特徴とする請求項4記載の構造物の組立て方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−45371(P2008−45371A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224125(P2006−224125)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】