清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備及びその運転方法
【課題】スタッカークレーンの移動する空間を区画する壁面の清掃を容易に行うことができる技術を提供すること。
【解決手段】壁面に沿って移動し、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを備えたスタッカークレーン搬送設備において、前記壁面を清掃するための清掃手段が設けられたスタッカークレーンを、前記清掃手段により壁面が清掃されるように動作させるプログラムを記憶する記憶部と、前記プログラムを読み出してスタッカークレーンを清掃モードとして動作させる手段と、を備えるようにスタッカークレーン搬送設備を構成することにより、壁面を容易に短時間で清掃でき、工場の稼動効率の向上に寄与できると共に、また高所の清掃作業に伴う作業者の危険も回避することができる。
【解決手段】壁面に沿って移動し、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを備えたスタッカークレーン搬送設備において、前記壁面を清掃するための清掃手段が設けられたスタッカークレーンを、前記清掃手段により壁面が清掃されるように動作させるプログラムを記憶する記憶部と、前記プログラムを読み出してスタッカークレーンを清掃モードとして動作させる手段と、を備えるようにスタッカークレーン搬送設備を構成することにより、壁面を容易に短時間で清掃でき、工場の稼動効率の向上に寄与できると共に、また高所の清掃作業に伴う作業者の危険も回避することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に沿って移動し、壁面に形成された受け渡し口との間で被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを備えた搬送設備及び当該クレーンの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医薬品の製造工場においては、粉体原料に対して秤量、造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)及び検査などの夫々異なる処理を行う処理部を備えた多数の処理室が複数階に亘って、且つ各階において横方向に複数並んで設けられている。粉体原料は、外部から搬入され、開封されて所定の搬送用容器内に移されて中間保管部に保管され、ここから各処理室に順次搬送されると共に、一の処理室で処理を終えた処理物は一旦中間保管部に保管された後、次の処理室に搬送されるといったシーケンスフローにより順次処理が行われて医薬品が製造される。
【0003】
前記中間保管部、各処理室間の容器の搬送はスタッカークレーンを介して行われる。即ち工場内には壁面で囲まれた偏平直方体状のスタッカークレーンの移動空間である通路(「スタッカーシャフト」などと呼ばれる)が形成されており、壁面には各処理室あるいは中間保管部との間で容器の受け渡しを行うための、ドアにより開閉される受け渡し口が形成されている。
【0004】
前記スタッカークレーンは、移動空間の底面に形成された水平軌道に沿って移動する基部と、この基部に設けられ、上下に移動するリフトを備えている。このリフトには前記移動空間の幅方向に移動し、各受け渡し口を介して処理室内に進入することができるように構成された搬送台が設けられている。各処理室は、例えばその処理室の処理部と当該処理室に進入した前記搬送台との間で容器の受け渡しを行う搬送機構を備えており、当該搬送機構を介してスタッカークレーンと前記処理部との間で容器の受け渡しを行うことができるように構成される。
【0005】
ところで通常、各処理室は医薬品原料に異物が混入することを防ぐために所定の清浄度に保たれたクリーンルームとして構成される必要があり、各処理室の汚染を防ぐために、それらと連通する既述の通路も例えば定期的に清掃を行うことにより清浄に保たれる必要がある。しかし通路の床から天井までの高さは例えば10〜20m程度にもなる場合があり、壁面の清掃作業は、例えば外部から作業台を通路に搬入するなどして、その通路の高さに応じた足場を形成し、その足場に作業員が上って清掃を行う必要があった。
【0006】
このため足場形成用の部材の搬入、足場の組み立て、解体などの手間を要し、作業全体が大掛かりになる。そしてスタッカークレーンが停止すると工場全体の稼動が停止するため、清掃作業によって稼動効率が低下する。
【0007】
なお特許文献1にはスタッカークレーンの下部に清掃装置である硬質ゴム等で作られたスクレーパを取り付け、スタッカークレーンの走行路床面に供給された洗浄水をスタッカークレーンの走行を利用して清掃する技術が記載されているが、既述の壁面の清掃に関しては何ら示唆されていない。
【特許文献1】特開平5−318292(段落0013)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、スタッカークレーンの移動する空間を区画する壁面の清掃を容易に行うことができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備は、壁面に沿って移動し、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを備えたスタッカークレーン搬送設備において、
前記壁面を清掃するための清掃手段が設けられたスタッカークレーンを、前記清掃手段により壁面が清掃されるように動作させるプログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラムを読み出してスタッカークレーンを清掃モードとして動作させる手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記スタッカークレーン搬送設備は、例えば前記複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うようにスタッカークレーンを動作させるための搬送モードと前記プログラムを読み出してスタッカークレーンを動作させる清掃モードとの間でモードを選択できるモード選択部を備えている。前記清掃手段は、スタッカークレーンのリフトに着脱できるように構成されていてもよい。また前記清掃手段は、前記壁面に押圧された状態で当該壁面を拭き掃除する拭浄部を備えていてもよく、この場合、前記拭浄部は、例えば清掃手段に設けられた伸縮自在な機構により前記壁面に押圧されている。なお清掃手段は、壁面の付着物を吸引するための吸引部を備えていてもよい。
【0011】
本発明の清掃機能を有するスタッカークレーンの運転方法は、壁面に沿って移動し、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを運転する方法において、
前記複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うようにスタッカークレーンを動作させる工程と、
前記壁面を清掃するための清掃手段が設けられたスタッカークレーンを、前記清掃手段により壁面が清掃されるように動作させる工程と、を含むことを特徴とし、前記清掃手段はスタッカークレーンに装着する工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明はスタッカークレーンに清掃器具を設けて、この清掃器具により例えば壁面全体が清掃されるようにスタッカークレーンを制御する清掃モードを用意し、スタッカークレーンの動作を利用して壁面の清掃を行えるようにしている。従って壁面を容易に短時間で清掃でき、工場の稼動効率の向上に寄与できると共に、また高所の清掃作業に伴う作業者の危険も回避している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明のスタッカークレーン搬送設備を適用した医薬品製造工場1の一例を示す概略斜視図である。図中鎖線部は工場1の外壁11であり、この外壁11内は例えば床12により上下2層に区画されている。また外壁11内にはスタッカークレーンシャフトと呼ばれる、後述のスタッカークレーンが移動する偏平な直方体状の通路(移動空間)13が設けられており、この通路13は、工場1内の上下各層に跨り、横方向(図中X軸方向)に沿って、各層を前後方向(図中Y軸方向)に分けるように設けられており、その周囲は壁(壁面)14に囲まれている。
【0014】
各層において通路13(壁14)を挟んで左右両側又は片側には、医薬品原料に対して所定の処理を行う、多数の処理室や中間保管室が、当該通路13の長さ方向に沿って設けられている。これらの処理室は、搬送用容器Cが搬送される搬送領域を含み、例えば医薬品原料の秤量及び秤量した原料の容器Cへの充填や、その容器C中の医薬品原料の造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)、成形物(製品)の検査などの医薬品原料及びその原料から作られた製品に対して夫々異なる処理を行う処理部(不図示)を備えている。なお図が煩雑になるのを防ぐために記載を省略しているが、各層の処理室は壁により互いに区画され、所定の清浄度に保たれている。
【0015】
図中15は、前記容器Cが載置される載置部であり、各処理室において通路13付近に設けられている。この載置部15は、例えば、間隔をおいて配列された逆U字型に折り曲げられた2本の対となる角材等により構成されており、それらの上部に前記容器Cが載置される。また各処理室は、医薬品原料あるいは中間品に対して夫々所定の処理を行う不図示の処理部と、当該処理部と載置部15との間で容器Cを受け渡すための不図示の搬送機構等とを備えていてもよい。
【0016】
前記搬送機構によりスタッカークレーン2から搬送用容器Cを受け取って処理部に受け渡し、また処理部で処理された処理物の入った容器Cをスタッカークレーン2に受け渡すことができる。なお実際には一の処理部は2階に上下に分かれていて、上の階(層)で受け取った原料あるいは中間品を下の階に落下させ、下の階にて処理物を容器に移してスタッカークレーンに戻すシステムを採用する場合がある。
【0017】
通路を区画する壁14には、被搬送物(搬送用容器)を受け渡すための受け渡し口が形成され、この受け渡し口は例えば横方向に開閉自在なドア16により構成される。これらの各ドア16により壁14内の通路13と各処理室とが仕切られている。各ドア16は、後述するようにスタッカークレーンと処理室との間で容器Cの受け渡しが行われる場合及び清掃器具をクレーンに取り付けるために通路に搬送する場合を除いて閉じられている。
【0018】
次に図2を参照しながら、通路13内を移動するスタッカークレーン2の構成を説明する。図中21はクレーン2の基部であり、基部21上には、各々間隔をおいて天井へ向かう2本の柱部22,22が設けられている。図中23は、柱部22に沿って昇降自在なリフトであり、リフト23上には容器Cが載置される搬送台24が設けられている。搬送台24は受け渡し手段として構成され、通路13の前後方向(図中Y軸方向)に移動する。搬送台24は、処理室のドア16が開くと前記載置部15を構成する角材と角材との間へ進入し、この搬送台24の動作とリフト23の昇降との組み合わせにより、載置部15と当該搬送台24との間で容器Cの受け渡しが行われる。
【0019】
図中25は、通路13の床に設けられたレールであり、通路13の長さ方向に沿って敷設されている。図中26は、前記基部21に設けられた車輪であり、この車輪26を介して基部21は、リフト23及び搬送台24を伴い、通路13をレール25に沿って横方向に移動する。
【0020】
続いて図3を参照しながら通路13を清掃する清掃手段である清掃器具3について説明する。この清掃器具3は、基台31を備え、この基台31を介して前記スタッカークレーン2に着脱自在に構成されており、この基台31には当該基台31を厚さ方向に貫くように孔30が穿孔されている。この孔30については後述する。なお清掃器具3は、クレーン2に装着される場合を除いて、例えば所定の処理室に収納されている。
【0021】
この基台31上には鉛直に伸びる縦枠部材及び縦枠部材間に設けられる横枠部材により構成された支持枠部32が設けられている。図3においてX軸方向を左右方向とすると、支持枠部32には左右対称に4本ずつ計8本のメインアーム33の一端が水平軸周りに回動自在に取り付けられており、各メインアームは、支持枠部32の上段及び下段から2本ずつ、前後で対となるように左右方向(X軸方向)へ伸びている。各メインアーム33の他端側にはこのヒンジ34を介してサブアーム35の一端が、鉛直軸周りに回動できるように取り付けられている。
【0022】
各サブアーム35の他端は、清掃器具3の前後左右で互いに対となるように設けられた計4つの縦長の清掃用パッド36の裏面に接続されており、これら清掃用パッド36に対して水平軸周りに回動自在に構成されている。従って清掃用パッド36が垂直姿勢を維持した状態でメインアーム33をXZ平面に沿って、上方に向かうように折り畳み、清掃器具3の前後の長さを小さくすることができるように構成されている。
【0023】
次に図4も参照してこれらのアーム33,35の構成について説明する。図4(a)はアーム33の先端側(他端側)を示しており、図4(b)は、図4(a)中鎖線で示した断面を表している。これらの図に示すようにメインアーム33とサブアーム35との間にはバネ37が設けられており、このバネ37により左右の各清掃用パッド36は外側へ向けて付勢される。なおバネ37の代わりに、バネ以外の他の弾性体やエアシリンダーなどの伸縮自在な機構を設けてパッド36を外側に向けて付勢するように構成してもよい。
【0024】
清掃用パッド36にはその表面全体を覆うように、通路13の左右の壁14を拭く例えば布などにより構成される拭浄部38が設けられており、後述のように清掃器具3がスタッカークレーン2に装着された際に左右の清掃用パッド36,36が、通路13を前後方向(図中Y軸方向)に広がり、拭浄部38,38を通路13の前後の壁14に押圧する。
【0025】
清掃器具3のスタッカークレーン2の取り付け方法を説明する。先ず清掃器具3が収納されている処理室のドア16を開き、上記のようにメインアーム33を畳んだ状態で清掃器具3を処理室から通路13へ搬入し、清掃器具3をスタッカークレーン2の柱部22,22の間に通して、クレーン2の搬送台24に載置する(図5(a))。図6に示すように搬送台24には前記清掃器具3の基台31の孔30と対応するように孔25が設けられており、孔30,25の内側にはねじが切られ、これらの各ねじに対応するねじ39を当該孔25,30に挿入することによりリフト23上に清掃器具3の基台31を固着する。その後、図5(b)、(c)に示すようにメインアーム33を通路31の左右に展開させて左右の清掃用パッド36に設けられた拭浄部38,38の間隔がスタッカークレーン2の左右の長さよりも長くなるように調整する。
【0026】
またスタッカークレーン搬送設備は、当該クレーン2の動作を制御する例えばコンピュータにより構成される制御部4を備えている。図7を用いてこの制御部4の構成を説明する。図中41はデータバスであり、図中42,43は夫々データバス41に接続されるCPU、ワークメモリである。図中44は、プログラム格納部であり、このプログラム格納部44には、容器Cを所定の医薬品の製造工程に従って、各処理室に所定の順番で受け渡すことができるように、スタッカークレーン2の各部の動作を制御する命令が組まれた搬送モード用プログラム45及び通路13の壁面の清掃を行うようにスタッカークレーン2の各部の動作を制御する命令が組まれた清掃モード用プログラム46を備えている。
【0027】
なおプログラム45,46は、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカードなどの記憶媒体から制御部4のプログラム格納部44にインストールされる。
【0028】
前記データバス41には例えば表示部及び操作部を兼用したモード選択部である操作画面47が接続されており、この画面47には例えば「通常運転モード(搬送モード)」及び「清掃モード」のいずれかを選択できるように構成され、工場1の作業員が画面中の例えばソフトスイッチを操作することによりモードの選択が行われる。そして選択されたモードに対応するプログラム45またはプログラム46がCPU42により読み出されて各ステップが実行される。
【0029】
続いて上記のスタッカークレーン2の作用について、先ず医薬品の製造を行うために各処理室間に容器Cを搬送する場合について説明する。始めに工場1の作業員が操作画面47を介して通常運転モードを選択すると、中間保管部の原料が搬送用容器Cを介して順次処理室に運ばれる。
【0030】
例えばスタッカークレーン2が、中間保管部あるいは処理室のドア16の前に移動すると共にクレーン2のリフト23が、そのドア16に対応する高さに移動した後、ドア16が開かれ、搬送台24がその処理室に向けて移動し、搬送台24に容器Cが受け渡される(図8(a))。なお図8においては載置部15の表示は省略している。
【0031】
その後、容器Cを保持したまま搬送台24が後退し、容器Cがリフト23上に移動すると、前記ドア16が閉じられ、スタッカークレーン2が、次に容器Cの医薬品原料に対して処理を行う処理室の前に移動すると共にリフト23がその処理室のドア16の前に移動する(図8(b))。続いてそのドア16が開かれ、搬送台24が前記処理室に向けて移動し、処理室の載置部15に容器Cが受け渡される(図8(c))。その後、搬送台24が後退すると共にドア16が閉じられ、容器Cは処理室内の搬送機構により処理部へ搬送され、その内部の医薬品原料が所定の処理を受ける。このようにスタッカークレーン2は、予めプログラムされた搬送経路に従って順次、各処理室に容器Cを搬送する。
【0032】
続いてスタッカークレーン2により通路13の清掃を行う場合について説明する。先ず例えば作業員が手動で清掃器具3が置かれている処理室のドア16を開いて清掃器具3を処理室から通路13に搬送し、スタッカークレーン2に清掃器具3を取り付け、前記ドアを閉じる。その後、作業員が操作画面47を介して清掃モードを選択すると、図9(a)に示すようにクレーン2が通路13の一端に移動すると共に清掃用パッド36の拭浄部38の上端が通路13の天井に接するようにリフト23が上昇し、その後クレーン2が通路13の他端へ向けて移動する。
【0033】
図12に示すように通路13の移動中に左右の拭浄部38,38は、通路13の前後の壁14に押し付けられ、当該壁14を拭きながら移動し、図中右側の拭浄部38が通路13の他端(右端)に位置すると、図9(b)に示すようにリフト23が既に清掃が終わった領域の下方へ移動する。その後、図10(a)に示すようにクレーン2が通路13の一端に向けて移動し、このクレーン2の移動に伴って拭浄部38が、壁14におけるその高さ位置に応じた領域を拭きながら移動して、図中左側の拭浄部38が通路13の一端(左端)に位置するとクレーン2の移動が停止する。
【0034】
その後も、図11(a),(b)に示すようにクレーン2が、通路13を一端から他端、他端から一端に移動する度にリフト23が次第に下降して、拭浄部38が通路13の壁14を拭き取りながら移動し、例えばリフト23がクレーン2の基部21の直上まで下降した状態でクレーン2が通路13の一端から他端または他端から一端に移動した後、クレーン2は例えば清掃器具3が収納されていた処理室の前に移動し、リフト23がその処理室のドア16の前に移動して停止する。
【0035】
上記実施形態によればスタッカークレーン2に清掃器具3を装着して、この清掃器具3の清掃パッド36に設けられた拭浄部38により通路13の前後の壁(壁面)14が清掃されるようにスタッカークレーン2を制御する清掃モードを用意した制御部を設けており、スタッカークレーン2の動作を利用して壁面14の清掃を行えるようにしている。従って壁面14を容易に短時間で清掃でき、工場1の稼動効率の向上に寄与できると共に、また高所の清掃作業に伴う作業者の危険も回避することができる。
【0036】
また清掃器具3は、搬送モードを選択する際にはクレーン2から外しておけるので拭浄部38の磨耗を抑えることができる。また制御部4に接続される操作画面47を設け、この操作画面47から搬送モードまたは清掃モードを構成するプログラム45,46の選択ができるため作業者がモードの選択を容易に行うことができる。
【0037】
上記実施形態において清掃モード時に拭浄部38がドア16と壁14との段差に入り込まないように、通路13の一端及び他端でリフト23の位置が調整されているが、例えばクレーン2が横方向に移動する途中、拭浄部38がドア16に差し掛かる手前で一端停止し、リフト23の昇降により拭浄部38の高さ位置が調整された後に再度クレーン2の横方向への移動が再開されるようにプログラムが組まれていてもよい。
【0038】
なお清掃手段としては例えば図13に示すような通路13の天井を拭くものであってもよい。通路13の上側には例えばその長さ方向に沿って不図示の、スタッカークレーン2をガイドするレールが設けられており、図中51はそのレールを挟んで左右両側の天井を拭くための清掃用パッドであり、52はその表面に設けられた拭浄部である。清掃用パッド51はL字型部材53を介してリフト23に接続されており、クレーン2が横方向に移動する際に拭浄部52が通路13の天井を拭きながら移動するようになっている。また清掃手段としては搬送モード選択時にリフト23から外されること無く、常時リフト23に設けられている構成であってもよい。
【0039】
また清掃手段としては清掃器具3のように通路13の壁14を拭いて清掃する拭浄部を備えたものに限られず、壁14の付着物を吸引する吸引機構を備えたものであってもよい。さらに上記実施形態は医薬品製造工場について説明したが、本発明は他の製品を製造する工場や搬送体を各搬送室に載置する倉庫などにも適用できる。また処理室(搬送室)は互いに区画されていなくてもよい。
【0040】
なお清掃手段は図14に示すように構成されてもよい。この清掃手段である清掃器具6は既述の清掃器具3と略同様に構成されており、その各部において清掃器具3と同じ構成を有するものには同一の符号を付している。清掃器具3と異なる点として、清掃用パッド36の上側、下側の左右両端には夫々鉛直軸周りに回転するローラー61が設けられており、このローラー61は、拭浄部38が壁14とドア16との間の段差に落ち込んだときに、拭浄部62にその段差を乗り越えさせる役割を持つが詳しくは後述する。また各パッド36には例えば表面が布により構成された拭浄部62が設けられており、この拭浄部62は既述の拭浄部38同様にバネ37により壁14に押圧される。
【0041】
この清掃器具6は、清掃器具3と同様にスタッカークレーン2に装着され、同様の手順で通路13の清掃を行う。清掃時におけるクレーン2の移動中に拭浄部62が、壁14とドア16とのなす段差に落ち込むと、図15(a)に示すように拭浄部62は、前記ドア16の表面に沿って移動する。その後、段差にローラー61がぶつかると、図15(b)に示すようにローラー61が回転すると共にバネ37が収縮することで拭浄部62は段差を乗り越え(図15(c))、引き続き壁14を拭きながら移動を続ける(図15(d))。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のスタッカークレーンが設けられる工場の斜視図である。
【図2】本発明のスタッカークレーンの斜視図である。
【図3】前記スタッカークレーンに装着される清掃器具の斜視図である。
【図4】前記清掃器具に設けられるアームの構成を示す説明図である。
【図5】前記スタッカークレーンに前記清掃器具が取り付けられる様子を示した説明図である。
【図6】清掃器具が取り付けられたスタッカークレーンを示した説明図である。
【図7】前記スタッカークレーンに設けられる制御部の構成図である。
【図8】前記スタッカークレーンにより容器が搬送される様子を示した説明図である。
【図9】前記スタッカークレーンにより通路の清掃が行われる工程を示した工程図である。
【図10】前記スタッカークレーンにより通路の清掃が行われる工程を示した工程図である。
【図11】前記スタッカークレーンにより通路の清掃が行われる工程を示した工程図である。
【図12】前記スタッカークレーンにより通路の清掃が行われる様子を示した説明図である。
【図13】他の清掃器具を装着したスタッカークレーンの構成を示した斜視図である。
【図14】他の清掃器具の斜視図である。
【図15】清掃時に前記清掃器具の拭浄部が、段差を乗り越える様子を示した説明図である。
【符号の説明】
【0043】
13 通路
14 壁
15 載置部
16 ドア
2 スタッカークレーン
21 基部
22 柱部
23 リフト
24 搬送台
3 清掃器具
36 清掃用パッド
38 拭浄部
4 制御部
44 プログラム格納部
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に沿って移動し、壁面に形成された受け渡し口との間で被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを備えた搬送設備及び当該クレーンの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医薬品の製造工場においては、粉体原料に対して秤量、造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)及び検査などの夫々異なる処理を行う処理部を備えた多数の処理室が複数階に亘って、且つ各階において横方向に複数並んで設けられている。粉体原料は、外部から搬入され、開封されて所定の搬送用容器内に移されて中間保管部に保管され、ここから各処理室に順次搬送されると共に、一の処理室で処理を終えた処理物は一旦中間保管部に保管された後、次の処理室に搬送されるといったシーケンスフローにより順次処理が行われて医薬品が製造される。
【0003】
前記中間保管部、各処理室間の容器の搬送はスタッカークレーンを介して行われる。即ち工場内には壁面で囲まれた偏平直方体状のスタッカークレーンの移動空間である通路(「スタッカーシャフト」などと呼ばれる)が形成されており、壁面には各処理室あるいは中間保管部との間で容器の受け渡しを行うための、ドアにより開閉される受け渡し口が形成されている。
【0004】
前記スタッカークレーンは、移動空間の底面に形成された水平軌道に沿って移動する基部と、この基部に設けられ、上下に移動するリフトを備えている。このリフトには前記移動空間の幅方向に移動し、各受け渡し口を介して処理室内に進入することができるように構成された搬送台が設けられている。各処理室は、例えばその処理室の処理部と当該処理室に進入した前記搬送台との間で容器の受け渡しを行う搬送機構を備えており、当該搬送機構を介してスタッカークレーンと前記処理部との間で容器の受け渡しを行うことができるように構成される。
【0005】
ところで通常、各処理室は医薬品原料に異物が混入することを防ぐために所定の清浄度に保たれたクリーンルームとして構成される必要があり、各処理室の汚染を防ぐために、それらと連通する既述の通路も例えば定期的に清掃を行うことにより清浄に保たれる必要がある。しかし通路の床から天井までの高さは例えば10〜20m程度にもなる場合があり、壁面の清掃作業は、例えば外部から作業台を通路に搬入するなどして、その通路の高さに応じた足場を形成し、その足場に作業員が上って清掃を行う必要があった。
【0006】
このため足場形成用の部材の搬入、足場の組み立て、解体などの手間を要し、作業全体が大掛かりになる。そしてスタッカークレーンが停止すると工場全体の稼動が停止するため、清掃作業によって稼動効率が低下する。
【0007】
なお特許文献1にはスタッカークレーンの下部に清掃装置である硬質ゴム等で作られたスクレーパを取り付け、スタッカークレーンの走行路床面に供給された洗浄水をスタッカークレーンの走行を利用して清掃する技術が記載されているが、既述の壁面の清掃に関しては何ら示唆されていない。
【特許文献1】特開平5−318292(段落0013)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、スタッカークレーンの移動する空間を区画する壁面の清掃を容易に行うことができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備は、壁面に沿って移動し、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを備えたスタッカークレーン搬送設備において、
前記壁面を清掃するための清掃手段が設けられたスタッカークレーンを、前記清掃手段により壁面が清掃されるように動作させるプログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラムを読み出してスタッカークレーンを清掃モードとして動作させる手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記スタッカークレーン搬送設備は、例えば前記複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うようにスタッカークレーンを動作させるための搬送モードと前記プログラムを読み出してスタッカークレーンを動作させる清掃モードとの間でモードを選択できるモード選択部を備えている。前記清掃手段は、スタッカークレーンのリフトに着脱できるように構成されていてもよい。また前記清掃手段は、前記壁面に押圧された状態で当該壁面を拭き掃除する拭浄部を備えていてもよく、この場合、前記拭浄部は、例えば清掃手段に設けられた伸縮自在な機構により前記壁面に押圧されている。なお清掃手段は、壁面の付着物を吸引するための吸引部を備えていてもよい。
【0011】
本発明の清掃機能を有するスタッカークレーンの運転方法は、壁面に沿って移動し、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを運転する方法において、
前記複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うようにスタッカークレーンを動作させる工程と、
前記壁面を清掃するための清掃手段が設けられたスタッカークレーンを、前記清掃手段により壁面が清掃されるように動作させる工程と、を含むことを特徴とし、前記清掃手段はスタッカークレーンに装着する工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明はスタッカークレーンに清掃器具を設けて、この清掃器具により例えば壁面全体が清掃されるようにスタッカークレーンを制御する清掃モードを用意し、スタッカークレーンの動作を利用して壁面の清掃を行えるようにしている。従って壁面を容易に短時間で清掃でき、工場の稼動効率の向上に寄与できると共に、また高所の清掃作業に伴う作業者の危険も回避している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明のスタッカークレーン搬送設備を適用した医薬品製造工場1の一例を示す概略斜視図である。図中鎖線部は工場1の外壁11であり、この外壁11内は例えば床12により上下2層に区画されている。また外壁11内にはスタッカークレーンシャフトと呼ばれる、後述のスタッカークレーンが移動する偏平な直方体状の通路(移動空間)13が設けられており、この通路13は、工場1内の上下各層に跨り、横方向(図中X軸方向)に沿って、各層を前後方向(図中Y軸方向)に分けるように設けられており、その周囲は壁(壁面)14に囲まれている。
【0014】
各層において通路13(壁14)を挟んで左右両側又は片側には、医薬品原料に対して所定の処理を行う、多数の処理室や中間保管室が、当該通路13の長さ方向に沿って設けられている。これらの処理室は、搬送用容器Cが搬送される搬送領域を含み、例えば医薬品原料の秤量及び秤量した原料の容器Cへの充填や、その容器C中の医薬品原料の造粒、篩過、錠剤への成形(打錠)、成形物(製品)の検査などの医薬品原料及びその原料から作られた製品に対して夫々異なる処理を行う処理部(不図示)を備えている。なお図が煩雑になるのを防ぐために記載を省略しているが、各層の処理室は壁により互いに区画され、所定の清浄度に保たれている。
【0015】
図中15は、前記容器Cが載置される載置部であり、各処理室において通路13付近に設けられている。この載置部15は、例えば、間隔をおいて配列された逆U字型に折り曲げられた2本の対となる角材等により構成されており、それらの上部に前記容器Cが載置される。また各処理室は、医薬品原料あるいは中間品に対して夫々所定の処理を行う不図示の処理部と、当該処理部と載置部15との間で容器Cを受け渡すための不図示の搬送機構等とを備えていてもよい。
【0016】
前記搬送機構によりスタッカークレーン2から搬送用容器Cを受け取って処理部に受け渡し、また処理部で処理された処理物の入った容器Cをスタッカークレーン2に受け渡すことができる。なお実際には一の処理部は2階に上下に分かれていて、上の階(層)で受け取った原料あるいは中間品を下の階に落下させ、下の階にて処理物を容器に移してスタッカークレーンに戻すシステムを採用する場合がある。
【0017】
通路を区画する壁14には、被搬送物(搬送用容器)を受け渡すための受け渡し口が形成され、この受け渡し口は例えば横方向に開閉自在なドア16により構成される。これらの各ドア16により壁14内の通路13と各処理室とが仕切られている。各ドア16は、後述するようにスタッカークレーンと処理室との間で容器Cの受け渡しが行われる場合及び清掃器具をクレーンに取り付けるために通路に搬送する場合を除いて閉じられている。
【0018】
次に図2を参照しながら、通路13内を移動するスタッカークレーン2の構成を説明する。図中21はクレーン2の基部であり、基部21上には、各々間隔をおいて天井へ向かう2本の柱部22,22が設けられている。図中23は、柱部22に沿って昇降自在なリフトであり、リフト23上には容器Cが載置される搬送台24が設けられている。搬送台24は受け渡し手段として構成され、通路13の前後方向(図中Y軸方向)に移動する。搬送台24は、処理室のドア16が開くと前記載置部15を構成する角材と角材との間へ進入し、この搬送台24の動作とリフト23の昇降との組み合わせにより、載置部15と当該搬送台24との間で容器Cの受け渡しが行われる。
【0019】
図中25は、通路13の床に設けられたレールであり、通路13の長さ方向に沿って敷設されている。図中26は、前記基部21に設けられた車輪であり、この車輪26を介して基部21は、リフト23及び搬送台24を伴い、通路13をレール25に沿って横方向に移動する。
【0020】
続いて図3を参照しながら通路13を清掃する清掃手段である清掃器具3について説明する。この清掃器具3は、基台31を備え、この基台31を介して前記スタッカークレーン2に着脱自在に構成されており、この基台31には当該基台31を厚さ方向に貫くように孔30が穿孔されている。この孔30については後述する。なお清掃器具3は、クレーン2に装着される場合を除いて、例えば所定の処理室に収納されている。
【0021】
この基台31上には鉛直に伸びる縦枠部材及び縦枠部材間に設けられる横枠部材により構成された支持枠部32が設けられている。図3においてX軸方向を左右方向とすると、支持枠部32には左右対称に4本ずつ計8本のメインアーム33の一端が水平軸周りに回動自在に取り付けられており、各メインアームは、支持枠部32の上段及び下段から2本ずつ、前後で対となるように左右方向(X軸方向)へ伸びている。各メインアーム33の他端側にはこのヒンジ34を介してサブアーム35の一端が、鉛直軸周りに回動できるように取り付けられている。
【0022】
各サブアーム35の他端は、清掃器具3の前後左右で互いに対となるように設けられた計4つの縦長の清掃用パッド36の裏面に接続されており、これら清掃用パッド36に対して水平軸周りに回動自在に構成されている。従って清掃用パッド36が垂直姿勢を維持した状態でメインアーム33をXZ平面に沿って、上方に向かうように折り畳み、清掃器具3の前後の長さを小さくすることができるように構成されている。
【0023】
次に図4も参照してこれらのアーム33,35の構成について説明する。図4(a)はアーム33の先端側(他端側)を示しており、図4(b)は、図4(a)中鎖線で示した断面を表している。これらの図に示すようにメインアーム33とサブアーム35との間にはバネ37が設けられており、このバネ37により左右の各清掃用パッド36は外側へ向けて付勢される。なおバネ37の代わりに、バネ以外の他の弾性体やエアシリンダーなどの伸縮自在な機構を設けてパッド36を外側に向けて付勢するように構成してもよい。
【0024】
清掃用パッド36にはその表面全体を覆うように、通路13の左右の壁14を拭く例えば布などにより構成される拭浄部38が設けられており、後述のように清掃器具3がスタッカークレーン2に装着された際に左右の清掃用パッド36,36が、通路13を前後方向(図中Y軸方向)に広がり、拭浄部38,38を通路13の前後の壁14に押圧する。
【0025】
清掃器具3のスタッカークレーン2の取り付け方法を説明する。先ず清掃器具3が収納されている処理室のドア16を開き、上記のようにメインアーム33を畳んだ状態で清掃器具3を処理室から通路13へ搬入し、清掃器具3をスタッカークレーン2の柱部22,22の間に通して、クレーン2の搬送台24に載置する(図5(a))。図6に示すように搬送台24には前記清掃器具3の基台31の孔30と対応するように孔25が設けられており、孔30,25の内側にはねじが切られ、これらの各ねじに対応するねじ39を当該孔25,30に挿入することによりリフト23上に清掃器具3の基台31を固着する。その後、図5(b)、(c)に示すようにメインアーム33を通路31の左右に展開させて左右の清掃用パッド36に設けられた拭浄部38,38の間隔がスタッカークレーン2の左右の長さよりも長くなるように調整する。
【0026】
またスタッカークレーン搬送設備は、当該クレーン2の動作を制御する例えばコンピュータにより構成される制御部4を備えている。図7を用いてこの制御部4の構成を説明する。図中41はデータバスであり、図中42,43は夫々データバス41に接続されるCPU、ワークメモリである。図中44は、プログラム格納部であり、このプログラム格納部44には、容器Cを所定の医薬品の製造工程に従って、各処理室に所定の順番で受け渡すことができるように、スタッカークレーン2の各部の動作を制御する命令が組まれた搬送モード用プログラム45及び通路13の壁面の清掃を行うようにスタッカークレーン2の各部の動作を制御する命令が組まれた清掃モード用プログラム46を備えている。
【0027】
なおプログラム45,46は、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカードなどの記憶媒体から制御部4のプログラム格納部44にインストールされる。
【0028】
前記データバス41には例えば表示部及び操作部を兼用したモード選択部である操作画面47が接続されており、この画面47には例えば「通常運転モード(搬送モード)」及び「清掃モード」のいずれかを選択できるように構成され、工場1の作業員が画面中の例えばソフトスイッチを操作することによりモードの選択が行われる。そして選択されたモードに対応するプログラム45またはプログラム46がCPU42により読み出されて各ステップが実行される。
【0029】
続いて上記のスタッカークレーン2の作用について、先ず医薬品の製造を行うために各処理室間に容器Cを搬送する場合について説明する。始めに工場1の作業員が操作画面47を介して通常運転モードを選択すると、中間保管部の原料が搬送用容器Cを介して順次処理室に運ばれる。
【0030】
例えばスタッカークレーン2が、中間保管部あるいは処理室のドア16の前に移動すると共にクレーン2のリフト23が、そのドア16に対応する高さに移動した後、ドア16が開かれ、搬送台24がその処理室に向けて移動し、搬送台24に容器Cが受け渡される(図8(a))。なお図8においては載置部15の表示は省略している。
【0031】
その後、容器Cを保持したまま搬送台24が後退し、容器Cがリフト23上に移動すると、前記ドア16が閉じられ、スタッカークレーン2が、次に容器Cの医薬品原料に対して処理を行う処理室の前に移動すると共にリフト23がその処理室のドア16の前に移動する(図8(b))。続いてそのドア16が開かれ、搬送台24が前記処理室に向けて移動し、処理室の載置部15に容器Cが受け渡される(図8(c))。その後、搬送台24が後退すると共にドア16が閉じられ、容器Cは処理室内の搬送機構により処理部へ搬送され、その内部の医薬品原料が所定の処理を受ける。このようにスタッカークレーン2は、予めプログラムされた搬送経路に従って順次、各処理室に容器Cを搬送する。
【0032】
続いてスタッカークレーン2により通路13の清掃を行う場合について説明する。先ず例えば作業員が手動で清掃器具3が置かれている処理室のドア16を開いて清掃器具3を処理室から通路13に搬送し、スタッカークレーン2に清掃器具3を取り付け、前記ドアを閉じる。その後、作業員が操作画面47を介して清掃モードを選択すると、図9(a)に示すようにクレーン2が通路13の一端に移動すると共に清掃用パッド36の拭浄部38の上端が通路13の天井に接するようにリフト23が上昇し、その後クレーン2が通路13の他端へ向けて移動する。
【0033】
図12に示すように通路13の移動中に左右の拭浄部38,38は、通路13の前後の壁14に押し付けられ、当該壁14を拭きながら移動し、図中右側の拭浄部38が通路13の他端(右端)に位置すると、図9(b)に示すようにリフト23が既に清掃が終わった領域の下方へ移動する。その後、図10(a)に示すようにクレーン2が通路13の一端に向けて移動し、このクレーン2の移動に伴って拭浄部38が、壁14におけるその高さ位置に応じた領域を拭きながら移動して、図中左側の拭浄部38が通路13の一端(左端)に位置するとクレーン2の移動が停止する。
【0034】
その後も、図11(a),(b)に示すようにクレーン2が、通路13を一端から他端、他端から一端に移動する度にリフト23が次第に下降して、拭浄部38が通路13の壁14を拭き取りながら移動し、例えばリフト23がクレーン2の基部21の直上まで下降した状態でクレーン2が通路13の一端から他端または他端から一端に移動した後、クレーン2は例えば清掃器具3が収納されていた処理室の前に移動し、リフト23がその処理室のドア16の前に移動して停止する。
【0035】
上記実施形態によればスタッカークレーン2に清掃器具3を装着して、この清掃器具3の清掃パッド36に設けられた拭浄部38により通路13の前後の壁(壁面)14が清掃されるようにスタッカークレーン2を制御する清掃モードを用意した制御部を設けており、スタッカークレーン2の動作を利用して壁面14の清掃を行えるようにしている。従って壁面14を容易に短時間で清掃でき、工場1の稼動効率の向上に寄与できると共に、また高所の清掃作業に伴う作業者の危険も回避することができる。
【0036】
また清掃器具3は、搬送モードを選択する際にはクレーン2から外しておけるので拭浄部38の磨耗を抑えることができる。また制御部4に接続される操作画面47を設け、この操作画面47から搬送モードまたは清掃モードを構成するプログラム45,46の選択ができるため作業者がモードの選択を容易に行うことができる。
【0037】
上記実施形態において清掃モード時に拭浄部38がドア16と壁14との段差に入り込まないように、通路13の一端及び他端でリフト23の位置が調整されているが、例えばクレーン2が横方向に移動する途中、拭浄部38がドア16に差し掛かる手前で一端停止し、リフト23の昇降により拭浄部38の高さ位置が調整された後に再度クレーン2の横方向への移動が再開されるようにプログラムが組まれていてもよい。
【0038】
なお清掃手段としては例えば図13に示すような通路13の天井を拭くものであってもよい。通路13の上側には例えばその長さ方向に沿って不図示の、スタッカークレーン2をガイドするレールが設けられており、図中51はそのレールを挟んで左右両側の天井を拭くための清掃用パッドであり、52はその表面に設けられた拭浄部である。清掃用パッド51はL字型部材53を介してリフト23に接続されており、クレーン2が横方向に移動する際に拭浄部52が通路13の天井を拭きながら移動するようになっている。また清掃手段としては搬送モード選択時にリフト23から外されること無く、常時リフト23に設けられている構成であってもよい。
【0039】
また清掃手段としては清掃器具3のように通路13の壁14を拭いて清掃する拭浄部を備えたものに限られず、壁14の付着物を吸引する吸引機構を備えたものであってもよい。さらに上記実施形態は医薬品製造工場について説明したが、本発明は他の製品を製造する工場や搬送体を各搬送室に載置する倉庫などにも適用できる。また処理室(搬送室)は互いに区画されていなくてもよい。
【0040】
なお清掃手段は図14に示すように構成されてもよい。この清掃手段である清掃器具6は既述の清掃器具3と略同様に構成されており、その各部において清掃器具3と同じ構成を有するものには同一の符号を付している。清掃器具3と異なる点として、清掃用パッド36の上側、下側の左右両端には夫々鉛直軸周りに回転するローラー61が設けられており、このローラー61は、拭浄部38が壁14とドア16との間の段差に落ち込んだときに、拭浄部62にその段差を乗り越えさせる役割を持つが詳しくは後述する。また各パッド36には例えば表面が布により構成された拭浄部62が設けられており、この拭浄部62は既述の拭浄部38同様にバネ37により壁14に押圧される。
【0041】
この清掃器具6は、清掃器具3と同様にスタッカークレーン2に装着され、同様の手順で通路13の清掃を行う。清掃時におけるクレーン2の移動中に拭浄部62が、壁14とドア16とのなす段差に落ち込むと、図15(a)に示すように拭浄部62は、前記ドア16の表面に沿って移動する。その後、段差にローラー61がぶつかると、図15(b)に示すようにローラー61が回転すると共にバネ37が収縮することで拭浄部62は段差を乗り越え(図15(c))、引き続き壁14を拭きながら移動を続ける(図15(d))。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のスタッカークレーンが設けられる工場の斜視図である。
【図2】本発明のスタッカークレーンの斜視図である。
【図3】前記スタッカークレーンに装着される清掃器具の斜視図である。
【図4】前記清掃器具に設けられるアームの構成を示す説明図である。
【図5】前記スタッカークレーンに前記清掃器具が取り付けられる様子を示した説明図である。
【図6】清掃器具が取り付けられたスタッカークレーンを示した説明図である。
【図7】前記スタッカークレーンに設けられる制御部の構成図である。
【図8】前記スタッカークレーンにより容器が搬送される様子を示した説明図である。
【図9】前記スタッカークレーンにより通路の清掃が行われる工程を示した工程図である。
【図10】前記スタッカークレーンにより通路の清掃が行われる工程を示した工程図である。
【図11】前記スタッカークレーンにより通路の清掃が行われる工程を示した工程図である。
【図12】前記スタッカークレーンにより通路の清掃が行われる様子を示した説明図である。
【図13】他の清掃器具を装着したスタッカークレーンの構成を示した斜視図である。
【図14】他の清掃器具の斜視図である。
【図15】清掃時に前記清掃器具の拭浄部が、段差を乗り越える様子を示した説明図である。
【符号の説明】
【0043】
13 通路
14 壁
15 載置部
16 ドア
2 スタッカークレーン
21 基部
22 柱部
23 リフト
24 搬送台
3 清掃器具
36 清掃用パッド
38 拭浄部
4 制御部
44 プログラム格納部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に沿って移動し、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを備えた、清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備において、
前記壁面を清掃するための清掃手段が設けられたスタッカークレーンを、前記清掃手段により壁面が清掃されるように動作させるプログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラムを読み出してスタッカークレーンを清掃モードとして動作させる手段と、を備えたことを特徴とする清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備。
【請求項2】
前記複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うようにスタッカークレーンを動作させるための搬送モードと前記プログラムを読み出してスタッカークレーンを動作させる清掃モードとの間でモードを選択できるモード選択部を備えたことを特徴とする請求項1記載の清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備。
【請求項3】
前記清掃手段は、スタッカークレーンのリフトに着脱できるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備。
【請求項4】
前記清掃手段は、前記壁面に押圧された状態で当該壁面を拭き掃除する拭浄部を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備。
【請求項5】
前記拭浄部は、清掃手段に設けられた伸縮自在な機構により前記壁面に押圧されていることを特徴とする請求項4記載の清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備。
【請求項6】
前記清掃手段は、壁面の付着物を吸引するための吸引部を備えていることを特徴とする1ないし5のいずれか一つに記載の清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備。
【請求項7】
壁面に沿って移動し、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行う、清掃機能を有するスタッカークレーンを運転する方法において、
前記複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うようにスタッカークレーンを動作させる工程と、
前記壁面を清掃するための清掃手段が設けられたスタッカークレーンを、前記清掃手段により壁面が清掃されるように動作させる工程と、を含むことを特徴とする清掃機能を有するスタッカークレーンの運転方法。
【請求項8】
前記清掃手段をスタッカークレーンに装着する工程を含むことを特徴とする請求項7記載の清掃機能を有するスタッカークレーンの運転方法。
【請求項1】
壁面に沿って移動し、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うスタッカークレーンを備えた、清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備において、
前記壁面を清掃するための清掃手段が設けられたスタッカークレーンを、前記清掃手段により壁面が清掃されるように動作させるプログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラムを読み出してスタッカークレーンを清掃モードとして動作させる手段と、を備えたことを特徴とする清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備。
【請求項2】
前記複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うようにスタッカークレーンを動作させるための搬送モードと前記プログラムを読み出してスタッカークレーンを動作させる清掃モードとの間でモードを選択できるモード選択部を備えたことを特徴とする請求項1記載の清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備。
【請求項3】
前記清掃手段は、スタッカークレーンのリフトに着脱できるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備。
【請求項4】
前記清掃手段は、前記壁面に押圧された状態で当該壁面を拭き掃除する拭浄部を備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備。
【請求項5】
前記拭浄部は、清掃手段に設けられた伸縮自在な機構により前記壁面に押圧されていることを特徴とする請求項4記載の清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備。
【請求項6】
前記清掃手段は、壁面の付着物を吸引するための吸引部を備えていることを特徴とする1ないし5のいずれか一つに記載の清掃機能を有するスタッカークレーン搬送設備。
【請求項7】
壁面に沿って移動し、壁面に形成された複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行う、清掃機能を有するスタッカークレーンを運転する方法において、
前記複数の受け渡し口の間で被搬送物の受け渡しを行うようにスタッカークレーンを動作させる工程と、
前記壁面を清掃するための清掃手段が設けられたスタッカークレーンを、前記清掃手段により壁面が清掃されるように動作させる工程と、を含むことを特徴とする清掃機能を有するスタッカークレーンの運転方法。
【請求項8】
前記清掃手段をスタッカークレーンに装着する工程を含むことを特徴とする請求項7記載の清掃機能を有するスタッカークレーンの運転方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
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【図5】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−30879(P2008−30879A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204899(P2006−204899)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
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