説明

清掃用払拭体

【課題】ループパイルとカットパイルとの二種類のパイルを使用し、床面上の塵埃の除去と床面に付着した汚れの除去とを同時にかつ効果的に行うことができる、機能的構成を備えた清掃用払拭体を提供する。
【解決手段】シート状をした基材10の下面に、複数の繊維からなるパイル13,14で形成された清掃用の払拭部11を有し、該払拭部11が、基材10の下面領域内に位置する内側払拭部分11aと、この内側払拭部分11aの回りを取り囲む外側払拭部分11bとからなっていて、上記内側払拭部分11aが輪奈状のループパイル13によって形成され、外側払拭部分11bが、カットされた先端部14aを有するカットパイル14によって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床などの清掃に使用する清掃用払拭体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の床などを清掃する清掃具(モップ)として、従来より各種形態のものが知られている。一般的なモップは、柄の先端に払拭体用取付ヘッドを取り付けたモップ本体と、塵や埃等の汚れを拭き取るための払拭体とからなっていて、この払拭体が上記モップ本体の取付ヘッドに着脱自在に装着される。
【0003】
上記払拭体として、例えば特許文献1には、モップ本体に取り付けるためのシート状をした基布の下面に、輪奈状をしたループパイルと、カットされた先端を有するカットパイルとの、二種類のパイルを取り付けて形成した乾拭き用の清掃布が開示されている。
この清掃布は、床面上にある塵埃やその他の各種ごみを拭き取ることを目的とするもので、上記カットパイルを基布の下面のほぼ全体に配設し、ループパイルを基布の外周に配設している。さらに詳しくは、該ループパイルを基布から外側に延出するように配設し、それによって清掃時に、柄からの押圧力が主として柔軟なカットパイルのみに作用し、硬質のループパイルには作用しにくいように構成されている。従って、床面上にある塵埃やその他のごみを拭き取るものとしては適しているが、床面に付着した汚れを落とすものとしては不向きである。それは、柔軟なカットパイルはそれより硬質のループパイルに比べて汚れ落としには不向きであることと、柄からの押圧力がこのカットパイルの柔軟性によって吸収され易いためである。
【0004】
しかし、清掃用払拭体を、性状の異なる上記ループパイルとカットパイルとをうまく組み合わせ、床面上にある塵埃の除去と床面に付着した汚れの除去とを同時に行うことができるように構成することができれば、清掃効率が向上する。
【特許文献1】特開2003−111708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、ループパイルとカットパイルとの二種類のパイルを使用し、床面上にある塵埃の除去と床面に付着した汚れの除去とを同時にかつ効果的に行うことができる、機能的構成を備えた清掃用払拭体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明によれば、シート状をした基材の下面に、複数の繊維からなるパイルで形成された清掃用の払拭部を有し、該払拭部が、基材の下面領域内に位置する内側払拭部分と、該内側払拭部分の回りを取り囲む外側払拭部分とからなっていて、上記内側払拭部分が輪奈状のループパイルによって形成され、外側払拭部分が、カットされた先端部を有するカットパイルによって形成されていることを特徴とする清掃用払拭体が提供される。
【0007】
本発明においては、上記カットパイルの、基材に固定された基端部からカットされた先端部までの長さが、ループパイルの、基材に固定された基端部からループ先端部までの長さに比べ、同等以上であることが望ましい。
【0008】
本発明において好ましくは、上記ループパイル及びカットパイルのうち少なくともカットパイルが、複数の長繊維を緩く撚るか又は密に引き揃えて形成した繊維束を複数束まとめることにより形成されていて、清掃時に上記長繊維を互いに分離した状態に解繊することによってパイル径を拡大可能であると共に、解繊された長繊維が収束癖で紐状の初期状態に復元することなくパイル径の拡大状態を維持可能なるように構成されていることである。
上記長繊維は、水中への浸漬及び揺動によって解繊可能とすることができる。
【0009】
また、本発明においては、上記パイルを構成する複数の繊維のうち少なくとも一部が、繊維径が10μm以下の極細繊維であることが望ましい。
【0010】
また、本発明によれば、柄と払拭体用取付ヘッドとからなるモップ本体の該取付ヘッドに、請求項1から4の何れかに記載の払拭体を取り付けてなることを特徴とするモップが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の払拭体は、基材の下面の払拭部のうち、内側払拭部分がループパイルで形成され、外側払拭部分がカットパイルで形成されているため、硬めでボリュームのあるループパイルを床面に強く押し付けることによって該ループパイルで汚れ落とし、柔軟なカットパイルは床面に軽く接触させることによって塵埃やその他のごみを除去することができ、この結果、性状の異なる上記二種類のパイルを巧みに使い分けてそれぞれの性状に合った機能を発揮させることにより、汚れの除去と塵埃の除去とを同時にかつ確実に行うことができ、清掃効率に勝れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明に係る清掃用払拭体を用いて構成されたモップの一例を示すもので、このモップは、塵埃を拭き取るための上記払拭体1と、この払拭体1を交換可能に取り付けるためのモップ本体2とからなっている。
【0013】
上記モップ本体2は、合成樹脂製パイプ又は金属製パイプなどの棒状部材からなる柄4と、上記払拭体1を装着するための平面視で矩形プレート状をした合成樹脂製の払拭体用取付ヘッド5とからなっており、該取付ヘッド5の上面中央位置に、上記柄4が、前後及び左右方向に傾動自在に連結されている。
【0014】
上記取付ヘッド5の下面には、そのほぼ全面に、面ファスナーを構成する鈎形突子と輪奈形突子のうちの一方である鈎形突子6が設けられ、これに対して上記払拭体1の上面には、他方の輪奈形突子7が形成され、この輪奈形突子7を上記鈎形突子6に係止させることにより、該払拭体1が上記取付ヘッド5に着脱自在に取り付けられている。
【0015】
上記払拭体1は、図2及び図3から分かるように、不織布や織布あるいは合成樹脂シート等の弾性と柔軟性とを兼ね備えた素材からなる平面視矩形のプレート状をなす基材10の下面に、複数の繊維を束ねて紐状に形成した多数のパイル13,14を、止着線15,16に沿って縫着や溶着等の適宜方法によって固定することにより、複数のパイルの集まりからなる清掃用の払拭部11を形成したものである。この払拭部11は、基材10の下面領域内に位置する内側払拭部分11aと、該内側払拭部分11aの回りを取り囲む外側払拭部分11bとからなっていて、上記内側払拭部分11aが輪奈状のループパイル13によって形成され、外側払拭部分11bが、カットされた先端を有するカットパイル14によって形成されている。
【0016】
上記ループパイル13及びカットパイル14は、基本的には複数の繊維を適宜撚り合わせるかあるいは並列状に引き揃えることによって紐状に形成されていれば良いが、好ましくは、少なくともカットパイル14が、図4に示すように、複数の長繊維17aを緩く撚るか又は密に引き揃えることにより形成される繊維束17を使用し、この繊維束17を複数束まとめることによって紐状に形成されていることである。図示した払拭体1では、ループパイル13及びカットパイル14が何れも上記繊維束17により形成されていて、ループパイル13の場合は、図5に示すように、複数の繊維束17を互いに撚り合わせることにより形成され、カットパイル14の場合は、図6に示すように、複数の繊維束17を互いに撚り合わせることなく、並行する状態に引き揃えることによって紐状に形成されている。
【0017】
上記内側払拭部分11aを構成するループパイル13の上記基材10に対する取り付けは、図5のように形成された長い紐状素材を、基材10の長手方向に延びる上記止着線15を跨ぐようにジグザグ状に折り曲げ、その折曲された先端部13aと先端部13aとの間の部分を上記止着線15の位置で基材10に縫着することにより行われている。図示の例では、このようなループパイル13の列が3列並べて設けられている。これらのループパイル13は、ループが閉じた状態に折り畳んで基材10の下面に沿って引き延ばしたとき、全てのループパイル13が完全に上記基材10の下面領域内に位置して該基材10から外方にはみ出さないような長さ及び位置に配設されている。従ってこの内側払拭部分11aの回りには、該内側払拭部分11aを取り囲むようにカットパイル用取付部10aが形成されている。
【0018】
また、上記外側払拭部分11bを構成するカットパイル14は、図6に示すように構成されて一定長さにカットされた紐状短片を、中間部で二つに折曲し、同様に折曲された複数の短片を、カットされた先端部14aを交互に逆方向に向けると共に、折曲部である基端部14bを上記止着線16上に位置させることにより、上記取付部10aに上記内側払拭部分11aの回りを取り囲むように配設し、それらの基端部14bをフリンジ縫製で上記取付部10aに固定している。これらのカットパイル14のうち、先端部14aが基材10の外周側を向くカットパイル14は、該基材10の外側に部分的に延出している。また、先端部14aが基材10の内側を向くカットパイル14は、上記内側払拭部分11aを構成する一部のループパイル13と部分的に重複している。
【0019】
上記二つに折曲した紐状短片は、基材10に取り付ける前に、隣接するもの同士を縫製や接着等の適宜手段で順次結合することにより予め一体化しておき、一体化された短片の列を基材10に縫着することもできる。その際、折曲部内に共通の細紐を通すようにすれば、それらの一体化を容易に行うことができる。
【0020】
上記カットパイル14は、基材10に固定されている基端部14bから先端部14aまでの長さが、ループパイル13の基材10に固定されている基端部13bからループ先端部13bまでの長さに比べ、同じかそれ以上であることが望ましい。これにより、カットパイル14からなる外側払拭部分11bをループパイル13からなる内側払拭部分11aよりやや厚めに形成してボリュームを高めることができる。この結果、カットパイル14がループパイル13に比べて柔軟で圧縮され易い特性を有していても、清掃時に外側払拭部分11bが床面に押し付けられる力(押圧力)を高めてカットパイル14による必要な清掃機能を十分に発揮させることができる。なお、このように外側払拭部分11bの清掃時の押圧力を高めるといっても、それは内側払拭部分11aの押圧力より小さい範囲内のことである。
【0021】
上記カットパイル14は、上述したように、複数の長繊維17aを緩く撚るか又は密に引き揃えて形成した繊維束17により形成されているため、上記長繊維17aを互いに分離した状態(繊維間の間隔が広がった状態)に解繊することによってパイル径を拡大可能であると共に、解繊された長繊維17aが収束癖で紐状の初期状態に復元することなくパイル径の拡大状態(束径拡大状態)を維持可能である。この解繊は、払拭体1を最初に清掃に使用する前に行われ、そのあと清掃を行う。従って、上記カットパイル14は、解繊する前には略紐状の外観を呈している。
【0022】
上記解繊は、例えば払拭体1を洗濯することにより行うことができる。この洗濯による方法は、換言すれば、繊維束17を水中に浸漬させて水に対して相対的に揺動させるというものである。この方法によれば、長繊維17aが水中に浮遊することによって相互の間隔が広がり、分離し易い状態となって揺れ動かされるため、殆どの長繊維17aは、水の力により、基材10に縫着された基端部14b又は該基端部14b寄りの部分を除いたその他の繊維部分が相互に分離し、解繊された状態になる。この場合、全ての長繊維17aが完全に解繊される必要はなく、大部分の長繊維17aが解繊されて繊維束17の束径が拡大されれば良い。
【0023】
このように、各繊維束17の長繊維17aが解繊された結果、カットパイル14のパイル径が拡大すると共に、上記繊維束17毎の区別は殆どなくなり、全ての繊維束17の長繊維17aがほぼ自由な位置関係で互いに分離した状態になる。この結果、外側払拭部11全体の見かけ上のボリュームが増すと共に、風合いも向上し、塵埃の捕捉効果が高められて清掃時の使用感も向上することになる。
【0024】
このことは、逆の見方をすれば、上記カットパイル14を解繊する前の段階では、各繊維束17の長繊維17aが紐状に収束した状態を保っていて、全体のパイル径は小さいため、外側払拭部11の嵩張りは少なく、コンパクトであるということを意味しており、このことから、製品としての収納や輸送時等の取り扱い性に勝れることが理解される。
【0025】
かくして一旦解繊された長繊維17aは、撚り癖が殆ど付いていないため、その撚り癖で紐としての初期状態に復元することはなく、そのまま分離状態を維持する。従って、払拭体1としてのボリューム及び風合いが低下することなく、そのまま維持される。
なお、上記カットパイル14を解繊する他の方法として、ブラシ等で機械的に梳く方法もある。この方法においても、上記長繊維17aは緩く撚られているだけであるため、ブラシが引っ掛かって解繊不能になるといったようなことはない。
【0026】
また、ループパイル13もカットパイル14と同じ構成の繊維束17を使用して形成されているが、複数の繊維束17は互いに撚り合わされているため、上記カットパイル14と一緒に長繊維17aが若干解繊されるとしても、その解繊の度合いは少ない。
【0027】
上記構成を有する払拭体1は、水などの洗浄液に浸してループパイル13及びカットパイル14に該洗浄液を適度に含浸させ、その状態で床面等の清掃を行う。このとき、基材10の下面の払拭部11のうち、内側払拭部分11aがループパイル13で形成され、外側払拭部分11bがカットパイル14で形成されているため、硬めで圧縮性の小さいループパイル13が柄4からの操作力によって床面に強く押し付けられ、その回りの柔軟で圧縮され易いカットパイル14はそれより弱い力で床面に押し付けられることになる。そして、押圧力の強い上記ループパイル13によって床面に付着した汚れが除去され、押圧力の弱いカットパイル14によって床面上の塵埃やその他のごみが除去される。この結果、性状の異なる二種類のパイルを巧みに使い分けてそれぞれの性状に合った機能を発揮させることにより、汚れの除去と塵埃の除去とを同時にかつ確実に行うことができ、清掃効率に勝れる。
特に、上記カットパイル14を解繊式とし、それを解繊して使用することにより、紐状を呈したままのループパイル13との性状の違いがより顕著になるため、二種類のパイルの特性による清掃効果も一層顕著なものとなる。
【0028】
上記ループパイル13及びカットパイル14を形成する繊維は、絹やレーヨン、キュプラ等の天然繊維であっても、ポリエステルやアクリル等の合成繊維であっても、それらの混合体であっても良い。また、その繊維径についても特に制限はないが、塵埃の捕捉効果や汚れの除去効果に勝れた払拭体1にするためには、繊維径が10μm以下の極細繊維を使用することが望ましく、全繊維中の少なくとも一部にこの極細繊維が含まれていることが望ましい。また、上記繊維は、直線性の繊維であることが望ましいが、波付けされた捲縮性繊維であっても良い。
なお、上記ループパイル13は、複数の繊維束17を撚り合わせることによって形成されているが、カットパイル14と同様に、複数の繊維束17を引き揃えることによって形成することもできる。この場合には、長繊維17aの解繊の度合いは撚り合わせた場合よりは大きくなる。
【0029】
また、上記実施形態では、上記払拭体1をモップ本体2の取付ヘッド5に取り付けるのに、面ファスナーを用いているが、このような面ファスナーに代えて、上記払拭体1における基材10の上面の長手方向の両端部に一対のポケットを形成し、このポケットに取付ヘッド5の両端部を挿入するようにしても良い。
また、本発明の技術は、洗浄液を含浸させないで使用する乾式の払拭体にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の払拭体を用いたモップの実施形態を示す斜視図である。
【図2】上記払拭体の下面図である。
【図3】図2の断面図である。
【図4】パイルを形成する繊維束の構成を示す部分側面図である。
【図5】図4の繊維束で形成されたループパイル用紐材の一部を示す側面図である。
【図6】図4の繊維束で形成されたカットパイル用紐片の一部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 払拭体
2 モップ本体
4 柄
5 取付ヘッド
4 基材10
10 基材
11 払拭部
11a 内側払拭部分
11b 外側払拭部分
13 ループパイル
14 カットパイル
13a,14a 先端部
13b,14b 基端部
17 繊維束
17a 長繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状をした基材の下面に、複数の繊維からなるパイルで形成された清掃用の払拭部を有し、該払拭部が、基材の下面領域内に位置する内側払拭部分と、該内側払拭部分の回りを取り囲む外側払拭部分とからなっていて、上記内側払拭部分が輪奈状のループパイルによって形成され、外側払拭部分が、カットされた先端部を有するカットパイルによって形成されていることを特徴とする清掃用払拭体。
【請求項2】
上記カットパイルの、基材に固定された基端部からカットされた先端部までの長さが、ループパイルの、基材に固定された基端部からループ先端部までの長さに比べ、同等以上であることを特徴とする請求項1に記載の払拭体。
【請求項3】
上記ループパイル及びカットパイルのうち少なくともカットパイルが、複数の長繊維を緩く撚るか又は密に引き揃えて形成した繊維束を複数束まとめることにより形成されていて、清掃時に上記長繊維を互いに分離した状態に解繊することによってパイル径を拡大可能であると共に、解繊された長繊維が収束癖で紐状の初期状態に復元することなくパイル径の拡大状態を維持可能なるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の払拭体。
【請求項4】
上記長繊維が水中への浸漬及び揺動によって解繊可能であることを特徴とする請求項3に記載の払拭体。
【請求項5】
上記パイルを構成する複数の繊維のうち少なくとも一部が、繊維径が10μm以下の極細繊維であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の払拭体。
【請求項6】
柄と払拭体用取付ヘッドとからなるモップ本体の該取付ヘッドに、請求項1から5の何れかに記載の払拭体を取り付けてなることを特徴とするモップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−202966(P2007−202966A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28533(P2006−28533)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000101363)アズマ工業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】