説明

減衰装置

【課題】下部構造体と上部構造体との相対変位が大きくなることにより減衰力が大きくなる減衰装置を提供する。
【解決手段】下部構造体と、前記下部構造体と間隔Lを隔てて、当該下部構造体上に水平方向に相対変位可能に支持された上部構造体と、の間に介装された第1減衰装置及び第2減衰装置を有し、前記第1減衰装置は、前記相対変位におけるある変位量の振動に対する減衰力が前記第2減衰装置より大きく、前記第2減衰装置は、前記ある変位量より大きな変位量の振動に対する減衰力が前記第1減衰装置より大きく、前記第2減衰装置は、前記上部構造物と前記下部構造物とが水平方向に変位量xにて相対変位して、介装された状態から角度θ傾き、前記角度θ傾いた方向に外力Pが入力されたときに、次式を満たすような、
tanθ=x/L
W=P・sinθ
減衰力Wが作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部構造体と上部構造体との間に介装される減衰装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震の振動から建物等が損傷を受けることを防止する方法として、下部構造体上部構造体との間に負の剛性装置を改装して、建物等の固有周期を延長して免震効果を向上させることが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−287079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように固有周期を延長すると建物自身の損傷は避けられるが、建物が共振して振幅が大きくなる。このため、例えば、キャスターが設けられたベッドや台車等が多く用いられている病院などでは、固有周期が延長されたことにより、ベッドや台車が勝手に走行し、ベッド上の患者や、医師・看護師などが危険にさらされる虞がある。また、台車上の医療機器を損傷したり、ベッドや台車が壁やキャビネットなどに衝突して病院施設が破壊される虞があり、地震後の医療活動に支障を来す虞があるという課題がある。
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、下部構造体と上部構造体との相対変位が大きくなることにより減衰力が大きくなる減衰装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために本発明の減衰構造は、下部構造体と、前記下部構造体と間隔Lを隔てて、当該下部構造体上に水平方向に相対変位可能に支持された上部構造体と、の間に介装された第1減衰装置及び第2減衰装置を有し、前記第1減衰装置は、前記相対変位におけるある変位量の振動に対する減衰力が前記第2減衰装置より大きく、前記第2減衰装置は、前記ある変位量より大きな変位量の振動に対する減衰力が前記第1減衰装置より大きく、前記第2減衰装置は、前記上部構造物と前記下部構造物とが水平方向に変位量xにて相対変位して、介装された状態から角度θ傾き、前記角度θ傾いた方向に外力Pが入力されたときに、次式を満たすような、
tanθ=x/L
W=P・sinθ
減衰力Wが作用することを特徴とする減衰装置である。
【0006】
このような減衰装置によれば、下部構造体と上部構造体との間隔Lに対して変位量x水平方向に相対変位したときの第2減衰装置の傾きが、tanθ=x/Lで表され、この角度θにて傾いた方向に外力Pが入力されると、W=P・sinθで表される減衰力が水平方向に作用する。すなわち第2減衰装置は、変位量xが大きくなるにつれて減衰力Wが大きくなり、変位量xが小さな相対変位の場合には、大きな減衰力Wが発生しない。このため、相対変位におけるある変位量の振動に対しては第1減衰装置にて振動を減衰させ、ある変位量より大きな変位量の振動に対しては第2減衰装置にて振動を減衰させることが可能である。よって、下部構造体と上部構造体との相対変位が大きくなることにより減衰力が大きくなる減衰装置を提供することが可能である。
【0007】
かかる減衰装置であって、前記第2減衰装置は、前記下部構造体及び前記上部構造体のいずれか一方と連結され、互いに対向する一対の第1板部材と、前記下部構造体及び前記上部構造体のいずれか他方と連結され、前記一対の第1板部材間に配置され、当該一対の第1板部材と相対変位自在に設けられた第2板部材と、前記一対の第1板部材と前記第2板部材との間に介在された摩擦板及び滑り板と、前記摩擦板と前記滑り板とを圧接する圧接力を付勢する圧接力付勢部材と、を有し、前記外力Pが入力されて、前記下部構造体と前記上部構造体とが水平方向に相対変位することにより、前記一対の第1板部材と前記第2板部材とが前記角度θ傾いた方向に相対変位することが望ましい。
このような減衰装置によれば、第2減衰装置は、互いに対向する一対の第1板部材間に、摩擦板と滑り板とが介在されて第2板部材が設けられ、これらを圧接する圧接力付勢部材が設けられ、下部構造体と上部構造体とが水平方向に相対変位することにより、第1板部材と第2板部材とが角度θ傾いた方向に相対変位するので、下部構造体と上部構造体との間にて相対変位が生じると、下部構造体と上部構造体との間で生じた相対変位により摩擦力を発生させて振動のエネルギーを吸収することが可能である。このとき、第2減衰装置の減衰力はW=P・sinθで作用する。このとき傾いた角度θはtanθ=x/Lで示されるので、変位量xが小さな相対変位のときには、減衰力が生じ難く、相対変位による変位量xが大きくなると自ずと減衰力Wが大きくなるので、何ら制御することなく第2減衰装置を設置するだけで大きな変位量の振動を減衰する減衰装置を安価に実現することが可能である。
【0008】
かかる減衰装置であって、前記第1板部材は、前記下部構造体及び前記上部構造体のいずれか一方と自在継ぎ手を介して連結され、前記第2板部材は、前記下部構造体及び前記上部構造体のいずれか他方と自在継ぎ手を介して連結されていることが望ましい。
このような減衰装置によれば、第2減衰装置の、下部構造体及び上部構造体との接合部となる第1板部材と第2板部材とがいずれも自在継ぎ手にて連結されているので、第2減衰装置を、下部構造体及び上部構造体との相対変位が、水平方向におけるいずれの方向であっても振動を減衰させることが可能である。
【0009】
かかる減衰装置であって、前記第1減衰装置は、オイルダンパーであることが望ましい。
相対変位による変位量が小さな振動は、下部構造体と上部構造体との相対変位の速度が速く、相対変位による変位量が大きな振動は、下部構造体と上部構造体との相対変位の速度が遅い。このため、相対変位の速度が速く変位量が小さな振動に対して、オイルダンパーを作用させることにより、より効率良く振動を減衰することが可能である。
【0010】
かかる減衰装置であって、前記上部構造体は、積層ゴムを介して前記下部構造体に支持されていることが望ましい。
このような減衰装置によれば、下部構造体と上部構造体との間に積層ゴムが介在されているので、上部構造体が水平方向に相対移動可能に支持されるとともに、相対変位により傾斜した第2減衰装置を元の状態に復元させることが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下部構造体と上部構造体との相対変位が大きくなることにより減衰力が大きくなる減衰装置を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る減衰装置が組み込まれた建物を示す概略図である。
【図2】摩擦ダンパーの構成を説明するための断面図である。
【図3】第2減衰装置の一例をなす摩擦ダンパーを説明するための正面図である。
【図4】鉛直方向に沿って配置された摩擦ダンパーの作用を説明するための図である。
【図5】摩擦ダンパーの変位と減衰力との履歴を示す図である。
【図6】オイルダンパーの変位と減衰力との履歴を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態の減衰装置の一例について図を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る減衰装置が組み込まれた建物を示す概略図である。
本発明に係る減衰装置10は、例えば建物の上部基礎12と下部基礎16との間に積層ゴム14とともに介装される第1減衰装置としてのオイルダンパー18と、第2減衰装置としての摩擦ダンパー20とを備えている。ここで、本建物は、上部基礎12と上部基礎12より上側の部位である上部構造体は、下部構造体である下部基礎16との間に積層ゴム14を介して水平方向に相対変位可能に支持されている免震建物である。
【0015】
オイルダンパー18は、その両端部が上部基礎12及び下部基礎16の対向する部位に自在継ぎ手36にて連結され、伸縮方向がほぼ水平をなすように配置され、建物に入力される水平方向の振動エネルギーなどの外力を吸収する。ここで、積層ゴム14とオイルダンパー18とは上部基礎12と下部基礎16との間に多数備えられている。また、複数のオイルダンパー18は2本ずつ対をなし、対をなすオイルダンパー18は、伸縮する方向が互いに直交する方向に向けられて設置されている。
【0016】
摩擦ダンパー20は、その両端部が上部基礎12及び下部基礎16の対向する部位に自在継ぎ手36にて連結され、伸縮する方向がほぼ鉛直をなすように配置され、建物に入力される振動エネルギーなどの外力を吸収する。摩擦ダンパー20も積層ゴム14及びオイルダンパー18と同様に上部基礎12と下部基礎16との間に多数備えられているが、上端部と下端部とは水平方向においていずれの方向にも変位可能なので、オイルダンパー18と異なり対をなしてはいない。
【0017】
図2は、摩擦ダンパーの構成を説明するための断面図である。
摩擦ダンパー20は、上部基礎12の下面に設けられた自在継ぎ手36と連結され、図2に示すように水平方向に間隔を隔てて対向する一対の第1板部材としての外板22と、下部基礎16の下面に設けられた自在継ぎ手36と連結され、第2板部材としての中板24と、を有している。
【0018】
外板22は、下方に向かって延出された長方形状をなし、中板24は上方に向かって延出された長方形状をなし、一対の外板22の間に対面する状態にて中板24が挟み込まれている。外板22に中板24が挟み込まれた状態で、各々に形成されたボルト挿通孔22a、24aにボルト26が貫通されている。貫通されたボルト26は、一対の外板22より外側に突出され、一方の外板22の外側に設けられ、皿ばねが積層された圧接力付勢部材としての皿ばね積層体30も貫通し、皿ばね積層体30を圧縮するようにボルト26の先端がナット28にて締付けられている。ここで、中板24に設けられたボルト挿通孔24aは、中板24と一対の外板22との相対変位を許容するために中板24の長手方向に沿って形成された長孔である。
【0019】
長孔でなるボルト挿通孔24aを有する中板24と外板22との間には、ステンレス製の滑り板としての滑動板32と、複合摩擦材料からなる摩擦板34とが重ねられて配置されている。滑動板32と摩擦板34は、薄板状をなしている。
【0020】
摩擦板34には、外板22と中板24とが接合された初期状態にて中板24に設けられたボルト挿通孔24aと重なるように長孔でなるボルト挿通孔34aが設けられている。
【0021】
また、外板22、及び、滑動板32には、外板22と中板24とが接合された初期状態にて中板24及び摩擦板34のボルト挿通孔24a、34aの中央部に対応してボルト径に相応した円形のボルト挿通孔22a、32aが形成されている。
【0022】
ここで、摩擦板34には、有機系摩擦材や無機系摩擦材を使用し得る。有機系摩擦材は、熱硬化型樹脂を結合材として、アラミド繊維,ガラス繊維,ビニロン繊維,カーボンファイバー,アスベストなどの繊維材料と、カシューダスト,鉛などの摩擦調整材と、硫酸バリュームなどの充填剤とからなる複合摩擦材料で形成される。上記熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂,メラミン樹脂,フラン樹脂,ポリイミド樹脂,DFK樹脂,グアナミン樹脂,エポキシ樹脂,キシレン樹脂,シリコーン樹脂,ジアリルフタレーン樹脂,不飽和ポリエステル樹脂などがある。一方、滑動板32は上述したステンレスやチタンなどの耐食性を有する材料によって形成される。
【0023】
図3は、第2減衰装置の一例をなす摩擦ダンパーを説明するための正面図である。図4は、鉛直方向に沿って配置された摩擦ダンパーの作用を説明するための図である。
【0024】
摩擦ダンパー20は、外板22と中板24とが長手方向に相対変位すると、変位エネルギーを摩擦によって消費して振動を減衰させるように構成されている。本実施形態の摩擦ダンパー20は、図3、図4に示すように、外板22と中板24との長手方向が上下方向に沿うように配置されて上部基礎12及び下部基礎16と自在継ぎ手36にて連結されているので、建物の上部基礎12と下部基礎16とが水平方向に相対変位した際には、摩擦ダンパー20が傾斜する。このときの傾斜角度θは、上部基礎12と下部基礎16との間隔Lと相対変位の変位量xとにより(式1)にて表される。
tanθ=x/L (式1)
【0025】
そして、上部基礎12と下部基礎16とが変位量xで相対変位したときには、摩擦ダンパー20の上部基礎12との連結部と下部基礎16との連結部との距離が、摩擦ダンパー20が介在された状態、すなわち長手方向が上下方向に沿って配置されたときの上部基礎12の連結部と下部基礎16の連結部との距離より長くなる。上部基礎12の連結部と下部基礎16の連結部との距離が長くなるときに、外板22と中板24とが皿ばね積層体30による圧接力を受けつつ長手方向に相対変位する。
【0026】
外板22と中板24とが長手方向(傾斜方向)に変位量dで相対変位することにより滑動板32と摩擦板34との間にて、入力された軸力Pによる摩擦力が生じる。生じた摩擦力の水平方向成分が、減衰力Wfとして作用し、建物に入力された振動エネルギーを消費する。このとき発生する減衰力Wfは(式2)にて表される。
Wf=P・sinθ (式2)
【0027】
図5は、水平変形に対する摩擦ダンパーの減衰力の履歴特性を示す図である。
図5に示すように、水平方向の相対変位による変位量xが小さい場合には、摩擦ダンパー20の傾斜角度θが小さいため作用する減衰力Wfが小さく、水平方向の相対変位による変位量xが大きく摩擦ダンパー20の傾斜角度θが大きくなると、作用する減衰力Wfが大きくなるように構成されている。
【0028】
一方、摩擦ダンパー20と並列に配置されているオイルダンパー18は、上部基礎12と下部基礎16との水平方向における相対変位による変位量xが、相対変位の方向と、対をなすオイルダンパー18の各々とがなす角度に応じて分散されて各オイルダンパー18が変位する。すなわち、上部基礎12と下部基礎16との相対変位による変位量xは、対をなすオイルダンパー18に分散されて変位するが、合成された変位量は、上部基礎12と下部基礎16との相対変位による変位量xとほぼ等しくなるので、上部基礎12と下部基礎16との相対変位による変位量xがそのままオイルダンパー18に減衰力を生じさせる。
【0029】
このように、本実施形態の減衰装置10は、上部基礎12と下部基礎16との相対変位による変位量xが小さいときには、摩擦ダンパー20の傾斜角度θが小さく、生じる減衰力Wfが小さいため主にオイルダンパー18の減衰力Woにより振動が減衰される。そして、上部基礎12と下部基礎16との相対変位による変位量xが大きくなると、摩擦ダンパー20の傾斜角度θが大きくなり、大きな相対変位による振動は主に摩擦ダンパー20の減衰力Wfにより減衰される。
【0030】
本実施形態の減衰装置10によれば、下部基礎16と上部基礎12との相対変位による変位量xが小さい場合には、オイルダンパー18の減衰力Woにより振動を減衰させ、オイルダンパー18にて減衰される振動より大きな変位量xの振動は摩擦ダンパー20の減衰力Wfにより振動が減衰される。このため、相対変位による変位量xが小さな振動から大きな振動まで減衰させることが可能である。このとき、下部基礎16と上部基礎12との間隔Lに対して変位量x水平方向に相対変位したときの摩擦ダンパー20の傾斜角度θが、tanθ=x/Lで表され、この傾斜角度θにて傾いた方向に外力Pが入力されると、Wf=P・sinθで表される減衰力Wfが水平方向に作用する。すなわち摩擦ダンパー20は、相対変位による変位量xが大きくなるにつれて減衰力Wfが大きくなり、相対変位による変位量xが小さい場合には、大きな減衰力Wfが発生しない。このため、小さな変位量xの振動に対してはオイルダンパー18にて振動を減衰させ、大きな変位量xの振動に対しては摩擦ダンパー20にて振動を減衰させることが可能である。このように下部基礎16と上部基礎12との相対変位による変位量xが大きくなることにより減衰力Wfが大きくなる減衰装置10を提供することが可能である。
【0031】
また、摩擦ダンパー20は、互いに対向する一対の外板22に、摩擦板34と滑動板32とが介在されて中板24が設けられ、これらを圧接する皿ばね積層体30が設けられ、下部基礎16と上部基礎12とが水平方向に相対変位することにより、外板22と中板24とが角度θ傾いた方向に相対変位するので、下部基礎16と上部基礎12との間にて相対変位が生じると、下部基礎16と上部基礎12との間で生じた相対変位により摩擦力を発生させて振動のエネルギーを吸収することが可能である。このとき、摩擦ダンパー20の減衰力WfはWf=P・sinθで作用する。また、このとき傾斜角度θはtanθ=x/Lで示されるので、相対変位による変位量xが小さいときには、減衰力が生じ難く、相対変位による変位量xが大きくなると自ずと減衰力Wfが大きくなるので、何ら制御することなく摩擦ダンパー20を設置するだけで大きな変位量xの振動を減衰する減衰装置10を実現することが可能である。
【0032】
また、摩擦ダンパー20の、下部基礎16及び上部基礎12との接合部となる外板22と中板24とがいずれも自在継ぎ手36にて連結されているので、摩擦ダンパー20を、下部基礎16及び上部基礎12との相対変位が、水平方向におけるいずれの方向であっても減衰させることが可能である。
【0033】
図6は、水平変形に対するオイルダンパーの減衰力の履歴特性を示す図である。
また、オイルダンパー18の軸力Po及び減衰力Woは、(式3)(式4)にて示される。
Po=c・v (式3)
Wo=Po・sinθ (式4)
c:オイルダンパーの減衰定数
v:オイルダンパーの伸び速度、v={d(θ)}’=dd(θ)/dt
d:オイルダンパーの伸び量、d=(1/cosθ−1)・L
【0034】
振動のエネルギーが一定ならば、相対変位による変位量xが小さな振動は、下部基礎16と上部基礎12との相対変位の速度が速く、相対変位による変位量xが大きな振動は、下部基礎16と上部基礎12との相対変位の速度が遅い。このため、相対変位による変位量xが小さな振動を減衰させる減衰装置として、振動による相対変位の速度が速いときにより減衰力Woが作用し、振動による相対変位の速度が遅いときに減衰力Woが作用しにくいオイルダンパー18を用いることにより、より効率良く振動を減衰することが可能である。
【0035】
また、下部基礎16と上部基礎12との間に積層ゴム14が介在されているので、上部基礎12が水平方向に相対移動可能に支持されるとともに、相対変位により傾斜した摩擦ダンパー20及びオイルダンパー18を元の状態に復元させることが可能である。
【0036】
上記実施形態においては、相対変位による大きな変位量の振動を第2減衰装置として摩擦ダンパー20を用いた例について説明したが、これに限るものではない。例えば、オイルダンパーを鉛直方向に沿わせて設けてもよい。オイルダンパーであっても、鉛直方向に配置することにより、下部基礎16と上部基礎12との相対変位に対して、水平方向に配置したオイルダンパー18より小さい変位には小さな減衰力にて、また、大きな変位には大きな減衰力にて振動を減衰させることが可能である。
【0037】
また、上記実施形態においては、相対変位による小さな変位量の振動を第1減衰装置としてオイルダンパー18を用いた例について説明したが、これに限るものではない。例えば、摩擦ダンパーを水平方向に沿って設けてもよい。摩擦ダンパーであっても、圧接力付勢部材の圧接力を調整して水平方向に配置することにより、下部基礎16と上部基礎12との相対変位に対して、鉛直方向に配置した摩擦ダンパー20より小さな変位には小さな減衰力にて、また、大きな変位には大きな減衰力にて振動を減衰させることが可能である。
【0038】
また、上記実施形態においては、圧接力付勢部材として皿ばね積層体30を用いた例について説明したが、これに限るものではなく、例えばコイルバネや板バネ等、圧縮されて圧接力を付勢可能な部材であれば構わない。
【0039】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
10 減衰装置、12 上部基礎、14 積層ゴム、16 下部基礎、
18オイルダンパー、20 摩擦ダンパー、22 外板、22a 挿通孔、
24 中板、24a 挿通孔、26 ボルト、28 ナット、
30 皿ばね積層体、32 滑動板、34 摩擦板、36 自在継ぎ手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造体と、前記下部構造体と間隔Lを隔てて、当該下部構造体上に水平方向に相対変位可能に支持された上部構造体と、の間に介装された第1減衰装置及び第2減衰装置を有し、
前記第1減衰装置は、前記相対変位におけるある変位量の振動に対する減衰力が前記第2減衰装置より大きく、
前記第2減衰装置は、前記ある変位量より大きな変位量の振動に対する減衰力が前記第1減衰装置より大きく、
前記第2減衰装置は、前記上部構造物と前記下部構造物とが水平方向に変位量xにて相対変位して、介装された状態から角度θ傾き、前記角度θ傾いた方向に外力Pが入力されたときに、次式を満たすような、
tanθ=x/L
W=P・sinθ
減衰力Wが作用することを特徴とする減衰装置。
【請求項2】
請求項1に記載の減衰装置であって、
前記第2減衰装置は、前記下部構造体及び前記上部構造体のいずれか一方と連結され、互いに対向する一対の第1板部材と、
前記下部構造体及び前記上部構造体のいずれか他方と連結され、前記一対の第1板部材間に配置され、当該一対の第1板部材と相対変位自在に設けられた第2板部材と、
前記一対の第1板部材と前記第2板部材との間に介在された摩擦板及び滑り板と、
前記摩擦板と前記滑り板とを圧接する圧接力を付勢する圧接力付勢部材と、
を有し、
前記外力Pが入力されて、前記下部構造体と前記上部構造体とが水平方向に相対変位することにより、前記一対の第1板部材と前記第2板部材とが前記角度θ傾いた方向に相対変位することを特徴とする減衰装置。
【請求項3】
請求項2に記載の減衰装置であって、
前記第1板部材は、前記下部構造体及び前記上部構造体のいずれか一方と自在継ぎ手を介して連結され、
前記第2板部材は、前記下部構造体及び前記上部構造体のいずれか他方と自在継ぎ手を介して連結されていることを特徴とする減衰装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の減衰装置であって、
前記第1減衰装置は、オイルダンパーであることを特徴とする減衰装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の減衰装置であって、
前記上部構造体は、積層ゴムを介して前記下部構造体に支持されていることを特徴とする減衰装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−36981(P2012−36981A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178042(P2010−178042)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】