説明

温度センサ付き軸受

【課題】レース近傍における温度を安定に測定可能であり、また、レース近傍からの温度分布を安定に検知可能な温度センサ付き軸受を提供する。
【解決手段】この温度センサ付き軸受20は、薄膜状の温度センサ10を軸受内に設け、温度センサは、長手方向に延びたセンサ部を備え、センサ部の長手方向が軸受のレース面22a近傍の周面22bに沿うようにしてレース近傍に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜状の温度センサを軸受内に設けた温度センサ付き軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転部品を支持する一般的な軸受装置は、一度組み込まれると定期的な検査がないため、温度異常に起因する不具合が発生したときに始めて内部を検査することが多かった。また、鉄道車両や風車等に用いられる軸受の場合は、一定期間使用した後に、軸受装置やその他の部分について分解し検査が行われる。したがって、温度異常に起因する不具合を事前に予測することが難しかった。かかる温度異常の検知のために、軸受表面の特定位置の温度を測定する方法として熱電対を利用した方法が一般的である。また、下記特許文献1ではチップ型の積層サーミスタを用いた温度センサを軸受に付与している。
【特許文献1】特開2002−130263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の熱電対を利用した温度センサは小型化が困難であり、また、チップ型の積層サーミスタを用いた温度センサは厚みがあることから、従来の温度センサを例えば軸受内の10μm程度の狭い空間に実装することは難しい。また、熱電対型の薄膜温度センサは、軸受のレース近傍などの狭い空間に実装可能であるが、熱電対の測定点である一点での測定となるため、広い面積の温度分布測定には不向きである。
【0004】
軸受の緊急停止用などへと応用するために温度センサを実装する軸受では、温度発生源であるレース近傍にセンサを配置することが望ましい。レース近傍の温度分布は、例えばアンギュラ玉軸受の場合、レースより回転軸方向に距離が離れると温度が降下する。このとき、レースに対して平行な円周上では、理論的に平均温度は均一である。すなわち、レース近傍の温度変化を安定に測定するためには、温度センサ自身をレースに平行かつ円周状に配置することが望ましく、さらに温度センサが小型、薄型であれば、レース近傍まで極限的に近づけて配置することができる。さらに、円周状に配置する温度センサの線幅を細くしつつ、多数本を並列させて配置することができれば、レースの極近傍より回転軸方向に沿った温度下降データを取得できる。このような、レース近傍の温度下降データを取得する温度センサは、軸受の温度モニタリング応用としては極めて容易で適合性のよい構造配置といえるだけでなく、温度測定の観点からも、測定面積が増えるために安定した測定が可能となる。
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、レース近傍における温度を安定に測定可能であり、また、レース近傍からの温度分布を安定に検知可能な温度センサ付き軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による温度センサ付き軸受は、薄膜状の温度センサを軸受内に設けた温度センサ付き軸受であって、前記温度センサは、長手方向に延びたセンサ部を備え、前記センサ部の長手方向が軸受のレース近傍の周面に沿うようにして前記レース近傍に配置されていることを特徴とする。
【0007】
この温度センサ付き軸受によれば、温度センサのセンサ部がレース近傍に配置されかつセンサ部の長手方向がレース近傍の周面に沿っているので、レース近傍の周面に沿った周方向の平均温度を測定でき、軸受内の温度発生源であるレースの近傍の温度を安定に測定することができる。
【0008】
上記温度センサ付き軸受において前記センサ部は、前記長手方向にそれぞれ並列して延びる複数の金属膜から構成され、前記複数の金属膜により前記レース近傍の周面に略直交する方向における温度を段階的に測定するように構成される。これにより、センサ部を直線的かつレース近傍の周面上に複数配置できるので、レース近傍からの段階的な温度分布を安定に測定できる。すなわち、並列して延びる複数の金属膜が周面に沿って配置され、各金属膜がレース近傍の周面に対し略直交する方向における温度を段階的に安定に測定できるので、レース近傍からの温度分布を安定に検知できる。なお、金属膜は白金(Pt)等の金属材料から構成され、金属膜の電気抵抗を測定し、温度変化に伴う電気抵抗変化により温度測定を行うことができる。
【0009】
また、前記センサ部から延びる配線部を備え、前記配線部は前記金属膜よりも幅広の金属膜から構成されることが好ましい。また、前記センサ部及び前記配線部は一体的に構成されていることが好ましい。なお、前記配線部は前記周面に対し略直交する方向に延びるように構成できる。
【0010】
また、前記軸受は、レース面を有する外輪と、レース面を有する内輪と、前記レース面間に転動自在に配置される転動体と、を備える転がり軸受である場合に、固定側の軌道輪の周面において前記レース面の近傍に前記温度センサを配置することができる。これにより、固定側の軌道輪の内周面においてレース面近傍の温度を安定に測定することができ、また、軸受の回転軸方向における内周面の温度分布を検知できる。
【0011】
また、前記温度センサは、前記センサ部が可撓性のある基板に形成されており、前記基板から前記周面に貼り付けられることで、軸受に設置することができる。
【0012】
また、前記温度センサが前記周面に直接形成されることで、軸受に設置することができる。この場合、センサ部と周面との間に絶縁膜を配置することが好ましく、絶縁膜を周面に直接形成し、絶縁膜にセンサ部を形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の温度センサ付き軸受によれば、レース近傍における温度を安定に測定可能であり、また、レース近傍からの温度分布を安定に検知可能である。これにより、軸受における温度異常に起因する不具合を事前に正確に予測することができ、また、軸受寿命の予測が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施の形態の温度センサ付き軸受の要部を示す要部断面図である。図2は図1の温度センサ付き軸受の外輪を図1の方向Xからみた図である。
【0015】
図1に示すように、温度センサ付き軸受20は、外周面に軌道レース面21aを有する内輪21と、内周面に軌道レース面22aを有する外輪22と、外輪22と内輪21との間に配置された転動体である複数の玉24と、複数の玉24を均等位置に保持するための保持器23と、軸受温度を検知するための温度センサ10と、を備え、内輪21と外輪22とが軸受の回転中心軸に関し同心的に配置され、軌道レース面21aと22aとの間で各玉24が転動自在になっている。
【0016】
軸受20は、内輪回転の場合のシールの付いた転がり軸受であり、両側にシール30,33を備える。シール30は、外周に鈎部を有するリング状の芯金31と、その外側に合成ゴムを一体に加硫成形してなる弾性体32と、から構成され、その機能上から、芯金31の鈎部以外とその外側の弾性体32とからなる円環状の主部34と、芯金31の鈎部とその外側の弾性体とからなり外輪22内周面の止め溝25に係止される加締部35と、芯金31の内周側の弾性体からなり内輪21の外周面の受け溝26に接触されるリップ部36と、に分けられる。
【0017】
シール30は、リップ部36を内輪21の外周面の受け溝26に接触させた状態で、加締部35を弾性変形させながら外輪22の内周面の止め溝25に押し込むことによって、軸受20の外輪22と内輪21との間に配設される。シール33もシール30と同じ構造であり、同様に外輪22と内輪21との間に配設される。このようなシール30,33の一般的な材料は、芯金としてはSPCCやSECCなどの鋼板が使用され、リップ等を形成する弾性体としてはニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の合成ゴムが使用される。なお、シール30,33は、図1のような接触ゴムシールに限らず、非接触ゴムシール、非接触鋼板などであってもよい。
【0018】
温度センサ10は、軸受表面の温度を測定し温度分布を検知するように軸受のレース面22a近傍に配置され、軸受20においてレース面22a近傍からの段階的な距離に応じて温度センシングを可能にしている。
【0019】
すなわち、温度センサ10は、長手方向に延びて細長でかつ薄膜状に構成され、図1のように、固定側の外輪22の円筒面状の内周面22bにかつ軌道レース面22aの近傍に配置されている。図2のように、温度センサ10は軌道レース面22aの近傍の円筒面状の内周面22bの円周方向に略一周して設けられている。
【0020】
また、図1,図2のように、外輪22には、内周面22bから外輪22の側面22cへと貫通する貫通孔Sが配線導出部として設けられ、外輪22の内周面22bに設けられた温度センサ10から延びる電気配線19が貫通孔Sを通して外輪22の側面22cから外部へと導出される。
【0021】
なお、貫通孔Sは、図1の破線のように外輪22の外周面22dへと貫通するようにしてもよく、また、シール33に設けてシール33を通して電気配線19を外部に導出するようにしてもよい。
【0022】
次に、温度センサ10の構成について図3,図4を参照して説明する。図3は、図1,2の温度センサ10のパターンを外輪22の内周面22bに配置する前の状態で示す平面図である。図4は図3の温度センサ10を内周面22bに配置した外輪22を概略的に示す斜視図である(図1の止め溝25等の図示は省略している)。
【0023】
図3に示すように、温度センサ10は、長手方向aに直線的に延びる金属膜11a〜11dから構成されたセンサ部11と、短手方向bに直線的に延びる金属膜12a〜12d,13a〜13dから構成されセンサ部11の両端に設けられた配線部12,13と、を可撓性のあるフィルム基板14上に有する。
【0024】
センサ部11を構成する複数の金属膜11a〜11dは、長手方向aにそれぞれ細長く延びかつ短手方向bに所定間隔に離れて互いが平行に延びて並列している。配線部12,13を構成する複数の金属膜12a〜12d及び複数の金属膜13a〜13dは、短手方向bにそれぞれ細長く延びて複数の金属膜11a〜11dとそれぞれ両端で略直交して接続している。
【0025】
センサ部11の複数の金属膜11a〜11d及び配線部12,13の複数の金属膜12a〜12d,13a〜13dは、白金(Pt)から一体的に構成されている。温度センサ10は、センサ部11の各金属膜11a〜11dの両端で配線部12,13を通して電気抵抗をそれぞれ測定することで、温度変化に伴う電気抵抗変化により温度測定を行う。
【0026】
また、配線部12,13の各金属膜12a〜12d,13a〜13dは、センサ部11の各金属膜11a〜11dよりも幅広でかつ長さが短くなっており、配線部12,13においては温度変動による抵抗変化がセンサ部11よりも小さくなっているので、センサ部11による温度測定の精度に対する影響を抑えることができる。
【0027】
図3の温度センサ10は、容易に湾曲変形可能であり、図4のように、図1の軸受20の外輪22の内周面22bにセンサ部11の長手方向aが一致するように内周面22bの円周方向に設けられている。
【0028】
すなわち、図4の外輪22の内周面22bの奥側に軌道レース面22aが内周面22bから凹んで形成されているが、温度センサ10は、内周面22bと軌道レース面22aとの境界線部22eにセンサ部11の長手方向aに延びる先端部15(図3)が沿うようにして内周面22bに配置されている。したがって、センサ部11の各金属膜11a〜11dが境界線部22eに対し略平行に位置するため、各金属膜11a〜11dにより内周面22bの境界線部22eから側面22cに向けて離れる方向(軸受の回転軸方向)における温度分布を正確に検知することができる。
【0029】
図4のように、温度センサ10の配線部12と13は、温度センサ10を内周面22bを略一周して配置するので隣接するようになり、また、側面22c側に延びており、配線部12の各金属膜12a〜12d(図3)に対し複数のワイヤからなる電気配線19aが電気接続し、同様に、配線部13の各金属膜13a〜13d(図3)に対し複数のワイヤからなる電気配線19bが電気接続しており、電気配線19a、19bを図1の例えばシール33に設けた貫通孔を通して軸受20の外部に導出し、温度測定装置(図示省略)に接続し、センサ部11の各金属膜11a〜11dの各測定電気抵抗に基づいて各温度をそれぞれ測定することができる。
【0030】
図1〜図4の温度センサ付き軸受20によれば、温度センサ10のセンサ部11がレース面22aの極近傍に配置され、センサ部11の長手方向aがレース面22aの内周面22bに沿って、センサ部の先端部15がレース面22aの境界線部22eに対し略平行に位置するので、レース面22a近傍の内周面22bに沿った円周方向略一周分の平均温度を測定することができ、平均温度の測定であるため安定な温度測定を実現できる。したがって、軸受20の使用中にレース面21a、22a間で各玉24が転動することで温度が上昇したとき、温度発生源であるレース面22aの近傍の温度を安定に測定できる。
【0031】
また、センサ部11の複数の金属膜11a〜11dがレース面22aの境界線部22eに対し略平行に位置し、内周面22bの境界線部22eから側面22cに向けて離れる方向(軸受の回転軸方向)において複数段階に温度を安定して測定できるので、レース面22a近傍から回転軸方向における温度分布を安定に検知することができる。
【0032】
なお、センサ部11は、長手方向aの長さが外輪22の内周面22bの円周方向略一周分に相当する長さでなくともよく、内周面22bの円周方向の半周や1/4周等に配置されるように構成してもよい。
【0033】
図3のような温度センサ10は、フィルム基板にセンサ部等を形成したものを外輪22の内周面22bに貼り付けること、または、外輪22の内周面22bに直接形成すること、により軸受20内に設置することができる。
【0034】
以下、温度センサ10の製造方法(A),(B)について図5,図6を参照して説明する。
【0035】
(A)図5は、温度センサ10を軸受とは別に製造するための製造工程(a)乃至(d)を模式的に示す図である。図5の製造工程(a)乃至(d)は、図3と同様の温度センサを半導体製造の場合と同様のリソグラフィ工程より製造するものである。
【0036】
すなわち、図5(a)のように、フィルムPIからなるフィルム基板41上に厚さ約2μmのフォトレジスト42をスピンコートにより塗布し、プリベーク処理を行う。
【0037】
次に、図5(b)のように、図3のセンサ部11及び配線部12,13と対応する形状にパターニングを行ったマスクを用いて図の上方から露光処理をしてから、現像液を用いて現像処理をすることで、フォトレジスト42にマスクのパターンに対応した図3のセンサ部11及び配線部12,13のパターンを形成する。
【0038】
次に、図5(c)のように、スパッタリング法にて厚さ約250nmの白金膜43を形成してから、図5(d)のように、アセトンによりリフトオフ法を用いてフィルム基板41上の残留フォトレジストを除去することで、図5(d)の白金膜43が露出する。白金膜43が図3のセンサ部11及び配線部12,13を構成する。
【0039】
なお、接着剤フィルムを用いてPIフィルムで図5(d)のフィルム基板41を覆うようにしてフィルムカバーを装着し図3の温度センサ10のセンサ部11及び配線部12,13を保護するようにしてもよい。また、比較的大きなサイズのフィルムに上述のような工程(a)〜(d)により多数の温度センサを形成してから、個別の温度センサにカットすることで、温度センサを低コストで大量生産することができる。
【0040】
上述のようして製造された薄膜状の温度センサ10を図2,図4のように外輪22の内周面22bに接着剤等を用いて貼り付けてから、かかる外輪22を用いて軸受20を組み立てることで、図1の温度センサ付き軸受20を作製することができる。
【0041】
(B)図6は、温度センサ10を外輪22の内周面22bに直接形成する工程(a)乃至(h)を模式的に示す図である。
【0042】
図6(a)のようにネガ型の感光性ポリミドを図2,図4の外輪22の円筒面状の内周面22bにコーティングし、ポリミド層71を形成する。次に、図6(b)のように外輪22の内周面22b上のポリミド層71に露光部72からの露光光72aにより所定のパターンで露光した後、図6(c)のように現像を行なうことによって温度センサの絶縁層73を形成する。
【0043】
次に、図6(d)のように絶縁層73を含む外輪22の内周面22b上にポジ型のレジストをコーティングし、レジスト層74を形成する。次に、図6(e)のように外輪22の内周面22b上のレジスト層74に露光部72からの露光光72aにより所定のパターンで露光した後、図6(f)のように現像を行なうことによってレジスト層74上に図3のセンサ部11及び配線部12,13に対応した凹状の所定のパターン75を形成する(図6(f)では、紙面垂直方向にパターン75が形成される)。
【0044】
次に、図6(g)のようにパターン75を含むレジスト層74上に白金膜76の成膜を蒸着により行う。次に、図6(h)のようにリフトオフプロセスを実行することで、絶縁層73上に所定パターンの白金膜76が露出する。白金膜76が図3のセンサ部11及び配線部12,13を構成する。
【0045】
なお、図6(b)、(e)における露光は、レーザ光等の光以外に、電子線を用いる露光方法でもよい。また、図6(a)、(d)におけるポリミドやレジストのコーティングには、遠心力を用いたスピンコートや電着レジストやスプレーコーティング等を用いることができる。
【0046】
また、図6(g)における金属膜76の成膜は、蒸着以外に、スパッタリングやイオンプレーティングや電鋳などの各種成膜プロセスにより行なうことができ、金属膜厚さの均一化のためには、必要であればプロセス対象部材である外輪22を回転させながら成膜してもよい。
【0047】
以上のようにして、図6(a)〜(h)のようなリソグラフィ工程により、簡単なプロセスで薄膜状の温度センサ10を図2,図4の外輪22の内周面22bに直接形成できる。かかる外輪22を用いて図1のようなセンサ付き軸受20を作製することができる。
【0048】
また、外輪22の内周面22bに直接形成した温度センサ10によれば、図3の複数の金属膜11a〜11dをレース面22aの境界線部22e(図4)に対し正確に平行に形成できかつ境界線部22eに極接近して形成できるので、安定で正確な温度測定及び温度分布検知を実現できる。また、温度センサ10の絶縁層73の厚さを一定にできるために、安定な温度センサを外輪22に形成できる。
【0049】
以上のように、本実施の形態の温度センサ付き軸受20によれば、レース近傍で円周上に温度センサを配置するので、軸受内の温度発生源であるレース面の近傍の温度を安定して測定可能になるとともに、レース面近傍の段階的な温度分布を安定にして検知可能となる。
【0050】
また、温度センサ10をリソグラフィ技術により製造してから、または、直接に形成することで、温度センサを軸受内に高集積に並列に配置することができ、正確な温度測定及び温度分布検知が可能となるとともに、センサを低コストで大量生産できる。また、温度センサ10が薄型構造であるために、温度発生源であるレース面の近傍位置に実装できる。
【0051】
かかる温度センサ付き軸受は、特に、高速回転用の軸受として最適であり、異常温度を早くかつ正確に検知することができ、軸受における温度異常に起因する不具合を事前に正確に予測し、また、軸受寿命の予測が可能となる。
【0052】
以上のように本発明を実施するための最良の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図1では、温度センサ付き軸受として深列玉軸受を例にして説明したが、本発明はこれに限定されず、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト玉軸受、スラスト円筒ころ軸受等の他の転がり軸受に適用できることは勿論である。
【0053】
また、図1の転がり軸受は、外輪固定タイプであったが、内輪固定タイプに構成されてもよく、この場合は、内輪21の外周面であってレース面21aの近傍に温度センサを同様に配置することができる。
【0054】
また、図1では、温度センサ10を一方側(シール33側)に設けたが、他方側(シール30側)に設けてもよく、また、両方に設けてもよい。
【0055】
また、図5,図6の各温度センサ製造工程において、図3の金属膜11a〜11d、12a〜12d、13a〜13dを白金や銀からなる超微粒子が独立状体で分散している分散液を用いてインクジェット方式により形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施の形態の温度センサ付き軸受の要部を示す要部断面図である。
【図2】図1の温度センサ付き軸受の外輪を図1の方向Xからみた図である。
【図3】図1,図2の温度センサ10のパターンを外輪22の内周面22bに配置する前の状態で示す平面図である。
【図4】図3の温度センサ10を内周面22bに配置した外輪22を概略的に示す斜視図である。
【図5】図3,図4の温度センサ10を軸受とは別に製造するための製造工程(a)乃至(d)を模式的に示す図である。
【図6】図3,図4の温度センサ10を外輪22の内周面22bに直接形成する工程(a)乃至(h)を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0057】
10 温度センサ
11 センサ部
11a〜11d 金属膜
12,13 配線部
12a〜12d 金属膜
13a〜13d 金属膜
14 フィルム基板
15 先端部
19,19a,19b 電気配線
20 軸受
21 内輪
21a 軌道レース面、レース面
22 外輪
22a 軌道レース面、レース面
22b 内周面
22e 境界線部
24 玉、転動体
30,33 シール
a 長手方向
b 短手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜状の温度センサを軸受内に設けた温度センサ付き軸受であって、
前記温度センサは、長手方向に延びたセンサ部を備え、前記センサ部の長手方向が軸受のレース近傍の周面に沿うようにして前記レース近傍に配置されていることを特徴とする温度センサ付き軸受。
【請求項2】
前記センサ部は、前記長手方向にそれぞれ並列して延びる複数の金属膜から構成され、前記複数の金属膜により前記レース近傍の周面に略直交する方向における温度を段階的に測定する請求項1に記載の温度センサ付き軸受。
【請求項3】
前記センサ部から延びる配線部を備え、前記配線部は前記金属膜よりも幅広の金属膜から構成される請求項2に記載の温度センサ付き軸受。
【請求項4】
前記センサ部及び前記配線部は一体的に構成されている請求項3に記載の温度センサ付き軸受。
【請求項5】
前記軸受は、レース面を有する外輪と、レース面を有する内輪と、前記レース面間に転動自在に配置される転動体と、を備え、
固定側の軌道輪の周面において前記レース面の近傍に前記温度センサを配置した請求項1乃至4のいずれか1項に記載の温度センサ付き軸受。
【請求項6】
前記温度センサは、前記センサ部が可撓性のある基板に形成されており、前記基板から前記周面に貼り付けられている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の温度センサ付き軸受。
【請求項7】
前記温度センサが前記周面に直接形成されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の温度センサ付き軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−92510(P2009−92510A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263317(P2007−263317)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】