説明

温度対策システム

【課題】第1に、優れた遮熱機能および断熱機能を発揮可能であり、第2に、カラーバリエーションにも富み、第3に、汚れ,傷,光沢低下,磨耗等による機能低下もなく、第4に、もって対象物の強度低下,劣化,照り返し,凍結,結露,周辺環境への悪影響等が回避され、対象物の耐久性,空調効果等が向上する、温度対策システムを提案する。
【解決手段】この温度対策システムBは、対象物3に熱変換塗料5を塗膜として塗布してなり、熱変換塗料5は、遮熱機能および断熱機能を発揮する。そして、夏季など外気温が高い場合は、主に遮熱機能により対象物3の温度上昇を抑制し、冬季など外気温が低い場合は、断熱機能により同じ対象物3の温度低下を抑制する。対象物3としては、屋根,屋上,外壁,橋梁,歩道,車道,駐車場,校庭,広場,プール周囲,タンク,配管等の建造物や,その付帯設備や、船,航空機,車輌等の輸送体が、考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度対策システムに関する。例えば、夏季において温度上昇を抑制すると共に、冬季には温度低下を抑制する、温度対策システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
各種の建造物や,その付帯設備や,輸送体等、例えば、屋根,屋上,外壁,橋梁,歩道,車道,駐車場,校庭,広場,プール周囲,タンク,配管,船,航空機,車輌等については、温度対策が重要なテーマとなっている。夏季など外気温が高い場合は、これらの温度上昇を抑制し、冬季など外気温が低い場合は、これらの温度低下を抑制することが、重要テーマとなってきている。
すなわち、夏季等にあっては、これらの建造物や輸送体が直射日光に晒され、太陽光線が当たると、→太陽光線に含まれる赤外線が吸収されて、熱エネルギーに変換され、→もって、熱が蓄熱されて温度上昇を招き、→外気温よりも高温化することが、多々あった。
冬季等にあっては、外気温の低下に伴い、→これらの建造物や輸送体では、熱伝導が行われ、→外気側へと放熱が行われて、温度低下を招き、→外表面で凍結や結露が発生することも、多々あった。
【0003】
《従来技術》
これに対し、このような温度上昇や温度低下の対策システムとしては、従来、これらの建造物や輸送体に反射方式の遮熱塗料を塗布したり、断熱塗料を塗布することが行われていた。(なお遮熱塗料や断熱塗料は、両者を兼用した1つの塗料として、塗布されることも多かった。)
図2は、この種従来例の説明に供し、要部の断面説明図であり、夏季の例を示す。そしてまず、この種従来例の温度対策システムAで採用されていた遮熱塗料1は、太陽光線の赤外線2を反射する方式よりなっていた。すなわち、この遮熱塗料1は、高い光沢や明度(白や白色に近い薄彩色)を備えてなり、→もって、熱の基になる太陽光線の赤外線2を、反射させてしまうことにより、→塗布対象の建造物や輸送体等の対象物3への吸収を防いで、→熱エネルギーへの変換を阻止し、その温度上昇を防止していた。
又、従来例の温度対策システムAで採用されていた断熱塗料4は、セラミックや発泡材等の熱伝導率の低い素材や、これにて形成される微細かつ多数のバルーン,ポーラス,空気層等よりなり、→塗布対象の建造物や輸送体等の対象物3について、熱伝導を阻止して断熱し→もって、その温度低下や温度上昇を防止していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなこの種従来例の温度対策システムAの遮熱塗料1や断熱塗料4(両者兼用の塗料が使用されることも多い)については、次の問題が指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、この種従来例の遮熱塗料1は、反射方式よりなるが、反射された太陽光線の赤外線2が、別の所で熱エネルギーに変換されてしまう、という問題が指摘されていた。
すなわち、赤外線2を反射した先に、別のビルや家屋などの建造物等があると、→そこで赤外線2の熱エネルギーへの変換が行われて、蓄熱が進み、→そこでの温度上昇を招いてしまうことが多々あり、→周辺環境に悪影響を与え、ヒートアイランド現象を促進することにもなってしまう。
【0005】
《第2の問題点》
第2に、この種従来例の遮熱塗料1は、反射方式よりなるので、汚れ,傷,光沢低下,磨耗等により、遮熱機能が低下してしまう、という問題が指摘されていた。
すなわち、対象物3の経年使用に伴い、表面に汚れが付着したり、傷が付いたり、光沢が低下したり、磨耗等すると、→これらに起因して反射が阻害され、→遮熱機能が低下し、所期の効果が得られなくなることが多々あった。
【0006】
《第3の問題点》
第3に、この種従来例の遮熱塗料1は、反射方式よりなるので、明度の高い薄彩色のものに限定されてしまい、色彩を自在に選択できない、という問題が指摘されていた。
すなわち、明度の低い濃彩色の遮熱塗料1では、→光を反射しにくく、吸収してしまうので、→遮熱機能を十分に発揮できず、→結局、白色系等の薄彩色の遮熱塗料1のみに限定され、→カラーバリエーションに乏しい、という難点があった。
【0007】
《第4の問題点》
第4に、この種従来例の断熱塗料4は、セラミック,発泡材,バルーン,ポーラス,空気層等を主体とするが、十分に機能を発揮するためには、塗布層を厚くすることを要しコスト高となる、という問題が指摘されていた。
すなわち断熱塗料4は、熱伝導,熱移動を阻止して断熱することを機能とするが、塗布層が薄いと、対象物3の温度低下又は温度上昇を確実に阻止できない、との指摘があった。又、バルーン,ポーラス,空気層等が蓄熱体として働き、もって断熱機能を低下させてしまうことが多々ある、との指摘もあった。
【0008】
《本発明について》
本発明の温度対策システムは、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、優れた遮熱機能および断熱機能を発揮可能であり、第2に、カラーバリエーションにも富み、第3に、汚れ,傷,光沢低下,磨耗等による機能低下もなく、第4に、もって対象物の強度低下,劣化,照り返し,凍結,結露,周辺環境への悪影響等が回避され、対象物の耐久性,空調効果等も向上するようになる、温度対策システムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
請求項1の温度対策システムは、該対象物に熱変換塗料を塗布してなり、該熱変換塗料は、遮熱機能を発揮可能であると共に、断熱機能を発揮可能である。そして、夏季など外気温が高い場合は、主に遮熱機能により該対象物の温度上昇を抑制し、又、冬季など外気温が低い場合は、断熱機能により該対象物の温度低下を抑制すること、を特徴とする。
請求項2については、次のとおり。請求項2の温度対策システムでは、請求項1において、該熱変換塗料の遮熱機能は、太陽光線の赤外線が変換された熱エネルギーを蓄熱することなくエネルギー変換し、もって運動エネルギーとして消費,放出することを内容とする。該熱変換塗料の断熱機能は、低い熱伝導率により熱伝導を抑えることを内容とすること、を特徴とする。
【0010】
請求項3については、次のとおり。請求項3の温度対策システムでは、請求項2において、該対象物は、屋根,屋上,外壁,橋梁,歩道,車道,駐車場,校庭,広場,プール周囲,タンク,配管,又はその他の建造物やその付帯設備よりなると共に、その外表面素材が、金属,樹脂,ゴム,アスファルト,コンクリート,セメント石材,又はその他の下地材,防水材,舗装材よりなること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。請求項4の温度対策システムでは、請求項2において、該対象物は、船,航空機,車輌,その他の輸送体よりなると共に、その外表面素材が、金属又は樹脂よりなること、を特徴とする。
請求項5については、次のとおり。請求項5の温度対策システムでは、請求項3又は4において、該熱変換塗料は、濃彩色でも機能を発揮可能であり、もって明度の高いものから低いものまで、色彩を自在に選択可能である。これと共に、汚れ,傷,光沢低下,又は磨耗による機能低下も回避されること、特徴とする。
請求項6については、次のとおり。請求項6の温度対策システムでは、請求項5において、該熱変換塗料は、プライマーを介して該対象物に塗布されること、を特徴とする。請求項7については、次のとおり。請求項7の温度対策システムでは、請求項5において、2度塗り塗布された該熱変換塗料間に、骨材が散布されていること、を特徴とする。
【0011】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)本発明の温度対策システムは、対象物の温度対策用に適用される。
(2)そして、対象物に熱変換塗料が塗布される。
(3)塗布された熱変換塗料は、遮熱機能と断熱機能を発揮可能である。
(4)そこで、夏季等の外気温が高い場合は、対象物の温度上昇が抑えられる。すなわち遮熱機能により、赤外線に基づく熱エネルギーが、蓄熱されることなく運動エネルギーとして変換,消費,放出される。更に、断熱機能も補足的に機能し、高い外気温の対象物への熱伝導が遮られる。
(5)これに対し、冬季等の外気温が低い場合は、対象物の温度低下が抑えられる。すなわち断熱機能により、対象物から低い外気温への熱伝導が抑えられる。
(6)この熱変換塗料は、濃彩色でも遮熱機能等を発揮可能であり、もって白色系の薄彩色から黒色系の濃彩色まで、自在に選択使用可能である。
(7)更に、この熱変換塗料は、汚れ,傷,光沢低下,磨耗等により、遮熱機能等が低下することもない。
(8)さて、対象物の夏季等の温度上昇や冬季等の温度低下が抑えられるので、対象物に応じ各種の作用を発揮可能である。例えば、室温の低下や上昇の阻止や、伸び,たわみ,強度低下の回避や、防水材等の劣化防止や、道路等の凍結や結露の回避や、道路等の照り返し防止や、プール周辺の足裏熱の回避、等々。
(9)さてそこで、本発明の温度対策システムは、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0012】
《第1の効果》
第1に、優れた遮熱機能および断熱機能を発揮し、対象物の夏季等の温度上昇や冬季等の温度低下を、抑制することができる。
すなわち、本発明の温度対策システムでは、まず、採用された熱変換塗料の遮熱機能により、夏季等の太陽光線に基づく対象物の温度上昇が確実に抑えられ。又、補助的ではあるが、断熱機能によっても外気温の熱伝導が抑えられ、この面からも対象物の温度上昇が抑えられる。
他方、冬季等においては、塗布された熱変換塗料の断熱機能により、外気温への熱伝導が抑えられ、もって対象物の温度低下が確実に抑えられる。
このように、本発明の温度対策システムでは、前述したこの種従来例の温度対策システムのように、反射方式の遮熱塗料や断熱塗料を用いるのではなく、熱変換塗料の採用により、対象物の温度上昇や温度低下を抑制可能となる。
【0013】
《第2の効果》
第2に、カラーバリエーションにも富んでいる。すなわち、本発明の温度対策システムにおいて採用された熱変換塗料は、遮熱機能等を、その明度に左右されることなく発揮可能である。上述した第1の効果は、広いカラーバリエーションのもとで実現される。
前述したこの種従来例の温度対策システムの遮熱塗料のように、反射方式のため、明度の高いものに限定されることはない。薄彩色から濃彩色まで、色彩の選択肢が大きく広がる。
【0014】
《第3の効果》
第3に、汚れ,傷,光沢低下,磨耗等による機能低下もない。すなわち、本発明の温度対策システムにおいて採用された熱変換塗料の遮熱機能等は、表面の汚れ付着,傷付き,光沢低下,磨耗等により、機能低下する虞がない。前述した第1の効果は、変わらず持続される。
前述したこの種従来例の温度対策システムの遮熱塗料のように、反射方式のため、汚れ,傷,光沢低下,磨耗等により機能が低下する虞はない。
【0015】
《第4の効果》
第4に、もって対象物の強度低下,劣化,照り返し,凍結,結露,周辺環境への悪影響等々が回避され、対象物の耐久性,空調効果等も向上するようになる。
すなわち、本発明の温度対策システムは、上述した第1のように遮熱機能および断熱機能により、対象物の夏季等の温度上昇や、冬季等の温度低下を抑制する。
従って、対象物に応じ次の効果を発揮する。例えば、熱膨張収縮による強度や、耐久性の低下、熱膨張収縮による劣化、室温の低下や上昇、冬季等における凍結や結露、夏季等における照り返しや足裏熱、等々が回避されるようになる。
もって、対象物の耐久性向上、空調効果向上、室内の快適温度維持、これらによる省エネ効果等に寄与することができる。前述したこの種従来例の温度対策システムの遮熱塗料のように、反射方式のため、周辺環境の温度上昇を招き、ヒートアイランド現象を促進してしまうようなこともない。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
《図面について》
以下、本発明の温度対策システムを、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。
図1および図3は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。そして図1は、要部の断面説明図であり、(1)図は、夏季の例を示し、(2)図は、冬季の例を示し、(3)図は、塗布施工方式の1例を示す。図3は、橋の実施例に関し、その冬季の温度変化グラフである。
【0017】
《温度対策システムBについて》
まず、本発明の温度対策システムBの概要について、図1の(1)図,(2)図を参照して説明する。
この温度対策システムBは、対象物3に熱変換塗料5を塗膜として塗布してなり、熱変換塗料5は、反射方式によらない遮熱機能を発揮可能であると共に、断熱機能も発揮可能である。
もって、夏季など外気温が高い場合は、主に遮熱機能により対象物3の温度上昇を抑制し、又、冬季など外気温が低い場合は、断熱機能により同じ対象物3の温度低下を抑制する。
【0018】
これらについて、更に詳述する。まず、本発明で採用された熱変換塗料5の遮熱機能は、赤外線2が変換された熱エネルギーを蓄熱することなくエネルギー変換し、もって運動エネルギーとして消費,放出することを内容とする。
すなわち、この熱変換塗料5の遮熱機能は、反射方式のこの種従来例の遮熱塗料1(図2を参照)とは異なり、塗膜中に蓄熱しようとする熱を急激放出する放熱方式が基づく。つまり、太陽光線等に含まれ熱の基になる赤外線2に対応する方式として、反射方式によらず、熱交換方式,放熱方式に基づく。
太陽光線等に含まれる赤外線2は、→熱変換塗料5の塗膜に当たると、→熱エネルギーに変換されて、塗膜中に分散,移動するが、→塗膜中の熱交換作用の強い放熱物質に接触することにより、→直ちにエネルギー変換される。→そして、このエネルギー変換が表層で起きる為に、大半の熱は運動エネルギーとして消費,消化,放出される。→このようにして熱は、熱変換塗料5の遮熱機能により、熱変換塗料5の塗膜内部に蓄熱されることなく、直ちに急激に放出,放熱されてしまう。
なお熱変換塗料5は、このような遮熱機能を十分に発揮可能な塗布厚に設定される。この熱変換塗料5は、例えば、アクリルポリオールを主剤とし、イソシアネート樹脂を硬化剤として用いてなる。又、熱変換塗料5は、正確には温度依存性熱変換塗料と称されるが、熱交換塗料と称されることもある。
【0019】
次に、この熱変換塗料5の断熱機能は、多くの場合、対象物3より低い熱変換塗料5の熱伝導率により、対象物3と外気間の熱伝導を抑えることを内容とする。この断熱機能は、夏季等においては、上述したメイン機能である遮熱機能の補助的機能,補足的機能となるが、冬季等においてはメイン機能となる。
そして、この熱変換塗料5の断熱機能は、まず、対象物3の外表面素材である金属,樹脂,ゴム,アスファルト,コンクリート,セメント石材,その他の下地材,防水材,舗装材等に比し、熱変換塗料5の熱伝導率が、原則として低いことに基づく。これと共に熱変換塗料5は、このような低い熱伝導率に基づき、対象物3と外気間の熱伝導,熱移動を阻止可能な塗布厚に設定される。つまり、熱変換塗料5は前述した遮熱機能を発揮可能な塗布厚よりなると共に、断熱機能を発揮可能な塗布厚とされる。
なお、このような熱変換塗料5の断熱機能を補強すべく、必要に応じ骨材6(図1の(3)図を参照)が使用される。骨材6は、一般的には塗膜への厚み付与により塗膜の耐久性向上のために使用されるが、このような断熱機能増強のために使用することも考えられる。
本発明の温度対策システムBは、概略このようになっている。
【0020】
《対象物3について》
次に、本発明の温度対策システムBの適用対象について、図1の(1)図,(2)図を参照して説明する。
本発明の適用対象、つまり熱変換塗料5を塗布する対象物3としては、ビルや家屋等の建造物や,その付帯設備が代表的である。すなわち、屋根,屋上,外壁,橋梁,歩道,車道,駐車場,歩道橋,校庭,広場,プール周囲,石油タンク,ガスタンク,配管等々が、代表的である。そして、このような建造物や付帯設備よりなる対象物3の外表面素材は、例えば、金属,樹脂,ゴム,アスファルト,コンクリート,セメント石材,又はその他の下地材,防水材,舗装材よりなる。
そこで、熱変換塗料5を塗布する対象物3としては、例えば、アスファルト系,コンクリート系,ゴムチップ系等の歩道や車道や、アルミ板や鉄板等の金属成形平板系やスレート系の屋根や、アスファルト系,ウレタン系,ゴム系,FRP系,塩ビ系等の防水関係や、各種素材の外壁関係等々が、例示される。
なお、熱変換塗料5を塗布する対象物3は、このような建造物等に限定されるものではなく、更に、船,航空機,車輌,その他の輸送体も考えられる。これらの外表面素材は、金属又は樹脂よりなる。
本発明の対象物3は、このようになっている。
【0021】
《熱変換塗料5の施工について》
次に、本発明の温度対策システムBの施工について、図1の(1)図,(2)図,(3)図等を参照しつつ説明する。本発明で採用された熱変換塗料5は、対象物3の外表面素材に対し塗膜層として、塗布施工される。塗布量は、例えば0.1〜0.2kg/m程度である。
そして熱変換塗料5は、多くの場合、プライマー7を介して、対象物3の外表面素材に塗布されるが、外表面素材がアスファルトの場合は、プライマー7を介することなく塗布される。プライマー7は、対象物3への付着性,密着性,耐食性の付与,増加のため、対象物3の外表面素材に対し、下地ごしらえ用として下塗りされる。
又、熱変換塗料5は、対象物3が例えば屋根や防水関係等の場合は、2度塗り塗布(中塗りと上塗り)されることが多く、対象物3が道路等の場合は、1度塗り塗布されることが多い。なお、図1の(3)図の例では、2度塗りされた熱変換塗料5間に、骨材6が散布されている。骨材6としては、砂,砂利,粉砕石,火山灰等が用いられる。
そして、熱変換塗料5の塗布施工ステップについては、次の通り。まず、対象物3の外表面素材のゴミ,土等の除去,清掃が行われ、→それから、必要に応じ目荒し、そして乾燥確認の後、→多くの場合、プライマー7を塗布してから、→熱変換塗料5が塗布される。→塗布後は、少なくとも2〜3時間が乾燥,養生時間とされる。なお、プライマー7や熱変換塗料5の塗布は、吹付け材,ローラー,刷毛等を使用して行われる。
熱変換塗料5の施工は、このように行れる。
【0022】
《作用等》
本発明の温度対策システムBは、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)この温度対策システムBは、各種の建造物,その付帯設備,輸送体等の対象物3について、その温度対策用に適用される。
【0023】
(2)そして、対象物3に熱変換塗料5が、塗膜として塗布される。その塗布施工に際しては、多くの場合、プライマー7を介すると共に、対象物3の外表面素材に対し2度塗り塗布される(図1の(3)図も参照)。
【0024】
(3)このように塗布された熱変換塗料5は、遮熱機能と断熱機能を発揮可能である。
すなわち遮熱機能により、赤外線2が変換された熱エネルギーをエネルギー変換し、もって運動エネルギーとして消費,放出することが可能である(図1の(1)図を参照)。更に、低い熱伝導率に基づく断熱機能により、熱伝導を抑えることが可能である(図1の(2)図を参照)。
【0025】
(4)さてそこで、この温度対策システムBによると、夏季等の外気温が高い場合は、対象物3の温度上昇が抑えられる。
すなわち、例えば対象物3が直射日光に晒された場合は、塗布された熱変換塗料5の遮熱機能により、太陽光線の赤外線2に基づく熱エネルギーが運動エネルギーとして変換,消費,放出され、熱変換塗料5や対象物3に蓄熱されることは、回避される(図1の(1)図を参照)。
更に、熱変換塗料5の断熱機能も補足的に機能し、高い外気温の対象物3への熱伝導が遮られる。
【0026】
(5)これに対し、この温度対策システムBによると、冬季等の外気温が低い場合は、対象物3の温度低下が抑えられる。
すなわち、塗布された熱変換塗料5の断熱機能により、対象物3から低い外気温への熱伝導,熱放出が、抑えられる(図1の(2)図を参照)。
【0027】
(6)そして、この温度対策システムBで用いられる熱変換塗料5は、反射方式の温度対策システムAで用いられていた遮熱塗料1のように(図2を参照)、色彩が明度の高いものに限定されることはなく、明度の低い濃彩色でも、遮熱機能や断熱機能を変わらず発揮可能である。白色系の薄彩色から黒色系の濃彩色まで、各種の色彩を自在に選択使用可能である。
【0028】
(7)更に、この熱変換塗料5は、反射方式の温度対策システムAで用いられていた遮熱塗料1のように、経年使用等の使用により機能低下することがない。すなわち、汚れ,傷,光沢低下,磨耗等により、遮熱機能や断熱機能が低下する虞はない。
【0029】
(8)さて前述したように、この温度対策システムBによると、熱変換塗料5の遮熱機能発揮と断熱機能発揮により、対象物3について、夏季等の温度上昇や冬季等の温度低下が抑制される。
そこで対象物3に応じ、各種の作用等を発揮可能である。例えば、室温の低下や上昇の阻止や、熱膨張収縮抑制による伸び,たわみ,強度低下の回避や、熱膨張収縮抑制による防水材等の劣化防止や、冬季等における道路等の凍結や結露の回避や、夏季等における道路等の照り返し防止や、プール周辺の足裏熱の回避、等々。
本発明の作用等は、このようになっている。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の実施例について、説明する。図3は、本発明の温度対策システムBの実施例を示し、橋の冬季の温度変化グラフである。
すなわち、冬季の橋について、本発明の温度対策システムBを適用して熱変換塗料5を塗布した実験例1と、何も対策を施さなかった実験例2とを、温度比較した。図中、想像線表示は外気温である。以下これらについて、詳述する。
【0031】
・その背景:冬期において、外気温がマイナス領域付近になると、一般の舗装道路面は凍結していない時でも、橋の舗装道路面は路面凍結してしまい、運転ミス,スリップ事故が発生し易かった。
・実験例1:そこで実験例1では、熱変換塗料5を、橋の下部分を構成するPC(パネルコンクリート)床板下面に対し、塗膜として塗布した(塗布厚100μm程度)。そして、その橋上部分を構成するアスファルト舗装道路面について、その温度変化を測定した。
・実験例2:何も対策を施さなかった一般例を示す。そして、その橋上部分を構成するアスファルト舗装道路面について、その温度変化を測定した。
・実験日時:2008年2月17日 午前0.00時から〜午後24.00時迄
・実験場所:佐賀県佐賀市
・測定機器:株式会社チノー製の温度計測器(グラフィックロガー)
【0032】
その結果、次のデータが得られた。まず、何も対策を施さなかった実験例2の橋では、図3中で矢示表示したように、外気温がマイナス領域に移行している環境下の午前1.00〜6.00過ぎにかけて、道路面温度もマイナス域となり、道路面に路面凍結域が発生した。
これに対し、実験例1の橋では、午前1.00〜6.00過ぎにかけて、道路面温度はプラス域を維持しており、道路面に路面凍結域は発生しなかった。実験例2とは、温度差が確実に生じる結果となった。このように冬季において、熱変換塗料5の断熱機能に基づき、対象物3である橋の道路面の温度低下抑制効果が証明され、橋梁の凍結防止工法としての優秀性が裏付けられた。
なお第1に、この実験例1では、熱変換塗料5を橋の下部分のPC床板下面に対して塗布していたが、橋の上部分の道路面に対して塗布すれば、断熱機能そして温度低下抑制効果が、一段と促進されると推測される。
なお第2に、熱変換塗料5は勿論、遮熱機能も発揮し、夏季における道路面の温度上昇抑制効果も発揮する。橋の例に限らず、対象物3一般の大体の目安としては、外気温が20℃を越えると遮熱機能が発揮され(断熱機能も補足的に発揮され)、外気温が5℃未満だと断熱機能が発揮され、5℃〜20℃間が機能効果の休止域とされる。
実施例については、以上の通り。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る温度対策システムについて、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、要部の断面説明図である。そして(1)図は、夏季の例を示し、(2)図は、冬季の例を示し、(3)図は、塗布施工方式の1例を示す。
【図2】この種従来例の温度対策システムの説明に供し、要部の断面説明図であり、夏季の例を示す。
【図3】本発明に係る温度対策システムについて、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、橋の実施例に関し、その冬季の温度変化グラフである。
【符号の説明】
【0034】
1 遮熱塗料(従来例)
2 赤外線
3 対象物
4 断熱塗料(従来例)
5 熱変換塗料(本発明)
6 骨材
7 プライマー
A 温度対策システム(従来例)
B 温度対策システム(本発明)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の温度対策システムであって、該対象物に熱変換塗料を塗布してなり、該熱変換塗料は、遮熱機能を発揮可能であると共に、断熱機能を発揮可能であり、
夏季など外気温が高い場合は、主に遮熱機能により該対象物の温度上昇を抑制し、又、冬季など外気温が低い場合は、断熱機能により該対象物の温度低下を抑制すること、を特徴とする温度対策システム。
【請求項2】
請求項1に記載した温度対策システムにおいて、該熱変換塗料の遮熱機能は、太陽光線の赤外線が変換された熱エネルギーを蓄熱することなくエネルギー変換し、もって運動エネルギーとして消費,放出することを内容とし、
該熱変換塗料の断熱機能は、低い熱伝導率により熱伝導を抑えることを内容とすること、を特徴とする温度対策システム。
【請求項3】
請求項2に記載した温度対策システムにおいて、該対象物は、屋根,屋上,外壁,橋梁,歩道,車道,駐車場,校庭,広場,プール周囲,タンク,配管,又はその他の建造物やその付帯設備よりなると共に、その外表面素材が、金属,樹脂,ゴム,アスファルト,コンクリート,セメント石材,又はその他の下地材,防水材,舗装材よりなること、を特徴とする温度対策システム。
【請求項4】
請求項2に記載した温度対策システムにおいて、該対象物は、船,航空機,車輌,その他の輸送体よりなると共に、その外表面素材が、金属又は樹脂よりなること、を特徴とする温度対策システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載した温度対策システムにおいて、該熱変換塗料は、濃彩色でも機能を発揮可能であり、もって明度の高いものから低いものまで、色彩を自在に選択可能であると共に、
汚れ,傷,光沢低下,又は磨耗による機能低下も回避されること、特徴とする温度対策システム。
【請求項6】
請求項5に記載した温度対策システムにおいて、該熱変換塗料は、プライマーを介して該対象物に塗布されること、を特徴とする温度対策システム。
【請求項7】
請求項5に記載した温度対策システムにおいて、少なくとも2度塗り塗布された該熱変換塗料間に、骨材が散布されていること、を特徴とする温度対策システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−299404(P2009−299404A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157379(P2008−157379)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(506356106)株式会社ハットリ工業 (5)
【Fターム(参考)】