説明

温度検知用複合線および温度検知用複合線を備える光源

【課題】放電灯の異常温度を迅速に検知できる複合線を提供する。
【解決手段】絶縁体4は放電灯1の正常な温度より高い温度を融点とする熱可塑性樹脂であり、外部の温度が直接伝わるように露出している。そして絶縁体4に放電灯1の温度が伝わりやすいように温度検知用複合線3は放電灯1に巻き付けられている。異常な放電により放電灯1の温度が上昇し絶縁体4の融点に達すると、放電灯1の温度が即座に絶縁体4に伝わり、絶縁体4が溶解し電流線5と検知線6とが短絡する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯の異常な温度を検知する温度検知用複合線に関する。
【背景技術】
【0002】
異常な放電により放電灯の温度が上昇すると、放電灯はガラスが溶融するほどの高温になる危険がある。その危険を回避するために、口金内部や電極付近のバルブに温度ヒューズが設置される。温度ヒューズとは、過熱を保護する部品のことである。温度ヒューズは、放電灯と直列に接続されており、放電灯の温度の上昇を検知する。そして、放電灯の温度が所定の温度(以下「異常な温度」という)に達すると、温度ヒューズ内の可溶体が溶断し、放電灯との接続が遮断される。これにより、放電灯への電力の供給が停止する。
【0003】
しかし、放電灯には様々なサイズがあり、放電灯のサイズが小さいと、温度ヒューズの設置場所が十分に確保できなかった。その場合、温度ヒューズと放電灯とが直列に接続できず、放電灯の異常が検知できなかった。
【0004】
これに対して、特許文献1では、放電灯の大きさに関わらず放電灯の異常を検知する技術が開示されている。
【0005】
図5は特許文献1で開示された溶解を利用して異常な温度を検知するための高温検知線11を示す模式図である。高温検知線11は、高温を検知する線であり、例えば加熱や火災の発生を検知するために用いられる。特許文献1の高温検知線11は一例としてガスバーナー(不図示)の炎で燃焼されている。
【0006】
高温検知線11は、中心導体14、絶縁体15、外部導体17、および外皮19を有している。熱可塑性樹脂からなる絶縁体15は中心導体14を覆っており、外部導体17は絶縁体15を覆っている。また、外皮19は外部導体17の外側を覆っている。
【0007】
高温検知線11が高温の炎にさらされると、絶縁体15が溶解し、中心導体14と外部導体15とが短絡して高温であることを知らせる。
【特許文献1】特開平8−212838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、放電灯ではプラスティック類の器具があることから、異常な発熱を時間の遅れなく検知する必要があり、検知に時間を要すると、器具が溶けたり、器具の損傷がひどくなる。特許文献1の高温検知線11を放電灯の異常温度の検知を用いた場合、放電灯の温度が異常な温度(150℃から200℃)に達しても、絶縁体15は、外部導体17および外皮19によって覆われているため、熱が即座に伝わらず、溶解に時間を要する可能性があった。その結果、中心導体11と外部導体17との短絡にも時間を要することとなり、放電灯の異常な温度が迅速に検知できなかった。
【0009】
本発明の目的は、放電灯の異常温度を迅速に検知できる複合線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の温度検知用複合線は、
放電灯の温度異常を検知するための温度検知用複合線であって、
前記放電灯の温度異常を検知するための電流が流れる電流線と
前記電流線と接触して電流が流れることで前記放電灯の温度異常の検知を可能にする検知線と、
自身を外部に露出させながら前記電流線と前記検知線を絶縁しており、前記放電灯からの熱で所定の温度になると溶解して前記電流線と前記検知線とを短絡させる絶縁体と、を有する。
【0011】
本発明によれば、異常な放電により放電灯の温度が上昇し絶縁体の所定の温度に達すると、絶縁体が溶解し電流線と検知線とが短絡する。温度検知用複合線は絶縁体へ熱の伝導を遮る外皮などを有しておらず、放電灯の温度が所定の温度に達したとき、温度検知用複合線は熱を即座に伝えることができる。これにより温度検知用複合線は、溶解や短絡に時間を要せず、異常温度を迅速に検知できる。
【0012】
また、前記絶縁体は、前記電流線を外部に露出させないように前記電流線を覆っていてもよい。これによれば、埃や塵が蓄積せず、漏電の危険性を低減できる。
【0013】
また、前記検知線は、前記電流線を覆った前記絶縁体に螺旋状に巻きつけられていてもよい。
【0014】
これによれば、絶縁体が溶解したときに検知線がどういう向きに動いても電流線と短絡できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、放電灯の異常温度を迅速に検知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は本実施形態における放電灯1の模式図である。放電灯1はバルブ2および複合線3を有している。
【0018】
放電灯1は、希ガス放電を利用して発光するランプであり、例えば冷陰極ランプや熱陰極ランプなどである。冷陰極ランプは液晶テレビのバックライトとして使用され、熱陰極ランプは蛍光灯として使用されている。放電灯1はバルブ2を有しており、バルブ2の表面上には複合線3が巻かれている。なお、バルブ2の正常温度はおよそ70℃である。
【0019】
バルブ2は、ガラスで密閉された容器であり、内部に蛍光体が塗布している。冷陰極ランプの場合には硼珪酸ガラスがバルブ2に使用され、熱陰極ランプの場合には、ソーダガラスがバルブ2に使用される。また、バルブ2内には、希ガスと微量の水銀が封入されている。希ガスは、例えばアルゴンやネオンなどである。
【0020】
ニッケルを使用した電極間(不図示)に高電圧が印加されると、バルブ2内で放電が起こり電子が放出される。放出された電子がバルブ2内の水銀の原子や希ガスの原子と衝突すると、衝突した原子は励起する。原子が励起すると紫外線が発生する。そして、発生した紫外線が蛍光体に照射されると可視光線が発光する。
【0021】
このような正常な発光状態ではバルブ2の温度は上述したように70℃程度である。しかし、安定器の劣化などによって異常な状態となるとバルブ2の温度は上述したように150℃から200℃になる。
【0022】
複合線3は、バルブ2の温度を検知できる位置に巻かれており、バルブ2の温度を検知する。
【0023】
図2Aは本実施形態におけるバルブ2内が正常温度のときの複合線3の状態を示す模式図である。図2Bは本実施形態におけるバルブ内2が異常温度のときの複合線3の状態を示す模式図である。
【0024】
まず、図2Aを参照して複合線3の構成について詳細に説明する。複合線3は、絶縁体4、電流線5,および検知線6を有している。
【0025】
絶縁体4は、バルブ2の正常温度より高い温度を融点とする熱可塑性樹脂の素材で作られており、例えばナイロンである。ナイロンの融点はおよそ150℃から180℃程度である。絶縁体4は電流線5と検知線6とを絶縁している。また、絶縁体4は、電流線5を外部に露出しないように電流線5を覆っている。これによれば、塵や埃が蓄積せず、漏電の危険性を低減できる。
【0026】
電流線5は検知線6と短絡しないように絶縁体4で覆われている。電流線5には微量の電流が流れている。
【0027】
検知線6は、絶縁体4が溶解すると電流線5と短絡するように絶縁体4に螺旋状に巻き付けられている。これによれば、絶縁体4が溶解したときに検知線6がどういう向きに動いても電流線5と短絡できる。
【0028】
次に、図2Aおよび図2Bを参照して複合線3の状態変化について詳細に説明する。図2Aを参照すると、絶縁体4は電流線5と検知線6とを絶縁している。バルブ2の温度が正常温度であるとき、電流線5に流れている電流は検知線6には流れない。異常な放電が起こってバルブ2の温度が上昇し絶縁体4の融点に達すると、絶縁体4が溶解し、図2Bに示されているように電流線5と検知線6とが短絡する。
【0029】
図2Bを参照すると、絶縁体4の一部が溶解し電流線5と検知線6とが短絡している。電流線5には微量の電流が流れており、短絡した箇所から検知線6に微量の電流が流れ込む。検知線6は流れ込んだ電流により放電灯1の異常を検知できる。
【0030】
図3Aは電源から放電灯1に電力を供給している例を示す図である。図3Bは電源から放電灯1に電力の供給を遮断する例を示している図である。
【0031】
まず、図3Aを参照して実施形態の構成について詳細に説明する。光源は、放電灯1、電流線5、検知線6、インバータ7、電流ヒューズ8、およびアース9,10を有している。
【0032】
インバータ7はインバータ電源(不図示)から供給される直流電力を交流電力に変換して放電灯1に供給する。
【0033】
電流ヒューズ8は内部抵抗と可溶体を備えている。電流ヒューズ8の内部抵抗は検知線6から電流が流れ込むと熱を発する。電流ヒューズ8の可溶体は内部抵抗で発した熱が所望の温度に達すると溶解する。
【0034】
次に、図3Aおよび図3Bを参照して実施形態の状態変化について詳細に説明する。図3Aを参照すると、放電灯1が正常温度のときには、電流ヒューズ8がインバータ電源とインバータ7とを接続しており、インバータ電源からの電力はインバータ7に電流ヒューズ8を介して供給されている。異常な放電によりバルブ2の温度が上昇し絶縁体4の融点に達すると、絶縁体4は溶解する。
【0035】
図3Bを参照すると、可溶体が溶解し回路が遮断されている。絶縁体4が溶解すると、電流線5と検知線6とが短絡し、電流線5に流れていた電流が短絡した箇所から検知線6に流れる。そして、検知線6からの電流によって電流ヒューズ8の内部抵抗で熱が発生し、その熱で電流ヒューズ8の可溶体は溶断する。これにより、インバータ電源からインバータ7への電力の供給は遮断される。
【0036】
図4は、本実施形態におけるバルブ2が異常な温度になったときの状態の変化を示すフローチャートである。電流線5には微量な電流が流れている。また、バルブ2が正常温度であるとき、絶縁体4は電流線5と検知線6とを絶縁しており、インバータ電源から放電灯1へ電力が供給されている。
【0037】
バルブ2の温度が上昇し絶縁体4の融点に達すると、絶縁体4は溶解する(ステップ50)。絶縁体4が溶解すると、電流線5と検知線6とが短絡し、電流線5に流れている電流が短絡した箇所から検知線6に流れる(ステップ51)。検知線6に流れた電流は電流ヒューズ8に流れ込み、電流ヒューズ8の内部抵抗が過熱する(ステップ52)。内部抵抗が加熱すると、電流ヒューズ8内の可溶体が溶解する(ステップ53)。可溶体が溶解すると、インバータ電源からの電力の供給は遮断される(ステップ54)。
【0038】
以上説明したように本実施形態によれば、絶縁体4は放電灯1の正常な温度より高い温度を融点とする熱可塑性樹脂であり、外部の温度が直接伝わるように露出している。そして絶縁体4にバルブ2の温度が伝わりやすいように複合線3はバルブ2に巻き付けられている。それ故、異常な放電によりバルブ2の温度が上昇し絶縁体4の融点に達すると、バルブ2の温度が即座に絶縁体4に伝わり、絶縁体4が溶解し電流線5と検知線6とが短絡し、バルブ2の異常を迅速に検知できる。
【0039】
また、放電灯1は電力の供給を制御する回路と接続している。バルブ2の温度が正常温度であれば、インバータ電源から放電灯1へ電力を供給し、バルブ2の温度が異常な温度であれば、インバータ電源から放電灯1へ電力の供給を遮断する。これにより、異常な温度のときにインバータ電源からの電力の供給が原因で発火する危険を回避できる。
【0040】
また、光源を複数本並べた液晶用バックライトの場合、各光源に配置した複合線3を直列に繋ぐことで、バックライト内で異常温度が発生した時にすべての光源への電力供給を停止できる。これにより、各光源に温度ヒューズを搭載した場合と比較して、容易に複数の光源の検知ができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態における放電灯1の模式図である。
【図2A】本実施形態におけるバルブ2内が正常温度のときの複合線3の状態を示す模式図である。
【図2B】本実施形態におけるバルブ2内が異常温度のときの複合線3の状態を示す模式図である。
【図3A】電源から放電灯1に電力を供給している例を示す図である。
【図3B】電源から放電灯1に電力の供給を遮断している例を示す図である。
【図4】本実施形態におけるバルブ2が異常な温度になったときの状態の変化を示すフローチャートである。
【図5】溶解を利用して異常な温度を検知するための従来の高温検知線を示す模式図である。
【符号の説明】
【0042】
1 放電灯
2 バルブ
3 複合線
4 絶縁体
5 電流線
6 検知線
7 インバータ
8 電流ヒューズ
9,10 アース
11 高温検知線
14 中心導体
15 絶縁体
17 外部導体
19 外皮
50〜54 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電灯の温度異常を検知するための温度検知用複合線であって、
前記放電灯の温度異常を検知するための電流が流れる電流線と、
前記電流線と接触して電流が流れることで前記放電灯の温度異常の検知を可能にする検知線と、
自身を外部に露出させながら前記電流線と前記検知線を絶縁しており、前記放電灯からの熱で所定の温度になると溶解して前記電流線と前記検知線とを短絡させる絶縁体と、を有する温度検知用複合線。
【請求項2】
前記絶縁体は、前記電流線を外部に露出させないように前記電流線を覆っている、請求項1に記載の温度検知用複合線。
【請求項3】
前記検知線は、前記電流線を覆った前記絶縁体に螺旋状に巻きつけられている、請求項2に記載の温度検知用複合線。
【請求項4】
前記絶縁体は熱可塑性樹脂である請求項1から3のいずれか1項に記載の温度検知用複合線。
【請求項5】
異常温度を検知するための温度検知用複合線を備える光源であって、
所望の明るさで発光する放電灯と、
前記放電灯の温度異常を検知するための電流が流れる電流線と、該電流線と接触して電流が流れることで前記放電灯の温度異常の検知を可能にする検知線と、自身を外部に露出させながら前記電流線と前記検知線を絶縁する絶縁体とを備え、該絶縁体が前記放電灯からの熱で所定の温度になると溶解して前記電流線と前記検知線とを短絡させる温度検知用複合線と、を有する光源。
【請求項6】
前記絶縁体は、前記電流線を外部に露出させないように前記電流線を覆っている、請求項5に記載の光源。
【請求項7】
前記検知線は、前記電流線を覆った前記絶縁体に螺旋状に巻きつけられている、請求項6に記載の光源。
【請求項8】
前記絶縁体は熱可塑性樹脂である請求項5から7のいずれか1項に記載の光源。
【請求項9】
前記光源は、前記放電灯へ電力の供給を行う外部回路を更に有しており、
前記外部回路は、前記検知線からの電流を検知すると、前記放電灯へ電力の供給を遮断する、請求項5から8に記載の光源。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−107285(P2008−107285A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292536(P2006−292536)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】