説明

温度補償型圧電発振器

【課題】 小型化に対応させる。
【解決手段】 第一の凹部K1が形成された第一の容器体10と、第一の凹部K1内の底面に搭載される第一の集積回路素子20と、第一の凹部K1内であってこの第一の集積回路素子20に接着される第二の集積回路素子30と、第二の凹部K2を有し第一の凹部K1を封止しつつ第二の集積回路素子30が接続される第二の容器体40と、第二の凹部K2内の底面に搭載される圧電振動素子60と、第二の凹部K2を封止する蓋体50とを備え、第一の集積回路素子20には少なくとも温度センサが備えられ、第二の集積回路素子30には少なくとも発振回路が備えられて構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる温度補償型圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯用通信機器等の電子機器に温度補償型圧電発振器が用いられている。従来の温度補償型圧電発振器200は、例えば、図3に示すように、凹部K1を有し、その凹部K1内に集積回路素子220を搭載した第一の容器体210が、圧電振動素子260が凹部K2内部に搭載されて蓋体250で気密封止される第二の容器体240に接合されて構成されている。このような温度補償型圧電発振器200は、集積回路素子220を搭載するために、集積回路素子220より大きい凹部K1が第一の容器体210に形成されている。また、第二の容器体240と接合し、この第二の容器体240を支持する必要があるために、第一の容器体210の壁厚は、第二の容器体240を支持するに足りる厚さとなっている。例えば、第一の容器体210の壁厚は、第二の容器体240の壁厚より厚くなるように形成されている(例えば、特許文献1参照)。
また、図4に示すように、図3に示すような第一の容器体210を用いずに、第二の容器体340の四隅に球状の導電体370を設けて外部接続端子とし、第二の容器体340の中央部分に集積回路素子320を搭載する構成の温度補償型圧電発振器300が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−36814号公報(段落0013〜0030、図2)
【特許文献2】特開2003−46251号公報(段落0010〜0023、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のような第一の容器体と第二の容器体とを用いた構造の温度補償型圧電発振器の場合、小型化を進めようとすると、集積回路素子を搭載する凹部の大きさを確保しなければならないため、第一の容器体の壁厚が薄くなり、第二の容器体を支持できなくなる恐れがある。
また、第一の容器体を用いずに外部接続端子に球状の導電体を用いた構造の温度補償型圧電発振器の場合、小型化を進めようとすると、球状の導電体の直径を小さくするのが困難となる。
【0005】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、小型化に対応した温度補償型圧電発振器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、本発明の温度補償型圧電発振器は、第一の凹部が形成された第一の容器体と、前記第一の凹部内の底面に搭載される第一の集積回路素子と、前記第一の凹部内であってこの第一の集積回路素子に接着される第二の集積回路素子と、第二の凹部を有し前記第一の凹部を封止しつつ前記第二の集積回路素子が接続される第二の容器体と、前記第二の凹部内の底面に搭載される圧電振動素子と、前記第二の凹部を封止する蓋体とを備え、前記第一の集積回路素子には少なくとも温度センサが備えられ、前記第二の集積回路素子には少なくとも発振回路が備えられて構成されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の温度補償型圧電発振器は、前記構成において、三次関数発生回路及び/又は一次関数発生回路を前記第一の集積回路素子又は前記第二の集積回路素子に備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このような本発明の温度補償型圧電発振器によれば、従来より用いられている集積回路素子の機能が、第一の集積回路素子と第二の集積回路素子とに別々に分割されているので、従来よりも第一の集積回路素子と第二の集積回路素子との主面の面積が小さくなり、これらを重ねて接合することにより、従来どおり温度補償が行えつつ小型の温度補償型圧電発振器とすることができる。
また、第一の容器体に接合する第一の集積回路素子と第二の容器体に接合する第二の集積回路素子とを重ねて接合するので、第二の容器体の支持を安定させることができ、小型化に対応することができる。
【0009】
また、本発明の温度補償型圧電発振器によれば、第一の凹部が形成された第一の容器体と、前記第一の凹部内の底面に搭載される第一の集積回路素子に発振回路を設け、第二の集積回路素子に温度センサを設ける構成とすることで、第二の平板部を境界として上下面に圧電振動素子と温度センサとが配置される構成となり、圧電振動素子と温度センサで感知する温度差が生じにくく、正確な温度補償を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の一例を示す断面図であり、図2は本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の一例を示す斜視図である。
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器100は、第一の容器体10、第一の集積回路素子20、第二の集積回路素子30、第二の容器体40、蓋体50、圧電振動素子60とから主に構成されている。
【0011】
図1に示すように、圧電振動素子60は、所定の結晶軸でカットした圧電片61の両主面に励振電極62を対向して被着・形成してなり、外部からの変動電圧が一対の励振電極62を介して圧電片61に印加されると、所定の周波数で厚みすべり振動を起こすようになっている。なお、この励振電極62は、引き回しパターンと接続して圧電片61の端部側へ引き回されている。
この圧電振動素子60は、導電性接着剤Dを介して後述する第二の容器体40の第二の搭載パッド43に実装される。これにより、圧電振動素子60は第二の搭載パッド43と電気的に接続された状態となる。
【0012】
図1に示すように、第一の容器体10は、例えば、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料から成る第一の平板部11と、第一の平板部11と同様のセラミック材料から成る第一の枠部12とからなり、第一の平板部11の一方の主面に第一の枠部12を設けて一体として第一の凹部K1が形成されている。
第一の凹部K1の底面となる第一の平板部11の一方の主面には、第一の集積回路素子20を搭載するための第一の搭載パッド13が形成されている。この第一の搭載パッド13に後述する第一の集積回路素子20が半田バンプやAuバンプ等を介して電気的に接続される。
【0013】
ここで、第一の枠部12は、第一の凹部K1を大きく形成するために、内部配線H1、H2が設けられる程度に、第二の容器体40の第二の枠部42の厚みよりも薄く形成されている。また、第一の枠部12は、第一の凹部K1内に後述する第一の集積回路素子20と第二の集積回路素子30とを囲える高さで形成される。
【0014】
この第一の容器体10は、第一の凹部K1が形成されている側の主面の四隅に第二の容器体40の端子パッド45と接合されるための接合層が形成されている。言い換えれば、第一の枠部の頂面の四隅に前記接合層が形成されている。
また、第一の容器体10の第一の平板部11において、第一の凹部K1の底面となる主面とは反対側の主面の四隅に外部接続端子Gが形成されている。
【0015】
図1に示すように、第二の容器体40は、第二の平板部41と第二の枠部42とから構成され、第二の平板部41と第二の枠部42とを一体で形成して第二の凹部K2が形成される。
【0016】
この第二の平板部41において、第二の凹部K2内の底面となる第二の平板部41の一方の主面に、圧電振動素子60の励振電極62と接続する引き回しパターンに対応した位置に第二の搭載パッド43が設けられている。また、第二の平板部41の他方の主面において、第二の平板部41の四隅に端子パッド45が設けられている。図1に示すように、この端子パッド45の間であって、第二の平板部41の中央部に第二の集積回路素子30を搭載するための第三の搭載パッド44が設けられている。
この第三の搭載パッドに後述する第二の集積回路素子30が半田バンプやAuバンプ等を介して電気的に接続される。
【0017】
このようにして構成される第一の容器体10と第二の容器体40とは、図2に示すように、第一の容器体10の第一の凹部K1が塞がれた状態となるように接合されるので、外部からの不要物の浸入を抑えることができる。
【0018】
本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器100は、周囲の温度変化によって補償を行いつつ発振するための回路として、周囲の温度状態を検知する温度センサ、圧電振動素子60の温度特性を補償する温度補償データを有し、温度補償データに基づいて圧電振動素子60の振動特性を温度変化に応じて補正する三次関数発生回路及び一次関数発生回路から構成される温度補償回路、温度補償回路に接続されて所定の発振出力を生成する発振回路等が必要となる。この発振回路で生成された発振出力は、外部に出力された後、例えばクロック信号等の基準信号として利用されることとなる。
【0019】
ここで、本発明の実施形態においては図1に示すように、第一の集積回路素子20と第二の集積回路素子30とが重ね合わせた状態で用いられる。つまり、回路形成面を第一の容器体10に形成された第一の凹部K1の底面に向けた状態で第一の集積回路素子20が第一の搭載パッド13に搭載され、第二の集積回路素子30の回路形成面が第二の容器体40の方向に向けた状態で、第一の集積回路素子20に第二の集積回路素子30が接着された構造となっている。言い換えれば、第一の集積回路素子20と第二の集積回路素子30との接着は、回路形成面が設けられていない主面同士を重ね合わせて行われる。
【0020】
第一の集積回路素子20は、一方の主面に設けられる回路形成面に発振回路が設けられており、前記第一の容器体10に形成されている第一の凹部K1内であってその底面に搭載される。
【0021】
第二の集積回路素子30は、回路形成面に周囲の温度状態を検知する温度センサが設けられており、前記第一の容器体10に形成されている第一の凹部K1内であって第一の集積回路素子20の他方の主面に、例えば、絶縁性接着剤S等により接着される。
【0022】
第一の集積回路素子20と第二の集積回路素子30との接着は、例えば、第一の容器体10に第一の集積回路素子20と第二の集積回路素子30とを搭載した状態で第二の容器体40を第一の容器体10に接合しても良いし、第二の集積回路素子30を搭載した第二の容器体40に第一の集積回路素子20を搭載した第一の容器体10を接合しても良い。この場合、第一の容器体10と第二の容器体40とを重ねたときに、第一の集積回路素子20と第二の集積回路素子30とを接着させる。なお、第一の集積回路素子20と第二の集積回路素子30との接着は、例えば、絶縁性接着剤等を第一の集積回路素子20と第二の集積回路素子30とのいずれか一方、又は両方に塗布しておくことでなされる。
【0023】
温度補償回路を構成する三次関数発生回路と一次関数発生回路とは、その総て又はいずれかが第一の集積回路素子20又は第二の集積回路素子30に設けられる。
例えば、第一の集積回路素子20に発振回路と三次関数発生回路と一次関数発生回路とを設け、第二の集積回路素子30に温度センサを設けても良いし、これに換えて、三次関数発生回路と一次関数発生回路と温度センサを第二の集積回路素子30に設けても良い。
また、第一の集積回路素子20に発振回路と三次関数発生回路とを設けて、第二の集積回路素子30に温度センサと一次関数発生回路を設けても良いし、第一の集積回路素子20に発振回路と一次関数発生回路とを設けて、第二の集積回路素子30に温度センサと三次関数発生回路を設けても良い。
【0024】
このように、第一の集積回路素子20に発振回路を設け、第二の集積回路素子30に温度センサを設けた構成としたので、第二の平板部41を境界として、この第二の平板部41の一方の主面に圧電振動素子60が搭載され、他方の主面に温度センサを備えた第二の集積回路素子30が搭載される構成となるため、圧電振動素子60と温度センサとの温度差が小さくなり、正確な温度補償を行うことができる。
【0025】
第一の集積回路素子20と第二の集積回路素子30は第二の平板部41と第一の容器体10の第一の枠部12と第一の平板部11の内部配線H1を介して電気的に接続されている。また、第二の集積回路素子30は第二の容器体40の第二の平板部41と第一の容器体10の第一の枠部12と第一の平板部11の内部配線H2により外部接続用電極端子Gにも接続されている。これにより、第一の集積回路素子20と第二の集積回路素子30とに発振回路と温度センサとを分離したので、第一の集積回路素子20と第二の集積回路素子30との平面視における外形面積を小さくすることができる。
【0026】
図1,2に示すように、蓋体50は、42アロイやコバール、リン青銅等からなり、一方の主面に封止材51が設けられている。蓋体50は、第二の搭載パッド43に実装されている圧電振動素子60を第二の凹部K2内に搭載された状態で封止材51と第二の容器体40に設けられたメタライズ層(図示せず)とを接合することにより、第二の凹部K2を気密封止する。
【0027】
このような本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器100は、特に平面視における外形寸法が、2.5mm×2.0mm以下となる場合に効果を奏する。
【0028】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
前記のとおり、第一の集積回路素子に発振回路が設けられ、第二の集積回路素子に温度センサが設けられていれば、温度補償のための三次関数発生回路と一次関数発生回路とは、第一の集積回路素子と第二の集積回路素子とのどちらに設けられていても良い。
また、適宜、書込み端子を第一の容器体の側面に設けて、所定の情報を集積回路素子に書き込めるようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の一例を示す斜視図である。
【図3】従来の温度補償型圧電発振器の一例を示す断面図である。
【図4】他の従来の温度補償型圧電発振器の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10 第一の容器体
11 第一の平板部
12 第一の枠部
13 第一の搭載パッド
20 第一の集積回路素子
30 第二の集積回路素子
40 第二の容器体
41 第二の平板部
42 第二の枠部
43 第二の搭載パッド
45 端子パッド
44 第三の搭載パッド
50 蓋体
60 圧電振動素子
61 圧電片
62 励振電極
K1 第一の凹部
K2 第二の凹部
H1、H2 内部配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の凹部が形成された第一の容器体と、
前記第一の凹部内の底面に搭載される第一の集積回路素子と、
前記第一の凹部内であってこの第一の集積回路素子に接着される第二の集積回路素子と、
第二の凹部を有し前記第一の凹部を封止しつつ前記第二の集積回路素子が接続される第二の容器体と、
前記第二の凹部内の底面に搭載される圧電振動素子と、
前記第二の凹部を封止する蓋体とを備え、
前記第一の集積回路素子には少なくとも温度センサが備えられ、前記第二の集積回路素子には少なくとも発振回路が備えられて構成されることを特徴とする温度補償型圧電発振器。
【請求項2】
三次関数発生回路及び/又は一次関数発生回路を前記第一の集積回路素子又は前記第二の集積回路素子に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の温度補償型圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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