説明

温度計測表示装置および携帯情報通信端末

【課題】測定対象物の表面温度を部位毎に視覚的に把握することが容易で、かつ携帯性、
利便性に優れた温度計測表示装置を提供する。
【解決手段】温度計測表示装置100は、可視画像を撮像する撮像モジュール1と、撮像
モジュール1の撮影エリア内にある測定対象物の表面温度を赤外線サーモセンサにより非
接触で計測する温度計測モジュール3と、撮像モジュール1による撮影画像および温度計
測モジュール3による計測温度を表示する表示部5と、を備えている。撮像モジュール1
による撮影エリアA1と温度計測モジュール3の検知エリアA2とをオーバーラップさせ
、表示部5において、温度計測モジュール3による計測温度を、検知エリアを複数の領域
に区分して撮像モジュール1による撮影画像に重ねてカラー表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度計測表示装置および携帯情報通信端末に関し、詳細には、人体等の測定
対象物の表面温度を非接触で測定し、液晶ディスプレイ等の画面上に表示する携帯所持可
能な温度計測表示装置および携帯情報通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物から放射される赤外線を非接触で検出、分析して熱分布を画像として表示す
る装置として、サーモグラフィが知られている。しかし、熱分布をもとに表示するサーモ
グラフィの熱画像は、測定対象物の輪郭が明瞭でなく、測定対象物の特定の位置の表面温
度を正確に読み取ることが難しいという短所があった。サーモグラフィの解像度を高める
ことにより上記短所を改善できるが、装置構成が複雑になり大型化するため、携帯性が著
しく損なわれてしまう。
【0003】
サーモグラフィには、赤外線を検出する赤外線センサとして、熱型の半導体素子や量子
型の半導体素子が使用されている。熱型の半導体素子であるサーモパイルは、個々の物体
から放射される赤外線のエネルギー量に応じた熱起電力を発生する素子であり、近年小型
化が図られて非接触の温度計測装置などに利用されている。このサーモパイルを携帯情報
通信端末に搭載し、表示部を共通化するとともに、計測温度データをデータサーバー等へ
容易に転送できるようにした非接触温度計測機能搭載の携帯情報通信端末が提案されてい
る(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−136563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、携帯情報端末と非接触温度計とを一体化し、両者の間で表示部
を共通化することまでは考慮されているが、非接触温度計を用いて測定された温度分布を
どのように表示させるかについて、具体的な検討は一切なされていない。仮に、従来公知
のサーモグラフィと同様の方法で熱分布を画像表示するとしても、通常の可視画像と異な
り測定対象物の輪郭等がぼやけて画像化されるため、測定対象物の特定の部位に対応した
温度を明確に判定することは困難である。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、測定対象物の表面温度を部位毎に
視覚的に把握することが容易で、かつ携帯性、利便性に優れた温度計測表示装置を提供す
ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る温度計測表示装置は、携帯所持可
能な筐体内に、測定対象物の可視画像を撮影する撮像モジュールと、前記測定対象物の表
面温度を赤外線サーモセンサにより非接触で計測する温度計測モジュールと、前記撮像モ
ジュールによる撮影画像および前記温度計測モジュールによる計測温度を表示する表示部
と、を備えており、前記撮像モジュールのカメラ部と前記温度計測モジュールの前記赤外
線サーモセンサとが隣接して配置されて前記撮像モジュールによる撮影エリアと前記赤外
線サーモセンサの検知エリアとをオーバーラップさせ、前記表示部において、前記赤外線
サーモセンサによる検知エリアを複数の領域に区分して当該領域の計測温度を前記撮像モ
ジュールによる撮影画像に重ねて色分け表示するように構成されている。
【0008】
上記第1の観点に係る温度計測表示装置において、前記表示部は、任意の領域を指定す
ることにより該領域における前記測定対象物の表面温度を数値としてウィンドウ表示する
ことが好ましい。
【0009】
本発明の第2の観点に係る携帯情報通信端末は、情報通信を行う情報通信モジュールと
、上記第1の観点の温度計測表示装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の温度計測表示装置は、撮像モジュールによる撮影エリアと温度計測モジュール
の赤外線サーモセンサの検知エリアとをオーバーラップさせるとともに、表示部において
、赤外線サーモセンサによる検知エリアを複数の領域に区分して当該領域の計測温度を撮
像モジュールによる撮影画像に重ねて色分け表示するように構成したので、測定対象物の
任意の位置の表面温度を、撮影画像を基準にして容易に把握できる。また、本発明の温度
計測表示装置は、コンパクトで携帯性に優れ、持ち運びが便利であるため、屋内・屋外を
問わず様々な場所で温度計測を行うことができる。
【0011】
また、本発明の携帯情報通信端末は、情報通信機能と温度計測機能とを備えているので
、情報通信、可視画像の撮影、さらに温度計測を、一つのコンパクトな携帯端末で行うこ
とが可能であり、利便性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態に係る温度計測表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】温度計測表示装置の正面図である。
【図3】温度計測表示装置の撮影エリアと温度計測エリアとの関係を説明する図面である。
【図4】第2の実施の形態に係る携帯情報通信端末の概略構成を示すブロック図である。
【図5】携帯情報通信端末の外観構成を示す斜視図である。
【図6】携帯情報通信端末の別の角度からみた外観構成を示す斜視図である。
【図7】携帯情報通信端末における撮像と温度計測の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の第1の形態にかかる温度計測表示装置につい
て説明する。図1は、本実施の形態に係る温度計測表示装置100の概略構成を示すブロ
ック図であり、図2は、温度計測表示装置100の正面図である。
【0014】
図1に示したように、温度計測表示装置100は、主要な構成として、可視画像を撮像
する撮像モジュール1と、撮像モジュール1の撮影エリア内にある測定対象物の表面温度
を非接触で計測する温度計測モジュール3と、撮像モジュール1による撮影画像および温
度計測モジュール3による計測温度を重ねて表示する表示部5と、を備えている。
【0015】
また、温度計測表示装置100は、撮像モジュール1で撮影された可視画像データおよ
び温度計測モジュール3で計測された温度データを、表示部5で表示可能な形式に処理す
るために、中央演算装置(CPU)7と、撮像モジュール1の撮影画像と温度計測モジュ
ール3により得られる熱画像を合成する画像合成部9と、画像合成部9で合成された画像
データを表示部5で表示できるように変換するデータ変換部11と、CPU7に接続され
た記憶部13aと、画像専用の記憶手段としてのグラフィックメモリ部13bと、を備え
ている。
【0016】
さらに、温度計測表示装置100は、撮像モジュール1と温度計測モジュール3による
撮影・計測や、表示部5における任意の領域の選択・決定などに使用される操作部19を
備えている。温度計測表示装置100の上記各構成部は、携帯所持可能な筺体(ケース)
17内に収納されている。なお、表示部5は、図2に一例を示したように、筺体17の表
面において外部から視認可能な状態で装着されている。
【0017】
撮像モジュール1は、例えばレンズなどの光学系およびCCD、CMOSセンサ等の撮
像素子(いずれも図示省略)を有するカメラ部1aと、アナログ形式のデータをデジタル
形式に変換するA/D変換器(図示省略)とを有している。なお、撮像機能を有する限り
において撮像モジュール1の構成は問われるものではない。
【0018】
温度計測モジュール3は、例えばレンズなどの光学系およびサーモパイル素子(いずれ
も図示を省略)を有する赤外線サーモセンサ3aと、アナログ形式のデータをデジタル形
式に変換するA/D変換器(図示を省略)を有している。サーモパイル素子としては、例
えばTPAM166L3.9、TPLM086L5.5(いずれも商品名;ParKin
Elmer社製)などのサーモパイルアレイを使用することができる。サーモパイル素子
は、小型である点で他の半導体素子よりも有利であるが、他の種類の素子を用いることも
可能である。
【0019】
表示部5は、撮像モジュール1により撮影された可視画像や、温度計測モジュール3に
よる計測温度を表示するディスプレイ5aを備えている。表示部5は、例えばLCD(液
晶ディスプレイ)や有機ELディスプレイなどから構成されている。ディスプレイ5aに
おいて、温度計測モジュール3による計測温度は、例えばカラーで色分け表示される。ま
た、ディスプレイ5aは、部分的にサブウィンドウ5bを表示可能に構成されている。
【0020】
また、表示部5には、ディスプレイ5aに隣接して、温度計測モジュール3で計測され
た測定対象物の計測温度の判定を容易にするために、レベル表示部5cが設けられている
。このレベル表示部5cは、例えば0℃から100℃までの温度範囲がカラーで階調表示
されており、区画線Lにより区画されるディスプレイ5aの16マスのうちの任意の区画
内にカラー表示される計測温度と視覚的に照合できるようになっている。
【0021】
本実施の形態の温度計測表示装置100では、図示は省略するが、可視光線受光部であ
る撮像モジュール1のカメラ部1aと、赤外線受光部である温度計測モジュール3の赤外
線サーモセンサ3aが、筺体17の一つの外表面において隣接して配置されている。そし
て、例えば測定対象物までの距離が500mm〜5mまでの間であれば、図3に示したよ
うに、撮像モジュール1の撮影エリアA1と温度計測モジュール3の検知エリアA2とが
、オーバーラップするように構成されている。この場合、温度計測モジュール3の検知エ
リアA2が、撮像モジュール1の撮影エリアA1の一部または全部と重なっていることが
好ましい。
【0022】
CPU7は、温度計測モジュール3で計測された温度データを演算処理する。例えば、
CPU7は、温度計測モジュール3のA/D変換器(図示せず)からデジタル形式で出力
された計測温度データを演算処理するとともに、グラフィクメモリ部13bから計測温度
データに対応するR,G、Bの三原色の色データや区画線Lのデータを取得し、画像合成
部9に出力する。なお、CPU7において、撮像モジュール1で撮影された可視画像デー
タに色補正等の画像処理を行うように構成することもできる。
【0023】
画像合成部9は、オーバーレイ回路(図示せず)を備えており、撮像モジュール1から
出力された撮影画像のデータと、上記のようにCPU7から出力された温度計測モジュー
ル3の計測温度データや色データ等とをオーバーレイ処理する。撮像モジュール1からは
、可視画像を表わすデジタルYUV信号やデジタルRGB信号が出力され、画像合成部9
に入力されるので、温度計測モジュール3の計測温度データも同じ形式でCPU7から画
像合成部9に入力される。また、CPU7は、グラフィックメモリ部13bに記憶された
区画線や色のデータを取得して画像合成部9に入力し、そこで可視画像上に合成させる。
【0024】
データ変換部11は、画像合成部9と表示部5との間に介在してこれら2つの構成部に
接続されている。データ変換部11は、画像合成部9を経由した画像データを、表示部5
で表示可能な形式に変換する。例えば、撮像モジュール1から画像合成部9を介してデジ
タルYUV信号が出力された場合、データ変換部11ではエンコーダによって例えばNT
SC信号やPAL信号へデータ変換が行われ、表示部5へ出力される。
【0025】
記憶部13aは、図示は省略するが、一次メモリとしてのRAMと、二次メモリとして
の不揮発性メモリを備えている。記憶部13aの二次メモリには、任意の温度範囲(例え
ば1℃幅)で区切られた温度と、表示色とを対応付けた温度/色変換テーブル(図示省略
)が保存されており、CPU7によってこのテーブルを参照することにより、温度計測モ
ジュール3で計測された温度データから表示部5のディスプレイ5a上に表示する色が決
定される。また、グラフィクメモリ部13bは、例えばVRAMを備え、計測温度データ
に対応するR,G、Bの三原色の色データや区画線Lのデータが保存されている。
【0026】
以上の構成を有する温度計測表示装置100においては、図2に示したように、表示部
5のディスプレイ5aは、撮像モジュール1での撮影画像に重ねて、格子状の区画線Lに
よって区画された複数の領域毎に計測温度を表示する。なお、本実施の形態では、ディス
プレイ5aには、縦横に3本ずつの区画線Lが格子状に形成され、合計16マスの領域が
設けられているが、区画の数や形状は任意である。
【0027】
温度計測モジュール3で計測された被測定対象の温度は、表示部5の領域毎に例えばカ
ラーで色分け表示される。この場合、計測温度の表示は、例えば以下の方法で行うことが
できる。一つの方法として、撮像モジュール1で撮影された可視画像に区画線Lを重ねて
表示し、温度計測モジュール3で計測された測定対象物の表面温度に応じて、その各部位
に対応する区画線Lの色をカラーで色分け表示する方法を採用することができる。
【0028】
また、別の方法として、撮像モジュール1で撮影された可視画像に区画線Lを重ねて表
示し、温度計測モジュール3で計測された測定対象物の表面温度に応じて、測定対象物の
各部位に対応する区画線L内の領域を計測温度に応じてカラーで表示する方法を採用する
こともできる。この場合、背景となる撮像モジュール1で撮影された可視画像自体をモノ
クロで表示することによって、計測温度の把握を容易にしてもよい。
【0029】
また、表示部5は、温度表示専用のサブウィンドウ5bを表示できるようになっており
、このサブウィンドウ5bには、例えばディスプレイ5aの16マスのいずれかの領域の
計測温度を数値表示できるように構成されている。すなわち、16マスのディスプレイ5
aの領域の中で、サブウィンドウ5bに温度を表示したい領域を操作部19から一つ選択
することによって、測定対象物の当該領域における計測温度を数値情報として、例えば「
38.1」のように表示することができる。この場合、区画線Lで区画された領域の平均
温度が数値表示される。
【0030】
以上のように、本実施の形態の温度計測表示装置100では、撮像モジュール1による
撮影エリアA1と温度計測モジュール3の検知エリアA2とをオーバーラップさせ、表示
部5において、温度計測モジュール3による計測温度を、検知エリアを複数の領域に区分
して撮像モジュール1による撮影画像に重ねてカラー表示するように構成したので、測定
対象物の輪郭等がぼやけて識別しにくい熱画像のみを表示する方法と異なり、測定対象物
の任意の位置の表面温度を、撮影画像を基準にして容易に把握できる。
【0031】
また、特に表示部5において、測定対象物の任意の領域を指定することにより該領域に
おける測定対象物の表面温度を数値としてウィンドウ表示することが可能となるので、当
該領域に対応する位置の測定対象物の表面温度をさらに正確に認識することができる。
【0032】
[第2の実施の形態]
次に、図4〜7を参照しながら本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の
形態は、携帯情報通信端末に関する。図4は、本実施の形態に係る携帯情報通信端末20
0の概略構成を示すブロック図であり、図5および図6は、その外観構成を示す斜視図で
ある。また、図7は、携帯情報通信端末200における温度計測の手順の一例を示すフロ
ーチャートである。
【0033】
この携帯情報通信端末200は、主要な構成として、可視画像を撮像する撮像モジュー
ル1と、撮像モジュール1の撮影エリア内にある測定対象物の表面温度を非接触で計測す
る温度計測モジュール3と、撮像モジュール1による撮影画像および温度計測モジュール
3による計測温度を重ねて表示する表示部5と、情報通信を行う情報通信モジュール21
と、を備えている。
【0034】
また、携帯情報通信端末200は、撮像モジュール1で撮影された可視画像データおよ
び温度計測モジュール3で計測された温度データを、表示部5で表示可能な形式に処理す
るために、中央演算装置(CPU)7aと、撮像モジュール1の撮影画像と温度計測モジ
ュール3により得られる熱画像を合成する画像合成部9と、画像合成部9で合成された画
像データを表示部5で表示できるように変換するデータ変換部11と、CPU7aに接続
された記憶部13aと、画像専用の記憶手段としてのグラフィックメモリ部13bと、撮
影モードの切り替えを行うためのモード切替部15と、を備えている。
【0035】
さらに、携帯情報通信端末200は、情報通信のためのキー入力や、撮像モジュール1
と温度計測モジュール3による撮影・計測、表示部5における任意の領域の選択・決定な
どに使用される操作部31を備えている。携帯情報通信端末200の上記各構成部は、携
帯所持可能な筺体(ケース)33a,33b内に収納されている。なお、図5および図6
では、筺体33aと33bを備え、中央部で折畳む形式の携帯情報端末を示したが、その
形状は問われるものでなく、スライド式や一体型などでもよい。
【0036】
携帯情報通信端末200は、情報通信を行うために、情報通信モジュール21が、CP
U7aに接続されている。また、情報通信モジュール21には、スピーカー25、マイク
27およびアンテナ29が付属して接続されている。そして、情報通信モジュール21に
より、携帯情報通信端末200において例えば電話、電子メールなどの情報通信ができる
ように構成されている。
【0037】
図6に示したように、筺体33aの外表面33cには、撮像モジュール1のカメラ部1
aと温度計測モジュール3の赤外線サーモセンサ3aが隣接して配置されており、撮像モ
ジュール1の撮影エリアと、温度計測モジュール3の計測エリアとがオーバーラップする
ように構成されている。
【0038】
本実施の形態の携帯情報通信端末200は、情報通信モジュール21を備えて情報通信
機能を有している。そのため、CPU7aは、撮像および温度計測のための演算処理と情
報通信のための演算処理の両方の機能を担っている。また、情報通信に必要な文字データ
等の表示を行うためにCPU7aは直接表示部5にも接続されている。表示部5は、情報
通信のための表示と温度計測のための表示の両方を行うように共通化されている。また、
操作部31は、情報通信のためのキー入力と、撮像および温度計測のための入力の両方を
行うように構成されている。このように、情報通信機能と温度計測機能でCPU7a、表
示部5、操作部31を共通化することにより、通常の携帯電話などの情報通信端末と同等
のサイズまで小型化が実現されている。
【0039】
また、携帯情報通信端末200では、可視画像の撮影と温度計測を行うために、モード
切替部15を設け、通常撮影モードと温度計測モードの二つのモードを切り替えている。
本実施の形態において、上記以外の構成は第1の実施の形態の温度計測表示装置100と
同様であるため、同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
本実施の形態の携帯情報通信端末200は、可視画像を撮影する通常撮影モードと、可
視画像の撮影とともに温度計測を行う温度計測モードとを切り替えることができる。つま
り、通常撮影モードでは、一般的なカメラ付き携帯電話等と同様に可視画像の撮影が可能
であり、温度計測モードでは、画像視認が可能な非接触温度計として使用可能である。
【0041】
通常撮影モードと温度計測モードとの切り替え操作は、操作部31により行うことがで
きる。例えば、操作部31を操作してメニュー画面から「温度計測」を選択することによ
り、温度計測モードをオンにすることができる。なお、モード切替専用のスイッチ部(図
示せず)を設けてもよい。温度計測モードが選択されると、対応する制御信号に基づく設
定パラメータがモード切替部15に記憶される。そして、温度計測モードで、測定対象物
に撮像モジュール1のカメラ部1aと温度計測モジュール3aの赤外線サーモセンサ3a
を向け、所定の距離からシャッターキーを押すことにより、温度計測が開始される。なお
、シャッターキーの機能は、操作部31の任意のキーに割り当ておくことができる。
【0042】
ここでは、携帯情報通信端末200における撮影・温度計測の手順について、図7を参
照しながら説明する。まず、ステップS1でシャッターキーを押す。ステップS2では、
CPU7aがモード切替部15の設定パラメータを参照し、温度計測モードがオンである
か否かをチェックする。ステップS2で、温度計測モードがオン(Yes)である場合に
は、ステップS3で測定対象物の撮像および温度計測が行われる。すなわち、撮像モジュ
ール1と温度計測モジュール3を同時に作動させて測定対象物の可視画像の撮影と温度の
計測が行われる。なお、撮像および温度計測のタイミングは、厳密に同時でなくてもよく
、例えば数秒以内のタイミングの誤差があっても許容される。
【0043】
次にステップS4では、通常の撮像装置と同様に、撮像モジュール9で撮影された可視
画像データを作成する。また、ステップS5では、赤外線サーモセンサ3aで検知された
測定対象物の表面温度の熱画像データを作成する。この場合、温度計測モジュール3で計
測されたアナログ形式の温度データがA/D変換器(図示せず)でデジタル形式に変換さ
れてCPU7aに出力され、CPU7aにおいて記憶部13aに保存された温度/色変換
テーブル(図示せず)と、グラフィックメモリ部13bに保存されたR,G、Bの三原色
の色データや区画線Lのデータが参照され、計測温度に対応する熱画像データが作成され
る。なお、図7では、ステップS4で可視画像データを作成した後に、ステップS5で熱
画像データを作成する構成としたが、その順序は問われず、先に(ステップS4で)熱画
像データを作成し、次に(ステップS5で)可視画像データを作成してもよい。
【0044】
次に、ステップS6では、ステップS4およびステップS5でそれぞれ作成された可視
画像データおよび熱画像データを画像合成部9において合成処理する。すなわち、測定対
象物の同じ部位で可視画像と熱画像とが重なり合うようにオーバーレイ処理が行われる。
【0045】
次に、ステップS7では、画像合成部9で合成された画像データがデータ変換部11に
出力されて、表示部5で表示可能な形式に変換される。そして、ステップS8では、表示
部5のディスプレイ5a上に、可視画像に熱分布画像が重ねて表示される。ここで、操作
部31を操作し、表示部5のディスプレイ5a上の任意の区画(画像領域)を指定するこ
とにより、サブウィンドウ5bに当該画像領域の温度を数値表示することもできる。
【0046】
表示部5に表示された画像は、ステップS9で必要に応じて記憶部13aに記録したり
、通信機能を利用してサーバーなどに送信したりすることができる。
【0047】
一方、ステップS2で温度計測モードがオンでない(No)である場合には、通常撮影
モードであるため、ステップS10で撮像モジュール1のみを作動させて撮影が行われ、
次いでステップS10で可視画像データが作成される。そして、可視画像データは、可視
画像を表わすデジタルYUV信号やデジタルRGB信号として画像合成部9へ出力され、
さらにデータ変換部11へ出力される。以降は、上記と同様に、ステップS7、ステップ
S8および必要な場合ステップS9の処理が行われる。
【0048】
以上のように、本実施の形態の携帯情報通信端末200は、可視画像を撮影する通常撮
影モードと、可視画像の撮影とともに温度計測を行う温度計測モードとを、簡単なキー操
作で切り替え可能に構成されているので、情報通信、可視画像の撮影、さらに温度計測を
、一つのコンパクトな携帯端末で行うことが可能であり、利便性に優れている。
【0049】
また、本実施の形態の携帯情報通信端末200は、情報通信機能と温度計測機能とを備
えているので、測定対象物の特定の位置の表面温度を計測した後、該計測データを任意の
サーバー等に送信することにより、温度計測データの管理を容易に行うことができるので
、利便性に優れている。
【0050】
本実施の形態における他の構成および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0051】
以上、本発明の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に制
約されることはなく、種々の変形が可能である。たとえば、上記実施の形態では、選択し
た領域の計測温度を数値表示する場合に、サブウィンドウ5bをディスプレイ5a上にウ
ィンドウ表示する構成を採用したが、例えばディスプレイ5aとは別の第2のディスプレ
イを設け、そこに計測温度を数値表示させる構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1:撮像モジュール
1a:カメラ部
3:温度計測モジュール
3a:赤外線サーモセンサ
5:表示部
5a:ディスプレイ
5b:サブウィンドウ
5c:レベル表示部
7(7a):CPU
9:画像合成部
11:データ変換部
13a:記憶部
13b:グラフィックメモリ部
15:モード切替部
17:筺体
19:操作部
21:情報通信モジュール
25:スピーカー
27:マイク
29:アンテナ
31:操作部
33a,33b:筺体
100:温度計測表示装置
200:携帯情報通信端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯所持可能な筐体内に、
測定対象物の可視画像を撮影する撮像モジュールと、
前記測定対象物の表面温度を赤外線サーモセンサにより非接触で計測する温度計測モジ
ュールと、
前記撮像モジュールによる撮影画像および前記温度計測モジュールによる計測温度を表
示する表示部と、
を備えており、
前記撮像モジュールのカメラ部と前記温度計測モジュールの赤外線サーモセンサとが隣
接して配置されて前記撮像モジュールによる撮影エリアと前記赤外線サーモセンサの検知
エリアとをオーバーラップさせ、前記表示部において、前記赤外線サーモセンサによる検
知エリアを複数の領域に区分して当該領域の計測温度を前記撮像モジュールによる撮影画
像に重ねて色分け表示するように構成したことを特徴とする温度計測表示装置。
【請求項2】
前記表示部は、任意の領域を指定することにより該領域における前記測定対象物の表面
温度を数値としてウィンドウ表示することを特徴とする請求項1に記載の温度計測表示装
置。
【請求項3】
情報通信を行う情報通信モジュールと、
請求項1または請求項2に記載された温度計測表示装置と、
を備えていることを特徴とする携帯情報通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−181324(P2010−181324A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25991(P2009−25991)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(302071092)テガ三洋工業株式会社 (244)
【Fターム(参考)】