測位支援装置及び測位支援方法
【課題】通信端末に対して高い精度の概位置情報を送信する。
【解決手段】SUPLサーバ20の概位置情報DB23では通信端末60における測位演算に使用され通信端末60が在圏するセルC1の位置を示す概位置情報と、セルC1を特定するセルIDとを対応付けて格納し、通信端末60から送信されるセルIDを含む測位情報送信要求に基づいて、概位置情報DB23に格納される概位置情報を取得し、通信部21から通信端末60に対して送信する。その後通信端末60から送信される測位結果情報を受信し、これに基づき制御部22で概位置情報DB23に格納される概位置情報を更新する。また、通信端末60による測位演算が失敗した場合には、通信端末60からの測位結果情報に含まれるエラーコードと衛星数情報とに基づいて、通信端末60に対して送信した概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて当該概位置情報を初期化する。
【解決手段】SUPLサーバ20の概位置情報DB23では通信端末60における測位演算に使用され通信端末60が在圏するセルC1の位置を示す概位置情報と、セルC1を特定するセルIDとを対応付けて格納し、通信端末60から送信されるセルIDを含む測位情報送信要求に基づいて、概位置情報DB23に格納される概位置情報を取得し、通信部21から通信端末60に対して送信する。その後通信端末60から送信される測位結果情報を受信し、これに基づき制御部22で概位置情報DB23に格納される概位置情報を更新する。また、通信端末60による測位演算が失敗した場合には、通信端末60からの測位結果情報に含まれるエラーコードと衛星数情報とに基づいて、通信端末60に対して送信した概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて当該概位置情報を初期化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末による測位演算の際にアシストデータとして用いられる概位置情報を通信端末に対して送信する測位支援装置及び当該測位支援装置による測位支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の通信端末の高性能化に伴い、GPS(Global Positioning System)を利用した測位機能を有する通信端末の普及が進んでいる。通信端末においてGPSを利用した測位演算を行う場合、GPS衛星からの電波のみを受信して測位する単独測位方式では測位時間の長期化及び通信端末における消費電力の増大等が懸念される。このため、GPS衛星の位置等の捕捉情報(アシストデータ)を測位支援サーバから通信端末に対して送信することにより測位時間の短縮を図るネットワークアシスト方式が採用されている。また、ネットワークアシスト方式のGPS測位では、通信端末の大まかな位置を示す情報(概位置情報)として、当該通信端末が在圏するエリアの基地局の位置を特定する情報が、アシストデータの一つとして測位支援サーバから通信端末に対して送信される(例えば、特許文献1参照)。この通信端末の概位置情報は、GPS測位の成功率に大きく寄与する情報である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−175824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば海外の移動体通信網にローミングアウトした場合のように、通信端末が在圏する基地局が自網のものではない場合は、通信端末が在圏する基地局の位置を特定する情報を測位支援サーバにおいて把握していないことがある。この場合、測位支援サーバでは、例えば通信端末から送信される在圏する国を指定する情報等の限られた情報から概位置情報を算出して通信端末に対して送信するため、概位置情報の精度が低下する。このため、通信端末によるGPS測位の成功率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、通信端末に対して高い精度の概位置情報を送信する測位支援装置及び当該測位支援装置による測位支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る測位支援装置は、衛星を捕捉して当該衛星からの情報を用いて測位を行う通信端末における測位演算に使用され、当該通信端末が在圏する通信エリアの位置を示す概位置情報と、当該通信エリアを特定する情報とを対応付けて格納する概位置情報格納手段と、通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報を含み通信端末から送信される測位情報送信要求に基づいて、通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報に対応付けて概位置情報格納手段に格納される概位置情報を取得し、通信端末に対して送信する概位置情報送信手段と、概位置情報送信手段により送信された概位置情報を取得した通信端末から送信され当該測位演算の結果を示す情報である測位結果情報を受信する測位結果受信手段と、測位結果情報に基づいて、概位置情報格納手段において格納される概位置情報を更新する概位置情報更新手段とを備え、測位結果情報には、測位演算が成功したか失敗したかを示す成否情報と、測位演算において通信端末が捕捉した衛星数を示す衛星数情報と、が含まれ、概位置情報更新手段は、成否情報と衛星数情報とに基づいて概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて概位置情報格納手段において格納される概位置情報のうち通信端末に対して送信した概位置情報を初期化することを特徴とする。
【0007】
上記の測位支援装置によれば、通信端末から送信される測位結果情報を受信し、この測位結果情報に基づいて、概位置情報格納手段に格納されて通信エリアの位置を示す概位置情報が更新される。このように、通信端末による測位の実績に基づいて概位置情報の精度を高めることができるため、通信端末に対してより高い精度の概位置情報を送信することができる。また、通信端末による測位演算が失敗した場合に、概位置情報更新手段では、成否情報と通信端末が捕捉した衛星数情報とに基づいて、通信端末に対して送信した概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて当該概位置情報を初期化する。このように、不良と判断された概位置情報を初期化する態様を有することで、不良と判断された概位置情報を使った測位演算を続けることによる測位精度の低下を防止することができる。また、概位置情報が不良であるかの判断に衛星数情報を用いることで、例えば通信端末による衛星の捕捉が不十分であることが理由で測位演算が失敗となった場合に当該概位置情報が初期化されることを防止することができ、概位置情報の不要な初期化を抑制し、さらに高い精度の概位置情報を提供することが可能となる。
【0008】
ここで、上記作用を効果的に奏する構成として、具体的には、概位置情報更新手段が、成否情報が測位演算を失敗したことを示す情報であると共に衛星数情報により特定される衛星数が所定の値より大きいかどうかを判断し、成否情報が測位演算を失敗したことを示す情報であると共に衛星数が所定の値より大きい場合に、通信端末に対して送信した概位置情報が不良であると判断し、不良であると判断された回数が閾値を超えた場合に、概位置情報格納手段において格納される概位置情報のうち通信端末に対して送信した概位置情報を初期化する態様が挙げられる。
【0009】
また、概位置情報は、通信エリアに係る基地局の位置を特定する情報であり、概位置情報及び測位結果情報は、緯度及び経度を含む情報である態様とすることができる。
【0010】
さらに、概位置情報更新手段は、初期化の後に、基地局を含む複数の基地局を管理する基地局管理装置の位置を特定する情報を新たな概位置情報として使用する態様とすることができる。
【0011】
このように、概位置情報が通信エリアに係る基地局の位置を特定する情報であって、この基地局を含む複数の基地局を管理する基地局管理装置の位置を特定する情報を新たな概位置情報として使用することで、概位置情報を初期化した場合であっても、通信端末が在圏する通信エリアの位置と初期化後の概位置情報とが大きく隔たれることが防止され、測位精度の低下を防止することができる。
【0012】
また、概位置情報更新手段は、通信端末に対して送信した概位置情報により特定される位置と、測位結果情報により特定される位置とに基づいて、新たな概位置情報を算出する態様とすることができる。
【0013】
上記のように、通信端末に対して送信した概位置情報により特定される位置と、測位結果情報により特定される位置とに基づいて新たな概位置情報を算出することにより、より適切であり且つ高精度の概位置情報が新たに算出される。
【0014】
また、概位置情報格納手段は、概位置情報の更新要否を示すフラグを概位置情報に対応付けて格納し、概位置情報更新手段は、フラグに基づいて、概位置情報の更新が必要であると判断される場合に、概位置情報の更新を行う態様とすることができる。
【0015】
概位置情報格納手段に格納される概位置情報が正確な情報である場合には、通信端末による測位結果に基づいて更新を行うことにより、概位置情報の精度がかえって低下してしまう可能性がある。したがって、更新要否を示すフラグを概位置情報に対応付けて格納することで、概位置情報の精度が低下することを防ぐことができる。
【0016】
なお、本発明は、上記のように測位支援装置の発明として記述できる他に、以下のように測位支援方法の発明としても記述することができる。これはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0017】
すなわち、本発明に係る測位支援方法は、衛星を捕捉して当該衛星からの情報を用いて測位を行う通信端末における測位演算に使用され、当該通信端末が在圏する通信エリアの位置を示す概位置情報と、当該通信エリアを特定する情報とを対応付けて格納する概位置情報格納手段を備える測位支援装置による測位支援方法であって、概位置情報送信手段により、通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報を含み通信端末から送信される測位情報送信要求に基づいて、通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報に対応付けて概位置情報格納手段に格納される概位置情報を取得し、通信端末に対して送信する概位置情報送信ステップと、概位置情報送信手段により送信された概位置情報を取得した通信端末が測位演算を行うことにより通信端末から送信される当該測位演算の結果を示す情報である測位結果情報を受信する測位結果受信ステップと、概位置情報更新手段により、測位結果情報に基づいて、概位置情報格納手段において格納される概位置情報を更新する概位置情報更新ステップとを備え、測位結果情報には、測位演算が成功したか失敗したかを示す成否情報と、測位演算において通信端末が捕捉した衛星数を示す衛星数情報と、が含まれ、概位置情報更新ステップにおいて、成否情報と衛星数情報とに基づいて概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて概位置情報格納手段において格納される概位置情報のうち通信端末に対して送信した概位置情報を初期値に更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、通信端末に対して高い精度の概位置情報を送信する測位支援装置及び当該測位支援装置による測位支援方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る測位システムの構成を説明するブロック図である。
【図2】SUPLサーバ、位置情報管理装置、ユーザ情報管理装置、GW装置、及び基地局装置のハードウェア構成を示す図である。
【図3】通信端末のハードウェア構成を示す図である。
【図4】概位置情報DBに格納される概位置情報の例である。
【図5】概位置情報DBに格納されるSGSNの位置情報の例である。
【図6】管理DBに格納される情報の例である。
【図7】通信端末とSUPLサーバとの間で通信を行うための処理を説明するシーケンス図である。
【図8】移動体通信網における通信端末の認証処理及び通信端末に対して送信する概位置情報の準備に係る処理を説明するシーケンス図である。
【図9】位置情報管理装置においてSUPLサーバに対して送信する送信データを決定する処理を説明するフローチャートである。
【図10】SUPLサーバから通信端末に対して送信する概位置情報として用いる位置情報を決定する処理を説明するフローチャートである。
【図11】SUPLサーバから通信端末に対して送信する概位置情報として用いる位置情報を決定する処理を説明するフローチャートである。
【図12】通信端末におけるGPS測位に係る処理及び測位後の処理について説明するシーケンス図である。
【図13】SUPLサーバにおいて概位置情報の更新を行う際の処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
<測位支援システムを含む測位システムの構成>
図1は、本発明の好適な実施形態に係る測位システム1の構成を説明するブロック図である。測位システム1は、測位支援システム10を構成するSUPL(Secure User Plane Location)サーバ20及び位置情報管理装置30と、ユーザ情報管理装置40と、GW(Gateway)装置50と、通信端末60と、基地局装置70と、を含んで構成される。このうち、SUPLサーバ20及び位置情報管理装置30により構成される測位支援システム10は、通信端末60による測位演算を支援する装置であり、ユーザ情報管理装置40、GW装置50、及び基地局装置70は、それぞれ、通信端末60と測位支援システム10との間の通信に係る装置である。また、SUPLサーバ20、位置情報管理装置30、ユーザ情報管理装置40、及びGW装置50は、同じ移動体通信網に含まれる装置であり、通信端末60は、この移動体通信網N1に対して接続する機能を有する。なお、本実施形態においては、通信端末60は、例えば海外において用いられる場合のように移動体通信網N1からローミングアウトした状態であり、移動体通信網N1とは異なる移動体通信網N2に含まれる基地局装置70に対して接続することにより、通信を行っている。このとき、通信端末60が移動体通信網N1に含まれる測位支援システム10からのアシストデータの提供を受けて測位を行う場合について説明する。
【0022】
ここで、本実施形態において通信端末60が行う測位方法について説明する。本実施形態において通信端末60が行う測位方法とは、ネットワークアシスト方式によるGPS(Global Positioning System)測位である。GPS測位とは、上空の3つ以上のGPS衛星からの信号を受信することにより、GPS衛星の位置情報に基づいて受信端末(通信端末60)の位置(具体的には、緯度、経度及び高度)を割り出す方法であるが、これを行うためには通信端末60によりGPS衛星を捕捉する必要があり、この処理に一定時間を要する。このため、本実施形態に係るネットワークアシスト方式によるGPS測位では、GPS衛星の位置及び通信端末60の概位置(初期位置)情報等の情報(アシストデータ)を測位支援システム10から通信端末に対して送信することにより、通信端末60によるGPS衛星の捕捉に係る処理及び測位時間の短縮が図られている。本実施形態では、通信端末60が測位支援システム10に対してアシストデータの提供を要求することにより通信端末60の概位置を示す情報及び通信端末60が信号を受信することができるGPS衛星の位置情報を測位支援システム10から受信することにより、通信端末60でGPS測位が行われ、通信端末60の位置が求められる。
【0023】
測位支援システム10から通信端末60に対して送られるアシストデータのうち、GPS衛星の位置情報については、測位支援システム10においてGPS衛星の起動情報を管理しているアシストデータプロバイダ(図示せず)から取得された情報が用いられる。一方、通信端末60の概位置情報としては、通信端末60が在圏する通信エリアであるセルに対して電波を送信する基地局装置の位置情報が用いられる。これは、基地局装置の位置は予め定められているため、当該基地局装置の位置情報を測位支援システム10において予め格納することができ、通信端末60が在圏するセルを特定する情報が通信端末60から送信された場合に、当該情報に基づいて通信端末60に対して送信することができるからである。
【0024】
上記の基地局装置が移動体通信網N1により設けられたものである場合(すなわち、移動体通信網N1に含まれる基地局装置である場合)は、基地局装置の位置情報が容易に入手できるため、測位支援システム10において当該位置情報をアシストデータとして格納することが容易である。しかしながら、本実施形態のように、通信端末60がローミングアウトしている場合、通信端末60が在圏する基地局装置70は、他の移動体通信網N2により設置されたものであるため、基地局装置70が設けられた位置の正確な情報を測位支援システム10において把握するのは困難である。したがって、通信端末60から提供される情報(例えば、在圏する国や移動体通信網N2を提供する通信事業者を特定する情報等)に基づいて概位置情報を作成した場合、その精度は著しく低くなるため、この情報を用いてGPS測位を行った結果の精度が低くなる場合があるという問題があった。以下の実施形態では、上記の問題を鑑みて通信端末60に送信する概位置情報の精度が高められた測位支援システム10を含む測位システム1について説明する。
【0025】
次に測位システム1に含まれる各装置について説明を行う。まず測位システム1に含まれる測位支援システム10を構成するSUPLサーバ20は、測位支援システム10の主要機能を有する装置であり、通信端末60に対して送信するアシストデータを格納し、通信端末60からの要求に基づいて、アシストデータを通信端末60に対して送信する機能を有する。
【0026】
SUPLサーバ20と同様に測位支援システム10を構成する位置情報管理装置30は、通信端末60と測位に係る通信を行うための認証処理を行う機能を有すると共に、移動体通信網N1において位置情報に係るデータを管理するGMLC(Gateway Mobile Location Centre)の機能を有し、例えばEBSCP(External Business user Service ControlPoint)として実現される。具体的には、自網(移動体通信網N1)とは異なる通信網(移動体通信網N2を含む)のプロファイルデータ等を格納し、必要に応じて当該データをSUPLサーバ20に対して送信する。本実施形態に係る詳細な処理については後述する。
【0027】
ユーザ情報管理装置40は、測位支援システム10との間で測位に係る通信を行う通信端末の所有者(ユーザ)に係る情報(ユーザプロファイル)を格納する機能を有し、例えばSUSCP(Specific User Service Control Point)として実現される。そして、位置情報管理装置30からの要求に応じて当該情報を提供する。
【0028】
GW装置50は、移動体通信網N1とは異なる移動体通信網(例えば移動体通信網N2)との間に設けられ、移動体通信網N2と移動体通信網N1とを接続する機能を有し、例えばCPCG(Charging and Protocol Conversion Gateway)として実現される。通信端末60のようにローミングアウトした通信端末60が移動体通信網N1に含まれる各装置との間で通信を行うためには、このGW装置50に対してまず接続する必要がある。GW装置50は外部の移動体通信網から接続要求を送信した通信端末60と、移動体通信網N1に含まれる各装置(本実施形態では、SUPLサーバ20)との間の通信の仲介を行う。
【0029】
通信端末60はユーザにより用いられ、具体的には、例えば、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistance)等の通信機能を有する装置として実現される。また、本実施形態に係る通信端末60は、他の通信事業者が提供する設備(例えば、基地局装置70)を利用して通信を行うことができるローミングに係る機能を備えることにより、移動体通信網N2を介して通信を行う機能を有する。さらに、通信端末60は測位支援システム10からのアシストデータを利用したGPS測位を行う機能を有する。
【0030】
基地局装置70は、移動体通信網N2に含まれる装置であり、特定の範囲に対して電波を送信することによりセルC1を形成する。通信端末60がセルC1内にある場合、通信端末60は基地局装置70を介して情報を送受信することにより、通信を行うことができる。セルにはそれぞれ固有のセルIDが付与されており、このセルIDにより、どの基地局装置70が関連するセルであるかを区別することができる。この基地局装置70を含む複数の基地局装置は、その移動体通信網N2において基地局装置の上流に位置してパケット通信の制御を行うSGSN(Serving GPRS Support Node)(図示せず)により管理されている。
【0031】
測位システム1に含まれるSUPLサーバ20、位置情報管理装置30、ユーザ情報管理装置40、GW装置50、及び基地局装置70は、それぞれ、図2に示すように、CPU101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM(Read Only Memory)103、通信を行うための通信モジュール104、並びにハードディスク等の補助記憶装置105等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成される。そして、これらの構成要素が動作することにより、各装置の機能が発揮される。また、通信端末60は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)601、RAM602、ROM603、操作部604、無線通信部605、ディスプレイ606、及びアンテナ607等のハードウェアにより構成される。そしてこれらの構成要素が動作することにより、通信端末60の機能が発揮される。
【0032】
なお、SUPLサーバ20と位置情報管理装置30との間、位置情報管理装置30とユーザ情報管理装置40との間、ユーザ情報管理装置40とGW装置50との間、GW装置50とSUPLサーバ20との間は、それぞれ有線のネットワークを介して接続される。また、通信端末60とGW装置50との間、及び通信端末60と基地局装置70との間は、それぞれ無線通信により情報の交換が行われる。
【0033】
図1に戻り、測位システム1に含まれ本発明の特徴をなす測位支援装置である測位支援システム10に含まれるSUPLサーバ20及び位置情報管理装置30について詳細に説明する。SUPLサーバ20は、通信部(概位置情報送信手段、測位結果受信手段)21と、制御部(概位置情報送信手段、概位置情報更新手段)22と、概位置情報DB(データベース)(概位置情報格納手段)23と、を含んで構成される。また、位置情報管理装置30は、通信部31と、制御部(概位置情報送信手段)32と、管理DB33とを含んで構成される。
【0034】
SUPLサーバ20の通信部21は、通信端末60から送信される測位情報送信要求に基づいて、概位置情報を含むアシストデータを通信端末60に対して送信する概位置情報送信手段として機能する。また、通信端末60から送信される測位結果を受信する測位結果受信手段としての機能を併せて備える。また、位置情報管理装置30との間で情報を送受信する機能をさらに有する。通信部21により受信された情報は、制御部22へ送られる。
【0035】
制御部22は、通信端末60から送信される測位情報送信要求に基づいて、概位置情報DB23に格納される概位置情報を取得する概位置情報送信手段の機能の一部を有する。なお、制御部22が通信端末60に対して送信する概位置情報は、より高い精度の概位置情報を通信端末60に送信する目的から、後述の位置情報管理装置30より送信される情報にも基づいて決定される。その具体的な処理については、後述の測位支援方法に係る説明において説明する。
【0036】
また、制御部22は、通信端末60から送信されるGPS測位の結果を示す測位結果情報に基づいて、後述の概位置情報DB23に格納される概位置情報を更新する概位置情報更新手段としての機能を有する。この制御部22による概位置情報の更新には、通信端末60がGPS測位を成功した場合の概位置情報の書換えに限られず、GPS測位が失敗して概位置情報が不良と判断された場合の概位置情報の初期化も含まれる。制御部22による概位置情報の更新については、後述する。
【0037】
概位置情報DB23は、上述のセルのセルIDに対応付けて、当該セルに係る基地局の情報が格納される概位置情報格納手段として機能する。図4は、概位置情報DB23に格納される概位置情報の例である。図4に示す情報のうち、MCC(Mobile Country Code、国コード)、MNC(Mobile Network Code、オペレータコード(例えば通信事業者毎に定められる))、及びセルIDは、予め定められているものである。そして、通信端末60から送信される測位情報送信要求にも、通信端末60が在圏するセルを特定する情報として、上記のMCC,MNC及びセルIDが含まれる。また、Lat(Latitude (Y)、緯度)、Lon(Longitude (X)、経度)、Alt(Altitude、GPS測位で基準となるWGS84楕円体からの高度)、Unc(Uncertainty (k)、緯度・経度の不確定性)、Unc−Alt(Uncertainty Altitude (k)、高度の不確定性)は、上記のセルIDに対応して格納される概位置情報を示すものである。不確定性は、この概位置情報の算出方法、セルIDに対応するセルの大きさ(広さ)、及び、当該概位置情報を利用したGPS測位結果等に基づく精度を示すものである。また、更新要否は、図4に示す表に格納される情報を、通信端末60から送信される測位結果に基づいて更新する必要があるかを示すフラグである。
【0038】
図4に示すようにセルIDに対応付けて格納される概位置情報は、(1)セルIDにより特定されるセルに係る基地局装置の正確な位置を示す情報か、又は(2)基地局装置の位置を正確に示す情報ではなく、過去に同じセル内で測位した結果に基づいて更新された情報、である。このうち(1)の基地局装置の正確な位置を示す情報は、例えば、その基地局装置を管理する通信事業者のGMLCに対して、基地局装置に対応するセルIDを指定して問い合わせることにより、取得することができる。この場合、概位置情報DB23において正確な情報が既に格納されるため、概位置情報DB23の当該情報をさらに更新する必要はなく、「更新不要」を示すフラグが当該情報に対して付与される。
【0039】
しかし、上記のように基地局装置の位置を示す情報を提供する通信事業者は限られているため、基地局装置の正確な位置を概位置情報DB23において把握することは困難である。したがって、概位置情報DB23では、(2)過去に同じセル内において測位を行う際に用いられた概位置情報及び測位結果に基づいて算出された概位置情報が格納される。このように、基地局装置の正確な位置が分からない場合、制御部22(概位置情報更新手段)によって、当該セルIDにより特定されるセルにおいて測位した結果に基づいて新たな概位置情報が作成され、概位置情報DB23に格納される情報が更新される。その具体的な方法としては、例えば、通信端末60が測位を行う際に、通信端末60からの要求に応じて通信端末60に対して送信することにより用いられたセルIDの概位置情報により特定される位置と、通信端末60による(同一のセルIDにおける)測位結果により特定される位置と、の中点を緯度・経度・高度のそれぞれについて算出し、その結果を新たな概位置情報とする方法や、過去の同一のセルIDにおける測位結果の平均値を緯度・経度・高度のそれぞれについて算出し、その結果を新たな概位置情報とする方法等が挙げられる。このように、通信端末60による測位結果に基づいて概位置情報を更新する場合、「更新要」を示すフラグが当該概位置情報に対して付与される。
【0040】
なお、上記のように、基地局装置の位置が正確に分からない場合であって、且つ、過去に同じセルIDのセル内で測位が行われたことがない場合、セルIDに対応付けられた概位置情報は、予め概位置情報DB23に格納されることはない。この場合、通信端末60から送信されるMCC及びMNCから求められる位置情報が通信端末60に対して送信する概位置情報として用いられる。この情報は、後述の位置情報管理装置30より送信されるが、その処理は後述する。
【0041】
図5は、同じく概位置情報DB23に格納されるSGSNの概位置情報の例を示す図である。上述のようにSGSNは、複数の基地局装置を管理する装置であり、通信端末60から送信される測位情報送信要求には、通信端末60が接続する基地局装置70を管理するSGSNを特定するSGSNのIP(Internet Protocol)アドレスが含まれる。このため、基地局装置70の位置は分からないものの、SGSNの位置情報が分かる場合には、この情報を概位置情報として用いることもできる。なお、SGSNの管理下にある基地局装置は複数あるため、単一の基地局装置が管理するセルよりも広域をカバーする必要がある。したがって、SGSNの概位置情報はセルの概位置情報と比較して不確定性が高く設定される場合がある。すなわち、緯度・経度の不確定性及び高度の不確定性は、概位置情報が用いられるであると推測される領域に応じて適宜変更される。図5に示す情報は、GPS測位に利用するために後述の位置情報管理装置30から送信された場合に格納される。
【0042】
次に、図1に戻り、測位支援システム10に含まれる位置情報管理装置30について説明する。位置情報管理装置30の通信部31は、ユーザ情報管理装置40との間で通信を行うことにより、SUPLサーバ20に対して接続要求を送信する通信端末60の認証処理を行う機能と、SUPLサーバ20との間で通信を行うことにより、位置情報管理装置30において格納する位置情報(MCC及びMNCより特定される位置情報や、SGSNの位置情報等)をSUPLサーバ20に対して送信する機能を有する。
【0043】
制御部32は、SUPLサーバ20からの要求に基づいて通信端末60に係る認証処理を行う機能を有すると共に、通信端末60に対して送信する概位置情報を決定する概位置情報送信手段の一部の機能を有する。通信端末60から送信される概位置情報送信要求に含まれて、SUPLサーバ20から位置情報管理装置30に対して送信される情報には、上述のMCC,MNC及びセルIDが通信端末60が在圏するセルに係る情報(ローミング在圏情報)として含まれる。また、同様に通信端末60が在圏するセルに係る基地局装置70を制御するSGSNを特定する情報(SGSNのIPアドレス)が含まれる。制御部32では、これらの情報に基づいて、(1)基地局装置70の正確な位置を特定する情報を入手することができるか、(2)基地局装置70を制御するSGSNの位置を位置情報管理装置30において保持しているか、についての判断が行われる。そして、この判断結果に基づいて、制御部32からSUPLサーバ20に対して送信する概位置情報決定に係る情報が選択され、SUPLサーバ20に対して送信される。なお、上記の判断及びその判断結果に基づく処理の詳細については後述する。
【0044】
管理DB33は、通信端末60に対して送信する概位置情報決定に係る情報を格納する概位置情報格納手段の一部として機能する。管理DB33において格納される情報の例を図6に示す。管理DB33には、MCCとMNCと、SGSNのIPアドレスと、位置情報(Lat,Lon,Alt,Unc,Unc−Alt)が対応付けて格納されている。また、MCCとMNCと、に対して上記の位置情報が対応付けて格納されているものも含まれる。管理DB33に格納される情報(図6に示す情報)のうち、SGSNのIPアドレスに対応付けて格納される位置情報は、例えばMCCとMNCとにより特定されるオペレータより送信された情報等に基づくものであり、正確な情報である。また、MNC「ZZZ」で特定されるオペレータ(通信事業者)のように、SGSNの位置情報が開示されていない場合には、MCC及びMNCとから暫定的に求めた位置情報(例えば当該オペレータの本社の位置を示す位置情報)が格納される。このように、管理DB33では、MCC,MNC及びSGSNのIPアドレスのうちの少なくとも一部を用いて求められる概位置情報が格納される。
【0045】
さらに、管理DB33に格納される情報には、MCC及びMNCに対応付けて「GMLCへの問い合わせ可否」を示すフラグがそれぞれ付与される。これは、位置情報管理装置30から当該オペレータのGMLCに対して、セルIDに対応する基地局装置の位置情報を問い合わせることができるかを示すフラグである。特定のオペレータのGMLCに対して「問い合わせ可」を示すフラグが付与されている場合、位置情報管理装置30から当該オペレータのGMLCに対してセルIDを用いて基地局装置の位置情報を問い合わせることにより、基地局装置の正確な位置情報をすることができる。GMLCに対して問い合わせをすることの可否については、例えば移動体通信網N1を提供する通信事業者と、相手方のオペレータとの間で予め契約を交わす等により決定される。位置情報管理装置30の管理DB33に格納される情報は、予め移動体通信網N1を提供する通信事業者により格納される。位置情報管理装置30の制御部32では、上述の管理DB33に格納される情報に基づいて、どの情報をSUPLサーバ20に対して送信するかが判断され、その結果に基づいて、適切な情報がSUPLサーバ20に対して送信される。
本発明に係る測位システム1では、各装置が上記のように機能することにより、通信端末60の要求に応じて通信端末60に対して概位置情報を送信すると共に、通信端末60によるGPS測位結果に基づいて、概位置情報が更新される。
【0046】
<測位支援システムを含む測位システムによる測位方法(測位支援方法)>
次に、上記の測位支援システム10を含む測位システム1による測位方法(測位支援システム10による測位支援方法)について、図7、図8及び図12に示すシーケンス図と、図9〜図11及び図13に示すフローチャートを用いて説明する。なお、図7は、通信端末60とSUPLサーバ20との間で通信を行うための処理を説明するシーケンス図である。また、図8は、移動体通信網N1における通信端末60の認証処理及び通信端末60に対して送信する概位置情報の準備に係る処理を説明するシーケンス図である。また、図12は、通信端末60におけるGPS測位に係る処理及び測位後の処理について説明するシーケンス図である。また、図9〜図11は、図8に示す処理の詳細を説明するフローチャートである。また、図13は、図12に示す処理の詳細を説明するフローチャートである。
【0047】
まず、図7を用いて、通信端末60とSUPLサーバ20との間で通信を行うための処理について説明する。通信端末60においてGPS測位を行う場合、通信端末60と、通信端末60に対してGPS測位のためのアシストデータを送信するSUPLサーバ20との間で、通信路を設ける必要がある。このため、通信端末60は、基地局装置70を介してGW装置50に対して、SUPLサーバ20との間で通信路を設けるための接続要求を送信する。この接続要求は、通信端末60のユーザが通信端末60を操作することにより送信される。GW装置50ではこの接続要求を受信し、通信端末60とGW装置50との間でTCP(Transmission Control Protocol)コネクション確立処理を行う(S01)と共に、GW装置50とSUPLサーバ20との間においてもTCPコネクション確立処理を行う(S02)。
【0048】
また、GW装置50と通信端末60との間でTCPコネクション確立処理を行う際(S01)に、通信端末60から送信される通信端末60に係る情報は、ユーザ情報管理装置40に対して送信される。ここでユーザ情報管理装置40に対して送信される情報には、通信端末60のソースIPアドレス、ソースポート番号、SGSN IPアドレス、及びローミング在圏情報が含まれる。これらの情報は、上記のTCPコネクション確立の際にSUPLサーバ20に対しても送信される。ユーザ情報管理装置40では、これらの情報をGW装置50から受信すると、この情報に基づいて、ユーザ情報管理装置40に格納されるユーザ情報を更新する(S04)。これにより、通信端末60の在圏するセルC1に係るローミング在圏情報(MCC,MNC及びセルID)及び当該セルC1に係る基地局装置70を制御するSGSNのIPアドレスに係る情報がユーザ情報管理装置40に格納される。
【0049】
続いて、上記の処理により作成されたTCPコネクションを介して、通信端末60とSUPLサーバ20との間で、測位に係る情報の送受信に用いられるTLS(Transport Layer Security)トンネルを確立する処理が行われる(S05)。以上の処理により、測位に係る通信を通信端末60とSUPLサーバ20との間で行う通信路が設けられ、情報の送受信に係る準備が終了する。
【0050】
続いて、図8を用いて、通信端末60における測位に係る認証処理について説明する。上記の処理により、TLSトンネルが確立される(S05)と、通信端末60からSUPLサーバ20に対して測位開始要求(ULP_SUPL-START)が送信される(S11、概位置情報送信ステップ)。ここで通信端末60からSUPLサーバ20に対して送信される測位開始要求には、セッションID(一度のGPS測位に係る処理について共通して割り振られる識別子)と、通信端末60の測位能力を示す通信端末機能(通信端末機能を示す情報)と、ローミング在圏情報と、通信端末60による測位精度と、通信端末60によるセルC1に対する接続状況が含まれる。さらに、通信端末60を特定する情報として、通信端末60のMSISDN(Mobile Subscriber ISDN Number)が含まれる。SUPLサーバ20の通信部21では、この測位開始要求を受信すると、位置情報管理装置30に対して通信端末60に係る認証処理を要求(HTTP_Authentication-Request)する(S12)。この要求には、セッションIDと、ローミング在圏情報と、通信端末60のMSISDNと、ソースIPアドレスと、ソースポート番号と、が含まれる。
【0051】
位置情報管理装置30の通信部31は、SUPLサーバ20からこの要求を受信すると、ユーザ情報の確認を行うため、ユーザ情報管理装置40に対して通信端末60のMSISDNを送信することにより、ユーザ情報の問い合わせ(ISCP_Authentication-Request)を行う(S13)。ユーザ情報管理装置40では、通信端末60のMSISDNを受信すると、当該ユーザのプロファイルを読み出すことによりユーザ情報の呼び出しを行う(S14)。通信端末60のユーザに係る情報は、予めGW装置50からユーザ情報管理装置40に送信され、更新されている(S04)。したがって、ユーザ情報管理装置40ではこの情報(ソースIPアドレス、ソースポート番号、ローミング在圏情報、SGSN IPアドレス)が取得され、ユーザ情報応答(ISCP_Authentication-Response)として位置情報管理装置30に対して送信される(S15)。位置情報管理装置30では、ユーザ情報管理装置40から送信された情報が受信されると、先にSUPLサーバ20から送信された情報と共に、通信部31から制御部32に対して送信される。そして、制御部32において、両者が一致するかを確認することにより、通信端末60とSUPLサーバ20との通信を継続してよいかを判断する(S16)。ここで、もし上記の情報が一致しない場合には、通信端末60との通信の継続不可と判定され、接続が中止される。なお、継続してよいと判断された場合には、引き続き、概位置情報送信に係る処理に移行する。
【0052】
概位置情報として通信端末60に送信する情報の決定に係る処理として、まず制御部32において、位置情報管理装置30からSUPLサーバ20に対して送信する情報の決定(送信データの決定)が行われ(S17、概位置情報送信ステップ)、決定された送信データを通信部31からSUPLサーバ20に対して送信することにより、認証処理が終了したことと共に、概位置情報の出力に係る準備を行う旨の指示(HTTP_Authentication-Response)を行う(S18、概位置情報送信ステップ)。位置情報管理装置30からSUPLサーバ20に対して送信される指示には、セッションIDと、認証結果と、位置情報管理装置30において取得された位置情報及び当該位置情報のレベル(詳細は後述する)と、ローミング在圏情報と、SGSNのIPアドレスとが含まれる。
【0053】
ここで位置情報管理装置30の制御部32において行われる処理を図9に示すフローチャートを用いて説明する。制御部32では、通信端末60からSUPLサーバ20を介して送信された情報のうちローミング在圏情報及び管理DB33に格納される情報を用いて、「他網事業者に対して問い合わせ可能か?」を判断する(S101)。これは、管理DB33に格納される情報において、ローミング在圏情報に含まれるMCC及びMNCにより特定されるオペレータに対して、「GMLCに問い合わせ可」のフラグがあるかにより判断される。ここで、GMLCに問い合わせ可と判断される場合には、位置情報管理装置30の通信部31により当該オペレータのGMLCに対して、セルIDを用いて位置情報の提供を要求(Lr-IF SRLIR)することにより、当該セルIDにより特定される基地局装置70の位置情報を取得(Lr-IF SRLIA)する(S102)。そしてこの結果得られた基地局装置70の位置情報を上記の送信データにすることが決定され、通信部31からSUPLサーバ20に対して送信される(S103(S18))。このとき、通信部31からSUPLサーバ20に対して送信する送信データに対して、当該送信データが他網(移動体通信網N2)のGMLCに対して問い合わせることにより取得されたことを示す情報が対応付けられて送信される。
【0054】
なお、位置情報管理装置30からSUPLサーバ20に対して、送信データとして基地局装置70の位置情報を送信する場合には、当該情報に対応付けて、「概位置情報DB23に格納されている情報を概位置情報として用いないこと」を示すフラグと、「通信端末60から送信される測位結果に基づいて概位置情報DB23の更新を行わないこと」を示すフラグと、が付与される。これはGMLCに問い合わせることにより取得される基地局装置70の情報が最も正確であるため、この情報を最優先で概位置情報として使用することを指示し、且つ、この基地局装置70の位置情報を用いて通信端末60において測位した結果を、概位置情報DB23に格納する概位置情報の更新に用いることを禁止するものである。
【0055】
一方、「GMLCに問い合わせ不可」を示すフラグが付与されている場合には、セルIDに対応する基地局装置70の正確な位置情報を取得することはできないため、次に基地局装置70を制御するSGSNの位置情報が管理DB33に格納されているかを確認する(S105)。ここで、SGSNの位置情報が管理DB33に格納されている場合は、この位置情報を、上記の送信データにすることが決定され、通信部31からSUPLサーバ20に対して送信される(S106(S18))。このとき、通信部31からSUPLサーバ20に対して送信する送信データに対して、当該送信データが管理DB33において格納されるSGSNの位置情報であることを示す情報が対応付けられて送信される。
【0056】
また、SGSNの位置情報が管理DB33に格納されていない場合は、MCCとMNCより導かれる位置情報を上記の送信データにすることが決定され、通信部31からSUPLサーバ20に対して送信される(S108(S18))。このとき、通信部31からSUPLサーバ20に対して送信する送信データに対して、当該送信データが管理DB33において格納されるMCCとMNCより導かれる位置情報であることを示す情報が送信データに対応付けて送信される。以上により、位置情報管理装置30からSUPLサーバ20に対して送信データが送信され、概位置情報の準備が指示される。
【0057】
一方、SUPLサーバ20の通信部21において、送信データと共に概位置情報の準備に係る指示を受信すると、これらの情報が制御部22に送られ、通信端末60に対して通知する概位置情報の準備に係る処理が行われる(S19、概位置情報送信ステップ)。
【0058】
まず、制御部22では、位置情報管理装置30から送信された送信データが(1)基地局装置70の位置情報、(2)SGSNの位置情報、(3)MCC−MNCにより算出された情報、のいずれであるかを、送信データに対して添付された情報から確認する。そしてこの結果に応じた処理を制御部22において行う。
【0059】
まず、送信データが(1)基地局装置70の位置情報である場合、通信端末60に対してはこの基地局装置70の位置情報を概位置情報として送信することが制御部22において判断される。そして、位置情報管理装置30から送信された基地局装置70の位置情報を、セルIDに対応付けて、概位置情報DB23に格納する。このとき概位置情報DB23に格納する情報に対しては、当該情報が概位置情報として最も正確な情報であるため、「更新不要」のフラグを付与する。
【0060】
次に、送信データが(2)SGSNの位置情報である場合、図10に示すフローチャートに沿って、通信端末60に対して通知する概位置情報が決定される。まず、制御部22において、概位置情報DB23に格納されている情報が利用可能であるかの判断がなされる(S201)。例えば、何らかの事情で概位置情報DB23がネットワークから切断されている場合には、概位置情報DB23に格納される情報は利用することができない。このように、セルIDに対応付けて概位置情報DB23に格納される情報の利用可否が判断される。
【0061】
ここで、概位置情報DB23に格納される情報が利用可能であると判断された場合には、次に通信端末60のステータスの確認が行われる(S202)。ここで確認される通信端末60のステータスとは、セルC1のエリア内に通信端末60が在圏しているかを確認する情報であり、測位開始要求(ULP_SUPL-START)の際に通信端末60から通知されるセルC1に対する接続状況を示す情報である。このステータスが「Unknown」である場合とは、すなわち、通信端末60がセルC1に継続して在圏しているかどうかが分からない(在圏していない可能性が考えられる)場合であり、概位置情報DB23に格納される情報の利用が抑止される。そして、このステータスが「Unknown」ではない場合、すなわち、通信端末60がセルC1に継続して在圏していると考えられる場合には、次に、セルIDに対応する情報を既に格納済みであるかどうかの確認が行われる(S203)。
【0062】
ここでは、例えば、今回の通信端末60によるGPS測位が、当該セルC1において初めてのGPS測位である場合、概位置情報DB23において、セルC1のセルIDに対応付けられた概位置情報はまだ格納されていないため、概位置情報DB23に格納される情報を利用することができない。これに対して、過去にセルC1において通信端末によるGPS測位が行われていた場合は、当該GPS測位結果に基づいて更新された概位置情報が概位置情報DB23に格納されているため、この概位置情報DB23に格納される概位置情報を用いることが決定される(S204)。なお、上記の確認のうちのいずれかで問題があると判断された場合(すなわち、概位置情報DB23に格納される情報が利用不可であると判断された場合、通信端末60のステータスが「Unknown」であった場合、及び、セルIDに対応する情報が概位置情報DB23に格納されていない場合)には、位置情報管理装置30から送信されたSGSNの位置情報を概位置情報として使用することが決定され、その準備が進められる(S205)。
【0063】
次に、送信データが(3)MCC−MNCにより算出された情報である場合、図11に示すフローチャートに沿って、通信端末60に対して通知する概位置情報が決定される。まず、制御部22において、概位置情報DB23に格納されている情報が利用可能であるかの判断がなされる(S301)。ここで概位置情報DB23に格納される情報が利用可能であると判断された場合には、次に通信端末60のステータスの確認が行われる(S302)。このステータスが「Unknown」ではない場合、すなわち、通信端末60がセルC1に継続して在圏していると考えられる場合には、次に、セルIDに対応する情報を既に格納済みであるかどうかの確認が行われる(S303)。ここで、過去にセルC1において通信端末によるGPS測位が行われていた場合は、当該GPS測位結果に基づいて更新された概位置情報が概位置情報DB23に格納されているため、この概位置情報DB23に格納される概位置情報を用いることが決定される(S304)。上記の処理は、(2)SGSNの位置情報が位置情報管理装置30から送信された場合と同じように処理される。
【0064】
一方、上記の確認のうちのいずれかで問題があると判断された場合(すなわち、概位置情報DB23に格納される情報が利用不可であると判断された場合、通信端末60のステータスが「Unknown」であった場合、及び、セルIDに対応する情報が概位置情報DB23に格納されていない場合)には、概位置情報DB23において、SGSNの位置情報を格納しているかの確認が行われる(S305)。すなわち、図5に示す表に、通信端末60から送信されるSGSNのIPアドレスに対応付けられた位置情報が格納されているかどうかの確認が制御部22によってなされる。ここで、SGSNの位置情報を概位置情報DB23において格納している場合は、当該位置情報が、MCC−MNCにより算出された情報よりもより正確であると考えられるため、この情報を概位置情報として用いることが決定され、通信端末60に対して通知するための準備が行われる(S306)。しかし、SGSNの位置情報を概位置情報DB23において格納していない場合は、位置情報管理装置30から送信されたMCC−MNCにより算出された情報を概位置情報として用いることが決定され、通信端末60に通知するための準備が行われる(S307)。
【0065】
以上の処理により、SUPLサーバ20の制御部22において通信端末60に対して送信することとなる概位置情報の準備が行われた(S19)後、通信部21から通信端末60に対して、測位開始要求(S11)に対する測位開始応答(ULP_SUPL-RESPONSE)が送信される(S20)。このときの測位開始応答には、セッションIDと、測位方式を示す情報(ネットワークアシスト方式を特定する「SET-Based-A-GPS」)が含まれる。
【0066】
続いて、図12を用いて、通信端末60におけるGPS測位に係る処理及び測位後の処理について説明する。通信端末60は、SUPLサーバ20からの測位開始応答(S20)において指定される測位方式(ネットワークアシスト方式)に基づいて、概位置情報を含むアシストデータの提供要求(ULP_SUPL-POS-INT)をSUPLサーバ20に対して送信する(S21)。この提供要求には、セッションIDと、ローミング在圏情報と、通信端末60の測位性能(ネットワークアシスト方式による測位の際に用いられる機能に係る性能)情報と、が含まれる。
【0067】
SUPLサーバ20の通信部21では、通信端末60からの概位置情報提供要求が受信されると、制御部22に対して通知され、制御部22において通信端末60に対して送信する概位置情報が取得される(S22、概位置情報送信ステップ)。ここでは、上述の通知情報出力準備(S19)において決定された通信端末60に対して送信する情報を、通信端末60に対して送信するための処理(具体的には、当該情報をSUPL_POSメッセージに格納する処理)が行われる。そして、上記の処理とは別の処理により取得されたGPS衛星の航路情報と共に概位置情報とを含む応答(ULP_SUPL-POS(RRLP_Measure-Position-Request))が通信端末60に対して送信される(S23、概位置情報送信ステップ)。ここでは、セッションIDと、アシストデータとして、概位置情報(緯度、経度、高度、緯度・経度の不確定性、高度の不確定性)と、GPS衛星の航路情報(ephemeris,almanac)と、が通信端末60に対して送信される。
【0068】
続いて、通信端末60では、これらの情報に基づいてGPS測位が行われ(S24)、通信端末60において演算を行うことにより、通信端末60の位置が算出される。具体的には、通信端末60では、GPS測位の際に、アシストデータとしてSUPLサーバ20から送信されるGPS衛星の航路情報を利用して、3つ以上のGPS衛星を捕捉し、これらの衛星から送信される信号と、概位置情報とを利用して自端末の測位を行う。
【0069】
ここで、3つ以上のGPS衛星からの信号を正しく受信でき、且つ、概位置情報がより正確な情報であれば、GPS測位が成功し、通信端末60の緯度、経度、高度、及び誤差半径を得ることができる。ここで、誤差半径とは、通信端末60による測位演算の結果得られた緯度、経度、高度が正確であるかを示すものであり、SUPLサーバ20から送信される概位置情報の不確定性、GPS信号の受信精度等に基づいて算出される。しかしながら、信号を受信できたGPS衛星の数が少ない場合や、概位置情報が著しく不正確な場合には、GPS測位が失敗する可能性がある。通信端末60が3つ以上のGPS衛星の捕捉に失敗する場合としては、例えば、屋内で測位を行う場合が挙げられる。また、概位置情報が著しく不正確である場合としては、例えば、過去にこの概位置情報の更新に用いられた測位結果の中に本来含まれるはずのないような(例えば誤動作等によって得られた)測位結果が含まれている場合や、収容変更によりセルのセルIDが変更されたにもかかわらずこのセルIDに対応付けられた概位置情報が変更されていない場合等が挙げられる。上記のような問題が発生した場合には、通信端末60によるGPS測位が失敗し、通信端末60は自端末の位置を示す情報を得ることができない可能性がある。
【0070】
通信端末60によるGPS測位の後、測位結果情報(ULP_SUPL-POS(RRLP_Measure-Position-Response))が、通信端末60からSUPLサーバ20に対して送信され、SUPLサーバ20の通信部21において受信される(S25、測位結果受信ステップ)。
【0071】
このとき通信端末60からSUPLサーバ20に対して送信される測位結果情報には、通信端末60においてGPS測位が成功した場合には、セッションIDと、測位結果(緯度、経度、高度、誤差半径)とが含まれる。また、通信端末60においてGPS測位が失敗した場合には、セッションIDと、測位失敗を示すエラーコードと、通信端末60がGPS測位の際に捕捉したGPS衛星の数を示す衛星数情報とが含まれる。
【0072】
次に、SUPLサーバ20では、制御部22により、通信端末60から送信された測位結果情報に基づいて、概位置情報DB23に格納される概位置情報が更新される(S26、概位置情報更新ステップ)。
【0073】
上記の制御部22による概位置情報の更新の具体的な手順について図13を用いて説明する。まず制御部22では、通信端末60から送信された測位結果情報を参照し、測位成功か否かを判断する(S401)。測位成功か否かについては、測位結果情報に測位結果が含まれているのか、エラーコードが含まれているのか、で判断することができる。すなわち、これらの情報が通信端末60におけるGPS測位の成否を示す情報(成否情報)となる。ここで、測位が成功していると判断された場合には、この測位結果を用いて、概位置情報DB23に格納された概位置情報を更新する(S411)。具体的には、概位置情報DB23にセルIDに対応付けられた概位置情報がまだ格納されていなかった場合には、通信端末60による測位結果を概位置情報として新たに格納する。また、通信端末60に対して概位置情報DB23に格納される概位置情報を送信した場合には、上述のように、通信端末60に対して送信した概位置情報と、測位後に通信端末60から送信された結果とに基づいて、概位置情報が更新される。
【0074】
次に、測位が失敗したと判断された場合、すなわち、測位結果情報にエラーコードが含まれていた場合には、測位結果情報に含まれる衛星数情報を参照し、通信端末60が捕捉した衛星数が3つ以上であるかを判断する(S402)。ここで、捕捉した衛星数が3つ以上ではない、すなわち、捕捉した衛星数が2つ未満である場合には、GPS測位を成功させるために十分な数のGPS衛星を通信端末60が捕捉できなかったためにGPS測位が失敗したことが考えられるため、概位置情報の更新は行わず、概位置情報の更新に係る処理を終了する。一方、捕捉した衛星数が3つ以上である場合には、十分な数のGPS衛星を通信端末60が捕捉できたにもかかわらずGPS測位に失敗したことから、概位置情報が正確な情報ではなく不良であるとみなして、この概位置情報を利用して失敗した回数に1を加える(S403)。制御部22では、同一の概位置情報を利用して測位を行った結果失敗し、制御部22において不良であるとみなされた回数を概位置情報毎(すなわちセルID毎)に保持しておく。そして、不良であるとみなし失敗回数に1を加えた結果、失敗回数が予め定められた閾値(例えば、5回)を超過したか否かを判断し(S404)、閾値を超過した場合には概位置情報を初期化する(S405)。また、失敗回数が閾値以下である場合には、概位置情報の更新を行わず、処理を終了する(S412)。この閾値は、予めSUPLサーバ20の管理者等によって定められ、制御部22において保持される。なお、制御部22で保持している失敗回数は、概位置情報の更新が行われた場合にはリセットされる。
【0075】
概位置情報を初期化する(S405)方法として、具体的には、概位置情報DB23において当該セルIDに対応する基地局装置70を管理するSGSNの概位置情報が格納されている場合には、失敗回数が閾値を超えた概位置情報を削除した後、SGSNの概位置情報をセルIDに対応した新たな概位置情報(初期値)として入力する方法が挙げられる。また、SGSNの概位置情報を予め保持していない場合には、MCC及びMNCで特定される位置情報をセルIDに対応した新たな概位置情報(初期値)として入力する方法を用いることもできる。また、他の方法として、セルIDに対応した概位置情報自体を削除し、セルIDに対応した概位置情報が概位置情報DB23に格納されていない状態とする方法が挙げられる。概位置情報DB23から概位置情報を削除した場合、次回にこのセルIDにより特定されるセル内で通信端末が測位を行う際には、当該セルで初めて測位が行われる際と同様の処理が行われることで、通信端末に対して送信する概位置情報が選択され、送信される。
【0076】
その後、測位に係る一連の処理が終了した旨の通知(ULP_SUPL-END)がSUPLサーバ20の通信部21から通信端末60に対して送信される(S27)ことにより、通信端末60による測位に係る処理が終了される。
【0077】
なお、通信端末60がGPS測位を失敗した場合は、上記のGPS測位に係る一連の処理の後、アシストデータの追加要求をSUPLサーバ20に送信し、新たなアシストデータを受信して再度GPS測位を行うこともできる。
【0078】
<測位支援システム及び測位支援方法による効果>
上記実施形態に係る測位支援システム10及び測位支援システム10を含む測位システム1による測位方法(測位支援方法)によれば、SUPLサーバ20において、通信端末60から送信される測位結果情報を受信し、この測位結果情報に基づいて、概位置情報DB23において、セルIDに対応付けて格納される概位置情報が更新される。このように、同一のセルでの通信端末による測位の実績に基づいて、概位置情報DB23に格納される概位置情報が更新されることにより、概位置情報の精度を高めることができるため、通信端末60がGPS測位を行う際に、通信端末60に対してより高い精度の概位置情報を送信することができる。
【0079】
また、上記の測位支援システム1では、通信端末60による測位演算が失敗した場合に、制御部22において、通信端末60から送信される測位結果情報に含まれるエラーコードと通信端末60が捕捉した衛星数情報とに基づいて、通信端末60に対して送信した概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて当該概位置情報を初期化する。このように、不良と判断された概位置情報を初期化する態様を有することで、不良と判断された概位置情報を使った測位演算を続けることにより、通信端末60によるGPS測位の精度が低下すること防止することができる。また、概位置情報が不良であるかの判断に衛星数情報を用いることで、例えば通信端末60によるGPS衛星の捕捉が不十分であることが理由で測位演算が失敗となった場合に当該概位置情報が初期化されることを防止することができ、概位置情報の不要な初期化を抑制し、さらに高い精度の概位置情報を提供することが可能となる。
【0080】
また、上記実施形態では、通信端末60に対して送信した概位置情報により特定される位置と、測位結果情報により特定される位置とに基づいて新たな概位置情報が算出されるため、概位置情報DB23に格納される概位置情報をより適切であり且つ高精度の情報に更新することができる。
【0081】
また、上記実施形態では、概位置情報を更新する場合に、セルIDに対応する基地局70を含む複数の基地局を管理する基地局管理装置であるSGSNの位置を特定する情報を新たな概位置情報として使用することで、概位置情報を初期化した場合であっても、通信端末60が在圏するセルの位置と初期化後の概位置情報とが大きく隔たれることが防止され、測位精度の低下を防止することができる。
【0082】
また、概位置情報DB23に格納される概位置情報が、例えば移動体通信網N2のGMLCに対して問い合わせることにより入手された正確な情報である場合には、通信端末60による測位結果に基づいて更新を行うことを禁止するフラグを付与することができる「更新要否を示すフラグ」を概位置情報に対応付けて格納することで、概位置情報を更新することにより概位置情報の精度が低下することを防ぐことができる。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る測位支援システム10を含む測位システム1は種々の変更を行うことができる。
【0084】
例えば、測位支援システム10に含まれるSUPLサーバ20及び位置情報管理装置30に係る機能は、一台の装置に全て含まれる構成であってもよいし、各機能がそれぞれ異なる装置に分散される構成であってもよい。また、上記実施形態では、通信端末60によりSUPLサーバ20からアシストデータを取得してGPS測位を行い、さらに測位データから通信端末60の現在位置を算出する測位演算処理を行う場合について説明したが、通信端末60の現在位置に算出する測位演算処理については、通信端末60とは異なる装置で行う態様とすることもできる。
【0085】
また、上記実施形態では、クライアント端末10が在圏する通信エリアとしてセルを用いて説明したが、本発明に係る通信エリアとはセルに限定されない。例えば、セルを管理する基地局装置の上流に位置してパケット通信の制御を行うSGSNが管理するエリアを通信エリアとみなした場合でも上記実施形態と同様の測位支援を行うことができると共に、SGSNの概位置情報の更新を上記実施形態と同様に行うことができる。
【0086】
また、上記実施形態では、通信端末60が例えば海外において用いられている場合のように、移動体通信網N1からローミングアウトしている状態について説明している。しかしながら、本発明に係る測位支援システム10及び測位支援方法は、通信端末60がローミングアウトしていない場合であっても、適用することができる。すなわち、通信端末60が接続する基地局装置の位置情報を正確に把握することができない場合に、本実施形態に係る測位支援方法を好適に用いることができる。
【0087】
また、通信端末60からの測位結果情報に基づいて概位置情報を更新する際の更新方法については、上記実施形態において説明した方法(通信端末60に対して送信した概位置情報による位置と通信端末60からの測位結果情報による位置との中点を新たな概位置情報とする方法や、同一セルにおいて過去に測定された結果の平均値を新たな概位置情報とする方法)に限定されず、種々の方法を用いることができる。その場合、例えば、GPS測位の成功率等をさらに利用して、概位置情報を更新する方法等を用いることもできる。
【0088】
また、上記実施形態では、通信端末60がGPS測位を失敗し、この通信端末60からの測位結果情報に基づいて概位置情報を初期化するか否かを判断する処理について、制御部22において失敗回数を数え所定の閾値を超えた場合に初期化を行う態様について説明した。しかしながら、閾値を超過したか否かに基づいたかによって初期化を実施するか判断する態様は必須ではない。例えば、GPS測位が失敗したことを示す成否情報(エラーコード)を含む測位結果情報を受信した場合には、捕捉した衛星数が3つ以上であるか否かを確認し(図13のS404)、その結果3つ以上である場合には概位置情報を初期化する構成としてもよい。また、上記実施形態では、捕捉する衛星数が3つ以上であるか否かを確認したが、この数は一例であって、3つに限定されない。
【0089】
また、上記実施形態では、通信端末60がGPS測位を失敗した場合のみエラーコードと共に衛星数情報をSUPLサーバ20に対して送信する態様について説明した。しかしながら、通信端末60においてGPS測位が成功した場合にも衛星数情報をSUPLサーバ20に対して送信する態様としてもよい。すなわち、GPS測位の成否にかかわらず衛星数情報を測位結果情報に含めて送信する態様とすることができる。
【0090】
また、上記実施形態では、制御部22において不良であるとみなされた回数(失敗回数)が予め定められた閾値を超過した場合に概位置情報の更新を行う態様について説明したが、概位置情報を更新するか否かの判断方法は上記実施形態に限定されない。例えば、特定の概位置情報を用いた測定回数に対する失敗回数の割合(失敗率)を概位置情報の更新要否についての閾値として使用してもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、概位置情報を送信した通信端末60からの測位結果情報に基づいて、概位置情報DB23に格納される概位置情報を更新する態様について説明したが、必ずしも概位置情報を送信した通信端末の測位結果のみを概位置情報の更新に用いることはなく、概位置情報を送信せず(例えば独立方式により)測位を行った測位結果情報にも基づいて概位置情報DB23に格納される情報を更新してもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、通信端末60においては、SUPLサーバ20から送信されたアシストデータを用いてGPS測位を行う態様について説明しているが、アシストデータを用いたGPS測位が成功しない場合は、通信端末60においてアシストデータの利用を中止するか又は通信端末60において独自に生成されたアシストデータを利用してGPS測位を継続することもできる。この場合、測位結果情報を通信端末60からSUPLサーバ20に対して通知する際に、どのアシストデータを用いてGPS測位を行ったかを併せて通知する態様とすることにより、概位置情報の更なる高精度化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0093】
1…測位システム、10…測位支援システム、20…SUPLサーバ、30…位置情報管理装置、40…ユーザ情報管理装置、50…GW装置、60…通信端末、70…基地局装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末による測位演算の際にアシストデータとして用いられる概位置情報を通信端末に対して送信する測位支援装置及び当該測位支援装置による測位支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の通信端末の高性能化に伴い、GPS(Global Positioning System)を利用した測位機能を有する通信端末の普及が進んでいる。通信端末においてGPSを利用した測位演算を行う場合、GPS衛星からの電波のみを受信して測位する単独測位方式では測位時間の長期化及び通信端末における消費電力の増大等が懸念される。このため、GPS衛星の位置等の捕捉情報(アシストデータ)を測位支援サーバから通信端末に対して送信することにより測位時間の短縮を図るネットワークアシスト方式が採用されている。また、ネットワークアシスト方式のGPS測位では、通信端末の大まかな位置を示す情報(概位置情報)として、当該通信端末が在圏するエリアの基地局の位置を特定する情報が、アシストデータの一つとして測位支援サーバから通信端末に対して送信される(例えば、特許文献1参照)。この通信端末の概位置情報は、GPS測位の成功率に大きく寄与する情報である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−175824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば海外の移動体通信網にローミングアウトした場合のように、通信端末が在圏する基地局が自網のものではない場合は、通信端末が在圏する基地局の位置を特定する情報を測位支援サーバにおいて把握していないことがある。この場合、測位支援サーバでは、例えば通信端末から送信される在圏する国を指定する情報等の限られた情報から概位置情報を算出して通信端末に対して送信するため、概位置情報の精度が低下する。このため、通信端末によるGPS測位の成功率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、通信端末に対して高い精度の概位置情報を送信する測位支援装置及び当該測位支援装置による測位支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る測位支援装置は、衛星を捕捉して当該衛星からの情報を用いて測位を行う通信端末における測位演算に使用され、当該通信端末が在圏する通信エリアの位置を示す概位置情報と、当該通信エリアを特定する情報とを対応付けて格納する概位置情報格納手段と、通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報を含み通信端末から送信される測位情報送信要求に基づいて、通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報に対応付けて概位置情報格納手段に格納される概位置情報を取得し、通信端末に対して送信する概位置情報送信手段と、概位置情報送信手段により送信された概位置情報を取得した通信端末から送信され当該測位演算の結果を示す情報である測位結果情報を受信する測位結果受信手段と、測位結果情報に基づいて、概位置情報格納手段において格納される概位置情報を更新する概位置情報更新手段とを備え、測位結果情報には、測位演算が成功したか失敗したかを示す成否情報と、測位演算において通信端末が捕捉した衛星数を示す衛星数情報と、が含まれ、概位置情報更新手段は、成否情報と衛星数情報とに基づいて概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて概位置情報格納手段において格納される概位置情報のうち通信端末に対して送信した概位置情報を初期化することを特徴とする。
【0007】
上記の測位支援装置によれば、通信端末から送信される測位結果情報を受信し、この測位結果情報に基づいて、概位置情報格納手段に格納されて通信エリアの位置を示す概位置情報が更新される。このように、通信端末による測位の実績に基づいて概位置情報の精度を高めることができるため、通信端末に対してより高い精度の概位置情報を送信することができる。また、通信端末による測位演算が失敗した場合に、概位置情報更新手段では、成否情報と通信端末が捕捉した衛星数情報とに基づいて、通信端末に対して送信した概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて当該概位置情報を初期化する。このように、不良と判断された概位置情報を初期化する態様を有することで、不良と判断された概位置情報を使った測位演算を続けることによる測位精度の低下を防止することができる。また、概位置情報が不良であるかの判断に衛星数情報を用いることで、例えば通信端末による衛星の捕捉が不十分であることが理由で測位演算が失敗となった場合に当該概位置情報が初期化されることを防止することができ、概位置情報の不要な初期化を抑制し、さらに高い精度の概位置情報を提供することが可能となる。
【0008】
ここで、上記作用を効果的に奏する構成として、具体的には、概位置情報更新手段が、成否情報が測位演算を失敗したことを示す情報であると共に衛星数情報により特定される衛星数が所定の値より大きいかどうかを判断し、成否情報が測位演算を失敗したことを示す情報であると共に衛星数が所定の値より大きい場合に、通信端末に対して送信した概位置情報が不良であると判断し、不良であると判断された回数が閾値を超えた場合に、概位置情報格納手段において格納される概位置情報のうち通信端末に対して送信した概位置情報を初期化する態様が挙げられる。
【0009】
また、概位置情報は、通信エリアに係る基地局の位置を特定する情報であり、概位置情報及び測位結果情報は、緯度及び経度を含む情報である態様とすることができる。
【0010】
さらに、概位置情報更新手段は、初期化の後に、基地局を含む複数の基地局を管理する基地局管理装置の位置を特定する情報を新たな概位置情報として使用する態様とすることができる。
【0011】
このように、概位置情報が通信エリアに係る基地局の位置を特定する情報であって、この基地局を含む複数の基地局を管理する基地局管理装置の位置を特定する情報を新たな概位置情報として使用することで、概位置情報を初期化した場合であっても、通信端末が在圏する通信エリアの位置と初期化後の概位置情報とが大きく隔たれることが防止され、測位精度の低下を防止することができる。
【0012】
また、概位置情報更新手段は、通信端末に対して送信した概位置情報により特定される位置と、測位結果情報により特定される位置とに基づいて、新たな概位置情報を算出する態様とすることができる。
【0013】
上記のように、通信端末に対して送信した概位置情報により特定される位置と、測位結果情報により特定される位置とに基づいて新たな概位置情報を算出することにより、より適切であり且つ高精度の概位置情報が新たに算出される。
【0014】
また、概位置情報格納手段は、概位置情報の更新要否を示すフラグを概位置情報に対応付けて格納し、概位置情報更新手段は、フラグに基づいて、概位置情報の更新が必要であると判断される場合に、概位置情報の更新を行う態様とすることができる。
【0015】
概位置情報格納手段に格納される概位置情報が正確な情報である場合には、通信端末による測位結果に基づいて更新を行うことにより、概位置情報の精度がかえって低下してしまう可能性がある。したがって、更新要否を示すフラグを概位置情報に対応付けて格納することで、概位置情報の精度が低下することを防ぐことができる。
【0016】
なお、本発明は、上記のように測位支援装置の発明として記述できる他に、以下のように測位支援方法の発明としても記述することができる。これはカテゴリが異なるだけで、実質的に同一の発明であり、同様の作用及び効果を奏する。
【0017】
すなわち、本発明に係る測位支援方法は、衛星を捕捉して当該衛星からの情報を用いて測位を行う通信端末における測位演算に使用され、当該通信端末が在圏する通信エリアの位置を示す概位置情報と、当該通信エリアを特定する情報とを対応付けて格納する概位置情報格納手段を備える測位支援装置による測位支援方法であって、概位置情報送信手段により、通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報を含み通信端末から送信される測位情報送信要求に基づいて、通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報に対応付けて概位置情報格納手段に格納される概位置情報を取得し、通信端末に対して送信する概位置情報送信ステップと、概位置情報送信手段により送信された概位置情報を取得した通信端末が測位演算を行うことにより通信端末から送信される当該測位演算の結果を示す情報である測位結果情報を受信する測位結果受信ステップと、概位置情報更新手段により、測位結果情報に基づいて、概位置情報格納手段において格納される概位置情報を更新する概位置情報更新ステップとを備え、測位結果情報には、測位演算が成功したか失敗したかを示す成否情報と、測位演算において通信端末が捕捉した衛星数を示す衛星数情報と、が含まれ、概位置情報更新ステップにおいて、成否情報と衛星数情報とに基づいて概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて概位置情報格納手段において格納される概位置情報のうち通信端末に対して送信した概位置情報を初期値に更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、通信端末に対して高い精度の概位置情報を送信する測位支援装置及び当該測位支援装置による測位支援方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る測位システムの構成を説明するブロック図である。
【図2】SUPLサーバ、位置情報管理装置、ユーザ情報管理装置、GW装置、及び基地局装置のハードウェア構成を示す図である。
【図3】通信端末のハードウェア構成を示す図である。
【図4】概位置情報DBに格納される概位置情報の例である。
【図5】概位置情報DBに格納されるSGSNの位置情報の例である。
【図6】管理DBに格納される情報の例である。
【図7】通信端末とSUPLサーバとの間で通信を行うための処理を説明するシーケンス図である。
【図8】移動体通信網における通信端末の認証処理及び通信端末に対して送信する概位置情報の準備に係る処理を説明するシーケンス図である。
【図9】位置情報管理装置においてSUPLサーバに対して送信する送信データを決定する処理を説明するフローチャートである。
【図10】SUPLサーバから通信端末に対して送信する概位置情報として用いる位置情報を決定する処理を説明するフローチャートである。
【図11】SUPLサーバから通信端末に対して送信する概位置情報として用いる位置情報を決定する処理を説明するフローチャートである。
【図12】通信端末におけるGPS測位に係る処理及び測位後の処理について説明するシーケンス図である。
【図13】SUPLサーバにおいて概位置情報の更新を行う際の処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
<測位支援システムを含む測位システムの構成>
図1は、本発明の好適な実施形態に係る測位システム1の構成を説明するブロック図である。測位システム1は、測位支援システム10を構成するSUPL(Secure User Plane Location)サーバ20及び位置情報管理装置30と、ユーザ情報管理装置40と、GW(Gateway)装置50と、通信端末60と、基地局装置70と、を含んで構成される。このうち、SUPLサーバ20及び位置情報管理装置30により構成される測位支援システム10は、通信端末60による測位演算を支援する装置であり、ユーザ情報管理装置40、GW装置50、及び基地局装置70は、それぞれ、通信端末60と測位支援システム10との間の通信に係る装置である。また、SUPLサーバ20、位置情報管理装置30、ユーザ情報管理装置40、及びGW装置50は、同じ移動体通信網に含まれる装置であり、通信端末60は、この移動体通信網N1に対して接続する機能を有する。なお、本実施形態においては、通信端末60は、例えば海外において用いられる場合のように移動体通信網N1からローミングアウトした状態であり、移動体通信網N1とは異なる移動体通信網N2に含まれる基地局装置70に対して接続することにより、通信を行っている。このとき、通信端末60が移動体通信網N1に含まれる測位支援システム10からのアシストデータの提供を受けて測位を行う場合について説明する。
【0022】
ここで、本実施形態において通信端末60が行う測位方法について説明する。本実施形態において通信端末60が行う測位方法とは、ネットワークアシスト方式によるGPS(Global Positioning System)測位である。GPS測位とは、上空の3つ以上のGPS衛星からの信号を受信することにより、GPS衛星の位置情報に基づいて受信端末(通信端末60)の位置(具体的には、緯度、経度及び高度)を割り出す方法であるが、これを行うためには通信端末60によりGPS衛星を捕捉する必要があり、この処理に一定時間を要する。このため、本実施形態に係るネットワークアシスト方式によるGPS測位では、GPS衛星の位置及び通信端末60の概位置(初期位置)情報等の情報(アシストデータ)を測位支援システム10から通信端末に対して送信することにより、通信端末60によるGPS衛星の捕捉に係る処理及び測位時間の短縮が図られている。本実施形態では、通信端末60が測位支援システム10に対してアシストデータの提供を要求することにより通信端末60の概位置を示す情報及び通信端末60が信号を受信することができるGPS衛星の位置情報を測位支援システム10から受信することにより、通信端末60でGPS測位が行われ、通信端末60の位置が求められる。
【0023】
測位支援システム10から通信端末60に対して送られるアシストデータのうち、GPS衛星の位置情報については、測位支援システム10においてGPS衛星の起動情報を管理しているアシストデータプロバイダ(図示せず)から取得された情報が用いられる。一方、通信端末60の概位置情報としては、通信端末60が在圏する通信エリアであるセルに対して電波を送信する基地局装置の位置情報が用いられる。これは、基地局装置の位置は予め定められているため、当該基地局装置の位置情報を測位支援システム10において予め格納することができ、通信端末60が在圏するセルを特定する情報が通信端末60から送信された場合に、当該情報に基づいて通信端末60に対して送信することができるからである。
【0024】
上記の基地局装置が移動体通信網N1により設けられたものである場合(すなわち、移動体通信網N1に含まれる基地局装置である場合)は、基地局装置の位置情報が容易に入手できるため、測位支援システム10において当該位置情報をアシストデータとして格納することが容易である。しかしながら、本実施形態のように、通信端末60がローミングアウトしている場合、通信端末60が在圏する基地局装置70は、他の移動体通信網N2により設置されたものであるため、基地局装置70が設けられた位置の正確な情報を測位支援システム10において把握するのは困難である。したがって、通信端末60から提供される情報(例えば、在圏する国や移動体通信網N2を提供する通信事業者を特定する情報等)に基づいて概位置情報を作成した場合、その精度は著しく低くなるため、この情報を用いてGPS測位を行った結果の精度が低くなる場合があるという問題があった。以下の実施形態では、上記の問題を鑑みて通信端末60に送信する概位置情報の精度が高められた測位支援システム10を含む測位システム1について説明する。
【0025】
次に測位システム1に含まれる各装置について説明を行う。まず測位システム1に含まれる測位支援システム10を構成するSUPLサーバ20は、測位支援システム10の主要機能を有する装置であり、通信端末60に対して送信するアシストデータを格納し、通信端末60からの要求に基づいて、アシストデータを通信端末60に対して送信する機能を有する。
【0026】
SUPLサーバ20と同様に測位支援システム10を構成する位置情報管理装置30は、通信端末60と測位に係る通信を行うための認証処理を行う機能を有すると共に、移動体通信網N1において位置情報に係るデータを管理するGMLC(Gateway Mobile Location Centre)の機能を有し、例えばEBSCP(External Business user Service ControlPoint)として実現される。具体的には、自網(移動体通信網N1)とは異なる通信網(移動体通信網N2を含む)のプロファイルデータ等を格納し、必要に応じて当該データをSUPLサーバ20に対して送信する。本実施形態に係る詳細な処理については後述する。
【0027】
ユーザ情報管理装置40は、測位支援システム10との間で測位に係る通信を行う通信端末の所有者(ユーザ)に係る情報(ユーザプロファイル)を格納する機能を有し、例えばSUSCP(Specific User Service Control Point)として実現される。そして、位置情報管理装置30からの要求に応じて当該情報を提供する。
【0028】
GW装置50は、移動体通信網N1とは異なる移動体通信網(例えば移動体通信網N2)との間に設けられ、移動体通信網N2と移動体通信網N1とを接続する機能を有し、例えばCPCG(Charging and Protocol Conversion Gateway)として実現される。通信端末60のようにローミングアウトした通信端末60が移動体通信網N1に含まれる各装置との間で通信を行うためには、このGW装置50に対してまず接続する必要がある。GW装置50は外部の移動体通信網から接続要求を送信した通信端末60と、移動体通信網N1に含まれる各装置(本実施形態では、SUPLサーバ20)との間の通信の仲介を行う。
【0029】
通信端末60はユーザにより用いられ、具体的には、例えば、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistance)等の通信機能を有する装置として実現される。また、本実施形態に係る通信端末60は、他の通信事業者が提供する設備(例えば、基地局装置70)を利用して通信を行うことができるローミングに係る機能を備えることにより、移動体通信網N2を介して通信を行う機能を有する。さらに、通信端末60は測位支援システム10からのアシストデータを利用したGPS測位を行う機能を有する。
【0030】
基地局装置70は、移動体通信網N2に含まれる装置であり、特定の範囲に対して電波を送信することによりセルC1を形成する。通信端末60がセルC1内にある場合、通信端末60は基地局装置70を介して情報を送受信することにより、通信を行うことができる。セルにはそれぞれ固有のセルIDが付与されており、このセルIDにより、どの基地局装置70が関連するセルであるかを区別することができる。この基地局装置70を含む複数の基地局装置は、その移動体通信網N2において基地局装置の上流に位置してパケット通信の制御を行うSGSN(Serving GPRS Support Node)(図示せず)により管理されている。
【0031】
測位システム1に含まれるSUPLサーバ20、位置情報管理装置30、ユーザ情報管理装置40、GW装置50、及び基地局装置70は、それぞれ、図2に示すように、CPU101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM(Read Only Memory)103、通信を行うための通信モジュール104、並びにハードディスク等の補助記憶装置105等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成される。そして、これらの構成要素が動作することにより、各装置の機能が発揮される。また、通信端末60は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)601、RAM602、ROM603、操作部604、無線通信部605、ディスプレイ606、及びアンテナ607等のハードウェアにより構成される。そしてこれらの構成要素が動作することにより、通信端末60の機能が発揮される。
【0032】
なお、SUPLサーバ20と位置情報管理装置30との間、位置情報管理装置30とユーザ情報管理装置40との間、ユーザ情報管理装置40とGW装置50との間、GW装置50とSUPLサーバ20との間は、それぞれ有線のネットワークを介して接続される。また、通信端末60とGW装置50との間、及び通信端末60と基地局装置70との間は、それぞれ無線通信により情報の交換が行われる。
【0033】
図1に戻り、測位システム1に含まれ本発明の特徴をなす測位支援装置である測位支援システム10に含まれるSUPLサーバ20及び位置情報管理装置30について詳細に説明する。SUPLサーバ20は、通信部(概位置情報送信手段、測位結果受信手段)21と、制御部(概位置情報送信手段、概位置情報更新手段)22と、概位置情報DB(データベース)(概位置情報格納手段)23と、を含んで構成される。また、位置情報管理装置30は、通信部31と、制御部(概位置情報送信手段)32と、管理DB33とを含んで構成される。
【0034】
SUPLサーバ20の通信部21は、通信端末60から送信される測位情報送信要求に基づいて、概位置情報を含むアシストデータを通信端末60に対して送信する概位置情報送信手段として機能する。また、通信端末60から送信される測位結果を受信する測位結果受信手段としての機能を併せて備える。また、位置情報管理装置30との間で情報を送受信する機能をさらに有する。通信部21により受信された情報は、制御部22へ送られる。
【0035】
制御部22は、通信端末60から送信される測位情報送信要求に基づいて、概位置情報DB23に格納される概位置情報を取得する概位置情報送信手段の機能の一部を有する。なお、制御部22が通信端末60に対して送信する概位置情報は、より高い精度の概位置情報を通信端末60に送信する目的から、後述の位置情報管理装置30より送信される情報にも基づいて決定される。その具体的な処理については、後述の測位支援方法に係る説明において説明する。
【0036】
また、制御部22は、通信端末60から送信されるGPS測位の結果を示す測位結果情報に基づいて、後述の概位置情報DB23に格納される概位置情報を更新する概位置情報更新手段としての機能を有する。この制御部22による概位置情報の更新には、通信端末60がGPS測位を成功した場合の概位置情報の書換えに限られず、GPS測位が失敗して概位置情報が不良と判断された場合の概位置情報の初期化も含まれる。制御部22による概位置情報の更新については、後述する。
【0037】
概位置情報DB23は、上述のセルのセルIDに対応付けて、当該セルに係る基地局の情報が格納される概位置情報格納手段として機能する。図4は、概位置情報DB23に格納される概位置情報の例である。図4に示す情報のうち、MCC(Mobile Country Code、国コード)、MNC(Mobile Network Code、オペレータコード(例えば通信事業者毎に定められる))、及びセルIDは、予め定められているものである。そして、通信端末60から送信される測位情報送信要求にも、通信端末60が在圏するセルを特定する情報として、上記のMCC,MNC及びセルIDが含まれる。また、Lat(Latitude (Y)、緯度)、Lon(Longitude (X)、経度)、Alt(Altitude、GPS測位で基準となるWGS84楕円体からの高度)、Unc(Uncertainty (k)、緯度・経度の不確定性)、Unc−Alt(Uncertainty Altitude (k)、高度の不確定性)は、上記のセルIDに対応して格納される概位置情報を示すものである。不確定性は、この概位置情報の算出方法、セルIDに対応するセルの大きさ(広さ)、及び、当該概位置情報を利用したGPS測位結果等に基づく精度を示すものである。また、更新要否は、図4に示す表に格納される情報を、通信端末60から送信される測位結果に基づいて更新する必要があるかを示すフラグである。
【0038】
図4に示すようにセルIDに対応付けて格納される概位置情報は、(1)セルIDにより特定されるセルに係る基地局装置の正確な位置を示す情報か、又は(2)基地局装置の位置を正確に示す情報ではなく、過去に同じセル内で測位した結果に基づいて更新された情報、である。このうち(1)の基地局装置の正確な位置を示す情報は、例えば、その基地局装置を管理する通信事業者のGMLCに対して、基地局装置に対応するセルIDを指定して問い合わせることにより、取得することができる。この場合、概位置情報DB23において正確な情報が既に格納されるため、概位置情報DB23の当該情報をさらに更新する必要はなく、「更新不要」を示すフラグが当該情報に対して付与される。
【0039】
しかし、上記のように基地局装置の位置を示す情報を提供する通信事業者は限られているため、基地局装置の正確な位置を概位置情報DB23において把握することは困難である。したがって、概位置情報DB23では、(2)過去に同じセル内において測位を行う際に用いられた概位置情報及び測位結果に基づいて算出された概位置情報が格納される。このように、基地局装置の正確な位置が分からない場合、制御部22(概位置情報更新手段)によって、当該セルIDにより特定されるセルにおいて測位した結果に基づいて新たな概位置情報が作成され、概位置情報DB23に格納される情報が更新される。その具体的な方法としては、例えば、通信端末60が測位を行う際に、通信端末60からの要求に応じて通信端末60に対して送信することにより用いられたセルIDの概位置情報により特定される位置と、通信端末60による(同一のセルIDにおける)測位結果により特定される位置と、の中点を緯度・経度・高度のそれぞれについて算出し、その結果を新たな概位置情報とする方法や、過去の同一のセルIDにおける測位結果の平均値を緯度・経度・高度のそれぞれについて算出し、その結果を新たな概位置情報とする方法等が挙げられる。このように、通信端末60による測位結果に基づいて概位置情報を更新する場合、「更新要」を示すフラグが当該概位置情報に対して付与される。
【0040】
なお、上記のように、基地局装置の位置が正確に分からない場合であって、且つ、過去に同じセルIDのセル内で測位が行われたことがない場合、セルIDに対応付けられた概位置情報は、予め概位置情報DB23に格納されることはない。この場合、通信端末60から送信されるMCC及びMNCから求められる位置情報が通信端末60に対して送信する概位置情報として用いられる。この情報は、後述の位置情報管理装置30より送信されるが、その処理は後述する。
【0041】
図5は、同じく概位置情報DB23に格納されるSGSNの概位置情報の例を示す図である。上述のようにSGSNは、複数の基地局装置を管理する装置であり、通信端末60から送信される測位情報送信要求には、通信端末60が接続する基地局装置70を管理するSGSNを特定するSGSNのIP(Internet Protocol)アドレスが含まれる。このため、基地局装置70の位置は分からないものの、SGSNの位置情報が分かる場合には、この情報を概位置情報として用いることもできる。なお、SGSNの管理下にある基地局装置は複数あるため、単一の基地局装置が管理するセルよりも広域をカバーする必要がある。したがって、SGSNの概位置情報はセルの概位置情報と比較して不確定性が高く設定される場合がある。すなわち、緯度・経度の不確定性及び高度の不確定性は、概位置情報が用いられるであると推測される領域に応じて適宜変更される。図5に示す情報は、GPS測位に利用するために後述の位置情報管理装置30から送信された場合に格納される。
【0042】
次に、図1に戻り、測位支援システム10に含まれる位置情報管理装置30について説明する。位置情報管理装置30の通信部31は、ユーザ情報管理装置40との間で通信を行うことにより、SUPLサーバ20に対して接続要求を送信する通信端末60の認証処理を行う機能と、SUPLサーバ20との間で通信を行うことにより、位置情報管理装置30において格納する位置情報(MCC及びMNCより特定される位置情報や、SGSNの位置情報等)をSUPLサーバ20に対して送信する機能を有する。
【0043】
制御部32は、SUPLサーバ20からの要求に基づいて通信端末60に係る認証処理を行う機能を有すると共に、通信端末60に対して送信する概位置情報を決定する概位置情報送信手段の一部の機能を有する。通信端末60から送信される概位置情報送信要求に含まれて、SUPLサーバ20から位置情報管理装置30に対して送信される情報には、上述のMCC,MNC及びセルIDが通信端末60が在圏するセルに係る情報(ローミング在圏情報)として含まれる。また、同様に通信端末60が在圏するセルに係る基地局装置70を制御するSGSNを特定する情報(SGSNのIPアドレス)が含まれる。制御部32では、これらの情報に基づいて、(1)基地局装置70の正確な位置を特定する情報を入手することができるか、(2)基地局装置70を制御するSGSNの位置を位置情報管理装置30において保持しているか、についての判断が行われる。そして、この判断結果に基づいて、制御部32からSUPLサーバ20に対して送信する概位置情報決定に係る情報が選択され、SUPLサーバ20に対して送信される。なお、上記の判断及びその判断結果に基づく処理の詳細については後述する。
【0044】
管理DB33は、通信端末60に対して送信する概位置情報決定に係る情報を格納する概位置情報格納手段の一部として機能する。管理DB33において格納される情報の例を図6に示す。管理DB33には、MCCとMNCと、SGSNのIPアドレスと、位置情報(Lat,Lon,Alt,Unc,Unc−Alt)が対応付けて格納されている。また、MCCとMNCと、に対して上記の位置情報が対応付けて格納されているものも含まれる。管理DB33に格納される情報(図6に示す情報)のうち、SGSNのIPアドレスに対応付けて格納される位置情報は、例えばMCCとMNCとにより特定されるオペレータより送信された情報等に基づくものであり、正確な情報である。また、MNC「ZZZ」で特定されるオペレータ(通信事業者)のように、SGSNの位置情報が開示されていない場合には、MCC及びMNCとから暫定的に求めた位置情報(例えば当該オペレータの本社の位置を示す位置情報)が格納される。このように、管理DB33では、MCC,MNC及びSGSNのIPアドレスのうちの少なくとも一部を用いて求められる概位置情報が格納される。
【0045】
さらに、管理DB33に格納される情報には、MCC及びMNCに対応付けて「GMLCへの問い合わせ可否」を示すフラグがそれぞれ付与される。これは、位置情報管理装置30から当該オペレータのGMLCに対して、セルIDに対応する基地局装置の位置情報を問い合わせることができるかを示すフラグである。特定のオペレータのGMLCに対して「問い合わせ可」を示すフラグが付与されている場合、位置情報管理装置30から当該オペレータのGMLCに対してセルIDを用いて基地局装置の位置情報を問い合わせることにより、基地局装置の正確な位置情報をすることができる。GMLCに対して問い合わせをすることの可否については、例えば移動体通信網N1を提供する通信事業者と、相手方のオペレータとの間で予め契約を交わす等により決定される。位置情報管理装置30の管理DB33に格納される情報は、予め移動体通信網N1を提供する通信事業者により格納される。位置情報管理装置30の制御部32では、上述の管理DB33に格納される情報に基づいて、どの情報をSUPLサーバ20に対して送信するかが判断され、その結果に基づいて、適切な情報がSUPLサーバ20に対して送信される。
本発明に係る測位システム1では、各装置が上記のように機能することにより、通信端末60の要求に応じて通信端末60に対して概位置情報を送信すると共に、通信端末60によるGPS測位結果に基づいて、概位置情報が更新される。
【0046】
<測位支援システムを含む測位システムによる測位方法(測位支援方法)>
次に、上記の測位支援システム10を含む測位システム1による測位方法(測位支援システム10による測位支援方法)について、図7、図8及び図12に示すシーケンス図と、図9〜図11及び図13に示すフローチャートを用いて説明する。なお、図7は、通信端末60とSUPLサーバ20との間で通信を行うための処理を説明するシーケンス図である。また、図8は、移動体通信網N1における通信端末60の認証処理及び通信端末60に対して送信する概位置情報の準備に係る処理を説明するシーケンス図である。また、図12は、通信端末60におけるGPS測位に係る処理及び測位後の処理について説明するシーケンス図である。また、図9〜図11は、図8に示す処理の詳細を説明するフローチャートである。また、図13は、図12に示す処理の詳細を説明するフローチャートである。
【0047】
まず、図7を用いて、通信端末60とSUPLサーバ20との間で通信を行うための処理について説明する。通信端末60においてGPS測位を行う場合、通信端末60と、通信端末60に対してGPS測位のためのアシストデータを送信するSUPLサーバ20との間で、通信路を設ける必要がある。このため、通信端末60は、基地局装置70を介してGW装置50に対して、SUPLサーバ20との間で通信路を設けるための接続要求を送信する。この接続要求は、通信端末60のユーザが通信端末60を操作することにより送信される。GW装置50ではこの接続要求を受信し、通信端末60とGW装置50との間でTCP(Transmission Control Protocol)コネクション確立処理を行う(S01)と共に、GW装置50とSUPLサーバ20との間においてもTCPコネクション確立処理を行う(S02)。
【0048】
また、GW装置50と通信端末60との間でTCPコネクション確立処理を行う際(S01)に、通信端末60から送信される通信端末60に係る情報は、ユーザ情報管理装置40に対して送信される。ここでユーザ情報管理装置40に対して送信される情報には、通信端末60のソースIPアドレス、ソースポート番号、SGSN IPアドレス、及びローミング在圏情報が含まれる。これらの情報は、上記のTCPコネクション確立の際にSUPLサーバ20に対しても送信される。ユーザ情報管理装置40では、これらの情報をGW装置50から受信すると、この情報に基づいて、ユーザ情報管理装置40に格納されるユーザ情報を更新する(S04)。これにより、通信端末60の在圏するセルC1に係るローミング在圏情報(MCC,MNC及びセルID)及び当該セルC1に係る基地局装置70を制御するSGSNのIPアドレスに係る情報がユーザ情報管理装置40に格納される。
【0049】
続いて、上記の処理により作成されたTCPコネクションを介して、通信端末60とSUPLサーバ20との間で、測位に係る情報の送受信に用いられるTLS(Transport Layer Security)トンネルを確立する処理が行われる(S05)。以上の処理により、測位に係る通信を通信端末60とSUPLサーバ20との間で行う通信路が設けられ、情報の送受信に係る準備が終了する。
【0050】
続いて、図8を用いて、通信端末60における測位に係る認証処理について説明する。上記の処理により、TLSトンネルが確立される(S05)と、通信端末60からSUPLサーバ20に対して測位開始要求(ULP_SUPL-START)が送信される(S11、概位置情報送信ステップ)。ここで通信端末60からSUPLサーバ20に対して送信される測位開始要求には、セッションID(一度のGPS測位に係る処理について共通して割り振られる識別子)と、通信端末60の測位能力を示す通信端末機能(通信端末機能を示す情報)と、ローミング在圏情報と、通信端末60による測位精度と、通信端末60によるセルC1に対する接続状況が含まれる。さらに、通信端末60を特定する情報として、通信端末60のMSISDN(Mobile Subscriber ISDN Number)が含まれる。SUPLサーバ20の通信部21では、この測位開始要求を受信すると、位置情報管理装置30に対して通信端末60に係る認証処理を要求(HTTP_Authentication-Request)する(S12)。この要求には、セッションIDと、ローミング在圏情報と、通信端末60のMSISDNと、ソースIPアドレスと、ソースポート番号と、が含まれる。
【0051】
位置情報管理装置30の通信部31は、SUPLサーバ20からこの要求を受信すると、ユーザ情報の確認を行うため、ユーザ情報管理装置40に対して通信端末60のMSISDNを送信することにより、ユーザ情報の問い合わせ(ISCP_Authentication-Request)を行う(S13)。ユーザ情報管理装置40では、通信端末60のMSISDNを受信すると、当該ユーザのプロファイルを読み出すことによりユーザ情報の呼び出しを行う(S14)。通信端末60のユーザに係る情報は、予めGW装置50からユーザ情報管理装置40に送信され、更新されている(S04)。したがって、ユーザ情報管理装置40ではこの情報(ソースIPアドレス、ソースポート番号、ローミング在圏情報、SGSN IPアドレス)が取得され、ユーザ情報応答(ISCP_Authentication-Response)として位置情報管理装置30に対して送信される(S15)。位置情報管理装置30では、ユーザ情報管理装置40から送信された情報が受信されると、先にSUPLサーバ20から送信された情報と共に、通信部31から制御部32に対して送信される。そして、制御部32において、両者が一致するかを確認することにより、通信端末60とSUPLサーバ20との通信を継続してよいかを判断する(S16)。ここで、もし上記の情報が一致しない場合には、通信端末60との通信の継続不可と判定され、接続が中止される。なお、継続してよいと判断された場合には、引き続き、概位置情報送信に係る処理に移行する。
【0052】
概位置情報として通信端末60に送信する情報の決定に係る処理として、まず制御部32において、位置情報管理装置30からSUPLサーバ20に対して送信する情報の決定(送信データの決定)が行われ(S17、概位置情報送信ステップ)、決定された送信データを通信部31からSUPLサーバ20に対して送信することにより、認証処理が終了したことと共に、概位置情報の出力に係る準備を行う旨の指示(HTTP_Authentication-Response)を行う(S18、概位置情報送信ステップ)。位置情報管理装置30からSUPLサーバ20に対して送信される指示には、セッションIDと、認証結果と、位置情報管理装置30において取得された位置情報及び当該位置情報のレベル(詳細は後述する)と、ローミング在圏情報と、SGSNのIPアドレスとが含まれる。
【0053】
ここで位置情報管理装置30の制御部32において行われる処理を図9に示すフローチャートを用いて説明する。制御部32では、通信端末60からSUPLサーバ20を介して送信された情報のうちローミング在圏情報及び管理DB33に格納される情報を用いて、「他網事業者に対して問い合わせ可能か?」を判断する(S101)。これは、管理DB33に格納される情報において、ローミング在圏情報に含まれるMCC及びMNCにより特定されるオペレータに対して、「GMLCに問い合わせ可」のフラグがあるかにより判断される。ここで、GMLCに問い合わせ可と判断される場合には、位置情報管理装置30の通信部31により当該オペレータのGMLCに対して、セルIDを用いて位置情報の提供を要求(Lr-IF SRLIR)することにより、当該セルIDにより特定される基地局装置70の位置情報を取得(Lr-IF SRLIA)する(S102)。そしてこの結果得られた基地局装置70の位置情報を上記の送信データにすることが決定され、通信部31からSUPLサーバ20に対して送信される(S103(S18))。このとき、通信部31からSUPLサーバ20に対して送信する送信データに対して、当該送信データが他網(移動体通信網N2)のGMLCに対して問い合わせることにより取得されたことを示す情報が対応付けられて送信される。
【0054】
なお、位置情報管理装置30からSUPLサーバ20に対して、送信データとして基地局装置70の位置情報を送信する場合には、当該情報に対応付けて、「概位置情報DB23に格納されている情報を概位置情報として用いないこと」を示すフラグと、「通信端末60から送信される測位結果に基づいて概位置情報DB23の更新を行わないこと」を示すフラグと、が付与される。これはGMLCに問い合わせることにより取得される基地局装置70の情報が最も正確であるため、この情報を最優先で概位置情報として使用することを指示し、且つ、この基地局装置70の位置情報を用いて通信端末60において測位した結果を、概位置情報DB23に格納する概位置情報の更新に用いることを禁止するものである。
【0055】
一方、「GMLCに問い合わせ不可」を示すフラグが付与されている場合には、セルIDに対応する基地局装置70の正確な位置情報を取得することはできないため、次に基地局装置70を制御するSGSNの位置情報が管理DB33に格納されているかを確認する(S105)。ここで、SGSNの位置情報が管理DB33に格納されている場合は、この位置情報を、上記の送信データにすることが決定され、通信部31からSUPLサーバ20に対して送信される(S106(S18))。このとき、通信部31からSUPLサーバ20に対して送信する送信データに対して、当該送信データが管理DB33において格納されるSGSNの位置情報であることを示す情報が対応付けられて送信される。
【0056】
また、SGSNの位置情報が管理DB33に格納されていない場合は、MCCとMNCより導かれる位置情報を上記の送信データにすることが決定され、通信部31からSUPLサーバ20に対して送信される(S108(S18))。このとき、通信部31からSUPLサーバ20に対して送信する送信データに対して、当該送信データが管理DB33において格納されるMCCとMNCより導かれる位置情報であることを示す情報が送信データに対応付けて送信される。以上により、位置情報管理装置30からSUPLサーバ20に対して送信データが送信され、概位置情報の準備が指示される。
【0057】
一方、SUPLサーバ20の通信部21において、送信データと共に概位置情報の準備に係る指示を受信すると、これらの情報が制御部22に送られ、通信端末60に対して通知する概位置情報の準備に係る処理が行われる(S19、概位置情報送信ステップ)。
【0058】
まず、制御部22では、位置情報管理装置30から送信された送信データが(1)基地局装置70の位置情報、(2)SGSNの位置情報、(3)MCC−MNCにより算出された情報、のいずれであるかを、送信データに対して添付された情報から確認する。そしてこの結果に応じた処理を制御部22において行う。
【0059】
まず、送信データが(1)基地局装置70の位置情報である場合、通信端末60に対してはこの基地局装置70の位置情報を概位置情報として送信することが制御部22において判断される。そして、位置情報管理装置30から送信された基地局装置70の位置情報を、セルIDに対応付けて、概位置情報DB23に格納する。このとき概位置情報DB23に格納する情報に対しては、当該情報が概位置情報として最も正確な情報であるため、「更新不要」のフラグを付与する。
【0060】
次に、送信データが(2)SGSNの位置情報である場合、図10に示すフローチャートに沿って、通信端末60に対して通知する概位置情報が決定される。まず、制御部22において、概位置情報DB23に格納されている情報が利用可能であるかの判断がなされる(S201)。例えば、何らかの事情で概位置情報DB23がネットワークから切断されている場合には、概位置情報DB23に格納される情報は利用することができない。このように、セルIDに対応付けて概位置情報DB23に格納される情報の利用可否が判断される。
【0061】
ここで、概位置情報DB23に格納される情報が利用可能であると判断された場合には、次に通信端末60のステータスの確認が行われる(S202)。ここで確認される通信端末60のステータスとは、セルC1のエリア内に通信端末60が在圏しているかを確認する情報であり、測位開始要求(ULP_SUPL-START)の際に通信端末60から通知されるセルC1に対する接続状況を示す情報である。このステータスが「Unknown」である場合とは、すなわち、通信端末60がセルC1に継続して在圏しているかどうかが分からない(在圏していない可能性が考えられる)場合であり、概位置情報DB23に格納される情報の利用が抑止される。そして、このステータスが「Unknown」ではない場合、すなわち、通信端末60がセルC1に継続して在圏していると考えられる場合には、次に、セルIDに対応する情報を既に格納済みであるかどうかの確認が行われる(S203)。
【0062】
ここでは、例えば、今回の通信端末60によるGPS測位が、当該セルC1において初めてのGPS測位である場合、概位置情報DB23において、セルC1のセルIDに対応付けられた概位置情報はまだ格納されていないため、概位置情報DB23に格納される情報を利用することができない。これに対して、過去にセルC1において通信端末によるGPS測位が行われていた場合は、当該GPS測位結果に基づいて更新された概位置情報が概位置情報DB23に格納されているため、この概位置情報DB23に格納される概位置情報を用いることが決定される(S204)。なお、上記の確認のうちのいずれかで問題があると判断された場合(すなわち、概位置情報DB23に格納される情報が利用不可であると判断された場合、通信端末60のステータスが「Unknown」であった場合、及び、セルIDに対応する情報が概位置情報DB23に格納されていない場合)には、位置情報管理装置30から送信されたSGSNの位置情報を概位置情報として使用することが決定され、その準備が進められる(S205)。
【0063】
次に、送信データが(3)MCC−MNCにより算出された情報である場合、図11に示すフローチャートに沿って、通信端末60に対して通知する概位置情報が決定される。まず、制御部22において、概位置情報DB23に格納されている情報が利用可能であるかの判断がなされる(S301)。ここで概位置情報DB23に格納される情報が利用可能であると判断された場合には、次に通信端末60のステータスの確認が行われる(S302)。このステータスが「Unknown」ではない場合、すなわち、通信端末60がセルC1に継続して在圏していると考えられる場合には、次に、セルIDに対応する情報を既に格納済みであるかどうかの確認が行われる(S303)。ここで、過去にセルC1において通信端末によるGPS測位が行われていた場合は、当該GPS測位結果に基づいて更新された概位置情報が概位置情報DB23に格納されているため、この概位置情報DB23に格納される概位置情報を用いることが決定される(S304)。上記の処理は、(2)SGSNの位置情報が位置情報管理装置30から送信された場合と同じように処理される。
【0064】
一方、上記の確認のうちのいずれかで問題があると判断された場合(すなわち、概位置情報DB23に格納される情報が利用不可であると判断された場合、通信端末60のステータスが「Unknown」であった場合、及び、セルIDに対応する情報が概位置情報DB23に格納されていない場合)には、概位置情報DB23において、SGSNの位置情報を格納しているかの確認が行われる(S305)。すなわち、図5に示す表に、通信端末60から送信されるSGSNのIPアドレスに対応付けられた位置情報が格納されているかどうかの確認が制御部22によってなされる。ここで、SGSNの位置情報を概位置情報DB23において格納している場合は、当該位置情報が、MCC−MNCにより算出された情報よりもより正確であると考えられるため、この情報を概位置情報として用いることが決定され、通信端末60に対して通知するための準備が行われる(S306)。しかし、SGSNの位置情報を概位置情報DB23において格納していない場合は、位置情報管理装置30から送信されたMCC−MNCにより算出された情報を概位置情報として用いることが決定され、通信端末60に通知するための準備が行われる(S307)。
【0065】
以上の処理により、SUPLサーバ20の制御部22において通信端末60に対して送信することとなる概位置情報の準備が行われた(S19)後、通信部21から通信端末60に対して、測位開始要求(S11)に対する測位開始応答(ULP_SUPL-RESPONSE)が送信される(S20)。このときの測位開始応答には、セッションIDと、測位方式を示す情報(ネットワークアシスト方式を特定する「SET-Based-A-GPS」)が含まれる。
【0066】
続いて、図12を用いて、通信端末60におけるGPS測位に係る処理及び測位後の処理について説明する。通信端末60は、SUPLサーバ20からの測位開始応答(S20)において指定される測位方式(ネットワークアシスト方式)に基づいて、概位置情報を含むアシストデータの提供要求(ULP_SUPL-POS-INT)をSUPLサーバ20に対して送信する(S21)。この提供要求には、セッションIDと、ローミング在圏情報と、通信端末60の測位性能(ネットワークアシスト方式による測位の際に用いられる機能に係る性能)情報と、が含まれる。
【0067】
SUPLサーバ20の通信部21では、通信端末60からの概位置情報提供要求が受信されると、制御部22に対して通知され、制御部22において通信端末60に対して送信する概位置情報が取得される(S22、概位置情報送信ステップ)。ここでは、上述の通知情報出力準備(S19)において決定された通信端末60に対して送信する情報を、通信端末60に対して送信するための処理(具体的には、当該情報をSUPL_POSメッセージに格納する処理)が行われる。そして、上記の処理とは別の処理により取得されたGPS衛星の航路情報と共に概位置情報とを含む応答(ULP_SUPL-POS(RRLP_Measure-Position-Request))が通信端末60に対して送信される(S23、概位置情報送信ステップ)。ここでは、セッションIDと、アシストデータとして、概位置情報(緯度、経度、高度、緯度・経度の不確定性、高度の不確定性)と、GPS衛星の航路情報(ephemeris,almanac)と、が通信端末60に対して送信される。
【0068】
続いて、通信端末60では、これらの情報に基づいてGPS測位が行われ(S24)、通信端末60において演算を行うことにより、通信端末60の位置が算出される。具体的には、通信端末60では、GPS測位の際に、アシストデータとしてSUPLサーバ20から送信されるGPS衛星の航路情報を利用して、3つ以上のGPS衛星を捕捉し、これらの衛星から送信される信号と、概位置情報とを利用して自端末の測位を行う。
【0069】
ここで、3つ以上のGPS衛星からの信号を正しく受信でき、且つ、概位置情報がより正確な情報であれば、GPS測位が成功し、通信端末60の緯度、経度、高度、及び誤差半径を得ることができる。ここで、誤差半径とは、通信端末60による測位演算の結果得られた緯度、経度、高度が正確であるかを示すものであり、SUPLサーバ20から送信される概位置情報の不確定性、GPS信号の受信精度等に基づいて算出される。しかしながら、信号を受信できたGPS衛星の数が少ない場合や、概位置情報が著しく不正確な場合には、GPS測位が失敗する可能性がある。通信端末60が3つ以上のGPS衛星の捕捉に失敗する場合としては、例えば、屋内で測位を行う場合が挙げられる。また、概位置情報が著しく不正確である場合としては、例えば、過去にこの概位置情報の更新に用いられた測位結果の中に本来含まれるはずのないような(例えば誤動作等によって得られた)測位結果が含まれている場合や、収容変更によりセルのセルIDが変更されたにもかかわらずこのセルIDに対応付けられた概位置情報が変更されていない場合等が挙げられる。上記のような問題が発生した場合には、通信端末60によるGPS測位が失敗し、通信端末60は自端末の位置を示す情報を得ることができない可能性がある。
【0070】
通信端末60によるGPS測位の後、測位結果情報(ULP_SUPL-POS(RRLP_Measure-Position-Response))が、通信端末60からSUPLサーバ20に対して送信され、SUPLサーバ20の通信部21において受信される(S25、測位結果受信ステップ)。
【0071】
このとき通信端末60からSUPLサーバ20に対して送信される測位結果情報には、通信端末60においてGPS測位が成功した場合には、セッションIDと、測位結果(緯度、経度、高度、誤差半径)とが含まれる。また、通信端末60においてGPS測位が失敗した場合には、セッションIDと、測位失敗を示すエラーコードと、通信端末60がGPS測位の際に捕捉したGPS衛星の数を示す衛星数情報とが含まれる。
【0072】
次に、SUPLサーバ20では、制御部22により、通信端末60から送信された測位結果情報に基づいて、概位置情報DB23に格納される概位置情報が更新される(S26、概位置情報更新ステップ)。
【0073】
上記の制御部22による概位置情報の更新の具体的な手順について図13を用いて説明する。まず制御部22では、通信端末60から送信された測位結果情報を参照し、測位成功か否かを判断する(S401)。測位成功か否かについては、測位結果情報に測位結果が含まれているのか、エラーコードが含まれているのか、で判断することができる。すなわち、これらの情報が通信端末60におけるGPS測位の成否を示す情報(成否情報)となる。ここで、測位が成功していると判断された場合には、この測位結果を用いて、概位置情報DB23に格納された概位置情報を更新する(S411)。具体的には、概位置情報DB23にセルIDに対応付けられた概位置情報がまだ格納されていなかった場合には、通信端末60による測位結果を概位置情報として新たに格納する。また、通信端末60に対して概位置情報DB23に格納される概位置情報を送信した場合には、上述のように、通信端末60に対して送信した概位置情報と、測位後に通信端末60から送信された結果とに基づいて、概位置情報が更新される。
【0074】
次に、測位が失敗したと判断された場合、すなわち、測位結果情報にエラーコードが含まれていた場合には、測位結果情報に含まれる衛星数情報を参照し、通信端末60が捕捉した衛星数が3つ以上であるかを判断する(S402)。ここで、捕捉した衛星数が3つ以上ではない、すなわち、捕捉した衛星数が2つ未満である場合には、GPS測位を成功させるために十分な数のGPS衛星を通信端末60が捕捉できなかったためにGPS測位が失敗したことが考えられるため、概位置情報の更新は行わず、概位置情報の更新に係る処理を終了する。一方、捕捉した衛星数が3つ以上である場合には、十分な数のGPS衛星を通信端末60が捕捉できたにもかかわらずGPS測位に失敗したことから、概位置情報が正確な情報ではなく不良であるとみなして、この概位置情報を利用して失敗した回数に1を加える(S403)。制御部22では、同一の概位置情報を利用して測位を行った結果失敗し、制御部22において不良であるとみなされた回数を概位置情報毎(すなわちセルID毎)に保持しておく。そして、不良であるとみなし失敗回数に1を加えた結果、失敗回数が予め定められた閾値(例えば、5回)を超過したか否かを判断し(S404)、閾値を超過した場合には概位置情報を初期化する(S405)。また、失敗回数が閾値以下である場合には、概位置情報の更新を行わず、処理を終了する(S412)。この閾値は、予めSUPLサーバ20の管理者等によって定められ、制御部22において保持される。なお、制御部22で保持している失敗回数は、概位置情報の更新が行われた場合にはリセットされる。
【0075】
概位置情報を初期化する(S405)方法として、具体的には、概位置情報DB23において当該セルIDに対応する基地局装置70を管理するSGSNの概位置情報が格納されている場合には、失敗回数が閾値を超えた概位置情報を削除した後、SGSNの概位置情報をセルIDに対応した新たな概位置情報(初期値)として入力する方法が挙げられる。また、SGSNの概位置情報を予め保持していない場合には、MCC及びMNCで特定される位置情報をセルIDに対応した新たな概位置情報(初期値)として入力する方法を用いることもできる。また、他の方法として、セルIDに対応した概位置情報自体を削除し、セルIDに対応した概位置情報が概位置情報DB23に格納されていない状態とする方法が挙げられる。概位置情報DB23から概位置情報を削除した場合、次回にこのセルIDにより特定されるセル内で通信端末が測位を行う際には、当該セルで初めて測位が行われる際と同様の処理が行われることで、通信端末に対して送信する概位置情報が選択され、送信される。
【0076】
その後、測位に係る一連の処理が終了した旨の通知(ULP_SUPL-END)がSUPLサーバ20の通信部21から通信端末60に対して送信される(S27)ことにより、通信端末60による測位に係る処理が終了される。
【0077】
なお、通信端末60がGPS測位を失敗した場合は、上記のGPS測位に係る一連の処理の後、アシストデータの追加要求をSUPLサーバ20に送信し、新たなアシストデータを受信して再度GPS測位を行うこともできる。
【0078】
<測位支援システム及び測位支援方法による効果>
上記実施形態に係る測位支援システム10及び測位支援システム10を含む測位システム1による測位方法(測位支援方法)によれば、SUPLサーバ20において、通信端末60から送信される測位結果情報を受信し、この測位結果情報に基づいて、概位置情報DB23において、セルIDに対応付けて格納される概位置情報が更新される。このように、同一のセルでの通信端末による測位の実績に基づいて、概位置情報DB23に格納される概位置情報が更新されることにより、概位置情報の精度を高めることができるため、通信端末60がGPS測位を行う際に、通信端末60に対してより高い精度の概位置情報を送信することができる。
【0079】
また、上記の測位支援システム1では、通信端末60による測位演算が失敗した場合に、制御部22において、通信端末60から送信される測位結果情報に含まれるエラーコードと通信端末60が捕捉した衛星数情報とに基づいて、通信端末60に対して送信した概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて当該概位置情報を初期化する。このように、不良と判断された概位置情報を初期化する態様を有することで、不良と判断された概位置情報を使った測位演算を続けることにより、通信端末60によるGPS測位の精度が低下すること防止することができる。また、概位置情報が不良であるかの判断に衛星数情報を用いることで、例えば通信端末60によるGPS衛星の捕捉が不十分であることが理由で測位演算が失敗となった場合に当該概位置情報が初期化されることを防止することができ、概位置情報の不要な初期化を抑制し、さらに高い精度の概位置情報を提供することが可能となる。
【0080】
また、上記実施形態では、通信端末60に対して送信した概位置情報により特定される位置と、測位結果情報により特定される位置とに基づいて新たな概位置情報が算出されるため、概位置情報DB23に格納される概位置情報をより適切であり且つ高精度の情報に更新することができる。
【0081】
また、上記実施形態では、概位置情報を更新する場合に、セルIDに対応する基地局70を含む複数の基地局を管理する基地局管理装置であるSGSNの位置を特定する情報を新たな概位置情報として使用することで、概位置情報を初期化した場合であっても、通信端末60が在圏するセルの位置と初期化後の概位置情報とが大きく隔たれることが防止され、測位精度の低下を防止することができる。
【0082】
また、概位置情報DB23に格納される概位置情報が、例えば移動体通信網N2のGMLCに対して問い合わせることにより入手された正確な情報である場合には、通信端末60による測位結果に基づいて更新を行うことを禁止するフラグを付与することができる「更新要否を示すフラグ」を概位置情報に対応付けて格納することで、概位置情報を更新することにより概位置情報の精度が低下することを防ぐことができる。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る測位支援システム10を含む測位システム1は種々の変更を行うことができる。
【0084】
例えば、測位支援システム10に含まれるSUPLサーバ20及び位置情報管理装置30に係る機能は、一台の装置に全て含まれる構成であってもよいし、各機能がそれぞれ異なる装置に分散される構成であってもよい。また、上記実施形態では、通信端末60によりSUPLサーバ20からアシストデータを取得してGPS測位を行い、さらに測位データから通信端末60の現在位置を算出する測位演算処理を行う場合について説明したが、通信端末60の現在位置に算出する測位演算処理については、通信端末60とは異なる装置で行う態様とすることもできる。
【0085】
また、上記実施形態では、クライアント端末10が在圏する通信エリアとしてセルを用いて説明したが、本発明に係る通信エリアとはセルに限定されない。例えば、セルを管理する基地局装置の上流に位置してパケット通信の制御を行うSGSNが管理するエリアを通信エリアとみなした場合でも上記実施形態と同様の測位支援を行うことができると共に、SGSNの概位置情報の更新を上記実施形態と同様に行うことができる。
【0086】
また、上記実施形態では、通信端末60が例えば海外において用いられている場合のように、移動体通信網N1からローミングアウトしている状態について説明している。しかしながら、本発明に係る測位支援システム10及び測位支援方法は、通信端末60がローミングアウトしていない場合であっても、適用することができる。すなわち、通信端末60が接続する基地局装置の位置情報を正確に把握することができない場合に、本実施形態に係る測位支援方法を好適に用いることができる。
【0087】
また、通信端末60からの測位結果情報に基づいて概位置情報を更新する際の更新方法については、上記実施形態において説明した方法(通信端末60に対して送信した概位置情報による位置と通信端末60からの測位結果情報による位置との中点を新たな概位置情報とする方法や、同一セルにおいて過去に測定された結果の平均値を新たな概位置情報とする方法)に限定されず、種々の方法を用いることができる。その場合、例えば、GPS測位の成功率等をさらに利用して、概位置情報を更新する方法等を用いることもできる。
【0088】
また、上記実施形態では、通信端末60がGPS測位を失敗し、この通信端末60からの測位結果情報に基づいて概位置情報を初期化するか否かを判断する処理について、制御部22において失敗回数を数え所定の閾値を超えた場合に初期化を行う態様について説明した。しかしながら、閾値を超過したか否かに基づいたかによって初期化を実施するか判断する態様は必須ではない。例えば、GPS測位が失敗したことを示す成否情報(エラーコード)を含む測位結果情報を受信した場合には、捕捉した衛星数が3つ以上であるか否かを確認し(図13のS404)、その結果3つ以上である場合には概位置情報を初期化する構成としてもよい。また、上記実施形態では、捕捉する衛星数が3つ以上であるか否かを確認したが、この数は一例であって、3つに限定されない。
【0089】
また、上記実施形態では、通信端末60がGPS測位を失敗した場合のみエラーコードと共に衛星数情報をSUPLサーバ20に対して送信する態様について説明した。しかしながら、通信端末60においてGPS測位が成功した場合にも衛星数情報をSUPLサーバ20に対して送信する態様としてもよい。すなわち、GPS測位の成否にかかわらず衛星数情報を測位結果情報に含めて送信する態様とすることができる。
【0090】
また、上記実施形態では、制御部22において不良であるとみなされた回数(失敗回数)が予め定められた閾値を超過した場合に概位置情報の更新を行う態様について説明したが、概位置情報を更新するか否かの判断方法は上記実施形態に限定されない。例えば、特定の概位置情報を用いた測定回数に対する失敗回数の割合(失敗率)を概位置情報の更新要否についての閾値として使用してもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、概位置情報を送信した通信端末60からの測位結果情報に基づいて、概位置情報DB23に格納される概位置情報を更新する態様について説明したが、必ずしも概位置情報を送信した通信端末の測位結果のみを概位置情報の更新に用いることはなく、概位置情報を送信せず(例えば独立方式により)測位を行った測位結果情報にも基づいて概位置情報DB23に格納される情報を更新してもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、通信端末60においては、SUPLサーバ20から送信されたアシストデータを用いてGPS測位を行う態様について説明しているが、アシストデータを用いたGPS測位が成功しない場合は、通信端末60においてアシストデータの利用を中止するか又は通信端末60において独自に生成されたアシストデータを利用してGPS測位を継続することもできる。この場合、測位結果情報を通信端末60からSUPLサーバ20に対して通知する際に、どのアシストデータを用いてGPS測位を行ったかを併せて通知する態様とすることにより、概位置情報の更なる高精度化を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0093】
1…測位システム、10…測位支援システム、20…SUPLサーバ、30…位置情報管理装置、40…ユーザ情報管理装置、50…GW装置、60…通信端末、70…基地局装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星を捕捉して当該衛星からの情報を用いて測位を行う通信端末における測位演算に使用され、当該通信端末が在圏する通信エリアの位置を示す概位置情報と、当該通信エリアを特定する情報とを対応付けて格納する概位置情報格納手段と、
前記通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報を含み前記通信端末から送信される測位情報送信要求に基づいて、前記通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報に対応付けて前記概位置情報格納手段に格納される前記概位置情報を取得し、前記通信端末に対して送信する概位置情報送信手段と、
前記概位置情報送信手段により送信された前記概位置情報を取得した前記通信端末から送信され当該測位演算の結果を示す情報である測位結果情報を受信する測位結果受信手段と、
前記測位結果情報に基づいて、前記概位置情報格納手段において格納される前記概位置情報を更新する概位置情報更新手段と
を備え、
前記測位結果情報には、前記測位演算が成功したか失敗したかを示す成否情報と、前記測位演算において前記通信端末が捕捉した衛星数を示す衛星数情報と、が含まれ、
前記概位置情報更新手段は、前記成否情報と前記衛星数情報とに基づいて前記概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて前記概位置情報格納手段において格納される概位置情報のうち前記通信端末に対して送信した前記概位置情報を初期化する
ことを特徴とする測位支援装置。
【請求項2】
前記概位置情報更新手段は、
前記成否情報が前記測位演算を失敗したことを示す情報であると共に前記衛星数情報により特定される前記衛星数が所定の値より大きいかどうかを判断し、前記成否情報が前記測位演算を失敗したことを示す情報であると共に前記衛星数が所定の値より大きい場合に、前記通信端末に対して送信した前記概位置情報が不良であると判断し、
前記不良であると判断された回数が閾値を超えた場合に、前記概位置情報格納手段において格納される概位置情報のうち前記通信端末に対して送信した前記概位置情報を初期化する
ことを特徴とする請求項1記載の測位支援装置。
【請求項3】
前記概位置情報は、前記通信エリアに係る基地局の位置を特定する情報であり、
前記概位置情報及び前記測位結果情報は、緯度及び経度を含む情報であることを特徴とする請求項1又は2記載の測位支援装置。
【請求項4】
前記概位置情報更新手段は、前記初期化の際に、前記基地局を含む複数の基地局を管理する基地局管理装置の位置を特定する情報を新たな概位置情報として使用することを特徴とする請求項3記載の測位支援装置。
【請求項5】
前記概位置情報更新手段は、前記通信端末に対して送信した前記概位置情報により特定される位置と、前記測位結果情報により特定される位置とに基づいて、新たな概位置情報を算出する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の測位支援装置。
【請求項6】
前記概位置情報格納手段は、前記概位置情報の更新要否を示すフラグを前記概位置情報に対応付けて格納し、
前記概位置情報更新手段は、前記フラグに基づいて、前記概位置情報の更新が必要であると判断される場合に、前記概位置情報の更新を行う
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の測位支援装置。
【請求項7】
衛星を捕捉して当該衛星からの情報を用いて測位を行う通信端末における測位演算に使用され、当該通信端末が在圏する通信エリアの位置を示す概位置情報と、当該通信エリアを特定する情報とを対応付けて格納する概位置情報格納手段を備える測位支援装置による測位支援方法であって、
概位置情報送信手段により、前記通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報を含み前記通信端末から送信される測位情報送信要求に基づいて、前記通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報に対応付けて前記概位置情報格納手段に格納される前記概位置情報を取得し、前記通信端末に対して送信する概位置情報送信ステップと、
前記概位置情報送信手段により送信された前記概位置情報を取得した前記通信端末が測位演算を行うことにより前記通信端末から送信される当該測位演算の結果を示す情報である測位結果情報を受信する測位結果受信ステップと、
概位置情報更新手段により、前記測位結果情報に基づいて、前記概位置情報格納手段において格納される前記概位置情報を更新する概位置情報更新ステップと
を備え、
前記測位結果情報には、前記測位演算が成功したか失敗したかを示す成否情報と、前記測位演算において前記通信端末が捕捉した衛星数を示す衛星数情報と、が含まれ、
前記概位置情報更新ステップにおいて、前記成否情報と前記衛星数情報とに基づいて前記概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて前記概位置情報格納手段において格納される概位置情報のうち前記通信端末に対して送信した前記概位置情報を初期化する
ことを特徴とする測位支援方法。
【請求項1】
衛星を捕捉して当該衛星からの情報を用いて測位を行う通信端末における測位演算に使用され、当該通信端末が在圏する通信エリアの位置を示す概位置情報と、当該通信エリアを特定する情報とを対応付けて格納する概位置情報格納手段と、
前記通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報を含み前記通信端末から送信される測位情報送信要求に基づいて、前記通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報に対応付けて前記概位置情報格納手段に格納される前記概位置情報を取得し、前記通信端末に対して送信する概位置情報送信手段と、
前記概位置情報送信手段により送信された前記概位置情報を取得した前記通信端末から送信され当該測位演算の結果を示す情報である測位結果情報を受信する測位結果受信手段と、
前記測位結果情報に基づいて、前記概位置情報格納手段において格納される前記概位置情報を更新する概位置情報更新手段と
を備え、
前記測位結果情報には、前記測位演算が成功したか失敗したかを示す成否情報と、前記測位演算において前記通信端末が捕捉した衛星数を示す衛星数情報と、が含まれ、
前記概位置情報更新手段は、前記成否情報と前記衛星数情報とに基づいて前記概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて前記概位置情報格納手段において格納される概位置情報のうち前記通信端末に対して送信した前記概位置情報を初期化する
ことを特徴とする測位支援装置。
【請求項2】
前記概位置情報更新手段は、
前記成否情報が前記測位演算を失敗したことを示す情報であると共に前記衛星数情報により特定される前記衛星数が所定の値より大きいかどうかを判断し、前記成否情報が前記測位演算を失敗したことを示す情報であると共に前記衛星数が所定の値より大きい場合に、前記通信端末に対して送信した前記概位置情報が不良であると判断し、
前記不良であると判断された回数が閾値を超えた場合に、前記概位置情報格納手段において格納される概位置情報のうち前記通信端末に対して送信した前記概位置情報を初期化する
ことを特徴とする請求項1記載の測位支援装置。
【請求項3】
前記概位置情報は、前記通信エリアに係る基地局の位置を特定する情報であり、
前記概位置情報及び前記測位結果情報は、緯度及び経度を含む情報であることを特徴とする請求項1又は2記載の測位支援装置。
【請求項4】
前記概位置情報更新手段は、前記初期化の際に、前記基地局を含む複数の基地局を管理する基地局管理装置の位置を特定する情報を新たな概位置情報として使用することを特徴とする請求項3記載の測位支援装置。
【請求項5】
前記概位置情報更新手段は、前記通信端末に対して送信した前記概位置情報により特定される位置と、前記測位結果情報により特定される位置とに基づいて、新たな概位置情報を算出する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の測位支援装置。
【請求項6】
前記概位置情報格納手段は、前記概位置情報の更新要否を示すフラグを前記概位置情報に対応付けて格納し、
前記概位置情報更新手段は、前記フラグに基づいて、前記概位置情報の更新が必要であると判断される場合に、前記概位置情報の更新を行う
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の測位支援装置。
【請求項7】
衛星を捕捉して当該衛星からの情報を用いて測位を行う通信端末における測位演算に使用され、当該通信端末が在圏する通信エリアの位置を示す概位置情報と、当該通信エリアを特定する情報とを対応付けて格納する概位置情報格納手段を備える測位支援装置による測位支援方法であって、
概位置情報送信手段により、前記通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報を含み前記通信端末から送信される測位情報送信要求に基づいて、前記通信端末が在圏する通信エリアを特定する情報に対応付けて前記概位置情報格納手段に格納される前記概位置情報を取得し、前記通信端末に対して送信する概位置情報送信ステップと、
前記概位置情報送信手段により送信された前記概位置情報を取得した前記通信端末が測位演算を行うことにより前記通信端末から送信される当該測位演算の結果を示す情報である測位結果情報を受信する測位結果受信ステップと、
概位置情報更新手段により、前記測位結果情報に基づいて、前記概位置情報格納手段において格納される前記概位置情報を更新する概位置情報更新ステップと
を備え、
前記測位結果情報には、前記測位演算が成功したか失敗したかを示す成否情報と、前記測位演算において前記通信端末が捕捉した衛星数を示す衛星数情報と、が含まれ、
前記概位置情報更新ステップにおいて、前記成否情報と前記衛星数情報とに基づいて前記概位置情報が不良であるかを判断し、その結果に基づいて前記概位置情報格納手段において格納される概位置情報のうち前記通信端末に対して送信した前記概位置情報を初期化する
ことを特徴とする測位支援方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−242285(P2011−242285A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115458(P2010−115458)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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