説明

測位方法、基地局、および測位システム

【課題】リピータ局を介した通信が可能な移動通信機の位置を測位する際の測位精度をより高くすることができる測位方法および基地局装置を提供する。
【解決手段】基地局Bからリピータ局Nまでの距離と、リピータ局Nから携帯電話端末Mまでの距離とを加算した加算距離を基地局Bが算出し、基地局Bからリピータ局Nへの方向で、且つ、基地局Bから加算距離にある地点Pを、測位結果地点として基地局Bが算出して記憶する測位ステップと、測位結果地点Pと、携帯電話端末Mが在圏するセルセクタの中心地点Cとの差分距離Scpを基地局Bが算出して記憶する算出ステップと、差分距離Scpの方がセルセクタの半径Rより長いか否かを、基地局Bが判定する判定ステップと、差分距離Scpの方が半径Rより長いと判定された場合、中心地点Cを、測位結果地点として基地局Bが変更して記憶する変更ステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波信号を中継するリピータ局を介した通信が可能な移動通信機の位置を測位する測位方法、基地局、および測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末やモバイル通信端末等の移動通信機を用いたモバイルネットワークにおいて、移動通信機と通信を行う基地局の位置に基づいて、当該移動通信機の位置を測位することが行われている。例えば、下記の特許文献1に記載の発明においては、3つ以上の基地局の位置座標と、これら基地局から移動通信機へ送信される電波信号の伝搬時間とを用いて、電波信号の送信時の時間差を算出してから、移動通信機の位置を測位している。
【0003】
なお、基地局との通信が可能なエリア(即ち、カバーエリア)を拡げるために、リピータ局が用いられることがある。リピータ局とは、基地局と移動通信機との間で送受信される電波信号を中継する装置であり、基地局からの電波信号が届きにくい場所(例えば、屋内や、密集した建物の間の地域等)に設置されている。
【特許文献1】特開平7−181242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に開示されたモバイルネットワーク等において、カバーエリアを拡げるためにリピータ局を用いると、移動通信機の位置を測位した測位結果に大きな測定誤差が生じるおそれがある。
【0005】
以下、リピータ局を介して基地局と通信中の移動通信機の位置を測位する際にこの測定誤差が生じる場合の、基地局とリピータ局と移動通信機との位置関係を、図1を用いて説明する。図1は、この測定誤差が生じる場合の、基地局とリピータ局と移動通信機との位置関係を説明するための説明図である。基地局1Bのセルセクタ(即ち、基地局1Bが提供する通信エリアの構成単位)1Ab内に、リピータ局1Nが在圏している。そして、移動通信機である携帯電話端末1Mは、このリピータ局1Nを介して基地局1Bと通信を行っている。なお、セルセクタの中心座標は、中心座標1Cとして示されている。
【0006】
ここで、基地局1Bは、携帯電話端末1Mまたは外部装置(例えば、第三者システム)から測位を要求されると、リピータ局1Nから携帯電話端末1Mまでのベクトル(即ち、長さおよび方向を有する成分)を、リピータ局1Nを起点としたまま、基地局1Bからリピータ局1Nへの方向へと、破線で示されるように折り返す演算処理(即ち、折返し測位処理)を行う。この結果、基地局1Bは、この折り返した先の地点である位置座標1Pに、携帯電話端末1Mが位置していると推測する。
【0007】
ここで、推測された携帯電話端末1Mの位置座標1Pと、携帯電話端末1Mの実際の位置との差分距離Smpは、基地局1Bのセルセクタの中心座標1Cと、携帯電話端末1Mの実際の位置との差分距離Scmよりも長くなっている。即ち、携帯電話端末1Mの実際の位置は、基地局1Bのセルセクタの中心座標1Cであるとするよりも、推測された携帯電話端末1Mの位置座標1Pであるとする方が、大きな測定誤差が生じてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、リピータ局を介した通信が可能な移動通信機の位置を測位する際の測位精度をより高くすることができる測位方法および基地局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る測位方法は、電波信号を中継するリピータ局を介した通信が可能な移動通信機の位置を測位する基地局が行う測位方法であって、基地局からリピータ局までの距離と、当該リピータ局から移動通信機までの距離とを加算した加算距離を当該基地局が算出し、当該基地局から当該リピータ局への方向で、且つ、当該基地局から当該加算距離にある地点を、当該移動通信機の測位結果地点として基地局が算出して記憶する測位ステップと、測位ステップで記憶された測位結果地点と、移動通信機が在圏する通信エリアの中心地点との差分距離を基地局が算出して記憶する算出ステップと、算出ステップで記憶された差分距離の方が、前記通信エリアの前記中心地点からの所定距離より長いか否かを、基地局が判定する判定ステップと、判定ステップで差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合、通信エリアの中心地点を、移動通信機の測位結果地点として基地局が変更して記憶する変更ステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る測位方法では、まず、測位ステップで記憶された測位結果地点と、移動通信機が在圏する通信エリアの中心地点との差分距離を基地局が算出ステップで算出して記憶する。次に、算出ステップで記憶された差分距離の方が、通信エリアの中心地点からの所定距離より長いか否かを、基地局が判定ステップで判定する。そして、判定ステップで差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合、通信エリアの中心地点を、移動通信機の測位結果地点として基地局が変更ステップで変更して記憶する。
【0011】
これにより、判定ステップで差分距離の方が所定距離より長いと判定されなかった場合、移動通信機の測位結果地点は、測位ステップで記憶された測位結果地点のままである。即ち、移動通信機の測位結果地点は、通信エリアの通信可能エリア内であって、且つ、上記の加算距離と上記の方向とに基づいた地点のままである。一方、判定ステップで差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合、即ち、通信エリアに在圏しているはずの移動通信機が当該通信エリアの通信可能エリア外に位置しているという測位結果になった場合、通信エリアの中心地点が、移動通信機の測位結果地点として変更される。このため、図1を用いて上述したような大きな測定誤差が生じてしまうことがなくなる。この結果、リピータ局を介した通信が可能な移動通信機の位置を測位する際の測位精度をより高くすることができる。
【0012】
また、移動通信機の位置の測位を要求する要求信号を基地局が受信する受信ステップと、測位ステップで記憶された測位結果地点、または、判定ステップで差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合の変更ステップで記憶された測位結果地点を示す信号を、要求信号の送信元に送信する送信ステップと、を更に備え、受信ステップで要求信号が受信された場合、測位ステップに移行するのも好ましい。これにより、受信ステップで要求信号が受信された場合、測位ステップに移行し、測位ステップで記憶された測位結果地点、または、判定ステップで差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合の変更ステップで記憶された測位結果地点を示す信号が、要求信号の送信元に送信される。このため、測位を要求された場合に、測位結果地点を示す信号を測位要求先に送信して応答することができる。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る基地局は、電波信号を中継するリピータ局を介した通信が可能な移動通信機の位置を測位する基地局であって、当該基地局からリピータ局までの距離と、当該リピータ局から移動通信機までの距離とを加算した加算距離を算出し、当該基地局から当該リピータ局への方向で、且つ、当該基地局から当該加算距離にある地点を、当該移動通信機の測位結果地点として算出して記憶する測位手段と、測位手段により記憶された測位結果地点と、移動通信機が在圏する通信エリアの中心地点との差分距離を算出して記憶する算出手段と、算出手段により記憶された差分距離の方が、通信エリアの中心地点からの所定距離より長いか否かを判定する判定手段と、判定手段により差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合、通信エリアの中心地点を、移動通信機の測位結果地点として変更して記憶する変更手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る基地局では、まず、測位手段により記憶された測位結果地点と、移動通信機が在圏する通信エリアの中心地点との差分距離を算出手段が算出して記憶する。次に、算出手段により記憶された差分距離の方が、通信エリアの中心地点からの所定距離より長いか否かを判定手段が判定する。そして、判定手段により差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合、通信エリアの中心地点を、移動通信機の測位結果地点として変更手段により変更して記憶する。
【0015】
これにより、判定手段により差分距離の方が所定距離より長いと判定されなかった場合、移動通信機の測位結果地点は、測位手段により記憶された測位結果地点のままである。即ち、移動通信機の測位結果地点は、通信エリアの通信可能エリア内であって、且つ、上記の加算距離と上記の方向とに基づいた地点のままである。一方、判定により差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合、即ち、通信エリアに在圏しているはずの移動通信機が当該通信エリアの通信可能エリア外に位置しているという測位結果になった場合、通信エリアの中心地点が、移動通信機の測位結果地点として変更される。このため、図1を用いて上述したような大きな測定誤差が生じてしまうことがなくなる。この結果、リピータ局を介した通信が可能な移動通信機の位置を測位する際の測位精度をより高くすることができる。
【0016】
また、移動通信機の位置の測位を要求する要求信号を受信する受信手段と、測位手段により記憶された測位結果地点、または、判定手段により差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合の変更手段により記憶された測位結果地点を示す信号を、要求信号の送信元に送信する送信手段と、を更に備え、受信手段により要求信号が受信された場合、測位手段による測位結果地点の算出および記憶が行われるのも好ましい。これにより、受信手段により要求信号が受信された場合、測位手段による測位結果地点の算出および記憶が行われ、測位手段により記憶された測位結果地点、または、判定ステップで差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合の変更手段により記憶された測位結果地点を示す信号が、要求信号の送信元に送信される。このため、測位を要求された場合に、測位結果地点を示す信号を測位要求先に送信して応答することができる。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明に係る測位システムは、電波信号を中継するリピータ局と、当該リピータ局を介した通信が可能な移動通信機と、当該移動通信機の位置を測位する基地局と、を備える測位システムであって、基地局は、当該基地局からリピータ局までの距離と、当該リピータ局から移動通信機までの距離とを加算した加算距離を算出し、当該基地局から当該リピータ局への方向で、且つ、当該基地局から当該加算距離にある地点を、当該移動通信機の測位結果地点として算出して記憶する測位手段と、測位手段により記憶された測位結果地点と、移動通信機が在圏する通信エリアの中心地点との差分距離を算出して記憶する算出手段と、算出手段により記憶された差分距離の方が、通信エリアの中心地点からの所定距離より長いか否かを判定する判定手段と、判定手段により差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合、通信エリアの中心地点を、移動通信機の測位結果地点として変更して記憶する変更手段と、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明に係る測位システムでは、まず、基地局の測位手段により記憶された測位結果地点と、移動通信機が在圏する通信エリアの中心地点との差分距離を基地局の算出手段が算出して記憶する。次に、基地局の算出手段により記憶された差分距離の方が、通信エリアの中心地点からの所定距離より長いか否かを基地局の判定手段が判定する。そして、基地局の判定手段により差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合、通信エリアの中心地点を、移動通信機の測位結果地点として基地局の変更手段により変更して記憶する。
【0019】
これにより、基地局の判定手段により差分距離の方が所定距離より長いと判定されなかった場合、移動通信機の測位結果地点は、基地局の測位手段により記憶された測位結果地点のままである。即ち、移動通信機の測位結果地点は、通信エリアの通信可能エリア内であって、且つ、上記の加算距離と上記の方向とに基づいた地点のままである。一方、判定により差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合、即ち、通信エリアに在圏しているはずの移動通信機が当該通信エリアの通信可能エリア外に位置しているという測位結果になった場合、通信エリアの中心地点が、移動通信機の測位結果地点として変更される。このため、図1を用いて上述したような大きな測定誤差が生じてしまうことがなくなる。この結果、リピータ局を介した通信が可能な移動通信機の位置を測位する際の測位精度をより高くすることができる。
【0020】
また、基地局は、移動通信機の位置の測位を要求する要求信号を受信する受信手段と、測位手段により記憶された測位結果地点、または、判定手段により差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合の変更手段により記憶された測位結果地点を示す信号を、要求信号の送信元に送信する送信手段と、を更に備え、受信手段により要求信号が受信された場合、測位手段による測位結果地点の算出および記憶が行われるのも好ましい。これにより、受信手段により要求信号が受信された場合、測位手段による測位結果地点の算出および記憶が行われ、測位手段により記憶された測位結果地点、または、判定ステップで差分距離の方が所定距離より長いと判定された場合の変更手段により記憶された測位結果地点を示す信号が、要求信号の送信元に送信される。このため、測位を要求された場合に、測位結果地点を示す信号を測位要求先に送信して応答することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、リピータ局を介した通信が可能な移動通信機の位置を測位する際の測位精度をより高くすることができる測位方法および基地局装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
(1)測位システムの構成
まず、本実施形態である測位システムについて、図2を用いて説明する。図2は、電波信号を中継するリピータ局を介した通信が可能な移動通信機の位置を測位する測位システムSYSにおいて最初に行われる処理を説明するための説明図である。測位システムSYSは、リピータ局Nと、携帯電話端末M(移動通信機)と、基地局装置B(基地局)と、を含んで構成されている。ここでは、基地局装置B一基に対して、リピータ局N一基および携帯電話端末M一台が対応しているとして説明するが、基地局装置B一基に対して対応するリピータ局Nおよび携帯電話端末Mの数は特に限定されない。
【0024】
リピータ局Nは、基地局装置Bと携帯電話端末Mとの間で送受信される電波信号を中継する中継装置である。
【0025】
携帯電話端末Mは、リピータ局Nを介して基地局装置Bとの通信が可能な移動通信機である。携帯電話端末Mは、移動通信機であれば特に限定されず、例えば通信機能を有するノートパソコンやPDA等といったモバイル通信端末でもよい。
【0026】
基地局装置Bは、リピータ局Nを介して携帯電話端末Mとの通信が可能な通信制御装置である。基地局装置Bは、携帯電話端末Mが在圏する通信エリアであるセルセクタAb(即ち、基地局装置Bが提供する移動体通信網の構成単位)の中心地点Cの位置座標と、セルセクタの中心地点Cからの所定距離(以下、セルセクタの半径と呼ぶ)とを記憶保持しており、この中心地点Cの位置座標とセルセクタの半径とを用いて、携帯電話端末Mの位置を測位する。ここでは、セルセクタAbは扇形の形状を有している。なお、セルセクタの半径は、当該セルセクタの中心地点Cを中心とする円が、当該セルセクタをほぼカバーする程度の長さを有する。基地局装置Bの物理的構成および機能的構成については、後述する。
【0027】
(2)基地局装置の構成
次に、本実施形態である基地局装置Bの構成について、図3および図4を用いて説明する。図3は、基地局装置Bの機能構成を示す構成図である。また、図4は、基地局装置Bのハードウェア構成を示す構成図である。図4に示すように、基地局装置Bは、CPU(Central Processing Unit)B1、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)B2およびROM(Read Only Memory)B3、外部と通信を行うための通信モジュールB4、並びにハードディスク等の補助記憶装置B5等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成される。これらの構成要素が動作することにより、基地局装置Bの機能が発揮される。また、図3に示すように、基地局装置Bは、機能的な構成要素として、受信部11と、測位部12と、算出部13と、判定部14と、変更部15と、送信部16と、を有している。
【0028】
受信部11は、携帯電話端末Mまたは外部(例えば、第三者システム。図示せず。)から、携帯電話端末Mの位置の測位を要求する要求信号を受信する部分である。受信部11により要求信号が受信された場合、測位部12における後述の処理が行われる。
【0029】
測位部12は、受信部11により要求信号が受信された場合、リピータ局Nから携帯電話端末Mまでのベクトル(即ち、長さおよび方向を有する成分)を、リピータ局Nを起点としたまま、基地局装置Bからリピータ局Nへの方向へと、(図2における破線で示されるように)折り返す演算処理(即ち、折返し測位処理)を行う部分である。言い換えれば、測位部12は、線分Smnを線分Snpに折り返す演算処理を行う。この結果、基地局装置Bは、この折り返した先の地点である位置座標Pに、携帯電話端末Mが位置していると推測する。
【0030】
より詳しくは、測位部12は、まず、基地局装置Bからリピータ局Nまでの距離と、リピータ局Nから携帯電話端末Mまでの距離とを加算した加算距離を算出する。そして、測位部12は、基地局装置Bからリピータ局Nへの方向で、且つ、基地局装置Bからこの加算距離にある地点である位置座標Pを、携帯電話端末Mの測位結果地点として算出して記憶装置に記憶する。なお、上記した距離の算出は、送受信される電波信号の伝送遅延(例えば、既存の方法であるRTT:Round Trip Time)に基づいて行われる。
【0031】
算出部13は、測位部12により記憶された測位結果地点Pと、携帯電話端末Mが在圏するセルセクタの中心地点Cとの差分距離(以下、Scpと呼ぶ)を算出して記憶装置に記憶する部分である。セルセクタの中心地点Cは、例えば、当該セルセクタの重心であってもよい。
【0032】
判定部14は、算出部13により記憶された差分距離Scpの方が、セルセクタの半径より長いか否かを判定する部分である。
【0033】
変更部15は、判定部14により差分距離Scpの方が半径より長いと判定された場合、セルセクタの中心地点Cを、携帯電話端末Mの測位結果地点として変更して記憶装置に記憶する部分である。
【0034】
送信部16は、測位部12により記憶された測位結果地点P、または、判定部14により差分距離Scpの方が半径より長いと判定された場合の変更部15により記憶された測位結果地点Cを示す信号を、上記の要求信号の送信元(即ち、上記の携帯電話端末Mまたは外部装置)に送信する部分である。
【0035】
(3)判定部14による判定の詳細
次に、判定部14による判定の詳細について、図5および図6を用いて説明する。図5は、測位部12により記憶された測位結果地点Pが、セルセクタの半径によって描かれる円状の領域外にある場合の位置関係を示す説明図である。また、図6は、測位部12により記憶された測位結果地点Pが、セルセクタの半径によって描かれる円状の領域内にある場合の位置関係を示す説明図である。
【0036】
まず、測位部12により記憶された測位結果地点Pが、セルセクタの半径Rによって描かれる円状(実線で示す)の領域外にある場合について説明する。このような場合、図5に示すように、判定部14により差分距離Scpの方が半径Rより長いと判定される。これにより、変更部15は、セルセクタの中心地点Cを、携帯電話端末Mの測位結果地点として変更して記憶装置に記憶する。
【0037】
次に、測位部12により記憶された測位結果地点Pが、セルセクタの半径Rによって描かれる円状(実線で示す)の領域内にある場合について説明する。このような場合、図6に示すように、判定部14により差分距離Scpの方が半径Rより長いと判定されない。これにより、変更部15による上記の変更は行われないため、携帯電話端末Mの測位結果地点は、基地局装置Bから加算距離(即ち、線分BNと線分NPを加算した距離)にある地点である位置座標Pのまま記憶装置に記憶される。
【0038】
(4)携帯電話端末Mの測位方法の流れ
次に、基地局装置Bによる携帯電話端末Mの位置の測位の際に行われる処理について説明する。図7は、基地局装置Bによる携帯電話端末Mの位置の測位の際に行われる処理について説明するためのフローチャートである。
【0039】
図7に示すように、まず、受信部11が、携帯電話端末Mまたは外部から、携帯電話端末Mの位置の測位を要求する要求信号を受信する(ステップS01、受信ステップ)と、測位部12が、リピータ局Nから携帯電話端末Mまでのベクトルを、リピータ局Nを起点としたまま、基地局装置Bからリピータ局Nへの方向へと、折り返す演算処理を行って、この折り返した先の地点である位置座標Pに、携帯電話端末Mが位置していると推測する(ステップS02、測位ステップ)。即ち、測位部12は、基地局装置Bからリピータ局Nまでの距離と、リピータ局Nから携帯電話端末Mまでの距離とを加算した加算距離を算出して、基地局装置Bからリピータ局Nへの方向で、且つ、基地局装置Bから加算距離にある地点である位置座標Pを、携帯電話端末Mの測位結果地点として算出して記憶装置に記憶する。
【0040】
次に、算出部13が、測位部12により記憶された測位結果地点Pと、携帯電話端末Mが在圏するセルセクタの中心地点Cとの差分距離Scpを算出して記憶装置に記憶する(ステップS03、算出ステップ)。そして、判定部14が、算出部13により記憶された差分距離Scpの方が、セルセクタの半径Rより長いか否かの判定処理を開始する(ステップS04、判定ステップ)。
【0041】
ここで、判定処理が行われ(ステップS05、判定ステップ)、差分距離Scpの方が、セルセクタの半径Rよりも長いと判定された場合、変更部15が、セルセクタの中心地点Cを、携帯電話端末Mの測位結果地点として変更して記憶装置に記憶する(変更ステップ)。即ち、変更部15は、測位部12によって記憶されている、携帯電話端末Mの測位結果地点を、上記の位置座標Pからセルセクタの中心地点Cに変更して記憶装置に記憶する。そして、送信部16が、変更部15により記憶された測位結果地点Cを示す信号を、上記の要求信号の送信元に送信して応答する(ステップS06、送信ステップ)。そして、基地局装置Bにおける一連の処理は終了する。
【0042】
一方、判定処理が行われ(ステップS05)、差分距離Scpの方が、セルセクタの半径Rよりも長いと判定されなかった場合、即ち、セルセクタの半径Rの方が、差分距離Scpよりも長いと判定された場合、送信部16は、測位部12により記憶された測位結果地点Pを示す信号を、上記の要求信号の送信元に送信して応答する(ステップS07、送信ステップ)。そして、基地局装置Bにおける一連の処理は終了する。
【0043】
これにより、判定ステップで差分距離Scpの方が半径Rより長いと判定されなかった場合、携帯電話端末Mの測位結果地点は、測位ステップで記憶された測位結果地点Pのままである。即ち、携帯電話端末Mの測位結果地点は、セルセクタAb内であって、且つ、上記の加算距離と上記の方向とに基づいた地点Pのままである。
【0044】
一方、判定ステップで差分距離Scpの方が半径Rより長いと判定された場合、即ち、セルセクタAbに在圏しているはずの携帯電話端末Mが当該セルセクタAb外に位置しているという測位結果になった場合、上記の折返し測位処理による影響が大きいと推測されるため、セルセクタの中心地点Cが、携帯電話端末Mの測位結果地点として変更される。このため、図1を用いて上述したような大きな測定誤差が生じてしまうことがなくなる。この結果、リピータ局Nを介した通信が可能な携帯電話端末Mの位置を測位する際の測位精度をより高くすることができる。
【0045】
また、受信ステップで要求信号が受信された場合、測位ステップに移行し、測位ステップで記憶された測位結果地点P、または、判定ステップで差分距離Scpの方が半径Rより長いと判定された場合の変更ステップで記憶された測位結果地点Cを示す信号が、要求信号の送信元に送信される。このため、測位を要求された場合に、測位結果地点を示す信号を測位要求先に送信して応答することができる。
【0046】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、基地局装置Bは、複数のサーバから構成されて、これら複数のサーバが連携して動作することにより、基地局装置Bとして機能するように変形してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】測定誤差が生じる場合の、基地局とリピータ局と移動通信機との位置関係を説明するための説明図である。
【図2】測位システムにおいて最初に行われる処理を説明するための説明図である。
【図3】基地局装置の機能構成を示す構成図である。
【図4】基地局装置のハードウェア構成を示す構成図である。
【図5】測位部により記憶された測位結果地点が、セルセクタの半径によって描かれる円状の領域外にある場合の位置関係を示す説明図である。
【図6】測位部により記憶された測位結果地点が、セルセクタの半径によって描かれる円状の領域内にある場合の位置関係を示す説明図である。
【図7】基地局装置による携帯電話端末の位置の測位の際に行われる処理について説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
1Ab,Ab…セルセクタ、1B…基地局、1C…中心座標、1M,M…携帯電話端末、1N,N…リピータ局、1P…位置座標、11…受信部、12…測位部、13…算出部、14…判定部、15…変更部、16…送信部、B…基地局装置、B4…通信モジュール、B5…補助記憶装置、Smn,Snp…線分、C…中心地点、P…地点、R…半径、Scm,Scp,Smp…差分距離、SYS…測位システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波信号を中継するリピータ局を介した通信が可能な移動通信機の位置を測位する基地局が行う測位方法であって、
前記基地局から前記リピータ局までの距離と、当該リピータ局から前記移動通信機までの距離とを加算した加算距離を当該基地局が算出し、当該基地局から当該リピータ局への方向で、且つ、当該基地局から当該加算距離にある地点を、当該移動通信機の測位結果地点として前記基地局が算出して記憶する測位ステップと、
前記測位ステップで記憶された前記測位結果地点と、前記移動通信機が在圏する通信エリアの中心地点との差分距離を前記基地局が算出して記憶する算出ステップと、
前記算出ステップで記憶された前記差分距離の方が、前記通信エリアの前記中心地点からの所定距離より長いか否かを、前記基地局が判定する判定ステップと、
前記判定ステップで前記差分距離の方が前記所定距離より長いと判定された場合、前記通信エリアの前記中心地点を、前記移動通信機の前記測位結果地点として前記基地局が変更して記憶する変更ステップと、
を有することを特徴とする測位方法。
【請求項2】
前記移動通信機の位置の測位を要求する要求信号を前記基地局が受信する受信ステップと、
前記測位ステップで記憶された前記測位結果地点、または、前記判定ステップで前記差分距離の方が前記所定距離より長いと判定された場合の前記変更ステップで記憶された前記測位結果地点を示す信号を、前記要求信号の送信元に送信する送信ステップと、を更に備え、
前記受信ステップで前記要求信号が受信された場合、前記測位ステップに移行することを特徴とする、請求項1に記載の測位方法。
【請求項3】
電波信号を中継するリピータ局を介した通信が可能な移動通信機の位置を測位する基地局であって、
当該基地局から前記リピータ局までの距離と、当該リピータ局から前記移動通信機までの距離とを加算した加算距離を算出し、当該基地局から当該リピータ局への方向で、且つ、当該基地局から当該加算距離にある地点を、当該移動通信機の測位結果地点として算出して記憶する測位手段と、
前記測位手段により記憶された前記測位結果地点と、前記移動通信機が在圏する通信エリアの中心地点との差分距離を算出して記憶する算出手段と、
前記算出手段により記憶された前記差分距離の方が、前記通信エリアの前記中心地点からの所定距離より長いか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記差分距離の方が前記所定距離より長いと判定された場合、前記通信エリアの前記中心地点を、前記移動通信機の前記測位結果地点として変更して記憶する変更手段と、
を備えることを特徴とする基地局。
【請求項4】
前記移動通信機の位置の測位を要求する要求信号を受信する受信手段と、
前記測位手段により記憶された前記測位結果地点、または、前記判定手段により前記差分距離の方が前記所定距離より長いと判定された場合の前記変更手段により記憶された前記測位結果地点を示す信号を、前記要求信号の送信元に送信する送信手段と、を更に備え、
前記受信手段により前記要求信号が受信された場合、前記測位手段による前記測位結果地点の算出および記憶が行われることを特徴とする、請求項3に記載の基地局。
【請求項5】
電波信号を中継するリピータ局と、当該リピータ局を介した通信が可能な移動通信機と、当該移動通信機の位置を測位する基地局と、を備える測位システムであって、前記基地局は、
当該基地局から前記リピータ局までの距離と、当該リピータ局から前記移動通信機までの距離とを加算した加算距離を算出し、当該基地局から当該リピータ局への方向で、且つ、当該基地局から当該加算距離にある地点を、当該移動通信機の測位結果地点として算出して記憶する測位手段と、
前記測位手段により記憶された前記測位結果地点と、前記移動通信機が在圏する通信エリアの中心地点との差分距離を算出して記憶する算出手段と、
前記算出手段により記憶された前記差分距離の方が、前記通信エリアの前記中心地点からの所定距離より長いか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記差分距離の方が前記所定距離より長いと判定された場合、前記通信エリアの前記中心地点を、前記移動通信機の前記測位結果地点として変更して記憶する変更手段と、
を有することを特徴とする測位システム。
【請求項6】
前記基地局は、
前記移動通信機の位置の測位を要求する要求信号を受信する受信手段と、
前記測位手段により記憶された前記測位結果地点、または、前記判定手段により前記差分距離の方が前記所定距離より長いと判定された場合の前記変更手段により記憶された前記測位結果地点を示す信号を、前記要求信号の送信元に送信する送信手段と、を更に備え、
前記受信手段により前記要求信号が受信された場合、前記測位手段による前記測位結果地点の算出および記憶が行われることを特徴とする、請求項5に記載の測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−267626(P2009−267626A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112831(P2008−112831)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】