説明

測位装置

【課題】 センサの配置やセンサ自体の移動などに対応してセンサ間の同期をとるためのケーブル接続を不要とし、また、時計誤差を補正するための送信局を不要とするために、測位装置内の処理でセンサ間の時計誤差の補正を可能にする。
【解決手段】 目標から放射もしくは反射された電波を複数のセンサで受信し、受信した電波の到来時間差に基づいて目標の位置を算出する測位装置において、各センサで複数回受信された電波の到来時間差を算出する到来時間差算出部と、各センサ間の電波の到来時間差を基に、センサ間の時計誤差と電波を受信した各時刻における目標位置を測位する測位部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置を知りたい目標から放射もしくは反射された電波を受信して目標の位置を算出する測位装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
測位装置では、目標から放射もしくは反射された電波を複数のセンサで受信し、受信した電波の到来時間差に基づいて目標の位置を算出しているが、その場合、目標からの電波を各センサで正確なタイミングで受信する必要がある。そのためには、各センサは高精度な時刻同期が確立されている必要があり、センサ間をケーブルで結び、同一のクロックで互いのセンサの同期を取って動作させている。しかし、複数のセンサ同士が極めて近接設置される場合には配線基板などを用いて一体的に接続できるが、センサ同士が離れた位置に設置されている場合には、センサ間を個々のケーブルで接続しなければならず、そのための多数のケーブルの準備や接続作業が要求され、コストの面で不利である。また、センサ自体が移動するような場合には、センサ同士をケーブルで結ぶことは構造上に困難である。この問題を解決する方法として、各センサで時計誤差を含んだ状態で電波の到来時間を観測し、その後の処理で時計誤差を補正する方式がある(例えば特許文献1)。この特許文献1の方法は、位置が既知の位置に送信局を置き、その送信局からの電波を各センサで受信し、その電波の到来時間差を求めることで、センサ間の時計誤差を算出するものである。目標の位置を算出する場合には、目標からの電波の到来時間差を、先に求めた時計誤差で補正して、補正値を基に目標の位置を算出する。
【0003】
【特許文献1】特開2001−272448公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の測位装置では、目標からの電波の到来時間差を、予め求めた時計誤差を用いて補正して、補正値を基に目標の位置を算出するようにしているが、センサ間の時計誤差を得るために送信局を別途設ける必要がり、その分装置が大掛かりとなる。
【0005】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、自機内の処理でセンサ間の時計誤差の補正を可能にする測位装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る測位装置は、目標から放射もしくは反射された電波を複数のセンサで受信し、受信した電波の到来時間差に基づいて目標の位置を算出する測位装置において、各センサで複数回受信された電波の到来時間差を算出する到来時間差算出部と、算出された各センサ間の電波の到来時間差に基づいて、センサ間の時計誤差と電波を受信した各時刻における目標位置を測位する測位部を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、各センサ間で時計誤差を含んだ状態で電波の到来時間を観測し、その後の測位処理で時計誤差を補正するようにしているので、センサの配置やセンサ自体の移動などに対応してセンサ間の同期をとるためのケーブル接続を考慮する必要が無く、また、時計誤差を補正するための送信局を別途設置する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による測位装置の機能構成を示すブロック図である。図において、複数のセンサ11 〜1Nは、目標から放射された、もしくは目標で反射した電波をそれぞれ複数回受信する手段である。ここでNは、センサの総数とする。
【0009】
到来時間差算出部2は、各センサで複数回受信した電波の到来時間差を算出する手段である。測位部3は、各センサ間の電波の到来時間差を基に、センサ間の時計誤差と電波を受信した各時刻における目標の位置を算出する手段である。
【0010】
また測位部3は、一括測位部31を備えている。この一括測位部31は、電波の到来時間差からセンサ間の時計誤差を減算した時間に、電波の速度を乗算して得た距離が、電波の伝搬距離の差に等しいとする等式を電波の受信時刻毎に作成し、これらを連立させることで、センサ間の時計誤差と電波を受信した各時刻における目標の位置を測位する手段である。
【0011】
次にこの発明の原理について説明する。センサ11 〜1N で、目標から放射された、もしくは目標で反射された電波を受信すると、各センサは電波を受信した到来時間を観測する。この方法について、センサn (1≦n≦N)を例に説明する。
【0012】
まずセンサn では、受信信号を低い周波数にダウンコンバートし、A/D変換器でデジタル信号に変換する(サンプリング時間をΔtとする)。デジタル信号のサンプリング番号をiとした場合のセンサ1n のデジタル受信信号をqn (i)と表す。ここで、目標からの電波の信号波形が既知であるとし、その既知の信号波形を以下では基準信号と呼び、qr (i)で表す。ただし、基準信号は、センサで受信した信号と同一の周波数に変換されているものとする。そして相関処理のポイント数(整数)をLとしてサンプルポイントhを変動させ、(1)式の相関関数fn (h)の大きさ|fn (h)|が最大となるhを求める。なおqr (i)* は、qr (i)の複素共役を意味する。
【数1】

【0013】
いま、h=hn の場合に|fn (h)|が最大となったとする。これは、センサ1n で受信した信号と、基準信号が類似したことを示すため、hn ・Δtがセンサ1n で目標からの電波を受信した到来時間τn となる。
τn =hn ・Δt (2)
【0014】
なお以下では、複数の時刻で観測した到来時間を扱う。そのため、目標からの電波を観測した時刻をt(1≦k≦K、kは自然数で観測した順番を表し、Kは観測の総数を表す)とすると、時刻tk においてセンサ1n で観測した到来時間をτn(k)と表す。
【0015】
各センサでは、上記の様にして複数の異なった時刻tk (1≦k≦K)で電波の到来時間τn(k) (1≦n≦N、1≦k≦K)を観測し、到来時間差算出部2に伝送する。なお以下では、tk を観測時刻と呼ぶ。
【0016】
到来時間差算出部2では、センサ11 〜1N から出力された観測時刻tk (1≦k≦K)において、各センサで受信した目標からの電波の到来時間差を算出する。いま、観測時刻tk においてセンサ1n (1≦n≦N)で受信した電波の到来時間がτn(k)で、センサ1m (1≦m≦N、n≠m)で受信した電波の到来時間がτm(k)であるとする。この場合到来時間差算出部2では、(3)式により観測時刻tk における電波の到来時間差Δτn,m(k)を算出する。
Δτn,m(k)=τn(k) −τm(k) (3)
【0017】
上記は目標からの電波が既知の場合について説明したが、未知の場合についても到来時間を求めることが可能である。具体的には、センサ1n で受信したデジタル信号qn (i)と、センサ1m で受信したデジタル信号qm (i)を伝送し、(4)式に示すような相関処理を実施する。
【数2】

【0018】
そして、f'n,m(h)が最大となるhを求め、これにΔtを乗じたものが、電波の到来時間差Δτn,m となる。
Δτn,m =h・Δt
【0019】
これまでの説明では、相関処理を用いて到来時間差を求める方法について説明したが、これに限らず、他の方式により求めた到来時間差を求めてもよい。
【0020】
測位部3では一括測位部31において、到来時間差算出部2から出力された電波の到来時間差Δτn,m(k)(n≠m、1≦k≦K)を基に、複数の方程式を生成し、それらを解くことで目標位置を算出する。具体的処理方法を説明する。
【0021】
センサ1n とセンサ1m の観測時刻tk における電波の到来時間差Δτn,m(k)には、時計誤差が含まれる。この時計誤差をεn,m (未知数)とすれば、(Δτn,m(k)−εn,m )が時計誤差を含まない到来時間差となる。このため(Δτn,m(k)−εn,m )に電波の速度cを乗じた距離は、「センサ1n から目標までの距離」と「センサ1m から目標までの距離」の差に等しくなる。ゆえに、(5)式が成立する。
【数3】

【0022】
ここで[Xn ,Yn ,Zn ]はセンサ1n の座標(既知)、[Xm ,Ym ,Zm ]はセンサ1m の座標(既知)、[x(k)(k)(k)]は観測時刻tkにおける目標の座標(未知)とする。観測時刻tk における上記の様な方程式は、センサ数マイナス1成立する。ゆえに、センサの総数がN個であると、方程式は(N−1)個成立する。また、目標からの電波を受信した回数がK回(観測時刻はtk (1≦k≦K))であり、各観測時刻tk で(5)式のような方程式は(N−1)個成り立つため、合計で方程式は(N−1)×K個成り立つ。
【0023】
一方、(5)式における未知数は、目標の位置に関するもの[x(k) ,y(k) ,z(k) ]と時計誤差εn,m に関するものがある。このうち目標位置の未知数[x(k) ,y(k) ,z(k) ]は、観測時刻tk (1≦k≦K)毎に異なり、観測回数がK回で3×K個になる。またセンサ間の時計誤差εn,m は、急激に変動しないと考えられるため、電波の観測時刻tk (1≦k≦K)によらず一定になり、(N−1)個になる。ゆえに(N−1)×K個の方程式に含まれる未知数の総数は、((N−1)+3K)個となる。したがって、(6)式の条件を満たす場合、未知数の数と方程式の数が等しくなり、未知数を決定することができる。ただし、到来時間差には観測誤差が含まれる場合があるため、(5)式の方程式が一点で交わるとは限らない。この場合、最小二乗解を求めるようにして、未知数を算出する。
(N−1)×K=(N−1)+3K (6)
【0024】
例えばセンサ数Nが5の場合、観測回数Kは4で未知数の決定が可能となる。未知数よりも方程式の数が多い場合には、最小二乗解を求めるようにして、未知数を算出する。
【0025】
一括測位部31では、以上のようにして未知数(目標位置と時計誤差)を算出する。
【0026】
なお、測位部3は、図2に示すように運動モデル設定部32と運動モデル測位部33を備えたものであっても良い。この場合、運動モデル設定部32では、位置を知りたい目標の移動が、等速直線運動であるか、等加速度直線運動であるかなどを設定する。運動モデル測位部33では、運動モデル設定部32で設定された結果に基づいて、方程式を複数作成し、これらを連立させて目標の位置を算出する。
【0027】
運動モデル設定部32で等速直線運動と設定された場合を例に以下説明する。
【0028】
等速直線運動の場合、観測時刻tk における目標位置[x(k) ,y(k) ,z(k) ]は(7)〜(9)式のように表すことができる。
(k) =x(1) +vx ・Δtk (7)
(k) =y(1) +vy ・Δtk (8)
(k) =z(1) +vz ・Δtk (9)
Δtk =t1 −tk (10)
ここで[x(1)(1)(1)]は、観測時刻tにおける目標の座標(未知)とし、vは目標のx軸方向の速度(未知)、vは目標のy軸方向の速度(未知)、vは目標のz軸方向の速度とする。これを(5)式に代入したものが運動モデル測位部33で作成する方程式で、(11)式のようになる。
【数4】

【0029】
これらの方程式は、上記一括測位部31の場合と同様に、(N−1)×K個得られる。一方未知数は、観測時刻t1 における目標の位置[x(1) ,y(1) ,z(1) ]と目標の速度[vx ,vy ,vz ]、時計誤差εn,mとなる。目標の位置に関する未知数(観測時刻t1 の位置と目標の速度)の数は、観測回数K によらず一定な値6であり、時計誤差の数は一括測位部31の場合と同様で(N−1)となる。したがって、未知数の数以上に方程式が得られる条件は、(12)式の様になる。ただし、到来時間差には観測誤差が含まれる場合があるため、(12)式の方程式が一点で交わるとは限らない。この場合、最小二乗解を求めるようにして、未知数を算出する。
(N−1)×K≧(N−1)+6 (12)
【0030】
例えばセンサ数Nが5の場合、K≧5/2となるため、観測回数K=3の場合においても未知数を推定することが可能である。一括測位部31はN=5の場合、K≧4であるため、運動モデル設定部33は、より少ない観測回数で目標位置を算出することが可能となる。なお、未知数以上に方程式の数がある場合には、最小二乗解を解くようにして未知数を算出する。
【0031】
運動モデル測位部33では、上記の様にして(11)式のような方程式を多数連立させ、これらを解くことで、目標の位置と時計誤差を算出する。なお、(12)式に示した目標位置の測位可能な条件は、運動モデル設定部32により設定される運動モデルにより、異なる条件となる。
【0032】
以上のように、この実施の形態1によれば、到来時間差算出部2により算出した各センサ間の電波の到来時間差に基づいて、センサ間の時計誤差と電波を受信した各時刻における目標位置を測位する測位部3を備えており、特に、測位部3では、一括測位部31において、センサ間の電波到来時間差から各センサ間の時計誤差を減算した時間に電波の速度を乗算して得た距離が、電波の伝搬距離の差に等しいとする等式を電波の受信時刻毎に作成し、これらの式を連立させることでセンサ間の時計誤差と電波を受信した各時刻における目標の位置を算出するようにしている。
【0033】
したがって、測位装置内でセンサ間の時計誤差の補正を可能にする。そのため、センサ間の同期をとる必要がなく、センサの配置やセンサ自体の移動などに対応してセンサ間の同期をとるためのケーブル接続を考慮する必要が無く、また、時計誤差を補正するための送信局を別途設置する必要もない。
【0034】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2による測位装置の機能構成を示すブロック図である。図において、図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略する。この実施の形態2の測位部3は、暫定測位部34、ミスマッチ時間算出部35、暫定時計誤差算出部36および測位処理制御部37を備えている。
【0035】
暫定測位部34では、測位処理制御部37から出力される電波の補正到来時間差Δτ’n,m(k)を用いて、(13)式により観測時刻tk における目標の暫定位置[x’(k) ,y’(k) ,z’(k) ]を算出する。
【数5】

【0036】
なお、測位処理制御部37から出力された電波の補正到来時間差Δτ’n,m(k)が無い場合は、到来時間差算出部2から出力された到来時間差Δτn,m(k)そのものを電波の補正到来時間差Δτ’n,m(k)の代わりに、(13)式に代入して目標の暫定位置を算出する。
【0037】
暫定測位部34では、実施の形態1の一括測位部31の(5)式と異なり、時計誤差を無視した暫定の目標位置を推定する。(13)式における未知数は、目標の暫定位置[x’(k) ,y’(k) ,z’(k) ]のみであるため、(13)式の様な方程式が3以上成り立てば暫定位置を算出することができる。(13)式の測位方程式は、センサ数マイナス1個で成り立つため、センサ数Nが4以上の場合に、目標の暫定位置を算出することができる。ただし、電波の到来時間差Δτ'n,m(k)には時計誤差が含まれるため、(13)式の測位方程式が1点で交わるとは限らない。その場合には、最小二乗解を求めるようにして目標の暫定位置を算出する。また、未知数以上に方程式が有る場合についても、最小二乗解を求めるようにして目標の暫定位置を算出する。
【0038】
暫定位置測位部34は、上記の様にして目標の暫定位置を求め、ミスマッチ時間算出部35に出力する。
【0039】
ミスマッチ時間算出部35では、暫定位置測位部34で得られた目標の暫定位置と各センサの距離の差を電波の速度で除算して得た時間を、各センサ間の電波の到来時間差から減算して、各時刻におけるミスマッチ時間として算出する。この処理は(14)式で表される。暫定測位部34から出力された目標の暫定位置とセンサ1n の距離と目標の暫定位置とセンサ1m の距離の差を求める。
【0040】
次に、この目標の暫定位置と各センサの距離の差を電波の速度cで除算して時間(式の第2項)を求める。この求めた時間(式の第2項)を、到来時間差算出部2から出力された電波の到来時間差Δτn,m(k)から減算してミスマッチ時間ε’n,m(k)とする。
【数6】

【0041】
ミスマッチ時間算出部35では、上記の様にして算出したミスマッチ時間を暫定時計誤差算出部36に出力する。
【0042】
ミスマッチ時間ε’n,m(k)はセンサ間の時計誤差に起因している。そこで、暫定時計誤差算出部36では、各時刻のミスマッチ時間に基づいて暫定時計誤差を算出する。暫定時計誤差算出部36は図4に示すように平均処理部361を備えている。
【0043】
平均処理部361では、(15)式に示すように、センサ1n とセンサ1m のミスマッチ時間ε’n,m(k)(1≦k≦K)について平均値を求め、これをセンサ1n とセンサ1m についての暫定時計誤差ε''n,m とする。
【数7】

【0044】
また、暫定時計誤差算出部36は、図5に示すように重み付け処理部362を備えてもよい。この場合、重み付け処理部362で、ミスマッチ時間算出部35から出力されたミスマッチ時間ε’n,m(k)に後述の重み付け係数φ(k)を乗算することで重み付けを行い、センサ間の暫定時計誤差ε''n,mとして算出する。
【0045】
上記重み付け係数φ(k)としては、例えば「新・GPS測量の基礎」、土屋淳、辻宏道著、社団法人日本測量協会編に記載されている、目標位置とセンサ位置の幾何学的関係から求めえられる目標位置の推定精度の低下率(幾何学低精度低下率:GDOP)などを利用すればよい。ここで、重み付け係数φ(k)の算出方法について説明する。
【0046】
いま、センサ数Nを4とし、暫定測位部34により算出された目標の暫定位置が[x’(k) ,y’(k) ,z’(k) ]であるとする。そして、この目標の暫定位置は、センサ11 とセンサ12 の電波の到来時間差Δτ1,2(k)を用いた方程式と、センサ12 とセンサ13 の電波の到来時間差Δτ2,3(k)を用いた方程式と、センサ13 とセンサ14 の電波の到来時間差Δτ3,4(k)を用いた方程式を基に算出されたものであるとする。ここで、関数gn,m (x,y,z)を(16)式のように定義する。
【数8】

【0047】
次に、関数gn,m (x,y,z)を用いて、(17)式に示す行列A(k)を求める。
【数9】

【0048】
ここで、行列A(k)の各成分は、暫定測位部34から出力された目標の暫定位置[x’(k) ,y’(k) ,z’(k) ]を用いて求める。一例を(18)式に示す。
【数10】

【0049】
最後に、(19)式に示す行列W(k)を求める。
(k) =(A(k)H・A(k)-1 (19)
ここで、A(k)Hは、行列A(k)の複素共役転置を表し、(A(k)H・A(k)-1は行列(A(k)H・A(k))の逆行列を表す。
重み付け係数φ(k)は、(20)式のようにして、行列W(k)の対角成分を基に算出する。
【数11】

【0050】
なお(20)式では、重み付け係数φ(k)を行列W(k)の対角成分の3つの要素(W(k)(1,1)、W(k)(2,2)、W(k)(3,3))を用いて算出しているが、このうち1もしくは2つの要素のみで算出したものを用いても良い。
【0051】
重み付け処理部362では、(20)式などにより求めた重み付け係数φ(k)を用いて、ミスマッチ時間算出部35で算出されたミスマッチ時間ε’n,m(k)を重み付けして、(21)式により暫定時計誤差ε''n,m を算出し出力する。
【数12】

【0052】
測位処理制御部37では、電波の到来時間差から暫定時計誤差算出部36で算出された暫定時計誤差を減算して補正値を求め、得られた補正値を暫定測位部34で用いる電波の補正到来時間差として出力する。また、測位処理制御部37は、到来時間差の補正値を算出する過程において、判定基準に従って、前記暫定測位部、前記ミスマッチ時間算出部および前記暫定時計誤差算出部による一連の測位処理を完了させ、各処理で得られた目標の暫定位置と暫定時計誤差を最終的な目標の位置と時計誤差として出力するか、または一連の測位処理を再度継続して実施させ測位処理をやり直すように制御する。
【0053】
測位処理制御部37では、電波の到来時間差Δτn,m(k)を補正するために、(22)式に示すように、電波の到来時間差Δτn,m(k)から暫定時計誤差ε''n,m を減算し、電波の補正到来時間差Δτ’n,m(k)を求める。この電波の補正到来時間差は、上述したように暫定測位部34で各時刻の目標の暫定位置を算出するために用いられる。
Δτ’n,m(k)=Δτn,m(k)−ε''n,m (1≦k≦K) (22)
【0054】
また、測位処理制御部37は、測位処理の継続か、完了を判定するために、図6に示すように処理回数カウント部371を備えている。処理回数カウント部371では、暫定測位部34、ミスマッチ時間算出部35および暫定時計誤差算出部36で一連の処理を実施した回数をカウントし、カウント数が予め設定された値(判定基準)に達した場合、一連の測位処理を完了させると判定する。このとき、測位処理制御部37は、最後の処理で暫定測位部34から出力された目標の暫定位置[x’(k) ,y’(k) z’(k) ]を、求めるべき目標の位置として出力し、最後の処理で暫定時計誤差算出部36から出力された暫定時計誤差ε''n,m をセンサ1n とセンサ1m の時計誤差として出力する。
【0055】
一方、処理回数カウント部371においてカウント数が予め設定された値に達成していない場合には一連の測位処理を再度継続して実施させると判定し、測位処理制御部37は、(22)式により到来時間差を補正して暫定測位部34に電波の補正到来時間差を出力し、一連の測位処理をやり直す。
【0056】
また、測位処理制御部37は、図7に示すように残差処理部372を備えるようにしてもよい。この場合、残差処理部372では、現在の処理で求めた目標の暫定位置と一つ前の処理で求めた目標の暫定位置の差(残差)を計算して、この残差が予め設定した値(判定基準)よりも小さい場合、一連の測位処理を完了すると判定する。
【0057】
このとき、測位処理制御部37は、現在の処理で求めた目標の暫定位置と暫定時計誤差を、求めるべき目標の位置と時計誤差として出力する。一方、残差処理部372において、残差が予め設定した値より大きい場合には、一連の測位処理を再度継続して実施させると判定し、測位処理制御部37は、(22)式により到来時間差を補正して暫定測位部34に電波の補正到来時間差を出力し、一連の測位処理をやり直す。
【0058】
また、一連の測位処理の継続か、完了の判定を、暫定時計誤差算出部36で求めた暫定時計誤差の残差に基づいて行ってもよいし、あるいは暫定時計誤差の残差と目標の暫定位置の残差の両方を用いて行うようにしてもよい。
【0059】
さらに、測位処理制御部37は、処理回数カウント部371と残差処理部372の両方を備え、一連の測位処理の回数と目標位置の残差、または時計誤差の残差を組み合わせて一連の測位処理の継続もしくは完了の判定を行うようにしても良い。
【0060】
以上のように、この実施の形態2によれば、測位部3では、暫定測位部34により、入力されるセンサ間の電波の補正到来時間差に電波の速度を乗算して得た距離が、電波の伝搬距離の差に等しいとする等式を、電波の受信時刻毎に作成し、これらの式を受信時刻毎に解くことで各時刻の目標の暫定位置を算出し、ミスマッチ時間算出部35において、目標の暫定位置と各センサの距離の差を電波の速度で除算して得た時間を、各センサ間の電波の到来時間差から減算して、各時刻におけるミスマッチ時間として算出し、暫定時計誤差算出部36により、その算出されたミスマッチ時間に基づいて各センサ間の暫定時計誤差を算出し、測位処理制御部37において、電波の到来時間差から暫定時計誤差算出部36で算出された暫定時計誤差を減算して電波の補正到来時間差を求めて暫定測位部34に出力すると共に、判定基準に従って、一連の測位処理を完了させて、各処理で得られた目標の暫定位置と暫定時計誤差を最終的な目標の位置と時計誤差として出力するか、または一連の測位処理を再度継続して実施させるように制御している。したがって、測位装置内でセンサ間の時計誤差の補正を可能にし、実施の形態1と同様な効果を得ることができる。
【0061】
上記実施の形態1および実施の形態2では、センサが固定の場合を例に説明したが、センサが移動する場合でも、その位置が既知であれば、(5)式、(11)式、(13)式の未数数は増加しないため、目標の位置とセンサ間の時計誤差を算出することができる。
【0062】
実施の形態3.
実施の形態1および実施の形態2では、位置を知りたい1つの目標が時間の経過と共に移動し、それを複数回観測することで目標の位置を算出する方法について説明した。しか本発明の特徴は、異なる位置に存在する目標からの電波を観測し、それから得られる到来時間差を基に目標位置とセンサ間の時計誤差を算出するものである。そのため、異なる位置に複数の目標が存在する場合には、各目標からの電波を各センサで一回受信し、それから得られる各目標の到来時間差を基に、各目標の位置とセンサ間の時計誤差を算出することも可能である。
【0063】
図8はこの発明の実施の形態3による測位装置の機能構成を示すブロック図である。図において、71〜7Jは,位置を知りたい複数の目標で、Jは目標の総数であるとする。複数のセンサ41 〜4Nは、目標71〜7Jから放射された、もしくは目標71〜7Jで反射した電波を受信する手段である。複数到来時間差算出部5は、各センサで受信した電波の到来時間差を算出する手段である。複数測位部6は、各センサ間の電波の到来時間差を基に、センサ間の時計誤差と各目標71〜7Jの位置を算出する手段である。また複数測位部6は、複数一括測位部61を備えている。この複数一括測位部61は、電波の到来時間差からセンサ間の時計誤差を減算した時間に、電波の速度を乗算して得た距離が、電波の伝搬距離の差に等しいとする等式を目標毎に作成し、これらを連立させることで、センサ間の時計誤差と各目標71〜7Jの位置を測位する手段である。
【0064】
次にこの発明の原理について説明する。センサ41 〜4N で、目標71〜7Jから放射された、もしくは目標71〜7Jで反射された電波を受信すると、各センサは電波を受信した到来時間を観測する。その方法は、発明の実施の形態1で説明した方法と同様である。ここではセンサ4nで、目標7jからの電波を観測した結果、その到来時間がτ(j)と観測できたとする。
【0065】
複数到来時間差算出部5では、センサ41 〜4Nで受信した目標71〜7Jからの電波の到来時間差を算出する。いま、目標7jからの電波を観測した結果、センサnでその到来時間がτ(j)、センサmでその到来時間がτ(j)であるとする。この場合複数到来時間算出部5では、(23)式により目標7jからの電波をセンサnとセンサmで受信した到来時間差Δτn,m(j)を算出し、複数測位部6に出力する。
Δτn,m(j)=τn(j) −τm(j) (23)
【0066】
複数測位部6では複数一括測位部61において、複数到来時間差算出部5から出力された電波の到来時間差Δτn,m(j)(n≠m、1≦j≦J)を基に、目標毎に方程式を生成し、それらを解くことで各目標の位置を算出する。具体的処理方法を説明する。
【0067】
センサ1n とセンサ1m で目標7jからの電波を観測した到来時間差Δτn,m(j)には、時計誤差が含まれる。この時計誤差をεn,m (未知数)とすれば、(Δτn,m(j)−εn,m )が時計誤差を含まない到来時間差となる。このため(Δτn,m(j)−εn,m )に電波の速度cを乗じた距離は、センサ1n から目標7jまでの距離とセンサ1m から目標までの距離の差に等しくなる。ゆえに、(24)式が成立する。
【数13】

【0068】
ここで[Xn ,Yn ,Zn ]はセンサ1n の座標(既知)、[Xm ,Ym ,Zm ]はセンサ1m の座標(既知)、[x(j)(j)(j)]は目標の座標(未知)とする。1つの目標に関して上記の様な方程式は、センサ数マイナス1成立する。ゆえに、センサの総数がN個であると、方程式は(N−1)個成立する。また、測位したい目標の総数はJであり、各目標に関して(24)式のような方程式は(N−1)個成り立つため、合計で方程式はで(N−1)×J個成り立つ。
【0069】
一方、(24)式における未知数は、目標7jの位置に関するもの[x(j) ,y(j) ,z(j) ]と時計誤差εn,m に関するものがある。このうち目標位置の未知数[x(j) ,y(j) ,z(j) ]は、目標毎に異なるため3×J個になる。またセンサ間の時計誤差εn,m は、(N−1)個である。ゆえに(N−1)×J個の方程式に含まれる未知数の総数は、((N−1)+3J)個となる。したがって、(25)式の条件を満たす場合、未知数と方程式が等しくなり、未知数を決定することができる。ただし、到来時間差には観測誤差が含まれる場合があるため、(24)式の方程式が一点で交わるとは限らない。この場合は、最小二乗解を求めるようにして、未知数を算出する。
(N−1)×J=(N−1)+3J (25)
例えばセンサ数Nが5の場合、目標の総数Jは4で未知数の決定が可能となる。未知数よりも方程式の数が多い場合には、最小二乗解を求めるようにして、未知数を算出する。
【0070】
複数一括測位部61では、以上のようにして未知数(目標位置と時計誤差)を算出する。
【0071】
以上のように、この実施の形態3によれば、複数到来時間差算出部5により算出した各センサ間の電波の到来時間差に基づいて、センサ間の時計誤差と各目標位置を測位する複数測位部6を備えており、特に複数測位部6では、複数一括測位部61において、センサ間の電波到来時間差から各センサ間の時計誤差を減算した時間に電波の速度を乗算して得た距離が、電波の伝搬距離の差に等しいとする等式を目標毎に作成し、これらの式を連立させることでセンサ間の時計誤差と各目標の位置を算出するようにしている。したがって、測位装置内でセンサ間の時計誤差の補正を可能にする。そのため、センサ間の同期をとる必要がなく、センサの配置やセンサ自体の移動などに対応してセンサ間の同期をとるためのケーブル接続を考慮する必要が無く、また、時計誤差を補正するための送信局を別途設置する必要もない。
【0072】
実施の形態4.
図9はこの発明の実施の形態4による測位装置の機能構成を示すブロック図である。図において、図8に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略する。この実施の形態4の複数測位部6は、複数暫定測位部64、複数ミスマッチ時間算出部65、複数暫定時計誤差算出部66および複数測位処理制御部67を備えている。
【0073】
複数暫定測位部64では、複数測位処理制御部67から出力される電波の補正到来時間差Δτ’n,m(j)を用いて、(26)式により目標7jの暫定位置[x’(j) ,y’(j) ,z’(j) ]を算出する。
【数14】

【0074】
なお、複数測位処理制御部67から出力された電波の補正到来時間差Δτ’n,m(j)が無い場合は、複数到来時間差算出部5から出力された到来時間差Δτn,m(j)そのものを電波の補正到来時間差Δτ’n,m(j)の代わりに、(26)式に代入して目標の暫定位置を算出する。
【0075】
複数暫定測位部64では、実施の形態3の複数一括測位部61の(24)式と異なり、時計誤差を無視した暫定の目標位置を算出する。(26)式における未知数は、各目標の暫定位置[x’(j) ,y’(j) ,z’(j) ]のみであるため、(26)式の様な方程式が3以上成り立てば暫定位置を算出することができる。(26)式の測位方程式は、センサ数マイナス1個で成り立つため、センサ数Nが4以上の場合に、目標の暫定位置を算出することができる。ただし、電波の到来時間差Δτ'n,m(j)には時計誤差が含まれるため、(26)式の測位方程式が1点で交わるとは限らない。その場合には、最小二乗解を求めるようにして目標の暫定位置を算出する。また、未知数以上に方程式が有る場合についても、最小二乗解を求めるようにして各目標の暫定位置を算出する。
【0076】
複数暫定位置測位部64は、上記の様にして各目標の暫定位置を求め、複数ミスマッチ時間算出部65に出力する。
【0077】
複数ミスマッチ時間算出部65では、複数暫定位置測位部64で得られた各目標の暫定位置と各センサの距離の差を電波の速度で除算して得た時間を、各センサ間の電波の到来時間差から減算して、各目標におけるミスマッチ時間として算出する。この処理は(27)式で表される。複数暫定測位部64から出力された「各目標の暫定位置とセンサ1n の距離」と「各目標の暫定位置とセンサ1m の距離」の差を求める。次に、この目標の暫定位置と各センサの距離の差を電波の速度cで除算して時間(式の第2項)を求める。この求めた時間(式の第2項)を、複数到来時間差算出部2から出力された電波の到来時間差Δτn,m(j)から減算してミスマッチ時間ε’n,m(j)とする。
【数15】

【0078】
複数ミスマッチ時間算出部65では、上記の様にして算出したミスマッチ時間を複数暫定時計誤差算出部66に出力する。
【0079】
ミスマッチ時間ε’n,m(j)はセンサ間の時計誤差に起因している。そこで、複数暫定時計誤差算出部66では、各目標のミスマッチ時間に基づいて暫定時計誤差を算出する。複数暫定時計誤差算出部66は図10に示すように複数平均処理部661を備えている。複数平均処理部661では、(28)式に示すように、センサ1n とセンサ1m のミスマッチ時間ε’n,m(j)(1≦j≦J)について平均値を求め、これをセンサ1n とセンサ1m についての暫定時計誤差ε''n,m とする。
【数16】

【0080】
また、複数暫定時計誤差算出部66は、図11に示すように複数重み付け処理部662を備えてもよい。この場合、複数重み付け処理部662で、複数ミスマッチ時間算出部65から出力されたミスマッチ時間ε’n,m(j)に後述の重み付け係数φ(j)を乗算することで重み付けを行い、センサ間の暫定時計誤差ε''n,mとして算出する。
【0081】
上記重み付け係数φ(j)としては、実施の形態1で説明した、目標位置とセンサ位置の幾何学的関係から求めえられる目標位置の推定精度の低下率(幾何学低精度低下率:GDOP)などを利用すればよい。
【0082】
いま、センサ数Nを4とし、複数暫定測位部64により算出された各目標の暫定位置が[x’(j) ,y’(j) ,z’(j) ]であるとする。そして、この目標の暫定位置は、センサ11 とセンサ12 の電波の到来時間差Δτ1,2(j)を用いた方程式と、センサ12 とセンサ13 の電波の到来時間差Δτ2,3(j)を用いた方程式と、センサ13 とセンサ14 の電波の到来時間差Δτ3,4(j)を用いた方程式を基に算出されたものであるとする。
まず、(16)式で定義した関数gn,m を用いて、(29)式に示す行列B(j)を求める。
【数17】

【0083】
ここで、行列B(j)の各成分は、複数暫定測位部64から出力された各目標の暫定位置[x’(j) ,y’(j) ,z’(j) ]を用いて求める。一例を(30)式に示す。
【数18】

【0084】
最後に、(31)式に示す行列U(j)を求める。
(j) =(B(j)H・B(j)-1 (31)
重み付け係数φ(j)は、(32)式のようにして、行列U(j)の対角成分を基に算出する。
【数19】

【0085】
なお(32)式では、重み付け係数φ(j)を行列U(j)の対角成分の3つの要素(U(j)(1,1)、U(j)(2,2)、U(j)(3,3))を用いて算出しているが、このうち1もしくは2つの要素のみで算出したものを用いても良い。
【0086】
複数重み付け処理部662では、(32)式などにより求めた重み付け係数φ(j)を用いて、複数ミスマッチ時間算出部65で算出されたミスマッチ時間ε’n,m(j)を重み付けして、(33)式により暫定時計誤差ε''n,m を算出し出力する。
【数20】

【0087】
複数測位処理制御部67では、電波の到来時間差から複数暫定時計誤差算出部66で算出された暫定時計誤差を減算して補正値を求め、得られた補正値を複数暫定測位部64で用いる電波の補正到来時間差として出力する。また、複数測位処理制御部67は、到来時間差の補正値を算出する過程において、判定基準に従って、前記複数暫定測位部、前記複数ミスマッチ時間算出部および前記複数暫定時計誤差算出部による一連の測位処理を完了させ、各処理で得られた各目標の暫定位置と暫定時計誤差を最終的な各目標の位置と時計誤差として出力するか、または一連の測位処理を再度継続して実施させ測位処理をやり直すように制御する。
【0088】
複数測位処理制御部67では、電波の到来時間差Δτn,m(j)を補正するために、(34)式に示すように、電波の到来時間差Δτn,m(j)から暫定時計誤差ε''n,m を減算し、電波の補正到来時間差Δτ’n,m(j)を求める。この電波の補正到来時間差は、上述したように複数暫定測位部64で各時刻の目標の暫定位置を算出するために用いられる。
Δτ’n,m(j)=Δτn,m(j)−ε''n,m (1≦j≦J) (34)
【0089】
また、複数測位処理制御部67は、測位処理の継続か、完了を判定するために、図12に示すように複数処理回数カウント部671を備えている。複数処理回数カウント部671では、複数暫定測位部64、複数ミスマッチ時間算出部65および複数暫定時計誤差算出部66で一連の処理を実施した回数をカウントし、カウント数が予め設定された値(判定基準)に達した場合、一連の測位処理を完了させると判定する。
【0090】
このとき、複数測位処理制御部67は、最後の処理で複数暫定測位部64から出力された各目標の暫定位置[x’(j) ,y’(j) z’(j) ]を、求めるべき各目標の位置として出力し、最後の処理で複数暫定時計誤差算出部66から出力された暫定時計誤差ε''n,m をセンサ1n とセンサ1m の時計誤差として出力する。一方、複数処理回数カウント部671においてカウント数が予め設定された値に達成していない場合には一連の測位処理を再度継続して実施させると判定し、複数測位処理制御部67は、(34)式により到来時間差を補正して複数暫定測位部64に電波の補正到来時間差を出力し、一連の測位処理をやり直す。
【0091】
また、複数測位処理制御部67は、図13に示すように複数残差処理部672を備えるようにしてもよい。この場合、複数残差処理部672では、現在の処理で求めた目標の暫定位置と一つ前の処理で求めた目標の暫定位置の差(残差)を計算して、この残差が予め設定した値(判定基準)よりも小さい場合、一連の測位処理を完了すると判定する。
【0092】
このとき、複数測位処理制御部67は、現在の処理で求めた目標の暫定位置と暫定時計誤差を、求めるべき各目標の位置と時計誤差として出力する。一方、複数残差処理部672において、残差が予め設定した値より大きい場合には、一連の測位処理を再度継続して実施させると判定し、複数測位処理制御部67は、(34)式により到来時間差を補正して複数暫定測位部64に電波の補正到来時間差を出力し、一連の測位処理をやり直す。
【0093】
また、一連の測位処理の継続か、完了の判定を、複数暫定時計誤差算出部66で求めた暫定時計誤差の残差に基づいて行っても良いし、あるいは暫定時計誤差の残差と目標の暫定位置の残差の両方を用いて行うようにしても良い。
【0094】
さらに、複数測位処理制御部67は、複数処理回数カウント部671と複数残差処理部672の両方を備え、一連の測位処理の回数と目標位置の残差、または時計誤差の残差を組み合わせて一連の測位処理の継続もしくは完了の判定を行うようにしても良い。
【0095】
以上のように、この実施の形態4によれば、複数測位部6では、複数暫定測位部64により、入力されるセンサ間の電波の補正到来時間差に電波の速度を乗算して得た距離が、電波の伝搬距離の差に等しいとする等式を目標毎に作成し、これらの式を目標毎に解くことで各目標の暫定位置を算出し、複数ミスマッチ時間算出部65において、各目標の暫定位置と各センサの距離の差を電波の速度で除算して得た時間を、各センサ間の電波の到来時間差から減算して、各目標におけるミスマッチ時間として算出し、複数暫定時計誤差算出部66により、その算出されたミスマッチ時間に基づいて各センサ間の暫定時計誤差を算出し、複数測位処理制御部67において、電波の到来時間差から複数暫定時計誤差算出部66で算出された暫定時計誤差を減算して電波の補正到来時間差を求めて複数暫定測位部64に出力すると共に、判定基準に従って、一連の測位処理を完了させて、各処理で得られた各目標の暫定位置と暫定時計誤差を最終的な各目標の位置と時計誤差として出力するか、または一連の測位処理を再度継続して実施させるように制御している。したがって、測位装置内でセンサ間の時計誤差の補正を可能にし、実施の形態3と同様な効果を得ることができる。
【0096】
上記実施の形態1および実施の形態2では、1つの目標が移動することを利用し、各観測時間における目標の位置と時計誤差を算出する方法を説明した。また実施の形態3および実施の形態4では、複数の目標が存在することを利用し、各目標の位置と時計誤差を算出する方法を説明した。そのため、2つの方法を組み合わせ、複数の目標存在し、かつ移動することを利用し、各観測時間における各目標の位置と時計誤差を算出することも可能である。
【0097】
実施の形態5.
実施の形態1〜4では、目標から反射もしくは目標から放射された電波を複数のセンサで受信し、受信した電波の到来時間の差を利用して目標位置を計算する方法を説明した。しかし電波の送受信方向を逆にし、目標において電波を観測させておき、目標における電波観測結果を利用して目標位置を算出することも可能である。そこで、実施の形態5では、目標における電波の受信時間を利用して目標位置を算出する場合に、この発明を適用する例を示す。
【0098】
なお、以下の説明では、この発明によって位置を求める目標の具体例として、携帯電話などの移動体通信システムを想定し、目標のことを移動端末と呼ぶこととする。またセンサの具体例として、移動体通信網で用いられる基地局装置を想定する。
【0099】
すでに実用化されている移動体通信システムにおける基地局装置は、移動体端末に対して無線信号を送信する機能(送信局機能)と、移動端末からの無線信号を受信する機能(受信局機能)との双方を兼ね備えている場合が多いが、ここでは基地局装置の有する機能面に着目し、送信局と受信局とを別体のものとして説明することとする。しかし送信局と受信局とが一体化されていても何ら問題はない。
【0100】
図14はこの発明の実施の形態5による測位装置の機能構成を示すブロック図である。図において、送信局81 〜8Nは、移動端末10〜10に対して電波を放射すると共に、電波を放射した時間である電波放射時間を基地局制御装置15に伝送する手段とする。ここでNは送信局の総数で、Jは移動端末の総数とする。
【0101】
移動端末10〜10は、送信局から放射された電波を受信した電波到来時間を観測して受信局9に伝送すると共に、受信した電波がどの送信局のものであるかを特定できる情報(送信局情報)を受信局9に伝送する手段である。
【0102】
受信局9は、移動端末から伝送された電波到来時間と送信局情報を受信し、それらを基地局制御装置15に伝送する手段である。
【0103】
基地局制御装置15は、受信局9から伝送された電波到来時間及び送信局情報と、送信局8(1≦n≦N)から伝送された電波放射時間を基に,送信局間の時計誤差と各移動端末の位置を算出する手段である。また基地局制御装置15は、伝搬時間差算出部13と、測位部11を備えている。
【0104】
伝搬時間差算出部13は、受信局9から伝送された電波到来時間及び送信局情報と、送信局8(1≦n≦N)から伝送された電波放射時間を基に,電波到来時間と電波放射時間の差である伝搬時間を求め、さらに伝搬時間の差である伝搬時間差を求める手段である。
【0105】
測位部11は、各送信局間の伝搬時間差を基に、送信局間の時計誤差と各移動端末の位置を算出する手段である。
【0106】
次に、この発明の実施の形態5による測位装置の動作について説明する。送信局81〜8は、それぞれ自局内に保持する時計が所定の時刻を示したときに、移動端末10〜10に対して電波を放射するとともに、電波放射時間を基地局制御装置15に通知する。
【0107】
以降の説明において、送信局81〜8はいずれも自局内の時計が時刻t(同一の時刻)を示した場合に電波を放射することとする。また,送信局81〜8が自局に保有する時計は、時刻同期がなされていないがゆえに、それぞれ固有の時計誤差(送信局81〜8それぞれについて異なっていてもよい)を有している。
【0108】
ここで、時計誤差を一切含まない時間を「標準時間」と呼ぶこととし、送信局8(1≦n≦N)の自局内時計に生じている標準時間に対する時計誤差をε(εだけ標準時間より遅れている)と表す。すなわち、標準時間では送信局8の電波放射時間はt+εと表される。
【0109】
移動端末10(1≦j≦J)では、送信局81〜8Nのいずれかが放射した電波を受信し、その受信時間(電波到来時間)とその送信局情報を観測して、観測した電波到来時間とその電波を送信した送信局情報とを受信局9に伝送する。
【0110】
ここで、電波到来時間と送信局情報を観測する方法としては、例えば送信局が放射する電波の信号波形を記憶しておき、記憶している信号波形(基準信号)と受信信号を相関処理するようにする方法がある。基準信号と受信信号との相関の程度を数値(例えば距離値)で表し、この数値が所定の条件を満たす時刻を電波到来時間として推定する。ここでいう所定の条件とは、例えば相関の程度を表す数値が所定値以上となるか否かの条件が相当するであろう。このようにして、相関の程度を表す数値が所定値以上となるような基準信号に基づいて送信局を特定し、特定した送信局を送信局情報とする。
【0111】
なお移動端末では、すべての送信局の信号波形をサンプリングして記憶しておく必要はなく、送信局の信号波形の相関を判断する上で必要となる特徴量のみを記憶しておけば十分である。
【0112】
このようにして、移動端末10(1≦j≦J)において観測した送信局8(1≦n≦N)の電波到来時間をT(j)とする。送信局8から移動端末10に電波が到達するまでに要する伝搬時間の真値をτ'(j)とし、移動端末10の時計で発生している時計誤差をξ(j)とすれば、移動端末10での電波到来時間T(j)は(35)式で表される。
(j)=t+ε+τ'(j)+ξ(j) (35)
【0113】
移動端末10(1≦j≦J)は、送信局8からの電波到来時間T(j)(1≦n≦N、1≦j≦J)と、この電波を送信してきた送信局8を識別する情報(送信局情報)を受信局9に通知する。
【0114】
受信局9は、移動端末10(1≦j≦J)から伝送された電波到来時間T(j)(1≦n≦N、1≦j≦J)と送信局情報とを受信し、その電波到来時間T(j)と送信局情報を基地局制御装置15に伝送する。
【0115】
基地局制御装置15において、伝搬時間差算出部13は、受信局9から得た送信局8の電波到来時間T(j)と、送信局8から得た電波放射時間tから、(36)式によって送信局8から移動端末10に電波が伝搬するまでに要した時間(伝搬時間τ(j))を求める。
τ(j)=T(j)−t (1≦n≦N、1≦j≦J) (36)
【0116】
次に、送信局8と移動端末10の伝搬時間τ(j)と、送信局8(m≠n、1≦m≦N)と移動端末10の伝搬時間τ(j)を基に、前記2つの伝搬時間の差Δτn,m(j)を(37)式により算出する。
Δτn,m(j)=τ(j)−τ(j) (37)
【0117】
なお、伝搬時間差Δτn,m(j)(1≦n≦N、1≦j≦J)は、「送信局8から放射された電波が移動端末10で受信されるまでに要した時間」と「送信局8から放射された電波が移動端末10で受信されるまでに要した時間」の差であるため、実施の形態1〜4で到来時間差と読んでいるものと、本質的に同じものである。
【0118】
このようにして、伝搬時間差算出部13は、計算した伝搬時間差Δτn,m(j)を測位部11に出力する。
【0119】
測位部11は、伝搬時間差算出部13から伝送された伝搬時間差Δτn,m(j)を基に、移動端末位置と送信局間の時計誤差を算出する。以下に、時計誤差を算出する具体的な処理方法を説明する。
【0120】
(37)式に(36)式と(35)式を代入すると(38)式が得られる。
Δτn,m(j)=τ(j)−τ(j)
=T(j)−t−(T(j)−t)
=t+ε+τ'(j)+ξ(j)−t−(t+ε+τ'(j)+ξ(j)−t)
=τ'(j)−τ'(j)+ε−ε (38)
【0121】
(38)式から明らかなように、伝搬時間差算出部13から伝送された伝搬時間差Δτn,m(j)は、送信局8と8との時計誤差ε、εが含んだ値である。この時計誤差の差(ε−ε)をΔτn,m(j)から取り除けば、時計誤差を含まない伝搬時間差が得られる。
【0122】
そこで、2送信局間(送信局8、8)の時計誤差(ε−ε)を未知数εn,mで表すと、(Δτn,m(j)−εn,m )が時計誤差を含まない伝搬時間差である。そして(Δτn,m(j)−εn,m )に電波の速度cを乗じた距離は、「送信局8 から移動端末10までの距離」と「送信局8 から移動端末10までの距離」の差に等しくなる。ゆえに、(39)式が成立する。
【数21】

【0123】
(39)式において、[X,Y,Z]は送信局8の座標であり、[X,Y,Z]は送信局8の座標である。送信局8、8は座標は送信局据え付け時に予め取得することができるから、ここでは既知量である。一方で、[x(j),y(j),z(j)]は移動端末10の座標である。移動端末10は利用者の移動に伴って時々刻々その位置を変えていくので、未知数である。
【0124】
移動端末10〜10のそれぞれの移動端末について、送信局の組み合わせにより(nとmを入れ替えることで)、送信局数Nから1減じた数の個数の(39)式で示した方程式が得られる。一方、移動端末の総数はJであるので、結局(39)式に示した方程式は合計で(N−1)×J個得られる。
【0125】
このようにして得られる(N−1)×J個の方程式を連立方程式として、すべての未知数を定めることができるかどうかを検討する。(39)式では、移動端末の位置は[x(j) ,y(j) ,z(j)]として表されるが、これらx座標、y座標、z座標は独立した3つの未知数である。1個の移動端末につき3つの未知数があるので、J個の移動端末では未知数は3×J個となる。また送信局間の時計誤差εn,mも同じく未知数であり、その個数は(N−1)である。
【0126】
以上から、(N−1)×J個の連立方程式に含まれる未知数の総数は、(3×J+(N−1))個となる。一般に、少なくとも方程式の個数が未知数の個数と等しい場合((40)式が成立する場合)には、連立方程式から未知数を決定することができる。
(N−1)×J≧(N−1)+3×J (40)
【0127】
例えば送信局数N=5、移動端末数J=4とすると、(40)式は満たされるので未知数の決定が可能となる。なお未知数よりも方程式の数が多い場合も、最小二乗解を求めるようにして、未知数を算出する。特に、伝搬時間差には様々な誤差が含まれるので、方程式の個数が未知数よりも多くなると、方程式の組み合わせ次第で異なる解が求められることも考えられる。このような場合には、最小二乗解を求めるようにして、未知数を算出してもよい。
【0128】
以上のように、この実施の形態5によれば、基地局制御装置15において、各送信局間の時計誤差を含んだ状態であっても、送信局間の時計誤差の個数と移動端末位置の座標を特定する上で十分な方程式を解くことで、移動端末の位置を測定することが可能となる。
【0129】
なお、この発明の実施の形態5による測位装置では、説明を理解容易とする目的で、複数の送信局はいずれも自局内時計が同一の時刻tを示した場合に一斉に電波を放射する構成とした。しかし、送信局の電波放射時間の長さや時計誤差の大きさに比べて、移動端末の移動量が十分に少ない場合であれば、各送信局は異なる時間に電波を放射しても構わないことは容易に理解されよう。したがってこの発明の特徴とするところは、複数の送信局が異なる時間に電波を放射する場合にも適用可能である。
【0130】
実施の形態6.
実施の形態5による測位装置は、N個の送信局の位置及び電波放射時間、さらにはJ個の移動端末における電波到来時間と送信局情報とを組み合わせて(N−1)×J個の方程式を構成し、これらの方程式を連立方程式として扱うことにより、(N−1)+3×J個の未知数を一括して定めるものであった。しかし、それよりも少ない数の方程式を複数回解くことで、伝搬時間差を補正していくことも可能である。この発明の実施の形態6による測位装置はかかる特徴を有するものである。
【0131】
図15は、この発明の実施の形態6による測位装置のうち、測位部11の詳細な構成を示すブロック図である。なお、その他の部位については、特段の補足がない限りにおいて、実施の形態5の測位装置と同様である。
【0132】
この発明の実施の形態6の測位装置においても、伝搬時間差算出部13は送信局8(1≦n≦N)と移動端末10(1≦j≦J)の伝搬時間τ(j)と、送信局8(m≠n、1≦m≦N)と移動端末10の伝搬時間τ(j)との伝搬時間差Δτn,m(j)を出力する。
【0133】
暫定測位部114は、測位処理部117が後述の方法により算出する補正伝搬時間差Δτ’n,m(j)か、あるいは伝搬時間差算出部13が出力する伝搬時間差Δτn,m(j)のいずれかを用いて、(41)式により移動端末10jの暫定位置[x’(j) ,y’(j) ,z’(j) ]を算出する。
【数22】

【0134】
なお、(41)式は補正伝搬時間差Δτ’n,m(j)を用いた場合の表記となっているが、伝搬時間差Δτn,m(j)を用いる場合は、Δτ’n,m(j)をΔτn,m(j)に置き換える。伝搬時間差Δτn,m(j)を用いる場合とは、測位部11が初期状態その他の状態にあって、まだ有効な補正伝搬時間差Δτ’n,m(j)を算出していない状態である。
【0135】
暫定測位部114は、時計誤差を無視した暫定の移動端末位置を算出する。(41)式における未知数は、各移動端末の暫定位置[x’(j) ,y’(j) ,z’(j) ]のみであるため、(41)式のような方程式が3以上成り立てば暫定位置を算出することができる。(41)式の測位方程式は、(使用可能な送信局数−1)個作成可能であるから、送信局数Nが4以上の場合に、未知数よりも方程式の数が多くなり、移動端末の暫定位置が算出される。
【0136】
なお、補正伝搬時間差Δτ'n,m(j)は時計誤差を含んでいるため、(41)式の測位方程式が1点で交わるとは限らないが、その場合には、最小二乗解を求めるようにして移動端末の暫定位置を算出する。また、未知数以上に方程式がある場合についても、最小二乗解を求めるようにして各移動端末の暫定位置を算出する。
【0137】
ミスマッチ時間算出部115は、(42)式によってミスマッチ時間ε'n,m(j)を算出する。ミスマッチ時間とは、送信局間の時計誤差に起因する伝搬時間の差である。まず暫定測位部114から出力された「各移動端末の暫定位置と送信局8の距離」と「各移動端末の暫定位置と送信局8の距離」の差を求める。次に、この移動端末の暫定位置と各送信局の距離の差を電波の速度cで除算して時間((42)式右辺の第2項)を求める。この求めた時間((42)式右辺の第2項)を、伝搬時間差算出部13から出力された電波の伝搬時間差Δτn,m(j)から減算してミスマッチ時間ε'n,m(j)とするのである。
【数23】

【0138】
暫定時計誤差算出部116は、ミスマッチ時間算出部115が算出した各移動端末のミスマッチ時間に基づいて暫定時計誤差を算出する。暫定時間誤差を算出する方法としては、複数の移動端末におけるミスマッチ時間の平均値を暫定時間誤差として推定する方法、あるいは、移動端末ごとに重み係数を定め、移動端末ごとのミスマッチ時間に重み付けをして暫定時間誤差を算出する方法などを用いればよい。以下にこれらの方法の具体的な処理手順を示す。
【0139】
(平均値を暫定時間誤差として推定する方法)
この方法は、(43)式に示すように、送信局8と送信局8のミスマッチ時間ε’n,m(j)(1≦j≦J)について平均値を求め、これを送信局8と送信局8についての暫定時計誤差ε''n,m として推定する方法である。
【数24】

【0140】
(移動端末ごとにミスマッチ時間を重み付けする方法)
この方法は、ミスマッチ時間ε’n,m(j)に、移動端末ごとの重み付け係数φ(j)を乗算することで重み付けを行い、送信局間の暫定時計誤差ε''n,mとして算出する方法である。
【0141】
重み付け係数φ(j)としては、実施の形態2で説明した移動端末位置と送信局位置の幾何学的関係から求めえられる移動端末位置の推定精度の低下率(幾何学的精度低下率:GDOP)などを利用する。以下に、重み付け係数φ(j)の算出方法の一例について説明する。
【0142】
いま送信局数Nを4とし、暫定測位部114により算出された各移動端末の暫定位置が[x’(j) ,y’(j) ,z’(j) ]であるとする。この移動端末の暫定位置は、暫定測位部114によって算出されたものである。説明をより具体的にするために、これらの移動端末の暫定位置が、送信局8と送信局8の伝搬時間差Δτ1,2(j)を用いた方程式と、送信局8と送信局8の伝搬時間差Δτ2,3(j)を用いた方程式と、送信局8と送信局8の伝搬時間差Δτ3,4(j)を用いた方程式を基に算出されたものであるとする。
【0143】
まず関数gn,m を、(44)式で定義する。
【数25】

【0144】
次に(44)式で定義した関数gn,m用いて、(45)式に示す行列B(j)を求める。
【数26】

【0145】
ここで、行列B(j)の各成分は、暫定測位部114から出力された各移動端末の暫定位置[x’(j) ,y’(j) ,z’(j) ]を用いて求める。一例を(46)式に示す。
【数27】

【0146】
最後に、(47)式に示す行列U(j)を求める。
(j) =(B(j)H・B(j)-1 (47)
なおBは、行列Bの複素共役転置を表し、B−1は、行列Bの逆行列を表すものとする。重み付け係数φ(j)は、(48)式のようにして、行列U(j)の対角成分を基に算出する。
【数28】

【0147】
なお(48)式では、重み付け係数φ(j)を行列U(j)の対角成分の3つの要素(U(j)(1,1)、U(j)(2,2)、U(j)(3,3))を用いて算出しているが、このうち1個もしくは2個の要素のみで算出したものを用いてもよい。
【0148】
このようにして求めた重み付け係数φ(j)を用いて、すでに算出されているミスマッチ時間ε''n,m(j)を重み付けし、(49)式により暫定時計誤差ε''n,m を算出する。
【数29】

【0149】
以上が、暫定時計誤差算出部116における暫定時計誤差の算出方法についての説明である。
【0150】
続いて、測位処理制御部117は、暫定時計誤差算出部116で算出された暫定時計誤差を、伝搬時間差から減算することにより補正値を求める。
【0151】
そして所定の判定基準を満たす場合には、ここまでの処理で求められている各移動端末の暫定位置と暫定時計誤差とを図示せぬ外部機器に最終的な移動端末位置と時計誤差として出力する。一方、この判定基準を満たさない場合に、求めた補正値を電波の補正伝搬時間差として暫定測位部114に出力して測位処理を繰り返させる。
【0152】
測位処理制御部117において算出される補正伝搬時間差Δτ’n,m(j)は、(50)式に示すように、伝搬時間差Δτn,m(j)から暫定時計誤差ε''n,m を減算することで得る。
Δτ’n,m(j)=Δτn,m(j)−ε''n,m (1≦j≦J) (50)
【0153】
(50)式で求めた補正伝搬時間差Δτ’n,m(j)は、所定の判定基準の該非に応じて、最終的な時計誤差として用いられるか、暫定測位部114に入力する電波の補正伝搬時間差として用いられるかのいずれかとなる。そこで、続いてこの所定の判定基準の例を示す。
【0154】
(判定基準の例1)
判定基準の最も簡単な構成例は、補正伝搬時間差を計算した回数に基づいて終了(判定基準を満たす)/継続(判定基準を満たさない)を判断するものである。すなわちそれまでの計算回数が所定の回数に達したら、測定を一旦終了して外部機器に測定結果を出力すると共に、計算回数を0に戻す。またそれまでの計算回数が所定の回数に達していない場合は補正伝搬時間差を計算するたびに1ずつ回数を増加させ、電波の補正伝搬時間差として暫定測位部114に出力する。
【0155】
(判定基準の例2)
また、現在の処理で求めた移動端末の暫定位置と一つ前の処理で求めた移動端末の暫定位置の差(残差)を計算して、この残差が所定の値域に含まれるか否かに基づいて判定基準の該非を判断してもよい。すなわち、例えば残差が予め設定した値(判定基準)よりも小さい場合、一連の測位処理を完了し、そうでない場合に電波の補正伝搬時間差として暫定測位部114に出力して測位処理を繰り返させるのである。
【0156】
なお、移動端末の暫定位置の残差の他に、暫定時計誤差の残差を用いる方法もあるし、両方を組み合わせて利用しても構わない。
【0157】
また残差に基づく終了条件の判断と回数に基づく終了条件の判断を組み合わせてもよい。組み合わせ方としては、残差に基づく条件と回数に基づく条件との双方を同時に満たすまで終了しない、というようにしてもよいし、いずれか一方が満たされれば他方が満たされなくても終了する、というようにしてもよい。
【0158】
以上のように、この発明の実施の形態6による測位装置では、送信局の時計誤差と移動端末位置を決定するために必要となる条件が十分に満たされない場合(方程式の数が不十分)であっても、暫定的に送信局の時計誤差と移動端末位置を決定していく過程を繰り返すことで、送信局の時計誤差と移動端末の位置とを推定することが可能である。
【0159】
携帯電話や無線LANシステムなどの移動体通信システムでは、移動端末位置を測定する上で十分な個数の送信局(基地局)が利用可能であるとは限らない。かかる場合であっても、この発明の実施の形態6による測位装置は移動端末位置の測位を可能とするのである。
【0160】
なお、この発明の実施の形態6でも、実施の形態5と同様に、各送信局は異なる時間に電波を放射するようにしても構わない。
【0161】
実施の形態7.
実施の形態5および実施の形態6では、複数の送信局が重畳的にカバーするエリアに複数の移動端末が存在することを前提とし、送信局の位置と各移動端末における電波到来時間を用いて各移動端末の位置推定を行うことを特徴としていた。
【0162】
ところで移動体通信システムの場合、移動端末は利用者の移動とともにその位置を時々刻々と変化させていく。その一方で、送信局間の時計誤差はそれほど短時間には変化しない。このような知見に基づけば、送信局間の時計誤差が変化する期間に比べて移動端末の移動時間が十分短い場合には、1つの移動端末から異なる位置における電波到来時間を複数個取得して、これらの電波到来時間を複数の移動端末の電波到来時間に見立てることで、この発明の原理を適用することが可能であることが理解されよう。この発明の実施の形態7における測位装置はかかる特徴を有するものである。
【0163】
図16はこの発明の実施の形態7による測位装置の機能構成を示すブロック図である。この構成では、移動端末は移動端末10のみが1個だけ存在するものとする。その他、図14と同一の符号を付した構成要素については、この実施の形態7の説明において特別に述べるものを除き、実施の形態5と同様である。
【0164】
次にこの発明の実施の形態7による測位装置の動作について説明する。送信局81 〜8は、移動端末に対して複数回電波を放射する。ここでは電波を放射する回数をKとし、送信局が電波を放射する時刻をt(1≦k≦K)とする。
【0165】
送信局81〜8は、自送信局の時計を基準とした時刻tに電波を一斉に放射する。しかし送信局81〜8N間では、時刻同期がなされていないため、各送信局の電波の放射時間には時計誤差に相当する差違が存在することとなる。標準時刻tにおいて、送信局8(1≦n≦N)の時計誤差がεであるとすると、送信局8が電波を放射した標準時刻は、t+εとなる。
【0166】
ここで、時計誤差の変動が移動端末の移動速度に対して無視できるほど十分に緩やかに行われるものとする。送信局が電波を放射していた時間t−tが短ければ、時刻tにおける送信局8(1≦n≦N)の時計誤差は、時刻tにおける時計誤差εと等しくなる。ゆえに以下では、時刻t〜tの間で議論をするため、送信局8の時計誤差をε(一定)とする。
【0167】
ところで、送信局81〜8は、電波を放射した電波放射時間を基地局制御装置15に伝送する役割ももつ。この電波放射時間の基準は各送信局の時計であるため、標準時刻t+εに送信局8は電波を放射することとなるものの、送信局8が基地局制御装置15に伝送する電波放射時間はtのままである。
【0168】
移動端末10は、送信局81〜8から放射された電波を受信した電波到来時間とその送信局情報を観測し、観測した電波到来時間と送信局情報を受信局9に伝送する。移動端末10における電波到来時間と送信局を特定する方法については、すでに実施の形態5で説明しているので省略する。
【0169】
移動端末10において、時刻tに送信局8(1≦n≦N)から放射された電波到来時間がT(k)と観測したとする。送信局8から移動端末10に電波が到達するまでに要する伝搬時間の真値をτ'(k)、移動端末10の時計と標準時刻のずれである移動端末10の時計誤差をξとすれば、電波が放射された標準時刻はt+εであるため、電波到来時間T(k)は(51)式となる。
(k)=t+ε+τ'(k)+ξ (51)
【0170】
移動端末10では、電波到来時間T(k)(1≦n≦N、1≦k≦K)と、電波到来時間T(k)が送信局8からの電波であるとする送信局情報を受信局9に伝送する。
【0171】
基地局制御装置15において、伝搬時間差算出部13は、まず受信局9から伝送された送信局8の電波到来時間T(k)と、送信局8から伝送された電波放射時間tを基に、時刻tにおいて送信局8から移動端末10に電波が伝搬するまでに要した時間である伝搬時間τ(k)を(52)式により算出する。
τ(k)=T(k)−t (52)
【0172】
それとともに、伝搬時間差算出部13は、送信局8と移動端末10の伝搬時間τ(k)と、送信局8(m≠n、1≦m≦N)と移動端末10の伝搬時間τ(k)の差である伝搬時間差Δτn,m(k)を(53)式により算出する。
Δτn,m(k)=τ(k)−τ(k) (53)
【0173】
最後に上記により求めた伝搬時間差Δτn,m(k)を、測位部11に出力する。
【0174】
以後、測位部11は、実施の形態5と同様にして移動端末位置を測定する。移動端末位置の算出にあたっては、実施の形態5における測位部11の算出式((39)式以下)複数移動端末の位置[x(j),y(j),z(j)]を複数のkにおける[x(k),y(k),z(k)]に置き換えて処理をすればよいことは、容易に理解されよう。
【0175】
以上から明らかなように、この発明の実施の形態7による測位装置によれば、送信局がカバーするエリア内に移動端末が1台しかない場合であっても、この移動端末が利用者の移動に伴って移動するのであれば、移動端末における異なる時刻における電波到来時間を用いることで、移動端末の位置を推定することが可能となる。
【0176】
なお、この発明の実施の形態7による測位装置の説明では、移動端末の台数を1としているが、これに限る必要があるわけではない。(40)式を変形すると移動端末の台数Jについて次のような条件(54)式が得られる。
【数30】

【0177】
この条件によれば、例えばN=5の場合Jは4以上であることが要求される。しかし、この条件を満たさないような台数の移動端末しかない場合であっても、この発明の実施の形態7による測位装置の効果が発揮されることは容易に理解されるであろう。
【0178】
なお、この発明の実施の形態7による測位装置では、各送信局は複数回に亘って電波を放射するが、各回の電波放射時間を他の送信局と同一にする必要はない。すなわち、送信局間での電波放射時間がずれていても、その間に移動端末が十分に緩やかに移動する場合は電波放射時間のずれの影響を無視できるのである。
【0179】
実施の形態8.
なお、実施の形態7の測位装置の測位部11において、測位処理の対象となっている移動端末の移動の仕方に合わせて予め想定した運動モデルを備え、この運動モデルに基づいて測位処理を行うようにしてもよい。運動モデルとは、移動端末の位置と時間との関係を予め規定したものであって、例えば移動端末の移動が等速直線運動であるか、等加速度直線運動であるかといった情報を用いて、異なる時刻間の位置関係を予測するのに用いる。
【0180】
このような運動モデルを導入することで、この発明の適用範囲をさらに広げることができる。具体的には送信局からの電波放射回数を低減し、短い時間で移動端末の位置を推定することが可能となる。
【0181】
以下に運動モデルとして移動端末が等速直線運動を行っている場合を例に説明する。等速直線運動の場合、時刻tk における移動端末位置[x(k) ,y(k) ,z(k) ]は(55)〜(58)式のように表すことができる。
(k) =x(1) +vx ・Δtk (55)
(k) =y(1) +vy ・Δtk (56)
(k) =z(1) +vz ・Δtk (57)
Δt =t −t (58)
【0182】
ここで[x(1),y(1),z(1)]は、時刻tにおける移動端末の座標(未知)とし、vは移動端末のx軸方向の速度(未知)、vは移動端末のy軸方向の速度(未知)、vは移動端末のz軸方向の速度とする。これを(39)式に代入したものが運動モデル測位部123で作成する方程式で、(59)式のようになる。
【数31】

【0183】
これらの方程式は、(N−1)×K個得られる。一方未知数は、時刻t1 における移動端末の位置[x(1),y(1),z(1)]と移動端末の速度[vx,vy,vz ]、送信局間の時計誤差εn,mとなる。移動端末の位置に関する未知数(観測時刻t1 の位置と移動端末の速度)の数は、観測回数K によらず一定な値6であり、送信局間の時計誤差の数は(N−1)となる。したがって、未知数の数以上に方程式が得られる条件は、(60)式のようになる。
(N−1)×K≧(N−1)+6 (60)
【0184】
ただし、伝搬時間差には観測誤差が含まれる場合があるため、(59)式の方程式が一点で交わるとは限らない。この場合、最小二乗解を求めるようにして、未知数を算出する。なお、未知数以上に方程式の数がある場合も、最小二乗解を解くようにして未知数を算出する。
【0185】
例えば送信局数Nが5の場合、K≧5/2となるため、観測回数K=3の場合においても未知数を推定することが可能である。この発明の実施の形態7では、N=5の場合、K≧4であるため、送信局から放射される電波の放射回数がより少ない場合でも移動端末位置を算出することが可能となる。
【0186】
なお、この発明の実施の形態8による測位装置では、実施の形態7の測位装置と同じ理由により、各送信局の電波放射時間を他の送信局と同一にする必要はない。
【0187】
実施の形態9.
また、実施の形態7及び8の構成による測位装置の測位部11に替えて、実施の形態6の測位部11を採り入れるようにしてもよい。このようにすれば、送信局の時計誤差と移動端末の位置を未知数とする方程式の数が十分に整わないような環境下であっても、移動端末の位置を推定することが可能となる。
【0188】
特に、測定対象となる移動端末が存在する領域をカバーする送信局の個数が少ない場合(Nが小さい値の場合)や送信局の個数Nに対して移動端末の台数Jが十分でない場合であっても、異なる時間における移動端末の電波到来時間を利用し、さらに時計誤差と移動端末の位置を暫定的に算出する処理を繰り返して一定の基準を満たした場合に出力することとすれば、送信局間に時計誤差がある場合でも移動端末の位置を測位することが可能となるのである。
【0189】
なお、実施の形態1から9で示した測位方法は、電波を用いた場合を例にとって説明したものの、これに限らず、音波や光波などに用いた場合も、本方法を適応することは可能である。また、移動端末の位置を3次元で測位する場合を説明してきたが、2次元の場合でも、高度方向は地上の表面に移動端末が存在するなどの条件を用いて計算すれば可能である。さらにまた、以上述べたこの発明の測位部の機能は、ソフトウェアプログラムに基づいてCPUを動作させることにより実行できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明の適応例としては、例えば、同期が取れていない基地局を用いたセルラー通信において、移動端末からの電波を利用して基地局間の時計誤差を算出し、基地局間の同期を確立することなどが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】この発明の実施の形態1による測位装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る測位部の他の機能構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態2による測位装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る暫定時計誤差算出部の構成例を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る暫定時計誤差算出部の他の構成例を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る測位処理制御部の構成例を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る測位処理制御部の他の構成例を示すブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態3による測位装置の機能構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態4による測位装置の機能構成を示すブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態4に係る複数暫定時計誤差算出部の構成例を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態4に係る複数暫定時計誤差算出部の他の構成例を示すブロック図である。
【図12】この発明の実施の形態4に係る複数測位処理制御部の構成例を示すブロック図である。
【図13】この発明の実施の形態4に係る複数測位処理制御部の他の構成例を示すブロック図である。
【図14】この発明の実施の形態5に係る測位装置の構成例を示すブロック図である。
【図15】この発明の実施の形態6に係る測位装置の構成例を示すブロック図である。
【図16】この発明の実施の形態7に係る測位装置の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0192】
1 〜1N センサ、2 到来時間差算出部、3 測位部、31 一括測位部、32 運動モデル設定部、33 運動モデル測位部、34 暫定測位部、35 ミスマッチ時間算出部、36 暫定時計誤差算出部、37 測位処理制御部、361 平均処理部、362 重み付け処理部、371 処理回数カウント部、372 残差処理部、4〜4 センサ、5 複数到来時間差算出部、6 複数測位部、61 複数一括測位部、64 複数暫定測位部、65複数ミスマッチ時間算出部、66 複数暫定時計誤差算出部、67 複数測位処理制御部、661 複数平均処理部、662 複数重み付け処理部、671 複数処理回数カウント部、672 複数残差処理部、7 目標、81 〜8N 送信局、9 受信局、10 移動端末、101〜10J 移動端末、11 測位部、13 伝搬時間差算出部、15 基地局制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標から放射もしくは反射された電波を複数のセンサで受信し、受信した電波の到来時間差に基づいて目標の位置を算出する測位装置において、
各センサで複数回受信された電波の到来時間差を算出する到来時間差算出部と、
算出された各センサ間の電波の到来時間差に基づいて、センサ間の時計誤差と電波を受信した各時刻における目標位置を算出する測位部を備えたことを特徴とする測位装置。
【請求項2】
測位部は、センサ間の電波の到来時間差から各センサ間の時計誤差を減算した時間に電波の速度を乗算して得た距離が、電波の伝搬距離の差に等しいとする等式を電波の受信時刻毎に作成し、これらの式を連立させることでセンサ間の時計誤差と電波を受信した各時刻における目標の位置を算出する一括測位部を備えたことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
測位部は、
目標の運動モデルを事前に設定する運動モデル設定部と、
センサ間の電波の到来時間差から各センサ間の時計誤差を減算した時間に電波の速度を乗算して得た距離が、電波の伝搬距離の差に等しいとする等式を、設定された運動モデルに対応して電波の受信時刻毎に作成し、これらの式を連立させることでセンサ間の時計誤差と目標の位置を算出する運動モデル測位部を備えたことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項4】
測位部は、
入力されるセンサ間の電波の補正到来時間差に電波の速度を乗算して得た距離が、電波の伝搬距離の差に等しいとする等式を、電波の受信時刻毎に作成し、これらの式を受信時刻毎に解くことで各時刻の目標の暫定位置を算出する暫定測位部と、
目標の暫定位置と各センサの距離の差を電波の速度で除算して得た時間を、各センサ間の電波の到来時間差から減算して、各時刻におけるミスマッチ時間として算出するミスマッチ時間算出部と、
算出されたミスマッチ時間に基づいて各センサ間の暫定時計誤差を算出する暫定時計誤差算出部と、
電波の到来時間差から前記暫定時計誤差算出部で算出された暫定時計誤差を減算して電波の補正到来時間差を求めて前記暫定測位部に出力すると共に、判定基準に従って、前記暫定測位部、前記ミスマッチ時間算出部および前記暫定時計誤差算出部による一連の測位処理を完了させて、各処理で得られた目標の暫定位置と暫定時計誤差を最終的な目標の位置と時計誤差として出力するか、または前記一連の測位処理を再度継続して実施させるよう制御する測位処理制御部を備えたことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項5】
暫定測位部は、入力される電波の補正到来時間差がない場合には、センサ間の電波の到来時間差を用いて等式を作成することを特徴とする請求項4記載の測位装置。
【請求項6】
暫定時計誤差算出部は、ミスマッチ時間算出部で算出されたミスマッチ時間の平均値を、センサ間の暫定時計誤差として算出する平均処理部を備えたことを特徴とする請求項4記載の測位装置。
【請求項7】
暫定時計誤差算出部は、所定の方法で算出した重み付け係数を用いてミスマッチ時間算出部で算出されたミスマッチ時間を重み付けしてセンサ間の暫定時計誤差を算出する重み付け処理部を備えたことを特徴とする請求項4記載の測位装置。
【請求項8】
測位処理制御部は、一連の測位処理の実施回数をカウントし、そのカウント数が所定のカウント値に達した場合には前記一連の測位処理を完了させると判定し、一方、カウント数が所定のカウント値に達しない場合には前記一連の測位処理を再度継続して実施させると判定する処理回数カウント部を備えたことを特徴とする請求項4から請求項7のうちのいずれか1項記載の測位装置。
【請求項9】
測位処理制御部は、一つ前の処理で暫定測位部で求めた目標の暫定位置と現在の処理で求めた目標の暫定位置の残差および/もしくは一つ前の処理で求めた暫定時計誤差と現在の処理で求めた暫定時計誤差の残差が所定の値よりも小さい場合には前記一連の測位処理を完了させると判定し、一方、残差が所定の値よりも大きい場合には前記一連の測位処理を再度継続して実施させると判定する残差処理部を備えたことを特徴とする請求項4から請求項7のうちのいずれか1項記載の測位装置。
【請求項10】
目標から放射もしくは反射された電波を複数のセンサで受信し、受信した電波の到来時間差に基づいて目標の位置を算出する測位装置において、
各センサで受信された複数の目標からの電波の到来時間差を算出する複数到来時間差算出部と、
算出された各センサ間の電波の到来時間差に基づいて、センサ間の時計誤差と各目標位置を算出する複数測位部を備えたことを特徴とする測位装置。
【請求項11】
複数測位部は、センサ間の電波の到来時間差から各センサ間の時計誤差を減算した時間に電波の速度を乗算して得た距離が、電波の伝搬距離の差に等しいとする等式を目標毎に作成し、これらの式を連立させることでセンサ間の時計誤差と各目標の位置を算出する複数一括測位部を備えたことを特徴とする請求項10記載の測位装置。
【請求項12】
複数測位部は、
入力されるセンサ間の電波の補正到来時間差に電波の速度を乗算して得た距離が、電波の伝搬距離の差に等しいとする等式を目標毎に作成し、これらの式を目標毎に解くことで各目標の暫定位置を算出する複数暫定測位部と、
各目標の暫定位置と各センサの距離の差を電波の速度で除算して得た時間を、各センサ間の電波の到来時間差から減算して、各目標におけるミスマッチ時間として算出する複数ミスマッチ時間算出部と、
算出されたミスマッチ時間に基づいて各センサ間の暫定時計誤差を算出する複数暫定時計誤差算出部と、
電波の到来時間差から前記複数暫定時計誤差算出部で算出された暫定時計誤差を減算して電波の補正到来時間差を求めて前記複数暫定測位部に出力すると共に、判定基準に従って、前記複数暫定測位部、前記複数ミスマッチ時間算出部および前記複数暫定時計誤差算出部による一連の測位処理を完了させて、各処理で得られた各目標の暫定位置と暫定時計誤差を最終的な各目標の位置と時計誤差として出力するか、または前記一連の測位処理を再度継続して実施させるよう制御する複数測位処理制御部を備えたことを特徴とする請求項10記載の測位装置。
【請求項13】
複数暫定測位部は、入力される電波の補正到来時間差がない場合には、センサ間の電波の到来時間差を用いて等式を作成することを特徴とする請求項12記載の測位装置。
【請求項14】
複数暫定時計誤差算出部は、複数ミスマッチ時間算出部で算出されたミスマッチ時間の平均値を、センサ間の暫定時計誤差として算出する複数平均処理部を備えたことを特徴とする請求項12記載の測位装置。
【請求項15】
複数暫定時計誤差算出部は、所定の方法で算出した重み付け係数を用いて複数ミスマッチ時間算出部で算出されたミスマッチ時間を重み付けしてセンサ間の暫定時計誤差を算出する複数重み付け処理部を備えたことを特徴とする請求項12記載の測位装置。
【請求項16】
複数測位処理制御部は、一連の測位処理の実施回数をカウントし、そのカウント数が所定のカウント値に達した場合には前記一連の測位処理を完了させると判定し、一方、カウント数が所定のカウント値に達しない場合には前記一連の測位処理を再度継続して実施させると判定する複数処理回数カウント部を備えたことを特徴とする請求項12から請求項15のうちのいずれか1項記載の測位装置。
【請求項17】
複数測位処理制御部は、一つ前の処理で複数暫定測位部で求めた各目標の暫定位置と現在の処理で求めた各目標の暫定位置の残差および/もしくは一つ前の処理で求めた暫定時計誤差と現在の処理で求めた暫定時計誤差の残差が所定の値よりも小さい場合には前記一連の測位処理を完了させると判定し、一方、残差が所定の値よりも大きい場合には前記一連の測位処理を再度継続して実施させると判定する複数残差処理部を備えたことを特徴とする請求項12から請求項15のうちのいずれか1項記載の測位装置。
【請求項18】
所定の位置に設置された複数の送信局であって、自局固有の時計に基づいて所定の放射時間になると移動端末に向けて電波を放射する送信局と、
前記移動端末において観測された前記送信局からの電波到来時間と前記移動端末において識別された到来電波の放射源となる送信局の識別情報とを、前記移動端末から伝送される受信局と、
前記複数の送信局の放射時間と、前記受信局が取得した電波到来時間と送信局の識別情報、前記複数の送信局の位置とに基づいて、前記複数の送信局固有の時計誤差と前記移動端末の位置とを算出する基地局制御装置、
を備えたことを特徴とする測位装置。
【請求項19】
基地局制御装置は、移動端末における電波の到来時間とこの電波の放射源となる送信局の識別情報、その送信局固有の時計による電波の放射時間を用いて、この電波が前記送信局から前記移動端末に到来する伝搬時間を複数の送信局について求める伝搬時間差算出部と、
前記複数の送信局の位置を既知数、前記移動端末の位置と前記複数の送信局間の時計誤差とを未知数として連立方程式を構成し、この連立方程式を解くことによって前記移動端末の位置と前記複数の送信局間の時計誤差とを算出する測位部と、
を備えたことを特徴とする請求項18記載の測位装置。
【請求項20】
測位部は、構成する連立方程式の数が前記移動端末の位置と前記複数の送信局間の時計誤差とを含む連立方程式の未知数よりも多い場合に、最小二乗解を求めることによって前記未知数を算出することを特徴とする請求項19記載の測位装置。
【請求項21】
伝搬時間差算出部は、送信局から移動端末に電波が到来する伝搬時間を複数の送信局について求めて、求められた複数の送信局間の伝搬時間差を算出し、
測位部は、前記複数の送信局の位置と前記伝搬時間差とを既知数、前記移動端末の位置を未知数とする連立方程式を構成し、この連立方程式を解くことによって前記移動端末の位置を算出する特徴とする請求項18記載の測位装置。
【請求項22】
伝搬時間差算出部は、送信局から移動端末に電波が到来する伝搬時間を複数の送信局について求めて、求められた複数の送信局間の伝搬時間差を算出し、
測位部は、前記複数の送信局の位置と前記伝搬時間差とを既知数、前記移動端末の位置を未知数とする連立方程式を構成し、この連立方程式を解くことによって前記移動端末の暫定位置を算出し、この暫定位置を用いて前記伝搬時間差を補正したのち補正した伝搬時間差を用いて、前記移動端末の位置を算出することを特徴とする請求項18記載の測位装置。
【請求項23】
複数の送信局は、所定の放射時間において複数の移動端末に向けて電波を放射し、
前記複数の移動端末において観測された前記送信局からの電波到来時間と前記移動端末において識別された到来電波の放射源となる送信局の識別情報とを、前記複数の移動端末から伝送される受信局と、
を備えたことを特徴とする請求項18〜22の何れか一に記載の測位装置。
【請求項24】
複数の送信局は、所定の複数の放射時間において移動端末に向けて電波を放射し、
受信局は、前記移動端末において複数回に亘り観測された前記送信局からの電波到来時間とそれぞれの到来電波の放射源となる送信局を識別した識別情報とを、前記移動端末から伝送され、
基地局制御装置は、前記複数の送信局の放射時間と、前記受信局が取得した複数の電波到来時間とそれぞれの到来電波の発信源となる送信局の識別情報、前記複数の送信局の位置とに基づいて、前記複数の送信局固有の時計誤差と前記移動端末の位置とを算出することを特徴とする測位装置。
【請求項25】
複数の送信局は、第1の放射時間と第2の放射時間のそれぞれにおいて移動端末に向けて電波を放射し、
受信局は、前記移動端末において観測された前記送信局からの第1の電波到来時間と第2の電波到来時間、さらには第1の電波到来時間における到来電波の放射源となる送信局を識別した識別情報と第2の電波到来時間における到来電波の放射源となる送信局を識別した識別情報を、前記移動端末から伝送され、
基地局制御装置は、前記複数の送信局の放射時間と、前記受信局が取得した複数の電波到来時間とそれぞれの到来電波の発信源となる送信局の識別情報、前記複数の送信局の位置、第1の電波到来時間と第2の電波到来時間のそれぞれにおける前記移動端末の位置関係を規定した運動モデルとに基づいて、前記複数の送信局固有の時計誤差と前記移動端末の位置とを算出することを特徴とする測位装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−248217(P2007−248217A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71007(P2006−71007)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月8日 社団法人電子情報通信学会発行の「2006年総合大会講演論文集」に発表
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】