説明

測距センサおよび電子機器

【課題】周辺光による誤測距または誤検知を回避することができる測距センサを提供する。
【解決手段】測距センサ1は、第1信号光Rf1を出射する第1発光素子11と、第2信号光Rf2を出射する第2発光素子12と、第1信号光Rf1または第2信号光Rf2を受光して受光信号を出力する受光素子部20とを備える。第1発光素子11および第2発光素子12は、受光素子部20の光軸20bと交差する平面上に配置され、第1発光素子11は、平面上で受光素子部20の光軸20bに対して第1方位に配置され、第2発光素子12は、平面上で受光素子部20の光軸20bに対して第1方位とは異なる第2方位に配置されている。これによって、周辺光による誤測距または誤検知を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距センサに関する。また、測距センサを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の有無の検出や物体までの距離の検出を行うために、測距センサが用いられる。測距センサとしては、測距対象物に信号光を照射し、測距対象物からの反射光を受光することによって、測距対象物までの距離を測る三角測距方式の技術が利用されている。
【0003】
図10は、従来の測距センサ100による三角測距方式を示す模式図である。
【0004】
従来の測距センサ100は、測距対象物110に信号光Rfを投射するための発光素子101と、信号光Rfを集光する投光レンズ103と、測距対象物110で反射した反射光Rtを集光する受光レンズ104と、反射光Rtを受光する受光素子102を備える。
【0005】
発光素子101は、発光ダイオードなどを用いた光源である。また、受光素子102は、PSD(Position Sensitive Device:位置検出素子)である。
【0006】
測距センサ100において、発光素子101から投射された信号光Rfは、投光レンズ103を通過して、測距対象物110に投射される。測距対象物110で反射された反射光Rtは、受光レンズ104を通過して受光素子102の受光面102aに光スポットとして入射する。
【0007】
受光面102aには基準位置が設定されており、受光面102aにおける光スポットの位置は、測距センサ100から測距対象物110までの距離によって変化する。基準位置からの光スポットの位置の変化量によって、受光素子102の両端から取り出される信号電流I1および信号電流I2が変化する。信号電流I1および信号電流I2は、制御部(図示しない)の信号処理回路により、出力信号S1および出力信号S2に変換される。
【0008】
S1=I1/(I1+I2) … (1)
S2=(I1−I2)/(I1+I2) … (2)
ここで、信号電流I1および信号電流I2は、
I1=(d+2x)・I0/(2d) … (3)
I2=(d−2x)・I0/(2d) … (4)
である。
【0009】
ただし、式(3)、式(4)において、dは、受光面102aにおける光スポットの移動可能な距離である。I0は全光電流(I1+I2)である。xは、受光面102aの中心から光スポットの入射位置までの距離である。
【0010】
また、三角測距の原理により、次式(5)が成り立つ。
【0011】
X=(A・f)/L … (5)
ただし、式(5)において、Xは、受光レンズ104の光軸から光スポットの入射位置までの距離である。Aは、投光レンズ103の光軸から受光レンズ104の光軸までの距離(基線長)である。fは、受光レンズ104の焦点距離である。Lは、測距可能距離である。
【0012】
この式(5)と式(1)、式(2)により、出力信号S1および出力信号S2は次式(6)、(7)で表される。
【0013】
S1=(2x+d)/(2d)
=[{(A・f/L)−B}/d]+1/2 … (6)
S2=2x/d
=2{(A・f/L)−B}/d … (7)
ただし、式(6)、式(7)において、Bは、受光レンズ104の光軸から受光面102aの中心までの距離である。したがって、X=B+xの関係が成り立つ。
【0014】
図11は、従来の測距センサ100における、測距対象物110までの距離Dに対する出力信号Sの変化を示す特性図である。
【0015】
測距センサ100の出力信号Sの変動は、基本的に式(6)、式(7)に基づいて、測距対象物110までの距離Dに反比例する。つまり、測距対象物110までの距離Dが長くなるにつれて、受光面102a上の光スポットの位置変化が少なくなる。それに伴って、出力信号Sの信号強度Spも小さくなっていく。また、測距対象物110までの距離Dが短くなるにつれて、受光面102a上の光スポットの位置変化が大きくなる。それに伴って、出力信号Sの信号強度Spも大きくなっていく。
【0016】
測距対象物110までの距離Dがさらに短くなった場合、つまり、至近距離範囲Ln内にあるときでは、光スポットは、受光面102aの縁を越えて外側へ移動していく。それに伴って、受光素子102に入射する光量は急速に減少するので、出力信号Sの信号強度Spが急速に減少する。
【0017】
上記のことから、測距センサ100では、反射光Rtの光スポットが受光面102a内にある領域、つまり、信号強度Spが測距対象物110までの距離Dに反比例する領域を測距範囲Lmとして使用している。
【0018】
しかしながら、従来の測距センサ100では、次のような課題がある。
【0019】
信号光Rfは、投光レンズ103によってコリメートされ、平行光と指向角の広い周辺光とに変換される。測距センサ100では、周辺光によって光軸の外にある対象物を誤測距または誤検知する場合がある。
【0020】
そこで、投光レンズまたは受光レンズの周辺部に遮光部材を配置して、周辺光による対象物の誤検知を防止する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。あるいは、発光素子と投光レンズとの間に遮光部材を配置して、周辺光による対象物の誤検知を防止する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0021】
遮光部材によって周辺光は遮光できるが、発光素子から投射される光の全体の光量は低下され、特に、反射率が低い測距対象物に対しては、さらに光量が低下される。測距するに際して、遮光部材の形状によってS/Nの低下を招かないことが要求される。しかしながら、上記の要求を満たすような遮光部材を設計することは、高い精度を必要とされることから非常に困難であり、新たな問題になる。
【0022】
また、受光素子と受光レンズとの間に遮光体を設けて、周辺光による対象物の誤検知を防止する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0023】
しかしながら、上記の技術では、測距対象物が近距離にある場合、受光素子に入射する光スポットを遮光することになるため、測距性能(一般には、検知性能)が悪化することが問題になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2000−310508号公報
【特許文献2】特開2006−153730号公報
【特許文献3】特開平9−318315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従来の測距センサでは、周辺光によって誤測距または誤検知するという課題がある。また、周辺光を遮光する技術では、新たな問題を発生させるため、上記の課題を解決する手段に適していない。
【0026】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、周辺光による誤測距または誤検知を回避することができる測距センサを提供することを目的とする。
【0027】
また、本発明は、誤測距または誤検知を防止できる測距センサを備えることによって、安定した動作をする電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明に係る測距センサは、第1信号光を出射する第1発光素子と、第2信号光を出射する第2発光素子と、前記第1信号光または前記第2信号光を受光して受光信号を出力する受光素子部とを備えた測距センサであって、前記第1発光素子および前記第2発光素子は、前記受光素子部の光軸と交差する平面上に配置され、前記第1発光素子は、前記平面上で前記受光素子部の光軸に対して第1方位に配置され、前記第2発光素子は、前記平面上で前記受光素子部の光軸に対して前記第1方位とは異なる第2方位に配置されていることを特徴とする。
【0029】
したがって、第1発光素子による受光信号と第2発光素子による受光信号とに基づいて、受光素子部から出力された受光信号が、第1発光素子の光軸および第2発光素子の光軸から離れた位置(検知範囲外)にある対象物による受光信号であることを検知できる。そのため、検知範囲外にある対象物による誤測距または誤検知を回避することが可能になる。
【0030】
本発明に係る測距センサでは、前記第1発光素子と前記第2発光素子とは、互いに前記受光素子部の光軸まで等しい距離となるように配置されていることを特徴とする。
【0031】
したがって、第1発光素子による受光信号と第2発光素子による受光信号とが略等しくなるので、容易に誤測距または誤検知を防止できる。
【0032】
本発明に係る測距センサでは、前記第1発光素子と前記第2発光素子とは、互いに前記受光素子部の光軸まで異なる距離となるように配置されていることを特徴とする。
【0033】
したがって、検知範囲外にある対象物による誤測距または誤検知を回避することが可能であり、測距性能の向上を実現できる。つまり、第1発光素子の基線長(発光素子の光軸と受光素子部の光軸との間隔)と第2発光素子の基線長とが異なるので、精度よく測距できる範囲を広くすることができる。
【0034】
本発明に係る測距センサでは、前記第1発光素子、前記第2発光素子および前記受光素子部は、単一の直線上に配置されていることを特徴とする。
【0035】
したがって、第1発光素子、第2発光素子および受光素子部が単一の直線上に配置されているので、構造を簡略化できる。
【0036】
本発明に係る測距センサは、前記受光素子部の光軸と交差する平面上に配置された第3発光素子および第4発光素子を備え、前記第3発光素子は、前記平面上で前記受光素子部の光軸に対して第3方位に配置され、前記第4発光素子は、前記平面上で前記受光素子部の光軸に対して第4方位に配置され、前記第1発光素子と前記第2発光素子とを結ぶ直線である第1交差軸と、前記第3発光素子と前記第4発光素子とを結ぶ直線である第2交差軸とが、交差するように配置されており、前記第1方位、前記第2方位、前記第3方位および前記第4方位は、それぞれ異なる方位であることを特徴とする。
【0037】
したがって、本発明に係る測距センサは追加の発光素子を備えることにより、測距対象物までの距離だけでなく、測距対象物のある方向を検知できる。
【0038】
本発明に係る測距センサでは、前記受光素子部は、複数の画素を有するイメージセンサを備えることを特徴とする。
【0039】
したがって、受光素子部はイメージセンサで構成されているので、受光素子部の検知方向に依存しない簡略な構造になる。つまり、複数の発光素子を備えていても、1つのイメージセンサによって距離情報を得られる。
【0040】
本発明に係る測距センサは、前記受光素子部から前記受光信号を入力される信号処理部を備え、前記信号処理部は、前記受光信号に基づいて前記測距対象物の距離情報を出力する構成とされていることを特徴とする。
【0041】
したがって、信号処理部を備えることにより、測距対象物の詳細な距離情報を得られる。それによって、確実に誤測距または誤検知を防止できる。
【0042】
本発明に係る電子機器は、本発明に係る測距センサを備えることを特徴とする。
【0043】
したがって、誤測距または誤検知を防止できる測距センサを備えるので、安定した動作をする電子機器を提供できる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る測距センサは、第1発光素子による受光信号と第2発光素子による受光信号とに基づいて、受光素子部から出力された受光信号が、第1信号光の光軸および第2信号光の光軸から離れた位置(検知範囲外)にある対象物による受光信号であることを検知できる。そのため、検知範囲外にある対象物による誤測距または誤検知を回避することが可能になる。
【0045】
また、本発明に係る電子機器は、誤測距または誤検知を防止できる測距センサを備えるので、安定した動作をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1に係る測距センサの概略平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る測距センサの光学系を示した模式図である。
【図3】図2における周辺光の光学系を示した模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る測距センサの変形例1の概略平面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る測距センサの変形例2の概略平面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る測距センサの変形例3の概略平面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る測距センサの概略平面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る測距センサの変形例4の概略平面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る測距センサの変形例5の概略平面図である。
【図10】従来の測距センサによる三角測距方式を示す模式図である。
【図11】従来の測距センサにおける、測距対象物までの距離に対する出力信号の変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
<実施の形態1>
図1および図2に基づいて、本発明の実施の形態1に係る測距センサ1について説明する。
【0048】
図1は、本発明の実施の形態1に係る測距センサ1の概略平面図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る測距センサ1の光学系を示した模式図である。
【0049】
本発明の実施の形態1に係る測距センサ1は、第1信号光Rf1を出射する第1発光素子11と、第2信号光Rf2を出射する第2発光素子12と、第1信号光Rf1または第2信号光Rf2を受光して受光信号を出力する受光素子部20とを備える。
【0050】
第1発光素子11および第2発光素子12は、受光素子部20の光軸20b(受光光軸20bともいう)と交差する平面上に配置され、第1発光素子11は、平面上で受光素子部20の光軸20bに対して第1方位DP1に配置され、第2発光素子12は、平面上で受光素子部20の光軸20bに対して第1方位DP1とは異なる第2方位DP2に配置されている。なお、以下では、第1発光素子11と第2発光素子12とを合わせて発光素子と呼ぶことがある。
【0051】
上記の構成によると、第1発光素子11による受光信号と第2発光素子12による受光信号とに基づいて、受光素子部20から出力された受光信号が、第1発光素子11の光軸および第2発光素子12の光軸から離れた位置(検知範囲外)にある対象物による受光信号であることを検知できる。そのため、検知範囲外にある対象物による誤測距または誤検知を回避することが可能になる。
【0052】
第1発光素子11の光軸である第1光軸11b上には、第1発光レンズ11aが配置されている。したがって、第1発光レンズ11aは、第1信号光Rf1を集光して測距対象物30に照射する。第2発光素子12の光軸である第2光軸12b上には、第2発光レンズ12aが配置されている。したがって、第2発光レンズ12aは、第2信号光Rf2を集光して測距対象物30に照射する。受光素子部20の光軸である受光光軸20b上には、受光レンズ20aが配置されている。したがって、受光レンズ20aは、測距対象物30からの反射光Rrを集光して受光素子部20に照射する。
【0053】
第1発光素子11と第2発光素子12とは、互いに受光光軸20bまで等しい距離となるように配置されている。したがって、第1発光素子11による受光信号と第2発光素子12による受光信号とが略等しくなるので、容易に誤測距または誤検知を防止できる。
【0054】
第1発光素子11、第2発光素子12および受光素子部20は、単一の直線CP上に配置されている。つまり、受光素子部20は、第1発光素子11と第2発光素子12との間
に配置されている。したがって、第1発光素子11、第2発光素子12および受光素子部20が単一の直線CP上に配置されているので、構造を簡略化できる。なお、以下では、受光光軸20bと平行な方向を縦方向Vと呼び、直線CPと平行な方向を横方向Hと呼ぶ。
【0055】
発光素子(第1発光素子11、第2発光素子12)は、発光ダイオードなどを用いた光源であり、パッケージに収納されている。
【0056】
受光素子部20は、第1信号光Rf1を受光する第1受光素子21と、第2信号光Rf2を受光する第2受光素子22とを備える。なお、受光素子部20は、第1信号光Rf1および第2信号光Rf2を受光する1つの受光素子であってもよい。
【0057】
第1受光素子21および第2受光素子22は、PSDや多分割PDであり、発光素子とは別のパッケージに収納されている。
【0058】
測距センサ1は、受光素子部20から受光信号を入力される信号処理部(図示しない)を備える。信号処理部は、受光信号に基づいて測距対象物30の距離情報を出力する構成とされている。したがって、信号処理部を備えることにより、測距対象物30の詳細な距離情報を得られる。それによって、確実に誤測距または誤検知を防止できる。
【0059】
信号処理部は、受光素子部20を収納したパッケージに併せて収納されている。
【0060】
図2および図3に基づいて、本実施の形態1に係る測距センサによって、誤測距または誤検知を防止する動作について説明する。
【0061】
図2では、測距センサ1の縦方向Vにおける測距可能な範囲は測距範囲Lpであって、測距対象物30は、測距範囲Lp内に配置されている。第1発光素子11から出射された第1信号光Rf1は、測距対象物30によって反射され、受光素子部20は反射光Rrを受光し、受光信号が出力される。また、第2発光素子12から出射された第2信号光Rf2は、測距対象物30によって反射され、受光素子部20は反射光Rrを受光し、受光信号が出力される。このとき、測距対象物30は第1光軸11bおよび第2光軸12bを含む範囲に配置されているので、第1受光素子21および第2受光素子22によって受光信号が得られる。
【0062】
一般に、発光素子から出射される光は、光軸に沿って出射される信号光と、信号光より指向角の広い周辺光とで構成される。そのため、第1発光素子11および第2発光素子12からも、周辺光が出射される。
【0063】
図3は、図2における周辺光の光学系を示した模式図である。
【0064】
第1信号光Rf1の周辺光は、第1照射範囲Rc1に照射され、第1照射範囲Rc1は、縦方向Vに向かって第1発光素子11から離れるほど広くなる。第2信号光Rf2の周辺光は、第2照射範囲Rc2に照射され、第2照射範囲Rc2は、縦方向Vに向かって第2発光素子12から離れるほど広くなる。
【0065】
測距対象物30とは異なる離れた位置に置かれた対象物31は、第1光軸11bおよび第2光軸12bを含む範囲に存在せず、第1照射範囲Rc1内に存在するとき、第1信号光Rf1の周辺光を反射して、干渉光Riを発生させる。第1受光素子21は、干渉光Riを受光して受光信号を出力する。そのため、第1光軸11b上に対象物31が存在すると誤認識して、誤測距または誤検知をすることがある。
【0066】
しかしながら、対象物31は第2照射範囲Rc2内に存在しないので、第2信号光Rf2の周辺光を反射せず、第2受光素子22から受光信号は出力されない。そのため、第1受光素子21の受光信号と第2受光素子22の受光信号とが一致しないので、対象物31は、第1照射範囲Rc1内に存在するが、第1光軸11b上に存在しないことを検知できる。つまり、従来の測距センサのように発光素子が1つの場合は、信号光による反射と周辺光による反射とを判別することは出来ないが、発光素子を2つ備えることによって、信号光による反射と周辺光による反射とを判別して、誤測距または誤検知を防止することができる。
【0067】
図4は、本発明の実施の形態1に係る測距センサ1の変形例1の概略平面図である。なお、図1および図2と機能、構造が実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
第1発光素子11と第2発光素子12とは、互いに受光素子部20の光軸20bまで異なる距離となるように配置されている。したがって、検知範囲外にある対象物による誤測距または誤検知を回避することが可能であり、測距性能の向上を実現できる。つまり、第1発光素子の基線長D1(発光素子の光軸と受光素子部の光軸との間隔)と第2発光素子の基線長D2とが異なるので、精度よく測距できる範囲を広くすることができる。
【0069】
測距センサ1では、基線長D1に対して基線長D2は、長くなるように配置されている。なお、基線長D1と基線長D2とが異なるように適宜選択して配置されていればよい。
【0070】
図5は、本発明の実施の形態1に係る測距センサの変形例2の概略平面図である。なお、図1および図2と機能、構造が実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
第1発光素子11および第2発光素子12は、受光素子部20の光軸20bと交差する平面上に配置され、第1発光素子11は、受光素子部20の光軸20bに対して第1方位DP1に配置され、第2発光素子12は、受光素子部20の光軸20bに対して第1方位DP1とは異なる第2方位DP2に配置されている。例えば、第1方位DP1と第2方位DP2とは、120度の角度を持たせて配置されている。
【0072】
第1発光素子11、第2発光素子12および受光素子部20は、単一の直線上に配置されていないが、このような配置であっても、発光素子を2つ備えることによって、信号光による反射と周辺光による反射とを判別して、誤測距または誤検知を防止することができる。
【0073】
図6は、本発明の実施の形態1に係る測距センサの変形例3の概略平面図である。なお、図1、図2および図5と機能、構造が実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
変形例3は、変形例2と同様の配置であって、さらに、受光素子部20の光軸20bに対して第1方位DP1および第2方位DP2とは異なる第3方位DP3に配置された第3発光素子13を備え、第3発光素子13から照射された信号光を集光する第3発光レンズ13aを備える。また、受光素子部20は、第3受光素子23を備える。発光素子を3つ備えることによって、確実に誤測距または誤検知を防止することができる。例えば、第3方位DP3と第1方位DP1、第3方位DP3と第2方位DP2は、それぞれ120度の角度を持たせて配置されている。
【0075】
<実施の形態2>
図7および図8に基づいて、本発明の実施の形態2に係る測距センサ2について説明する。なお、実施の形態1と機能、構造が実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
図7は、本発明の実施の形態2に係る測距センサ2の概略平面図である。図8は、本発明の実施の形態2に係る測距センサ2の変形例4の概略平面図である。
【0077】
本発明の実施の形態2に係る測距センサ2は、第1信号光Rf1を出射する第1発光素子11と、第2信号光Rf2を出射する第2発光素子12と、第1信号光Rf1または第2信号光Rf2を受光して受光信号を出力する受光素子部20とを備える。
【0078】
第1発光素子11および第2発光素子12は、受光素子部20の光軸20bと交差する平面上に配置され、第1発光素子11は、平面上で受光素子部20の光軸20bに対して第1方位に配置され、第2発光素子12は、平面上で受光素子部20の光軸20bに対して第1方位とは異なる第2方位に配置されている。
【0079】
測距センサ2は、受光素子部20の光軸20bと交差する平面上に配置された第3発光素子13および第4発光素子14を備える。第3発光素子13は、平面上で受光素子部20の光軸20bに対して第3方位DP3に配置され、第4発光素子14は、平面上で受光素子部20の光軸20bに対して第4方位DP4に配置されている。
【0080】
第1発光素子11と第2発光素子12とを結ぶ直線である第1交差軸CP1と、第3発光素子13と第4発光素子14とを結ぶ直線である第2交差軸CP2とが、交差するように配置されている。第1方位DP1、第2方位DP2、第3方位DP3および第4方位DP4は、それぞれ異なる方位である。したがって、本発明に係る測距センサ2は追加の発光素子を備えることにより、測距対象物までの距離だけでなく、測距対象物のある方向を検知できる。
【0081】
測距センサ2は、第3発光素子13から照射された信号光を集光する第3発光レンズ13aと、第4発光素子14から照射された信号光を集光する第4発光レンズ14aとを備える。また、受光素子部20は、第3受光素子23と第4受光素子24とを備える。
【0082】
第1交差軸CP1と第2交差軸CP2とは、受光素子部20(受光光軸20b)を交点として直交している。第1発光素子11ないし第4発光素子14は、受光素子部20からそれぞれ等しい距離に配置されている。なお、第1発光素子11ないし第4発光素子14は、受光素子部20からそれぞれ異なる距離に配置されていても構わない(図8参照)。
【0083】
図9は、本発明の実施の形態2に係る測距センサ2の変形例5の概略平面図である。
【0084】
受光素子部20は、複数の画素を有するイメージセンサ40を備える。したがって、受光素子部20はイメージセンサ40で構成されているので、受光素子部20の検知方向に依存しない簡略な構造になる。つまり、複数の発光素子を備えていても、1つのイメージセンサによって距離情報を得られる。
【0085】
イメージセンサでは、1つの画素から1つの信号が出力されるので、1つの画素が1つのPDと同じ働きをする。したがって、1つのイメージセンサを備えることは、複数のPDを備えることと同じである。
【0086】
一般に、受光素子として適用されるPD等は、信号光を受光するための受光面を有し、
受光した信号光の光量と、受光面における信号光の位置の移動とを検知している。受光面における信号光の位置は、受光素子から測距対象物までの距離によって変化し、発光素子の光軸と受光素子の光軸とを結ぶ直線方向で移動する。測距するに際して、信号光の移動方向に向かって受光面を延長することが望ましい。そのため、PD等では、発光素子に対する位置によって、受光素子の検知方向を測距に最適な方向となるように配置する必要がある。しかしながら、1つのイメージセンサでは、PD等の場合のように調整をする必要がない。
【0087】
なお、複数の発光素子を備えた測距センサにおいて、受光素子としてPD等を適用した場合、それぞれの発光素子に対応する受光素子を備えることが望ましい。
【0088】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3に係る電子機器について説明する。
【0089】
本発明の実施の形態に係る電子機器は、実施の形態1および実施の形態2に記載の測距センサを備えている。したがって、誤測距または誤検知を防止できる測距センサを備えるので、安定した動作をする電子機器を提供できる。
【0090】
電子機器の具体例として、温水洗浄便座や、ATM(現金自動預け払い機)、自動扉等が挙げられるが、上記の実施の形態に係る測距センサを備えていれば、これに限定されない。
【符号の説明】
【0091】
1、2 測距センサ
11 第1発光素子
11a 第1発光レンズ
11b 第1光軸
12 第2発光素子
12a 第2発光レンズ
12b 第2光軸
13 第3発光素子
13a 第3発光レンズ
14 第4発光素子
14a 第4発光レンズ
20 受光素子部
20a 受光レンズ
20b 受光光軸
21 第1受光素子
22 第2受光素子
23 第3受光素子
24 第4受光素子
30 測距対象物
31 対象物
40 イメージセンサ
CP1 第1交差軸
CP2 第2交差軸
DP1 第1方位
DP2 第2方位
DP3 第3方位
DP4 第4方位
Rc1 第1照射範囲
Rc2 第2照射範囲
Rf1 第1信号光
Rf2 第2信号光
Ri 干渉光
Rr 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号光を出射する第1発光素子と、第2信号光を出射する第2発光素子と、前記第1信号光または前記第2信号光を受光して受光信号を出力する受光素子部とを備えた測距センサであって、
前記第1発光素子および前記第2発光素子は、前記受光素子部の光軸と交差する平面上に配置され、
前記第1発光素子は、前記平面上で前記受光素子部の光軸に対して第1方位に配置され、
前記第2発光素子は、前記平面上で前記受光素子部の光軸に対して前記第1方位とは異なる第2方位に配置されていること
を特徴とする測距センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の測距センサであって、
前記第1発光素子と前記第2発光素子とは、互いに前記受光素子部の光軸まで等しい距離となるように配置されていること
を特徴とする測距センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の測距センサであって、
前記第1発光素子と前記第2発光素子とは、互いに前記受光素子部の光軸まで異なる距離となるように配置されていること
を特徴とする測距センサ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の測距センサであって、
前記第1発光素子、前記第2発光素子および前記受光素子部は、単一の直線上に配置されていること
を特徴とする測距センサ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の測距センサであって、
前記受光素子部の光軸と交差する平面上に配置された第3発光素子および第4発光素子を備え、
前記第3発光素子は、前記平面上で前記受光素子部の光軸に対して第3方位に配置され、
前記第4発光素子は、前記平面上で前記受光素子部の光軸に対して第4方位に配置され、
前記第1発光素子と前記第2発光素子とを結ぶ直線である第1交差軸と、前記第3発光素子と前記第4発光素子とを結ぶ直線である第2交差軸とが、交差するように配置されており、
前記第1方位、前記第2方位、前記第3方位および前記第4方位は、それぞれ異なる方位であること
を特徴とする測距センサ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の測距センサであって、
前記受光素子部は、複数の画素を有するイメージセンサを備えること
を特徴とする測距センサ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の測距センサであって、
前記受光素子部から前記受光信号を入力される信号処理部を備え、
前記信号処理部は、前記受光信号に基づいて測距対象物の距離情報を出力する構成とされていること
を特徴とする測距センサ。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1つに記載の測距センサを備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−141142(P2011−141142A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−812(P2010−812)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】