説明

湯水混合装置

【課題】吐水温度の調整時間を可及的に短くすると共に、高温の混合湯が出てしまうオーバーシュート現象を防止することができる湯水混合装置を提供する。
【解決手段】本発明は、水と給湯器から供給される湯とを混合し吐水温度を調整する混合弁を有する混合弁装置と、吐水温度を設定するための操作部と、混合弁を駆動する混合弁駆動装置と、混合弁により調整された混合湯温を検出する混合湯温検出器と、混合弁駆動装置を、操作部の設定値に基づいて制御する制御部と、給湯器から供給される湯の温度を検出する供給湯温検出器と、を備えた湯水混合装置であって、制御部は、供給湯温検出器が検知した湯の温度の時間あたりの変化量が一定値以下であり、且つ供給湯温検出器が検知した湯の温度が操作部の設定値以上であると判断したときに、混合湯温検出器によって検出された混合湯温の値に基づいて、混合弁駆動装置のフィードバック制御を開始することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水温度の調整時間を可及的に短くすることのできる湯水混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湯水混合装置として、給湯器に接続した給湯管からの湯と、上水に連通した給水管からの水とを適宜に混合する混合弁装置を設け、この混合弁装置の下手側には、開閉流量調整を行う開閉流調弁を配設し、この開閉流調弁の操作により水栓本体から所定吐水温度の混合湯水を吐水するように構成されたものがある。すなわち、操作部から制御部を介して混合弁装置を駆動し適温の湯水混合調整を行い、定流量調整部において所定の流量に調整して水栓本体より設定温度と設定流量の給湯を可能とするように構成されている。
【0003】
しかも、給湯の設定温度調整を行うために給湯器に接続された給湯管の中途部には、給湯器からの供給湯温を検出する供給湯温検出器を介設すると共に、定流量調整部と水栓本体との間の吐水管の中途部にはサーミスタなどの混合湯温検出器を介設し、各検出器は制御部に接続し、しかも、制御部は混合弁駆動装置と流量調整のための流量調整装置とに接続し、制御部からの指令により各装置が駆動して湯水の混合と吐水流量の調整を行うように構成されている。このとき、制御部において混合湯温検出器からのデータと設定温度のデータと比較演算し、その結果、制御部から出力された指令により混合弁駆動装置を駆動して設定した適温の湯水を水栓本体から吐水する、いわゆるフィードバック制御が行われる。
【0004】
かかるフィードバック制御を行う湯水混合装置として、水栓本体から混合湯水を再度吐水するために給湯器の再出湯を行うときには、前回の出湯時において供給湯温検出器で検出した供給湯温のデータを逐次制御部に記憶しておき、その最新データに近づくまで、または、かかる最新データの監視とは無関係に予め定められた一定時間の経過までは、湯水混合装置の湯水混合比率を前回停止時の状態に維持し、その後、サーミスタなどの混合湯温検出装置を用いてフィードバック制御する湯水混合装置が知られている(特許文献1を参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−233075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された上記の湯水混合装置においては、特に、給湯器の設定温度が前回の出湯時より低い温度に設定された場合では結果的に定められた時間内は湯水混合比率が前回の設定状態に維持されるため、一定時間経過しなければフィードバック制御が始まらず、温度調整時間が長く温度調整に手間取るという問題があった。すなわち、上述した湯水混合装置においては、給湯器の再出湯時に、前回出湯時の最新の供給湯温度データに近づくまで、または、かかる最新データの監視と無関係に予め定められた一定時間経過までは、混合弁装置の湯水混合比率を前回給湯停止の状態に維持することになるため、本来、前回の出湯時より低い温度に設定されているため給湯器から供給される供給湯温は設置温度に略対応する温度となって安定しているにも拘わらず、一定時間経過するまで待機しないとフィードバック制御による設定湯温の制御が行われないことになり、その結果、温度調整開始時間が遅くなる不都合があった。
【0007】
また、従来、混合弁装置は、混合弁ケーシング内を移動して湯及び水の流量を変化させる混合弁と同混合弁を駆動させる弁駆動機構からなり、弁駆動機構をフィードバック制御により作動させて設定温度の混合湯水を吐水するものであるが、フィードバック制御を行う前に給湯器から突然の高温湯が出湯した場合、フィードバック制御が間に合わず混合弁装置から高温の混合湯が出てしまうオーバーシュート現象が発生する虞があった。
【0008】
この発明は、上記課題を解決するために、特に吐水温度の調整時間を可及的に短くすると共に、高温の混合湯が出てしまうオーバーシュート現象を防止することができる湯水混合装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、水と給湯器から供給される湯とを混合し吐水温度を調整する混合弁を有する混合弁装置と、前記吐水温度を設定するための操作部と、前記混合弁を駆動する混合弁駆動装置と、前記混合弁により調整された混合湯温を検出する混合湯温検出器と、前記混合弁駆動装置を、前記操作部の設定値に基づいて制御する制御部と、前記給湯器から供給される湯の温度を検出する供給湯温検出器と、を備えた湯水混合装置であって、前記制御部は、前記供給湯温検出器が検知した前記湯の温度の時間あたりの変化量が一定値以下であり、且つ前記供給湯温検出器が検知した前記湯の温度が前記操作部の設定値以上であると判断したときに、前記混合湯温検出器によって検出された前記混合湯温の値に基づいて、前記混合弁駆動装置のフィードバック制御を開始することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記混合弁装置は、混合弁ケーシングの内部に移動可能に配置され、移動することにより前記混合弁ケーシングに流入する湯及び水の流量を変化させる混合弁と、前記混合弁ケーシングの内部に配置され、前記混合弁駆動装置の駆動に応じて、前記混合弁を所定方向に摺動させる付勢力を発生する付勢部と、前記混合弁ケーシングの内部に配置され、前記混合弁ケーシングに流入して混合された湯水の温度に応じて、前記付勢部とは逆方向に前記混合弁を摺動させる付勢力を発生する感温付勢部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、前記制御部は、前記供給湯温検出器が検知した前記湯の温度の時間あたりの変化量が一定値以下であり、且つ前記供給湯温検出器が検知した前記湯の温度が前記操作部の設定値以上であると判断したときに、前記混合湯温検出器によって検出された前記混合湯温の値に基づいて、前記混合弁駆動装置のフィードバック制御を開始するので、予め決められた一定時間を待ったり、または設定温度が前回の給湯温度に近づくまで待ったりすることなく、現実の供給温度が、現在の操作部の設定値以上になって安定していれば、混合湯温検出器のフィードバック制御が行われることになるため短時間で安定した設定温度の混合湯を得ることができる効果がある。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、前記混合弁装置は、混合弁ケーシングの内部に移動可能に配置され、移動することにより前記混合弁ケーシングに流入する湯及び水の流量を変化させる混合弁と、前記混合弁ケーシングの内部に配置され、前記混合弁駆動装置の駆動に応じて、前記混合弁を所定方向に摺動させる付勢力を発生する付勢部と、前記混合弁ケーシングの内部に配置され、前記混合弁ケーシングに流入して混合された湯水の温度に応じて、前記付勢部とは逆方向に前記混合弁を摺動させる付勢力を発生する感温付勢部とを備えているので、給湯器からの供給湯の温度が安定してフィードバック制御を行う前に給湯器から突然の高温湯が出湯した場合でも感温付勢部の摺動により設定温度に近いところで制御されるため、上記効果に加え、さらに、オーバーシュートの可能性が非常に小さくなるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の最良の実施形態は、水と給湯器から供給される湯とを混合し吐水温度を調整する混合弁を有する混合弁装置と、前記吐水温度を設定するための操作部と、前記混合弁を駆動する混合弁駆動装置と、前記混合弁により調整された混合湯温を検出する混合湯温検出器と、前記混合弁駆動装置を、前記操作部の設定値(設定温度)に基づいて制御する制御部と、前記給湯器から供給される湯の温度を検出する供給湯温検出器とを備えた湯水混合装置であって、前記制御部は、前記供給湯温検出器が検知した前記湯の温度の時間あたりの変化量が一定値以下であり、且つ前記供給湯温検出器が検知した前記湯の温度が前記操作部の設定値以上であると判断したときに、前記混合湯温検出器によって検出された前記混合湯温の値に基づいて、前記混合弁駆動装置のフィードバック制御を開始するように構成するものである。
【0014】
図1は給湯器からの一般的な供給湯温の変化を示すグラフを示してあり、図示するように、給湯器から出湯すると、給湯器から湯水混合装置までの配管内や給湯器内における滞留水などの影響を受け、湯温が安定する状態t10までには若干時間を要する。本実施形態に係る湯水混合装置では、フィードバック制御の開始タイミングを、給湯器からの給湯温度が安定し、且つ供給湯温検出器が検知した湯の温度が操作部の設定温度(設定値)L0以上であると制御部が判断したときとしている。ここで、給湯器からの給湯温度の安定度合いについては、前記供給湯温検出器が検知した前記湯の温度の時間あたりの変化量が一定値以下であるかで判断している。
【0015】
従って、現実の供給温度が現在の操作部の設定温度以上になって安定していれば、混合湯温検出器によるフィードバック制御が行われることになるため、より短時間で安定した設定温度の混合湯を得ることができる。
【0016】
また、上記構成において、前記混合弁装置は、混合弁ケーシングの内部に移動可能に配置され、移動することにより前記混合弁ケーシングに流入する湯及び水の流量を変化させる混合弁と、前記混合弁ケーシングの内部に配置され、前記混合弁駆動装置の駆動に応じて、前記混合弁を所定方向に摺動させる付勢力を発生する付勢部と、前記混合弁ケーシングの内部に配置され、前記混合弁ケーシングに流入して混合された湯水の温度に応じて、前記付勢部とは逆方向に前記混合弁を摺動させる付勢力を発生する感温付勢部とを備えた湯水混合装置としている。
【0017】
従って、湯器からの供給湯の温度が安定してフィードバック制御を行うまでは、感温付勢部の摺動により設定温度に近づくように制御されるため、さらに、オーバーシュートの可能性が非常に小さくなる。
【0018】
以下に、この発明の一実施形態を、図面に基づきより具体的に説明する。図1は本発明における供給湯温の時間あたりの変化を示すグラフ、図2は本発明に係る湯水混合装置を備えた水栓装置を示す全体の説明図、図3は本発明に係る湯水混合装置を示すブロック図、図4は再出湯時における供給湯温の変化を示すグラフ、図5は同供給湯温の時間当たりの変化を示すグラフ、図6は混合弁機構を示す断面図である。
【0019】
図2において、洗面台Aに洗面ボールBを設け、洗面ボールBの奥縁部には、洗面ボールBに向かって開口した吐水口21aを有するスパウトからなる水栓本体21を立設している。洗面ボールBの上部鍔部22の一側端部には、温度設定や開閉弁の開閉設定の調整をそれぞれ設けることのできる操作部23を設けている。洗面台下方で水栓本体21の基部には、湯水混合装置1が水栓ケーシング24によりケーシングされて配設されている。
【0020】
操作部23は、押し操作及び回動操作可能な操作ハンドルからなり、吐水の開閉と、混合湯温の調整と、三段階の湯量調整とを行うことができるように構成されている。
【0021】
湯水混合装置1は、図3に示すように、給湯器25に連通した給湯管2と、上水に連通した給水管3とを有し、各管2,3先端は混合弁装置4に連通されている。混合弁装置4は、内部に混合弁34及び弁駆動機構36を収納した混合弁ケーシング30と前記混合弁34をスライド駆動させる混合弁駆動装置5とを備えている(図6参照)。
【0022】
図3に示すように、混合弁装置4の下手側には流量調整装置6が連通連設され、更にその下手側に前記水栓本体21が連通連設されている。操作部23は制御部7に接続し、制御部7の出力部は混合弁装置4に付設した混合弁駆動装置5及び流量調整装置6に設けた開閉弁駆動装置8にそれぞれ接続している。
【0023】
更に、給湯管2の中途部にはサーミスタからなる供給湯温検出器9を介設し、また、流量調整装置6と水栓本体21との間の吐水管13の中途部にはサーミスタからなる混合湯温検出器10を介設しており、供給湯温検出器9と混合湯温検出器10はそれぞれ制御部7の入力部に接続されている。
【0024】
なお、流量調整装置6は、上手側に3個の開閉弁11a,11b,11c及び開閉弁駆動機構8a,8b,8cよりなる開閉弁駆動装置8と、その下手側に設けられた3個の定流量弁14a,14b,14cよりなる定流量弁装置15とから構成されており、3個の各開閉弁11a,11b,11cと各定流量弁14a,14b,14cとは、それぞれ1対1で対応して連設されている。すなわち、3個の開閉弁11a,11b,11cのうち小流量の開閉弁11aの1個のみ開弁しておく場合が最も流量が少ない場合であり、3個開閉弁11a,11b,11cを設定流量に応じて適宜選択して開閉弁操作すれば、流量の3段階調整が可能となる。
【0025】
上記のように構成された湯水混合装置1においては、通常、混合湯温検出器10により検出した混合湯温データの信号と供給湯温検出器9により検出した給湯温データの信号とを制御部7に入力し、操作部23により設定された設定温度のデータと比較演算して、水栓本体21から吐水する混合湯が設定温度になるように混合弁駆動装置5を駆動制御するフィードバック制御が行われる。
【0026】
本発明の湯水混合装置1を使用する場合、水栓本体21から所望する湯温と湯量による吐水を行なうには、操作部23による操作で行われ、吐水目的が終了して吐水を中止する場合も操作部23を操作することにより、制御部7を介して流量調整装置6の開閉弁11a,11b,11cを閉弁して水栓本体21からの吐水を中止する。
【0027】
そして、止水されて一定時間経過後に、給湯器25の再出湯が行われる場合、湯温の設定が前回の設定のままであっても、あるいは操作部23により新たに湯温設定がなされた場合であっても、制御部7は、給湯器25から供給される湯の温度の時間あたりの変化量が一定値以下で、かつ操作部23の設定温度値以上であることを検知した時に、制御部7は混合湯温検出器10によって検出された混合湯温の値に基づいて混合弁駆動装置5の制御を行うフィードバック制御をするように構成している。
【0028】
すなわち、制御部7は再出湯時に、まず、給湯器25から供給される湯の温度の時間あたりの変化量を求める。そのためには、給湯器25からの供給湯温を供給湯温検出器9で検出する。検出した供給湯温を時間軸に沿ってプロットしてタイムチャート化すると、供給湯温は図4に示すように変化することが分かる。
【0029】
検出温度としては、給湯器25内の滞留水などの影響により、供給開始時点t0では、設定温度L1より当然低く、その後、上昇していき(t1)、滞留水などの影響が消え始めると(t2)、給湯器25からの実際の湯温が検出され始め、やがて設定温度L1を超える(t3)。
【0030】
かかる供給湯温の変化を、時間当たりの変化で見るために、図4に示された結果を微分すると、図5に示されるグラフが得られる。すなわち、供給開始時点t0から供給湯温検出温度が所定の傾きで上昇するt1までは、時間あたりの変化量は所定の大きさの値で略一定であり、このときの値αは、フィードバック制御を開始する条件となる一定値として定められた一定水準L2よりも高い。その後、図4においてt2まではt1までよりも小さな傾きで温度が徐々に変化しているため、t1〜t2では時間あたりの変化を示す値βは一定水準L2よりも低い値をとっている。本実施形態では、一定水準L2の値を、αとβとの間に設定しているが、図4から分かるように、t1〜t2では操作部23により設定された温度よりも低い。
【0031】
その後、滞留水などの影響が消え始めると、図4においてt2〜t4で示されるように、供給湯温が設定温度をある程度超えるまで急上昇する。この範囲においては、設定温度の直前から超えるまでの間は温度変化が急勾配でリニアな変化となり、その傾きを示す検出温度の時間あたりの変化を示す値は、一定水準L2の値よりもはるかに高い値となっている。
【0032】
そして、図4において、給湯器25からの供給湯温が急勾配でリニアに変化して設定温度を超えた時点から、やや緩やかな変化に移行する時点t4以降は、供給湯温が操作部23による設定温度を上回っており、このときの供給湯温の時間あたりの変化を示す値は、図5に示すように小さくなっていき、やがて一定水準L2よりも小さく推移していく。
【0033】
従って、t5の時点が、供給湯温が操作部23による設定温度を上回っていて、且つ供給湯温の時間あたりの変化を示す値が初めて一定水準L2になるため、制御部7は、このt5の時点からフィードバック制御を開始する。
【0034】
こうして、上述した湯水混合装置1において、制御部7が混合湯温の値に基づいて混合弁駆動装置5のフィードバック制御を開始するパラメータを、供給湯温検出温度の時間あたりの変化を示す値と操作部23の設定温度とし、供給湯温検出温度の時間あたりの変化を示す値が一定値(一定水準L2)以下で、かつ、操作部23の設定温度値以上であることとしたことにより、給湯器25からの供給温度が操作部23による設定温度以上になって安定すれば、即座に混合湯温検出器10によるフィードバック制御が行われることになるため、より短時間で安定した設定温度の混合湯を得ることができる。
【0035】
例えば、吐水停止からさほど時間を経ずに再出湯する場合において、給湯器25を操作して給湯温度を前回の出湯時より低い温度に設定温度を設定したとすると、給湯器25内の滞留水についても湯温はすでに一定湯温に維持されているため、例えば図4及び図5におけるt0〜t2までの時間は著しく短くなって、図1に示したように、給湯開始からわずかの時間で設定温度L0を超えて安定する場合が考えられる。そして、供給湯温が安定するときは、上述したように、時間当たりの変化を示す値が一定水準L2以下になり、この時点からフィードバック制御が開始されることになり、しかも、新たな設定温度は、前回吐水を停止したときの設定温度よりも低いため、図4及び図5におけるt2〜t5までの時間も短縮され、フィードバック制御の開始タイミングはより早くなる。
【0036】
換言すれば、前回より低い温度に設定をして再出湯操作をすれば、迅速に給湯器からの供給湯温の検出温度が設定温度以上で安定することになり、即座にフィードバック制御が開始するため、従来のように給湯管に滞留する湯水を排水するため一定時間経過するのを待ったり、前回の出湯時における供給温度の最終データに近づくまで待つ必要がなくなり再出湯時からの制御時間を短縮することができる。
【0037】
なお、上記の説明では、前回より「低い」温度に設定をして、しかもさほど間を置かずに再出湯操作をした場合におけるフィードバック制御の開始タイミングについて説明したが、仮に再出湯までに長い時間が経過した場合であれば、図4及び図5におけるt0〜t2までの時間についてはさほど短縮されないものの、図4及び図5におけるt2〜t5までの時間については短縮されるため、やはりその分だけは従来よりもフィードバック制御の開始タイミングは早くなる。
【0038】
また、仮に前回より「高い」温度に設定をして再出湯操作をした場合については、「最新データの監視とは無関係に予め定められた一定時間の経過までは、湯水混合装置の湯水混合比率を前回停止時の状態に維持し、その後、サーミスタなどの混合湯温検出装置を用いてフィードバック制御する」という従来技術を適用した場合と比較すると、フィードバック制御開始の待機時間である一定時間の設定如何によっては大差はない場合が考えられるが、従来では、給湯器の機種ごとに異なる給湯管の配管長さなどに応じていちいち待機時間を設定しておかなければならないか、あるいは、最も長い配管長さに合わせるため、比較的配管長さが短い給湯器などではいたずらにフィードバック制御開始タイミングが遅くなってしまう。従って、機種に関わりなく制御プログラムの共通化が図れる本実施形態による制御は優れているといえる。
【0039】
このように、本実施形態に係る湯水混合装置1は、フィードバック制御が最適なタイミングで開始されるため、再出湯時において、可及的に短時間で安定した混合湯を得ることが可能となる。
【0040】
ところで、本発明の湯水混合装置における混合弁装置4は、次のように構成されている。
【0041】
すなわち、図6に示すように、筒状の混合弁ケーシング30の内部に、雄螺子が形成されたスピンドル32を回転可能に収納し、スピンドル32基端は混合弁ケーシング30の外部に設けたDCブラシレスモータよりなる混合弁駆動装置5の出力軸31に連結している。スピンドル32の外周は、混合弁ケーシング30内で雌螺子摺動子33と螺合しており、スピンドル32の正逆回転により、雌螺子摺動子33が混合弁ケーシング30内を左右に移動するように構成している。
【0042】
更に混合弁ケーシング30内において雌螺子摺動子33の先方には、混合弁34が左右摺動自在に収納されており、混合弁34と雌螺子摺動子33との間には巻きバネからなる基部付勢部35が、更に、混合弁34と混合弁ケーシング30内終端部30aとの間には形状記憶合金などの巻きバネからなる感温付勢部37がそれぞれ介在されている。従って、スピンドル32の逆回転によりスピンドル32に螺合した雌螺子摺動子33は前進し基部付勢部35を介して混合弁34を前進させ、正回転によりスピンドル32に螺合した雌螺子摺動子33は後退し、感温付勢部37の付勢力が基部付勢部35の付勢力に勝っているため混合弁34を後退方向に変位させる。
【0043】
このように混合弁装置4は、混合弁駆動装置5の作動によりスピンドル32、雌螺子摺動子33、基部付勢部35、感温付勢部37などを介して混合弁34を混合弁ケーシング30内において進退摺動させるものである。
【0044】
他方、混合弁ケーシング30の周壁には湯供給口38と水供給口39とが穿設され、給湯器からの給湯管2と上水からの給水管3がそれぞれ連通連結されており、湯供給口38及び水供給口39は、混合弁34の周面によって開閉自在となるようにレイアウトされている。
【0045】
混合弁34は、両側を開口の筒状に形成されており、湯水供給口38,39からの湯水が両端開口部34a,34bを流通するように構成されている。
【0046】
また、混合弁ケーシング30の終端面には、混合水吐出口40が形成されており、混合弁ケーシング30内で混合された混合湯水を外部に吐出するように構成されている。
【0047】
また、混合弁駆動装置5は制御部7と接続して制御部7からの出力信号により駆動制御されるように構成されているので(図3参照)、混合弁駆動装置5を制御して、スピンドル32を逆転することにより、混合弁34を前進させて湯供給口38を全面開放状態とし、一方、水供給口39を全面閉塞状態とすれば急激に湯が流入して混合湯水の温度が上昇し、他方、供給湯温が一定温度に上昇するとスピンドル32を正転制御することにより、混合弁34を後退させて湯供給口38と水供給口39との開放比率を調整しながら、設定温度の調整を行うことができる。
【0048】
そして、例えばこの間に、給湯管2から前回給湯停止時より高い温度の湯が供給されると、感温付勢部37において湯供給口38と水供給口39から供給される湯及び水が混合された混合水温を感知して感知温度によりバネ定数を変化させて混合弁34に一定の付勢力を付与し、混合弁34を後退方向(図6の左方向)に摺動させて高温湯が混合弁ケーシング30内に流入することを規制する、すなわち、感温付勢部37の巻きコイルが付勢力を変化させて混合弁34を変位させ、急激な高温湯の流入を調整し、設定温度に近いところで混合弁装置4を制御しオーバーシュートの可能性を減少することができる。
【0049】
このように、フィードバック制御の開示時点までに可及的に早く設定値に近い安定湯温を得ることができるものである。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述してきた各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明における供給湯温の時間あたりの変化を示すグラフである。
【図2】本発明に係る湯水混合装置を備えた水栓装置を示す全体の説明図である。
【図3】本発明に係る湯水混合装置を示すブロック図である。
【図4】再出湯時における供給湯温の変化を示すグラフである。
【図5】供給湯温の時間当たりの変化を示すグラフである。
【図6】本発明における混合弁装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
A 洗面台
B 洗面ボール
1 湯水混合装置
2 給湯管
3 給水管
4 混合弁装置
5 混合弁駆動装置
6 流量調整装置
7 制御部
8 開閉弁駆動装置
9 供給湯温検出器
10 混合湯温検出器
21 水栓本体
22 上部鍔部
23 操作部
24 水栓ケーシング
25 給湯器
30 混合弁ケーシング
31 出力軸
32 スピンドル
33 雌螺子摺動子
34 混合弁
35 基部付勢部
36 弁駆動機構
37 感温付勢部
38 湯供給口
39 水供給口
40 混合水吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と給湯器から供給される湯とを混合し吐水温度を調整する混合弁を有する混合弁装置と、
前記吐水温度を設定するための操作部と、
前記混合弁を駆動する混合弁駆動装置と、
前記混合弁により調整された混合湯温を検出する混合湯温検出器と、
前記混合弁駆動装置を、前記操作部の設定値に基づいて制御する制御部と、
前記給湯器から供給される湯の温度を検出する供給湯温検出器と、
を備えた湯水混合装置であって、
前記制御部は、
前記供給湯温検出器が検知した前記湯の温度の時間あたりの変化量が一定値以下であり、且つ前記供給湯温検出器が検知した前記湯の温度が前記操作部の設定値以上であると判断したときに、前記混合湯温検出器によって検出された前記混合湯温の値に基づいて、前記混合弁駆動装置のフィードバック制御を開始する
ことを特徴とする湯水混合装置。
【請求項2】
前記混合弁装置は、
混合弁ケーシングの内部に移動可能に配置され、移動することにより前記混合弁ケーシングに流入する湯及び水の流量を変化させる混合弁と、
前記混合弁ケーシングの内部に配置され、前記混合弁駆動装置の駆動に応じて、前記混合弁を所定方向に摺動させる付勢力を発生する付勢部と、
前記混合弁ケーシングの内部に配置され、前記混合弁ケーシングに流入して混合された湯水の温度に応じて、前記付勢部とは逆方向に前記混合弁を摺動させる付勢力を発生する感温付勢部と、を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の湯水混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−78261(P2010−78261A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249170(P2008−249170)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】