説明

湯水混合装置

【課題】装置を小型化すると共に、湯水の混合を促進させて正確な温調性能を確保することができる湯水混合装置を提供する。
【解決手段】本発明の湯水混合装置1は、湯流入口36及び水流入口38から流入した湯及び水を混合して適温に調整するための通水路70と、この通水路内で適温に調整した湯水が吐出される吐出口44と、を備えた湯水混合装置本体22と、この湯水混合装置本体の内部に摺動可能に配置され、湯及び水の流量を変化させる主弁体32と、この主弁体を所定方向に摺動させるように付勢するバイアスばね34と、このバイアスばねの付勢方向とは逆の方向に主弁体を付勢し、湯水混合装置本体内で混合された湯水の温度に応じて付勢力を変化させる感温ばね35と、を有し、湯水混合装置本体の通水路は、主弁体と感温素子との間に形成され且つ通水路の上流側の湯及び水を感温ばねの中心軸から偏心した一部の領域に寄せ集めて導くように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水混合装置に係わり、特に、供給された湯及び水を混合し、適温に調整した湯水を吐出させる湯水混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、供給された湯及び水を混合し、適温に調整した湯水を吐出させる湯水混合装置として、形状記憶合金等により形成された感温ばねや熱を加えると膨張する充填物(ワックスエレメント)等によって構成される感温素子の付勢力により弁体を移動させ、吐出される湯水の温度を調整するものが知られている。
【0003】
このような従来の湯水混合装置に用いられている感温素子は、この感温素子に供給される湯水の温度を感知して作動するようになっているが、湯水の混合が不完全な状態で感温素子に供給されると、感温素子の応答性が不安定になったり、感温素子において要求される所定の付勢力が得にくくなり、この感温素子に付勢される主弁体の動作も不正確になるため、正確な温調性能が得られなくなるという問題がある。
【0004】
また、例えば、特許文献1に記載されている湯水混合装置においては、湯水が混合される混合室に設けられた感温ばねの内腔が円柱状体又は円筒状体に保持されており、混合室内に流入した湯と水によって混合された混合水が感温ばねの外周側を通過することにより、感温ばねが混合水の温度に応じて作動するようになっている。
さらに、例えば、特許文献2に記載されている湯水混合装置においては、主弁体の下流側に摺動可能に配置された感温ばねガイド部材の内部に感温ばねが配置されており、主弁体の内部を通過した湯水は、感温ばねガイド部材の主弁体側の端部の中央部から感温ばねの内周側を通過して吐出口に向って流れるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−98243号公報
【特許文献2】特開2008−248960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2に記載されている従来の湯水混合装置においては、取り扱う湯水の最大流量が比較的大きい流量(例えば、30l/min)で使用されるシャワー水栓等に適用する場合には、シャワー水栓自体の大きさが大きいため、シャワー水栓の内部で湯水を混合させるための充分な空間を確保することが容易であるため、満足な温調性能が得られるが、特に、取り扱う湯水の最大流量が比較的小さい流量(例えば、5l/min)で使用される手洗い洗面台の自動水栓等に適用する場合には、自動水栓の大きさがシャワー水栓の大きさよりもコンパクトに設計されているため、湯水を混合させるために必要な空間を確保することが難しく、シャワー水栓に比べて湯水の流量も少ないため、十分な湯水の混合が得られにくいという問題がある。
また、自動水栓の湯水混合装置による湯水の混合が困難になると、感温素子において要求される所定の付勢力が得にくくなり、この感温素子に付勢される主弁体の動作も不正確になるため、正確な温調性能が得られなくなるという問題もある。
したがって、このような比較的小さい流量の湯水を扱う自動水栓に湯水混合装置を適用する場合には、いかに湯水混合装置を小型化すると共に、この小型化した装置内で効率よく湯水を混合させて、十分に混合された湯水を感温素子に供給することが、正確な温調性能を確保する上でも重要な課題となっている。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、装置を小型化すると共に、湯水の混合を促進させて正確な温調性能を確保することができる湯水混合装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、供給された湯及び水を混合し、適温に調整した湯水を吐出させる湯水混合装置であって、湯及び水のそれぞれが流入する湯流入口及び水流入口と、これらの流入口のそれぞれから流入した湯及び水を混合して適温に調整するための通水路と、この通水路内で適温に調整した湯水が吐出される吐出口と、を備えた湯水混合装置本体と、この湯水混合装置本体の内部に摺動可能に配置され、摺動することにより、上記湯流入口と上記水流入口の開度を変化させ、上記湯水混合装置本体内に流入する湯及び水の流量を変化させる主弁体と、この主弁体を所定方向に摺動させるように付勢する付勢手段と、この付勢手段の付勢方向とは逆の方向に上記主弁体を付勢し、上記湯水混合装置本体内で混合された湯水の温度に応じて付勢力を変化させる感温素子と、を有し、上記湯水混合装置本体の通水路は、上記主弁体と上記感温素子との間に形成され且つ上記通水路の上流側の湯及び水を上記感温素子の中心軸から偏心した一部の領域に寄せ集めて導くように形成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、主弁体と感温素子との間の狭い有効スペースを利用して形成された通水路がこの上流側の湯及び水を感温素子の一部の領域に寄せ集めて導くように形成されていることにより、湯水混合装置本体を小型化することができる。また、通水路によって寄せ集めて導かれ、十分に混合された状態の湯水が感温素子に供給されるため、湯水の温度に応じた感温素子及び主弁体の正確な動作を実現し、正確な温調性能を確保することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記湯水混合装置本体の通水路は、その下流側端部が上記感温素子の側面の一部の領域に差し向けられている。
このように構成された本発明においては、通水路の下流側端部から感温素子の一部の領域に供給される湯水の流れによる水圧が、感温素子の側面の一部の領域に差し向けられていることにより、感温素子の軸方向の動作に対して及ぼす影響が抑制されるため、温調性能の低下を抑制することができる。この結果、湯水の温度に応じた感温素子及び主弁体の正確な動作を実現し、正確な温調性能を確保することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記感温素子は、感温ばねであり、上記通水路の下流側端部は、上記感温ばねの外周側から内周側に向けて差し向けられている。
このように構成された本発明においては、通水路内で十分に混合されて適温に調整された湯水が通水路の下流側端部において感温ばねの外周側から内周側に向けて差し向けられるため、例えば、感温ばねの軸方向対して垂直な面内にある湯水を積極的に攪拌し、より混合を促進した状態で感温ばねに接触させることにより、湯水の温度に対する感温ばねの応答性を向上させることができる。この結果、湯水の温度に応じた感温ばね及び主弁体の正確な動作を実現し、正確な温調性能を確保することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記感温ばねの内周側及び外周側には、上記通水路の下流側端部から上記感温ばねに供給された湯水を上記湯水混合装置本体の吐出口に通水させる流路がそれぞれ形成されている。
このように構成された本発明においては、感温ばねの内周側及び外周側には、通水路の下流側端部から感温ばねに供給された湯水を湯水混合装置本体の吐出口に通水させる流路がそれぞれ形成されていることにより、通水路の下流側端部から供給された湯水が感温ばねに接触する面積を増やすことができるため、湯水の温度に対する感温ばねの応答性を向上させることができ、湯水の温度に応じた感温ばね及び主弁体の正確な動作を実現し、正確な温調性能を確保することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、更に、上記感温ばねの外周部を主弁体側から覆うように設けられた感温ばねガイド部材を有し、この感温ばねガイド部材の外周の一部には、その主弁体側の端部から軸方向下流側に所定距離延びた凹溝が形成され、上記凹溝は、この凹溝と対向する上記湯水混合装置本体の内周部分と共に上記通水路を形成し、上記凹溝の下流側端部が上記感温ばねの外周側から内周側に向けて差し向けられている。
このように構成された本発明においては、主弁体と感温ばねとの間の狭い有効スペースを利用して感温ばねの外周部を主弁体側から覆うように感温ばねガイド部材を設け、この感温ばねガイド部材の外周の一部に形成された凹溝の下流側端部を感温ばねの外周側から内周側に向けて差し向けることにより、湯水混合装置本体を小型化することができる。また、主弁体から感温ばねに至る通水路(凹溝)内で湯及び水が混合されるのに十分な流路長さを確保することができる。さらに、通水路(凹溝)の下流側端部から感温ばねに供給される湯水の流れによる水圧が、感温ばねの外周側から内周側に向けて作用することにより、感温ばねの軸方向の動作に及ぼす影響が抑制されるため、温調性能の低下を抑制することができる。また、通水路(凹溝)内で十分に混合されて適温に調整された湯水を通水路(凹溝)の下流側端部から感温ばねの外周部を経て感温ばねの内周部にかけて確実に供給することができ、湯水の温度に対する感温ばねの応答性を向上させることができる。この結果、湯水の温度に応じた感温ばね及び主弁体の正確な動作を実現し、正確な温調性能を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の湯水混合装置によれば、装置を小型化すると共に、湯水の混合を促進させて正確な温調性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態による湯水混合装置が内蔵された湯水混合水栓全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による湯水混合装置の斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態による湯水混合装置の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による湯水混合装置の分解斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態による湯水混合装置に内蔵された感温ばねガイド部材の斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態による湯水混合装置の断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態による湯水混合装置に内蔵された感温ばねガイド部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面により、本発明の第1実施形態による湯水混合装置を説明する。
図1は本発明の第1実施形態による湯水混合装置が内蔵された湯水混合水栓全体を示す斜視図であり、図2は本発明の第1実施形態による湯水混合装置の断面図である。また、図3は本発明の第1実施形態による湯水混合装置の断面図であり、図4は本発明の第1実施形態による湯水混合装置の分解斜視図である。
【0016】
まず、図1に示すように、符号1は、本発明の第1実施形態による湯水混合装置を示し、この湯水混合装置1は、手洗い用の洗面台2に設けられた自動水栓である湯水混合水栓4の水栓本体6に内蔵されている。
つぎに、水栓本体6には、吐水口8に隣接した位置に人感センサー10が配置されており、使用者が吐水口8の下方付近に手指を差し出すと、人感センサー10がこれを検知し、水栓本体6内の湯水混合装置1の上方に内蔵されている電磁弁12が、水栓本体6に内蔵されているコントローラ14の制御によって自動的に開弁し、湯供給管16及び水供給管18のそれぞれから湯水混合装置1に供給されて湯及び水が、湯水混合装置1の内部で適宜混合されて所望の温度の湯に調節された後、吐水口8から吐水されるようになっている。
また、人感センサー10が検知しなくなると、コントローラ14の制御によって電磁弁12が自動的に閉弁し、止水されるようになっている。
【0017】
さらに、湯水混合水栓4の水洗本体6の右側面には、湯温調節用ダイヤル20が取り付けられ、この湯温調節用ダイヤル20は、湯水混合装置1の各主要部品を収容する湯水混合装置本体22から軸方向外側に突出する送りねじ24に取り付けられている。湯温調節用ダイヤル20を回すことにより湯水混合装置1を操作し、吐水口8から吐水される湯水の温度を適温に調節することができるようになっている。
【0018】
つぎに、図2〜図4に示すように、湯水混合装置1は、第1本体部材26及びこの第1本体部材26に取り付けられる第2本体部材28を備えた湯水混合装置本体22と、湯温調節用ダイヤル20に連結される送りねじ24と、この送りねじ24に螺合され、送りねじ24が回転されると第1本体部材26内で摺動する摺動部材30を有する。
【0019】
また、湯水混合装置1は、第1本体部材26の内部に移動可能に配置された主弁体32と、この主弁体32を図3における左方向に付勢する付勢手段であるバイアスばね34と、このバイアスばね34とは反対方向の図3における右方向に主弁体32を付勢する感温素子である感温ばね35を有し、感温ばね35として、形状記憶合金製のコイルばねを使用している。
【0020】
図3及び図4に示すように、第1本体部材26は、ほぼ円筒状の形態であり、湯を流入させるための湯流入口36及び水を流入させるための水流入口38がそれぞれ円周方向に設けられている。
また、湯導入口36の図3における右側の端面は、主弁体32と当接する湯側シート面40として形成されている。
さらに、第1本体部材26の外側には、湯導入口36及び水流入口38を覆うように、円筒状のフィルター37、39がそれぞれ配置されており、湯又は水に混入したゴミ等が、湯水混合装置1の湯水混合装置本体22内に流入するのを防止している。
【0021】
第2本体部材28は、ほぼ円筒状の形態であり、第2本体部材28の図3における左側の端面は、主弁体32と当接する水側シート面42として形成されている。
また、第2本体部材28の水側シート面42とは反対側の端部には、湯水混合装置本体22内で混合された湯を流出させる複数の吐出口44が形成されている。
【0022】
送りねじ24は、第1本体部材26の内部に回転可能に配置されている。送りねじ24の一方の端部には、湯温調節用ダイヤル20が取り付けられるスプライン部46が形成され、他方の端部には、摺動部材30と螺合される送り雄ねじ部48が形成されている。
【0023】
摺動部材30は、ほぼ円筒形の形態であり、第1本体部材26の内部に摺動可能に配置されている。また、摺動部材30の外側には、軸線方向の溝50が形成されており、この溝50が、第1本体部材26の内部に形成された軸線方向に延びる突起(図示せず)を受け入れることによって、摺動部材30の第1本体部材26に対する回転が拘束されている。
さらに、摺動部材30の内側には、送りねじ24の送り雄ねじ部48と螺合される送り雌ねじ部52が形成されている。これにより、送りねじ24を回転させると、摺動部材30は第1本体部材26の軸線方向に摺動されるようになっている。
【0024】
主弁体32は、ほぼ円筒状の円筒部54と、この円筒部54の内壁から内方に延びて円筒部54の内部に軸方向に延びる複数の流路を形成する仕切り部56を備えている。
また、主弁体32の円筒部54の両端には、湯側シート面40と当接する湯側シート部58と、水側シート面42と当接する水側シート部60がそれぞれ形成されている。
【0025】
さらに、図3に示すように、弾性シール部材であるOリング62が、主弁体32の円筒部54の外周に配置されている。このOリング62は、主弁体32の円筒部54と第1本体部材26の内壁面との間に位置し、湯水混合装置本体22内に流入した湯及び水が主弁体32の外側で混合されるのを防止している。
【0026】
また、図3に示すように、主弁体32の内部と摺動部材30との間には、コイル形状のバイアスばね34の内周側に挿入されている軸部材64と、この軸部材64に固定され、バイアスばね34の両端側を保持するばね押え金具66が配置されている。両側のばね押え金具66の間に挟まれたバイアスばね34は、予め圧縮された状態で第1本体部材26の内部に配置されており、摺動部材30がばね押え金具66に当接すると、主弁体32を、図3における左方向に付勢するようになっている。
【0027】
さらに、図3に示すように、主弁体32の左側には、感温ばね35の外周部を主弁体側から覆うように設けられた感温ばねガイド部材68が、第2本体部材28の内部に摺動可能に配置されている。
【0028】
図5は、本発明の第1実施形態による湯水混合装置に内蔵された感温ばねガイド部材の斜視図である。
図3〜図5に示すように、感温ばねガイド部材68は、ほぼ円筒状の部材であり、感温ばね35の主弁体側端部を保持すると共に、主弁体32の下流側の湯及び水を、感温ばねガイド部材68を迂回させると共に感温ばね35の外周側の一部の領域に寄せ集めて感温ばね35に導く通水路70を形成している。
【0029】
また、感温ばねガイド部材68の図3における右側の主弁体側端部74の中央部には、主弁体32の突出部72が挿入可能な挿入穴76が形成され、この主弁体32の突出部72の基端に形成される段部78が感温ばねガイド部材68の端部74に当接すると、主弁体32の突出部72が感温ばねガイド部材68の挿入穴76を貫いて、感温ばね35の内周部に挿入され、感温ばね35が感温ばねガイド部材68を介して主弁体32を図3における右方向に付勢するようになっている。
【0030】
さらに、感温ばねガイド部材68の外周部の一部には、主弁体側端部74から感温ばねガイド部材68の軸方向下流側に向けて所定距離延びて、外周部から内周部に向けて凹んだ凹溝80が形成されている。
すなわち、感温ばねガイド部材68の凹溝80は、主弁体32、感温ばねガイド部材68及び感温ばね35のそれぞれの中心軸から偏心した位置に配置され、この凹溝80と対向する第2本体部材28の内周面によって、主弁体32の下流側の湯及び水を感温ばねガイド部材68及び感温ばね35の外周側の一部の領域に寄せ集めることにより、湯水を混合させて感温ばね35に導く通水路70として機能するようになっている。
【0031】
また、凹溝80の下流側端部に形成される開口82は、通水路70内を通過して混合された湯水が感温ばね35の外周側から内周側に向けて差し向けられている。
【0032】
さらに、感温ばね35の内周側のスペースには、通水路70の開口70から感温ばね35に供給された湯水を湯水混合装置本体22の各吐出口44に向けて通水させる内周側流路84が形成されている。
また、感温ばね35の外周部と感温ばねガイド部材68の内壁面との間のスペースにも、通水路70の開口70から感温ばね35に供給された湯水を湯水混合装置本体22の各吐出口44に向けて通水させる外周側流路86が形成されている。
【0033】
つぎに、図1〜図5を参照して、本発明の実施形態による湯水混合装置1の作用を説明する。
まず、湯水混合水栓4の使用者は、湯温調節用ダイヤル20を所望の温度に設定する。ここで、湯温調節用ダイヤル20を最低温度に設定した場合には、摺動部材30は図3における右端に位置される。この状態では、図3に示すように、摺動部材30がばね押え金具66から離間するのでバイアスばね34による付勢力は作用せず、主弁体32の湯側シート部58は、感温ばね35の付勢力により湯側シート面40に当接される。すなわち、湯水混合装置本体22内には、水流入口38から水のみが流入できる状態となる。
【0034】
つぎに、使用者が設定温度を上昇させるために、湯温調節用ダイヤル20を操作して送りねじ24を回転させると、摺動部材30は図3における左方向に移動され、摺動部材30はばね押え金具66と当接する。これにより、バイアスばね34による付勢力も主弁体32に作用するようになり、主弁体32は、バイアスばね34の付勢力と感温ばね35の付勢力が釣り合う位置に移動される。
【0035】
湯温調節用ダイヤル20を設定した後、使用者が吐水口8の下方付近に手指を差し出すと、人感センサー10がこれを検知し、水栓本体6内の電磁弁12が、コントローラ14の制御によって自動的に開弁し、湯供給管16及び水供給管18のそれぞれから湯水混合装置1に供給されて湯及び水が、湯水混合装置1の内部で適宜混合されて所望の温度の湯に調節された後、吐水口8からの吐水が開始される。
【0036】
吐水が開始されると、湯供給脚4から導入された湯は、フィルター37を介して湯導入口36に流入し、水供給脚6から導入された水は、フィルター39を介して水流入口38に流入する。湯導入口36から流入した湯は主弁体32の湯側シート部58と湯側シート面40の間を通って湯水混合装置本体22内部に流入し、水流入口38から流入した水は主弁体32の水側シート部60と水側シート面42の間を通って湯水混合装置本体22内部に流入する。
【0037】
湯流入口36から湯水混合装置本体22に流入した湯は、主弁体32の円筒部54の中を通って、図3における左方向に流れる。
また、水流入口38から湯水混合装置本体22に流入した水は、主弁体32と感温ばねガイド部材68との間の狭いスペース内の水圧により、感温ばねガイド部材68の外周の一部に形成された通水路70内に導かれるように流れ込む。
さらに、この通水路70内に流れ込んだ水は、円筒部54の中を通過して通水路70内に流れ込んだ湯と狭い通水路70に寄せ集められるように導かれて強制的に混合され、この混合湯水が通水路70の開口82において感温ばね35の外周側から内周側に向けて差し向けられて吐出される。
【0038】
さらに、通水路70の開口82から感温ばね35に向けて吐出された混合湯水は、内周側流路84及び外周側流路86を通過することにより、感温ばね35の内周側及び外周側や感温ばね35のばね素線同士の隙間をまんべんなく流れ、感温ばね35の表面全体に熱を伝えながら、湯水混合装置本体22の各吐出口44から吐出される。この際、通水路70の下流側端部の開口82から感温ばね35に供給される湯水の流れによる水圧が、感温ばね35の外周側から内周側に向けて作用し、感温ばね35の軸方向の動作に及ぼす影響が抑制される。
【0039】
また、感温ばね35を流れる湯水の温度が設定温度よりも高い場合には、感温ばね35は伸びるように作用するので、感温ばね35による付勢力が増大する。これにより、感温ばね35による付勢力とバイアスばね34による付勢力が釣り合う位置が図3における右側に移動し、主弁体32は右方向に移動される。
この結果、湯側シート部58と湯側シート面40の間の距離は短くなり、水側シート部60と水側シート面42の間の距離は長くなるので、湯水混合装置本体22に流入する水の割合が増大し、吐出される湯水の温度が低下する。
逆に、感温ばね35を流れる湯水の温度が設定温度よりも低い場合には、感温ばね35による付勢力は減少し、主弁体32は図3における左方向に移動されて、吐出される湯水の温度が上昇する。
これらの作用により、湯水混合水栓4の吐水口8から吐出される湯水の温度が、設定温度に調節される。
【0040】
上述した本発明の第1実施形態の湯水混合装置1によれば、主弁体32と感温ばね35との間の狭い有効スペースを利用して、主弁体32の下流側の湯及び水を感温ばねガイド部材68の外周の一部に形成された通水路70内に流入させ、感温ばねガイド部材68の外周側の一部の領域に寄せ集めて感温ばね35に導くことにより、通水路70内で湯水の混合を促進させ、十分に混合させた状態の湯水を感温ばね35に導くことができ、適温に調整した湯が湯水混合装置本体22の吐出口44から吐出させることができる。また、主弁体32と感温ばね35との間の狭い有効スペースを利用して、主弁体32の下流側の湯及び水を感温ばねガイド部材68の外周側の一部の領域に寄せ集めて感温ばね35に導く通水路70を形成することにより、湯水混合装置本体22を小型化することができる。
【0041】
また、本実施形態の湯水混合装置1によれば、主弁体32から感温ばね35に至る通水路70について、感温ばねガイド部材68を迂回させるように感温ばねガイド部材68の外周の一部に形成し、通水路70の下流側端部の開口82を感温ばね35の外周側から内周側に向けて差し向けることにより、通水路70内で湯及び水が混合されるのに十分な流路長さを確保することができ、湯水の混合を促進させることができる。
【0042】
さらに、本実施形態の湯水混合装置1によれば、通水路70を通過して十分に混合された状態の湯水が感温ばね35に供給された後、感温ばね35の周囲で攪拌されやすくなるため、湯水混合装置本体22の吐出口44から吐出させる湯水の混合を促進させることができる。
【0043】
また、本実施形態の湯水混合装置1によれば、主弁体32と感温ばね35との間の狭い有効スペースを利用して通水路70の下流側端部の開口82を感温ばね35の外周側から内周側に向けて差し向けることにより、通水路70の下流側端部の開口82から感温ばね35に供給される湯水の流れによる圧力が、感温ばね35の外周側から内周側に向けて作用し、感温ばね35の軸方向の付勢力に及ぼす影響が抑制されるため、感温ばね35の軸方向の動作が不安定になることによる温調性能の低下を抑制することができる。また、通水路70内で十分に混合されて適温に調整された湯水を通水路70の下流側端部の開口82から感温ばね35の外周部を経て感温ばね35の内周部にかけて確実に供給することができ、湯水の温度に対する感温ばね35の応答性を向上させることができるため、湯水の温度に応じた感温ばね35及び主弁体32の正確な動作を実現し、湯水混合装置1の正確な温調性能を確保することができる。
【0044】
また、本実施形態の湯水混合装置1によれば、通水路70の下流側端部の開口82から感温ばね35に供給された混合湯水を湯水混合装置本体22の吐出口44に通水させる流路84,86が感温ばね35の内周側及び外周側の双方にそれぞれ形成されていることにより、通水路70の下流側端部の開口82から供給された混合湯水が感温ばね35の内周側及び外周側や感温ばね35のばね素線同士の隙間をまんべんなく流れて感温ばね35に接触する面積を増やすことができるため、湯水の温度に対する感温ばね35の付勢力の応答性を向上させることができ、湯水の温度に応じた感温ばね35及び主弁体32の正確な動作を実現し、正確な温調性能を確保することができる。
【0045】
つぎに、図6及び図7を参照して、本発明の第2実施形態による湯水混合装置を説明する。
図6は本発明の第2実施形態による湯水混合装置の断面図であり、図7は本発明の第2実施形態による湯水混合装置に内蔵された感温ばねガイド部材の斜視図である。
ここで、本発明の第2実施形態による湯水混合装置においては、内蔵されている感温ばねガイド部材の構成とこれらの周辺の一部の構成が上述した第1実施形態とは異なっている。
したがって、本発明の第2実施形態では、第1実施形態とは異なる点のみを説明し、同一の構成については同一の符号を付し、これらの説明は省略する。
【0046】
図6及び図7に示すように、本発明の第2実施形態による湯水混合装置100の感温ばねガイド部材102は、湯水混合水栓装置本体22の第2本体部材28内に摺動可能に配置されており、ほぼ円筒状の円筒部104と、この円筒部104の図6における右側に位置する主弁体側端部に形成された突縁部106を備えている。
また、感温ばねガイド部材102の円筒部104の突縁部106側の一部には、開口108が形成され、感温ばねガイド部材102の図6における右側から突縁部106の内周側を経て円筒部104の開口108にかけて通水路110が形成されている。
【0047】
このように構成された本発明の第2実施形態による湯水混合装置100においては、湯流入口36から湯水混合装置本体22に流入した湯は、主弁体112の円筒部114の中を通って通水路110内に流入し、水流入口38から湯水混合装置本体22に流入した水は、主弁体112と感温ばねガイド部材102との間の狭いスペース内の水圧により、感温ばねガイド部材102の内周部に形成された通水路110内に導かれるように流れ込む。
また、この通水路110内に流れ込んだ水は、主弁体112の円筒部114の中を通過して通水路110内に流れ込んだ湯と狭い通水路110内で強制的に混合され、この混合湯水が通水路110の開口108において感温ばね35の内周側から外周側に向けて差し向けられて吐出される。
【0048】
さらに、通水路110の開口108から感温ばね35に向けて吐出された混合湯水は、内周側流路84及び外周側流路86を通過することにより、感温ばね35の内周側及び外周側や感温ばね35のばね素線同士の隙間をまんべんなく流れ、湯水混合装置本体22の各吐出口44から吐出される。この際、通水路110の開口108から感温ばね35に供給される湯水の流れによる圧力が、感温ばね35の内周側から外周側に向けて作用し、感温ばね35の軸方向の動作に及ぼす影響が抑制される。
【0049】
上述した本発明の第2実施形態の湯水混合装置100によれば、主弁体112と感温ばね35との間の狭い有効スペースを利用して、主弁体112の下流側の湯及び水を感温ばねガイド部材102の内周の一部に形成された通水路110内に流入させ、感温ばねガイド部材102の内周側の一部の領域に寄せ集めて感温ばね35に導くことにより、通水路110内での湯水の混合を促進させ、十分に混合させた状態の湯水を感温ばね35に導くことができ、適温に調整された湯を湯水混合装置本体22の吐出口44から吐出させることができる。また、主弁体112と感温ばね35との間の狭い有効スペースを利用して、主弁体32の下流側の湯及び水を感温ばねガイド部材102の内周側の一部の領域に寄せ集めて感温ばね35に導く通水路110を形成することにより、湯水混合装置本体22を小型化することができる。さらに、通水路110を通過して十分に混合された状態の湯水が感温ばね35に供給されるため、湯水の温度に応じた感温ばね35及び主弁体112の正確な動作を実現し、湯水混合装置100の正確な温調性能を確保することができる。
【0050】
なお、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による湯水混合装置においては、感温素子に用いられる感温ばね35として、形状記憶合金製のコイルばねを使用している例について説明したが、この感温ばね35の代わりに、熱を加えると膨張する充填物(ワックスエレメント)のような感温素子を使用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 湯水混合装置
2 洗面台
4 湯水混合水栓
6 水栓本体
8 吐水口
10 人感センサー
12 電磁弁
14 コントローラ
16 湯供給管
18 水供給管
20 湯温調節用ダイヤル
22 湯水混合装置本体
24 送りねじ
26 第1本体部材
28 第2本体部材
30 摺動部材
32 主弁体
34 バイアスばね
35 感温ばね
36 湯流入口
37 フィルター
38 水流入口
39 フィルター
40 湯側シート面
42 水側シート面
44 吐出口
46 スプライン部
48 送り雄ねじ部
50 溝
52 送り雌ねじ部
54 円筒部
56 仕切り部
58 湯側シート部
60 水側シート部
62 Oリング
64 軸部材
66 ばね押え金具
68 感温ばねガイド部材
70 通水路
72 突出部
74 感温ばねガイド部材の主弁体側端部
76 挿入穴
78 段部
80 凹溝
82 開口
84 内周側流路
86 外周側流路
100 湯水混合装置
102 感温ばねガイド部材
104 円筒部
106 突縁部
108 開口
110 通水路
112 主弁体
114 円筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された湯及び水を混合し、適温に調整した湯水を吐出させる湯水混合装置であって、
湯及び水のそれぞれが流入する湯流入口及び水流入口と、これらの流入口のそれぞれから流入した湯及び水を混合して適温に調整するための通水路と、この通水路内で適温に調整した湯水が吐出される吐出口と、を備えた湯水混合装置本体と、
この湯水混合装置本体の内部に摺動可能に配置され、摺動することにより、上記湯流入口と上記水流入口の開度を変化させ、上記湯水混合装置本体内に流入する湯及び水の流量を変化させる主弁体と、
この主弁体を所定方向に摺動させるように付勢する付勢手段と、
この付勢手段の付勢方向とは逆の方向に上記主弁体を付勢し、上記湯水混合装置本体内で混合された湯水の温度に応じて付勢力を変化させる感温素子と、を有し、
上記湯水混合装置本体の通水路は、上記主弁体と上記感温素子との間に形成され且つ上記通水路の上流側の湯及び水を上記感温素子の中心軸から偏心した一部の領域に寄せ集めて導くように形成されていることを特徴とする湯水混合装置。
【請求項2】
上記湯水混合装置本体の通水路は、その下流側端部が上記感温素子の側面の一部の領域に差し向けられている請求項1記載の湯水混合装置。
【請求項3】
上記感温素子は、感温ばねであり、上記通水路の下流側端部は、上記感温ばねの外周側から内周側に向けて差し向けられている請求項2記載の湯水混合装置。
【請求項4】
上記感温ばねの内周側及び外周側には、上記通水路の下流側端部から上記感温ばねに供給された湯水を上記湯水混合装置本体の吐出口に通水させる流路がそれぞれ形成されている請求項3記載の湯水混合装置。
【請求項5】
更に、上記感温ばねの外周部を主弁体側から覆うように設けられた感温ばねガイド部材を有し、この感温ばねガイド部材の外周の一部には、その主弁体側の端部から軸方向下流側に所定距離延びた凹溝が形成され、上記凹溝は、この凹溝と対向する上記湯水混合装置本体の内周部分と共に上記通水路を形成し、上記凹溝の下流側端部が上記感温ばねの外周側から内周側に向けて差し向けられている請求項3又は4に記載の湯水混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−57779(P2012−57779A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204514(P2010−204514)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】