説明

湿度センサの劣化診断方法

【課題】どのような環境に設置された湿度センサでもその劣化を診断することができるようにする。
【解決手段】加熱クリーニングの終了後の湿度計測値Pを初期値P0として記憶する。加熱クリーニングを行う毎に、加熱クリーニングの終了後の湿度計測値Pと初期値P0との偏差ΔP(ΔP=|P−P0|)を求め、この偏差ΔPが閾値ΔPthよりも大きくなった場合に、湿度センサの劣化と判定する。洗浄クリーニングを行う場合にも同様にして湿度センサの劣化を判定することができる。閾値ΔPthに代えて許容湿度範囲Wを用いたりしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、計測環境雰囲気中に設置される湿度センサの劣化を診断する湿度センサの劣化診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、湿度センサには、湿度の変化に応じて感湿素子の抵抗値が変化する抵抗変化式や湿度の変化に応じて感湿素子の容量が変化する容量変化方式の湿度センサなどがある。これら何れの方式の湿度センサも測定現場に設置されると、計測環境の雰囲気中に直接さらされて湿度を計測するため、計測環境の雰囲気(例えば、薬品、溶剤などのガスや高湿環境など)によって、感湿素子が劣化して行く。この感湿素子の劣化を本明細書では湿度センサの劣化と言う。
【0003】
なお、加熱や洗浄によって湿度センサの劣化を回復させることにより、湿度センサの耐用期間を延ばすことができることが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。以下では、加熱することによって湿度センサの劣化の回復を図る回復処理を加熱クリーニング、洗浄することによって湿度センサの劣化の回復を図る回復処理を洗浄クリーニングと呼ぶ。ただし、回復処理を行っても完全に湿度センサの劣化が解消するわけではなく、ある程度の劣化は残り、その劣化が積み重なって、ある時点で使用に耐えられなくなると、湿度センサを交換しなければならない。
【0004】
このような湿度センサに対し、その劣化を診断する技術を確立することは、信頼性の高い湿度計測を継続するうえで有益である。この湿度センサの劣化を診断する技術として、例えば特許文献2には、内燃機関の排気ガス雰囲気中に配置される湿度センサの劣化を診断する方法について記載されている。この特許文献2に記載された方法では、例えば、内燃機関の始動直後における湿度センサの低湿度側への変化の程度や低湿度側への出力値の大きさに基づいて、湿度センサの劣化を判定する。
【0005】
【特許文献1】特開2003−166963号公報
【特許文献2】特開2003−166964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に示された方法では、内燃機関の排気ガス雰囲気中の始動直後の湿度変化の特性を利用して湿度センサの劣化を判定するようにしており、内燃機関の排気ガス雰囲気中以外の環境では、特定の湿度変化は期待できず、環境の湿度やその変化が不明であるため、湿度センサの劣化を判定することができない。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、どのような環境に設置された湿度センサでもその劣化を診断することが可能な湿度センサの劣化診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、第1発明(請求項1に係る発明)は、計測環境雰囲気中に設置される湿度センサの劣化を診断する湿度センサの劣化診断方法において、湿度センサの劣化の回復を図る回復処理を所定の周期で行うステップと、最初の回復処理の終了後の湿度センサによって計測される湿度計測値を初期値としてメモリに記憶するステップと、回復処理を行う毎に、その回復処理の終了後の湿度センサによって計測される湿度計測値と初期値とを比較し、その比較結果に基づいて湿度センサの劣化を診断するステップとを設けたものである。
この発明によれば、所定の周期で、加熱クリーニングや洗浄クリーニングなどの回復処理が行われる。この場合、最初の回復処理の終了後の湿度計測値Pが初期値P0としてメモリに記憶され、回復処理が行われる毎に、その回復処理の終了後の湿度計測値Pと初期値P0とが比較され、その比較結果に基づいて湿度センサの劣化が診断される。例えば、回復処理の終了後の湿度計測値Pと初期値P0との偏差ΔPが閾値ΔPthよりも大きくなった場合に、湿度センサの劣化と判定する。これにより、最初の回復処理の終了後の湿度計測値P0を基準として、湿度センサが設置されている環境に左右され難く、湿度センサの劣化診断を行うことが可能となる。
【0009】
第2発明(請求項2に係る発明)は、計測環境雰囲気中に設置される湿度センサの劣化を診断する湿度センサの劣化診断方法において、湿度センサの劣化の回復を図る回復処理を所定の周期で行うステップと、最初の回復処理の終了後の湿度センサによって計測される湿度計測値を基準値とし、この基準値から所定の範囲を許容湿度範囲としてメモリに記憶するステップと、回復処理を行う毎に、その回復処理の終了後の湿度センサによって計測される湿度計測値が許容湿度範囲内にあるか否かを確認し、その確認結果に基づいて湿度センサの劣化を診断するステップとを設けたものである。
この発明によれば、所定の周期で、加熱クリーニングや洗浄クリーニングなどの回復処理が行われる。この場合、最初の回復処理の終了後の湿度計測値Pを基準値P0とし、この基準値P0から所定の範囲(P0±α)が許容湿度範囲Wとしてメモリに記憶され、回復処理が行われる毎に、その回復処理の終了後の湿度計測値Pが許容湿度範囲W内にあるか否かが確認され、その確認結果に基づいて湿度センサの劣化が診断される。例えば、回復処理の終了後の湿度計測値Pが許容湿度範囲Wから外れた場合に、湿度センサの劣化と判定する。これにより、最初の回復処理の終了後の湿度計測値P0を基準として、湿度センサが設置されている環境に左右され難く、湿度センサの劣化診断を行うことが可能となる。また、計測環境の違いや求められる計測精度や信頼性を考慮して、許容湿度範囲Wを柔軟に設定することにより、計測環境などに合わせた適切な精度で、湿度センサの劣化診断を行うことが可能となる。
【0010】
第3発明(請求項3に係る発明)は、計測環境雰囲気中に設置される湿度センサの劣化を診断する湿度センサの劣化診断方法において、湿度センサの劣化の回復を図る回復処理を所定の周期で行うステップと、最初の回復処理の終了後の湿度センサによって計測される湿度計測値を初期値としてメモリに記憶するステップと、回復処理を行う毎に、その回復処理の終了後の湿度センサによって計測される湿度計測値および所定回数前までの各回復処理の終了後の湿度センサによって計測された各湿度計測値と初期値とを比較し、それぞれの比較結果に基づいて湿度センサの劣化を診断するステップとを設けたものである。
この発明によれば、所定の周期で、加熱クリーニングや洗浄クリーニングなどの回復処理が行われる。この場合、最初の回復処理の終了後の湿度計測値Pが初期値P0としてメモリに記憶され、回復処理が行われる毎に、その回復処理の終了後の湿度計測値P(Pn)および所定回数前までの各回復処理の終了後の各湿度計測値P(Pi)と初期値P0とが比較され、それぞれの比較結果に基づいて湿度センサの劣化が診断される。例えば、今回の回復処理の終了後に計測された湿度計測値Pnと初期値P0との偏差ΔPnと所定回数前までの各回復処理の終了後に計測された各湿度計測値Piと初期値P0との各偏差ΔPiとを合計し、その平均値が閾値ΔPthよりも大きくなった場合に、湿度センサの劣化と判定する。これにより、最初の回復処理の終了後の湿度計測値P0を基準として、湿度センサが設置されている環境に左右され難く、湿度センサの劣化診断を行うことが可能となる。また、湿度計測のばらつきも考慮した経年変化をみて湿度センサの劣化診断が行われるものとなり、より正確に湿度センサの劣化診断を行うことが可能となる。
【0011】
第4発明(請求項4に係る発明)は、第1〜第3発明において、回復処理の周期を第1の周期とし、この第1の周期よりも短い第2の周期で計測環境雰囲気中の湿度を湿度センサによって計測するステップと、回復処理を行う毎に、その回復処理の終了後の湿度センサによって計測される湿度計測値と初期値との偏差を求め、この求めた偏差に基づいて次回の回復処理を行う前までの間に第2の周期で計測される湿度計測値を補正するステップとを設けたものである。
この発明によれば、回復処理の周期をT1(第1の周期)とした場合、この周期T1よりも短い周期T2(第2の周期)で計測環境雰囲気中の湿度が計測される。この周期T2での湿度の計測中、回復処理が行われると、その回復処理の終了後の湿度計測値Pと初期値P0との偏差ΔPが求められ、この偏差ΔPに基づいて次回の回復処理を行う前までの間に周期T2で計測される湿度計測値Hが補正される。
【0012】
第5発明(請求項5に係る発明)は、第1〜第3発明において、回復処理の周期を第1の周期とし、この第1の周期よりも短い第2の周期で計測環境雰囲気中の湿度を湿度センサによって計測するステップと、回復処理を行う毎に、その回復処理の終了後の湿度センサによって計測される湿度計測値と初期値との偏差を求め、この求めた偏差と予め定められている最大補正可能偏差とを比較し、前記偏差が最大補正可能偏差を超えていなければ、前記偏差に基づいて次回の回復処理を行う前までの間に第2の周期で計測される湿度計測値を補正し、前記偏差が最大補正可能偏差を超えていれば、第2の周期で計測される湿度計測値の補正は行わず、湿度センサが劣化したと判定するステップとを設けたものである。
この発明によれば、回復処理の周期をT1(第1の周期)とした場合、この周期T1よりも短い周期T2(第2の周期)で計測環境雰囲気中の湿度が計測される。この周期T2での湿度の計測中、回復処理が行われると、その回復処理の終了後の湿度計測値Pと初期値P0との偏差ΔPが求められ、この偏差ΔPと予め定められている最大補正可能偏差ΔHmaxとが比較される。ここで、偏差ΔPが最大補正可能偏差ΔHmaxを超えていなければ(ΔP≦ΔHmax)、偏差ΔPに基づいて次回の回復処理を行う前までの間に周期T2で計測される湿度計測値Hが補正される。偏差ΔPが最大補正可能偏差ΔHmaxを超えていれば(ΔP>ΔHmax)、周期T2で計測される湿度計測値Hの補正は行われず、湿度センサが劣化したと判定される。
この発明において、偏差ΔPが最大補正可能偏差ΔHmaxを超えていた場合、周期T2で計測される湿度計測値Hを補正したとしても、その補正後の湿度計測値H’の信憑性は低い。この発明では、偏差ΔPが最大補正可能偏差ΔHmaxを超えていた場合、周期T2で計測される湿度計測値Hの補正は行われないので、信憑性が低い湿度計測値H’に基づいて制御や各種判断が行われることを避けることができる。また、この場合、湿度センサが劣化したと判定されるので、湿度センサの適切な交換時期を知ることができる。
【0013】
第1〜第5発明において、湿度センサの劣化の回復を図る回復処理は、湿度センサを加熱することによって劣化の回復を図る加熱クリーニングとしてもよく(第6発明(請求項6に係る発明))、湿度センサを洗浄することによって劣化の回復を図る洗浄クリーニング(第7発明(請求項7に係る発明))としてもよい。また、本発明において、湿度センサの劣化の回復を図る回復処理は、加熱クリーニングや洗浄クリーニングに限られるものではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加熱クリーニングや洗浄クリーニングなどの回復処理を行う毎に、最初の回復処理の終了後の湿度計測値を基準として湿度センサの劣化が診断されるものとなり、湿度センサが設置されている環境に左右され難く、どのような環境に設置された湿度センサでもその劣化を診断することが可能となる。また、その診断結果から湿度センサの適切な交換時期を知り、信頼性の高い湿度計測を継続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1〕
図1は本発明の実施に用いる湿度計測装置の一例(実施の形態1)を示すブロック構成図である。同図において、1は計測環境の雰囲気中に設置された容量変化方式の湿度センサ、2は湿度センサ1に対して設けられた加熱クリーニング用のヒータ、3は湿度センサ1からの計測湿度に応じた容量変化信号を電圧信号に変換するC−V変換回路、4は加熱クリーニング用のヒータ2に対して設けられたヒータ回路、5はマイクロコンピュータ、6は表示部である。
【0016】
マイクロコンピュータ5は、CPU5−1やROM5−2,RAM5−3、不揮発性のメモリ5−4などを備えており、CPU5−1はRAM5−3や不揮発性のメモリ5−4にアクセスしながら、ROM5−2に格納されたプログラムに従って動作する。ROM5−2には、本実施の形態特有のプログラムとして、湿度センサの劣化診断プログラムが格納されている。
【0017】
〔実施の形態1の第1例〕
図2にCPU5−1が実行する湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第1例(実施の形態1の第1例)のフローチャートを示す。CPU5−1は、ユーザからの劣化診断の開始の指示を受けて(ステップ101のYES)、ヒータ回路4へ加熱クリーニング指令を送る(ステップ102)。これにより、湿度センサ1がヒータ2によって加熱され、この加熱によって湿度センサ1の劣化の回復(加熱クリーニング)が図られる。
【0018】
加熱クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ0%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値(相対湿度)が低下する(図3(a)に示すt1点)。CPU5−1は、この加熱クリーニング(最初の加熱クリーニング)の終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値Pを求め(ステップ103)、この求めた湿度計測値Pを初期値P0として不揮発性のメモリ5−4に格納する(ステップ104)。
【0019】
そして、予め定められているクリーニング周期T1の経過を待って、すなわち前回の加熱クリーニング指令から周期T1の経過を待って(ステップ105のYES)、次の加熱クリーニング指令をヒータ回路4へ送り(ステップ106)、湿度センサ1の加熱クリーニングを行う。
【0020】
加熱クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ0%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値が低下する(図3(a)に示すt2点)。CPU5−1は、この加熱クリーニング(2回目の加熱クリーニング)の終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値P(P1)を求める(ステップ107)。
【0021】
そして、この求めた湿度計測値P1と初期値P0との偏差ΔP1(ΔP1=|P1−P0|)を求め(ステップ108)、この湿度計測値P1と初期値P0との偏差ΔP1と予め定められている閾値ΔPthとを比較する(ステップ109)。ここで、ΔP1≦ΔPthであれば(ステップ109のNO)、ステップ105へ戻り、ΔP1>ΔPthであれば(ステップ109のYES)、ステップ110へ進む。
【0022】
ここでは、湿度センサ1に大きな劣化は生じておらず、ΔP1≦ΔPthであるとする。この場合、CPU5−1は、ステップ109のNOに応じてステップ105へ戻り、クリーニング周期T1の経過を待って(ステップ105のYES)、次の加熱クリーニング指令をヒータ回路4へ送り(ステップ106)、湿度センサ1の加熱クリーニングを行う。
【0023】
加熱クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ0%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値が低下する(図3(a)に示すt3点)。CPU5−1は、この加熱クリーニング(3回目の加熱クリーニング)の終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値P(P2)を求める(ステップ107)。
【0024】
そして、この求めた湿度計測値P2と初期値P0との偏差ΔP2(ΔP2=|P2−P0|)を求め(ステップ108)、この湿度計測値P2と初期値P0との偏差ΔP2と閾値ΔPthとを比較する(ステップ109)。以下同様にして、ステップ109において、ΔP>ΔPthが確認されるまで、ステップ105〜109の処理動作を繰り返す。
【0025】
ここで、例えば、7回目の加熱クリーニングにおいて(図3(a),(b)に示すt7点)、その加熱クリーニングの終了後の湿度計測値P6と初期値P0との偏差ΔP6が閾値ΔPthよりも大きくなったとする。すると、CPU5−1は、ΔP6>ΔPthとなったことを確認して(ステップ109のYES)、湿度センサ1に劣化が生じたことを示す劣化サインを表示部6へ出力する(ステップ110、図3(c)に示すt7点)。
【0026】
このようにして、この実施の形態1の第1例では、最初の加熱クリーニングの終了後の湿度計測値P0を基準として湿度センサ1の劣化が診断されるものとなり、湿度センサ1が設置されている環境に左右され難く、どのような計測環境に設置された湿度センサ1でもその劣化を診断することができるようになる。また、この診断結果から、湿度センサ1の適切な交換時期を知り、信頼性の高い湿度計測を継続することができるようになる。
【0027】
〔実施の形態1の第2例〕
図4にCPU5−1が実行する湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第2例(実施の形態1の第2例)のフローチャートを示す。CPU5−1は、ユーザからの劣化診断の開始の指示を受けて(ステップ201のYES)、ヒータ回路4へ加熱クリーニング指令を送る(ステップ202)。これにより、湿度センサ1がヒータ2によって加熱され、この加熱によって湿度センサ1の劣化の回復(加熱クリーニング)が図られる。
【0028】
加熱クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ0%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値(相対湿度)が低下する(図5(a)に示すt1点)。CPU5−1は、この加熱クリーニング(最初の加熱クリーニング)の終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値Pを求め(ステップ203)、この求めた湿度計測値Pを基準値P0とし、この基準値P0から所定の範囲(P0±α)を許容湿度範囲Wとして不揮発性のメモリ5−4に格納する(ステップ204)。
【0029】
そして、予め定められているクリーニング周期T1の経過を待って、すなわち前回の加熱クリーニング指令から周期T1の経過を待って(ステップ205のYES)、次の加熱クリーニング指令をヒータ回路4へ送り(ステップ206)、湿度センサ1の加熱クリーニングを行う。
【0030】
加熱クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ0%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値が低下する(図5(a)に示すt2点)。CPU5−1は、この加熱クリーニング(2回目の加熱クリーニング)の終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値P(P1)を求める(ステップ207)。
【0031】
そして、この求めた湿度計測値P1が許容湿度範囲W内にあるか否かを確認し(ステップ208)、湿度計測値P1が許容湿度範囲W内にあれば(ステップ208のYES)、ステップ205へ戻り、湿度計測値P1が許容湿度範囲W内になければ(ステップ208のNO)、ステップ209へ進む。
【0032】
ここでは、湿度センサ1に大きな劣化は生じておらず、湿度計測値P1が許容湿度範囲W内にあるものとする。この場合、CPU5−1は、ステップ208のYESに応じてステップ205へ戻り、クリーニング周期T1の経過を待って(ステップ205のYES)、次の加熱クリーニング指令をヒータ回路4へ送り(ステップ206)、湿度センサ1の加熱クリーニングを行う。
【0033】
加熱クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ0%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値が低下する(図5(a)に示すt3点)。CPU5−1は、この加熱クリーニング(3回目の加熱クリーニング)の終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値P(P2)を求め(ステップ207)、この求めた湿度計測値P2が許容湿度範囲W内にあるか否かを確認する(ステップ208)。以下同様にして、ステップ208において、湿度計測値Pが許容湿度範囲W内にないことが確認されるまで、ステップ205〜208の処理動作を繰り返す。
【0034】
ここで、例えば、7回目の加熱クリーニングにおいて(図5(a),(b)に示すt7点)、この加熱クリーニングの終了後の湿度計測値P6が許容湿度範囲Wから外れたとする。すると、CPU5−1は、湿度計測値P6が許容湿度範囲W内にないことを確認して(ステップ208のNO)、湿度センサ1に劣化が生じたことを示す劣化サインを表示部6へ出力する(ステップ209、図5(c)に示すt7点)。
【0035】
このようにして、この実施の形態1の第2例では、最初の加熱クリーニングの終了後の湿度計測値P0を基準として湿度センサ1の劣化が診断されるものとなり、湿度センサ1が設置されている環境に左右され難く、どのような計測環境に設置された湿度センサ1でもその劣化を診断することができるようになる。また、この診断結果から、湿度センサ1の適切な交換時期を知り、信頼性の高い湿度計測を継続することができるようになる。また、計測環境の違いや求められる計測精度や信頼性を考慮して、許容湿度範囲Wを柔軟に設定することにより、計測環境などに合わせた適切な精度で、湿度センサ1の劣化診断を行うことができるようになる。
【0036】
〔実施の形態1の第3例〕
図6にCPU5−1が実行する湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第3例(実施の形態1の第3例)のフローチャートを示す。CPU5−1は、ユーザからの劣化診断の開始の指示を受けて(ステップ301のYES)、ヒータ回路4へ加熱クリーニング指令を送る(ステップ302)。これにより、湿度センサ1がヒータ2によって加熱され、この加熱によって湿度センサ1の劣化の回復(加熱クリーニング)が図られる。
【0037】
加熱クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ0%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値(相対湿度)が低下する(図7(a)に示すt1点)。CPU5−1は、この加熱クリーニング(最初の加熱クリーニング)の終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値Pを求め(ステップ303)、この求めた湿度計測値Pを初期値P0として不揮発性のメモリ5−4に格納する(ステップ304)。
【0038】
そして、予め定められているクリーニング周期T1の経過を待って、すなわち前回の加熱クリーニング指令から周期T1の経過を待って(ステップ305のYES)、次の加熱クリーニング指令をヒータ回路4へ送り(ステップ306)、湿度センサ1の加熱クリーニングを行う。
【0039】
加熱クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ0%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値が低下する(図7(a)に示すt2点)。CPU5−1は、この加熱クリーニング(2回目の加熱クリーニング)の終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値P(P1)を求める(ステップ307)。
【0040】
そして、この求めた湿度計測値P1と初期値P0との偏差ΔP1(ΔP1=|P1−P0|)を求め(ステップ308)、この湿度計測値P1と初期値P0との偏差ΔP1を今回の偏差ΔPとして不揮発性のメモリ5−4に格納する(ステップ309)。そして、今回の偏差ΔPとX回前(この例では、X=2とする)までの各偏差ΔPとを合計し、その平均値ΔPAVを求める(ステップ310)。この場合、ΔPはΔP1しか求められていないので、ΔP1を平均値ΔPAVとする。そして、この平均値ΔPAVと予め定められている閾値ΔPthとを比較し(ステップ311)、ΔPAV≦ΔPthであれば(ステップ311のNO)、ステップ305へ戻り、ΔPAV>ΔPthであれば(ステップ311のYES)、ステップ312へ進む。
【0041】
ここでは、湿度センサ1に大きな劣化は生じておらず、ΔPAV≦ΔPthであるとする。この場合、CPU5−1は、ステップ311のNOに応じてステップ305へ戻り、クリーニング周期T1の経過を待って(ステップ305のYES)、次の加熱クリーニング指令をヒータ回路4へ送り(ステップ306)、湿度センサ1の加熱クリーニングを行う。
【0042】
加熱クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ0%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値が低下する(図7(a)に示すt3点)。CPU5−1は、この加熱クリーニング(3回目の加熱クリーニング)の終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値P(P2)を求める(ステップ107)。
【0043】
そして、この求めた湿度計測値P2と初期値P0との偏差ΔP2(ΔP2=|P2−P0|)を求め(ステップ308)、この湿度計測値P2と初期値P0との偏差ΔP2を今回の偏差ΔPとして、不揮発性のメモリ5−4に格納する(ステップ309)。そして、今回の偏差ΔPとX=2回前までの各偏差ΔPとを合計し、その平均値ΔPAVを求める(ステップ310)。この場合、ΔPはΔP1とΔP2しか求められていないので、ΔP1とΔP2との合計の平均値をΔPAVとする。そして、この平均値ΔPAVと閾値ΔPthとを比較する(ステップ311)。以下同様にして、ステップ311において、ΔPAV>ΔPthが確認されるまで、ステップ305〜311の処理動作を繰り返す。
【0044】
ここで、例えば、7回目の加熱クリーニングにおいて(図7(a),(b)に示すt7点)、その加熱クリーニングの終了後の湿度計測値P6と初期値P0との偏差ΔP6とX=2回前までの各偏差ΔP(ΔP4,ΔP5)との合計の平均値ΔPAVが閾値ΔPthよりも大きくなったとする。すると、CPU5−1は、ΔPAV>ΔPthとなったことを確認して(ステップ311のYES)、湿度センサ1に劣化が生じたことを示す劣化サインを表示部6へ出力する(ステップ312、図7(c)に示すt7点)。
【0045】
このようにして、この実施の形態1の第3例では、最初の加熱クリーニングの終了後の湿度計測値P0を基準として湿度センサ1の劣化が診断されるものとなり、湿度センサ1が設置されている環境に左右され難く、どのような計測環境に設置された湿度センサ1でもその劣化を診断することができるようになる。また、湿度計測のばらつきも考慮した経年変化をみて湿度センサ1の劣化診断が行われるものとなり、より正確に湿度センサ1の劣化診断を行うことができるようになる。
【0046】
〔実施の形態1の第4例〕
実施の形態1の第1〜第3例では、湿度センサの劣化診断の処理についてのみ説明したが、この湿度センサの劣化診断の処理に湿度計測値の補正処理を組み合わせるようにしてもよい。図8に湿度センサの劣化診断の処理に湿度計測値の補正処理を組み合わせた場合の第1例(実施の形態1の第4例)のフローチャートを示す。
【0047】
この例では、クリーニング周期T1を第1の周期とし、この第1の周期T1よりも短い第2の周期T2(T2<T1)を湿度の計測周期とする。CPU5−1は、第2の周期T2でC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み(ステップ402のYES)、この電圧信号から湿度計測値Hを求める(ステップ403)。
【0048】
この第2の周期T2での湿度の計測中、前回の加熱クリーニング指令からクリーニング周期T1が経過すると(ステップ401のYES)、CPU5−1は、次の加熱クリーニング指令をヒータ回路4へ送り(ステップ405)、湿度センサ1の加熱クリーニングを行う。
【0049】
加熱クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ0%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値が低下する。CPU5−1は、この加熱クリーニングの終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値Pを求める(ステップ406)。
【0050】
そして、この湿度計測値Pと最初の加熱クリーニングの終了後に計測された湿度計測値の初期値P0との偏差ΔP(ΔP=|P−P0|)を求め(ステップ407)、この偏差ΔPに正負の補正方向を付し補正値βとして不揮発性メモリ5−4に格納する(ステップ408)。そして、次の加熱クリーニングが行われるまで、ステップ401のNOに応じてステップ402へ進み、周期T2で計測される湿度計測値Hを補正値βによって補正する(ステップ403,404)。この場合、湿度計測値Hから補正値βを差し引き、補正後の湿度計測値H’とする。
【0051】
〔実施の形態1の第5例〕
図9に湿度センサの劣化診断の処理に湿度計測値の補正処理を組み合わせた場合の第2例(実施の形態1の第5例)のフローチャートを示す。この例においても、クリーニング周期T1を第1の周期とし、この第1の周期T1よりも短い第2の周期T2(T2<T1)を湿度の計測周期とする。CPU5−1は、第2の周期T2でC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み(ステップ502のYES)、この電圧信号から湿度計測値Hを求める(ステップ503)。
【0052】
この第2の周期T2での湿度の計測中、前回の加熱クリーニングからクリーニング周期T1が経過すると(ステップ501のYES)、CPU5−1は、次の加熱クリーニング指令をヒータ回路4へ送り(ステップ505)、湿度センサ1の加熱クリーニングを行う。
【0053】
加熱クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ0%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値が低下する。CPU5−1は、この加熱クリーニングの終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値Pを求める(ステップ506)。そして、この湿度計測値Pと最初の加熱クリーニングの終了後に計測された湿度計測値の初期値P0との偏差ΔP(ΔP=|P−P0|)を求め(ステップ507)、この偏差ΔPと予め定められている最大補正可能偏差ΔHmaxとを比較する(ステップ508)。
【0054】
ここで、偏差ΔPが最大補正可能偏差ΔHmaxを超えていなければ(ΔP≦ΔHmax:ステップ508のYES)、偏差ΔPに正負の補正方向を付し補正値βとして不揮発性メモリ5−4に格納する(ステップ509)。そして、次の加熱クリーニングが行われるまで、ステップ501のNOに応じてステップ502へ進み、周期T2で計測される湿度計測値Hを補正値βによって補正する(ステップ503,504)。この場合、湿度計測値Hから補正値βを差し引き、補正後の湿度計測値H’とする。
【0055】
これに対し、偏差ΔPが最大補正可能偏差ΔHmaxを超えていれば(ΔP>ΔHmax:ステップ508のNO)、湿度計測値Hの補正は行わずに、湿度センサ1に劣化が生じたことを示す劣化サインを表示部6へ出力する(ステップ510)。
【0056】
偏差ΔPが最大補正可能偏差ΔHmaxを超えていた場合、周期T2で計測される湿度計測値Hを補正したとしても、その補正後の湿度計測値H’の信憑性は低い。この実施の形態1の第5例では、偏差ΔPが最大補正可能偏差ΔHmaxを超えていた場合、周期T2で計測される湿度計測値Hの補正は行われないので、信憑性が低い湿度計測値H’に基づいて制御や各種判断が行われることを避けることができる。また、この場合、湿度センサ1が劣化したと判定されるので、湿度センサ1の適切な交換時期を知ることができる。
【0057】
〔実施の形態2〕
図10は本発明の実施に用いる湿度計測装置の他の例(実施の形態2)を示すブロック構成図である。同図において、図1と同一符号は図1を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。この実施の形態2では、湿度センサ1に対して洗浄装置7を設け、湿度センサ1を洗浄することによって劣化の回復を図る。
【0058】
マイクロコンピュータ5は、CPU5−1やROM5−2,RAM5−3、不揮発性のメモリ5−4などを備えており、CPU5−1はRAM5−3や不揮発性のメモリ5−4にアクセスしながら、ROM5−2に格納されたプログラムに従って動作する。ROM5−2には、本実施の形態特有のプログラムとして、湿度センサの劣化診断プログラムが格納されている。
【0059】
〔実施の形態2の第1例〕
図11にCPU5−1が実行する湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第1例(実施の形態2の第1例)のフローチャートを示す。CPU5−1は、ユーザからの劣化診断の開始の指示を受けて(ステップ601のYES)、洗浄装置7へ洗浄クリーニング指令を送る(ステップ602)。これにより、湿度センサ1が洗浄装置7によって洗浄され、この洗浄によって湿度センサ1の劣化の回復(洗浄クリーニング)が図られる。
【0060】
洗浄クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ100%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値(相対湿度)が上昇する(図12(a)に示すt1点)。CPU5−1は、この洗浄クリーニング(最初の洗浄クリーニング)の終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値Pを求め(ステップ603)、この求めた湿度計測値Pを初期値P0として不揮発性のメモリ5−4に格納する(ステップ604)。
【0061】
そして、予め定められているクリーニング周期T1の経過を待って、すなわち前回の洗浄クリーニング指令から周期T1の経過を待って(ステップ605のYES)、次の洗浄クリーニング指令を洗浄装置7へ送り(ステップ606)、湿度センサ1の洗浄クリーニングを行う。
【0062】
洗浄クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ100%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値が上昇する(図12(a)に示すt2点)。CPU5−1は、この洗浄クリーニング(2回目の洗浄クリーニング)の終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値P1を求める(ステップ607)。
【0063】
そして、この求めた湿度計測値P1と初期値P0との偏差ΔP1(ΔP1=|P1−P0|)を求め(ステップ608)、この湿度計測値P1と初期値P0との偏差ΔP1と予め定められている閾値ΔPthとを比較する(ステップ609)。ここで、ΔP1≦ΔPthであれば(ステップ609のNO)、ステップ605へ戻り、ΔP1>ΔPthであれば(ステップ609のYES)、ステップ610へ進む。
【0064】
ここでは、湿度センサ1に大きな劣化は生じておらず、ΔP1≦ΔPthであるとする。この場合、CPU5−1は、ステップ609のNOに応じてステップ605へ戻り、クリーニング周期T1の経過を待って(ステップ605のYES)、次の洗浄クリーニング指令を洗浄装置7へ送り(ステップ606)、湿度センサ1の洗浄クリーニングを行う。
【0065】
洗浄クリーニングを行うと、湿度センサ1の周辺の相対湿度がほゞ100%となり、湿度センサ1によって計測される湿度計測値が上昇する(図12(a)に示すt3点)。CPU5−1は、この洗浄クリーニング(3回目の洗浄クリーニング)の終了後のC−V変換回路3からの電圧信号を取り込み、この電圧信号から湿度計測値P2を求める(ステップ607)。
【0066】
そして、この求めた湿度計測値P2と初期値P0との偏差ΔP2(ΔP2=|P2−P0|)を求め(ステップ608)、この湿度計測値P2と初期値P0との偏差ΔP2と閾値ΔPthとを比較する(ステップ609)。以下同様にして、ステップ609において、ΔP>ΔPthが確認されるまで、ステップ605〜609の処理動作を繰り返す。
【0067】
ここで、例えば、7回目の洗浄クリーニングにおいて(図12(a),(b)に示すt7点)、その洗浄クリーニングの終了後の湿度計測値P6と初期値P0との偏差ΔP6が閾値ΔPthよりも大きくなったとする。すると、CPU5−1は、ΔP6>ΔPthとなったことを確認して(ステップ609のYES)、湿度センサ1に劣化が生じたことを示す劣化サインを表示部6へ出力する(ステップ610、図12(c)に示すt7点)。
【0068】
このようにして、この実施の形態2の第1例では、最初の洗浄クリーニングの終了後の湿度計測値P0を基準として湿度センサ1の劣化が診断されるものとなり、湿度センサ1が設置されている環境に左右され難く、どのような計測環境に設置された湿度センサ1でもその劣化を診断することができるようになる。また、この診断結果から、湿度センサ1の適切な交換時期を知り、信頼性の高い湿度計測を継続することができるようになる。
【0069】
〔実施の形態2の第2例〕
図13にCPU5−1が実行する湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第2例(実施の形態2の第2例)のフローチャートを示す。このフローチャートは、実施の形態1の第2例で示した図4のフローチャートに対応し、許容湿度範囲Wを定めて湿度センサ1の劣化を判定する。その処理動作は、基本的に図4のフローチャートの処理動作と同じであるので、図14に図5に対応するタイムチャートを示し、その説明は省略する。
【0070】
〔実施の形態2の第3例〕
図13にCPU5−1が実行する湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第3例(実施の形態2の第3例)のフローチャートを示す。このフローチャートは、実施の形態1の第3例で示した図6のフローチャートに対応し、今回の偏差ΔPとX回前までの各偏差ΔPとの合計の平均値ΔPAVを算出し、この平均値ΔPAVと閾値ΔPthとの比較によって湿度センサ1の劣化を判定する。その処理動作は、基本的に図6のフローチャートの処理動作と同じであるので、図16に図7に対応するタイムチャートを示し、その説明は省略する。
【0071】
〔実施の形態2の第4例〕
図17にCPU5−1が実行する湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第4例(実施の形態2の第4例)のフローチャートを示す。このフローチャートは、実施の形態1の第4例で示した図8のフローチャートに対応し、洗浄クリーニングを行う度に補正値βを求め、次の洗浄クリーニングを行う前までの間に計測される湿度計測値Hを補正する。その処理動作は、基本的に図8のフローチャートの処理動作と同じであるので、その説明は省略する。
【0072】
〔実施の形態2の第5例〕
図18にCPU5−1が実行する湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第5例(実施の形態2の第5例)のフローチャートを示す。このフローチャートは、実施の形態1の第5例で示した図9のフローチャートに対応し、洗浄クリーニングを行う度に、偏差ΔPが最大補正可能偏差ΔHmaxを超えているか否かを確認し、偏差ΔPが最大補正可能偏差ΔHmaxを超えていなければ、次の洗浄クリーニングを行う前までの間に計測される湿度計測値Hを補正し、偏差ΔPが最大補正可能偏差ΔHmaxを超えていれば、湿度計測値Hの補正を行わずに、劣化と判定する。その処理動作は、基本的に図9のフローチャートの処理動作と同じであるので、その説明は省略する。
【0073】
上述した実施の形態1や2において、湿度センサ1が劣化したと判定するために用いる閾値ΔPthや許容湿度範囲Wは、製品に予め組み込んでおいてもよいし、ユーザが決められるようにしてもよい。
また、上述した実施の形態1や2において、マイクロコンピュータ5から出力された劣化サインは表示部6に送られ、表示部6において劣化が生じたことがユーザに知らされる。この場合、お知らせランプによって劣化が生じたことを知らせるようにしたり、ブザーによって劣化が生じたことを知らせるようにしてもよい。
また、空調システム等で上位システムがある場合は、上位に通信または電気信号で知らせ、管理者が把握できるようにしてもよい。
【0074】
また、湿度センサ1が設置される計測環境は、薬品,溶剤,高湿等の環境だけではなく、通常の環境であってもよい。近年、半導体製品の需要の増加などにより、有機溶剤など薬品環境に湿度センサがさらされる機会が増加しており、その信頼性が歩留まりに関係するなど、湿度センサの信頼性の重要度が高くなっている。これらのニーズに適応するため、薬品環境でも長期にわたり使用できる湿度センサが必要とされているが、本願の実施の形態のように、さらに踏み込んで、湿度センサの劣化の有無をユーザに知らせることにより、より信頼性の高い湿度センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施に用いる湿度計測装置の一例(実施の形態1)を示すブロック構成図である。
【図2】この湿度計測装置におけるマイクロコンピュータ内のCPUが実行する湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第1例(実施の形態1の第1例)のフローチャートである。
【図3】この実施の形態1の第1例の処理動作を説明するためのタイムチャートである。
【図4】湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第2例(実施の形態1の第2例)のフローチャートである。
【図5】この実施の形態1の第2例の処理動作を説明するためのタイムチャートである。
【図6】湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第3例(実施の形態1の第3例)のフローチャートである。
【図7】この実施の形態1の第3例の処理動作を説明するためのタイムチャートである。
【図8】湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第4例(実施の形態1の第4例)のフローチャートである。
【図9】湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第5例(実施の形態1の第5例)のフローチャートである。
【図10】本発明の実施に用いる湿度計測装置の他の例(実施の形態2)を示すブロック構成図である。
【図11】この湿度計測装置におけるマイクロコンピュータ内のCPUが実行する湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第1例(実施の形態2の第1例)のフローチャートである。
【図12】この実施の形態2の第1例の処理動作を説明するためのタイムチャートである。
【図13】湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第2例(実施の形態2の第2例)のフローチャートである。
【図14】この実施の形態2の第2例の処理動作を説明するためのタイムチャートである。
【図15】湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第3例(実施の形態2の第3例)のフローチャートである。
【図16】この実施の形態2の第3例の処理動作を説明するためのタイムチャートである。
【図17】湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第4例(実施の形態2の第4例)のフローチャートである。
【図18】湿度センサの劣化診断プログラムに従う処理動作の第5例(実施の形態2の第5例)のフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1…湿度センサ、2…ヒータ、3…C−V変換回路、4…ヒータ回路、5…マイクロコンピュータ、5−1…CPU、5−2…ROM、5−3…RAM、5−4…不揮発性のメモリ、6…表示部、7…洗浄装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測環境雰囲気中に設置される湿度センサの劣化を診断する湿度センサの劣化診断方法において、
前記湿度センサの劣化の回復を図る回復処理を所定の周期で行うステップと、
最初の前記回復処理の終了後の前記湿度センサによって計測される湿度計測値を初期値としてメモリに記憶するステップと、
前記回復処理を行う毎に、その回復処理の終了後の前記湿度センサによって計測される湿度計測値と前記初期値とを比較し、その比較結果に基づいて前記湿度センサの劣化を診断するステップと
を備えることを特徴とする湿度センサの劣化診断方法。
【請求項2】
計測環境雰囲気中に設置される湿度センサの劣化を診断する湿度センサの劣化診断方法において、
前記湿度センサの劣化の回復を図る回復処理を所定の周期で行うステップと、
最初の前記回復処理の終了後の前記湿度センサによって計測される湿度計測値を基準値とし、この基準値から所定の範囲を許容湿度範囲としてメモリに記憶するステップと、
前記回復処理を行う毎に、その回復処理の終了後の前記湿度センサによって計測される湿度計測値が前記許容湿度範囲内にあるか否かを確認し、その確認結果に基づいて前記湿度センサの劣化を診断するステップと
を備えることを特徴とする湿度センサの劣化診断方法。
【請求項3】
計測環境雰囲気中に設置される湿度センサの劣化を診断する湿度センサの劣化診断方法において、
前記湿度センサの劣化の回復を図る回復処理を所定の周期で行うステップと、
最初の前記回復処理の終了後の前記湿度センサによって計測される湿度計測値を初期値としてメモリに記憶するステップと、
前記回復処理を行う毎に、その回復処理の終了後の前記湿度センサによって計測される湿度計測値および所定回数前までの各回復処理の終了後の前記湿度センサによって計測された各湿度計測値と前記初期値とを比較し、それぞれの比較結果に基づいて前記湿度センサの劣化を診断するステップと
を備えることを特徴とする湿度センサの劣化診断方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載された湿度センサの劣化診断方法において、
前記回復処理の周期を第1の周期とし、この第1の周期よりも短い第2の周期で前記計測環境雰囲気中の湿度を前記湿度センサによって計測するステップと、
前記回復処理を行う毎に、その回復処理の終了後の前記湿度センサによって計測される湿度計測値と前記初期値との偏差を求め、この求めた偏差に基づいて次回の前記回復処理を行う前までの間に前記第2の周期で計測される湿度計測値を補正するステップと
を備えることを特徴とする湿度センサの劣化診断方法。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載された湿度センサの劣化診断方法において、
前記回復処理の周期を第1の周期とし、この第1の周期よりも短い第2の周期で前記計測環境雰囲気中の湿度を前記湿度センサによって計測するステップと、
前記回復処理を行う毎に、その回復処理の終了後の前記湿度センサによって計測される湿度計測値と前記初期値との偏差を求め、この求めた偏差と予め定められている最大補正可能偏差とを比較し、前記偏差が前記最大補正可能偏差を超えていなければ、前記偏差に基づいて次回の前記回復処理を行う前までの間に前記第2の周期で計測される湿度計測値を補正し、前記偏差が前記最大補正可能偏差を超えていれば、前記第2の周期で計測される湿度計測値の補正は行わず、前記湿度センサが劣化したと判定するステップと
を備えることを特徴とする湿度センサの劣化診断方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載された湿度センサの劣化診断方法において、
前記回復処理は、前記湿度センサを加熱することによって劣化の回復を図る加熱クリーニングである
ことを特徴とする湿度センサの劣化診断方法。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載された湿度センサの劣化診断方法において、
前記回復処理は、前記湿度センサを洗浄することによって劣化の回復を図る洗浄クリーニングである
ことを特徴とする湿度センサの劣化診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−8318(P2010−8318A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170296(P2008−170296)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】