説明

湿潤物の乾燥装置及び乾燥方法

【課題】乾燥処理に困難を伴う湿潤物の乾燥処理を、乾燥物に焦げつきを発生させずに低含水率を達成でき、かつ乾燥物の搬送及び取扱いを容易に行うことが可能な湿潤物の乾燥装置及び乾燥方法を提供することにある。
【解決手段】本発明は、乾燥器13の湿潤物供給口19から湿潤物14を供給し、湿潤物14に向けて過熱蒸気5を噴出させることにより湿潤物14を乾燥させるように構成された湿潤物の乾燥装置であって、乾燥器13内に開口して過熱蒸気5を超音速で噴射する蒸気管路28と、高温に加熱されたキャリアガス12を過熱蒸気5に混合することなく独立して乾燥器13内に噴射するキャリアガス管路27とを併設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変性し易く、乾燥処理が難しい食品廃棄物(例えば茶滓、特に麦系原料の茶滓等)のような湿潤物を乾燥する湿潤物の乾燥装置及び乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茶滓、特に麦系原料の茶滓のような、熱変性し易く、乾燥処理に困難を伴う食品廃棄物の乾燥処理を行う乾燥装置として、例えばロータリーキルン、真空乾燥及び蒸気ジェット式乾燥機等が知られている。
図5は、蒸気ジェット式乾燥機の従来の一例を示す要部系統図である。
この蒸気ジェット式乾燥機は、図5に示すように、乾燥器13、エジェクタ6、熱風炉9を備えており、図示しないボイラからの蒸気2をエジェクタ6の内部に設けられた蒸気噴射ノズル29aに導入し、乾燥器13の原料供給口19の近傍に設けられたガス噴入口41に向かって、該ガス噴入口41の近距離から超音速の蒸気を噴射するようになっている。
一方、熱風炉9において燃料7と燃焼用空気8とを用いて発生した加熱キャリアガス11及び空気40を、蒸気噴射ノズル29aとガス噴入口41との間に設けた二重管42の開口部からそれぞれ吹き込むようになっている。
【0003】
このように構成することにより、上記蒸気噴射ノズル29aからの蒸気噴射圧を維持したまま、加熱キャリアガス11と空気40とをガス噴入口41から乾燥器13内に同時に噴入できるとともに、原料供給口19から投入された原料をその蒸気噴射圧によって粉砕・撹拌することができる。
【0004】
また、図示を省略したが、噴入管路内の蒸気噴射ノズル29aとガス噴入口41との間には、蒸気噴射ノズル29aからの蒸気の噴流と、加熱キャリアガス11の流れとを仕切る仕切り部を設ける手段がある。
このように構成すると、上記蒸気噴射ノズル29aからの蒸気噴流が当たらない空間部分に原料が滞留することや、原料が加熱キャリアガス側へ逆流することを防止できる。
【0005】
なお、特許文献1(特開2002−188887号公報)には、バーナーによる熱風を、傾斜を任意の高さに加減することができる回転乾燥炉(ロータリーキルン)に送り込み、湿潤物を乾燥処理する装置が記載されている。
また、特許文献2(特開2005−214599号公報)には、撹拌羽根を収容した下部半円筒部、上部角形を有する容器、その圧力をエジェクタ等で減圧する手段及びボイラからの蒸気を供給する蒸気室等の加熱手段を備えた真空乾燥装置が記載されている。
さらに、特許文献3(特許第2901951号公報)には、蒸気噴射ノズルとエジェクタとを一体化し、蒸気噴射ノズルからの噴射圧を利用してエジェクタによりキャリアガスを吸引し、キャリアガスを蒸気噴射ノズルからの超音速の蒸気と共にエジェクタの噴射口から噴出することが記載されている。
そして、特許文献4(特許第3709880号号公報)には、蒸気噴射ノズルから噴射される超音速の蒸気と同時に加熱キャリアガスと、これと併行して空気を吹き込むことが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−188887号公報
【特許文献2】特開2005−214599号公報
【特許文献3】特許第2901951号公報
【特許文献4】特許第3709880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1、特許文献2及び特許文献3に記載の装置によって茶滓、特に麦系原料を含む茶滓を乾燥させる場合、いずれの装置でも乾燥物の含水率を下げることはできるが、特許文献1及び特許文献2の場合は、乾燥物が熱変性により焦げが発生するという問題があった。
【0008】
特に、特許文献3に記載の装置では、キャリアガスとして熱風を発生させる部分とエジェクタとの間にガス洩れ等のトラブルが発生し易いこと、蒸気噴射ノズルとエジェクタとの位置調整が必要であり、その部分で漏水が発生すること、蒸気噴射ノズルからの蒸気噴射圧を利用してエジェクタでキャリアガスを吸引して蒸気とキャリアガスとを混合するために低圧(最大でも0.1Mpa)となって、処理槽内での解砕力が低下すること、及び処理槽内へ噴入するキャリアガスの圧力・量・温度などが蒸気噴射圧の変動によって大きく変動し、蒸気量とキャリアガスとの混合割合を容易に変えられないこと等の解決すべき問題があった。
【0009】
また、図5の装置(特許文献4)では、特許文献3に記載の装置における問題を解消することが可能であり、食品廃棄物(例えば茶滓、特に麦茶原料の茶滓等)の乾燥物の含水率を下げることは可能であるが、乾燥物に焦げが発生して解砕が困難となるだけでなく、焦げを伴った乾燥物が装置内部に付着・滞留して装置外への搬送が困難になるという問題があった。
【0010】
しかして、食品廃棄物には栄養成分が多量に残留しているので、従来の装置では、熱変性により焦げを発生させることなく乾燥することが困難であった。そのため、従来技術においては、湿潤状態のままで保管することが行われていた。しかしながら、食品廃棄物を湿潤状態のままで保管すると、保管期間中に食品廃棄物が腐敗する可能性があり、その結果、産業廃棄物としてそのほとんどは、焼却及び埋立処理するしかなかった。
特に、麦原料系茶滓のように熱変性し易いものについては、上述した従来技術では、熱変性による焦げつきを発生することなく粉砕して腐敗の発生を防止できる好適な含水率の乾燥物を得ることが困難であり、また含水率が高いと焼却処分する際に多くの助燃用燃料を必要とする。
また、湿潤状態にある食品廃棄物をサイレージの原料の一部として再利用し、家畜飼料として長期貯蔵可能とする技術が開発されているが、かかる技術によっても、大量に発生する食品廃棄物の運搬及び貯留設備の整備に多大な投資を要するのみならず、運搬及び貯留の間における廃棄物の腐敗発生の可能性があった。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、乾燥処理に困難を伴う湿潤物の乾燥処理を、乾燥物に焦げつきを発生させずに低含水率を達成でき、かつ乾燥物の搬送及び取扱いを容易に行うことが可能な湿潤物の乾燥装置及び乾燥方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、乾燥器の湿潤物供給口から該乾燥器内に湿潤物を供給し、該湿潤物に向けて過熱蒸気を噴出させることにより前記湿潤物を乾燥させるように構成された湿潤物の乾燥装置において、前記乾燥器内に開口して前記過熱蒸気を前記湿潤物に向けて超音速で噴射する蒸気管路と、高温に加熱されたキャリアガスを前記過熱蒸気に混合することなく独立して前記乾燥器内に噴射するキャリアガス管路とを併設している。
【0013】
また、上記湿潤物の乾燥装置を使用する方法の発明は、乾燥器の湿潤物供給口から該乾燥器内に湿潤物を供給し、該湿潤物に向けて過熱蒸気供給手段から過熱蒸気を噴出させることにより前記湿潤物を乾燥させる湿潤物の乾燥方法であって、前記過熱蒸気供給手段から過熱蒸気を前記湿潤物に向けて超音速で噴射し、高温に加熱されたキャリアガスを前記過熱蒸気に混合させることなく前記過熱蒸気とは独立して前記乾燥器内に噴射している。
【0014】
一方、本発明において、前記蒸気管路の外側に前記キャリアガス管路を嵌挿した二重管を構成し、該二重管を構成する前記蒸気管路の内部に蒸気通路を形成するとともに、該蒸気管路の外周と前記キャリアガス管路の内周との間にキャリアガス通路を形成し、前記蒸気管路先端の蒸気噴出口から前記蒸気通路を通った前記過熱蒸気を前記湿潤物に向けて超音速で噴射するとともに、前記キャリアガス通路に連通するキャリアガス噴射口からキャリアガスを噴射するエジェクタを備えている。
【0015】
本発明のエジェクタは、具体的には次のように構成するのが好ましい。
(1)前記エジェクタは、前記キャリアガス管路のキャリアガス噴射口を前記乾燥器の湿潤物供給口に対して前記蒸気管路先端の蒸気噴出口よりも遠ざかった位置、または湿潤物供給口から前記蒸気噴出口と同一距離の位置に配置し、前記蒸気噴出口からの過熱蒸気と前記キャリアガス噴射口からのキャリアガスとを並行に噴射するように構成している。
(2)前記エジェクタの蒸気管路の乾燥器内への突出量を変化させて、前記蒸気噴出口と前記湿潤物供給口との距離を調節する手段を備えている。
【0016】
また、本発明は、前記乾燥器から排出されるガスの温度を検出して、該ガス温度の検出値が予め設定した許容範囲となるように、前記湿潤物の供給量あるいは前記キャリアガスを生成するためのキャリア空気の供給量のいずれか一方または両方を制御する温度制御装置を備えている。
【0017】
さらに、本発明は、ボイラで発生した蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する加熱装置を備えるとともに、キャリア空気を用いた燃料の燃焼により前記蒸気を加熱するための加熱キャリアガスを生成して前記加熱装置に供給する加熱キャリアガス生成手段を備えている。
【0018】
そして、本発明は、前記キャリア空気を、前記加熱キャリアガス生成手段出口側のキャリアガスに混入させる手段をさらに備えている。
【0019】
また、本発明は、乾燥器の湿潤物供給口から該乾燥器内に湿潤物を供給し、該湿潤物に向けて過熱蒸気供給手段から過熱蒸気を噴出させることにより該湿潤物を乾燥させる湿潤物の乾燥方法であって、ボイラで発生した蒸気を加熱装置により加熱して前記過熱蒸気を生成するとともに、系外設備によりキャリアガスを生成して前記乾燥器内に噴射している。
【発明の効果】
【0020】
本発明の乾燥装置及び乾燥方法によれば、乾燥器内に開口して過熱蒸気を湿潤物に向けて超音速で噴射する蒸気管路と、高温に加熱されたキャリアガスを過熱蒸気に混合することなく独立して乾燥器内に噴射するキャリアガス管路とを併設し、前記蒸気管路から過熱蒸気を湿潤物に向けて超音速で噴射し、高温に加熱されたキャリアガスを過熱蒸気に混合させることなく過熱蒸気とは独立して乾燥器内に噴射するので、乾燥器において、超音速で噴出される過熱蒸気によって湿潤物で凝縮伝熱が発生し、さらに、これと超音速で発生する衝撃波による解砕力とが相俟って、湿潤物の表面だけでなく内部の水分が瞬時に蒸発することによって、当該湿潤物が乾燥されることになる。しかも、かかる乾燥過程では、超音速で噴出される過熱蒸気とキャリアガスとによって無酸素状態で凝縮伝熱が生じるため、湿潤物中の物質の熱変性が抑制されて、焦げの発生を防止することができる。
また、蒸気管路からから噴出される過熱蒸気とキャリアガス管路から噴出されるキャリアガスとは混合することなく、それぞれ独立して乾燥器内に噴射することができ、超音速の過熱蒸気の凝縮伝熱作用と解砕作用、及びキャリアガスの搬送作用を相互に阻害することなく、それぞれを最大限になすことが可能となる。
【0021】
一方、本発明によれば、内部に蒸気通路を形成した蒸気管路の外側にキャリアガス管路を嵌挿した二重管を形成し、これら蒸気管路の外周とキャリアガス管路の内周との間にキャリアガス通路を形成して、蒸気管路先端の蒸気噴出口から過熱蒸気を湿潤物に向けて超音速で噴射するとともに、キャリアガス通路に連通するキャリアガス噴出口からキャリアガスを噴射するエジェクタを備えているので、前記エジェクタを内側が蒸気管路、外側がキャリアガス管路の二重管構造として、過熱蒸気が流通する蒸気管路の周囲を高温のキャリアガス管路で覆うことにより、過熱蒸気の温度低下とそれに伴う過熱度低下を防止でき、前述のような過熱蒸気及びキャリアガスによる焦げの発生防止効果を最大限に発揮することが可能となる。
【0022】
さらに、前記蒸気噴出口は乾燥器の湿潤物供給口の近傍に配置されて、過熱蒸気を湿潤物に向けて超音速で噴射せしめ、キャリアガス噴射口から乾燥器内にキャリアガスを前記蒸気噴出口とは独立して噴射せしめるとともに、該エジェクタは、内側が先端部に蒸気噴出口を有する蒸気管路、外側が先端部にキャリアガス噴射口を有するキャリアガス管路の二重管構造となっているので、蒸気噴出口から噴射される過熱蒸気とキャリアガス噴出口から噴射されるキャリアガスとは混合することなく、それぞれ独立して乾燥器内に噴射することができ、超音速の過熱蒸気の凝縮伝熱作用と解砕作用、及びキャリアガスの搬送作用を相互に阻害することなく、前記作用を最大限になすことが可能となる。
【0023】
また、本発明において、前記エジェクタを、前記キャリアガス管路のキャリアガス噴射口を前記乾燥器の湿潤物供給口に対して前記蒸気管路先端の蒸気噴出口よりも遠ざかった位置、または湿潤物供給口から蒸気噴出口と同一距離の位置に配置し、蒸気噴出口からの過熱蒸気と前記キャリアガス噴射口からのキャリアガスとを並行に噴射するように構成すれば、超音速の過熱蒸気の流れの乱れが最小限に抑えられ、該過熱蒸気の凝縮伝熱力と解砕力とを減衰させることなく、前記湿潤物供給口から乾燥器内に供給される湿潤物に直接伝達することが可能となる。
【0024】
そして、本発明において、前記エジェクタの蒸気管路の乾燥器内への突出量を変化させて、前記蒸気噴出口と前記湿潤物供給口との距離を調節する手段を備えるように構成すれば、湿潤物の種類と性状によって蒸気噴出口と湿潤物供給口との距離を変えることができ、湿潤物の最適の含水率を得ることが可能となる。
【0025】
また、本発明によれば、温度制御装置によって、乾燥器から排出されるガスの温度を検出し、該ガス温度の検出値が予め設定した許容範囲となるように、湿潤物の供給量あるいはキャリアガスを生成するためのキャリア空気の供給量のいずれか一方または両方を制御するので、温度制御装置によって湿潤物の供給量あるいはキャリア空気の供給量を制御して、乾燥器内での過熱蒸気、キャリアガス及び湿潤物の三者により生じる運転状態を自動制御し、これによって、湿潤物中の物質の熱変性が抑制されて焦げの発生を防止しながら、湿潤物の含水率を最適な値に調整することができる。
【0026】
さらに、本発明によれば、ボイラで発生した蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する加熱装置を備えるとともに、キャリア空気を用いた燃料の燃焼により蒸気を加熱するための加熱キャリアガスを生成して加熱装置に供給する加熱キャリアガス生成手段を設けたので、例えば熱風炉等の加熱キャリアガス生成手段によって、過熱蒸気を生成するための高温の加熱キャリアガスを常時安定して得ることができる。
【0027】
また、本発明によれば、キャリア空気を、加熱キャリアガス生成手段出口側のキャリアガスに混入させる手段をそなえたので、かかる手段を適用することにより、キャリアガスの温度が比較的低い場合等においても、好適な湿潤物の乾燥制御が可能となる。
【0028】
それに加えて本発明によれば、ボイラで発生した蒸気を加熱装置により加熱して過熱蒸気を生成するとともに、系外設備によりキャリアガスを生成して乾燥器内に噴射するようにしたので、かかる手段を適用することにより、キャリアガスの温度が比較的低温で、かつキャリアガスの流量が少なくてよい場合等においても、好適な湿潤物の乾燥制御が可能となる。
【0029】
このように本発明によれば、食品廃棄物等の湿潤物を、焦げつきを生じさせることなく好適な含水率まで短時間で乾燥することが可能であるため、保管期間中の腐敗を防止することが可能となり、また熱変性を最小限に抑制できて家畜の嗜好性等に耐え得る乾燥物品質が得られ、従来産業廃棄物として扱わざるを得なかった前記食品廃棄物等の湿潤物が、サイレージのような設備の整備に多大な投資を必要とすることなく、家畜飼料として直ちに利用することが初めて可能となる。
従って、本発明によれば、前述のような効果が相俟って食品廃棄物、特に茶滓のうち麦系原料の茶滓由来の産業廃棄物量の低減に大きく寄与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る湿潤物の乾燥装置及び乾燥方法について、その実施形態を詳細に説明する。
【0031】
[第1実施形態]
図1は本発明の第1実施形態に係る蒸気式乾燥装置の全体構成を示す系統図、図2は上記第1実施形態における図1のZ部詳細図である。
本実施形態の蒸気式乾燥装置は、図1に示すように、上流側から下流側に向かって配置されるボイラ1、熱風炉9、加熱装置3、乾燥器13を主として備えており、これらボイラ1、熱風炉9、加熱装置3及び乾燥器13は、ラインなどを介して互いに接続されている。加熱装置3と乾燥器13との間のラインには、後述の過熱蒸気5を加圧するコンプレッサ4が設けられている。
ボイラ1には、図示しない燃料供給源及び空気供給源から燃料ライン7を経て燃料7a及び燃焼用空気が導入され、ボイラ1は、これらを燃焼して蒸気を発生させており、この発生した蒸気は加熱装置3に導入されるようになっている。また、熱風炉9には、燃料ライン7からの燃料7b及び燃焼用空気ライン8からの燃焼用空気8bが導入され、熱風炉9は、これらを燃焼して高温の加熱キャリアガス11を発生させ、この発生した加熱キャリアガス11は加熱装置3に導入されるようになっている。しかも、燃焼用空気ライン8から分岐された分岐ラインのキャリア空気8aは、該キャリア空気8aの流量を調整する制御弁10を介して熱風炉9に供給されるようになっている。
【0032】
上記加熱装置3においては、ボイラ1からの蒸気2と熱風炉9からの加熱キャリアガス11とを熱交換することにより、当該蒸気2を加熱して高温の過熱蒸気5が生成されるようになっている。また、乾燥器13には、エジェクタ(詳細は後述)6が取付けられており、過熱蒸気5は、コンプレッサ4によって加圧されてからエジェクタ6に導入されるようになっている。
過熱蒸気5の温度は、後述する湿潤物供給口19から乾燥器13内に供給される湿潤物14の種類と性状によって変わるが、110〜800℃の範囲であり、好ましくは300〜600℃である。
一方、加熱装置3において蒸気2を加熱した後のキャリアガス12も、エジェクタ6に送り込まれるようになっている。このキャリアガス12の温度は、湿潤物14の種類と性状によって変わるが、110〜800℃の範囲であり、好ましくは300〜600℃である。
【0033】
上記乾燥器13内には、湿潤物14が供給されるようになっている。このため、乾燥器13の上流側には、これと関連して、湿潤物貯留用のホッパー15、湿潤物搬送用のスクリューコンベア16などが設けられているとともに、乾燥器本体の側壁には湿潤物供給口19が穿設されており、湿潤物14は、ホッパー15内に一旦貯留された後、スクリューコンベア駆動モータ17にて駆動されるスクリューコンベア16によって処理用の湿潤物14として乾燥器13の湿潤物供給口19に所定量が供給されている。なお、18はスクリューコンベア駆動モータ17用のインバータである。
乾燥器13の下流側には、これと関連して、分級装置23などが設けられており、乾燥器13での乾燥処理後の乾燥物25は、キャリアガス12によって乾燥物同伴ガス20と共に当該分級装置23に搬送されるようになっている。この分級装置23としては、サイクロン、乾式フィルター等、乾燥物と排ガスとを分離できるものであれば、何でもよい。
このような分級装置23においては、乾燥物25と排ガス26とが分離されており、乾燥物25はコンテナ24に受け入れられ、排ガス26は所定の浄化処理後に大気に放散されている。
また、乾燥器13と分級装置23との間には温度制御装置21が配設されており、この温度制御装置21は、乾燥物同伴ガス20の温度を検出して、後述するような制御を行い、その結果を制御弁10及びスクリューコンベア駆動モータ17のインバータ18に出力するように構成されている。
【0034】
上記エジェクタ6近傍の詳細を示す図2(図1のZ部詳細図)において、エジェクタ6は、内側に配置される蒸気管路28と、該蒸気管路28の外側に同心状に嵌挿配置されるキャリアガス管路27とによって二重管構造となっており、蒸気管路28にはコンプレッサ4によって加圧された過熱蒸気5が導入され、キャリアガス管路27には加熱装置3において蒸気2を加熱した後のキャリアガス12が導入されるように構成されている。
このように、エジェクタ6を内側が蒸気管路28、外側がキャリアガス管路27の二重管構造として、過熱蒸気5の蒸気管路28の周囲を高温のキャリアガス管路27で覆っているため、過熱蒸気5の温度低下とそれに伴う過熱度低下を防止でき、後述するような過熱蒸気5及びキャリアガス12による焦げの発生防止効果を最大限に発揮することが可能となる。
【0035】
上記蒸気管路28の先端部には、過熱蒸気5を乾燥器13内に噴出する蒸気噴射ノズル29が形成されており、該蒸気噴射ノズル29は、乾燥器13の湿潤物供給口19の近傍に(距離Sで)配置され、過熱蒸気5を超音速で噴射せしめるようになっている。また、上記キャリアガス管路27の先端は乾燥器13と接続され、この先端には、蒸気管路28の外周とキャリアガス管路27との間にはキャリアガス噴射口30が形成されており、該キャリアガス噴射口30から乾燥器13内にキャリアガス12を噴射せしめるようになっている。すなわち、蒸気噴射ノズル29は、キャリアガス噴射口30よりも乾燥器13の内部に突出した位置に配置されている。
このように、エジェクタ6は、先端部に蒸気噴射ノズル29を有する内側の蒸気管路28と、先端部にキャリアガス噴射口30を有する外側のキャリアガス管路27との二重管構造となっているので、蒸気噴射ノズル29から噴出される過熱蒸気5とキャリアガス噴射口30から噴出されるキャリアガス12とは混合することなく、それぞれ独立して乾燥器13内に噴射することができ、超音速の過熱蒸気5の凝縮伝熱作用と解砕作用、及びキャリアガス12の搬送作用を相互に阻害することなく、それぞれを最大限になすことが可能となる。
【0036】
また、エジェクタ6においては、図2に示すように、キャリアガス噴射口30が、前記乾燥器13の湿潤物供給口19に対して蒸気噴射ノズル29よりも後方位置、つまり蒸気噴射ノズル29よりも遠ざかった位置に配置されるか、あるいは湿潤物供給口19から蒸気噴射ノズル29と同一距離の位置に設けられ、かつキャリアガス12を過熱蒸気5と並行に噴射するように構成されている。
このように構成することによって、超音速の過熱蒸気5の流れの乱れが最小限に抑えられ、該過熱蒸気5の凝縮伝熱力と解砕力とを減衰することなく、湿潤物供給口19から乾燥器13内に供給される湿潤物14に直接伝達することが可能となる。
【0037】
さらに、図示を省略したが、蒸気噴射ノズル29は、その乾燥器13内への突出量を変化させることなどによって、蒸気噴射ノズル29と湿潤物供給口19との距離Sを調節することが可能な手段を具備している。
このようにして、湿潤物14の種類と性状によって蒸気噴射ノズル29と湿潤物供給口19との距離Sを変えることによって、湿潤物14の好適な含水率を得ることが可能となる。
【0038】
かかる第1実施形態の乾燥器13においては、超音速で噴出される過熱蒸気5によって湿潤物14に対する凝縮伝熱が発生し、さらに、これと超音速で発生する衝撃波による解砕力とが相俟って、湿潤物14の表面だけでなく内部の水分が瞬時に蒸発することになり、湿潤物14が迅速かつ確実に乾燥されることになる。
そして、かかる乾燥過程では、過熱蒸気5とキャリアガス12とによって無酸素状態で凝縮伝熱が生じるため、湿潤物14中の物質の熱変性が抑制されて、焦げの発生を防止することができる。
【0039】
また、乾燥物同伴ガス20及び/または排ガス26の管路には温度制御装置21が設置されており(排ガス26の温度制御装置は図示省略)、該温度制御装置21によって、乾燥物同伴ガス20のガス温度あるいは排ガス26のガス温度を検出し、このガス温度検出結果に基づき次の2つの制御を行っている(いずれか一つの制御でもよい)。
(1)当該ガス温度の検出値が予め設定した許容範囲となるように、スクリューコンベア駆動モータ17のインバータ18を制御して湿潤物14の供給量を調整することが可能である。
(2)当該ガス温度の検出値が予め設定した許容範囲となるように、制御弁10の開度を制御して熱風炉9に供給するキャリア空気8aの供給量を調整することが可能である。
乾燥物同伴ガス20または排ガス26のガス温度は、湿潤物14の種類と性状によって変わるが、90〜250℃、好ましくは100〜200℃である。
以上のような温度制御装置21と、スクリューコンベア駆動モータ17のインバータ18あるいは制御弁10とを用いて、乾燥器13内での過熱蒸気5、キャリアガス12及び湿潤物14の三者により生じる運転状態を自動制御することによって、湿潤物14中の物質の熱変性が抑制され、いわゆる焦げの発生を防止しながら、湿潤物14の含水率を最適な値に調整することができる。
【0040】
[第2実施形態]
図3は本発明の第2実施形態を示す図1に対応した系統図である。
この第2実施形態においては、上記第1実施形態の燃焼用空気ライン8から分岐されたキャリア空気8aを、制御弁10を介して加熱装置3の出口から排出されたキャリアガス12に混入している。この第2実施形態における乾燥物同伴ガス20または排ガス26のガス温度は、湿潤物の種類と性状によって変わるが、90〜200℃、好ましくは100〜170℃である。
かかる手段を適用することにより、キャリアガス12の温度が図1及び図2に示す上記第1実施形態に比べて比較的低い場合等においても、好適な湿潤物の乾燥制御ができる。
その他の構成は、図1及び図2に示す第1実施形態と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示されている。
【0041】
[第3実施形態]
図4は本発明の第3実施形態を示す図1に対応した系統図である。
この第3実施形態においては、ボイラ1からの蒸気2を加熱装置3によって加熱して過熱蒸気5を発生させ、該過熱蒸気5をコンプレッサ4で加圧してエジェクタ6に供給するとともに、他設備(ボイラ1とは別個に設置されたボイラ等)からの熱風43をキャリアガス12として用いて、制御弁10を介してエジェクタ6に供給している。この第3実施形態においては、加熱装置3に電熱式加熱装置あるいは電磁誘導式加熱装置が適用できる。 この第3実施形態における乾燥物同伴ガス20または排ガス26のガス温度は、湿潤物の種類と性状によって変わるが、90〜200℃、好ましくは100〜170℃である。
かかる手段を適用することにより、キャリアガス12の温度が図1及び図2に示す第1実施形態に比べて比較的低温で、かつキャリアガス12の流量が少なくてよい場合等においても好適な湿潤物14の乾燥制御を行うことができる。
その他の構成は、図1及び図2に示す上記第1実施形態と同様であり、これと同一の部材は同一の符号で示されている。
【0042】
次に、図1及び図2に示される第1実施形態に係る蒸気式乾燥装置を用いた本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0043】
乾燥処理が困難な湿潤物の一例として麦原料系茶滓(含水率73.4%)を用い、上記第1実施形態に係る蒸気式乾燥装置(実施例1)と、比較例としての図5に示す装置(比較例1)との比較実験を行った。
実施例1及び比較例1の乾燥処理の比較実験結果として、乾燥処理後の乾燥物の含水率を表1に示している。
【表1】

【0044】
表1に示す実施例1では、乾燥物の含水率は、焦げを発生せずに飼料としての含水率基準の11%以下を達成できた。比較例1では処理物は乾燥器内部に焦げついて付着・蓄積してほとんど乾燥されず、所要の含水率が得られる乾燥処理はできないものと判断された。
そして、実施例1の乾燥物を配合飼料に対して1〜6%(重量比)となるように混合して、和牛及び豚に与えて嗜好性を確認したところ、まったく問題なく食した。
【実施例2】
【0045】
乾燥・成型処理が困難な湿潤物の例として、牛乳パックのラミネートチューブ(ポリエチレン製、含水率46〜50%)を用い、上記第1実施形態に係る蒸気式乾燥装置(実施例2)と、比較例としてロータリーキルンを用いた乾燥装置(比較例2)との比較実験を行った。
実施例2及び比較例2の乾燥処理の比較実験結果として、乾燥処理後の乾燥物の含水率及び乾燥物の状況を表2に示している。
【表2】

【0046】
実施例2では、乾燥物は焦げを発生せずに粉砕されて、乾燥物の含水率は10〜20%を達成できただけでなく、ペレット化することができた。これによって現在、湿潤状態のままでRPFとして使用されている牛乳パックのラミネートチューブを乾燥ペレット化することができ、燃料としての有効度を高めることができる。
比較例2では、乾燥物の含水率は10〜20%を達成できたが、乾燥物に焦げを発生して塊状化し、ペレット化することができなかった。
【0047】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は記述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、本発明は、種々の湿潤物の乾燥に対しても適用が可能である。すなわち、湿潤状態でしか利用できなかった産業廃棄物のRPF化、食品廃棄物等の再利用(飼料化)で熱変性を極力抑制しなければならない湿潤物の乾燥等に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、乾燥処理に困難を伴う湿潤物の乾燥処理を、乾燥物に焦げつきを発生させずに低含水率を達成でき、かつ乾燥物の搬送及び取扱いを容易にした湿潤物の乾燥装置及び乾燥方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る蒸気式乾燥装置の全体構成を示す系統図である。
【図2】上記第1実施形態における図1のZ部詳細図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す図1に対応した系統図である。
【図4】本発明の第3実施形態を示す図1に対応した系統図である。
【図5】従来技術に係る蒸気式乾燥装置を示す系統図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ボイラ
2 蒸気
3 加熱装置
4 コンプレッサ
5 過熱蒸気
6 エジェクタ
7,7a,7b 燃料
8 燃焼用空気
8a キャリア空気
9 熱風炉
10 制御弁
11 加熱キャリアガス
12 キャリアガス
13 乾燥器
14 湿潤物
15 ホッパー
16 スクリューコンベア
17 スクリューコンベア駆動モータ
18 インバータ
19 湿潤物供給口
20 乾燥物同伴ガス
21 温度制御装置
23 分級装置
25 乾燥物
26 排ガス
27 キャリアガス管路
28 蒸気管路
29 蒸気噴射ノズル
30 キャリアガス噴射口
43 他設備からの熱風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥器の湿潤物供給口から該乾燥器内に湿潤物を供給し、該湿潤物に向けて過熱蒸気を噴出させることにより前記湿潤物を乾燥させるように構成された湿潤物の乾燥装置において、前記乾燥器内に開口して前記過熱蒸気を前記湿潤物に向けて超音速で噴射する蒸気管路と、高温に加熱されたキャリアガスを前記過熱蒸気に混合することなく独立して前記乾燥器内に噴射するキャリアガス管路とを併設したことを特徴とする湿潤物の乾燥装置。
【請求項2】
前記蒸気管路の外側に前記キャリアガス管路を嵌挿した二重管を構成し、該二重管を構成する前記蒸気管路の内部に蒸気通路を形成するとともに、該蒸気管路の外周と前記キャリアガス管路の内周との間にキャリアガス通路を形成し、前記蒸気管路先端の蒸気噴出口から前記蒸気通路を通った前記過熱蒸気を前記湿潤物に向けて超音速で噴射するとともに、前記キャリアガス通路に連通するキャリアガス噴射口からキャリアガスを噴射するエジェクタを備えたことを特徴とする請求項1に記載の湿潤物の乾燥装置。
【請求項3】
前記エジェクタは、前記キャリアガス管路のキャリアガス噴射口を前記乾燥器の湿潤物供給口に対して前記蒸気管路先端の蒸気噴出口よりも遠ざかった位置、または湿潤物供給口から前記蒸気噴出口と同一距離の位置に配置し、前記蒸気噴出口からの過熱蒸気と前記キャリアガス噴射口からのキャリアガスとを並行に噴射するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の湿潤物の乾燥装置。
【請求項4】
前記エジェクタの蒸気管路の乾燥器内への突出量を変化させて、前記蒸気噴出口と前記湿潤物供給口との距離を調節する手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の湿潤物の乾燥装置。
【請求項5】
前記乾燥器から排出されるガスの温度を検出して、該ガス温度の検出値が予め設定した許容範囲となるように、前記湿潤物の供給量あるいは前記キャリアガスを生成するためのキャリア空気の供給量のいずれか一方または両方を制御する温度制御装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載の湿潤物の乾燥装置。
【請求項6】
ボイラで発生した蒸気を加熱して過熱蒸気を生成する加熱装置を備えるとともに、キャリア空気を用いた燃料の燃焼により前記蒸気を加熱するための加熱キャリアガスを生成して前記加熱装置に供給する加熱キャリアガス生成手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の湿潤物の乾燥装置。
【請求項7】
前記キャリア空気を、前記加熱キャリアガス生成手段出口側のキャリアガスに混入させる手段をさらに備えたことを特徴とする請求項6に記載の湿潤物の乾燥装置。
【請求項8】
乾燥器の湿潤物供給口から該乾燥器内に湿潤物を供給し、該湿潤物に向けて過熱蒸気供給手段から過熱蒸気を噴出させることにより前記湿潤物を乾燥させる湿潤物の乾燥方法であって、前記過熱蒸気供給手段から過熱蒸気を前記湿潤物に向けて超音速で噴射し、高温に加熱されたキャリアガスを前記過熱蒸気に混合させることなく前記過熱蒸気とは独立して前記乾燥器内に噴射することを特徴とする湿潤物の乾燥方法。
【請求項9】
ボイラで発生した蒸気を加熱装置により加熱して前記過熱蒸気を生成するとともに、系外設備によりキャリアガスを生成して前記乾燥器内に噴射することを特徴とする請求項8に記載の湿潤物の乾燥方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−25925(P2008−25925A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199749(P2006−199749)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】