説明

満液軸受アイソレータ

回転軸と軸受ハウジングとの間に使用されるラビリンス密封装置が開示され、いくつかの実施形態では、内部ステータがハウジングと係合し、ロータが軸と係合する。潤滑剤および/または汚染物質の移動をどちらの方向にも阻止するために、ロータとステータとの間にラビリンス経路が形成される。ロータは、密封要素に対する作動面として働くが、潤滑剤を密封リップから油だめの方へ連続的に引き離すポンプとなるようにロータの研削面と共に働くこともできる。別の実施形態では、ステータおよび密封要素は、密封材料から形成された密封要素として組み合わされる。密封リップ内の凹所が密封面において圧力差を作り出し、摩耗を最小限に抑える。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2009年11月11日に出願された米国特許仮出願第61/260,282号明細書、および2010年6月1日に出願された米国特許仮出願第61/350,371号明細書の優先権を主張するものであり、両出願の全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
[0001]回転軸と軸受ハウジングとの間に動的シールを設けるために、ラビリンス密封装置が一般的に使用されている。密封装置は、軸受ハウジングから汚染物質を除去するとともに、軸受潤滑剤の喪失も防止する。いくつかの用途では、ハウジングの潤滑レベルがシールの最下点を超える。一般に、注油は最終的に、非接触シールが使用される場合にシールおよび漏れをうまく処理する。このような用途には接触型シールが望ましい。
【0003】
[0002]典型的なロータとステータの構成では、ロータとステータを互いに接触しないようにすることが重要である。ロータは超高速で回転する。ロータの表面がステータの表面とこうした速度で接触した場合、摩擦熱が生じ、部品が摩耗し、装置の総合効率が低下する。したがって、ロータおよびステータを分離したままにすることが重要である。ロータとステータとの間のシールは、ロータとステータとの間に低摩擦接触部を設けることにより、ロータおよびステータを半径方向に分離したままにする。同一シールが軸線方向の接触も防止することができれば有益であろう。
【0004】
[0003]ハウジングが潤滑剤で「あふれた(flooded)」ときに別の問題が起こる。あふれたハウジングとは、過度の潤滑剤を有する、したがって潤滑剤で「あふれた」軸受空洞を意味する。従来の非接触シールは、あふれたハウジング内に使用されると正常に機能しない。
【0005】
[0004]回転軸と軸受ハウジングとの間に動的シールを設けるために、様々なシール装置が以前に開発されている。しかしながら、これらの以前の設計は、このような種類のシールに伴う運転上の問題のすべてを解決してはいない。例えば、Orlowskiらの米国特許第6,234,489号明細書は、ロータおよびステータを具備するシールを開示している。ロータおよびステータ内には環状弾性部材を有するインサートが封入されていて、インサートの片側をロータの外側半径方向面としっかりと接触した状態にしておくようにする。この設計の欠点は、この設計の好ましい構成では環状弾性部材がOリングとして設けられることである。
【0006】
[0005]Fedorovichの米国特許第6,386,546号明細書内に開示されている別のシール設計は、ラビリンス部および接触部を作り出すように配置されたロータおよびステータを具備している。ステータは、シールの接触部を作り出すために、ロータ表面の方へ偏倚させられた1つまたは複数のフランジを具備している。この種のシールの固有の問題は、ロータの方へ偏倚させられた横たえたリップまたはフランジが位置合せ不良に対処できないことである。シールが正しく位置合せされていないと、リップは、シールの片側に曲げられ、そのとき永久に変形する。次いで、位置合せ不良が除去されると、注油は密封リップの下で漏れる可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
[0006]この概要は、詳細な説明において以下にさらに説明する概念を簡略化した形でまとめたものを紹介するために提供される。この概要、および前述の背景は、特許請求された主題の主要な態様または本質的な態様に特定されるものではない。さらに、この概要は、特許請求された主題の範囲を決定する際の補助として用いられるものでもない。
【0008】
[0007]多くの実施形態で、回転軸と軸受ハウジングとの間に使用されるラビリンス密封装置が本明細書に開示される。このような実施形態では、設計には、ハウジングに係合する内部ステータと軸に係合するロータとが含まれる。潤滑剤および/または汚染物質の移動をどちらの方向にも阻止するために、ロータとステータとの間にラビリンス経路が形成される。いくつかの実施形態では、ロータは、密封要素の作動面として働くが、潤滑剤を密封リップから油だめの方へ連続的に引き離すポンプとして働くこともできる。
【0009】
[0008]いくつかの実施形態では、ステータは密封要素と対になって係合し、密封要素は、ロータおよびステータの構成要素の一体化形態(unitizing feature)としても働く。そのような実施形態では、リップシールが、ロータと接触する標準リップシールとして働くことができる。密封リップには、密封リップがロータと接触する平坦な境界面を設けることができる。密封要素境界面の一部はロータの滑らかな表面と接触するが、密封要素の残りの平坦な領域はロータ上のらせんポンピング形態(helical pumping feature)の上に懸架される。
【0010】
[0009]シール装置の様々な実施形態は、PTFEから形成されうる定形外の密封リップと特異的に配置されたポンピング形状構成とをベースとしている。密封要素の平坦部およびロータの平坦部は静止時にシールするが、シール平坦部の残り部分の下のらせんポンピング形状構成が潤滑剤をリップシールから引き離す。
【0011】
[0010]別の実施形態では、ステータおよび密封要素は、密封材料から形成されうる単一要素、すなわち密封ステータとして設けられる。リップシールがロータの作動面と封止係合するように設けられる。しかしながら、リップシールの密封面境界面部分には、密封面境界面部分において圧力差を作り出す凹所が設けられる。これは、流体およびごみの通路を制限するとともに摩耗を制限する。このような実施形態では、密封ステータは、半径方向外方に配置されたフランジから延びる突出部を具備する。突出部は、ロータの外縁から外方に延びる結合凸部を通って圧入することができる。ロータおよび密封ステータが、突出部と結合凸部が互いに係合する位置に置かれると、1つまたは複数の突条または摩耗ビードがロータと係合するように密封ステータの下面に沿って配置されることができ、それによって、ロータと密封ステータとの間に最小限の摩擦係合が達成される。
【0012】
[0011]別の実施形態では、密封固定子およびロータは、潤滑剤および/または汚染物の移動をどちらの方向にも阻止するのに役立つラビリンス型の通路を密封ステータとロータとの間に形成するように配置される。ロータは、密封ステータの方へ突出するフランジを具備するとともに、密封ステータのリップシールの上方かつ密封ステータの半径方向外側面の下方の空間を占有する。密封ステータは、半径方向にロータの方へ延びるアセンブリの軸線方向内側にアームをさらに具備する。アームの端部には、対向型リップが軸線方向にロータの方へ突出するとともに、アセンブリを通るラビリンス通路の一端にシールを作り出すようにロータと接触する。アームは、対向型リップが密着シールを作り出すように、軸線方向にロータの方へ偏倚させることができる。この実施形態のアセンブリは、リップシールの密封面境界面部分内の凹所や突出部および結合凸部などの、前述のアセンブリからの形状構成を任意に具備することができる。
【0013】
[0012]このシステムおよび方法のこれらおよびその他の態様は、本明細書において詳細な説明および図の検討後に明らかになるであろう。しかしながら、本発明の範囲は、発行された特許請求の範囲によって決定されるべきであり、所与の主題が背景において留意された任意またはすべての問題に対処するかこの概要に記載の任意の特徴または態様を含むかによって決定されるべきではないことを理解されたい。
【0014】
[0013]好ましい実施形態を含む本発明の非限定的かつ非網羅的な実施形態について以下の図を参照して説明するが、特に断らない限り同様の参照番号は種々の図を通じて同様の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】満液シールアセンブリの一実施形態の部分断面図である。
【図2】図1に示されている満液シールアセンブリの密封接触部の一実施形態の部分断面図である。
【図3A】満液シールアセンブリの別の実施形態の部分断面図である。
【図3B】図3Aに示されている満液シールアセンブリの密封接触部の一実施形態の部分断面図である。
【図3C】満液シールアセンブリの別の実施形態の部分断面図である。
【図4】満液シールアセンブリの別の実施形態の部分断面図である。
【図5】満液シールアセンブリの別の実施形態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0021]実施形態について、本明細書の一部を形成するとともに、特定の例示的な実施形態を例として示す添付の図を参照して以下により詳細に説明する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるようにするために十分詳細に開示される。しかしながら、実施形態が様々な形で実施されてもよく、本明細書に記述されている実施形態に限定されるものと解釈されるべきでない。したがって、以下の詳細な説明は限定された意味で受け取られるべきでない。
【0017】
[0022]図1を参照すると、ラビリンス密封装置10が、様々な実施形態で、回転軸と軸受ハウジングとの間に動的シールを設けるために提供される。したがって、密封装置10の実施形態は、潤滑剤が軸受ハウジングから漏れること、および汚染物がハウジングに入ることを防止する働きをする。密封装置10は一般に、1つまたは複数のOリング14によって軸(図示せず)と封止係合して配置されたロータ12を具備する。ロータは、密封装置10が使用されるアセンブリ全体の所期の目的での使用に適しているステンレス鋼、青銅、または他の材料から形成されると考えられる。同様に、Oリング14は、類似用途で一般的に使用されている種々の材料で提供することができる。様々な実施形態では、ロータ12は作動面18を提供する環状フランジ16を具備する。以下により詳細に説明するように、環状フランジ16の作動面18には、密封装置10に1つまたは複数の所望の属性を与えるために、比較的滑らかな面もしくは成形面、またはそれらの面を組み合わせたものが設けられる。
【0018】
[0023]密封装置10は、類似のラビリンス密封装置に適していることで知られている青銅または他の材料から形成されうるステータ20をさらに具備する。様々な実施形態では、ステータ20は密封要素22に結合される。いくつかの実施形態では、ステータ20および密封要素22は、回転防止ピン26に隣接して圧入された止め輪24で互いに結合される。止め輪24および回転防止ピン26は、予期されるすべての用途でステータ20および密封要素22を互いに連結することができる鋼材または他の類似の材料と、そのように使用される間に生成された力と、を用いて形成されうると考えられる。隣り合う回転防止ピン26、ステータ20、および密封要素22は、静的シール領域30を作り出すために圧入されたOリング28とともに対になって係合するように配置することができる。静的シール領域30の反対面上には、ステータ20がOリング32で軸受ハウジングと封止係合して置かれる。Oリング28および32は、Oリング14と類似した構造でかつ類似した材料で提供することができる。しかしながら、シール装置10の様々な使用目的には、追加のもしくはより少ないOリングまたは異なる構造のOリングを使用する必要がありうると考えられる。
【0019】
[0024]図2を参照すると、密封装置10のいくつかの実施形態には、密封要素22に軸線方向外側位置から内方に延びるリップシール34が設けられる。リップシール34には、いくつかの実施形態で、一体化形状構成ならびに平坦な密封面境界面部分36を設けることができる。このような実施形態では、密封面の境界面部36の少なくとも一部がロータ表面18aの平坦部上にある。いくつかの実施形態では、リップシール34は、リップシール34がロータ表面18に接触して置かれたときに、封止係合するために少なくともいくらかの圧力を加えるように半径方向内方へある程度まで偏倚させられる。シール要素22は、所望の特性ならびにラビリンスシール装置の構造および使用に望ましい場合のある弾性的に変形可能な性質を与えるために、PTFEまたは他の類似した材料から形成されうると考えられる。密封面境界面36の残存部分または遠位端部は、リップシールがロータ表面18に接触してリップシールの使用位置に置かれたときに、ロータ表面18b上のらせんポンピング形状構成38の上に懸架される。
【0020】
[0025]様々な実施形態では、らせんポンピング形状構成38は、ロータ表面18bの周りに概ねらせん形状の溝を形成することによって設けることができる。溝は、種々の成形技術または鋳造技術によるとともに、このような目的で設計された既知のツーリング機器を使用してロータ表面18bの各部分を研削または除去することにより形成することができると考えられる。リップシール34がロータ表面上にある状態で、らせん形状構成は潤滑剤を密封要素22から連続的に引き離すが、シール装置10が静止している間にシール要素22が潤滑剤を密封することを可能にする。軸線方向運動が起こると、リップシール34は、一体化形状構成のためにロータ上のリップシール34の臨界位置にとどまり、密封し続ける。したがって、大体らせん形であるか、または正弦波、円形要素および他の幾何形状を含む様々なパターンをとる様々な溝パターンおよび構成は、構造が回転するときに流動材料を所与の領域から引き離す能力を得るために選択されうると考えられる。
【0021】
[0026]密封要素22のいくつかの実施形態は、リップシール34の反対側に密封要素22から延びる突出部40を具備する。突出部40には、図1に示されているような角度をつけたバーブ形状を与えることができる。このようにして、突出部40は、ロータ表面18から外方に延びる結合凸部42を通り過ぎて圧入され、対向する構造の傾斜面は互いを滑って通過することができる。突出部40および結合凸部の形状には、互いに係合するとともにロータ18からの密封要素22の意図的でない除去を防止するために、扁平な面または逆の角度の面を設けることができる。このようにして、ロータ12とステータ20との金属間接触を著しく制限することができる。
【0022】
[0027]シール装置10の設計を見直した後で、いくつかの従来技術の欠点が首尾よく対処されていることが明らかになるであろう。特に、軸と穴が位置ずれしている間に弾力性を保持しない他の装置のOリング設計は、この設計で解決される。シール装置10は、シールがロータから分離するのを防止する。さらに、シール装置10の設計は、従来技術で頻繁に経験しているように、シール要素22がロータ18から分離するのを防止する。これらの利点は、フランジ16を用いてシール要素22をシール装置10の固定部分に固定すること、および、リップシール34が半径方向に浮動できるようにすることにより、少なくとも部分的に達成される。
【0023】
[0028]図3Aおよび図3Bを参照すると、ラビリンス密封装置100が、密封装置10に対する一代替実施形態として提供される。密封装置100の様々な実施形態は、回転軸と軸受ハウジングとの間に動的シールを設けるために用いることができる。密封装置100は、1つまたは複数のOリング114によって軸(図示せず)と封止係合して配置されたロータ112を具備する。ロータ112は、密封装置100が使用されるアセンブリ全体の所期の目的での使用に適しているステンレス鋼、青銅または他の材料から形成することができる。同様に、Oリング114は、この種の用途で一般的に使用されている種々の材料で提供することができる。様々な実施形態では、ロータ112は作動面118を提供する環状フランジ116を具備する。
【0024】
[0029]密封装置100の実施形態は、ステータおよび密封要素をさらに具備する。いくつかの実施形態では、ステータおよび密封要素は、類似のラビリンス密封装置に適していることで知られているPTFE、テフロンまたは他の材料から形成されうる密封ステータ120を設けるために、一体構造で形成することができる。様々な実施形態では、密封ステータ120を形成するために使用される材料は、対象とする特定の用途に所望される低摩擦性、低摩耗性、および密封特性を与える。密封ステータ120の半径方向外方に向けられた面上には、密封ステータ120は、Oリング114と類似した構造でかつ類似した材料で提供されうるOリング122で軸受ハウジングと封止係合して置かれる。しかしながら、シール装置100の様々な使用目的には、追加のもしくはより少ないOリングまたは異なる構造のOリングを使用する必要がありうると考えられる。
【0025】
[0030]さらに図3Aおよび図3Bを参照すると、密封ステータ120のいくつかの実施形態は、軸線方向に内方へ延びるリップシール124を具備する。リップシール124には、いくつかの実施形態で、一体化形状構成ならびに平坦な密封面境界面部分126を設けることができる。このような実施形態では、密封面境界面部分126の少なくとも一部が作動面118の平坦部に乗る。いくつかの実施形態では、リップシール124は、リップシール124が滑らかな作動面または研削作動面118の形で提供されうる作動面118に接触して置かれたときに、封止係合するために少なくともいくらかの圧力を加えるように内方へある程度偏倚させられる。リッピシール124が偏倚させられたときに、リップシールはヒンジ点124aを含む。ヒンジ点は、図3Aに示されている厚みTを有することができる。任意適当な厚みTを用いることもできる。いくつかの実施形態では、厚みは、0.010〜0.150とすることができる。
【0026】
[0031]図3Aで分かるように、リップシール124の半径方向内側面の一部に角度がつけられている。この傾斜面125は、密封面境界面部分126から、作動面118から上方へ離れて延びる。傾斜面125と作動面118との間の接触点に角度Aが形成される。任意適当な角度Aを用いることもできる。いくつかの実施形態では、角度Aは10°〜45°とすることができる。角度Aおよび厚みTを調節することにより、ヒンジ点124aと、密封面境界面部分126と作動面118の間の第1の接触点と、の間の長さLを変えることができる。
【0027】
[0032]いくつかの実施形態では、ロータ112と密封ステータ120との間に追加のシールを作り出すために、リップシール124の端部に半径方向に向けられた突出部129を具備することができる。図3Cに示されているように、半径方向に向けられた突出部129は、ロータ112が密封ステータ120に対になって係合されたときに、ロータ112の作動面118によってたわめられる。半径方向に向けられた突出部129は、ロータ112と密封ステータ120との間のシールにより良い効果を及ぼすように、軸線方向に外方へ偏倚することができる。やはり図3Cで分かるように、密封面境界面部分126の端部と半径方向に向けられた突出部129との間に空隙が存在することができる。密封面境界面部分126の長さは、半径方向に向けられた突出部129を含めるのに適合するように変えることができる。
【0028】
[0033]様々な実施形態では、密封面境界面部分126は1つまたは複数の凹所128を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の凹所128は、密封面境界面部分126の両端の中間に位置することができ、他の実施形態では、1つまたは複数の凹所128は、密封面境界面部分126の一端または両端のより近くまたはすぐ近傍に位置することができる。そのような実施形態では、1つまたは複数の凹所128は、過度の摩耗を受けたり流体またはごみの通路がリップシール124を通れるようにしたりせずに、密封面境界面部分126が作動面118に乗り上げることを可能にする圧力差を作り出す。密封面境界面部分126の長さは、追加の凹所128を収容するために大きくすることができる。
【0029】
[0034]密封ステータ120のいくつかの実施形態は、軸線方向外方に配置されたフランジから延びる突出部130を具備するが、この突出部130は密封性能には必要ない。突出部130には、図3Aに示されているような角度をつけたバーブ形状を与えることができる。このようにして、突出部130は、ロータ112の外縁から外方に延びる結合凸部132を通って圧入され、対向する構造の傾斜面は互いを滑って通過することができる。突出部130および結合凸部132の形状には、互いに係合するとともに、ロータ112からの密封ステータ120の意図的でない除去を防止するために、扁平な表面または逆の角度の表面を設けることができる。結合凸部132と突出部130との間の空隙は、ロータ112のある程度の軸線方向の動きを可能にするために変えることができる。ロータ112および密封ステータ120が、突出部130と結合凸部132が互いに係合する位置に置かれると、1つまたは複数の突条または摩耗ビード134がロータ112と係合するように密封ステータ120の下面に沿って配置されうる。逆に、すなわち組み合わせて、突条または摩耗ビード134は、ロータ112の表面から突出し、密封ステータ120と係合することもできる。このような実施形態では、ロータ112と密封ステータ120との間に最小限の摩擦係合が達成される。
【0030】
[0035]図4を参照すると、ラビリンス密封装置200が、密封装置10に対する別の代替実施形態として提供される。密封装置200の様々な実施形態は、回転軸と軸受ハウジングとの間に動的シールを設けるために用いることができる。密封装置200は、1つまたは複数のOリング214によって軸(図示せず)と封止係合して配置されたロータ212を具備する。ロータ212は、密封装置200が使用されるアセンブリ全体の所期の目的での使用に適しているステンレス鋼、青銅または他の材料から形成することができる。同様に、Oリング214は、この種の用途で一般的に使用されている種々の材料で提供することができる。様々な実施形態では、ロータ212は、作動面218を提供する、軸線方向に整列された環状フランジ216を具備する。ロータ212は、以下により詳細に説明する、ロータ212と密封ステータ220との間に密閉空間を形成するのに役立つ半径方向部分215も具備することができる。
【0031】
[0036]密封装置200の実施形態は、類似のラビリンス密封装置に適していることで知られているPTFE、テフロンまたは他の材料から形成されうる密封ステータ220をさらに具備する。様々な実施形態では、密封ステータ220を形成するために使用される材料は、対象とする特定の用途に所望される低摩擦性、低摩耗性、および密封特性を与える。密封ステータ220の半径方向外方に向けられた面上には、密封ステータ220は、Oリング214と類似した構造でかつ類似した材料で提供されうるOリング222で軸受ハウジングと封止係合して置かれる。しかしながら、様々な密封装置200の意図された使用には、追加のもしくはより少ないOリングまたは異なる構造のOリングの使用が必要がありうると考えられる。図4で分かるように、密封ステータ220およびロータ212が結合されたときに、ラビリンス通路217が形成される。ラビリンス通路は、ラビリンス通路217内に乱流を引き起こす回転と屈曲を含み、それによってラビリンス通路217を通り抜ける潤滑剤または汚染物の通過をより困難にする。
【0032】
[0037]図4に示されている密封装置200のいくつかの実施形態は、密封ステータ220からロータ212の方へ軸線方向外方に延びるリップシール224を具備する。リップシール224には、いくつかの実施形態で、一体化形状構成ならびに平坦な密封面境界面部分226を設けることができる。図4に示されているように、密封面境界面部分226の全体が作動面218に乗る。いくつかの実施形態では、リップシール224は、リップシール224がロータ表面218に接触して置かれたときに、封止係合するために少なくともいくらかの圧力を加えるように半径方向内方へロータ212の方へある程度まで偏倚させられる。
【0033】
[0038]いくつかの実施では、密封ステータ220は、半径方向にロータ212の方へ延びるアーム230を具備する。アーム230は、アーム230の少なくとも一部がロータ212の環状フランジ216と重なり合うまで、半径方向にロータ212の方へ延びることができる。いくつかの実施形態では、アーム230の端部は、環状フランジ216の半径方向内側面と実質的に同一平面である。アーム230の端部は、アーム230から離れて軸線方向に外方へ(すなわち、ロータ212の環状フランジ216の方へ)突出する対向型リップ232を具備する。対向型リップ232は環状フランジ216と接触し、潤滑剤および/または汚染物が密封ステータ220とロータ212との間に形成されたラビリンス通路217の内外へ通過するのを阻止することができる密封部を作り出す。環状フランジ216は、潤滑剤が環状フランジ216のところでラビリンス通路217に入らないようにされたときに、より低い圧力で密封し、したがって、対向型リップ232によって形成されたシールを有益にする。
【0034】
[0039]アーム230は、対向型リップ232と環状フランジ216との間により強力なシールを形成するために、軸線方向に外方へ偏倚させることができる。対向型リップ232は、環状フランジ216と対向型リップ232の接触面が平行に配列されるように方形形状を有することが好ましいが、表面接触ではなく点接触または線接触を形成することができる形状を含む他の形状を対向型リップ232に使用することもできる。
【0035】
[0040]環状フランジ216に対する対向型リップ232の圧力荷重は、密封ステータ220から軸線方向外方にロータ212の方へ突出する方形突条234を使用して、所定の値に設定することができる。図4に示されているように、方形突条234は、ラビリンス通路217内に、密封ステータ220の半径方向外側面に向かって位置する。密封ステータ220がロータ212と対になったときに、方形突条234は、密封ステータ220とロータ212がいかに密接に一体となるかを決定づける。方形突条234の長さは、アーム230がアーム230の偏倚に対して屈曲されるようにするほど密接に密封ステータ220とロータが結合されることを確実にし、対向型リップ232と環状フランジ216との間に堅固な境界面シールが形成される。さらに、方形突条234は、密封ステータ220およびロータ216がアーム230がアーム230の偏倚に対して過屈曲し、密封ステータ220のアーム230をポキッと折るようにさせる可能性があるほど密接には結合されないことを確実にする(それによって、環状フランジ216のところにシールを全く形成しない)。さらに、方形突条232は、ラビリンス通路217をさらに構築し、汚染物および/または潤滑剤がラビリンス通路217を通過するのをより困難にする。
【0036】
[0041]ロータ212は、ロータ212の半径方向部分215から軸線方向内方に突出するフランジ236をさらに具備することができる。フランジ236は、フランジ236がリップシール224と密封ステータ220の半径方向外側面との間に形成された空間の中に延びるように、半径方向部分215上に配置される。このようにして、フランジ236は複雑なラビリンス通路217をもたらす。フランジ236は、ラビリンス通路217内にさらなる乱流の形成をもたらすとともに、反駆動側(outboard)側の圧力も上昇させる。反駆動側側の圧力は一般に駆動側(inboard)に比べて低いので、この圧力上昇は、反駆動側と駆動側との間の圧力を有利に低下させる。
【0037】
[0042]図5に示されているように、ラビリンス密封装置200は、図3Aおよび図3Bに示されているようなラビリンス密封装置100に具備されている形状構成のうちの1つまたは複数を具備することができる。例えば、ラビリンス密封装置200は、凹所228を有するリップシール224を具備することができ、密封ステータ220およびロータが互いに対になって係合されたままにするために、突出部240および結合凸部242を具備することもできる。これらの形状構成を対向型リップ232、方形突条234、およびフランジ236とともに組み合わせることにより、潤滑剤および/または汚染物がラビリンス通路217を通って移動しないようにするのに非常に適しているラビリンス密封装置200になることができる。
【0038】
[0043]密封装置10、100、および200は、いくつかの構造、材料、および方法論的ステップに特有の言語で記述されているが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明は、記述されている特定の構造、材料、および/またはステップには必ずしも限定されないことを理解されたい。むしろ、特定の態様およびステップは、特許請求される発明を実施する形として記述されている。本発明の多くの実施形態は本発明の精神および範囲から逸脱することなく実施されうるので、本発明は以下に添付される特許請求の範囲に存在する。特に指示がない限り、本明細書(特許請求の範囲以外)に使用されている寸法、物理的特性などを表すようなすべての数または表現は、「約(approximately)」という用語によってすべての例で変更されるものとして理解されたい。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではなく、「約」という用語によって変更される本明細書または特許請求の範囲に記載されているそれぞれの数値パラメータは、少なくとも、記載されている有効数字の数に照らしてかつ通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。さらに、本明細書で開示されているすべての範囲は、中に組み込まれているありとあらゆる部分的範囲およびありとあらゆる個々の値を列挙する特許請求の範囲を包含しかつ支援するものと理解されたい。例えば、1〜10という規定の範囲は、最小値1と最大値10の間にありかつ/または最小値1および最大値10を含むありとあらゆる部分範囲または個々の値、すなわち、1以上の最小値で始まり10以下の最小値で終わるすべての部分範囲(例えば、5.5〜10、2.34〜3.56など)あるいは1から10までの任意の値(例えば、3、5.8、9.9994など)を列挙する特許請求の範囲を含みかつ支援するものと見なされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、ステータと、密封要素とを具備するラビリンス密封装置であって、
前記ロータが、
半径方向に向けられたベースと、
半径方向外側面および前記半径方向外側面の反対側の半径方向内側面を有し、前記半径方向外側面が作動面である、軸線方向に向けられたフランジと
を備え、
前記ステータが、前記ロータの前記半径方向に向けられたベースと対になって係合され、
前記密封要素が、前記ステータと前記軸線方向に向けられたフランジとの間に配置され、
前記密封要素が、軸線方向内方に延びかつ半径方向外側面および前記半径方向外側面の反対側の半径方向内側面を有するリップシールであり、前記半径方向内側面が前記作動面に乗る境界面である、リップシールを備える、ラビリンス密封装置。
【請求項2】
前記作動面が平坦部および溝付き部分を含む、請求項1に記載のラビリンス密封装置。
【請求項3】
前記境界面が、前記作動面の前記平坦部と前記溝付き部分の両方に乗る、請求項2に記載のラビリンス密封装置。
【請求項4】
前記溝付き部分がらせん状溝付き部分である、請求項2に記載のラビリンス密封装置。
【請求項5】
前記作動面の前記平坦部が前記軸線方向外側にあり、前記作動面の前記溝付き部分が前記軸線方向内側にある、請求項2に記載のラビリンス密封装置。
【請求項6】
前記密封要素から前記環状フランジの方へ突出する一体化突出部と、
前記環状フランジから前記一体化突出部と対になって係合する前記密封要素の方へ突出する結合凸部と、
をさらに備える、請求項1に記載のラビリンス密封装置。
【請求項7】
ロータと、密封ステータとを具備するラビリンス密封装置であって、
前記ロータが、
半径方向に向けられたベースと、
半径方向外側面および前記半径方向外側面の反対側の半径方向内側面を有し、前記半径方向外側面が作動面である、軸線方向に向けられたフランジと
を備え、
前記密封ステータが、 軸線方向内方に延びかつ半径方向外側面および前記半径方向外側面の反対側の半径方向内側面を有するリップシールであり、前記半径方向内側面が前記作動面に乗る境界面である、リップシールを備える、ラビリンス密封装置。
【請求項8】
前記境界面が少なくとも1つの凹所を含む、請求項7に記載のラビリンス密封装置。
【請求項9】
前記密封ステータが、前記密封ステータから突出しかつ前記ロータの前記半径方向に向けられたベースと接触する少なくとも1つの摩耗ビードをさらに備える、請求項7に記載のラビリンス密封装置。
【請求項10】
前記ステータが、前記ロータの前記半径方向に向けられたベースから突出しかつ前記密封ステータと接触する少なくとも1つの摩耗ビードをさらに備える、請求項7に記載のラビリンス密封装置。
【請求項11】
前記密封ステータが、
前記ロータの前記半径方向に向けられたベースの上に延びる、前記密封ステータの半径方向外側にある軸線方向に向けられたフランジと、
前記軸線方向に向けられたフランジの軸線方向内端に配置されかつ半径方向に内方へ突出する一体化突出部と
をさらに備える、請求項7に記載のラビリンス密封装置。
【請求項12】
前記リップシールが、前記リップシールの端部に位置しかつ半径方向内方へ突出する密封突出部をさらに備える、請求項7に記載のラビリンス密封装置。
【請求項13】
前記密封突出部が前記作動面に当たってたわむ、請求項12に記載のラビリンス密封装置。
【請求項14】
ロータと、密封ステータとを具備するラビリンス密封装置であって、
前記ロータが、
半径方向外端および前記半径方向外端の反対側の半径方向内端を有する半径方向に向けられたベース部と、
前記半径方向外端と前記半径方向内端との間に位置する第1の軸線方向に向けられたフランジと、
前記半径方向内端に位置する第2の軸線方向に向けられたフランジであり、半径方向外側面および前記半径方向外側面の反対側の半径方向内側面を有し、前記半径方向外側面が作動面である、第2の軸線方向に向けられたフランジ
を備え、
前記第1の軸線方向に向けられたフランジおよび前記第2の軸線方向に向けられたフランジが同じ軸線方向に延び、前記第1の軸線方向に向けられたフランジが前記第2の軸線方向に向けられたフランジより短く、
前記密封ステータが、軸線方向外方に延びかつ半径方向外側面および前記半径方向外側面の反対側の半径方向内側面を有するリップシールであり、前記半径方向内側面が前記作動面に乗る境界面である、リップシールを備え、
前記リップシールの少なくとも一部が、前記第1のフランジの下に延びるが前記第1のフランジと接触していない、ラビリンス密封装置。
【請求項15】
前記境界面が少なくとも1つの凹所を含む、請求項14に記載のラビリンス密封装置。
【請求項16】
前記密封ステータが、前記密封ステータから突出しかつ前記ロータの前記半径方向に向けられたベースと接触する少なくとも1つの方形突条をさらに備える、請求項14に記載のラビリンス密封装置。
【請求項17】
前記密封ステータが、前記第2の軸線方向に向けられたフランジの軸線方向内端の前に突出する、半径方向に内方へ突出する半径方向に向けられたアームをさらに備える、請求項14に記載のラビリンス密封装置。
【請求項18】
前記半径方向に向けられたアームが、前記第2の軸線方向に向けられたフランジの前記軸線方向内端と接触する対向型リップを具備する、請求項17に記載のラビリンス密封装置。
【請求項19】
前記半径方向に向けられたアームが軸線方向に外方へ偏倚させられる、請求項18に記載のラビリンス密封装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−511009(P2013−511009A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538976(P2012−538976)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/056364
【国際公開番号】WO2011/060154
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(502430378)ガーロック・シーリング・テクノロジーズ・エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】