説明

溶剤回収システムおよび溶剤回収方法

【課題】少ないエネルギー消費量で、分離水層中に含まれた溶剤成分を分離できる溶剤回収システム、および、このシステムを利用した溶剤回収方法を提供する。
【解決手段】本発明の溶剤回収システムは、吸着剤により原ガス中の溶剤ベーパーを吸着除去し、当該吸着剤に吸着された溶剤ベーパーを加熱により脱着する吸着部と、前記吸着部にて脱着された前記溶剤ベーパーを冷却して凝縮液を生成し、当該凝縮液を溶剤層および水層の2層に分離する冷却分離部と、前記冷却分離部にて分離された前記水層側の液体に対してガスを吹き込むガス吹込部と、を備えて構成されていることを特徴とする。水層側の液体に対してガスを吹き込むことにより、加熱することなく当該液体中に含まれた溶剤成分を揮発分離できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤回収システムおよび溶剤回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、印刷や塗装、接着等の各種処理においてインクや塗料、接着剤等を被処理物上に定着させる場合、インク等を溶剤で希釈して被処理物上に塗布した後に、溶剤を揮発させる乾燥工程が実施されている。ここで、溶剤は溶質であるインク等の性質に応じて適宜選択されるが、通常、例えばトルエンやエタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が使用されている。
【0003】
このような乾燥工程で発生する排ガス中には、例えば数百ppmの比較的低濃度の溶剤ベーパーが含まれており、かかる排ガスを大気中に放散すると、環境問題の原因となるおそれがある。また、溶剤は貴重な資源でもあるため、回収・再利用することが望まれている。
ここにおいて、排ガス中に含まれた溶剤ベーパーを吸着剤により吸着させて回収する技術が知られている(例えば、非特許文献1および特許文献1参照)。
【0004】
非特許文献1に記載の技術について図2に基づいて説明する。図2において、100は排ガス中に含まれた溶剤ベーパーを回収・精製するシステムであり、この回収精製システム100は、吸着装置110と、精製装置120とを備えている。
吸着装置110は、内部に吸着剤が充填された吸着塔111と、コンデンサ112とを備えている。この吸着装置110において、乾燥工程で発生した排ガス(以降、原ガスと称す)は吸着塔111内部に導入されて、原ガス中の溶剤ベーパーは吸着剤に吸着される。吸着された溶剤ベーパーはスチーム加熱により吸着剤から脱着されて、脱着蒸気としてコンデンサ112へ導入される。そして、当該脱着蒸気は、コンデンサ112により冷却されて、凝縮液として回収される。
【0005】
精製装置120は、分離槽121と、上層蒸留塔122と、下層蒸留塔123とを備えている。
分離槽121は、コンデンサ112からの凝縮液が内部に導入されて、当該凝縮液を静置することにより、上層(溶剤層)と下層(水層)の2層に分離する。なお、この溶剤層は主成分が溶剤であり、残部に水が含まれている。また、水層は主成分が水であり、残部に溶剤が含まれている。例えば、溶剤が親水性を有する場合、溶剤層には飽和溶解量分だけ水分が含まれ、水層には飽和溶解量分だけ溶剤が含まれている。
上層蒸留塔122は、分離槽121から導入された上層側の液体を、リボイラ部124のスチーム加熱により蒸留し、溶剤成分と水分とに分離する。この上層蒸留塔122にて分離された溶剤成分は、コンデンサ125にて冷却・液化された後、再度上層蒸留塔122へ導入され、十分に精製された状態で回収溶剤として取り出される。一方、上層蒸留塔122で分離された水分は、コンデンサ125にて冷却・液化された後に、下層蒸留塔123へと導入されるようになっている。
下層蒸留塔123は、分離槽121から導入された下層側の液体を、リボイラ部126のスチーム加熱により蒸留し、水分と溶剤成分とに分離する。この下層蒸留塔123にて分離された水分は、コンデンサ127にて冷却・液化された後に、再度下層蒸留塔123へと導入されて、十分に溶剤成分が除去された状態で排水されるようになっている。一方、下層蒸留塔123で分離された溶剤成分は、コンデンサ127にて冷却・液化された後に、分離槽121へと導入されて、再度精製されるようになっている。
【0006】
このような回収精製システム100によれば、原ガス中に含まれる溶剤ベーパーを回収できると共に、吸着剤を通過した原ガスを清浄空気として大気に放出することができる。そして、回収した溶剤ベーパーは、上層蒸留塔122にて高純度化して、溶剤として再利用可能な状態で得ることができる。さらに、凝縮液中の水分は溶剤を十分に除去した状態で排水することができ、排水処理コストの低減を図ることができる。
【0007】
一方、特許文献1には、コンデンサと、セパレータータンクと、蒸留塔とを備えた有機排気処理装置が示されている。
コンデンサは、活性炭に吸着された水溶性有機成分を蒸気で脱着することにより生じた脱着蒸気を凝縮する。セパレータータンクは、コンデンサで凝縮された凝縮液を比重分離する。蒸留塔は、セパレータータンクで比重分離された凝縮液のうち、比重の軽い分離排水中から親水性有機成分を蒸留分離する。このような蒸留塔は、熱交換部および電熱ヒーターあるいはスチームヒーターを備えており、熱交換部により脱着蒸気の廃熱を利用して塔内温度を上昇させ、さらにヒーターにより所定の設定温度まで加熱可能に構成されている。
かかる有機排気処理装置によれば、脱着蒸気中の水溶性有機成分を回収でき、さらに分離排水中にも存在する水溶性有機成分を分離・回収できる。また、分離排水を蒸留する際、蒸留塔の熱源に脱着蒸気の廃熱を利用するので、ヒーターを補助的に使用するのみに留めることができ、蒸留に要するコストを抑えられるという効果も得られる。
【0008】
【非特許文献1】月刊コンバーテック2005年2月号第60〜64頁、「排ガス溶剤回収・精製システム」、高田義之著
【特許文献1】特開平6−226039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記非特許文献1に記載の構成では、下層蒸留塔123において凝縮液下層側の全量をリボイラ部126のスチーム加熱により蒸留する構成であるため、蒸留に使用するスチーム量、すなわちエネルギー消費量が大きくなってしまうおそれがある。このため精製処理コストが高くなってしまい、また、省エネルギーの観点からも好ましくない。
【0010】
一方、上記特許文献1に記載の構成では、蒸留塔の熱源に脱着蒸気の廃熱を利用して、分離排水の蒸留のために消費するエネルギー量を削減している。しかしながら、ヒーターによる補足的な加熱が必要であるため、ヒーターで使用する分だけエネルギー消費量が増えてしまう。また、脱着蒸気の廃熱は安定して利用できるとも限らず、ヒーターによる加熱のウェイトが高くなる場合も考えられ、この場合、ヒーターで消費するエネルギー量がさらに増大してしまうおそれがある。
【0011】
本発明の目的は、上記した問題に鑑みて、少ないエネルギー消費量で、分離水層中に含まれた溶剤成分を分離できる溶剤回収システム、および、このシステムを利用した溶剤回収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、溶剤ベーパーを冷却凝縮した液体を溶剤層および水層の2層に分離させた後、水層側の液体に対してガスを吹き込むことにより、当該液体中に含まれた溶剤成分を揮発分離できるとの知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
【0013】
請求項1に記載の発明は、原ガス中に含まれる溶剤ベーパーを回収する溶剤回収システムであって、吸着剤により前記原ガス中の溶剤ベーパーを吸着除去し、当該吸着剤に吸着された溶剤ベーパーを加熱により脱着する吸着部と、前記吸着部にて脱着された前記溶剤ベーパーを冷却して凝縮液を生成し、当該凝縮液を溶剤層および水層の2層に分離する冷却分離部と、前記冷却分離部にて分離された前記水層側の液体に対してガスを吹き込むガス吹込部と、を備えて構成されていることを特徴とした溶剤回収システムである。
【0014】
ここで、本発明により処理可能な原ガスとしては、例えば印刷や塗装、接着の各処理における乾燥工程で発生した排ガスを挙げられるが、溶剤ベーパーを含有するガスであれば特に限定されるものではない。
溶剤は、親水性あるいは疎水性の揮発性の高い有機溶剤であり、例えばトルエンやエタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が挙げられる。
吸着剤には、活性炭、シリカゲル、ゼオライト等の吸着剤を採用できるが、数百ppm程度の比較的低濃度の溶剤ベーパーを吸着可能で、かつ、加熱により吸着された溶剤ベーパーを脱着可能な吸着剤であればいずれをも採用できる。
溶剤ベーパーを脱着する際の加熱手法としては、例えばスチームや加熱空気、加熱窒素等を加熱媒体として用いたものや、電気ヒータを利用したもの等が挙げられ、このうち、スチームを加熱媒体として使用したものが経済性、安全性の観点から最も好ましい。
冷却分離部では、脱着後の溶剤ベーパーを冷却凝縮するための手法として、例えば冷媒を用いた熱交換により溶剤ベーパーを冷却するコンデンサを採用できる。この冷媒には、例えばチラー水や工業用水、海水等を使用できるが、冷却効率の観点からチラー水が好適である。また、凝縮液を溶剤層および水層の2層に分離する手法としては、例えば、凝縮液を静置して2層分離しそれぞれ別に排出可能な分離槽を採用することができる。
ガス吹込部では、水層側の液体に対してガスを吹き込む手法として、例えばガスストリッパや曝気槽等を採用できるが、これらに限定されるものではなく、水層側の液体に対してガスを均一に吹き込むことが可能なものであればいずれをも採用できる。
また、本発明で言う水層とは、主として水を含みかつ残部に溶剤を含む液体を言うが、溶剤がどのような状態で水中に含まれているかは問わない。また、溶剤層とは、性質上水層から分離した液体を言い、溶剤層が更に複数層に分離したものを含み、残部に水分が含まれているか否かは問わない。
【0015】
このような本発明によれば、原ガス中に含まれる溶剤ベーパーを回収できると共に、吸着剤を通過した原ガスを清浄空気として大気に放出することができる。そして、冷却分離部にて分離した水層側の液体に対してガスを吹き込んで、当該液体中に残存した溶剤成分に吹込ガスを接触させることで、当該液体を加熱することなく溶剤成分を揮発させることができる。このため、少ないエネルギー消費量で、分離水層中に含まれた溶剤成分を分離することができる。したがって、従来技術に比較してエネルギーコストが低廉で済み、排水処理コストを低減できる。また、冷却分離部にて分離した溶剤層側の液体は、適宜精製処理を施すことで溶剤として再利用可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の溶剤回収システムにおいて、前記ガス吹込部は、前記水層側の液体に対して前記ガスを吹き込むことにより当該液体中から分離された溶剤ベーパーを、前記吸着部に導入される前の原ガス中に導入することを特徴とした溶剤回収システムである。
【0017】
本発明によれば、水層側の液体に対してガスを吹き込むことにより発生した微量の溶剤ベーパーを漏らすことなく、再度吸着剤に吸着させて回収することができるので、溶剤ベーパーの回収効率をさらに向上することができる。また、当該微量の溶剤ベーパーを大気放出しなくて済むので、環境保護および資源保護の観点からも好ましい。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の溶剤回収システムにおいて、前記ガス吹込部は、内部に設けられた充填物に対して前記水層側の液体を分散滴下し、当該充填物の下方よりガスを吹き込んで気液接触させるガスストリッパを備えていることを特徴とした溶剤回収システムである。
【0019】
ここで、本発明において、ガスストリッパとしては一般的な充填塔タイプを採用でき、充填物には例えばラシヒリングやベルルサドル、テラレット等から適宜選択することができる。
水層側の液体を分散滴下する手法としては、例えばスプレーや分散板、チムニートレー等を採用することができるが、これに限定されるものではなく、当該液体を充填物に対して均一に分散滴下できるものであればいずれをも採用できる。
吹込用のガスには、例えば空気や窒素ガス、炭酸ガス等を用いることができるが、コストの観点から空気を使用することが好ましい。
【0020】
本発明によれば、充填物中において、水層側の液体を細かく均一に分散させたところに、ガスを下方から吹き込むことにより、より微細なレベルで気液接触させることができるので、当該液体を加熱することなく殆ど全ての溶剤成分を気化させることができる。このため、少ないエネルギー消費量で、水層側の液体中に残存した溶剤を高効率で除去できる。また、溶剤が除去された後の清浄水は、ガスストリッパ下部に貯めて液レベルに応じて適宜抜き出すことにより、あるいはガスストリッパ下部から常時抜き出すこと等により、公共水面に安全に放流することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の溶剤回収システムにおいて、前記ガス吹込部は、前記水層側の液体を内部に貯留し、貯留した当該液体に対してガスを吹き込んで曝気処理する曝気槽を備えていることを特徴とした溶剤回収システムである。
ここで、吹込用のガスには、例えば空気や窒素ガス、炭酸ガス等を用いることができるが、コストの観点から空気を使用することが好ましい。
【0022】
本発明によれば、曝気槽内に水層側の液体を貯留したところに、ガスを微細かつ均一に吹き込むことにより、微細なレベルで気液接触させることができるので、当該液体を加熱することなく殆ど全ての溶剤成分を気化させることができる。このため、少ないエネルギー消費量で、水層側の液体中に残存した溶剤を高効率で除去できる。また、曝気処理を所定時間実施して溶剤が除去された後の清浄水は、公共水面に安全に放流することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の溶剤回収システムにおいて、前記ガス吹込部は、前記水層側の液体に対して、空気、窒素ガスおよび炭酸ガスのうち少なくともいずれか一種のガスを吹き込むことを特徴とした溶剤回収システムである。
【0024】
本発明によれば、上記したいずれのガスも安価であり、特に空気であれば吹込用のポンプ等以外にコストが掛からないため、処理コストを極めて低く抑えることができる。また、上記したガスは化学的にも安定したガスであるため、環境に優しく、特に溶剤と反応することもないので溶剤の回収率を下げることもない。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の溶剤回収システムにおいて、前記冷却分離部にて分離された前記溶剤層側の液体を加熱して気化させ、気化させた気体を気体分離膜中を通過させることにより、当該液体中の水分を分離する膜分離部を備えて構成されていることを特徴とした溶剤回収システムである。
【0026】
ここで、本発明において、溶剤層側の液体を加熱する手法しては、例えばスチームや加熱空気、加熱窒素等を加熱媒体として用いたものや、電気ヒータを利用したもの等が挙げられる。
また、気体分離膜としては、例えばゼオライトやジルコニア、酢酸セルロース、ポリスルフォン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。
【0027】
本発明によれば、溶剤が過半を占める溶剤層側の液体を加熱気化させてから、気体分離膜により溶剤層側の液体中の水分を分離するので、図2に示す上層蒸留塔122にて蒸留分離する従来構成に比べて、エネルギー消費量を低減できる。そして、溶剤中の水分を分離することで、水溶性溶剤の再利用において問題であった水分混入を防止でき、高純度の溶剤を得ることができる。また、ガス吹込部と膜分離部とを組み合わせることで、再資源化率の向上と排水の無害化を併せて実現できる。
【0028】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の溶剤回収システムにおいて、前記膜分離部は、前記気体分離膜により分離した水分を、前記ガス吹込部に導入される前の前記水層側の液体中に導入することを特徴とした溶剤回収システムである。
【0029】
本発明によれば、気体分離膜により分離した水分中に含まれた極微量の溶剤を、ガス吹込部において確実に除去することができる。このため、膜分離部で発生した排水の処理コストを削減でき、溶剤の回収効率をさらに向上することが可能となる。
【0030】
請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載の溶剤回収システムにおいて、前記気体分離膜は、ゼオライトにより形成されていることを特徴とした溶剤回収システムである。
ゼオライトは、水分離性能に優れた気体分離膜であるため、このようなゼオライトを用いることにより、溶剤層側の液体中の水分を確実に分離することができる。このため、溶剤の純度をさらに高めることができると共に、膜分離部で発生した排水中の溶剤濃度をさらに低減することができる。また、ゼオライトは、耐熱性および耐加水分解性に優れているため、システムの長期の運転によって劣化し難く、システムのメンテナンスに要するコストを低減できる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の溶剤回収システムにおいて、前記吸着剤は活性炭であることを特徴とした溶剤回収システムである。
活性炭は吸着力に優れた吸着剤であり、特に繊維状の活性炭であればさらに高い吸着能力を発揮する。このような活性炭を吸着部において用いることにより、例えば大風量でかつ溶剤ベーパーの含有率が数百ppm程度の乾燥工程からの排ガスに対して、当該排ガス中の溶剤ベーパーを高効率で回収することができる。
【0032】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の溶剤回収システムを用いて、原ガス中に含まれた溶剤ベーパーを回収することを特徴とする溶剤回収方法である。
このような本発明によれば、上記した請求項1〜9に記載の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る溶剤回収システムの概略構成を示した模式図である。
〔溶剤回収システムの構成〕
図1において、溶剤回収システム1は、原ガス中の溶剤ベーパーを回収・精製するシステムであり、吸着部2と、冷却分離部3と、膜分離部4と、エアストリッピング部5(ガス吹込部)と、を備えて構成されている。
なお、本実施形態により処理する原ガスは、例えば印刷や塗装、接着の各処理における乾燥工程で発生した排ガスであり、当該排ガス中には例えば酢酸エチル等の溶剤ベーパーが数百ppm程度含まれている。
【0034】
吸着部2は、吸着剤により原ガス中の溶剤ベーパーを吸着除去し、当該吸着剤に吸着された溶剤ベーパーを加熱により脱着するものである。
具体的に、このような吸着部2は、吸着塔21と、原ガス導入ライン22と、清浄ガス排出ライン23と、スチーム導入ライン24と、脱着蒸気排出ライン25とを備えて構成されている。
吸着塔21の内部には、繊維状活性炭等の吸着剤が充填されている。原ガス導入ライン22は、乾燥工程からの原ガスを吸着塔21の内部に導入する。清浄ガス排出ライン23は、吸着剤中を通過して清浄ガスとなった原ガスを大気に排出する。スチーム導入ライン24は、吸着塔21の内部にスチームを導入して吸着剤を加熱し、吸着剤に吸着された溶剤ベーパーを脱着させる。脱着蒸気排出ライン25は、吸着剤から脱着された溶剤ベーパーとスチームとを含む脱着蒸気を、冷却分離部3へ向けて排出する。
【0035】
なお、吸着塔21は、図1に示すように少なくとも2塔以上であることが好ましい。すなわち、吸着塔21の内部に原ガスを導入して吸着剤に溶剤ベーパーを吸着させる処理と、吸着塔21の内部にスチームを導入して吸着剤から溶剤ベーパーを脱着させる処理とは、1つの吸着塔において同時に実施できない。このため、連続的に原ガスを導入して脱着蒸気を生成するためには、吸着塔21を2塔以上設けて、吸着処理と脱着処理を交互に切り替えて行えるようにすることが好ましい。
【0036】
冷却分離部3は、吸着部2からの脱着蒸気を冷却して凝縮液を生成し、当該凝縮液を溶剤層および水層の2層に分離するものである。
具体的に、このような冷却分離部3は、脱着蒸気輸送ライン31と、コンデンサ32と、分離槽33と、上層液排出ライン34と、下層液排出ライン35とを備えて構成されている。
脱着蒸気輸送ライン31は、脱着蒸気排出ライン25に接続されて、吸着塔21からの脱着蒸気を分離槽33へ向けて輸送する。コンデンサ32は、脱着蒸気輸送ライン31にて輸送されている脱着蒸気をチラー水等を用いた熱交換により冷却し、凝縮液を生成する。分離槽33は、脱着蒸気輸送ライン31からの凝縮液を内部に貯留可能とされており、貯留された凝縮液を静置することにより、当該凝縮液を上層(溶剤層)と下層(水層)の2層に分離する。上層液排出ライン34は、分離槽33にて分離された溶剤層側の液体を膜分離部4へ向けて排出する。下層液排出ライン35は、分離槽33にて分離された水層側の液体をエアストリッピング部5へ向けて排出する。
【0037】
なお、溶剤層および水層のそれぞれの液量は、原ガス中の溶剤ベーパー濃度、湿度、脱着用スチームの量、脱着度合い、凝縮液の生成量に影響されるため、時々刻々変化する。このため、分離槽33は、溶剤層については、所定液レベルを超えるとオーバーフローさせる構造とするか、液レベルを検知して抜き出す制御を行い、水層については、溶剤層および水層の2層間の液レベルを検知して水層中の液体を抜き出す制御を行う構成とすることが好ましい。これにより、溶剤層および水層は所定の液レベルを維持するよう抜き出すことが可能となり、安定した精製処理が可能となる。
【0038】
膜分離部4は、冷却分離部3にて分離された溶剤層側の液体を加熱して気化させ、気化させた気体を気体分離膜を通過させることにより、当該液体中の水分を分離する。また、気体分離膜により分離した水分を、エアストリッピング部5に導入される前の水層側の液体中に導入するものである。
具体的に、このような膜分離部4は、加熱塔41と、加熱気体輸送ライン42と、気体分離膜43と、溶剤回収ライン44と、溶剤側コンデンサ45と、水分排出ライン46と、水側コンデンサ47と、タンク48と、水返送ライン49と、を備えて構成されている。
加熱塔41は、上層液排出ライン34から、分離槽33にて分離された溶剤層側の液体が内部に導入され、導入された当該液体を加熱して気化させる。この加熱にはスチームや電熱ヒーター等を適宜使用可能である。加熱気体輸送ライン42は、加熱塔41の加熱により気化した気体を気体分離膜43へ向けて輸送する。気体分離膜43は、ゼオライトにて形成されており、加熱気体輸送ライン42からの加熱気体を内部を通過させることにより、当該加熱気体を溶剤成分と水分とに分離する。溶剤回収ライン44は、気体分離膜43にて分離された溶剤成分を輸送する。溶剤側コンデンサ45は、溶剤回収ライン44上に設けられており、溶剤回収ライン44にて輸送されている溶剤成分を冷却凝縮して、回収溶剤を生成する。水分排出ライン46は、気体分離膜43にて分離された水分をタンク48へ向けて輸送する。水側コンデンサ47は、水分排出ライン46上に設けられており、水分排出ライン46にて輸送されている水分を冷却凝縮する。タンク48は、水分排出ライン46からの凝縮水を貯留する。水返送ライン49は、タンク48および下層液排出ライン35に接続されており、タンク48内に貯留された凝縮水を下層液排出ライン35中に導入する。
【0039】
なお、気体分離膜43は0.1〜0.3MPa程度の加圧条件で使用されるため、加熱気体輸送ライン42にて輸送される加熱気体は、凝縮防止のためさらに加熱することが好ましい。このため、加熱気体輸送ライン42上には加熱ヒータ421を設けることが好ましい。なお、加熱ヒータ421による加熱温度は120℃以上とすることが好ましく、より好ましくは140℃以上とすることが望ましい。
【0040】
エアストリッピング部5は、冷却分離部3にて分離された水層側の液体に対してガスを吹き込む。また、当該液体中から分離された溶剤ベーパーを、吸着部2に導入される前の原ガス中に導入するものである。
具体的に、このようなエアストリッピング部5は、エアストリッパ51と、清浄水排出ライン52と、溶剤ベーパー返送ライン53とを備えて構成されている。
エアストリッパ51は、一般的な充填塔タイプを使用でき、溶剤分散手段511と、充填物512と、エア吹込手段513とを備えている。溶剤分散手段511は、下層液排出ライン35に接続された例えばスプレーや分散板、チムニートレー等であり、分離槽33にて分離された水層側の液体を充填物512に対して均一に分散滴下する。充填物512は、エアストリッパ51内部に設けらた例えばラシヒリング、ベルルサドル、テラレット等である。エア吹込手段513は、図示しないエアポンプ等を備えており、エアストリッパ51内部の充填物512の下方から充填物512へ向けてエアを吹きつける。これにより、充填物512中において、溶剤分散手段511により分散滴下された水層側の液体と、エア吹込手段513により吹き込まれたエアとが気液接触して、当該液体中の溶剤が揮発するようになっている。清浄水排出ライン52は、溶剤が除去されてエアストリッパ51の下部に貯められた清浄水を、液レベルに応じて適宜抜き出して放流する。溶剤ベーパー返送ライン53は、エアストリッパ51の上部と原ガス導入ライン22とに接続されており、エアストリッパ51にて分離された溶剤ベーパーとエア吹込手段513からのエアとが混在したガスを、原ガス導入ライン22へと導入する。
【0041】
なお、エアストリッパ51には、さらに、図1に示す循環手段54と、充填物512の下部に液だめ(図示しない)を設けてもよい。これにより、充填物512の下方に滴下する処理後の分離水を液だめで受け、液だめに貯められた分離水を循環手段54により溶剤分散手段511中に戻すことにより、分離水を循環散布することが可能となり、気液接触を活発にして気化を促進することが可能となる。
また、充填物512中において、水層側の液体中の溶剤がエアにより揮発する際は、気化熱として当該液体の熱が奪われることになる。これにより、当該液体の温度が低下して、溶剤が揮発し難くなり分離効率が低下してしまう。このため、循環手段54は、液だめに貯められた分離水を加熱してから、溶剤分散手段511中に導入する構成とすることが好ましい。これにより、溶剤の分離効率が低下することが防止可能となる。
【0042】
〔溶剤ベーパーの回収方法〕
上述した溶剤回収システム1を用いて、溶剤ベーパーを回収する動作について説明する。
まず、吸着部2において、乾燥工程からの原ガスを吸着塔21の内部に導入し、吸着剤により原ガス中の溶剤ベーパーを吸着除去する。この際、例えば吸着剤に活性炭繊維を使用すれば、約95%の溶剤ベーパーを除去することができる。また、吸着剤を通過した原ガスは清浄空気として大気に放出することができる。
そして、吸着処理が終了した後は、吸着塔21の内部にスチームを導入し、吸着剤に吸着された溶剤ベーパーを脱着させる。
【0043】
次に、冷却分離部3において、吸着塔21からの脱着蒸気は、コンデンサ32により冷却凝縮され、この凝縮液は、分離槽33内にて静置されることにより、溶剤層と水層の2層に分離される。この状態において、溶剤層は主成分が溶剤であり、残部に水が含まれている。また、水層は主成分が水であり、残部に溶剤が含まれている。
【0044】
この後、膜分離部4において、分離槽33にて分離された溶剤層側の液体は、加熱塔41により加熱されて気化し、この加熱気体は、気体分離膜43内を通過して、溶剤成分と水分とに分離される。このように、溶剤が過半を占める溶剤層側の液体を加熱気化させてから、気体分離膜43により水分を分離するので、図2に示す上層蒸留塔122にて蒸留分離する従来構成に比べて、エネルギー消費量を低減できる。
そして、膜分離後の高純度の溶剤ベーパーは、溶剤側コンデンサ45により冷却液化され、高純度溶剤として再利用可能な状態で回収できる。なお、気体分離膜43は分離能に優れたゼオライトにて形成されているため、回収溶剤中の水分濃度は0.5wt%以下まで低減することができる。
一方、膜分離後の水分は、水側コンデンサ47により冷却液化された後、タンク48内に貯留される。この状態におけるタンク48内の凝縮水中の溶剤濃度は十数%程度である。そして、タンク48内の凝縮水は、下層液排出ライン35中に導入されて、分離槽33にて分離された水層側の液体と共に、エアストリッピング部5にて処理されることになる。このように、凝縮水中に含まれた極微量の溶剤をエアストリッピング部5において確実に除去することができるので、凝縮水の排水処理コストを削減でき、溶剤の回収効率をさらに向上することができる。
【0045】
そして、エアストリッピング部5において、分離槽33にて分離された水層側の液体は、エアストリッパ51内へと輸送されて、充填物512に対して均一に分散滴下される。このとき、エア吹込手段513より充填物512の下方からエアが吹きつけられるので、充填物512中では、分散滴下された当該液体と吹込エアとが微細なレベルで気液接触する。これにより、当該液体を加熱することなく、殆ど全ての溶剤成分を排水中から揮発除去することができる。したがって、全量蒸留していた従来構成に比べてエネルギー消費量を大幅に低減することができると共に、エネルギーコストおよび排水処理コストを低減できる。なお、エアストリッパ51内へ吹き込むガスは空気であるので、処理コストを極めて低く抑えることができると共に、特に溶剤と反応することもないため溶剤の回収率を下げることもない。
そして、溶剤が除去されて清浄水となった当該水層側の液体は、エアストリッパ51の下部に貯められた後に放流される。この際、清浄水中の溶剤濃度は、公共水面に放流しても安全なレベルまで低減されている。
一方、エアストリッパ51にて分離された溶剤ベーパーは、吹込エアと共に原ガス導入ライン22へと導入されて、再度、吸着部2にて回収される。このように、エアストリッパ51にて分離された微量の溶剤ベーパーを漏らすことなく、再度吸着剤に吸着させて回収することができるので、溶剤ベーパーの回収効率をさらに向上することができる。また、当該微量の溶剤ベーパーを大気放出しなくて済むので、環境保護および資源保護の観点からも好ましい。
【0046】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0047】
例えば、前記実施形態では、吸着部2において、吸着剤の加熱媒体としてスチームを使用したが、加熱空気や加熱窒素を用いてもよく、この場合でも溶剤ベーパーを吸着剤より脱着させることができる。なお、加熱空気を使用した場合は、溶剤ベーパーによる爆発雰囲気の形成を回避する制御が必要となる。また、加熱窒素を使用した場合、爆発雰囲気形成のおそれはないが高価である。このため、上記した実施形態のように、加熱媒体としてスチームを用いることが経済性、安全性の観点から好ましい。
【0048】
前記実施形態では、本発明のガス吹込部として、エアストリッパ51を備えたエアストリッピング部5を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、吹込ガスとしてエアの代わりに窒素ガスや炭酸ガス等を用いたガスストリッパを備えた構成としてもよい。また、分離槽33内における水層側の液体を内部に貯留し、貯留した当該液体に対してガスを吹き込んで曝気処理する曝気槽を備えている構成としてもよい。このような構成でも、少ないエネルギー消費量で、水層側の液体中に残存した溶剤を高効率で除去できる。
【0049】
前記実施形態では、エアストリッピング部5において、エアストリッパ51にて分離された溶剤ベーパーを吹込エアと共に原ガス導入ライン22へと導入し、再度、吸着部2にて回収させる構成を例示したが、これに限らない。すなわち、例えば、溶剤ベーパー返送ライン53を脱着蒸気輸送ライン31に接続して、エアストリッパ51にて分離された溶剤ベーパーを脱着蒸気と共にコンデンサ32により冷却凝縮する構成としてもよい。このような構成でも、エアストリッパ51にて分離された微量の溶剤ベーパーを漏らすことなく、回収溶剤として回収することができる。また、例えば、エアストリッパ51にて分離された溶剤ベーパーを吸着部2や冷却分離部3に戻さずに、別途、回収手段として気体分離膜や吸着塔等を設けて、これらの回収手段に回収させる構成としてもよい。このような構成でも、当該分離後の溶剤ベーパーを漏らすことなく回収することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
(1)実施例1
図1に示す溶剤回収システム1用いて、原ガス中から溶剤ベーパーを回収した。
【0051】
(1-1)吸着部
吸着部2では、以下の条件で原ガス中の溶剤ベーパーの吸着処理を行った。
・原ガス…ドライラミネーター乾燥工程で発生した排ガス
・溶剤種…酢酸エチル
・原ガス流量… 10000m/hr
・溶剤濃度…1000ppm その他は空気
・吸着塔…2塔
・吸着剤…活性炭繊維
・吸着剤充填量…500kg(1塔あたり250kg)
・吸着塔切換え…10分(スチーム投入7分、冷却3分)
・脱着用スチーム量…280kg/hr(max360kg/hr)
吸着塔出口濃度を測定した結果、平均の溶剤ベーパー除去率は95%であった。
【0052】
(1-2)冷却分離部
冷却分離部3における凝縮液の量および組成は以下の通りだった。
・回収液量…334kg/hr(上層液42kg/hr、下層液292kg/hr)
・溶剤濃度…上層液96.4wt%、下層液8.0wt%
【0053】
(1-3)膜分離部
膜分離部4では、以下の条件で上層液を気化させ、膜分離を行い、冷却液化を行った。
・気体分離膜…ゼオライト膜
・スチーム使用量…20kg/hr
・温度…120℃
・圧力…0.1MPaG
膜分離後の回収液量、組成は以下の通りだった。
・溶剤(非透過液)…37kg/hr(水分濃度0.5wt%)
・排水(透過液)…1.5kg/hr(水分濃度86wt%)
なお、排水は下記下層液と共にエアストリッピング処理を行った。
【0054】
(1-4)エアストリッピング部
エアストリッピング部5では、以下の条件で下層液に対してエアストリッピングを実施した。
・エアストリッパ…充填塔タイプ気液接触塔(充填物:ラシヒリング)
・エア風量…400m/hr
エアストリッピング後の流量、組成は以下の通りだった。
・ガス流量…405m/hr、溶剤濃度1.3vol%
・排水…270kg/hr、溶剤濃度10ppm
【0055】
(2)比較例1
図2に示す従来のシステムと略同様のシステムを用いて、原ガス中から溶剤ベーパーを回収した。なお、吸着部および分離系までは、実施例1における上記(1-1)(1-2)と同じ操作とし、その後の精製工程を下記に示す蒸留法で行った。
【0056】
(2-1)蒸留系(脱水)
上層液を以下の条件で蒸留を行った。
・蒸留塔…多段式
・スチーム使用量…30kg/hr
・リボイラー温度…85℃
・コンデンサ温度…32℃
蒸留後の回収液量、組成は以下の通りだった。
・溶剤(ボトム液)…37kg/hr(水分濃度0.5wt%)
・排水(トップ液)…1.5kg/hr(水分濃度86wt%)
なお排水は下記下層液と共に蒸留を行った。
【0057】
(2-2)蒸留系(脱溶剤)
下層液を以下の条件で蒸留を行った。
・蒸留塔…多段式
・スチーム使用量…170kg/hr
・リボイラー温度…95℃
・コンデンサ温度…32℃
蒸留後の回収液量、組成は以下の通りだった。
・溶剤(トップ液)…20.4kg/hr(水分濃度1.5wt%)
・排水(ボトム液)…270kg/hr(溶剤濃度100ppm)
【0058】
(3)結果および考察
実施例1による溶剤の回収率は95%であり、精製工程(1-3)(1-4)のスチーム消費量は20kg/hrであった。一方、比較例1による溶剤の回収率は95%であり、精製工程(2-1)(2-2)のスチーム消費量は200kg/hr(=30+170)であった。これより、実施例1は比較例1に比較して、スチーム使用量が90%削減できていることが分かる。したがって、本発明によりエネルギー消費量を大幅に削減できる。
また、実施例1において、下層液をエアストリッピングした後の排水中の溶剤濃度は10ppmであった。一方、比較例1において、下層液を蒸留した後の排水中の溶剤濃度は100ppmであった。これより、実施例1は比較例1に比較して、下層液中に残存する溶剤の除去効率が10倍であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る溶剤回収システムの概略構成を示した模式図である。
【図2】従来の溶剤回収システムの概略構成を示した模式図である。
【符号の説明】
【0060】
1…溶剤回収システム
2…吸着部
3…冷却分離部
4…膜分離部
43…気体分離膜
5…エアストリッピング部(ガス吹込部)
51…エアストリッパ
512…充填物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原ガス中に含まれる溶剤ベーパーを回収する溶剤回収システムであって、
吸着剤により前記原ガス中の溶剤ベーパーを吸着除去し、当該吸着剤に吸着された溶剤ベーパーを加熱により脱着する吸着部と、
前記吸着部にて脱着された前記溶剤ベーパーを冷却して凝縮液を生成し、当該凝縮液を溶剤層および水層の2層に分離する冷却分離部と、
前記冷却分離部にて分離された前記水層側の液体に対してガスを吹き込むガス吹込部と、を備えて構成されている
ことを特徴とした溶剤回収システム。
【請求項2】
請求項1に記載の溶剤回収システムにおいて、
前記ガス吹込部は、前記水層側の液体に対して前記ガスを吹き込むことにより当該液体中から分離された溶剤ベーパーを、前記吸着部に導入される前の原ガス中に導入する
ことを特徴とした溶剤回収システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の溶剤回収システムにおいて、
前記ガス吹込部は、内部に設けられた充填物に対して前記水層側の液体を分散滴下し、当該充填物の下方よりガスを吹き込んで気液接触させるガスストリッパを備えている
ことを特徴とした溶剤回収システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の溶剤回収システムにおいて、
前記ガス吹込部は、前記水層側の液体を内部に貯留し、貯留した当該液体に対してガスを吹き込んで曝気処理する曝気槽を備えている
ことを特徴とした溶剤回収システム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の溶剤回収システムにおいて、
前記ガス吹込部は、前記水層側の液体に対して、空気、窒素ガスおよび炭酸ガスのうち少なくともいずれか一種のガスを吹き込む
ことを特徴とした溶剤回収システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の溶剤回収システムにおいて、
前記冷却分離部にて分離された前記溶剤層側の液体を加熱して気化させ、気化させた気体を気体分離膜中を通過させることにより、当該液体中の水分を分離する膜分離部を備えて構成されている
ことを特徴とした溶剤回収システム。
【請求項7】
請求項6に記載の溶剤回収システムにおいて、
前記膜分離部は、前記気体分離膜により分離した水分を、前記ガス吹込部に導入される前の前記水層側の液体中に導入する
ことを特徴とした溶剤回収システム。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の溶剤回収システムにおいて、
前記気体分離膜は、ゼオライトにより形成されている
ことを特徴とした溶剤回収システム。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の溶剤回収システムにおいて、
前記吸着剤は活性炭である
ことを特徴とした溶剤回収システム。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の溶剤回収システムを用いて、原ガス中に含まれた溶剤ベーパーを回収する
ことを特徴とする溶剤回収方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−73590(P2008−73590A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254105(P2006−254105)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000183624)出光エンジニアリング株式会社 (18)
【Fターム(参考)】