説明

溶剤蒸留装置

【課題】スピンディスクフィルタの濾過容器内の汚れた溶剤を蒸留するために蒸留装置へ送る溶剤の切替操作を作業者が行う必要があるため作業性が悪い。
【解決手段】溶剤を用いて洗濯を行うドライクリーナの洗濯に使用後の当該溶剤を蒸留釜14で気化させた後、凝縮液化させて洗濯に再利用可能にする蒸留装置であって、溶剤タンク内10に貯留された溶剤と洗濯に使用後の溶剤をフィルタ11で濾過した際の微細なゴミなどの粒子状の汚れなどの被濾過物が混入している溶剤とを選択的に前記蒸留釜14に導入するように成した溶剤蒸留装置において、前記ドライクリーナにあって、洗濯の運転回数を示す電気信号の回数に基づいて前記蒸留釜14に導入する溶剤を溶剤タンク内10に貯留された溶剤かもしくは被濾過物が混入している溶剤かを選択する制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライクリーナで使用される溶剤を浄化して再生するために用いられる溶剤蒸留装置に関し、さらに詳しくは、様々な機種のドライクリーナと組み合わせて使用できるようにドライクリーナとは別体で提供される溶剤蒸留装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーニング店舗等で用いられるドライクリーナでは、洗濯物を洗浄することで汚れた溶剤(シリコーンオイル、石油系溶剤など)を繰り返し使用するために、溶剤を濾過するフィルタや溶剤を蒸留する溶剤蒸留装置が使用されている。例えば特許文献1などに記載のドライクリーニング装置では、溶剤に混入している微細な粒子状のゴミや汚れを除去するためにスピンディスクフィルタと呼ばれるフィルタが使用されている。
【0003】
スピンディスクフィルタは、濾過後の溶剤の導出流路を兼ねる回転可能な軸体の周囲に多数の円盤形状の濾過部を取り付けた構成を有する。使用に伴い濾過部にゴミが溜まって目詰まりした場合には、軸体を回転駆動することで濾過部を高速回転させ濾過部に付着しているゴミを落として濾過容器内に拡散させることができる。これにより、スピンディスクフィルタの濾過部は再生されるため、濾過部を交換すること無く長期間使用することができランニングコストが安いという利点がある。
【0004】
蒸留装置では、ドライクリーナで使用されて例えば溶剤タンクに貯留されている汚れた溶剤の蒸留と、上記のようにスピンディスクフィルタの再生時に濾過容器内に溜まる汚れた溶剤の蒸留とを行う必要がある。通常、蒸留装置の能力の限界から両方の蒸留処理を同時に行うことはできないため、従来は、作業者がいずれかを選択的に行うようにしている。前述のようにスピンディスクフィルタの濾過部の汚れがひどくなると濾過効率が極端に落ちるため、作業者は濾過容器内の溶剤の汚れを監視し、必要に応じて蒸留装置に送る溶剤を切り替えるようにしている。しかしながら、こうした作業は作業者にとって負担が大きく、作業を忘れると洗浄運転時に汚れの除去が不十分な溶剤がドライクリーナに供給されてしまい、洗濯物に汚れが再付着する等、洗濯に支障をきたすおそれがある。
【0005】
また、蒸留装置での溶剤の処理能力(処理速度)は決まっているから、例えばスピンディスクフィルタの濾過容器内に貯留された所定量の溶剤の全てを蒸留処理するには或る決まった時間が掛かる。従来の蒸留装置では、作業者はこうした処理所要時間を考慮しながら、運転開始の指示や溶剤の選択操作などを行う必要があるため、その作業はたいへん面倒である。また、例えば毎日のクリーニング作業において、ドライクリーナの全運転を終了するときに蒸留装置の運転も終了するのが望ましいが、作業者の操作が適切でないと、ドライクリーナの全運転が終了しても蒸留運転は途中であり、中途半端な状態を作業を終了せざるを得ないといった問題が起こりがちである。
【0006】
また、蒸留装置とドライクリーナとが独立した構成の場合、1台の蒸留装置において複数台のドライクリーナで使用された、又は複数のスピンディスクフィルタの濾過容器内の溶剤の蒸留処理を時分割で実行することも可能であるが、そうした場合に、複数台のドライクリーナでの運転に支障をきたさないようにスピンディスクフィルタや溶剤タンク内の溶剤を適切に蒸留する必要がある。作業者がそうした運転のスケジュールをたてて運転開始指示や溶剤の切替操作を行うのはさらに面倒である。
【0007】
また例えば1日の作業を終了するような場合には、蒸留装置の蒸留釜内に溶剤が残っていないようにすることが好ましい。何故なら、溶剤は引火性が高いため、蒸留釜内に溶剤が残留した状態で放置するのは安全上問題があるためである。そのため、従来は、溶剤タンクやスピンディスクフィルタ内の溶剤の蒸留運転を全て終了した後に、新たに溶剤を追加することなく暫く蒸留運転を実行して蒸留釜内に残る溶剤を全て除去するようにしている。こうした処理のための操作も作業者が行わなければならず面倒であるとともに、その運転が終了しないとその日の作業を終えることができないという問題がある。
【特許文献1】特開平7−289788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その主な目的は、蒸留運転のために作業者が行う各種操作の手間を軽減し、ドライクリーナでの洗浄運転を良好に実行できるように溶剤を浄化することができる溶剤蒸留装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された第1発明は、溶剤を用いて洗濯を行うドライクリーナの洗濯に使用後の当該溶剤を蒸留釜で気化させた後、凝縮液化させて洗濯に再利用可能にする蒸留装置であって、溶剤タンク内に貯留された溶剤と洗濯に使用後の溶剤をフィルタで濾過した際の微細なゴミなどの粒子状の汚れなどの被濾過物が混入している溶剤とを選択的に前記蒸留釜に導入するように成した溶剤蒸留装置において、
前記ドライクリーナにあって、洗濯の運転回数を示す電気信号の回数に基づいて前記蒸留釜に導入する溶剤を溶剤タンク内に貯留された溶剤かもしくは被濾過物が混入している溶剤かを選択する制御手段を備えることを特徴としている。
【0010】
洗濯で使用後の汚れた溶剤を濾過するためのフィルタは被濾過物が溜まることによってその性能が低下するが、定期的にこの被濾過物を除去することによって性能が回復する。本発明では洗濯の運転回数からフィルタの汚れを推定しフィルタの被濾過物を蒸留処理することができる。
【0011】
第2の発明では、前記制御手段は、前記電気信号の回数が所定の値に達した際に、記蒸留釜に導入する溶剤を被濾過物が混入している溶剤にする制御を行うものであり、第3発明では、前記制御手段は、前記電気信号の回数が所定の値に達する前は、記蒸留釜に導入する溶剤を溶剤タンク内に貯留された溶剤にする制御を行うものであり、洗濯の運転回数が所定の値に達する前は溶剤タンク内に貯留された溶剤を蒸留処理し、所定の値に達した際にはフィルタの被濾過物を含む溶剤を蒸留処理するものである。
【0012】
第4の発明では、前記制御手段は、記蒸留釜に導入する溶剤を被濾過物が混入している溶剤に選択し、当該溶剤の蒸留釜での気化を行った後に前記回数を初期値もしくはゼロに変更する制御を行うものであり、被濾過物の蒸留処理を行った後は運転回数の値を初期値もしくはゼロに変えることにより、運転回数に基づき定期的にフィルタの被濾過物の除去が行えるものである。
【0013】
第5の発明では、前記電気信号は前記ドライクリーナのドラムを内装した外槽を開閉するドアのロック機構の駆動に基づく電気信号であり、洗濯の運転回数をドライクリーナのドラムを内装した外槽を開閉するドアのロック機構の駆動に基づく電気信号に基づき計時することが行えるものである。
【0014】
第6の発明では、前記フィルタはスピンディスクフィルタであり、被濾過物が混入している溶剤は前記スピンディスクフィルタの濾過容器内の内容物であり、スピンディスクフィルタの容器内の被濾過物を定期的に蒸留処理することが行えるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の溶剤蒸留装置によれば、ドライクリーナの運転回数に基づいて、スピンディスクフィルタ等のフィルタの濾過容器内の溶剤の汚れや濾過部の目詰まりがひどくならないうちに、溶剤タンク内の溶剤に代えてフィルタの濾過容器内の溶剤の蒸留処理を自動的に、つまり作業者の手動の操作や作業に依らずに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例の蒸留装置の流路構成図。
【図2】本実施例の蒸留装置を利用するドライクリーナの一例の流路構成図。
【図3】ドライクリーナからバルブ駆動のための空気圧チューブを引き出す場合の手順を示す図。
【図4】本実施例の蒸留装置の要部の制御系構成図。
【図5】本実施例の蒸留装置におけるドライクリーナの運転回数計数のタイミング図。
【図6】溶剤タンク10の溶剤の蒸留処理とスピンディスクフィルタの濾過容器内の溶剤の蒸留処理の切替えを自動的に実行する際の制御手順を示すフローチャート。
【図7】本実施例の蒸留装置において蒸留部での蒸留運転のスケジュールの一例を示す模式図。
【図8】本実施例の蒸留装置に対し2台のドライクリーナを接続する場合の構成例を示す図。
【図9】1号機、2号機の2台のドライクリーナに対応して設けられた2つの溶剤タンクの溶剤と2つのスピンディスクフィルタの溶剤の蒸留処理を行う際の蒸留運転のスケジュールの一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例である溶剤蒸留装置について図面を参照して説明する。図1は本実施例の蒸留装置の流路構成図、図2は本実施例の蒸留装置を利用するドライクリーナの一例の流路構成図である。図1に示した蒸留装置1と図2に示したドライクリーナ2とを組み合わせることで、洗浄運転が可能なドライクリーニングシステムが構成される。
【0018】
蒸留装置1は、洗濯に使用される溶剤(石油系溶剤又はシリコーン系溶剤)を貯留しておく溶剤タンク10と、溶剤に混入している微細なゴミなどの粒子状の汚れを除去するスピンディスクフィルタ11及びカートリッジフィルタ12と、溶剤を蒸留するために、浄化対象の溶剤を気化させる蒸留釜14、気化した溶剤蒸気を冷却して液化させる凝縮・液化部15、蒸留して回収された溶剤から水を分離・除去する水分離器16などを含む蒸留部13と、を主要な要素として含む。
【0019】
詳しく説明すると、溶剤が供給される接続口Cは三方バルブであるフィルタ選択バルブ17を介してスピンディスクフィルタ11の流入口とバイパス流路18とに択一的に接続される。スピンディスクフィルタ11の流出口はカートリッジフィルタ12の流入口に接続され、またバイパス流路18の末端もカートリッジフィルタ12の別の流入口に接続されている。カートリッジフィルタ12の流出口は溶剤を送り出す接続口Eに接続されている。スピンディスクフィルタ11の濾過容器は途中にフィルタ排液バルブ20が設けられたフィルタ排液流路19を経て蒸留釜14に接続されている。また、蒸留釜14の底部に接続された排液流路26には手動の釜排液バルブ27が設けられている。
【0020】
蒸留釜14の底部には、スチーム供給バルブ24が途中に設けられたスチーム供給管23を通して供給される高温のスチームで加熱される加熱室25が設けられている。一方、冷却槽34に出口端と入口端とが接続された再生溶剤循環管路35の途中には、エジェクタポンプ36とエジェクタ33とが挿入されている。エジェクタポンプ36が作動し逆流防止バルブ32が開かれると、再生溶剤回収管路31に図1中に矢印で示す方向に溶剤が循環圧送され、それによりエジェクタ33で生じる負圧によって、蒸留釜14内の空気が吸引されて減圧される。これによって、溶剤タンク10内の溶剤をタンク蒸留流路22を通して蒸留釜14内に吸い上げることができる。
【0021】
このように蒸留釜14内に溶剤が導入された状態で、スチーム供給バルブ24を開放して加熱室25による加熱を開始する。加熱によって蒸留釜14内で気化した溶剤蒸気は、デミスタ28を通過して溶剤蒸気導入管29を経て凝縮・液化部15に送られる。この凝縮・液化部15では例えば冷却水や冷媒などの作用により溶剤蒸気が冷却され、溶剤は凝縮液化して、再生溶剤回収管路31を経てエジェクタ33に導入される。こうして凝縮されたばかりの溶剤が再生溶剤回収管路31から再生溶剤循環管路35に引き込まれ、冷却槽34に流入する。
【0022】
凝縮液化されたばかりで再生溶剤回収管路31を通る溶剤の温度は比較的高いが、エジェクタ33を介して再生溶剤循環管路35中の溶剤と混合されることで温度が下がる。一方、再生溶剤循環管路35中の溶剤は、上記のように再生溶剤から与えられる熱量とエジェクタポンプ36等から与えられる熱量とによって温度が上がって冷却槽34に戻る。冷却槽34内に貯留された溶剤は冷却水や冷媒などにより冷却されているので、全体としては溶剤の温度は安定的に保たれる。蒸留によって発生した再生溶剤の追加によって冷却槽34内の溶剤の液位は上昇してゆくが、溶剤溢流管路37の入口を越えた溶剤は冷却槽34から流れ出て水分離器16に送られ、ここで水が分離されて溶剤タンク10に戻される。したがって、溶剤タンク10には比較的温度の安定したきれいな溶剤を戻すことができる。なお、溶剤タンク10には、溶剤が供給される接続口B、D、及び溶剤を送り出す接続口Aとの間にもそれぞれ流路が設けられている。
【0023】
次に図2に示したドライクリーナ2の流路構成を説明する。外槽40内には周囲に多数の孔を有する円筒形状のドラム41が回転自在に軸支されており、外槽40の底部に接続された排液管路42はボタントラップ43に連結されている。ボタントラップ43は、排出された溶剤に混入する衣服のボタンのような比較的大きな固形物を除去するための一種のフィルタである。接続口A及びボタントラップ43底部の排液口はそれぞれ給液バルブVL1及び排液バルブVL2を介してポンプ44の吸入口に接続されている。このポンプ44の吐出口は逆止弁45を経て、三方バルブである循環選択バルブVL3により接続口C又は接続口Eに接続される。
【0024】
接続口Eは溶剤の流通経路内に高温スチームの配管路が配設されて成る溶剤ヒータ46に接続されており、その高温のスチームは第2蒸気バルブVS2により制御される。この溶剤ヒータ46の下流側には図示しないが液温センサやソープ濃度センサが設けられ、さらにその下流側の流路は外槽40に接続された乾燥用の通風路中に設置された溶剤クーラ47に接続されている。溶剤クーラ47は管路中に溶剤を流通させ、その管路の周囲に流れる冷却された空気との熱交換によって溶剤を冷却するものである。つまり、この溶剤クーラ47は冷却のために冷媒や冷水を使用しておらず、通風路中で上流側に設けられた乾燥クーラ48により冷却された空気を利用した一種の空冷式のクーラである。この溶剤クーラ47の出口は三方バルブである溶剤投入バルブVL4により、外槽40又は接続口Dのいずれかに接続される。また、ポンプ44の吸入口にはソープ供給バルブVL5を介してソープ貯留槽49も接続されている。
【0025】
なお、乾燥クーラ48の管路中には外部に設置されたチラー52で冷却された冷水が循環供給され、外槽40から送られてきた空気が乾燥クーラ48にて急激に冷却されると、その空気に含まれる溶剤ガスは凝縮して液化し滴下する。この液化した溶剤は水分離器50に至り、ここで水が除去されて溶剤のみが接続口Bから流出する。
【0026】
このドライクリーナ2では様々なバルブが使用されているが、それらは空気圧によって開閉動作が行われる空気作動バルブである。即ち、図示しない空気圧制御手段からそれぞれのバルブに空気チューブが接続されており、該空気チューブを通して空気を送ることによりバルブが作動するようになっている。
【0027】
図2に示すように、蒸留装置1とドライクリーナ2とはそれぞれ接続口A〜E同士を接続する5本の流路で連結され、該流路を通して溶剤がやり取りされる。そのほか、蒸留装置1において後述するような特徴的な制御を行うために、溶剤投入バルブVL4及び排液バルブVL2を駆動するための空気チューブが分岐された空気チューブVL4a、VL2aがドライクリーナ2から引き出されて蒸留装置1に接続されている。具体的には、例えば図3(a)に示すように、ドライクリーナ2において空気圧制御手段からバルブに至るナイロン等の合成樹脂製の空気チューブ70は適宜の位置で切断され、その両切断端部701、702の間に三方継手72が装着される。そして、三方継手72の他の1つの開口に別の空気チューブ72が嵌挿され、この空気チューブ72が上述の空気チューブVL4a、VL2aとして引き出される。
【0028】
次に、図1に示した本実施例の蒸留装置の制御系の構成について図4を参照して説明する。図4は本実施例の蒸留装置の要部の制御系構成図である。
【0029】
制御の中心にはCPUや制御プログラムが書き込まれたROM、タイマなどを含む制御部60が据えられ、制御部60には操作部62から入力操作信号が、温度センサ30から温度検知信号が、第1及び第2なる2つの圧力スイッチ64、65からそれぞれ圧力検知信号が入力される。また、制御部60は負荷駆動部61を介して、上述した、フィルタ選択バルブ17、スチーム供給バルブ24、タンク溶剤吸込みバルブ21、フィルタ排液バルブ20、逆流防止バルブ32などの各バルブの開閉動作を制御し、エジェクタポンプ36の動作を制御し、さらに表示部63に対し入力操作に対応した表示や運転状態を示す表示を行う。また、制御部60は運転回数計数部601を備える。
【0030】
第1圧力スイッチ64には上記溶剤投入バルブVL4から引き出された空気チューブVL4aが接続され、第2圧力スイッチ65には上記排液バルブVL2から引き出された空気チューブVL2aが接続される。各圧力スイッチ64、65は、バルブVL4、VL2の開放又は閉鎖時に加えられる空気圧を検知するように閾値が設定されており、例えばバルブがオン(開放)する際にスイッチがオン、バルブがオフ(閉鎖)する際にスイッチがオフするようになっている。運転回数計数部601はこのオン・オフ信号に基づいて、ドライクリーナ2の1サイクルの運転を認識して、運転回数の計数を行う機能を有する。
【0031】
次に、上記蒸留装置1とドライクリーナ2とにより構成されるドライクリーニングシステムにおける、洗浄運転時の溶剤の流れについて説明する。このドライクリーニングシステムでは、洗浄運転に際し、外槽40内に溜まっている溶剤を連続的に循環させながら洗浄を行う循環洗いと、溶剤を循環させずに外槽40内に所定量の溶剤を貯留した状態で洗浄を行う溜め洗いとが選択可能である。
(i)循環洗いの場合の溶剤の流れ
まず排液バルブVL2を閉鎖、給液バルブVL1を開放し、溶剤クーラ47の出口を溶剤投入バルブVL4によって外槽40に接続すると共に、ポンプ44の吐出口側を循環選択バルブによって接続口Cに接続し、ポンプ44を駆動する。すると、蒸留装置1内の溶剤タンク10に貯留されている溶剤は接続口Aを介し、給液バルブVL1、ポンプ44、循環選択バルブVL3を経て接続口Cに至る。通常状態では、フィルタ選択バルブ17はスピンディスクフィルタ11側に接続されており、溶剤はスピンディスクフィルタ11、カートリッジフィルタ12と二段のフィルタを経て接続口Eからドライクリーナ2に戻り、溶剤ヒータ46、溶剤クーラ47、溶剤投入バルブVL4を経て外槽40内に供給される。このような給液流路を溶剤が通過する際に、溶剤に混入している粒子状の浮遊物はフィルタ11,12で捕集され、さらに溶剤ヒータ46及び溶剤クーラ47により溶剤の温度は適宜に調整される。そして、外槽40内に所定量の溶剤を貯留したならば、溶剤投入バルブVL4を接続口Dに切り替えて溶剤を溶剤タンク10に循環させる。
【0032】
その後、給液バルブVL1を閉じ、排液バルブVL2を開いて外槽40内に貯留されている溶剤を排出する。それから、溶剤投入バルブVL4を外槽40側に接続する。これにより、溶剤は、ボタントラップ43、排液バルブVL2、ポンプ44、循環選択バルブVL3、接続口C、スピンディスクフィルタ11、カートリッジフィルタ12、接続口E、溶剤ヒータ46、溶剤クーラ47、溶剤投入バルブVL4を経て外槽40に流れ込み、外槽40を含む流路を循環することになる。このような溶剤の循環を行いつつ、ドラム41を回転させることでドラム41内に収容した洗濯物の洗浄を遂行する。
【0033】
所定の洗浄運転が終了したならば、溶剤投入バルブVL4を接続口D側に切り替える。これにより、外槽40内の溶剤は、排液管路42、ボタントラップ43、排液バルブVL2、ポンプ44、循環選択バルブVL3、フィルタ11、12、溶剤ヒータ46、溶剤クーラ47、溶剤投入バルブVL4を経て溶剤タンク10へと戻る。これにより、外槽40内を空にすることができる。
(ii)溜め洗いの場合の溶剤の流れ
溜め洗いの場合には、上記循環洗いの際に最初に外槽40内に所定量の溶剤を貯留した状態で、ドラム41を回転させて洗浄を行い、洗浄終了後に排液バルブVL2を開けて外槽40内の溶剤を溶剤タンク10に戻す。
【0034】
本実施例の蒸留装置1では、上述のようにドライクリーニングシステムで洗浄運転を実行している期間中にも、溶剤タンク10内に貯留されている溶剤又はスピンディスクフィルタ11の濾過容器内の溶剤の蒸留処理を蒸留部13で行う。蒸留処理の動作はいずれの溶剤に対しても同様である。即ち、蒸留釜14内に溶剤がない状態からの蒸留処理は次のような手順で実行する。
【0035】
制御部60はまずエジェクタポンプ36を作動させ、逆流防止バルブ32を開く。すると、エジェクタ33により蒸留釜14内の空気は吸引されて減圧されるため、例えばタンク溶剤吸込みバルブ21を開放すると、溶剤タンク10内の溶剤が蒸留釜14に自発的に吸い上げられる。蒸留釜14内に溶剤が導入されると蒸留釜14内の圧力が一時的に上昇する。例えば再生溶剤回収管路31に設けた図示しない圧力センサにより、一旦上昇した圧力が再び下がったことを認識すると、スチーム供給バルブ24を開放して加熱室25による加熱を開始する。加熱により蒸留釜14内で溶剤が蒸発すると、溶剤蒸気はデミスタ28を通過して溶剤蒸気導入管29を経て凝縮・液化部15に送られ液化する。そして、液化した溶剤はエジェクタ33により再生溶剤循環管路35を循環する溶剤と混合されて冷却槽34に達する。液化したばかりの溶剤の温度は高いが、冷却槽34内で溶剤の温度は低下する。冷却槽34内に溜まった溶剤は所定液位を超えた分が流出する。この溶剤には少量の水が混じっているが、この水を水分離器16で除去した後に溶剤のみが溶剤タンク10に戻される。
【0036】
蒸留釜14内で溶剤が減って蒸発量が少なくなると温度センサ30による検知温度が急に下がるから、これを検知するとスチーム供給バルブ24を閉鎖して加熱を停止する。一方、エジェクタポンプ36は連続的に作動されるため、蒸留釜14内が減圧された状態でタンク溶剤吸込みバルブ21を開放すると、再び溶剤が蒸留釜14に吸い上げられる。このようにして蒸留動作を繰り返すことで、溶剤タンク10内(又はスピンディスクフィルタ11の濾過容器内の溶剤)の溶剤は蒸留処理される。
【0037】
スピンディスクフィルタ11の濾過部は使用に伴って汚れが蓄積して目詰まりするため、例えば一定の使用時間毎或いは一定の運転回数毎に濾過部の再生を行う必要がある。濾過部を再生する際には、制御部60の制御の下に、フィルタ選択バルブ17を切り替えて接続口Cから供給された溶剤をバイパス流路18に溶剤を流すことでスピンディスクフィルタ11をパスさせる。そして、フィルタ排液バルブ20を開放することで容器内の汚れた溶剤を半分程度、蒸留釜14に注ぎ込み、容器内に溜めた状態で濾過部を高速回転させることで汚れを該容器内の溶剤に拡散させ、その汚れた溶剤を全て蒸留釜14に導入する。なお、フィルタ排液バルブ20を開放するときには、タンク溶剤吸込みバルブ21は閉鎖しておく。このようにして蒸留釜14に溶剤を溜めて上述のように蒸留処理を行って、浄化された溶剤を溶剤タンク10に戻す。なお、空になったスピンディスクフィルタ11には溶剤タンク10から溶剤を送り込んで、再び濾過が可能な状態とする。
【0038】
上述のようにスピンディスクフィルタ11の濾過部は汚れ易く、比較的高い頻度で汚れを除去する再生処理を行わないと十分に汚れが除去されない溶剤が循環して洗濯に支障をきたす。一般的に所定の運転回数ドライクリーナ2で洗浄運転を実行する毎にスピンディスクフィルタ11の再生を行うことが望ましいが、このシステムでは蒸留装置1とドライクリーナ2とは別体であり、それぞれの制御部も全く独立している。そこで、本実施例の蒸留装置1では、前述のようにドライクリーナ2の溶剤投入バルブVL4及び排液バルブVL2を作動させる空気圧の変化を利用して運転回数を推定し、その運転回数に基づいて自動的にスピンディスクフィルタ11の再生(蒸留処理)を行うタイミングを決めている。
【0039】
具体的には、循環洗いの場合には上述のように溶剤投入バルブVL4及び排液バルブVL2が開閉されるため、これらバルブの動作に対応した第1及び第2圧力スイッチ64、65の検知信号は1サイクルの運転について図5(a)、(b)に示すようになる。この場合、運転回数計数部601では、溶剤投入バルブVL4と排液バルブVL2とが共にオン(但し溶剤投入バルブVL4は三方バルブであるから、外槽40側に接続された状態をオンとみなす)である、つまり第1及び第2圧力スイッチ64、65の検知信号が共に「H」レベルである期間を検出し、その期間の長さが所定時間t(例えば10秒)以上である場合にそれが実際に循環洗いを実行している期間であると判断する。そこで、図5(c)に示すように第1及び第2圧力スイッチ64、65の検知信号の論理和(AND)を計算し、その結果で「H」レベルが所定時間t以上であるときの立ち下がりエッジを検知して、運転回数をカウントアップする。ここで所定時間t以上の判定を行っているのは、上記のような循環洗いの実行時以外に短時間、上記論理和が「H」レベルとなる可能性があるためである。
【0040】
こうして運転回数計数部601ではドライクリーナ2の運転回数を計数することができるから、制御部60はこの計数値が所定値(例えば5)に達したか否かを判定し、所定値に達したならばスピンディスクフィルタ11の濾過容器の蒸留予約を行う。
【0041】
一方、循環洗いでなく溜め洗いの場合には、運転回数のカウントアップを行うために例えば溶剤投入バルブVL4の開閉動作のみを利用することができる。具体的には、溶剤投入バルブVL4を駆動するための空気チューブが分岐された空気チューブVL4aを第1、第2圧力スイッチ64、65の両方に接続するか、或いは運転回数計数部601の回路の改造が可能である場合には、第1圧力スイッチ64の検知信号をAND演算ゲートの2つの入力に共通に入力するようにする。それにより、溶剤投入バルブVL4が所定時間t以上オンした(外槽40側に接続された)後の立ち下がりエッジで運転回数のカウントアップが実行される。
【0042】
前述したように上記処理ではスピンディスクフィルタ11の濾過容器内の溶剤の蒸留処理の予約が実行されるだけである。これは、蒸留装置1は溶剤タンク10内に貯留されている溶剤の蒸留とスピンディスクフィルタ11の濾過容器内の溶剤の蒸留との両方の処理を行う必要があり、両者は同時には実行できず時分割で行うためである。本実施例の蒸留装置1では、制御部60は図6に示すような手順により、溶剤タンク10内の溶剤の蒸留処理とスピンディスクフィルタ11の濾過容器内の溶剤の蒸留処理の切替えを自動的に実行する。この制御について説明する。
【0043】
作業者は例えば1日のクリーニング作業の開始の前に、その日のフィルタ蒸留運転の終了時刻T1、及びタンク蒸留運転の終了時刻T2を操作部62によりそれぞれ入力設定する。なお、溶剤タンク10内の溶剤に対する1回の蒸留運転時間(以下、タンク蒸留時間という)t1、スピンディスクフィルタ11の濾過容器内の溶剤に対する1回の蒸留運転時間(以下、フィルタ蒸留時間という)t2はそれぞれ予め決められている。そうして入力設定がされた状態で運転が開始されると、制御部60は上述のようなフィルタ蒸留予約が有るか否かを判定する(ステップS1)。フィルタ蒸留予約が無ければ、タンク蒸留運転終了時刻T2までの運転残時間がタンク蒸留時間t1と残溶剤除去運転時間t3との加算時間t1+t3以上であるか否かを判定する(ステップS2)。残溶剤除去運転とは運転終了後に蒸留釜14内に溶剤が残ることを回避するために、溶剤を追加せずに(つまりはタンク溶剤吸込みバルブ21、フィルタ排液バルブ20を共に閉鎖した状態で)所定時間の蒸留を実行する運転のことである。
【0044】
ステップS2でYesであれば、タンク蒸留運転を実行する(ステップS3)。即ち、フィルタ排液バルブ20が閉鎖した状態でタンク溶剤吸い込みバルブ21を開放し、蒸留処理を開始する。これにより、上述のように溶剤タンク10内の溶剤が蒸留釜14に吸い上げられ、蒸留が実行されて浄化された溶剤が溶剤タンク10へと戻る。そして所定時間t1だけタンク蒸留が実行されると、ステップS3からS1へと戻る。
【0045】
ステップS1でフィルタ蒸留予約があればそれを優先し、フィルタ蒸留運転終了時刻T1までの運転残時間がフィルタ蒸留時間t2と残溶剤除去運転時間t3との加算時間t2+t3以上であるか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4でYesであれば、フィルタ蒸留運転を実行する(ステップS5)。即ち、フィルタ排液バルブ20を開放、タンク溶剤吸込みバルブ21を閉鎖してスピンディスクフィルタ11の濾過容器内の溶剤を蒸留釜14に導入し、蒸留処理を行う。なお、これに先立って、スピンディスクフィルタ11では上述のように溶剤を容器内に半分程度残した状態で濾過部を高速回転させ、濾過部に付着している汚れを剥離させて溶剤に拡散させる。そして所定時間t2だけフィルタ蒸留が実行されると、ステップS3からS1へと戻る。
【0046】
ステップS2でNoと判定された場合には、タンク蒸留を行った上で残溶剤除去運転を実行してしまうと、その終了時刻がタンク蒸留運転終了時刻T2を過ぎてしまうと判断できる。そこで、運転時間がt3である残溶剤除去運転のみを実行し(ステップS6)全ての運転を終了する。即ち、フィルタ排液バルブ20とタンク溶剤吸込みバルブ21とを共に閉鎖し、つまり新たに蒸留釜14に溶剤が追加されないような状態にして蒸留を行う。これにより、蒸留釜14内底部に溶剤は無くなり、空になった状態で運転が終了する。一方、ステップS4でNoと判定された場合には、フィルタ蒸留を行った上で残溶剤除去運転を実行してしまうと、その終了時刻がフィルタ蒸留運転終了時刻T1を過ぎてしまうと判断できる。但し、通常、タンク蒸留時間t1はフィルタ蒸留時間t2よりも短いため、ステップS4でNoとなった場合でもステップS2ではYesとなる可能性がある。そこで、ステップS2でNoと判定された場合にはステップS2に進み、タンク蒸留を行う時間的余裕があればそれを実行することとする。
【0047】
なお、ここではタンク蒸留時間t1がフィルタ蒸留時間t2よりも短いことを想定しているが、溶剤タンク10の貯留容量が大きくスピンディスクフィルタ11の濾過容器内の貯留容量が小さいような構成の場合には、フィルタ蒸留時間t2がタンク蒸留時間t1よりも短いような場合も考えられる。そうした場合には、図6のフローチャートにおいて処理の手順を変更すればよいことは明らかである。
【0048】
図7は、上記のような制御に基づく蒸留部13での蒸留運転のスケジュールの一例を示す模式図である。このようにして、例えばドライクリーナ2でその日の1日の運転が全て終了する時点で蒸留部13の運転も終了させておくことができる。また、スピンディスクフィルタ11の濾過容器内の溶剤の蒸留を行う必要がある場合にはそれが優先され、その蒸留の必要がない場合には溶剤タンク10内の溶剤の蒸留を繰り返し行うことができる。これにより、ドライクリーナ2での洗浄運転に支障をきたすことなく蒸留部13を最大限有効に利用して溶剤をきれいに保つことができる。また、運転終了時に溶剤が蒸留釜14内に残ることもなく、高い安全性を確保することができる。
【0049】
上記説明では、1台の蒸留装置1に1台のドライクリーナ2を接続したシステム構成をとっていたが、複数台のドライクリーナ2を接続する構成とすることもできる。図8は2台のドライクリーナ2A、2Bを接続する場合の構成例である。この構成では、溶剤タンク10A、10B、及びフィルタ(スピンディスクフィルタ11A、11B及びカートリッジフィルタ12A、12B)は各ドライクリーナ2A、2Bにそれぞれ設けられ、蒸留部13は共用されている。蒸留部13を共用するために、各スピンディスクフィルタ11A、11Bの容器はそれぞれフィルタ排液バルブ20A、20Bを通して蒸留釜14に接続され、各溶剤タンク10A、10Bはそれぞれタンク溶剤吸込みバルブ21A、21Bを通して蒸留釜14に接続されている。さらに水分離器16から吐き出される溶剤は三方バルブ38によりいずれかの溶剤タンク10A、10Bに戻される。
【0050】
即ち、この構成では、蒸留部13は、溶剤タンク10A内の溶剤、溶剤タンク10B内の溶剤、スピンディスクフィルタ11A内の溶剤、スピンディスクフィルタ11B内の溶剤、のいずれかを選択的に蒸留処理して溶剤タンク10A又は10Bに戻す。そこで、次のような手順で各溶剤の蒸留実行を制御する。
【0051】
即ち、フィルタ蒸留運転終了時刻及びタンク蒸留運転終了時刻は、それぞれの溶剤タンク及びスピンディスクフィルタ毎に個別に入力設定できるようになっている。また、前述のようにそれぞれのドライクリーナ2A、2Bの運転回数の計数結果に応じてフィルタ蒸留予約は独立に出されるが、蒸留予約が早いほうを優先的に処理することとする。したがって、例えば、ステップS1のフィルタ蒸留予約の有無がチェックされる際に、もし2つのスピンディスクフィルタ11A、11Bについて共に蒸留予約がある場合には、先に蒸留予約が出されたドライクリーナ側についてまずステップS4、S5の処理を実行し、それに引き続いて後に蒸留予約が蒸留予約が出されたドライクリーナ側についてステップS4、S5の処理を実行する。
【0052】
一方のスピンディスクフィルタ11A、11Bについてのみ蒸留予約がある場合にはそのフィルタについてステップS4、S5の処理を実行してステップS1に戻る。ステップS1でフィルタ蒸留予約がない場合には、2つの溶剤タンク10A、10Bのうちで直近に蒸留処理を実行していないほうの溶剤タンクについてステップS2、S3の処理を実行しステップS1に戻る。したがって、フィルタ蒸留予約が出されなければ、2つの溶剤タンク10A、10Bの蒸留処理を交互に実行することになる。このようにして複数のドライクリーナ2を接続する場合でも1台の蒸留部13で適切に溶剤を蒸留処理することができる。また、ドライクリーナが1台であるときと同様に、最終的な運転終了時点(つまりは運転終了時刻が設定されたものの中で最も遅いもの)の前に残溶剤除去運転を実行して蒸留釜14内に溶剤が残らないようにすることができる。
【0053】
図9は1号機、2号機の2台のドライクリーナに対応して設けられた2つの溶剤タンクの溶剤と2つのスピンディスクフィルタの溶剤の蒸留処理を行う際の蒸留運転のスケジュールの一例である。図9(a)〜(d)に示すように、1号機のフィルタ蒸留運転終了時刻T1、1号機のタンク蒸留運転終了時刻T2、2号機のフィルタ蒸留運転終了時刻T3、2号機のタンク蒸留運転終了時刻T4はそれぞれ設定される。ここでは最も遅いタンク蒸留運転終了時刻T4が全運転終了時刻となる。このようにしてドライクリーナ2が2台又はそれ以上の複数台であっても、自動的に蒸留処理のスケジュールを決めて運転終了まで適切な処理を実行することができる。
【0054】
上記実施例の蒸留装置では、ドライクリーナ2の溶剤投入バルブと排液バルブを駆動する空気圧を利用してドライクリーナ2の運転回数を計数していたが、これ以外のバルブを駆動する空気圧を利用してもよい。どのようなバルブを利用できるか、或いは圧力スイッチの検知信号に対するどのような演算を実行して1サイクルの運転とするのか、は、そのドライクリーナの構造や制御に依存するから、予めそれらを調べて適切な方法を見出すとよい。また、溶剤の流路に設けられる空気作動バルブを駆動する空気圧を利用するのではなく、ドライクリーナに設けられている他の機構の駆動力を利用してもよい。
【0055】
例えば、外槽40を開閉するためのドアにドアロック機構が設けられている場合、一般的に運転開始時にドアがロックされ、運転が終了するとドアロックが解除される。したがって、ドアロック機構を空気圧で駆動する構成では、ドアロックの解除を行うための空気圧の変化を検知することで1回の運転が実行されたものとして計数することができる。また、空気圧でなく電気的な制御信号などを取り出すことができる場合には、これを利用することができるのも当然である。
【0056】
また、上記実施例の溶剤蒸留装置では、溶剤タンク、フィルタ、蒸留部が1台の装置として構成され、ドライクリーナはこれとは別体であるシステム構成となっているが、これに限るものではなく様々な形態が考えられる。例えばドライクリーナにフィルタが内蔵されているもの、溶剤タンクがドライクリーナに内蔵されているもの、フィルタ及び溶剤タンクの両方がドライクリーナに内蔵されているもの、などがある。また、ドライクリーナが複数であっても、フィルタや溶剤タンクが1台で共用化されている構成も考えられる。
【0057】
また、上記実施例は本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0058】
VL1…給液バルブ
1…蒸留装置
2、2A、2B…ドライクリーナ
10、10A、10B…溶剤タンク
11、11A、11B…スピンディスクフィルタ
12、12A、12B…カートリッジフィルタ
13…蒸留部
14…蒸留釜
15…凝縮・液化部
16…水分離器
17…フィルタ選択バルブ
18…バイパス流路
19…フィルタ排液流路
20、20A、20B…フィルタ排液バルブ
21、21A、21B…タンク溶剤吸込みバルブ
22…タンク蒸留流路
23…スチーム供給管
24…スチーム供給バルブ
25…加熱室
26…排液流路
27…釜排液バルブ
28…デミスタ
29…溶剤蒸気導入管
31…再生溶剤回収管路
32…逆流防止バルブ
33…エジェクタ
34…冷却槽
35…再生溶剤循環管路
36…エジェクタポンプ
37…溶剤溢流管路
38…三方バルブ
40…外槽
41…ドラム
42…排液管路
43…ボタントラップ
44…ポンプ
45…逆止弁
46…溶剤ヒータ
47…溶剤クーラ
VL2…排液バルブ
VL3…循環選択バルブ
VL4…溶剤投入バルブ
VL2a、VL4a…空気チューブ
60…制御部
601…運転回数計数部
64、65…圧力スイッチ
A、B、C、D、E…接続口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤を用いて洗濯を行うドライクリーナの洗濯に使用後の当該溶剤を蒸留釜で気化させた後、凝縮液化させて洗濯に再利用可能にする蒸留装置であって、溶剤タンク内に貯留された溶剤と洗濯に使用後の溶剤をフィルタで濾過した際の微細なゴミなどの粒子状の汚れなどの被濾過物が混入している溶剤とを選択的に前記蒸留釜に導入するように成した溶剤蒸留装置において、
前記ドライクリーナにあって、洗濯の運転回数を示す電気信号の回数に基づいて前記蒸留釜に導入する溶剤を溶剤タンク内に貯留された溶剤かもしくは被濾過物が混入している溶剤かを選択する制御手段を備えることを特徴とする溶剤蒸留装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電気信号の回数が所定の値に達した際に、記蒸留釜に導入する溶剤を被濾過物が混入している溶剤にする制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の溶剤蒸留装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記電気信号の回数が所定の値に達する前は、記蒸留釜に導入する溶剤を溶剤タンク内に貯留された溶剤にする制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の溶剤蒸留装置。
【請求項4】
前記制御手段は、記蒸留釜に導入する溶剤を被濾過物が混入している溶剤に選択し、当該溶剤の蒸留釜での気化を行った後に前記回数を初期値もしくはゼロに変更する制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の溶剤蒸留装置。
【請求項5】
前記電気信号は前記ドライクリーナのドラムを内装した外槽を開閉するドアのロック機構の駆動に基づく電気信号であることを特徴とする請求項4に記載の溶剤蒸留装置。
【請求項6】
前記フィルタはスピンディスクフィルタであり、被濾過物が混入している溶剤は前記スピンディスクフィルタの濾過容器内の内容物であることを特徴とする請求項4に記載の溶剤蒸留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−291637(P2009−291637A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199443(P2009−199443)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【分割の表示】特願2006−305887(P2006−305887)の分割
【原出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(308012668)三洋アクア株式会社 (37)
【Fターム(参考)】