説明

溶接トーチに従ってレーザユニットを制御するレーザ・アーク複合溶接のための装置と方法

本発明は、レーザ・アーク複合溶接方法並びに、レーザビーム(3)を発生するレーザユニット(2)と、アーク(5)を発生する溶接トーチ(4)と、レーザユニット(2)用の給電ユニット(6)と、溶接トーチ(4)用の給電ユニット(7)とを備えるレーザ・アーク複合溶接装置(1)に関する。エネルギーバランスを最適化すると共に、レーザ・アーク複合溶接法を夫々の条件に適合させるために、溶接トーチ(4)に従ってレーザユニット(2)を制御する制御装置(14)が設けられる。レーザ出力(PLaser)は、アーク出力(PArc)に適合させられると共に、閉制御回路によって制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームを発生するレーザユニットとアークを発生する溶接トーチがエネルギーを供給されて制御されるレーザ・アーク複合溶接のための方法に関する。
本発明は、更に、レーザビームを発生するレーザユニットと、アークを発生する溶接トーチと、レーザユニット用の給電ユニットと、溶接トーチ用の給電ユニットと、レーザーユニットと溶接トーチを制御する少なくとも1個の制御ユニットとを備えるレーザ・アーク複合溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接トーチは、ミグ(MIG)溶接法/マグ(MAG)溶接法を実行するように構成されることが好ましい。
【0003】
国際公開第02/40211号は、レーザを発生するレーザユニット、アークを発生する溶接トーチと溶接ワイヤ供給装置を備えるレーザハイブリッド溶接法のためのレーザハイブリッド溶接ヘッドを記載する。従来、この型式の装置は、相対的にかさばるため、手溶接具としてではなく、ロボット用途用の溶接装置としてだけ使用可能であった。
【0004】
特開2002−113588号と特開2002−103075号は、レーザハイブリッド溶接ユニットと呼ばれるレーザ・アーク複合溶接装置を記載する。レーザハイブリッド溶接ユニットは、迅速性及び加工物への良好な熱入力というレーザの利点を、従来の溶接方法、例えば、ミグ溶接方法の良好な間隙ブリッジング性等の利点と組合せる。
【0005】
それらは、レーザユニットの給電のために相対的に大きなエネルギーを必要とするという欠点を有する。現在入手できるレーザ・アーク複合溶接装置では、レーザユニットの制御は、アークを発生する溶接トーチの制御に対する固定的割当てにより行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、最適溶接結果、最高溶接速度、最高安全性での最小エネルギー消費を確保するために、レーザビームとアークの最適組合せを達成できる、上記の方法と上記の装置を提供することである。公知のシステムの欠点は解消又は軽減される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
方法に関して、本発明の目的は、レーザユニットを溶接トーチに従って制御することにより達成される。レーザユニットを溶接トーチの制御に従って制御することは、常に、夫々の要求に対する最適の調整を可能にする。
【0008】
溶接トーチに従ってレーザユニットを制御するためには、本発明の別の特徴によれば、アークのパラメータが溶接作業中に監視されると共に、アークのパラメータの一つが指定偏倚した時に、レーザユニットが不活性化される。よって、アークのパラメータの一つの指定偏倚によって検出されるアークの消衰の後に、レーザビームが直ちに確実に不活性化される。よって、アークの非点火時に、特に手溶接具で負傷や損傷につながるレーザビームの発生又は維持が防止される。レーザ光は殆どの場合に不可視赤外光からなるので、レーザビームによる負傷の危険は高くなる。従って、特に手溶接具では、レーザ光による作業者又は他の人員への負傷を防止する特別の注意を払わなければならない。
【0009】
アーク電流及び/又はアーク電圧をアークのパラメータとして使用することにより、アークの状態を検出することができる。
【0010】
本発明の別の特徴として、アークのパラメータが所定時間に渡り指定偏倚をした時に、レーザユニットが不活性化されることが挙げられる。その結果、アークの短絡が少なくとも一時的に生じる溶接において、レーザの遮断が直ちに生じることが防止される。この時、所定時間は、このような溶接において通常起こるアークの短絡期間よりも長く調整される。例えば、アークが存在しないが電流が検出される短絡において、レーザビームは、活性状態を維持し続ける。アークが、長すぎたり消衰したりした場合、電流又は電圧の閾値を超過して、レーザビームが不活性化される。
【0011】
レーザユニットはアークの点火後にのみ活性化され、該点火は、指定値に到達したアークのパラメータによって検出され、よって、アークの指定状態が得られることにより、上記の安全性が高められる。この措置により、レーザビームを発生するための相対的に高いエネルギー入力も最小化される。次に、レーザビームは、アークの点火後にのみ活性化される共に、特に、溶接、例えば、ミグ溶接の終了後の指定期間の後に再び不活性化される。例えば、手溶接法では、使用者は、溶接の前後においてレーザビームを不注意で活性化することができない。その結果、レーザビームの活性化の前に、使用者は、溶接を実行するのに必要な位置に溶接トーチを配置することが確実になる。特定の角度偏倚により、即ち、もし使用者が、例えば、溶接トーチを傾斜させて、より長いアークが引かれたり形成されることにより、電流と電圧の閾値を超過して、レーザビームが溶接中に点火又は不活性化されないので、アークの電流と電圧を測定することにより、溶接トーチが、例えば、加工物に対する必要角度に位置決めされることが保証される。よって、レーザハイブリッドユニットの安全性が、再び簡単に保証される。
【0012】
レーザユニットは、アークの点火後、特に、アークの指定状態の到達後に時間遅れで活性化されることが好都合である。その結果、レーザビームは、アークを点火せずに活性化することができないので、安全性が簡単に高められる。例えば、手溶接トーチでは、レーザビームの故意でない活性化の危険が排除されて、手溶接トーチの不適当な取扱いによる負傷の危険が大略最小化される。
【0013】
更に、時間遅れが調整自在であることが好都合である。時間遅れは、例えば、500msであり得る。よって、レーザビームは、異なる作業状態、特に、アークの異なる状態に合わせて調整することができる。
【0014】
レーザビームの電力は、アークの電力に従って調整自在であることが好都合である。よって、レーザ電力を、夫々の条件、例えば、溶接される加工物の材料と厚さに最適に適合させる一方、最小のエネルギー消費で最適の溶接結果を得ることができる。この時、通常、レーザ電力がアーク電力に大略対応するように目指す。所定の溶接のために、例えば、アーク電力に対してより高いレーザ電力を目指すより深い溶込みに到達することが好都合である。
【0015】
従って、もしアーク電力に対するレーザ電力の比が調整自在であれば、最も多様な溶接法の実施のために好都合である。
【0016】
アークの電力は、アークを発生する溶接トーチの溶接電圧と溶接電流に依存するので、レーザ電力が、アークを発生する溶接トーチの溶接電圧及び/又は溶接電流に従って調整自在であることが好都合である。この場合、溶接トーチの溶接電圧及び/又は溶接電流が、検出されると共に、それに従って、レーザユニット用の給電ユニットを調整するためにフィードバックされる制御ループが形成され得る。
【0017】
最後に、レーザビームの焦点が、アークの長さに従って自動的に変更されることが好都合である。アークの長さは、例えば、アークを発生する溶接トーチの溶接電圧により検出することができ、その後、レーザビームの焦点が常に溶接部位内に位置するように、レーザビームの焦点を変更する装置が、それに従って自動的に活性化される。その上、レーザビームの焦点は入力されるレーザ電力と共に変化するので、レーザビームの焦点の修正が必須である。
【0018】
本発明の目的は、レーザを発生するレーザユニットと、アークを発生する溶接トーチと、レーザユニット用の給電ユニットと、溶接トーチ用の給電ユニットと、レーザユニットと溶接トーチを制御する少なくとも1個の制御ユニットとを備えると共に、溶接トーチに従ってレーザユニットを制御する制御装置を設けたレーザ・アーク複合溶接のための装置によっても達成される。よって、レーザユニットと溶接トーチを制御する少なくとも1個の制御ユニットと当然同一であってもよいレーザビームの制御装置により、アークの電力に従ってレーザビームを選択的に活性化又は不活性化することができる。よって、制御装置は、又、危険を構成すると共に大量のレーザエネルギーを消費することになる、非点火アークにおけるレーザビームの活性化を効果的に防止することができる。
【0019】
レーザユニットを制御する制御装置は、溶接トーチの溶接電圧及び/又は溶接電流を検出する検出装置に接続されていることが好ましい。よって、レーザ電力を夫々のアーク電力に自動的に適合させる制御ループが実現される。
【0020】
レーザ電力をアーク電力に従って調整するには、調整器具を設けることが好ましい。調整器具として、所定値や所定比を入力する回転調整器又は数値キーボードが設けられる。
調整値を制御するために、調整されたレーザ電力、アーク電力等を表示するディスプレイを設けることが好都合である。
【0021】
更に、アークの点火後にレーザビームを時間的に遅れて活性化する装置を設けることができる。この目的のために、アークの点火を検出する装置が必要であり、この装置は、例えば、溶接トーチの電圧及び/又は電流を測定する測定ユニットで形成することができる。指定時間遅れの経過後に、レーザユニット用の給電ユニットが活性化されることにより、レーザビームがオンされる。
【0022】
時間遅れを調整する装置を設けることが好都合である。この調整装置は、再び、時間遅れの所定値を入力する回転スイッチ又は数値キーボードで形成することができる。
【0023】
レーザユニットを制御する制御装置と、アークを制御する制御装置とがデジタル信号プロセッサで形成されることができる。このような信号プロセッサは、容易にプログラムされると共に、夫々の要求に適合され得る。
【0024】
本発明の別の特徴によれば、レーザユニットが、レーザビームの焦点を変更する装置を含み、該装置が、アークを発生する溶接トーチの溶接電圧を検出する検出装置に接続されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、レーザビーム3を発生するレーザユニット2を備えるレーザ・アーク複合溶接装置1、いわゆる、レーザハイブリッド溶接装置を概略的に且つ簡易に図示する。更に、レーザ・アーク複合溶接装置1は、溶接アーク5を発生する溶接トーチ4、レーザユニット2用の給電ユニット6と溶接トーチ4用の給電ユニット7を含み、これらを介して、2個の溶接法に必要なエネルギーを調整することができる。レーザハイブリッド溶接装置、即ち、レーザユニット2と溶接トーチ4は、レーザビーム3が好ましくは溶接トーチ4に先行するように、2個の加工物8の接合部に指向される。これは、溶接方向に見て、最初にレーザービーム3が、次に、アーク5が加工物8の接合部に指向されることを意味する。
【0026】
溶接トーチ4は、ミグ/マグ溶接法を実行することが好ましいけれども、どの型式の溶接法用のいかなる型式の溶接トーチから選択してもよい。制御装置9が、レーザユニット2と溶接トーチ4を制御すると共に、溶接装置1を制御、操作及び監視するように設けられることが好都合である。インターフェース10は、操作パネル11、遠隔制御装置12と、例えば、ワイヤフィーダ13を溶接装置1と接続するように働く。本発明によれば、レーザユニット2を溶接トーチ4に従って制御する制御装置14が設けられる。この場合、例えば、デジタル信号プロセッサからなる制御装置14は、レーザユニット2用の給電ユニット6と溶接トーチ4用の給電ユニット7に直接に接続されることが好都合である。これは、レーザビーム3の電力Plaserのアーク5の電力Parcに対する比の制御装置14による調整を可能にする。必要条件に応じて、例えば、加工物8の接合部へのレーザビーム3のより深い溶込みを達成することができる。後の溶接法が、より小さな電力で加工物8の接合部により深く作用し得るので、これは、後のアーク溶接法による溶接を大幅に高める。勿論、給電ユニット6と7を共通ユニットで形成することもできる。給電ユニット6により加工物8に入力される電力Plaser又はレーザビーム3のエネルギーは、アーク5の給電ユニット7の電力Parc又はエネルギーに適合させられ、それに応じて制御される。
【0027】
レーザユニット2を制御する制御装置14は、制御ループを形成するように、溶接トーチ4の溶接電圧U及び/又は溶接電流Iを検出する検出装置15と、オプションとしてA/Dコンバータ16を介して接続され得る。このようなフィードバックは、レーザビーム3のレーザ電力Plaserのアーク5のアーク電力Parcに対する自動適合を可能にする。
【0028】
通常、レーザユニット2は、レーザビーム3の焦点を変更する装置を備え、この装置は、溶接トーチ4の溶接電圧を検出する検出装置15と接続される。図示されるように、この接続は、レーザユニット2を制御する制御装置14を介して行うことができる。この結果、溶接電圧Uによりアーク5の長さを検出して、その後、レーザビーム3の焦点をアーク5のその検出長さに適合することができる。レーザ焦点を最適に調整することによって、入力エネルギーを最小化することができる。レーザユニット2を制御する制御装置14は、更に、アーク5の点火後にレーザビーム3を時間的に遅延して活性化する装置を更に備える。この時間遅延は、例えば、操作パネル11又は制御装置14上に設けられた調整素子によって調整自在であることが好都合である。
【0029】
アークの状態を検出するのに使用されるアーク5のパラメータは、溶接トーチ4の溶接電圧U及び/又は溶接電流Iを検出する検出装置15によって検出されると共に、レーザユニット2を制御する制御装置14に送信される。アーク5のパラメータ、例えば、アーク電流I及び/又はアーク電圧Uは、溶接作業中に監視されることが好都合である。この結果、アーク5の1個以上のパラメータの指定偏倚が検出され、レーザユニット2がそれに応じて制御され得る。このようにして、アーク5の消衰又はアークの短絡を検出できる結果、レーザユニット2が不活性化されることにより、レーザビーム3が消衰させられる。短絡発生溶接法において、アーク5の短時間の短絡は、故意に又は任意に発生するが、レーザユニット2の自動的不活性化をもたらさない。この目的のために、時間38(図4乃至図6)を設定して、短絡の発生時に、時間38を開始させて、この時間38内の短絡中にレーザユニット2が活性状態にあり、時間38が超過して短絡が生じている時にだけレーザユニット2が不活性化される。時間38は、短絡発生溶接法における短絡の通常時間よりも長く決定される。
【0030】
もし長すぎるアーク5が引かれると、アーク5の溶接電流I又は溶接電圧Uが上昇する。これは、各種の理由、例えば、加工物8から離隔しすぎた溶接トーチ4の移動又は加工物8に対する溶接トーチ4の角度の変化によって生じる。アーク5の指定パラメータの指定偏倚において、レーザユニット2は、制御装置14によって不活性化される。
【0031】
このようにして、レーザビーム3は、負傷の危険をもたらさないことが確実にされる。もし、例えば、溶接トーチ4が傾く、即ち、加工物8に対する溶接トーチ4の角度が変化すると、レーザビーム3は、加工物8の上で燃焼することにより、回りに立っている人を負傷させたり近くに配置された機器を損傷させることを引起こし得る。角度変化により、アーク5が、より長くなると共に、そのパラメータを変化させるので、レーザビーム3は、アーク5のパラメータの検出により自動的に不活性化される。アーク5の消衰後に、レーザビーム3は直ちにオフされるので、溶接の終了後に、使用者は、レーザビーム3を不注意で活性化することなく、溶接トーチ4をレーザユニット2と共に片付けることができる。検出装置15を短絡検出と組合せて、レーザビーム3が、短絡溶接法において発生するように、アーク5の短絡で不活性化されない。従って、短絡溶接法において、レーザビーム3による加工物8内への更なる溶込みが、短絡中に起こり得る。
【0032】
検出装置15をアーク5の点火の検出に使用して、レーザビーム3を、アーク5の点火後にだけオンすることができる。レーザユニット2との溶接トーチ4の不適当な取扱いを防止すると共に、可能な限り最高の安全性を保証するために、レーザビーム3を、所定の時間遅れの後にオンすることができる。この結果、不注意で活性化されたレーザビーム3による負傷又は損傷の危険が除かれるように、レーザビーム3は、点火したアーク5なしに活性化されないことが簡単に達成される。
【0033】
図2は、操作パネル11を含む溶接機17を概略的に図示する。エネルギーは、操作パネル11上に配置された調整器具18、特に、回転調整器を用いて使用者によって調整される。調整器具18は、本実施例において図示されていない遠隔制御装置12上に配置することもできる。
【0034】
図示の実施例において、レーザビーム3とアーク5の両方が、溶接機17内に配置された共通溶接電流源19によって供給される。勿論、2個のユニットのために、1個又は数個の溶接電流源19を、溶接機17内又は溶接機17の外に配置することもできる。溶接機17をオンした後又は溶接トーチ4上に設けられた溶接ボタン20(図1)を作動させた後、溶接電流源19は、両溶接法のためのエネルギーを供給する。よって、ここで、例えば、アーク5に一定エネルギーを供給することができると共に、レーザビーム3の電力は、使用者の必要に応じて調整することができる。当然、レーザビーム3を一定エネルギーで作動させる一方、アーク5を必要条件に適合させることもできる。
【0035】
この場合、レーザビーム3のレーザ電力Plaserとアーク5のアーク電力Parcを、好ましくは、単一の調整器具18により相対比に調整することもできる。よって、溶接電流源19は必要なエネルギーを供給し、両溶接法の電力を、加工物8の要求又は性質に応じて単一の調整器具18により調整することができる。
【0036】
これにより、最小エネルギー消費で最適な溶接結果が得られる。通常、レーザ電力Plaserは、大体、アーク電力Parcに対応することが目指される。ある溶接法では、例えば、加工物8へのより深い溶込みを達成することが好都合であり、その理由により、アーク電力Parcに比べて、より高いレーザ電力Plaserが目指される。
【0037】
もし、例えば、レーザ電力Plaserが、アーク電力Parcに対して増加させられると、レーザビーム3による溶接法において加工物8へのより深い溶込みが達成される。アーク5は、レーザビーム3に対して減少させたその電力により、加工物8間の間隙を充填する。レーザビーム3のより高い電力Plaserの大きな長所は、溶接速度を、特別な品質低下無しに大幅に増大できる点である。当然、レーザビーム3の焦点は、例えば、加工物8の厚さの中心に位置するように、調整されることができる。よって、電力変化の代わりに、レーザビーム3の焦点だけを変化させることができる。レーザビーム3の電力Plaserを低下させることにより、レーザビーム3の加工物8への溶込みがより小さくなる結果、溶融浴によるアークのより良好な間隙ブリッジング性と、確実で、より良好で完全な又は完全に近い溶接継目とが得られる。
【0038】
極端に多様な溶接法を実行するために、レーザ電力Plaserのアーク電力Parcに対する比が調整自在であることが好都合である。この時、例えば、単一の調節器具18により、レーザ電力Plaserのアーク電力Parcに対する比を調整することが、単一の調整で両エネルギー源の電力を適当に変化させることを使用者に可能にする簡単な操作をもたらす。
【0039】
図3は、図2の溶接機の操作パネル11を図示する。操作パネル11及び/又は遠隔制御装置12は、レーザビーム3とアーク5の調整された電力値が表示されて、使用者により読取られるディスプレイ21を含む。
【0040】
レーザビーム3の電力のアーク5の電力に対する比は、調整器具18により調整することができる。よって、レーザビーム3の加工物8の接合部への溶込みと加工物8の融解の深さをより小さくするように、例えば、レーザ電力Plaserが、アーク電力Parcに比べて低減される(矢印22)。一方、アーク5の電力Parcが、レーザビーム3の電力Plaserに比べてより高く調整されるので、例えば、より良好な間隙ブリッジング性が達成される。同様に、レーザビーム3の電力Plaserをアーク5の電力Parcより高く印加することにより(矢印23)、レーザビーム3の大幅に大きな溶込みが得られ、レーザビーム3より遅延するアーク5が、より小さな電力で加工物8の接合部上に溶接継目を形成することができる。レーザビーム3のより高い電力Plaserの大きな利点は、溶接速度が、特別な品質低下無しに大幅に増大することである。
【0041】
操作パネル11上には、レーザビーム3とアーク5用の別の調整オプション部材を設けることができる。例えば、キー28を作動するだけで、後で用いる溶接法の溶加材の直径を選択して、それをディスプレイ24上に表示することができる。更に、用いる溶加材の材料を調整してディスプレイ25上に表示することができ、又、遅延する溶接法を調整してディスプレイ26上に表示することができ、更に、レーザビーム3の焦点を調整してディスプレイ27上に表示することができる。キー28を作動するだけで、レーザハイブリッド溶接法のために望ましい値を固定することができる。
【0042】
この結果、使用者は、溶接すべき加工物8に対して最適な溶接法、特に、最適なレーザハイブリッド溶接法を選択することができる。例えば、加工物8の反りを規制、特に、最小化するために、冷間金属トランスファ溶接法をレーザ溶接法と組合せることができる。あらゆる他の現在の溶接法をレーザ溶接法と組合せて調整することができることは言うまでもない。
【0043】
図4は、ミグ溶接法の電圧/時間線図29及び電流/時間線図30と、レーザ溶接法の電圧/時間線図31及び電流/時間線図32を図示する。本発明によりレーザ溶接法に組合された溶接法では、例えば、いわゆる「リフトアーク原理」が、点火相33中にアーク5を点火するのに使用される。この時、溶加材、特に、溶接ワイヤが加工物8に接触するまで前進させられ、次に、溶接ワイヤの移動が反転されて、溶接ワイヤが加工物8から所定距離まで戻され、溶接ワイヤの移動が再び反転される。溶接ワイヤの融解を防止するように選択される指定の電流Iを、溶接ワイヤに短絡時点34から供給することにより、アーク5の点火が溶接ワイヤの後退移動と上昇中に起こる。アーク5の点火後に、レーザビーム3を、所定の時間遅れ35の後の時点36に作動させることができる。よって、レーザユニット2は、アーク5の点火後の時間遅れ35で作動させられる。この結果、作動の早すぎるレーザビーム3による負傷の危険を除くことにより、安全性が更に高められる一方、レーザビーム3の発生に必要なエネルギー入力が低減される。その上、レーザビーム3は、確実に点火されたアーク5によってだけ作動させられる。この措置により、溶接法が実際に開始されて、レーザハイブリッド溶接トーチが適当に使用されたことが確保されるように、レーザビーム3は、アーク5の点火の指定時間遅れ35の経過後にオンされることが確実になる。
【0044】
時間遅れ35は、調整自在であることが好都合であると共に、例えば、500msである。アーク5のパラメータを、検出すると共に、制御装置14に転送して、レーザビーム3を制御することができる。よって、レーザビーム3は、アーク5の指定状態の到達時にのみ点火され得る。
【0045】
時点37に対応する溶接の終了時に、検出装置15は、アーク5の不足した電流I及び/又は不足した電圧Uを検出する。これが制御装置14に転送されて、制御装置14は、レーザユニット2に対するエネルギー供給を停止する。よって、アーク5が故意に終了されたか又は使用者が、手溶接中に、アーク5が消える程加工物8から溶接トーチ4をレーザユニット2で故意でなしに持上げたかどうかに拘わらず、レーザビーム3の自動的不活性化が保証される。その結果、レーザビーム3は、存在するアーク5で活性化され、更に、調整時間38後の溶接の故意でない又は故意の終了時に再び不活性化されることにより、レーザユニット4による溶接トーチ4の不適当な操作が防止されるので、安全性が大幅に高められる。
【0046】
図5は、パルス溶接法の電圧/時間線図39及び電流/時間線図40と、レーザビーム3の電圧/時間線図41及び電流/時間線図42を図示する。再びリフトアーク原理に基づいて生じる点火相33の後、パルス溶接が、時間差35の後の時点36において開始される。
【0047】
パルス溶接法では、点火相33の後に、加工物8への方向の溶接ワイヤの移動が、加工物8に当接するまで行われる。短絡が時点43において形成され、そのためにアーク5が全く存在しない。しかしながら、この方法では、アーク5の再点火までの短絡の長さ、即ち、期間44は非常に短い。パルス溶接法では、レーザビーム3は、短絡の間、即ち、期間44中にも連続的に活性化されたままである。これは、レーザユニット2が不活性化される前に短絡が存在しなければならない時間38がプリセットされることにより、達成される。アーク5の消衰、よって、電圧Uの零値45への低下後の時点43で短絡を検出した後、電圧Uが所定時間38の間に零値45に保持されている場合にだけ、レーザユニット2が活性化される。短絡溶接法では、レーザビーム3が、検出装置15でトリガされる制御装置14によってオフされるまでの時間38は、アーク5の再点火までの短絡の期間44より長く指定されなければならない。しかしながら、溶接の実際の終了後にできるだけ僅かな時間しか経過しないことにより、溶接トーチ4をレーザユニット2と共に使用する時に可能な限り最大の安全性が再び保証されるように、レーザビーム3の不活性化までの時間38は選択される。時間38は、例えば、0.5秒と2秒の間にある。これは、使用者が、不適当な操作で、レーザビーム3によって、他人に対して負傷や付近の物体に対して損傷を与えることを心配する必要がない点で、特に、手溶接の分野において好都合である。
【0048】
検出装置15が、短絡の検出時に制御装置14に信号を転送しないことにより、レーザビーム3が、短絡期間44中に不活性化されないことがあり得る。その結果、レーザビーム3の不活性化までの時間38が更に短縮されることにより、本発明にかかるレーザハイブリッドユニットの更に高い安全性が得られる。
【0049】
図6は、冷間金属トランスファ溶接法の電圧/時間線図46及び電流/時間線図47と、レーザビーム3の電圧/時間線図48と電流/時間線図49を図示する。
冷間金属トランスファ溶接は、再び、点火相33中に上記リフトアーク原理によって再開始される。アーク5が点火されると、レーザビーム3は、時間遅れ35の後の時点36において活性化される。
【0050】
冷間金属トランスファ溶接中に、溶加材、特に、溶接ワイヤが、開始位置から加工物8への方向に移動させられる。溶接ワイヤが、加工物8に当接して、時点50において短絡を形成した後、ワイヤ送りが反転されて、溶接ワイヤが、好ましくは開始位置に戻される。冷間金属トランスファ溶接中の溶滴形成又は溶接ワイヤの溶融を達成するために、溶接電流Iは、加工物8への方向の溶接ワイヤの前進移動中の時点52において、基部電流51に対して増加させられる。溶融浴への溶接ワイヤの浸漬とそれに続く溶接ワイヤの後退移動により、溶滴又は溶融材料が溶接ワイヤから離脱させられる(不図示)。溶滴の離脱を促進するために、溶接電流Iのパルス状増加を実行してもよい。
【0051】
レーザ溶接法と冷間金属トランスファ溶接法の組合せの利点は、冷間金属トランスファ溶接法により、大幅に少ないエネルギーと熱が加工物8に導入される点にある。その結果、冷間金属トランスファ溶接法は、いわゆる冷間溶接法であるので、例えば、加工物8の反りが好都合に最小化される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明にかかるレーザ・アーク複合溶接装置のブロック図である。
【図2】本発明にかかるレーザ・アーク複合溶接装置を含む溶接機を示す。
【図3】図2の溶接機の操作パネルを示す。
【図4】レーザ・パルス複合溶接法の電流−時間線図と電圧−時間線図である。
【図5】レーザ・短絡複合溶接法の電流−時間線図と電圧−時間線図である。
【図6】レーザ・冷間金属トランスファ複合溶接法の電流−時間線図と電圧−時間線図である。
【符号の説明】
【0053】
1 レーザ・アーク複合溶接装置
2 レーザユニット
3 レーザビーム
4 溶接トーチ
5 アーク
6 給電ユニット
7 給電ユニット
8 加工物
9 制御装置
10 インターフェース
11 操作パネル
12 遠隔制御装置
13 ワイヤフィーダ
14 制御装置
15 検出装置
16 A/Dコンバータ
17 溶接機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビーム(3)を発生するレーザユニット(2)とアーク(5)を発生する溶接トーチ(4)が、エネルギーを供給されると共に制御されるレーザ・アーク複合溶接のための方法において、
レーザユニット(2)が、溶接トーチ(4)に従って制御される方法。
【請求項2】
アーク(5)のパラメータが溶接作業中に監視されると共に、アーク(5)のパラメータの一つが指定偏倚をした時に、レーザユニット(2)が不活性化される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アーク電流(I)及び/又はアーク電圧(U)が監視される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アーク(5)のパラメータが所定時間(38)に渡り指定偏倚をした時に、レーザユニット(2)が不活性化される請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
レーザユニット(2)は、アーク(5)の点火後だけに活性化され、又、該点火は、アーク(5)のパラメータが指定値に到達したことにより検出される請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
レーザユニット(2)が、アーク(5)の点火後に時間遅れ(35)で活性化される請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
時間遅れ(35)が調整自在である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
レーザビーム(3)の電力(Plaser)が、アーク(5)の電力(Parc)に従って調整自在である請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
レーザ電力(Plaser)が、アーク電力(Parc)に比例して調整自在である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
レーザ電力(Plaser)が、アーク(5)を発生する溶接トーチ(4)の溶接電圧(U)及び/又は溶接電流(I)に従って調整自在である請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
レーザビーム(3)の焦点が、アーク(5)の長さに従って自動的に変更される請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
レーザビーム(3)を発生するレーザユニット(2)と、アーク(5)を発生する溶接トーチ(4)と、レーザユニット(2)用の給電ユニット(6)と、溶接トーチ(4)用の給電ユニット(7)と、レーザユニット(2)と溶接トーチ(4)を制御する少なくとも1個の制御ユニット(9)とを備えるレーザ・アーク複合溶接のための装置において、
溶接トーチ(4)に従ってレーザユニット(2)を制御する制御装置(14)を設けた装置。
【請求項13】
レーザユニット(2)を制御する制御装置(14)が、溶接トーチ(4)の溶接電圧(U)及び/又は溶接電流(I)を検出する検出装置(15)に接続されている請求項12に記載の装置。
【請求項14】
アーク(5)の電力(Parc)に従ってレーザビーム(3)の電力(Plaser)を調整する調整器具(18)を設けた請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
調整されたレーザ電力(Plaser)、アーク電力(Parc)等を表示する少なくとも1個のディスプレイ(21、24、25、27、28)を設けた請求項12乃至14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
アーク(5)の点火後にレーザビーム(3)を時間的に遅れて活性化する装置を設けた請求項12乃至15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
時間遅れ(35)を調整する装置を設けた請求項16に記載の装置。
【請求項18】
レーザユニット(2)を制御する制御装置(14)と、アーク(5)を制御する制御装置(14)とがデジタル信号プロセッサで形成された請求項12乃至17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
レーザユニット(2)が、レーザビーム(3)の焦点を変更する装置を含み、又、該装置が、アーク(5)を発生する溶接トーチ(4)の溶接電圧(U)及び/又は溶接電流(I)を検出する検出装置(15)に接続されている請求項12乃至18のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−522833(P2008−522833A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545779(P2007−545779)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/AT2005/000504
【国際公開番号】WO2006/063374
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(504380611)フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (65)
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
【Fターム(参考)】