説明

溶接プラスチック接合部の溶接後ネック付け

本発明は、プラスチック材料の領域相互間の接合部、特にカテーテルシャフト(3)とバルーンネック(4)の接合部の可撓性を高める方法であって、相互に重なり合う部分を溶接して接合部領域を作る工程と、引張力を接合部領域に加える工程とを有し、引張力は、接合部領域を細長くするのに十分な強度のものであり、かくして接合部領域が薄肉化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック材料の領域相互間の接合部、特に、カテーテルシャフトとバルーンネックの接合部の可撓性を高める方法に関する。この方法は又、かかる接合部の溶接領域の外径を減少させると共に横断面を減少させる。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルは、部分的に閉鎖され又は閉塞した血管を拡張させるために用いられるインフレート可能な先端部付きのカテーテルである。かかる用途では、カテーテルは細く且つ曲がりくねった血管内を進むことができるようできるだけ可撓性が高いことが重要であるが、先行技術のカテーテルでは、カテーテルシャフトとバルーンネックの接合部は、溶接接合部の付近では比較的不撓性である傾向がある。
【0003】
バルーンカテーテルと関連したもう1つの問題は、溶接接合部の領域がカテーテルシャフトの残部に対し膨潤する傾向があるということである。特定の方向に配向したポリマー鎖を有するポリマーを加熱して2つの領域を互いに溶接する場合、ポリマーの溶融温度を超え、ポリマー鎖はランダム化状態になる。これにより、ポリマー材料は、ポリマー鎖の配向方向に縮み、それと同時に、これに垂直な方向に材料の膨張(swelling)が生じる。或る用途では、結果的に生じる接合部の厚肉化又は膨張は、望ましくない。かかる用途の1つは、血管形成術用カテーテルにおけるカテーテルシャフトとバルーンネックの接合部であり、かかるカテーテルは、用途が用途であるだけに特定の且つ一様な大きさのものであるべきであり、かくして溶接領域の膨張は、望ましくない。
【0004】
先行技術においては、例えばプラスチック材料の2つの部品をヒートシールすることによりプラスチック材料の2つの領域相互間の接合部又は継ぎ目を形成する方法が既に知られている。
米国特許第4,251,305号明細書は、カテーテルへのバルーンの輻射熱によるヒートシール方法を開示しており、この場合、カテーテルバルーンを形成する1本の管材料が医用器具の熱可塑性シャフトに取り付けられる。次に、収縮管材料をバルーン管材料の各端部に嵌めてその位置を維持するために予備収縮させる。次に、狭い環状バンドの輻射熱をシャフト、バルーン管材料及び収縮管材料に加えて、バルーン管材料をシャフトに密着させる。
米国特許第4,025,375号明細書は、シートを管内に互いに反対側の側部がオーバーラップした状態で連続的に溶接する方法を記載している。シートを加熱した状態でこれに長手方向に張力を加えて材料を溶接する。その目的は、溶接領域の厚さが元の非加熱状態のシート材料の厚さの2倍以上にすることにある。
米国特許第4,990,298号明細書は、熱伸し、引き伸ばし状態にある間に冷却し、1対の非引き伸ばし端部相互間でサンドイッチした中央部分を有する熱収縮可能なクロージャを記載しており、一方の端部は、テーパした溝付き延長部を有している。熱伸に続き、冷却を行って、材料のその部分を熱収縮可能にする。
【0005】
米国特許第4,775,371号明細書は、補剛された拡張カテーテルの製造方法を記載している。カテーテルは、比較的剛性の高い近位端部を有し、これは、剛性管状部材を比較的軟質の外側管状部材の近位端部と同軸に接合することにより形成される。内側及び外側の管状部材の遠位端部を互いに密封してバルーンの遠位端部を閉鎖する。マンドレルを比較的剛性の高い管状部材中へ挿入し、これを次に加熱して引っ張り、それによりかかる管状部材がマンドレルの周りで収縮し、部材の肉厚を減少させる。
米国特許第3,985,601号明細書は、インフレート可能なカテーテル先端部がダブルルーメン型カテーテルシャフトに取り付けられ、カテーテル先端部とカテーテルシャフトの外側接合部のところにスムーズな連続外面を形成するようインフレート可能なバルーンカテーテルを製造する方法を開示している。カテーテルシャフトは、バルーン部分の外径にほぼ等しい初期外径を有し、部分(不完全)硬化状態にある間、押出し成形シャフトの先導部分を引き伸ばしてその外径を局所的に減少させる。次に、シャフト全体を硬化させる。
米国特許第5,769,819号明細書は、ガイドワイヤルーメンを備えたガイドワイヤシャフトを有する医用カテーテルを開示している。カテーテルは、バルーンが取り付けられる減少直径部を備えた遠位先端延長部を有する。遠位先端延長部の一端部をシェービング加工、高周波溶接又は圧縮ヒートシールによりテーパさせる。
【0006】
米国特許第4,092,193号明細書は、基材、例えば管状物品を接合する結合手段を記載している。管状物品は、可融性剤付きの内側部材及び外側部材を有する。接合されるべき基材を可融性剤と外側部材との間に挿入し、その結果得られた組立体を加熱する。熱は、可融性剤が溶けて接合されるべき基材を通ると共に(或いは)これらの周りを流れるほど十分可融性剤の温度を上昇させ、内側及び外側部材は、間を溶けた可融性剤が流れることができる境界部を定めることにより溶融状態の可融性剤を閉じ込めるよう働く。これにより、2つの管状物品が互いに結合される。
欧州特許第371,497号明細書は、バルーンをカテーテルシャフトの端部に取り付け、バルーンの端部を加熱してこれらをシャフトに溶接し、次にシャフト管を機械加工することにより製造された尿道カテーテルを開示している。カテーテルシャフトの前側部分の直径を減少させ、バルーンを、直径の減少したシャフトの部分に溶接する。
欧州特許出願公開第483,569号明細書は、レーザビームを用いて第1のプラスチック材料を第2のプラスチック材料に密着させるプラスチック溶接装置を開示している。
欧州特許第237,192号明細書は、レーザビームによる熱を利用してプラスチック又はプラスチック被覆表面を互いに溶接する方法を開示している。
米国特許第5,807,520号明細書は、熱可塑性材料のセグメントを押し出し成形する工程と、中央部分を熱可塑性材料のガラス転移温度よりも低い温度に維持する工程と、セグメントを所定長さに絞り加工し、絞り加工後、中央部分の肉厚がそれほど変化しないようにする工程と、次に、セグメントを金型内で膨張させてバルーンを製造する工程とを有するバルーンの形成方法を開示している。
【0007】
上述したようなプラスチック材料の接合部を互いに溶接する多くの方法が知られているが、先行技術の方法に関する一問題は、溶接領域の外径及び横断面が、隣接の領域の外径及び横断面よりも大きいということにある。これにより、溶接領域に膨張領域が生じ、これは、多くの用途にとって不適切である。先行技術のカテーテルでは、カテーテルシャフトとバルーンネックの接合部は又、溶接接合部の領域が比較的不撓性であるという傾向がある。
2つのポリマー材料をまず最初に互いにヒートシールし、次に接合部を引き伸ばす方法を教示する先行技術文献は存在しない。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,251,305号明細書
【特許文献2】米国特許第4,025,375号明細書
【特許文献3】米国特許第4,990,298号明細書
【特許文献4】米国特許第4,775,371号明細書
【特許文献5】米国特許第3,985,601号明細書
【特許文献6】米国特許第5,769,819号明細書
【特許文献7】米国特許第4,092,193号明細書
【特許文献8】欧州特許第371,497号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第483,569号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第483,569号明細書
【特許文献11】米国特許第5,807,520号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的はプラスチック材料の溶接領域相互間の可撓性の高い接合部を生じさせる方法を提供することにある。本発明の別の目的は、外径が減少したプラスチック材料の領域相互間の溶接部を作ることにある。更に別の目的は、プラスチック材料の2つの部分相互間の溶接領域の横断面を減少させる方法を提供することにある。別の目的は、2つの部分相互間の溶接接合部領域のウエルを無くすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、ポリマー材料の2つの互いに重なり合った部分相互間に形成される接合部を形成する方法であって、その相互重なり合い部分を溶接して接合部領域を作る工程と、引張力を接合部領域に加える工程とを有し、引張力は、接合部領域を細長くするのに十分な強度のものであり、かくして接合部領域を薄肉化することを特徴とする方法が提供される。
2つの互いに重なり合う部分を互いに熱溶接するのがよい。引張力は、適切には、引き伸ばし力である。引張力を不完全接合部(cold joint)又は加熱中の接合部に加えるのがよい。加熱は、温風をかけることにより達成できる。
【0011】
本発明の方法は、カテーテルシャフト及びバルーンの製造に特に利用でき、ポリマー材料の2つの互いに重なり合った部分は、カテーテルシャフトとバルーンネックである。
適切には、バルーンネックをカテーテルシャフトとバルーンネックとの接合部領域に隣接してクランプし、引張力をクランプされた領域相互間に加える。適切には、バルーンネックを接合部領域の各側でクランプし、引張力をクランプされた領域相互間に加える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、添付の図面を参照して本発明を以下に詳細に説明する。
図1に示すように、血管形成術用バルーン(1)をポリマーシャフト(3)と一緒にマンドレル(2)に取り付ける。次に、バルーン(1)及びシャフト(3)を流体密シールを生じさせるために従来型手段によりバルーンネック領域(4)のところで互いに溶接する。従来型溶接作業は、熱源から熱を加え、これにより材料は溶接区域(weld zone)で半径方向に膨らむ。また、これにより溶接区域の剛性が高くなる。これは、図2に詳細に示されている。先行技術の手順では、この半径方向膨張(5)は、外部金型又は熱収縮スリーブを用いることにより最小限に抑えられていた。
【0013】
しかしながら、本発明は、引張力、例えば引き伸ばし力を溶接領域(welded area)に加えることによりこの半径方向膨張を減少させる。図3に示すように、クランプ(6)が、溶接区域の各側でバルーンネックを掴み、引張力を把持クランプを介して加える。力の範囲は、ポリアミドバルーンとポリエチレン及びPEBAXの内側シャフト同時押出し成形品との間の溶接部(a weld)に関し0.75〜1.5ポンド力(lbf)(340.2〜680.4gf)である。この引張力により、溶接区域は、長手方向に伸び、半径方向に縮む。プラスチック材料中のポリマー鎖が加熱されると、これらは弛緩してランダム化する。この結果、鎖の配向方向に縮む傾向及び他の方向に膨らむ傾向がある。引張力をこの領域に加えると、ポリマー鎖は、長手方向に再配向し、その結果半径方向に厚さが減少することになる。というのは、ポリマー鎖が回転して長手方向配向状態に動くからである。
【0014】
ひずみの方向における材料のひずみ硬化(加工硬化)により、溶接領域全体が図4に示すように同一程度にネック付けされるまで、溶接部の長さ全体にわたり変化(process)がスムーズ且つ均一に生じるようになる。溶接界面の良好な付着により、両方の材料は同時に且つ同一程度まで細長くなる。溶接領域に隣接して塑性変形は殆ど生じず又は全く生じない。というのは、長手方向配向状態は、これら領域中に依然として存在し、縦降伏率は、溶接区域よりもこの領域の方が高い。その結果、溶接領域は当初の溶接領域よりも断面及び外径が非常に小さく、溶接部の可撓性は高く、しかもポリマー鎖はひずみの方向に配向させられる。これは、溶接領域の長手方向強度及び小さい断面積が望まれる血管形成術用カテーテルにおいてバルーンとカテーテルシャフトの接合部(joint)の場合に有利である。滑らかなテーパが溶接領域の末端のところに生じ、これは又、血管形成術用カテーテルにおいて有利である。というのは、溶接区域は、カテーテルの先端部のところに次第にテーパした溶接区域を後に残すよう図5に示すように切断できるからである。
【0015】
冷間ネック付け作業の制御及び反復性をもたらすために冷間ネック付け機が開発された。この機械は、図6に示されており、X軸運動を行う直線運動スライダ(7)から成り、スライダ(7)は、速度制御装置(8)及びDCモータ(9)を有している。この機械は、着脱自在なジョー(10,11)付きの2つの空気圧グリッパシリンダを有している。一方のジョー(10)は、可動であり、他方(11)は固定されている。1組のマイクロスイッチが、スライダ機構の走行距離を制御する。
【0016】
バルーンとカテーテルシャフトの接合部をネック付けするため、この機械を基準位置(ホームポジション)に設定し、ジョー隙間を用途にとって適切な距離に設定する。バルーンの遠位端部を延長リップが可動スライダ(7)のジョー(10)相互間に位置した状態で固定ジョー(11)の端部相互間に配置し、ジョー(10,11)を作動させて製品をクランプする。次に機械を始動させてサイクル動作させる。可動スライダ(7)のジョー(10)は、固定ジョー(11)から遠ざかってネック付け作業を実施する。この機械は、適当な距離走行すると、自動的に停止する。ジョーを解除し、製品を取り出し、機械をリセットする。
【0017】
機械を、走行距離が1〜15mm(公称5mm)、速度ポット(speed pot)設定値が125〜500(公称275)及び空気圧が3〜6バール(公称5バール)で設定する。
かくして、ネック付け作業により、カテーテルとバルーンとの間の溶接領域の横断面が減少し、ポリマー鎖がひずみの方向に再配向させられ、溶接部分の可撓性が高くなり、溶接作業中のポリマー弛緩に起因して生じていた溶接領域の膨張が無くなる。
【0018】
本明細書において説明したような溶接接合部の溶接後ネック付けは、溶接を行った領域を「ネック付け」し又は薄くするために、引張ひずみを溶接されたポリマー組立体の領域に加えることとして説明できる。
本発明に関し本明細書で用いられた「〜から成る/から成っている(comprises/comprising)」という用語及び「〜を有する/〜を含む(having/including)」という用語は、記載した特徴、整数、工程又はコンポーネントの存在を特定するが、1以上の他の特徴、整数、工程、コンポーネント又はこれらの群の存在又は追加を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】カテーテルシャフト及びバルーンを示す図である。
【図2】バルーンへのシャフトの熱溶接後におけるカテーテルシャフト及びバルーンを示す図である。
【図3】互いにクランプしたときのカテーテルシャフトとバルーンを示す図である。
【図4】本発明に従って加熱して引き伸ばしたときのカテーテルシャフト及びバルーンを示す図である。
【図5】切断後の溶接部を示す図である。
【図6】接合部を溶接後ネック付けをする際に用いられる冷間ネック付け機を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料の2つの互いに重なり合う部分相互間に形成される接合部を形成する方法であって、互いに重なり合う部分を溶接して接合部領域を作る工程と、その接合部領域に引張力を加える工程とを有し、その引張力は、接合部領域を細長くするのに十分な強さのものであり、かくして接合部領域を薄肉化することを特徴とする方法。
【請求項2】
引張力は、接合部の各側の材料の領域間に加えられる引き伸ばし力であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
力の範囲は、0.75〜1.5ポンド力(lbf)(340.2〜680.4gf)であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ポリマー材料の2つの互いに重なり合う部分は、カテーテルシャフトとバルーンネックであることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
バルーンネックを接合部領域の各側でクランプし、引張力をクランプされた領域間に加えることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項6】
引張力を不完全接合部に加えることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項7】
引張力を加熱状態の接合部に加えることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項8】
温風を施すことにより接合部を加熱することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のうちいずれか一に記載の方法によりポリマー材料の2つのオーバーラップ部分相互間に形成された接合部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−513067(P2006−513067A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−567081(P2004−567081)
【出願日】平成15年1月24日(2003.1.24)
【国際出願番号】PCT/IE2003/000010
【国際公開番号】WO2004/065107
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(502129357)メドトロニック ヴァスキュラー インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】