溶接ユニットおよび少なくとも2つの別個の溶接プロセスを組合せた溶接方法
本発明は、チューブ群(23,28)により接続可能な溶接トーチユニット(29)を持つ溶接装置(1)を備える溶接ユニット(27)に関する。溶接装置(1)には、少なくとも1つの制御装置(4)と、溶接電源(2)と、任意であるワイヤ供給ユニット(3)とが配置される。溶接トーチユニット(29)は、少なくとも2つの独立した別々の溶接プロセスを実行するように、少なくとも2つの別個の溶接バーナー(10,35)を備える。さらに本発明は、少なくとも別個の溶接プロセスが組み合わせ可能な溶接方法に関する。本発明によれば、こうした溶接ユニット(27)および溶接方法は、ワークピース(16)への追加の材料および、熱またはエネルギー供給の導入量が可能な限り互いに独立に調整可能であり、第1溶接バーナー(10)は、ある溶接プロセスを実行するように構成され、少なくとも第2溶接バーナー(35)は、溶接ロッド(32)の前後移動を伴う冷間金属トランスファー溶接プロセスを実行するように構成され、少なくとも2つの溶接バーナー(10,35)を用いて実行される溶接プロセスは同期している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースパック(hose pack)を介して接続可能な溶接トーチユニットを持つ溶接装置を含む溶接ユニットに関し、溶接装置には、少なくとも1つの制御装置と、溶接電流源と、任意であるワイヤ供給ユニットとが配置され、溶接トーチユニットは、少なくとも2つの独立した別々の溶接プロセスを実行するように、少なくとも2つの別個の溶接トーチで形成されている。
【0002】
さらに本発明は、少なくとも2つの別個の溶接プロセスを組合せた溶接方法に関する。
用語「溶接トーチ」は、レーザトーチなどを含む従来の種々の溶接トーチを網羅するものである。
【背景技術】
【0003】
知られた溶接方法では、溶接装置に設けられた入力装置及び/又は出力装置を経由して任意のパラメータが調整可能である。こうして適切な溶接プロセス、例えば、パルス溶接プロセス、溶射アーク(spray-arc)溶接プロセス、またはショートアーク(short-arc)溶接プロセス等、が個々のパラメータを調整しながら選択される。さらに、電気アークを点火するための適切な点火プロセスを選択することが頻繁に可能である。溶接手順を開始した後、調整した溶接プロセス、例えば、パルス溶接プロセスが、調整した点火プロセスによる電気アークの点火の際に実行される。溶接手順中は、種々のパラメータ、例えば、溶接電流、ワイヤ前進速度などが、個別に選択された溶接プロセスごとに変化することが可能である。しかしながら、他の溶接プロセス、例えば、溶射アーク溶接プロセスへの切換えは可能でない。そのため、実行中の溶接プロセス、例えば、パルス溶接プロセスは、他の溶接プロセス、例えば、溶射アーク(spray-arc)溶接プロセスを実施するために、中断しなければならず、溶接装置では適切で新しい選択および調整を伴う。
【0004】
欧州公報1084789A2では、保護ガスハイブリッド溶接のための方法および装置が記載され、レーザジェットおよび電気アークが保護ガスの下で少なくとも2つの電極によって発生する。これは、溶接プロセスに影響を与えるチャンスを増やし、特に、自動化のオプションの増加をもたらす。その理由は、溶接プロセスは、電極数の増加によってより影響を受け易くなり、選択的な熱入力を可能にするからである。
【0005】
国際公開WO2001/38038A2は、レーザ溶接プロセスと電気アーク溶接プロセスを組み合せたレーザハイブリッド溶接トーチに関するもので、溶接品質および溶接プロセスの安定性を改善している。そこでは、相互に個々のアセンブリの特別な配置が本質的なものであり、レーザジェットによって生成される溶融バス(melt bath)が、電気アーク溶接プロセスによって生成された溶融バスとともに接合した溶融バスに合体して、溶接プロセスの配置の安定性および侵入深さを増加させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ワークピースへの溶接金属の入力および、熱またはエネルギーの入力が、できる限り互いに独立して調整可能であるようにした、溶接ユニットおよび溶接方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る目的は、第1溶接トーチは、ある溶接プロセスを実行するように構成され、少なくとも第2溶接トーチは、溶接ワイヤの前後移動による冷間金属トランスファー(cold-metal transfer)溶接プロセスを実行するように構成され、少なくとも2つの溶接トーチによって実行される溶接プロセスを同期させるための装置が設けられた、上記の溶接ユニットにより達成される。冷間金属トランスファー溶接プロセスを用いることによって、ワークピースまたはシート金属へ導入される追加の熱がほとんど無くなるように、エネルギーおよび熱の入力を低減できる。さらに、ギャップ補完(bridging)能力が実質的に増強される。少なくとも2つの溶接プロセスの時間同期により、溶接プロセスは、相互に最適となるように調整可能となり、ワークピースへの熱またはエネルギーの入力の最適な調整が可能になる。さらに、異なる溶接ワイヤ材料および溶接ワイヤ直径が使用可能になるとともに、ワークピースへの材料入力の制御も可能になる。
【0008】
さらに、有利な構成は、請求項2〜13に記載されており、これらによる利点は、明細書および前述の請求項1から導出することができる。
【0009】
本発明の目的は、少なくとも1つの溶接プロセスが冷間金属トランスファー溶接プロセスからなり、消費される溶接ワイヤが前後に移動し、少なくとも2つの溶接プロセスが時間で同期するようにした、上記の溶接方法により達成される。
【0010】
更なる特徴は、請求項15〜22に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明について、添付図面を用いてより詳細に説明する。
【0012】
図1は、種々のプロセスまたは方法、例えば、MIG/MAG溶接、WIG/TIG溶接、電気溶接法、ダブルワイヤ/タンデム溶接法、プラズマ法または半田法など、のための溶接装置1または溶接ユニットを示す。
【0013】
溶接装置1は、パワーエレメント3を含む電源2と、制御装置4と、パワーエレメント3および制御装置4にそれぞれ関連したスイッチ部材5とを備える。
【0014】
スイッチ部材5および制御装置4は、ガス8、特に、例えば、二酸化炭素、ヘリウムまたはアルゴンなどの保護ガスのための供給ライン7上で、ガス貯蔵器9と溶接トーチ10やトーチの間に配置された制御バルブ6に接続されている。
【0015】
さらに、MIG/MAG溶接で通常用いられるワイヤ供給器11は、制御装置4によって制御可能であり、追加の材料または溶接ワイヤ13は、供給ドラム14またはワイヤコイルから供給ライン12を介して溶接トーチ10の領域に供給される。当然ながら、付属品装置として図1と同じものを設計するのではなく、先行技術から知られているように、ワイヤ供給器11を溶接装置1、特に、その基本ハウジング内に一体化することも可能である。
【0016】
ワイヤ供給器11は、溶接ワイヤ13や充填金属を溶接トーチ10の外側にあるプロセス箇所へ供給することも可能であり、WIG/TIG溶接の場合は一般的であるように、その端部に非溶(non-consumable)電極を溶接トーチ10の内部に配置することが好ましい。
【0017】
電気アーク15、特に、動作の電気アークを電極とワークピース16との間に生成するために必要な電力は、電源2のパワーエレメント3から溶接ライン17を経由して溶接トーチ10、特に、電極へ供給される。溶接すべきワークピース16は、幾つかの部品からなり、同様にして、溶接装置1、特に、電源2に更なる溶接ライン18を介して接続されている。こうしてプロセス用の電力回路が、電気アーク15やプラズマジェットを生成するのを可能にする。
【0018】
溶接トーチ10の冷却のために、溶接トーチ10は、冷却回路19により途中の流量コントロール20を介して流体貯蔵器、特に、水貯蔵器21に接続可能であり、これにより溶接トーチ10が動作に入る際に、冷却回路19、特に、水貯蔵器21に貯まった流体用の流体ポンプが始動して、溶接トーチ10の冷却を行う。
【0019】
溶接装置1は、入力及び/又は出力装置22をさらに備え、これにより溶接装置1についての最も異なる溶接パラメータ、動作モードまたは溶接プログラムがそれぞれ設定され呼び出される。こうして入力及び/又は出力装置22を介して設定された溶接パラメータ、動作モードまたは溶接プログラムは、制御装置4へ送信され、続いて、溶接ユニットまたは溶接装置1の個々の構成部分を制御し、及び/又は制御用に個別に設定される数値を予め決定する。
【0020】
図示した例示の実施形態において、溶接トーチ10は、さらに、ホースパック23を介して溶接装置1または溶接ユニットに接続される。ホースパック23は、溶接装置1から溶接トーチ10への個々のラインを収納している。ホースパック23は、結合装置24を介して溶接トーチ10に接続され、一方、ホースパック23内に配置された個々のラインは、接続ソケットまたはプラグイン接続を介して溶接装置1の個々の接続部に接続される。ホースパック23の張力を適切に軽減するために、ホースパック23は、張力軽減手段25を介してハウジング26、特に、溶接装置1の基本ハウジングに接続されている。当然ながら、溶接装置1への接続のために結合装置24を使用することも可能である。
【0021】
例えば、WIG装置やMIG/MAG装置、プラズマ装置などの種々の溶接方法または溶接装置1について、前述した構成部分の全部を使用し、採用する必要がないことは言うまでもない。例えば、溶接トーチ10を空冷の溶接トーチ10として構成することも可能である。
【0022】
図2〜図11は、ある溶接プロセスと冷間金属トランスファー溶接プロセスとの組合せを記載した例示の実施形態を示している。図2〜図5に係る例示的実施形態では、MIG/MAG溶接プロセスを、冷間金属トランスファー溶接プロセスと組み合わせている。図示した溶接ユニット27は、溶接トーチユニット29を持つ溶接装置1を含み、溶接トーチユニット29は2つのホースパック23,28を介してこれに接続可能である。溶接トーチユニット29は、少なくとも2つの独立した溶接トーチ10,35で構成され、これにより各溶接トーチ10,35は、個々のホースパック23,28を介して溶接装置1に接続され、溶接プロセスに必要な構成部分の全て、例えば、ガス8、エネルギー供給、冷却回路19などを、溶接トーチユニット29に提供することができる。図1を参照して記載したように、溶接装置1は、制御装置4と、溶接電流源2と、ワイヤ搬送装置30とを収容しており、これらは図2において全てを図示していない。図示した例におけるワイヤ搬送装置30は、溶接装置1内に一体化されており、そして溶接ワイヤ13,32のための2つの供給ドラム14,31を備える。溶接ワイヤ13,32は、個々の駆動ユニット33,34によって溶接トーチユニット29の溶接トーチ10,35へ搬送される。
【0023】
溶接トーチユニット29の各溶接トーチ10,35は、駆動ユニット36(破線で概略的に図示)をさらに備えてもよい。さらに、図示した例示的実施形態における溶接トーチユニット29は、溶接トーチ10,35のための共通のガスノズル37を備える。溶接装置1において、溶接トーチユニット29へエネルギーを供給するために、ただ1つの電源2が設けられる。この電源2は、個別に動作する溶接トーチ10,35に交互に接続される。当然ながら、溶接装置1に配置された2つの別個に制御可能な電源2,38を介して、溶接トーチユニット29に配置された2つの溶接トーチ10,35を制御することも可能である。
【0024】
例えば、ワイヤ搬送、電力供給、溶接トーチ構造、溶接装置の設定など、個々のアセンブリまたは構成部分の機能についての説明は、先行技術から既に知られているため、省略している。
【0025】
基本的には、図示した種々の実施形態において、第1溶接トーチ10は、任意の溶接プロセスを実施するように設計され、第2溶接トーチ35は、冷間金属トランスファー溶接プロセスを実施するように設計されている点に留意すべきである。好ましい手法は、第1溶接トーチ10は、図2〜図5に係る例示的実施形態でのMIG/MAGトーチで形成される。これらの場合、第1溶接トーチ10は、溶接方向に沿って第2溶接トーチ35よりも先行している。当然ながら、第2溶接トーチ35を第1溶接トーチ10の上流側に配置したり、あるいは溶接の長手方向において溶接トーチ10,35を互いに側方へずらしたりすることも可能である。
【0026】
本構成の利点は、例えば、異なるワイヤ材料、異なるワイヤ直径を用いて、2つの異なる溶接プロセスが実施可能であることである。こうしてルート(root)溶接の際に、例えば、強化されたギャップ補完(bridging)能力が確保され、例えば、少なくとも2つの溶接ワイヤ13を側方へずらすことによって得られる。
【0027】
本発明に係る構成において、溶接トーチユニット29は、2つの別々の溶接トーチ10,35、あるいは構造ユニットに配置された、溶接トーチ10,35についての電気的に別々の構成部分を備え、2つの独立して動作する溶接方法の使用を可能にしている。こうしてMAG溶接プロセスは、図3〜図5にパワー、電圧およびワイヤ移動のグラフを用いて示したように、例えば、冷間金属トランスファー溶接プロセスと組み合わせられる。本発明に係る組合せ溶接方法は、例えば、電気アーク15の点火についてのリフトアーク(lift arc)原理を用いている(点火段階39)。これは先行技術から知られた方法であるため、詳細には記載していない。溶接ワイヤ13,32がワークピース16に接触するまで前方へ移動し、続いて溶接ワイヤの移動が反転して、ワークピース16から所定の距離40まで溶接ワイヤ13,32を後方へ搬送させて、そして再び溶接ワイヤ移動が反転するといった点を指摘するに留める。短絡の時から溶接ワイヤ13,32に所定の電流強度(電流強度は、溶接ワイヤ13,32の初期溶融や溶融開放を防止するように選択される)で電力供給することによって、溶接ワイヤ13,32の後方移動およびリフティングの際に、2つの溶接ワイヤ13,32について電気アーク15の点火が互いに独立に発生するようになる。
【0028】
グラフ41,42,43は、MAG溶接プロセスを図示し、グラフ44,45,46は、冷間金属トランスファー溶接プロセスを図示している。
【0029】
MAG溶接プロセスにおいて、溶接電流Iは、点火段階39の終了後、時間47において、定められたように増加して、溶接ワイヤ13は、ワークピース16の方向に搬送される。連続して印加された溶接電流Iにより、溶接ワイヤの端部で溶滴(droplet)48が形成され、これは、溶接電流Iの強度の関数として所定の期間後に溶接ワイヤ13から切り離されるようになり、こうして溶滴連鎖49を形成する。この手順は、周期的に繰り返される。そして、溶接ワイヤ13は、ワークピース16の方向(矢印50)にのみ移動して、冷間金属トランスファー溶接プロセスにおいて、グラフ46から判るように、溶接ワイヤ13の前後移動が生ずる。
【0030】
冷間金属トランスファー溶接プロセスは、グラフ46での時間47で示すように、スタート位置、即ち、ワークピース16からの距離40から、溶接ワイヤ32がワークピース16の方向(矢印50)に移動を行うことを特徴としている。そして、溶接ワイヤ32は、ワークピース16に接触するまで(時間51)、ワークピース16に向けて搬送され、その後、短絡の形成となり、ワイヤ搬送が逆転して、溶接ワイヤ32は、所定の距離40、即ち、好ましくは、スタート位置に戻るまでワークピース16から後方へと搬送される。溶滴の形成または溶接ワイヤ端部の初期溶融を確保するため、冷間金属トランスファー溶接プロセス中は、ワークピース16の方向(矢印50)への溶接ワイヤ32の前方移動中での溶接電流Iが変化し、特に、グラフ44,45から判るように、溶接ワイヤ32の初期溶融無しで電気アーク15を維持するように規定されたベース電流52に対して上昇する。よって、電流Iは、前方移動時に、溶接ワイヤ32の初期溶融、即ち、溶滴48が生ずるように制御される。溶接ワイヤ32が溶融バス(bath)(不図示)に浸漬され、続いて後方へ移動することによって、溶滴48または初期溶融した材料が溶接ワイヤ32から離脱するようになる。これに関して、当然ながら、溶滴の離脱を促進するために、溶接電流Iの瞬間的な増加を行うことも可能である。さらに、例えば、冷間金属トランスファー溶接プロセスのより迅速な実施を確保するために、冷間金属トランスファー溶接プロセス中のワイヤ搬送速度を変化させ、特に、増加させることも可能である。
【0031】
第1溶接トーチ10のMIG/MAG溶接プロセスにおいて、他の知られた溶接方法、例えば、パルス法、短絡法などを調整することも可能である。例えば、図4と図5に示したグラフは、冷間金属トランスファー溶接プロセスと組み合わせたパルス溶接プロセスを図示している。最初のグラフ53は、パルス溶接プロセスの電流−時間グラフを示し、グラフ54は、パルス溶接プロセスの電圧−時間グラフを示し、グラフ55は、パルス溶接プロセスのワイヤ移動グラフを示し、グラフ56は、冷間金属トランスファー溶接プロセスの電流−時間グラフを示し、グラフ57は、冷間金属トランスファー溶接プロセスの電圧−時間グラフを示し、グラフ58は、冷間金属トランスファー溶接プロセスのワイヤ移動グラフを示している。
【0032】
パルス溶接プロセスについては、先行技術から既によく知られているため、詳細には説明していない。パルス溶接プロセスでは、点火段階39の後、例えば、リフトアーク原理に従って再び実施された後、時間59において電流パルスの印加により、溶滴48が溶接ワイヤ13に形成され(パルス電流段階60)、そして時間61で溶接ワイヤ端部から離脱する点を指摘するに留める。その後、電流Iは、所定のベース電流52まで低下する(ベース電流段階62)。パルス電流段階60およびベース電流段階62を周期的に適用することによって、溶滴48はパルス電流段階60ごとに溶接ワイヤ13から離脱し、ワークピース16への材料トランスファーを確保できる。
【0033】
この例示的実施形態において、パルス溶接プロセスは、冷間金属トランスファー溶接プロセスと組み合わせており、冷間金属トランスファー溶接プロセスについては、図2〜図5を参照しながら既に説明しているため、詳細には説明しない。本発明に係る組合せにより、例えば、1つだけの電源2の使用が可能になり、これは、個別に動作する溶接トーチ10,35に交互に接続される。当然ながら、2つの独立して動作する電源2,38を使用することによって、溶接プロセスを制御することも可能である。こうして溶接プロセスは、相互に同期することが可能であり、例えば、一定時間間隔(isochronic)の溶滴の離脱が可能になる。
【0034】
図4に示した例示的実施形態では、パルス溶接プロセスでの溶滴離脱が冷間金属トランスファー溶接プロセスでの溶滴離脱と同期して発生するように、制御を行うことが本質的である。溶滴48がパルス溶接プロセスで離脱し、これと同時に、溶滴48が冷間金属トランスファー溶接プロセスで離脱している(時間61を参照)。もっとも、個々の溶接プロセスの溶滴離脱が同時に発生することは必ずしも必要でない。当然ながら、冷間金属トランスファー溶接プロセスの溶滴離脱は、パルス溶接プロセスに対して時間的にずれるように、特に、図5から判るように、パルス溶接プロセスのベース電流段階62の期間に発生するように、制御することができる。
【0035】
基本的には、パルス溶接プロセスと冷間金属トランスファー溶接プロセスの組合せについて図示した例示的実施形態では、第2溶接トーチ35により実施される冷間金属トランスファー溶接プロセスは、溶接方向で眺めて第1溶接トーチ10の後に続いている。実質的な利点は、冷間金属トランスファー溶接プロセス中はワークピース16に導入される熱およびエネルギーが実質的により少ない点にあり、熱入力のわずかな増加で、より多くの溶接材料がMIG/MAG溶接プロセスと冷間金属トランスファー溶接プロセスの組合せによって得られるようになる。ただ追加すべきことは、溶接トーチユニット29に配置された溶接トーチ10,35へエネルギーを供給するために、2つの別々の制御可能な電流源を溶接装置1に配置する点である。このことは、溶接トーチ10,35が、個々に動作する溶接トーチ10,35と交互に接続される単一の電流源によって制御可能でもあるため、必ずしも必要ではない。
【0036】
ワークピース16への熱入力を制御、または低減できるようにするため、第1溶接トーチ10も冷間金属トランスファー溶接プロセスを実施できるように構成することも可能である。ただ追加すべきことは、冷間金属トランスファー溶接プロセスの実施を可能にするため、図6に概略的に示しているように、各溶接トーチ10,35が、自分自身の駆動ユニット36を備えている点である。さらに、2つの冷間金属トランスファー溶接プロセスは相互に同期しており、即ち、溶接ワイヤ13からの溶滴離脱が、例えば、同時に発生したり(図7)、図8に概略的に示すように、溶滴離脱が時間的にずれていても構わない。
【0037】
冷間金属トランスファー溶接プロセスについては、前述した図2〜図5で広範に説明しているため、詳細に説明していない。指摘できることは、図7と図8に概略的に示すように、冷間金属トランスファー溶接プロセスは、点火段階39の後、例えば、リフトアーク原理に従って再び実施された後に開始する。ここで、グラフ63は、第1の冷間金属トランスファー溶接プロセスについての電圧−時間グラフ、グラフ64は電流−時間グラフ、グラフ65は移動グラフであり、一方、グラフ65,66,67は、同様に、第2の冷間金属トランスファー溶接プロセスについての電圧−時間グラフ、電流−時間グラフおよび移動グラフをそれぞれ示している。
【0038】
時間69において(点火段階39の終わり)、溶接電流Iは、有限の範囲で増加し、即ち、電流パルスが印加され、図7に係る2つの溶接プロセスのグラフから判るように、パルス電流段階60を形成している。一方、図8において、第2の冷間金属トランスファー溶接プロセスが時間的にずれるように開始しており、即ち、第1の冷間金属トランスファー溶接プロセスのパルス電流段階60だけ遅延している。パルス電流段階60の期間は、溶接ワイヤ13,32がワークピース16の方向(矢印50)に搬送され、印加される溶接電流の増加により、溶滴48がワイヤ上に形成される。溶接ワイヤ13,32は、時間70でワークピース16と接触するまでワークピース16の方向に搬送され、続いて短絡形成の後、スタート位置に戻るまで、即ち、距離40だけ後方へ再び移動する。溶滴離脱は、溶融バス(不図示)への浸漬によって行われる。図8において、遅延した第2の冷間金属トランスファー溶接プロセスにおいて時間70で溶接電流Iは増加し、これによりパルス電流段階60を開始している。
【0039】
時間70において、溶滴の形成または溶接ワイヤ13,32の初期溶融を防止するため、溶接電流Iはベース電流52まで低下する(ベース電流段階62)。第2の冷間金属トランスファー溶接プロセスでのベース電流段階62は、図8において遅延する方法で表したように、時間71で見えるように時間的にずれるようにして再び開始する。
【0040】
当然ながら、第1溶接トーチ10をWIG溶接トーチとして設計することも想定され、図9に概略的に示すように、WIG溶接プロセスは、冷間金属トランスファー溶接プロセスと組み合わされる。そして、WIG溶接プロセスの追加のエネルギー源により、例えば、増加した加熱と、これによるワークピース16の溶融を得ることが可能になり、一方、冷間金属トランスファー溶接プロセスによりほんの僅かの追加の熱入力が行われる。当然ながら、第1溶接トーチ10によって冷間金属トランスファー溶接プロセスを実施し、WIG溶接プロセスは第2溶接トーチ35によって実施することも可能であり、これにより、例えば、ワークピース16への侵入深さが減少するようになり、その結果、WIG溶接プロセスは溶接部を滑らかにして、溶接部の品質が向上する。
【0041】
この場合、非溶電極72、例えば、タングステン電極が、溶接トーチユニット29の第1溶接トーチ10にガスノズル37の領域に配置される。この例示的実施形態でのガスノズル37は分離しており、即ち、2つの独立した別々の溶接プロセス、即ち、WIG溶接プロセスと冷間金属トランスファー溶接プロセスのための2つの溶接トーチ10,35は、それぞれ自分自身のガスノズル37を有している。ただ1つの熱的かつ電気的に分離したガスノズル37が図示されている。このことは、例えば、別々の溶接ガス、別々のガス圧力を2つの独立した溶接プロセスについて使用できるという利点をもたらす。その結果、各溶接プロセスについて個々に最適な溶接ガスを用いるため、例えば、溶接部の品質が向上するようになる。溶接ワイヤ13、即ち、WIG溶接プロセスのための溶接金属が、溶接トーチ10に供給され、チューブ73を通って溶接トーチ10の電気アーク15へ搬送される。WIG溶接プロセスは、先行技術から知られた溶接プロセスであるため、ここでは詳細には説明していない。既に説明したように、冷間金属トランスファー溶接プロセスは、WIG溶接プロセスと組み合わせており、冷間金属トランスファー溶接プロセスについては、図2〜図5により既に説明しているため、詳細に説明していない。
【0042】
図10に係る例示的実施形態において、プラズマトーチにより形成される溶接プロセスが、冷間金属トランスファー溶接プロセスと組み合わせている。プラズマ溶接プロセスは、先行技術から周知であるため、プラズマ溶接プロセスについては詳細に説明していない。指摘できることは、プラズマ溶接プロセスでの電気アーク15が、HF点火によってガスノズル74中で点火されることである。電気アーク15は、ガスノズル74の内部で燃えており、高温でイオン化したプラズマジェット75がガスノズル74から出現している。点火段階39(不図示)の後、点火段階39と比べて減少した溶接電流が、電気アーク15を維持するために印加される。プラズマジェット75は、ワークピース16を溶融させる。そして、プラズマジェット75の中には、溶接ワイヤ13、即ち、溶接金属が、溶接トーチユニット29の溶接トーチ10に配置されたチューブ73を通って搬送される。これにより連続した溶滴の離脱が確保される。
【0043】
当然ながら、プラズマ溶接プロセスと冷間金属トランスファー溶接プロセスの組合せにおいて、図9においてWIG溶接プロセスと冷間金属トランスファー溶接プロセスの組合せについて既に説明したように、ガスノズル37を別々のガスノズル37として構成することも可能である。この例示的実施形態において、冷間金属トランスファー溶接プロセスは、プラズマ溶接プロセスと組み合わせている。冷間金属トランスファー溶接プロセスについては、図2〜図5により既に説明しているため、詳細に説明していない。
【0044】
当然、第1溶接トーチ10をレーザユニット76と置き換えることも可能であり、溶接トーチユニット29でのレーザユニット76は、冷間金属トランスファー溶接プロセスのための第2溶接トーチ35と組み合わせている。こうした変形例は、図11に図示している。当然ながら、レーザユニット76は、溶接トーチユニット29の外側に配置することも可能である。
【0045】
この構成は、レーザ77またはレーザ光学系を使用した場合、増加した溶接レートで、溶接部が実質的に減少するようになるという利点をもたらす。その理由は、レーザジェット78が、ワークピース16への所定の侵入深さを可能にし、後段に設けられる冷間金属トランスファー溶接プロセスが、用意された継ぎ目(seam)を充填するためである。従って、増強したギャップ補完能力が確保されるため、溶接部の低い精度の予備ワークが必要になるであろう。レーザユニット76は、この例示的実施形態では溶接トーチを構成しており、冷間金属トランスファー溶接プロセスと再び組み合わされる。
【0046】
説明した例示的実施形態に関して、ただ追加すべきことは、溶接トーチ10,35が、別々の溶接ワイヤおよび溶接ワイヤ直径を受け入れ可能なように、設計されている点である。従って、溶接ワイヤの変更の際、ワイヤ搬送のために、必要で構造的な構成部分の置き換えは不必要になり、これにより使用者による搬送操作を省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】溶接ユニットまたは溶接装置の概略図である。
【図2】本発明に係る溶接装置の概略図である。
【図3】溶射アーク溶接および冷間金属トランスファー溶接プロセスについてのパワー、電圧および移動のグラフをそれぞれ示している。
【図4】パルス溶接および冷間金属トランスファー溶接プロセスについてのパワー、電圧および移動のグラフをそれぞれ示している。
【図5】パルス溶接および冷間金属トランスファー溶接プロセスについてのパワー、電圧および移動のグラフをそれぞれ示している。
【図6】本発明に係る溶接装置の概略図である。
【図7】2つの冷間金属トランスファー溶接プロセスについてのパワー、電圧および移動のグラフを示している。
【図8】2つの時間オフセット冷間金属トランスファー溶接プロセスについてのパワー、電圧および移動のグラフを示している。
【図9】本発明に係る他の溶接装置の概略図である。
【図10】本発明に係る他の溶接装置の概略図である。
【図11】本発明に係る他の溶接装置の概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースパック(hose pack)を介して接続可能な溶接トーチユニットを持つ溶接装置を含む溶接ユニットに関し、溶接装置には、少なくとも1つの制御装置と、溶接電流源と、任意であるワイヤ供給ユニットとが配置され、溶接トーチユニットは、少なくとも2つの独立した別々の溶接プロセスを実行するように、少なくとも2つの別個の溶接トーチで形成されている。
【0002】
さらに本発明は、少なくとも2つの別個の溶接プロセスを組合せた溶接方法に関する。
用語「溶接トーチ」は、レーザトーチなどを含む従来の種々の溶接トーチを網羅するものである。
【背景技術】
【0003】
知られた溶接方法では、溶接装置に設けられた入力装置及び/又は出力装置を経由して任意のパラメータが調整可能である。こうして適切な溶接プロセス、例えば、パルス溶接プロセス、溶射アーク(spray-arc)溶接プロセス、またはショートアーク(short-arc)溶接プロセス等、が個々のパラメータを調整しながら選択される。さらに、電気アークを点火するための適切な点火プロセスを選択することが頻繁に可能である。溶接手順を開始した後、調整した溶接プロセス、例えば、パルス溶接プロセスが、調整した点火プロセスによる電気アークの点火の際に実行される。溶接手順中は、種々のパラメータ、例えば、溶接電流、ワイヤ前進速度などが、個別に選択された溶接プロセスごとに変化することが可能である。しかしながら、他の溶接プロセス、例えば、溶射アーク溶接プロセスへの切換えは可能でない。そのため、実行中の溶接プロセス、例えば、パルス溶接プロセスは、他の溶接プロセス、例えば、溶射アーク(spray-arc)溶接プロセスを実施するために、中断しなければならず、溶接装置では適切で新しい選択および調整を伴う。
【0004】
欧州公報1084789A2では、保護ガスハイブリッド溶接のための方法および装置が記載され、レーザジェットおよび電気アークが保護ガスの下で少なくとも2つの電極によって発生する。これは、溶接プロセスに影響を与えるチャンスを増やし、特に、自動化のオプションの増加をもたらす。その理由は、溶接プロセスは、電極数の増加によってより影響を受け易くなり、選択的な熱入力を可能にするからである。
【0005】
国際公開WO2001/38038A2は、レーザ溶接プロセスと電気アーク溶接プロセスを組み合せたレーザハイブリッド溶接トーチに関するもので、溶接品質および溶接プロセスの安定性を改善している。そこでは、相互に個々のアセンブリの特別な配置が本質的なものであり、レーザジェットによって生成される溶融バス(melt bath)が、電気アーク溶接プロセスによって生成された溶融バスとともに接合した溶融バスに合体して、溶接プロセスの配置の安定性および侵入深さを増加させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ワークピースへの溶接金属の入力および、熱またはエネルギーの入力が、できる限り互いに独立して調整可能であるようにした、溶接ユニットおよび溶接方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る目的は、第1溶接トーチは、ある溶接プロセスを実行するように構成され、少なくとも第2溶接トーチは、溶接ワイヤの前後移動による冷間金属トランスファー(cold-metal transfer)溶接プロセスを実行するように構成され、少なくとも2つの溶接トーチによって実行される溶接プロセスを同期させるための装置が設けられた、上記の溶接ユニットにより達成される。冷間金属トランスファー溶接プロセスを用いることによって、ワークピースまたはシート金属へ導入される追加の熱がほとんど無くなるように、エネルギーおよび熱の入力を低減できる。さらに、ギャップ補完(bridging)能力が実質的に増強される。少なくとも2つの溶接プロセスの時間同期により、溶接プロセスは、相互に最適となるように調整可能となり、ワークピースへの熱またはエネルギーの入力の最適な調整が可能になる。さらに、異なる溶接ワイヤ材料および溶接ワイヤ直径が使用可能になるとともに、ワークピースへの材料入力の制御も可能になる。
【0008】
さらに、有利な構成は、請求項2〜13に記載されており、これらによる利点は、明細書および前述の請求項1から導出することができる。
【0009】
本発明の目的は、少なくとも1つの溶接プロセスが冷間金属トランスファー溶接プロセスからなり、消費される溶接ワイヤが前後に移動し、少なくとも2つの溶接プロセスが時間で同期するようにした、上記の溶接方法により達成される。
【0010】
更なる特徴は、請求項15〜22に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明について、添付図面を用いてより詳細に説明する。
【0012】
図1は、種々のプロセスまたは方法、例えば、MIG/MAG溶接、WIG/TIG溶接、電気溶接法、ダブルワイヤ/タンデム溶接法、プラズマ法または半田法など、のための溶接装置1または溶接ユニットを示す。
【0013】
溶接装置1は、パワーエレメント3を含む電源2と、制御装置4と、パワーエレメント3および制御装置4にそれぞれ関連したスイッチ部材5とを備える。
【0014】
スイッチ部材5および制御装置4は、ガス8、特に、例えば、二酸化炭素、ヘリウムまたはアルゴンなどの保護ガスのための供給ライン7上で、ガス貯蔵器9と溶接トーチ10やトーチの間に配置された制御バルブ6に接続されている。
【0015】
さらに、MIG/MAG溶接で通常用いられるワイヤ供給器11は、制御装置4によって制御可能であり、追加の材料または溶接ワイヤ13は、供給ドラム14またはワイヤコイルから供給ライン12を介して溶接トーチ10の領域に供給される。当然ながら、付属品装置として図1と同じものを設計するのではなく、先行技術から知られているように、ワイヤ供給器11を溶接装置1、特に、その基本ハウジング内に一体化することも可能である。
【0016】
ワイヤ供給器11は、溶接ワイヤ13や充填金属を溶接トーチ10の外側にあるプロセス箇所へ供給することも可能であり、WIG/TIG溶接の場合は一般的であるように、その端部に非溶(non-consumable)電極を溶接トーチ10の内部に配置することが好ましい。
【0017】
電気アーク15、特に、動作の電気アークを電極とワークピース16との間に生成するために必要な電力は、電源2のパワーエレメント3から溶接ライン17を経由して溶接トーチ10、特に、電極へ供給される。溶接すべきワークピース16は、幾つかの部品からなり、同様にして、溶接装置1、特に、電源2に更なる溶接ライン18を介して接続されている。こうしてプロセス用の電力回路が、電気アーク15やプラズマジェットを生成するのを可能にする。
【0018】
溶接トーチ10の冷却のために、溶接トーチ10は、冷却回路19により途中の流量コントロール20を介して流体貯蔵器、特に、水貯蔵器21に接続可能であり、これにより溶接トーチ10が動作に入る際に、冷却回路19、特に、水貯蔵器21に貯まった流体用の流体ポンプが始動して、溶接トーチ10の冷却を行う。
【0019】
溶接装置1は、入力及び/又は出力装置22をさらに備え、これにより溶接装置1についての最も異なる溶接パラメータ、動作モードまたは溶接プログラムがそれぞれ設定され呼び出される。こうして入力及び/又は出力装置22を介して設定された溶接パラメータ、動作モードまたは溶接プログラムは、制御装置4へ送信され、続いて、溶接ユニットまたは溶接装置1の個々の構成部分を制御し、及び/又は制御用に個別に設定される数値を予め決定する。
【0020】
図示した例示の実施形態において、溶接トーチ10は、さらに、ホースパック23を介して溶接装置1または溶接ユニットに接続される。ホースパック23は、溶接装置1から溶接トーチ10への個々のラインを収納している。ホースパック23は、結合装置24を介して溶接トーチ10に接続され、一方、ホースパック23内に配置された個々のラインは、接続ソケットまたはプラグイン接続を介して溶接装置1の個々の接続部に接続される。ホースパック23の張力を適切に軽減するために、ホースパック23は、張力軽減手段25を介してハウジング26、特に、溶接装置1の基本ハウジングに接続されている。当然ながら、溶接装置1への接続のために結合装置24を使用することも可能である。
【0021】
例えば、WIG装置やMIG/MAG装置、プラズマ装置などの種々の溶接方法または溶接装置1について、前述した構成部分の全部を使用し、採用する必要がないことは言うまでもない。例えば、溶接トーチ10を空冷の溶接トーチ10として構成することも可能である。
【0022】
図2〜図11は、ある溶接プロセスと冷間金属トランスファー溶接プロセスとの組合せを記載した例示の実施形態を示している。図2〜図5に係る例示的実施形態では、MIG/MAG溶接プロセスを、冷間金属トランスファー溶接プロセスと組み合わせている。図示した溶接ユニット27は、溶接トーチユニット29を持つ溶接装置1を含み、溶接トーチユニット29は2つのホースパック23,28を介してこれに接続可能である。溶接トーチユニット29は、少なくとも2つの独立した溶接トーチ10,35で構成され、これにより各溶接トーチ10,35は、個々のホースパック23,28を介して溶接装置1に接続され、溶接プロセスに必要な構成部分の全て、例えば、ガス8、エネルギー供給、冷却回路19などを、溶接トーチユニット29に提供することができる。図1を参照して記載したように、溶接装置1は、制御装置4と、溶接電流源2と、ワイヤ搬送装置30とを収容しており、これらは図2において全てを図示していない。図示した例におけるワイヤ搬送装置30は、溶接装置1内に一体化されており、そして溶接ワイヤ13,32のための2つの供給ドラム14,31を備える。溶接ワイヤ13,32は、個々の駆動ユニット33,34によって溶接トーチユニット29の溶接トーチ10,35へ搬送される。
【0023】
溶接トーチユニット29の各溶接トーチ10,35は、駆動ユニット36(破線で概略的に図示)をさらに備えてもよい。さらに、図示した例示的実施形態における溶接トーチユニット29は、溶接トーチ10,35のための共通のガスノズル37を備える。溶接装置1において、溶接トーチユニット29へエネルギーを供給するために、ただ1つの電源2が設けられる。この電源2は、個別に動作する溶接トーチ10,35に交互に接続される。当然ながら、溶接装置1に配置された2つの別個に制御可能な電源2,38を介して、溶接トーチユニット29に配置された2つの溶接トーチ10,35を制御することも可能である。
【0024】
例えば、ワイヤ搬送、電力供給、溶接トーチ構造、溶接装置の設定など、個々のアセンブリまたは構成部分の機能についての説明は、先行技術から既に知られているため、省略している。
【0025】
基本的には、図示した種々の実施形態において、第1溶接トーチ10は、任意の溶接プロセスを実施するように設計され、第2溶接トーチ35は、冷間金属トランスファー溶接プロセスを実施するように設計されている点に留意すべきである。好ましい手法は、第1溶接トーチ10は、図2〜図5に係る例示的実施形態でのMIG/MAGトーチで形成される。これらの場合、第1溶接トーチ10は、溶接方向に沿って第2溶接トーチ35よりも先行している。当然ながら、第2溶接トーチ35を第1溶接トーチ10の上流側に配置したり、あるいは溶接の長手方向において溶接トーチ10,35を互いに側方へずらしたりすることも可能である。
【0026】
本構成の利点は、例えば、異なるワイヤ材料、異なるワイヤ直径を用いて、2つの異なる溶接プロセスが実施可能であることである。こうしてルート(root)溶接の際に、例えば、強化されたギャップ補完(bridging)能力が確保され、例えば、少なくとも2つの溶接ワイヤ13を側方へずらすことによって得られる。
【0027】
本発明に係る構成において、溶接トーチユニット29は、2つの別々の溶接トーチ10,35、あるいは構造ユニットに配置された、溶接トーチ10,35についての電気的に別々の構成部分を備え、2つの独立して動作する溶接方法の使用を可能にしている。こうしてMAG溶接プロセスは、図3〜図5にパワー、電圧およびワイヤ移動のグラフを用いて示したように、例えば、冷間金属トランスファー溶接プロセスと組み合わせられる。本発明に係る組合せ溶接方法は、例えば、電気アーク15の点火についてのリフトアーク(lift arc)原理を用いている(点火段階39)。これは先行技術から知られた方法であるため、詳細には記載していない。溶接ワイヤ13,32がワークピース16に接触するまで前方へ移動し、続いて溶接ワイヤの移動が反転して、ワークピース16から所定の距離40まで溶接ワイヤ13,32を後方へ搬送させて、そして再び溶接ワイヤ移動が反転するといった点を指摘するに留める。短絡の時から溶接ワイヤ13,32に所定の電流強度(電流強度は、溶接ワイヤ13,32の初期溶融や溶融開放を防止するように選択される)で電力供給することによって、溶接ワイヤ13,32の後方移動およびリフティングの際に、2つの溶接ワイヤ13,32について電気アーク15の点火が互いに独立に発生するようになる。
【0028】
グラフ41,42,43は、MAG溶接プロセスを図示し、グラフ44,45,46は、冷間金属トランスファー溶接プロセスを図示している。
【0029】
MAG溶接プロセスにおいて、溶接電流Iは、点火段階39の終了後、時間47において、定められたように増加して、溶接ワイヤ13は、ワークピース16の方向に搬送される。連続して印加された溶接電流Iにより、溶接ワイヤの端部で溶滴(droplet)48が形成され、これは、溶接電流Iの強度の関数として所定の期間後に溶接ワイヤ13から切り離されるようになり、こうして溶滴連鎖49を形成する。この手順は、周期的に繰り返される。そして、溶接ワイヤ13は、ワークピース16の方向(矢印50)にのみ移動して、冷間金属トランスファー溶接プロセスにおいて、グラフ46から判るように、溶接ワイヤ13の前後移動が生ずる。
【0030】
冷間金属トランスファー溶接プロセスは、グラフ46での時間47で示すように、スタート位置、即ち、ワークピース16からの距離40から、溶接ワイヤ32がワークピース16の方向(矢印50)に移動を行うことを特徴としている。そして、溶接ワイヤ32は、ワークピース16に接触するまで(時間51)、ワークピース16に向けて搬送され、その後、短絡の形成となり、ワイヤ搬送が逆転して、溶接ワイヤ32は、所定の距離40、即ち、好ましくは、スタート位置に戻るまでワークピース16から後方へと搬送される。溶滴の形成または溶接ワイヤ端部の初期溶融を確保するため、冷間金属トランスファー溶接プロセス中は、ワークピース16の方向(矢印50)への溶接ワイヤ32の前方移動中での溶接電流Iが変化し、特に、グラフ44,45から判るように、溶接ワイヤ32の初期溶融無しで電気アーク15を維持するように規定されたベース電流52に対して上昇する。よって、電流Iは、前方移動時に、溶接ワイヤ32の初期溶融、即ち、溶滴48が生ずるように制御される。溶接ワイヤ32が溶融バス(bath)(不図示)に浸漬され、続いて後方へ移動することによって、溶滴48または初期溶融した材料が溶接ワイヤ32から離脱するようになる。これに関して、当然ながら、溶滴の離脱を促進するために、溶接電流Iの瞬間的な増加を行うことも可能である。さらに、例えば、冷間金属トランスファー溶接プロセスのより迅速な実施を確保するために、冷間金属トランスファー溶接プロセス中のワイヤ搬送速度を変化させ、特に、増加させることも可能である。
【0031】
第1溶接トーチ10のMIG/MAG溶接プロセスにおいて、他の知られた溶接方法、例えば、パルス法、短絡法などを調整することも可能である。例えば、図4と図5に示したグラフは、冷間金属トランスファー溶接プロセスと組み合わせたパルス溶接プロセスを図示している。最初のグラフ53は、パルス溶接プロセスの電流−時間グラフを示し、グラフ54は、パルス溶接プロセスの電圧−時間グラフを示し、グラフ55は、パルス溶接プロセスのワイヤ移動グラフを示し、グラフ56は、冷間金属トランスファー溶接プロセスの電流−時間グラフを示し、グラフ57は、冷間金属トランスファー溶接プロセスの電圧−時間グラフを示し、グラフ58は、冷間金属トランスファー溶接プロセスのワイヤ移動グラフを示している。
【0032】
パルス溶接プロセスについては、先行技術から既によく知られているため、詳細には説明していない。パルス溶接プロセスでは、点火段階39の後、例えば、リフトアーク原理に従って再び実施された後、時間59において電流パルスの印加により、溶滴48が溶接ワイヤ13に形成され(パルス電流段階60)、そして時間61で溶接ワイヤ端部から離脱する点を指摘するに留める。その後、電流Iは、所定のベース電流52まで低下する(ベース電流段階62)。パルス電流段階60およびベース電流段階62を周期的に適用することによって、溶滴48はパルス電流段階60ごとに溶接ワイヤ13から離脱し、ワークピース16への材料トランスファーを確保できる。
【0033】
この例示的実施形態において、パルス溶接プロセスは、冷間金属トランスファー溶接プロセスと組み合わせており、冷間金属トランスファー溶接プロセスについては、図2〜図5を参照しながら既に説明しているため、詳細には説明しない。本発明に係る組合せにより、例えば、1つだけの電源2の使用が可能になり、これは、個別に動作する溶接トーチ10,35に交互に接続される。当然ながら、2つの独立して動作する電源2,38を使用することによって、溶接プロセスを制御することも可能である。こうして溶接プロセスは、相互に同期することが可能であり、例えば、一定時間間隔(isochronic)の溶滴の離脱が可能になる。
【0034】
図4に示した例示的実施形態では、パルス溶接プロセスでの溶滴離脱が冷間金属トランスファー溶接プロセスでの溶滴離脱と同期して発生するように、制御を行うことが本質的である。溶滴48がパルス溶接プロセスで離脱し、これと同時に、溶滴48が冷間金属トランスファー溶接プロセスで離脱している(時間61を参照)。もっとも、個々の溶接プロセスの溶滴離脱が同時に発生することは必ずしも必要でない。当然ながら、冷間金属トランスファー溶接プロセスの溶滴離脱は、パルス溶接プロセスに対して時間的にずれるように、特に、図5から判るように、パルス溶接プロセスのベース電流段階62の期間に発生するように、制御することができる。
【0035】
基本的には、パルス溶接プロセスと冷間金属トランスファー溶接プロセスの組合せについて図示した例示的実施形態では、第2溶接トーチ35により実施される冷間金属トランスファー溶接プロセスは、溶接方向で眺めて第1溶接トーチ10の後に続いている。実質的な利点は、冷間金属トランスファー溶接プロセス中はワークピース16に導入される熱およびエネルギーが実質的により少ない点にあり、熱入力のわずかな増加で、より多くの溶接材料がMIG/MAG溶接プロセスと冷間金属トランスファー溶接プロセスの組合せによって得られるようになる。ただ追加すべきことは、溶接トーチユニット29に配置された溶接トーチ10,35へエネルギーを供給するために、2つの別々の制御可能な電流源を溶接装置1に配置する点である。このことは、溶接トーチ10,35が、個々に動作する溶接トーチ10,35と交互に接続される単一の電流源によって制御可能でもあるため、必ずしも必要ではない。
【0036】
ワークピース16への熱入力を制御、または低減できるようにするため、第1溶接トーチ10も冷間金属トランスファー溶接プロセスを実施できるように構成することも可能である。ただ追加すべきことは、冷間金属トランスファー溶接プロセスの実施を可能にするため、図6に概略的に示しているように、各溶接トーチ10,35が、自分自身の駆動ユニット36を備えている点である。さらに、2つの冷間金属トランスファー溶接プロセスは相互に同期しており、即ち、溶接ワイヤ13からの溶滴離脱が、例えば、同時に発生したり(図7)、図8に概略的に示すように、溶滴離脱が時間的にずれていても構わない。
【0037】
冷間金属トランスファー溶接プロセスについては、前述した図2〜図5で広範に説明しているため、詳細に説明していない。指摘できることは、図7と図8に概略的に示すように、冷間金属トランスファー溶接プロセスは、点火段階39の後、例えば、リフトアーク原理に従って再び実施された後に開始する。ここで、グラフ63は、第1の冷間金属トランスファー溶接プロセスについての電圧−時間グラフ、グラフ64は電流−時間グラフ、グラフ65は移動グラフであり、一方、グラフ65,66,67は、同様に、第2の冷間金属トランスファー溶接プロセスについての電圧−時間グラフ、電流−時間グラフおよび移動グラフをそれぞれ示している。
【0038】
時間69において(点火段階39の終わり)、溶接電流Iは、有限の範囲で増加し、即ち、電流パルスが印加され、図7に係る2つの溶接プロセスのグラフから判るように、パルス電流段階60を形成している。一方、図8において、第2の冷間金属トランスファー溶接プロセスが時間的にずれるように開始しており、即ち、第1の冷間金属トランスファー溶接プロセスのパルス電流段階60だけ遅延している。パルス電流段階60の期間は、溶接ワイヤ13,32がワークピース16の方向(矢印50)に搬送され、印加される溶接電流の増加により、溶滴48がワイヤ上に形成される。溶接ワイヤ13,32は、時間70でワークピース16と接触するまでワークピース16の方向に搬送され、続いて短絡形成の後、スタート位置に戻るまで、即ち、距離40だけ後方へ再び移動する。溶滴離脱は、溶融バス(不図示)への浸漬によって行われる。図8において、遅延した第2の冷間金属トランスファー溶接プロセスにおいて時間70で溶接電流Iは増加し、これによりパルス電流段階60を開始している。
【0039】
時間70において、溶滴の形成または溶接ワイヤ13,32の初期溶融を防止するため、溶接電流Iはベース電流52まで低下する(ベース電流段階62)。第2の冷間金属トランスファー溶接プロセスでのベース電流段階62は、図8において遅延する方法で表したように、時間71で見えるように時間的にずれるようにして再び開始する。
【0040】
当然ながら、第1溶接トーチ10をWIG溶接トーチとして設計することも想定され、図9に概略的に示すように、WIG溶接プロセスは、冷間金属トランスファー溶接プロセスと組み合わされる。そして、WIG溶接プロセスの追加のエネルギー源により、例えば、増加した加熱と、これによるワークピース16の溶融を得ることが可能になり、一方、冷間金属トランスファー溶接プロセスによりほんの僅かの追加の熱入力が行われる。当然ながら、第1溶接トーチ10によって冷間金属トランスファー溶接プロセスを実施し、WIG溶接プロセスは第2溶接トーチ35によって実施することも可能であり、これにより、例えば、ワークピース16への侵入深さが減少するようになり、その結果、WIG溶接プロセスは溶接部を滑らかにして、溶接部の品質が向上する。
【0041】
この場合、非溶電極72、例えば、タングステン電極が、溶接トーチユニット29の第1溶接トーチ10にガスノズル37の領域に配置される。この例示的実施形態でのガスノズル37は分離しており、即ち、2つの独立した別々の溶接プロセス、即ち、WIG溶接プロセスと冷間金属トランスファー溶接プロセスのための2つの溶接トーチ10,35は、それぞれ自分自身のガスノズル37を有している。ただ1つの熱的かつ電気的に分離したガスノズル37が図示されている。このことは、例えば、別々の溶接ガス、別々のガス圧力を2つの独立した溶接プロセスについて使用できるという利点をもたらす。その結果、各溶接プロセスについて個々に最適な溶接ガスを用いるため、例えば、溶接部の品質が向上するようになる。溶接ワイヤ13、即ち、WIG溶接プロセスのための溶接金属が、溶接トーチ10に供給され、チューブ73を通って溶接トーチ10の電気アーク15へ搬送される。WIG溶接プロセスは、先行技術から知られた溶接プロセスであるため、ここでは詳細には説明していない。既に説明したように、冷間金属トランスファー溶接プロセスは、WIG溶接プロセスと組み合わせており、冷間金属トランスファー溶接プロセスについては、図2〜図5により既に説明しているため、詳細に説明していない。
【0042】
図10に係る例示的実施形態において、プラズマトーチにより形成される溶接プロセスが、冷間金属トランスファー溶接プロセスと組み合わせている。プラズマ溶接プロセスは、先行技術から周知であるため、プラズマ溶接プロセスについては詳細に説明していない。指摘できることは、プラズマ溶接プロセスでの電気アーク15が、HF点火によってガスノズル74中で点火されることである。電気アーク15は、ガスノズル74の内部で燃えており、高温でイオン化したプラズマジェット75がガスノズル74から出現している。点火段階39(不図示)の後、点火段階39と比べて減少した溶接電流が、電気アーク15を維持するために印加される。プラズマジェット75は、ワークピース16を溶融させる。そして、プラズマジェット75の中には、溶接ワイヤ13、即ち、溶接金属が、溶接トーチユニット29の溶接トーチ10に配置されたチューブ73を通って搬送される。これにより連続した溶滴の離脱が確保される。
【0043】
当然ながら、プラズマ溶接プロセスと冷間金属トランスファー溶接プロセスの組合せにおいて、図9においてWIG溶接プロセスと冷間金属トランスファー溶接プロセスの組合せについて既に説明したように、ガスノズル37を別々のガスノズル37として構成することも可能である。この例示的実施形態において、冷間金属トランスファー溶接プロセスは、プラズマ溶接プロセスと組み合わせている。冷間金属トランスファー溶接プロセスについては、図2〜図5により既に説明しているため、詳細に説明していない。
【0044】
当然、第1溶接トーチ10をレーザユニット76と置き換えることも可能であり、溶接トーチユニット29でのレーザユニット76は、冷間金属トランスファー溶接プロセスのための第2溶接トーチ35と組み合わせている。こうした変形例は、図11に図示している。当然ながら、レーザユニット76は、溶接トーチユニット29の外側に配置することも可能である。
【0045】
この構成は、レーザ77またはレーザ光学系を使用した場合、増加した溶接レートで、溶接部が実質的に減少するようになるという利点をもたらす。その理由は、レーザジェット78が、ワークピース16への所定の侵入深さを可能にし、後段に設けられる冷間金属トランスファー溶接プロセスが、用意された継ぎ目(seam)を充填するためである。従って、増強したギャップ補完能力が確保されるため、溶接部の低い精度の予備ワークが必要になるであろう。レーザユニット76は、この例示的実施形態では溶接トーチを構成しており、冷間金属トランスファー溶接プロセスと再び組み合わされる。
【0046】
説明した例示的実施形態に関して、ただ追加すべきことは、溶接トーチ10,35が、別々の溶接ワイヤおよび溶接ワイヤ直径を受け入れ可能なように、設計されている点である。従って、溶接ワイヤの変更の際、ワイヤ搬送のために、必要で構造的な構成部分の置き換えは不必要になり、これにより使用者による搬送操作を省略できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】溶接ユニットまたは溶接装置の概略図である。
【図2】本発明に係る溶接装置の概略図である。
【図3】溶射アーク溶接および冷間金属トランスファー溶接プロセスについてのパワー、電圧および移動のグラフをそれぞれ示している。
【図4】パルス溶接および冷間金属トランスファー溶接プロセスについてのパワー、電圧および移動のグラフをそれぞれ示している。
【図5】パルス溶接および冷間金属トランスファー溶接プロセスについてのパワー、電圧および移動のグラフをそれぞれ示している。
【図6】本発明に係る溶接装置の概略図である。
【図7】2つの冷間金属トランスファー溶接プロセスについてのパワー、電圧および移動のグラフを示している。
【図8】2つの時間オフセット冷間金属トランスファー溶接プロセスについてのパワー、電圧および移動のグラフを示している。
【図9】本発明に係る他の溶接装置の概略図である。
【図10】本発明に係る他の溶接装置の概略図である。
【図11】本発明に係る他の溶接装置の概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースパック(23,28)を介して接続可能な溶接トーチユニット(29)を持つ溶接装置(1)を備え、
溶接装置(1)には、少なくとも1つの制御装置(4)と、溶接電流源(2)と、任意であるワイヤ供給ユニット(3)とが配置され、
溶接トーチユニット(29)は、少なくとも2つの独立した別々の溶接プロセスを実行するように、少なくとも2つの別個の溶接トーチ(10,35)で形成され、
第1溶接トーチ(10)は、ある溶接プロセスを実行するように構成され、
少なくとも第2溶接トーチ(35)は、溶接ワイヤ(32)の前後移動による冷間金属トランスファー溶接プロセスを実行するように構成され、
少なくとも2つの溶接トーチ(10,35)によって実行される溶接プロセスを同期させるための装置が設けられたことを特徴とする溶接ユニット(27)。
【請求項2】
第1溶接トーチ(10)は、MIG/MAG溶接トーチで構成されることを特徴とする請求項1記載の溶接ユニット(27)。
【請求項3】
第1溶接トーチ(10)は、WIG溶接トーチで構成されることを特徴とする請求項1記載の溶接ユニット(27)。
【請求項4】
第1溶接トーチ(10)は、プラズマバーナーで構成されることを特徴とする請求項1記載の溶接ユニット(27)。
【請求項5】
第1溶接トーチ(10)は、冷間金属トランスファー溶接プロセスを実行するように設計されていることを特徴とする請求項1記載の溶接ユニット(27)。
【請求項6】
第1溶接トーチ(10)は、レーザユニット(76)で構成され、溶接トーチユニット(29)において、冷間金属トランスファー溶接プロセスのための第2溶接トーチ(35)と組み合わされていることを特徴とする請求項1記載の溶接ユニット(27)。
【請求項7】
第1溶接トーチ(10)は、溶接方向に沿って第2溶接トーチ(35)より先行していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項8】
溶接トーチユニット(29)にエネルギーを供給するために、2つの別個に制御可能な電流源(2,38)が溶接装置(1)に配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項9】
溶接トーチユニット(29)にエネルギーを供給するために、ただ1つの電流源(2)が溶接装置(1)に配置され、該電流源は、個々に動作する溶接トーチ(10,35)と交互に接続されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項10】
少なくとも2つの溶接トーチ(10,35)は、共通のガスノズル(37)を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項11】
溶接トーチユニット(29)の少なくとも2つの溶接トーチ(10,35)は、溶接部の長手方向、即ち、溶接方向において互いに側方にずれていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項12】
少なくとも2つの溶接トーチ(10,35)の溶接ワイヤ(13,32)は、異なる材料で構成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項13】
少なくとも2つの溶接トーチ(10,35)の溶接ワイヤ(13,32)は、異なる直径を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項14】
少なくとも2つの別個の溶接プロセスを組み合せる溶接方法であって、
少なくとも1つの溶接プロセスは、冷間金属トランスファー溶接プロセスであり、
消費される溶接ワイヤが前後に移動して、少なくとも2つの溶接プロセスが時間で同期していることを特徴とする溶接方法。
【請求項15】
溶接プロセスは、MIG/MAG溶接プロセスで構成されることを特徴とする請求項14記載の溶接方法。
【請求項16】
溶接プロセスは、WIG溶接プロセスで構成されることを特徴とする請求項14記載の溶接方法。
【請求項17】
溶接プロセスは、プラズマ溶接プロセスで構成されることを特徴とする請求項14記載の溶接方法。
【請求項18】
少なくとも2つの溶接プロセスは、冷間金属トランスファー溶接プロセスで構成されることを特徴とする請求項14記載の溶接方法。
【請求項19】
溶接プロセスは、レーザ溶接プロセスで構成されることを特徴とする請求項14記載の溶接方法。
【請求項20】
冷間金属トランスファー溶接プロセスは、溶接方向において他の溶接プロセスに続いていることを特徴とする請求項14〜19のいずれかに記載の溶接方法。
【請求項21】
消費される溶接ワイヤを用いた少なくとも2つの溶接プロセスは、少なくとも2つの溶接プロセスの溶接ワイヤからの溶滴の離脱が同時に発生するように、時間で同期していることを特徴とする請求項14〜20のいずれかに記載の溶接方法。
【請求項22】
溶融する溶接ワイヤを用いた少なくとも2つの溶接プロセスは、一方の溶接プロセスの溶接ワイヤからの溶滴の離脱が他方の溶接プロセスの溶接ワイヤからの溶滴の離脱に対して時間的にずれるように、時間で同期していることを特徴とする請求項14〜20のいずれかに記載の溶接方法。
【請求項1】
ホースパック(23,28)を介して接続可能な溶接トーチユニット(29)を持つ溶接装置(1)を備え、
溶接装置(1)には、少なくとも1つの制御装置(4)と、溶接電流源(2)と、任意であるワイヤ供給ユニット(3)とが配置され、
溶接トーチユニット(29)は、少なくとも2つの独立した別々の溶接プロセスを実行するように、少なくとも2つの別個の溶接トーチ(10,35)で形成され、
第1溶接トーチ(10)は、ある溶接プロセスを実行するように構成され、
少なくとも第2溶接トーチ(35)は、溶接ワイヤ(32)の前後移動による冷間金属トランスファー溶接プロセスを実行するように構成され、
少なくとも2つの溶接トーチ(10,35)によって実行される溶接プロセスを同期させるための装置が設けられたことを特徴とする溶接ユニット(27)。
【請求項2】
第1溶接トーチ(10)は、MIG/MAG溶接トーチで構成されることを特徴とする請求項1記載の溶接ユニット(27)。
【請求項3】
第1溶接トーチ(10)は、WIG溶接トーチで構成されることを特徴とする請求項1記載の溶接ユニット(27)。
【請求項4】
第1溶接トーチ(10)は、プラズマバーナーで構成されることを特徴とする請求項1記載の溶接ユニット(27)。
【請求項5】
第1溶接トーチ(10)は、冷間金属トランスファー溶接プロセスを実行するように設計されていることを特徴とする請求項1記載の溶接ユニット(27)。
【請求項6】
第1溶接トーチ(10)は、レーザユニット(76)で構成され、溶接トーチユニット(29)において、冷間金属トランスファー溶接プロセスのための第2溶接トーチ(35)と組み合わされていることを特徴とする請求項1記載の溶接ユニット(27)。
【請求項7】
第1溶接トーチ(10)は、溶接方向に沿って第2溶接トーチ(35)より先行していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項8】
溶接トーチユニット(29)にエネルギーを供給するために、2つの別個に制御可能な電流源(2,38)が溶接装置(1)に配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項9】
溶接トーチユニット(29)にエネルギーを供給するために、ただ1つの電流源(2)が溶接装置(1)に配置され、該電流源は、個々に動作する溶接トーチ(10,35)と交互に接続されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項10】
少なくとも2つの溶接トーチ(10,35)は、共通のガスノズル(37)を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項11】
溶接トーチユニット(29)の少なくとも2つの溶接トーチ(10,35)は、溶接部の長手方向、即ち、溶接方向において互いに側方にずれていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項12】
少なくとも2つの溶接トーチ(10,35)の溶接ワイヤ(13,32)は、異なる材料で構成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項13】
少なくとも2つの溶接トーチ(10,35)の溶接ワイヤ(13,32)は、異なる直径を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の溶接ユニット(27)。
【請求項14】
少なくとも2つの別個の溶接プロセスを組み合せる溶接方法であって、
少なくとも1つの溶接プロセスは、冷間金属トランスファー溶接プロセスであり、
消費される溶接ワイヤが前後に移動して、少なくとも2つの溶接プロセスが時間で同期していることを特徴とする溶接方法。
【請求項15】
溶接プロセスは、MIG/MAG溶接プロセスで構成されることを特徴とする請求項14記載の溶接方法。
【請求項16】
溶接プロセスは、WIG溶接プロセスで構成されることを特徴とする請求項14記載の溶接方法。
【請求項17】
溶接プロセスは、プラズマ溶接プロセスで構成されることを特徴とする請求項14記載の溶接方法。
【請求項18】
少なくとも2つの溶接プロセスは、冷間金属トランスファー溶接プロセスで構成されることを特徴とする請求項14記載の溶接方法。
【請求項19】
溶接プロセスは、レーザ溶接プロセスで構成されることを特徴とする請求項14記載の溶接方法。
【請求項20】
冷間金属トランスファー溶接プロセスは、溶接方向において他の溶接プロセスに続いていることを特徴とする請求項14〜19のいずれかに記載の溶接方法。
【請求項21】
消費される溶接ワイヤを用いた少なくとも2つの溶接プロセスは、少なくとも2つの溶接プロセスの溶接ワイヤからの溶滴の離脱が同時に発生するように、時間で同期していることを特徴とする請求項14〜20のいずれかに記載の溶接方法。
【請求項22】
溶融する溶接ワイヤを用いた少なくとも2つの溶接プロセスは、一方の溶接プロセスの溶接ワイヤからの溶滴の離脱が他方の溶接プロセスの溶接ワイヤからの溶滴の離脱に対して時間的にずれるように、時間で同期していることを特徴とする請求項14〜20のいずれかに記載の溶接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−513779(P2007−513779A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544164(P2006−544164)
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/AT2004/000439
【国際公開番号】WO2005/056228
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(504380611)フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (65)
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月14日(2004.12.14)
【国際出願番号】PCT/AT2004/000439
【国際公開番号】WO2005/056228
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(504380611)フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (65)
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
【Fターム(参考)】
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