説明

溶接品質検査方法

【課題】 記録媒体カートリッジの溶接品質検査装置において、溶接品質の検査を効率良く行って記録媒体カートリッジの生産効率を高めるようにする。
【解決手段】 溶接前に、上下シェルハーフ3,4間の位置ずれを測定手段50で測定し、この測定により得られた溶接前測定量を比較手段60が予め定められた溶接前基準量と比較する。判定手段65は、溶接前測定量が溶接前基準量より大きい場合に上下シェルハーフの保持を不良と判定して溶接が中止され、溶接前測定量が予め定められた溶接前基準量以下の場合に上下シェルハーフの保持を良と判定して溶接が実施される。溶接後に、再び測定手段50が位置ずれの測定を行って、比較手段60が、この測定により得られた溶接後測定量を予め定められた溶接後基準量と比較し、判定手段65が溶接後測定量が溶接後基準量より大きい場合に溶接を不良と判定し、溶接後測定量が溶接後基準量以下の場合に溶接を良と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶接品質検査方法に関し、詳しくは、平板状の記録媒体を回転自在に収容する記録媒体カートリッジの上シェルハーフと下シェルハーフとが溶接され接合されるときの溶接品質を検査する溶接品質検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁気記録媒体を収容した記録媒体カートリッジの一例である「clik!(登録商標)」と呼ばれる超小型の記録媒体カートリッジが、デジタルカメラ等のモバイル機器において使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
記録媒体カートリッジは、図8の斜視図、図9(a)の平面図、および図9(b)の裏面図に示すように、ドライブ装置に押込み装填するときに指を当てる押込み部2aを含む、スタビライザと呼ばれる樹脂製のフレーム2と、このフレーム2に嵌合された金属薄板(厚さ0.3mmのステンレス鋼板)からなる平坦な面を有する上シェルハーフ3および下シェルハーフ4とによって構成されたハウジングとを有し、このハウジング内に40MBの記憶容量を有する直径1.8インチ(45.7mm)の磁気記録媒体5を回転自在に収容している。なお、磁気記録媒体5の中央部には、中心孔10aを備えたハブ(センタコア)10が固着されている。
【0004】
この記録媒体カートリッジ1は、幅53mm、奥行き85mm、厚さ5mmの外寸を有するTYPEII PCカード型のドライブ装置(図略)が備えているスロットに挿入形式でローディングされるように構成され、そのハウジングには、上記ドライブ装置が備えている記録再生用磁気ヘッドを磁気記録媒体5の表面にアクセスさせるためのV字状の開口6が形成され、さらに、ハウジングと磁気記録媒体5との間には、上記開口6を回転式に開閉するための、開口7aを備えたロータリーシャッタ7が介装されている。このロータリーシャッタ7は、図示しないバネ部材によって閉方向に付勢され、かつ上シェルハーフ3に取り付けられている図示しないロック部材により閉位置にロックされるように構成されている。
【0005】
なお、図8および図9(a),(b)は、ロータリーシャッタ7の開口7aがハウジング内に潜入して、ロータリーシャッタ7がハウジングの開口6を閉じている状態、すなわち閉位置にある状態を示している。ロータリーシャッタ7は、周壁部において互いに嵌合されたアルミニウム薄板製の上下シャッターハーフ7U,7Dからなり、上シャッターハーフ7Uは、上シェルハーフ3の下面から内方へ突出する小径の円筒体によって回転可能に軸支されている。さらに、下シェルハーフ4には、ロータリーシャッタ7と同心的な円弧状開口4bが形成され、下シャッターハーフ7Dには、上記円弧状開口4bから突出しかつこの円弧状開口4bに沿って移動してロータリーシャッタ7を開閉するシャッターノブ7bが固設されている。
【0006】
上シェルハーフ3と下シェルハーフ4とは接合され一体化されている。上シェルハーフ3の周壁3Sのエッジと下シェルハーフ4の周壁4Sのエッジとを互いに突き合わせた境界線に沿って、レーザービームを用いたスポット溶接を13箇所W〜W13に施すことにより上下シェルハーフ3,4が接合されている。
【特許文献1】米国特許第6,133,544号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記記録媒体カートリッジの上下シェルハーフの溶接の品質検査は、上記溶接が終了した後工程、すなわち記録媒体カートリッジを溶接工程の段取りから外して次の工程に投入した後に行っており、この溶接の品質検査を効率良く行いたいという要請がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、記録媒体カートリッジの溶接品質の検査を効率良く行い、これにより、記録媒体カートリッジの生産効率を高めることができる溶接品質検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の溶接品質検査方法は、平板状の記録媒体を回転自在に収容する記録媒体カートリッジを構成する上シェルハーフの周壁と下シェルハーフの周壁とが突き合わされて溶接され接合されるときの溶接品質を検査する溶接品質検査方法であって、溶接が可能となるように上シェルハーフの周壁と下シェルハーフの周壁とが突き合わされて上下シェルハーフが保持された状態において、溶接が行われる前に、上下シェルハーフが突き合わされる方向に対して直交する方向への上下シェルハーフ間の位置ずれを測定し、この測定により得られた溶接前測定量を予め定められた溶接前基準量と比較して前記溶接前測定量が前記溶接前基準量より大きい場合に上下シェルハーフの保持を不良と判定して溶接が中止され、溶接前測定量が前記溶接前基準量以下の場合に上下シェルハーフの保持を良と判定して溶接が実施され、溶接が行われた後に、前記溶接が行われる前と同様の上下シェルハーフ間の位置ずれを測定し、この測定により得られた溶接後測定量を予め定められた溶接後基準量と比較して前記溶接後測定量が前記溶接後基準量より大きい場合に溶接を不良と判定し、前記溶接後測定量が前記溶接後基準量以下の場合に溶接を良と判定することを特徴とするものである。
【0010】
前記溶接前後に行われる上下シェルハーフ間の位置ずれの測定は、1方向に延びるライン光を上シェルハーフの周壁と下シェルハーフの周壁とに亘る領域に照射し、ライン光が照射された前記両周壁に亘る線状の領域をライン光の伝播面に対して交わる方向から撮像し、この撮像によって得られた画像が示す、前記ライン光が照射された上シェルハーフの周壁上の線状の領域の位置と下シェルハーフの周壁上の線状の領域の位置との差に基づいて上下シェルハーフ間の位置ずれを得るように行うことができる。
【0011】
本発明の第2の溶接品質検査方法は、平板状の記録媒体を回転自在に収容する記録媒体カートリッジを構成する上シェルハーフの周壁と下シェルハーフの周壁とが突き合わされて溶接され接合されるときの溶接品質を検査する溶接品質検査方法であって、上下シェルハーフの周壁が突き合わされる方向における間隔変動量を測定し、前記測定によって得られた間隔変動量と予め定められた基準間隔変動量範囲とを比較し、間隔変動量が、基準間隔変動量範囲外の場合に前記溶接を不良と判定し、間隔変動量が、基準間隔変動量範囲以内の場合に前記溶接を良と判定することを特徴とするものである。
【0012】
前記間隔変動量は、上シェルハーフ中の溶接が行われる領域の近傍で、かつ、この溶接によって変形しない領域と、下シェルハーフ中の溶接が行われる領域の近傍で、かつ、この溶接によって変形しない領域との、上下シェルハーフの周壁が突き合わされる方向における間隔の変動量である。例えば、この間隔変動量として、上シェルハーフの上面と下シェルハーフの下面との間隔の変動量等を採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の溶接品質検査方法によれば、溶接が可能となるように上シェルハーフの周壁と下シェルハーフの周壁とが突き合わされて上下シェルハーフが保持された状態において、溶接が行われる前に、上下シェルハーフが突き合わされる方向に対して直交する方向への上下シェルハーフ間の位置ずれを測定し、上記測定により得られた溶接前測定量を予め定められた溶接前基準量と比較して上記溶接前測定量が上記溶接前基準量より大きい場合に上下シェルハーフの保持を不良と判定して溶接が中止され、上記溶接前測定量が上記溶接前基準量以下の場合に上下シェルハーフの保持を良と判定して前記溶接が実施され、溶接が行われた後に、この溶接が行われる前と同様の前記上下シェルハーフ間の位置ずれの測定を行って、この測定により得られた溶接後測定量を予め定められた溶接後基準量と比較して上記溶接後測定量が上記溶接後基準量より大きい場合に上記溶接を不良と判定し、上記溶接後測定量が上記溶接後基準量以下の場合に上記溶接を良と判定するようにしたので、記録媒体カートリッジの溶接品質の検査を溶接工程内で行うことができ、これにより、溶接品質の検査を効率良く行うことができるので、記録媒体カートリッジの生産効率を高めることができる。
【0014】
また、溶接の前後に行われる上下シェルハーフ間の位置ずれの測定を、1方向に延びるライン光を上シェルハーフの周壁と前記下シェルハーフの周壁とに亘る領域に照射し、ライン光が照射された両周壁に亘る線状の領域をライン光の伝播面に対して交わる方向から撮像し、この撮像によって得られた画像が示す、上記ライン光が照射された上シェルハーフの周壁上の線状の領域の位置と下シェルハーフの周壁上の線状の領域の位置との差に基づいて上記上下シェルハーフ間の位置ずれを得るものとすれば、より確実に上記溶接品質の検査を行うことができる。
【0015】
本発明の第2の溶接品質検査方法によれば、記録媒体カートリッジを構成する上シェルハーフの周壁と下シェルハーフの周壁とが突き合わされて溶接され接合されるときの、上下シェルハーフ間の上記周壁が突き合わされる方向における間隔変動量を測定し、上記測定によって得られた間隔変動量と予め定められた基準間隔変動量範囲とを比較し、間隔変動量が、基準間隔変動量範囲外の場合に溶接を不良と判定し、間隔変動量が、基準間隔変動量範囲以内の場合に溶接を良と判定するようにしたので、記録媒体カートリッジの溶接品質検査を溶接工程内で行うことができ、これにより、溶接品質の検査を効率良く行うことができるので、記録媒体カートリッジの生産効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の溶接品質検査方法を実施するための溶接品質検査装置の概略構成を示す斜視図、図2は溶接前の上下シェルハーフの相対的な位置関係を示す図、図3は溶接後の上下シェルハーフの相対的な位置関係を示す図、図4(a)は溶接前に撮像された上下シェルハーフの相対的な位置関係を示す画像、図4(b)は溶接後に撮像された上下シェルハーフの相対的な位置関係を示す画像である。なお、図2(a)は図1におけるZ方向(上方)から見た図、図2(b)は図1におけるX方向から見た図、図3(a)は図1におけるZ方向(上方)から見た図、図3(b)は図1におけるX方向から見た図である。
【0017】
なお、上記各図に示す記録媒体カートリッジは、従来技術で説明済みの図8および図9の記録媒体カートリッジと同等のものなので、従来技術の記録媒体カートリッジと同じ符号を使用しその説明を省略する。
【0018】
図示のように、溶接品質検査装置100は、平板状の記録媒体を回転自在に収容する記録媒体カートリッジ1を構成する上シェルハーフ3の周壁3Sと下シェルハーフ4の周壁4Sとが突き合わされて溶接され接合されるときの溶接品質を検査するものである。
【0019】
この溶接品質検査装置100は、上記溶接が可能となるように上シェルハーフ3の周壁3Sと下シェルハーフ4の周壁4Sとを突き合わせて上下シェルハーフ3、4を保持する保持部79によって上下シェルハーフ3、4が保持された状態において、上下シェルハーフ3,4が突き合わされる上下方向(図中Z方向)と直交する方向への上下シェルハーフ3,4間の位置ずれを測定する測定部50と、測定部50により測定された位置ずれ量と予め定められた位置ずれ量とを比較する比較部60と、比較部60によって得られた比較結果に基づいて溶接の良否を判定する判定部65と、判定部65で得られた判定結果を出力する出力部69とを備えている。
【0020】
測定部50は、上シェルハーフ3の周壁3Sと下シェルハーフ4の周壁4Sとに亘って、上下方向(図中Z方向)に延びるライン光Lsを照射する照射部52と、ライン光Lsが照射された両周壁3S,4Sに亘る領域をライン光Lsの伝播面Lmに対して交わる方向から撮像する撮像部54と、撮像部54によって撮像された画像が示す、ライン光Lsが照射された上シェルハーフ3の周壁3S上の線状の領域Ru(画像上では領域Gu:図4参照)の位置と、下シェルハーフ4の周壁4S上の線状の領域Rd(画像上では領域Gd:図4参照)の位置との差G(0)(図4参照)に基づいて、上下シェルハーフ3、4間の相対的な位置ずれ量を得る画像処理部56とを備えている。
【0021】
照射部52は、光源から発せられた光を、幅が狭く1方向に延びるスリットへ通して上記ライン光を射出するものである。
【0022】
上記測定部50が上下シェルハーフ3、4間の位置ずれを測定する方向は、より具体的には、上下方向(図中Z方向)と直交する方向であって、上下シェルハーフ3、4の周壁3S、4S上の溶接が行われる面3M、4Mに対して直交する方向である。
【0023】
なお、上記記録媒体カートリッジ1は、従来技術で説明済みの記録媒体カートリッジと同様に13箇所(W〜W13図9参照)に溶接が施されるものである。
【0024】
また、上記溶接品質検査装置100は上記各部の動作および動作のタイミング等を制御するコントローラ77を備えている。
【0025】
次に、上記溶接品質検査装置100の作用について説明する。
【0026】
図1に示すように、記録媒体カートリッジ1の位置W13の溶接が可能となるように、上シェルハーフ3の周壁3Sと下シェルハーフ4の周壁4Sとが突き合わされてこの記録媒体カートリッジ1が保持部79によって保持される。上記記録媒体カートリッジ1が保持部79によって保持された状態において以下の動作が実施される。
【0027】
スポット溶接用レーザ70が、このスポット溶接用レーザ70が射出する溶接用レーザ光Leと同軸の光路に照射野光Lyを射出し、上記記録媒体カートリッジ1の上シェルハーフ3の周壁3Sと下シェルハーフ4の周壁4Sとに亘る所定の溶接が実施される上記位置W13の領域Hが上記照射野光Lyで照明されていることが確認される(図3参照)。
【0028】
そして、溶接が行われる前に、上記測定部50が、上下シェルハーフ間の位置ずれを以下のように測定する。
【0029】
すなわち、照射部52が、1方向(図中Z方向)に延びるライン光Lsを、上シェルハーフ3の周壁3Sと下シェルハーフ4の周壁4Sとに亘る領域(図2(b)中の符号Ru、Rdで示す領域)に照射する。
【0030】
次に、撮像部54が、上記ライン光Lsが照射された両周壁3S,4Sに亘る領域をライン光Lsの伝播面Lmに対して交わる方向から撮像する。
【0031】
なお、図1、図2(a)に示すように、ライン光Lsの伝播面Lmと撮像部54が被写体を臨む光軸Kとの成す角度αは、30°以上、120°以下とすることが望ましい。また、図2(a)に示すように、上下シェルハーフ3、4の周壁3S、4S上の溶接が行われる各面3M,4Mとライン光Lsの伝播面Lmの成す角度β、および上記各面3M,4Mと光軸Kの成す角度γは共に10°以上、60°以下とすることが望ましく、30°以上、45°以下とすることがさらに望ましい。
【0032】
つづいて、撮像部54によって撮像された画像が入力された画像処理部56が、図4(a)に示すように、この画像が示す、上記線状の領域Guの位置と線状の領域Gdの位置との差Goを、この画像処理部56に予め入力され記憶されたルックアップテーブルを参照して、上下シェルハーフ3、4間の上記Z方向に対して直交する方向、すなわち、上記溶接が行われる面3M、4Mに対して直交する方向の位置の差に変換し、溶接前測定量Joを得る(図2(a)参照)。
【0033】
次に、比較部60が、測定部50によって得られた上記位置ずれ量である溶接前測定量Joを予め定められた溶接前基準量と比較する。
【0034】
溶接前測定量Joが予め定められた溶接前基準量より大きい場合には上下シェルハーフ3,4の保持を不良と判定し、例えば、溶接が中止され、記録媒体カートリッジ1がこの溶接工程から取り外される。なお、上下シェルハーフ3,4の保持を不良と判定したときに、上下シェルハーフ3,4の保持が良と判定されるように、上下シェルハーフ3,4の保持部79による保持を解除して、それらの位置ずれを補正する工程を設けるようにしてもよい。
【0035】
一方、上記溶接前測定量Joが予め定められた溶接前基準量以下の場合には上記上下シェルハーフ3,4の保持を良と判定し溶接が実施される。すなわち、スポット溶接用レーザ70からレーザ光Leを射出させて上記照射野光Lyが照射されている上記位置W13の領域Hの中心部にスポット溶接が施される。
【0036】
溶接が行われた後に、上記測定部50が、溶接が行われる前と同様の上下シェルハーフ3,4間の位置ずれの測定を行って、得られた画像(図4(b)参照)における線状の領域Guの位置と線状の領域Gdの位置との差Geを変換し、位置ずれ量である溶接後測定量Jeを得る(図3(a)参照)。そして、比較部60が、測定部50によって得られた上記溶接後測定量Jeを予め定められた溶接後基準量と比較して、溶接後測定量Jeが予め定められた溶接後基準量より大きい場合に上記溶接を不良と判定し、溶接後測定量が予め定められた溶接後基準量以下の場合に上記溶接を良と判定する。
【0037】
比較部60による上記判定結果は出力部69から出力され、例えば、溶接が不良であると判定された場合には、警告ランプ75が点灯されるとともに、上記13箇所の溶接が終了する前に記録媒体カートリッジ1が上記溶接工程から除かれる。
【0038】
上記溶接品質検査における各部の動作および動作のタイミング等はコントローラ77によって制御される。
【0039】
なお、図5に示すように、撮像部54が被写体を臨む光軸Kの一部と、スポット溶接用レーザ70から射出される溶接用レーザ光Leの光軸とを同軸にするようにしてもよい。すなわち、溶接用レーザ光Leの光軸上にハーフミラー54Aを配置し、撮像部54がハーフミラー54Aを介して上記領域Hを臨むようにすることができる。さらに、光軸Kと溶接用レーザ光Leの光軸との共通部分にレンズ54Bを配置することにより、領域Hの撮像と溶接用レーザ光Leによる溶接とをより高い品質で行うことができる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施の形態の溶接品質検査方法を実施する溶接品質検査装置について説明する。図6は第2の実施の形態の溶接品質検査装置を示す図、図7は測定した間隔変動量である測定間隔変動量と予め定められた基準間隔変動量範囲とを比較する場合を示す図である。なお、図7は横軸に経過時間、縦軸に上下シェルハーフ間の周壁が突合わされる方向における上下シェルハーフの間隔を示す座標上に上記測定間隔変動量と基準間隔変動量範囲を示す図である。
【0041】
なお、第2の実施の形態を示す図6の記録媒体カートリッジは、従来技術で説明済みの記録媒体カートリッジと同様のもので13箇所(W〜W13:図9参照)に溶接が施されるものであるので、従来技術の記録媒体カートリッジと同じ符号を使用しその説明を省略する。
【0042】
第2の実施の形態の溶接品質検査装置101は、平板状の記録媒体を回転自在に収容する記録媒体カートリッジ1を構成する上シェルハーフ3の周壁3Sと下シェルハーフ4の周壁4Sとが突き合わされて溶接され接合されるときの、上下シェルハーフ3,4の周壁3S,4Sが突合わされる上下方向(図中Z方向)における間隔変動量を測定する測定部の1例である電気マイクロメータ80と、電気マイクロメータ80により測定した間隔変動量(以後、測定間隔変動量という)と、予め定められた基準間隔変動量範囲とを比較する比較部82と、比較部82による比較結果に基づいて上記溶接の良否を判定する判定部84と、判定部84による判定結果を出力する出力部86とを備えている。なお、上記基準間隔変動量範囲は、例えば、実際に上記溶接を多数実施し良好な溶接が行われたときの間隔変動量に基づいて求めることができ、このようにして得られた基準間隔変動量範囲が比較部82に予め入力され記憶されている。
【0043】
電気マイクロメータ80の接触子80Aを、溶接が実施される所定の位置に保持部79によって保持された記録媒体カートリッジ1の上シェルハーフ3の上面3hに接触させる。そして、記録媒体カートリッジ1の溶接位置W13が溶接され上下シェルハーフ3、4が接合されるときに、電気マイクロメータ80が、上シェルハーフ3に対する下シェルハーフ4の上下方向(図中Z方向)における相対的な間隔変動量を測定し、測定結果を比較部82に出力する。なお、上記溶接が行われるときには、バネ等からなる付勢手段78が、上シェルハーフ3の上面を介してこの上シェルハーフ3を下シェルハーフ4の側に付勢する。
【0044】
比較部82は、測定部80により測定された測定間隔変動量と予め定められた基準間隔変動量範囲とを比較する。
【0045】
図7の間隔変動を表す曲線P1に示すように、溶接開始前の上シェルハーフ3の上面3hと下シェルハーフ4の下面4hとの間隔は値Eoである。溶接が始まると、上下シェルハーフ3,4の周壁が融けて、上下シェルハーフ3,4の間隔が徐々に狭まり、上下シェルハーフ3,4の間隔は値Eoから値E1に変動する。すなわち、ここでは、上下シェルハーフ3,4の周壁3S、4Sが突き合わされて溶接され接合されるときの上下シェルハーフ3,4の測定間隔変動量の値δ1は、δ1=Eo―E1となる。一方、基準間隔変動量範囲は、δmaxからδminの範囲である。
【0046】
比較部82は、測定間隔変動量δ1が、基準間隔変動量範囲(δmaxからδminの範囲)外の場合に溶接を不良と判定し、測定間隔変動量δ1が、基準間隔変動量範囲(δmaxからδminの範囲)以内の場合に溶接を良と判定する。
【0047】
ここでは、図7に示すように、δmin≦δ1≦δmaxであるので、比較部82は溶接が良であると判定する。これに対して、δ1<δmin、あるいはδmax<δ1の場合には、比較部82は溶接が不良であると判定する。
【0048】
上記判定部84による判定結果は出力部86から出力される。出力部86から出力された判定結果が溶接の不良を示す場合には警告ランプ88が点灯されるとともに、上記13箇所の溶接が終了する前に記録媒体カートリッジ1が上記溶接工程から除かれる。なお、溶接が良であることを示す場合には警告ランプ88は点灯されない。
【0049】
なお、上記間隔変動量を測定する測定部は、電気マイクロメータ80に限らず、レーザ変位計等、光を用いた測定手段を採用することも可能である。
【0050】
上記のように、本発明によれば、記録媒体カートリッジの溶接品質検査を溶接工程内で行うことができるので、記録媒体カートリッジの生産効率を高めることができる。
【0051】
また、上記のように、上記溶接箇所が複数存在する場合には、全ての溶接を終了する前に溶接の不良を判定することができ、溶接が不良と判定された時点で溶接を終了し不要な溶接の実施を避けることができるので、記録媒体カートリッジの生産効率をさらに高めることができる。
【0052】
なお、本発明の溶接品質検査方法を適用することができる記録媒体カートリッジは、従来技術および実施の形態に示した記録媒体カートリッジに限定限らない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の溶接品質検査装置の概略構成を示す斜視図
【図2】溶接前の上下シェルハーフの相対的な位置関係を示す図
【図3】溶接後の上下シェルハーフの相対的な位置関係を示す図
【図4】溶接前後に撮像された上下シェルハーフの相対的な位置関係を表す画像を示す図
【図5】溶接品質検査装置の溶接用レーザの光路と撮像光路とを同軸にした場合を示す図
【図6】間隔変動量の測定を上下シェルハーフを突き合わせる方向に対して行う一例を示す図
【図7】測定した間隔変動量と予め定められた間隔変動量との比較手法を示す図
【図8】記録媒体カートリッジの斜視図
【図9】図9(a)は記録媒体カートリッジの平面図、図9(b)は記録媒体カートリッジの裏面図
【符号の説明】
【0054】
1 記録媒体カートリッジ
3 上シェルハーフ
3S 周壁
4 下シェルハーフ
4S 周壁
50 測定部
52 照射部
54 撮像部
56 画像処理部
60 比較部
65 判定部
100 溶接品質検査装置
Ls ライン光
Lm ライン光Lsの伝播面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の記録媒体を回転自在に収容する記録媒体カートリッジを構成する上シェルハーフの周壁と下シェルハーフの周壁とが突き合わされて溶接され接合されるときの溶接品質を検査する溶接品質検査方法であって、
前記溶接が可能となるように前記上シェルハーフの周壁と下シェルハーフの周壁とが突き合わされて該上下シェルハーフが保持された状態において、
前記溶接が行われる前に、
前記上下シェルハーフが突き合わされる方向に対して直交する方向への該上下シェルハーフ間の位置ずれを測定し、
前記測定により得られた溶接前測定量を予め定められた溶接前基準量と比較して前記溶接前測定量が前記溶接前基準量より大きい場合に前記上下シェルハーフの保持を不良と判定して前記溶接が中止され、
前記溶接前測定量が前記溶接前基準量以下の場合に前記上下シェルハーフの保持を良と判定して前記溶接が実施され、
前記溶接が行われた後に、前記溶接が行われる前と同様の前記上下シェルハーフ間の位置ずれを測定し、
前記測定により得られた溶接後測定量を予め定められた溶接後基準量と比較して前記溶接後測定量が前記溶接後基準量より大きい場合に前記溶接を不良と判定し、
前記溶接後測定量が前記溶接後基準量以下の場合に前記溶接を良と判定することを特徴とする溶接品質検査方法。
【請求項2】
前記溶接前後に行われる前記上下シェルハーフ間の位置ずれの測定が、1方向に延びるライン光を前記上シェルハーフの周壁と前記下シェルハーフの周壁とに亘る領域に照射し、前記ライン光が照射された前記両周壁に亘る線状の領域を前記ライン光の伝播面に対して交わる方向から撮像し、前記撮像によって得られた画像が示す、前記ライン光が照射された前記上シェルハーフの周壁上の線状の領域の位置と前記下シェルハーフの周壁上の線状の領域の位置との差に基づいて前記上下シェルハーフ間の位置ずれを得るものであることを特徴とする請求項1記載の溶接品質検査方法。
【請求項3】
平板状の記録媒体を回転自在に収容する記録媒体カートリッジを構成する上シェルハーフの周壁と下シェルハーフの周壁とが突き合わされて溶接され接合されるときの溶接品質を検査する溶接品質検査方法であって、
前記上下シェルハーフの前記周壁が突き合わされる方向における溶接前後の間隔変動量を測定し、
前記測定によって得られた間隔変動量と予め定められた基準間隔変動量範囲とを比較し、
前記間隔変動量が、前記基準間隔変動量範囲外の場合に前記溶接を不良と判定し、前記間隔変動量が、前記基準間隔変動量範囲以内の場合に前記溶接を良と判定することを特徴とする溶接品質検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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